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資料1

賃金に関する論点


1.「仕事と生活の調和」と「賃金額の変化」の関係

 ○ 収入が十分に確保されない状況では、仕事と生活の調和の必要性を訴えたとしても、働く者の理解を得ることは困難と考えられる。仕事と生活の調和を図る上で、生活収入の確保の問題は避けられない課題と位置付けられるのではないか。

 ○ 仕事重視の働き方を改めた場合、収入の低下につながる場合が多く、個々人は、働き方の選択に当たって、こうしたことも十分に考慮することが求められるのではないか。この場合、働き方の選択に当たって個々人が賃金等の処遇について十分に知ることができるようにすることの必要性についてどのように考えるか。

 ○ 働き方の選択を行うに当たっては、選択しようとする働き方により世帯として一定水準の収入を確保できるか否かが重要となるが、世帯としての収入確保の在り方をどのように考えるか。
 今後の我が国経済社会を展望すれば、世帯の収入の確保の担い手の主流は、世帯主が単独で世帯の収入の大部分を稼ぐという従来型から、夫婦共稼ぎへと変わっていくのではないか。
 また、夫婦間の役割分担も多様化し、夫婦共稼ぎの在り方も多様なものとなっていくのではないか。


2.「仕事と生活の調和」と「賃金制度」について

 ○ 年功賃金や長期雇用に代表される日本型雇用慣行は、我が国経済の発展や労働者の雇用の安定に大きな役割を果たしてきた。しかし、経済成長の鈍化、企業を取り巻く環境の多様化・複雑化に伴い、企業経営においてより柔軟性の高いシステムが求められるとともに、働く側においても自律性が重視されるようになり、価値観や就業意識も多様化している中で、年功賃金や長期雇用に代表される日本型雇用慣行をどのように考えるか。

〈参考1〉「成果主義時代の賃金システムのあり方」(日本経営者団体連盟)
 ○ 企業が将来にわたって存続・発展していくためには、企業内外の変化に柔軟に対応し、問題点を克服していくことが不可欠であり、具体的には
 ・ 「硬直的な人件費管理」を「業績即応型の人件費管理」へ
 ・ 「高止まりの賃金水準」を「適正な賃金水準」へ
 ・ 「年功型賃金システム」を「成果・貢献度反映型の人事賃金システム」へ
 ・ 「一律型賃金管理」を「多立型賃金管理」へ
と再構築していくことが望まれるとしている。

〈参考2〉「賃金制度の整備・見直しに向けて」(日本労働組合総連合会)
 ○ 賃金カーブについての考え方や能力・成果主義賃金に対する労働組の基本スタンスについて、以下のとおり示している。
 ・ 賃金カーブの低下は、同様な能力・職務に対する賃金つまり個別賃金の水準低下を招くことになる。経済の自立的回復や労働者の生活安定のためにも、「賃金カーブ確保」の実現は最低限の取組である。
 ・ 賃金制度改定における能力・成果の重視など能力主義の徹底には、仕事(職務)そのものの価値や求められる役割、与えられる職責の明確化を前提に、(1)能力の正しい把握、(2)能力の開発、(3)能力に応じた仕事への配置、(4)能力と仕事に応じた処遇と賃金決定、これらすべてを満足させる基準や制度があってはじめて完成されるものである。このため、賃金決定基準や評価基準が明確でなく公正でなくかつ公開されない場合は、組合として制度改定に反対の立場を貫くのは当然のことである。

 ○ 一社における勤続年数が長期化するほど賃金水準が上昇する年功賃金について、長期雇用が処遇面で有利になるという点で働き方の選択に対する中立性の観点から問題はないか。
 ・ 例えば、長期雇用・年功賃金による日本型雇用慣行の中で、従業員は将来の昇進等を期待しつつ、長時間労働や遠隔地への転勤も受け入れてきたとも考えられるなど、年功賃金制度について、仕事と生活の調和の観点から様々な指摘が考えられないか。

 ○ 近年、普及が進みつつある能力主義、成果主義に基づく賃金制度については、労働者側からも不安がみられるところであるが、今後、普及が進むことが予想される中でどのような点に留意が必要か。
 ・ 職務遂行能力、成果を客観的に評価する納得性の高いシステムの構築、時間当たり賃金の考え方の一層の普及等、働き方相互間の処遇の公正性を図るための労使による取組の必要性についてどのように考えるか。

 ○ 賃金の額・基準・支払方法などは労働条件の基礎的要素であり、賃金制度の見直しについては労使間で十分な話合いがなされることが重要であるが、近年の組織率の低下や非正社員において組織率が極めて低いことなどを踏まえ、集団的な労使交渉の基礎を整備する必要性についてどのように考えるか。また、労働条件の個別化が進む中で、個々の労働者の交渉力を確保する方策として、労働者による能力習得を通した市場通用力の向上、個別労使間の合意形成や苦情処理等に係るルールの整備などの必要性についてどのように考えるか。


3.「仕事と生活の調和」と「最低賃金制度」について

 ○ 働く者の賃金額の変化や、労働組合の組織率の低下に伴う労使間の交渉上の地歩の不均衡の拡大が懸念される中、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善を目的とする最低賃金制度が、労働条件のセーフティネットとして十分に機能するようにしていくことが重要ではないか。

 ○ また、個々人がそれぞれの価値観や就業意識に応じて「仕事と生活の調和」を図ることができる社会においては、同一企業や事業所内であっても、個々の労働者によって労働時間が異なることが想定される。この場合、労働時間が異なる者同士が納得し、協調していくために、賃金等の処遇の合理性の確保する必要があるが、その際、賃金についての最低基準を定める最低賃金法上、労働時間の長短によって取扱いが異なることとされている部分等についてどのように考えるか。

〈参考1〉所定労働時間の特に短い者に係る適用除外(最低賃金法第8条第4号)
 ○ 現行の最低賃金法においては、所定労働時間が特に短い者について、都道府県労働局長の許可を受けた場合に最低賃金法が適用除外される仕組みとなっている。
 ただし、省令において、適用除外となり得るのは、所定労働時間が特に短い者の実賃金が日、週又は月単位で設定されている場合であって、最低賃金額も同じ期間単位で設定されている場合のみとされており、最低賃金が時間額で設定されている場合又は実賃金が時間額で設定されている場合等は、原則どおり最低賃金が適用される。また、運用において、「所定労働時間が特に短い者」については所定労働時間が通常の労働者の3分の2程度以下の者をいうものとするとともに、これに該当する場合であっても、実賃金額と最低賃金額を時間換算した上で時間当たり実賃金額が時間当たり最低賃金を上回っているときのみ適用除外の許可を行うこととされている。

〈参考2〉最低賃金の表示単位期間(最低賃金法第4条第1項)
 ○ 現行法上、最低賃金は時間、日、週又は月単位で設定することとされている。現行制度上も、省令において最低賃金の時間比例方式のための計算方法が定められているが、今後、労働時間が個々人によってまちまちになる状況で、最低賃金の表示単位期間をどのように考えるか。
 ただし、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の観点や就業形態の多様化への対応の観点、さらには分かりやすさの観点から、運用において大部分の最低賃金について時間額単位での表示が行われている。

〈参考3〉産業別最低賃金(最低賃金法第16条、第16条の4)
 ○ 最低賃金法第16条第1項の規定に基づく地域別最低賃金に加えて、同法第16条の4第1項の規定による労働者又は使用者の全部又は一部の申出により、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、同法第16条第1項の規定に基づき、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を聴いて、特定の事業について特別の最低賃金を定めている。


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