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 【岡部委員提出資料】
社会保障審議会−福祉部会
生活保護制度の在り方に関する専門委員会
第10回(平成16年4月20日)資料5


 自立支援(就労支援、訓練・教育支援、社会参加支援)に関するメモ

岡部 卓


 私は、前回の委員会で、自立支援の在り方として、(1)能力活用(一般就労・福祉的就労)、(2)能力開発(訓練・教育)、(3)社会参加(活動)を考える必要があるとしました。そして要望として、(1)生業扶助の見直し(2)教育扶助の見直し(3)社会参加扶助の新設を挙げました。今回は、これら3つの扶助を中心として、就労支援、訓練・教育支援、社会参加支援の具体的事項について述べていきます。

 自立支援の在り方
 これまで述べてきたように自立支援の在り方としては、経済的自立だけにとどまらず地域社会で利用者が自己の選択と決定に基づき社会生活が営むことができるよう支援していくことが大切です。このように広く自立支援をとらえるならば、その内容を、(1)生活・住宅など生活基盤に関わる支援、(2)療養・介護に関わる支援、(3)能力開発・能力活用に関わる教育・就労に関わる支援、(4)高齢者・障害者等の社会参加に関わる支援まで幅広くとらえることができます。
 以下では、(3)(4)に関わる就労支援(能力活用)、訓練・教育支援(能力開発)、社会参加支援に限定し、以下、要望事項を列挙します。

 就労支援(能力活用)について
 就労支援は、業務の過重・就労支援のノウハウの不足等により十分展開されていない状況にあります。また就労支援員(嘱託)の配置により一定の成果が得られています。このことから就労支援ノウハウの蓄積(就労支援プログラムの作成)と就労支援員制度拡充が必要と考えます。
 被保護者が就労するに当たり身元保証人(生活再建を図る転宅も同様)がいないため雇用されないなど自立の障害となっています。そのため就労支援のためには保証人対策が必要と考えます。
 要保護者に生業扶助が周知されていない実態があります。また生業扶助の適用要件が厳しく活用しづらいという声が要保護者・援助者サイド双方から聞こえてきます。そのため生業扶助の周知を図るとともに生業扶助の適用要件緩和が必要と考えます。
 自立促進の観点から勤労控除制度が設けられています。しかしこの控除額では就労のインセンティブが十分働きません。そのため自立支援の観点から稼働収入を全額収入認定から除外し一定額累積したら保護を廃止する、あるいは就労開始当初の一定期間収入認定を行わず預貯金の保有を認めるなど、勤労控除制度と自立支援のための資金保有を認めるなどし、就労のインセンティブを高めることが必要と考えます。
 能力活用イコール一般就労と考える傾向があります。そのため、一般就労につながらない人たちが能力活用の機会を持たずにいることが問題とされることがあります。そこで一般就労以外の授産施設等の福祉施設で作業を行い工賃・訓練費が支給される社会的(福祉的)就労についても積極的に活用していく必要があります。

 訓練・教育支援(能力開発)
 職業訓練校において入学資格が中卒程度となっているが実態として高卒以上の方が大半を占めるため十分技能訓練の機会を得ることができません。被保護者の方々のハードル(入学)が高いのが実情です。そのため職業訓練校に生活保護枠を設定し活用促進を図ることが必要と考えます。
 生業扶助の適用要件が厳しすぎるため活用が十分されていない状況にあります。そのため保護を受けながらの自立をも認める方向で生業扶助の適用も考える必要があります。例えば、自動車免許取得費用、高校卒業後の職業訓練学校や看護学校入学を認めるなど要件緩和を図り能力開発に柔軟に対応する制度構造にしていくことを要望します。
 義務教育修了後高校等上級学校進学がほぼ義務化されているなかで義務教育までの教育費しか認めていないのは実態に合わなくなってきています。また義務教育にかかわる教育費は一般世帯の教育費と大きく乖離しています。このことは貧困の再生産(世代間継承)につながります。そのため高校までの教育扶助の足延ばしと教育扶助基準の増額が必要と考えます。

 社会参加支援
 社会的に孤立している高齢者、障害者等がいます。彼・彼女らが地域社会とのつながりを持ちさまざまな活動を行えるような環境をつくらなければなりません。しかし現行制度においては社会参加費用が計上されておりません。そのため地域社会の一員として活動できる社会参加費用を提供していく必要があります。現行制度で移送費の対象枠の拡大(現行では該当事項の列挙)あるいは社会参加扶助を新設し積極的に地域社会に溶けこみ活動できるよう支援していく方向で考えていくことが重要と考えます。
 例えば精神障害者の方が、社会復帰へ向けてボランティア活動に参加しようといった場合、交通費を支給できるようになるようにしていくことが望ましいと考えます。このように交通費・宿泊費・参加費等の費用を提供し地域社会に積極的に参加できるよう支援することを要望します。


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