○ | 年功賃金や長期雇用に代表される日本型雇用慣行は、我が国経済の発展や労働者の雇用の安定に大きな役割を果たしてきた。しかし、経済成長の鈍化、企業を取り巻く環境の多様化・複雑化に伴い、企業経営においてより柔軟性の高いシステムが求められるとともに、働く側においても自律性が重視されるようになり、価値観や就業意識も多様化している中で、年功賃金や長期雇用に代表される日本型雇用慣行をどのように考えるか。
〈参考1〉「成果主義時代の賃金システムのあり方」(日本経営者団体連盟)
○ | 企業が将来にわたって存続・発展していくためには、企業内外の変化に柔軟に対応し、問題点を克服していくことが不可欠であり、具体的には
・ | 「硬直的な人件費管理」を「業績即応型の人件費管理」へ |
・ | 「高止まりの賃金水準」を「適正な賃金水準」へ |
・ | 「年功型賃金システム」を「成果・貢献度反映型の人事賃金システム」へ |
・ | 「一律型賃金管理」を「多立型賃金管理」へ |
と再構築していくことが望まれるとしている。 |
〈参考2〉「賃金制度の整備・見直しに向けて」(日本労働組合総連合会)
○ | 賃金カーブについての考え方や能力・成果主義賃金に対する労働組の基本スタンスについて、以下のとおり示している。
・ | 賃金カーブの低下は、同様な能力・職務に対する賃金つまり個別賃金の水準低下を招くことになる。経済の自立的回復や労働者の生活安定のためにも、「賃金カーブ確保」の実現は最低限の取組である。 |
・ | 賃金制度改定における能力・成果の重視など能力主義の徹底には、仕事(職務)そのものの価値や求められる役割、与えられる職責の明確化を前提に、(1)能力の正しい把握、(2)能力の開発、(3)能力に応じた仕事への配置、(4)能力と仕事に応じた処遇と賃金決定、これらすべてを満足させる基準や制度があってはじめて完成されるものである。このため、賃金決定基準や評価基準が明確でなく公正でなくかつ公開されない場合は、組合として制度改定に反対の立場を貫くのは当然のことである。 |
|
|
○ | 一社における勤続年数が長期化するほど賃金水準が上昇する年功賃金について、長期雇用が処遇面で有利になるという点で働き方の選択に対する中立性の観点から問題はないか。
・ | 例えば、長期雇用・年功賃金による日本型雇用慣行の中で、従業員は将来の昇進等を期待しつつ、長時間労働や遠隔地への転勤も受け入れてきたとも考えられるなど、年功賃金制度について、仕事と生活の調和の観点から様々な指摘が考えられないか。 |
|
○ | 近年、普及が進みつつある能力主義、成果主義に基づく賃金制度については、労働者側からも不安がみられるところであるが、今後、普及が進むことが予想される中でどのような点に留意が必要か。
・ | 職務遂行能力、成果を客観的に評価する納得性の高いシステムの構築、時間当たり賃金の考え方の一層の普及等、働き方相互間の処遇の公正性を図るための労使による取組の必要性についてどのように考えるか。 |
|
○ | 賃金の額・基準・支払方法などは労働条件の基礎的要素であり、賃金制度の見直しについては労使間で十分な話合いがなされることが重要であるが、近年の組織率の低下や非正社員において組織率が極めて低いことなどを踏まえ、集団的な労使交渉の基礎を整備する必要性についてどのように考えるか。また、労働条件の個別化が進む中で、個々の労働者の交渉力を確保する方策として、労働者による能力習得を通した市場通用力の向上、個別労使間の合意形成や苦情処理等に係るルールの整備などの必要性についてどのように考えるか。 |