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2 自立の概念等について

(1)自立の概念

 「自立」とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」の意味であるが、福祉分野では、人権意識の高まりやノーマライゼーションの思想の普及を背景として、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」、「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」の意味としても用いられている。

「社会保障制度に関する勧告」
(昭和25年10月16日社会保障制度審議会)

「ここに、社会福祉とは、国家扶助の適用をうけている者、身体障害者、児童、その他援護育成を要する者が、自立してその能力を発揮できるよう、必要な生活指導、更生補導、その他の援護育成を行うことをいうのである。」

生活保護法(昭和25年法律第144号)
 (この法律の目的)
一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する 理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

「自立を助長する」
 公私の扶助を受けず自分の力で社会生活に適応した生活を営むことのできるように助け育てて行くことである。
(『改訂増補生活保護法の解釈と運用』)
矢印
「脳性マヒ者等全身性障害者問題に関する報告」
(昭和57年脳性マヒ者等全身性障害者問題研究会)

「自立という言葉は、従来「保護を受けないで済むようになる」とか「障害を克服して社会経済活動に参与すること」と解釈されてきた。この研究会で論じられた自立の概念は、これを含みながらも「労働力として社会復帰が期待できない重度障害者が社会の一員として意義ある自己実現と社会参加を果たそうとする努力を社会的に位置づけようとするものである。すなわち自らの判断と決定により主体的に生き、その行動について自ら責任を負うことである。」

障害者基本法(昭和45年法律第84号)
 (自立への努力)
六条 障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない。
 障害者の家庭にあつては、障害者の自立の促進に努めなければならない。
(平成5年法律第94号による改正後)


(2)措置制度から利用契約制度への転換

今日の社会福祉の理念

 本人が自らの生活を自らの責任で営むことを基本としつつ、それだけでは生活が維持できない場合に必要な援助を行うという考え方(「自立支援」)

矢印 こうした理念を具体化したものとして、福祉サービス利用者の自己選択、自己決定の実現を目指す仕組みの構築

矢印
○高齢者
  特別養護老人ホーム
  老人居宅介護等事業、老人デイサービス事業、老人短期入所事業、痴呆対応型老人共同生活援助事業
介護保険方式
  利用者は、市町村の要介護認定を受けて、指定事業者・施設との契約によりサービスを利用
  利用者は利用者負担額(応益負担)を支払い、市町村は介護給付費を支給(指定事業者・施設が代理受領)
○障害者
  身体障害者更生施設、身体障害者療護施設、身体障害者授産施設、知的障害者更生施設、知的障害者授産施設、知的障害者通勤寮
  身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業、知的障害者居宅介護等事業、知的障害者デイサービス事業、知的障害者短期入所事業、知的障害者地域生活援助事業
○障害児
  居宅介護等事業、デイサービス事業、短期入所事業
支援費支給方式
  利用者は、市町村の支援費支給決定を受けて、指定事業者・施設との契約によりサービスを利用
  本人・扶養義務者は利用者負担額(応能負担)を支払い、市町村は支援費を支給(指定事業者・施設が代理受領)
○児童
  保育所、母子生活支援施設、助産施設
行政との契約方式
  利用者は、希望する施設を選択し、地方公共団体に利用の申込み。地方公共団体は、利用者が選択した施設に対しサービス提供を委託
  本人・扶養義務者は利用者負担額(応能負担)を支払い、地方公共団体はサービス実施に要した費用を支給
○障害者
  身体障害者福祉ホーム、知的障害者福祉ホーム
  身体障害者福祉センター、視聴覚障害者情報提供施設、精神障害者社会復帰施設、精神障害者居宅生活支援事業
○児童、母子・寡婦
  児童厚生施設、放課後児童健全育成事業、母子福祉施設
○高齢者
  軽費老人ホーム(軽費老人ホームB型を除く。)、在宅介護支援センター
事業費補助方式
  利用者は、事業者・施設との契約によりサービスを利用
  利用者は利用料金を支払い、地方公共団体は事業者からの申請により事業費を補助
○児童、母子・寡婦
  知的障害児施設、知的障害児通園施設、盲ろうあ児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設
  乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設
  母子家庭等日常生活支援事業、寡婦日常生活支援事業
○高齢者 ・養護老人ホーム
○生活保護 ・保護施設
措置方式
  地方公共団体は、対象者を社会福祉施設等に入所その他の措置を委託
(利用者は施設・サービス内容を選択できない)
  措置の実施者である地方公共団体は、委託費として対象者の生活費及び施設の事務費を支払い、施設等は、入所を受託した対象者にサービスを提供
(利用者と施設等とは直接の契約関係に立たない)
  本人・扶養義務者に対し、負担能力に応じた費用徴収


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