04/03/02 第10回社会保障審議会年金数理部会議事録                   第10回               社会保障審議会年金数理部会               平成16年3月2日(火)                 厚生労働省年金局 時間: 平成16年3月2日(火)14:00〜15:22 場所: 東海大学交友会館 望星の間(霞が関ビル33階) 出席委員:  堀部会長 都村部会長代理 栗林委員 近藤委員 田村委員 山ア委員  渡辺委員  議事次第  1.平成16年財政再計算に基づく財政検証について  2.技術作業委員会(仮称)の設置について(案) 開会 ○田村首席年金数理官  定刻になりましたので、ただいまより第10回「社会保障審議会年金数理部会」開催さ せていただきます。  まだ、林委員と渡辺委員は見えておりませんけれども、御出席という御連絡をいただ いておりますので始めたいと思います。  審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。  まず、資料1は「平成16年財政再計算に基づく財政検証について」でございます。  資料2は「平成11年財政再計算に基づく被用者年金制度の財政検証−検証項目一覧− 」でございます。  資料3は「技術作業委員会(仮称)の設置について(案)」でございます。  配付資料は以上でございます。  次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、宮島委員が御都合 により御欠席ということでございます。あとの2人は後からいらっしゃると思います。  御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立してい ることを御報告申し上げます。  なお、本日、局長及び審議官は国会の関係で欠席をさせていただきます。  それでは、以降の進行につきましては、堀部会長にお願いいたします。 ○堀部会長  2週連続で御足労いただきましてありがとうございます。  本日の議題は、お手元の議事次第にありますように「平成16年財政再計算に基づく財 政検証について」と「技術作業委員会(仮称)の設置について(案)」ということでご ざいます。  それでは、早速、最初の議題の「平成16年財政再計算に基づく財政検証について」の 議事に入りたいと思います。 議題 1.平成16年財政再計算に基づく財政検証について ○堀部会長  それでは、最初に事務局から資料の説明をお願いします。 ○田村首席年金数理官  資料1と資料2でございます。  まず、資料1でございますけれども、これは前回、先週の第9回の部会で御説明した ものと内容は変わってございません。前回、御説明をしておりますが、簡単に触れさせ ていただきます。  まず、「1 検証の在り方」とございますけれども、年金制度の安定性、それから公 平性の確保に関しまして、財政再計算の検証をお願いするわけでございますけれども、 その内容といたしましては、安定性、公平性のほか、検証に使用する計算自体も検証す る必要があると思っております  次に「(1)将来見通しの推計方法の検証」というところにありますように、各制度 が作成した将来見通し等が年金数理的に妥当かどうかというのを見たいと思っておりま す。  次に、財政見通しを作成する計算過程でございます。これにつきましては、各制度に よって財政運営のやり方が、今回の制度改正で違ってくるということなので、厚生年 金、国民年金、共済制度ではそれぞれ違ったものになってくるかもしれないと思ってお ります。  また、そこに個別に4つほど並べてありますが、個別の各事項についての検証も必要 と考えています。  次に「(2)安定性の確保に関する検証」です。制度改正によって財政運営の方法が 変わってきますので、新しい考え方に合った検証項目、財政指標の開発などが必要にな ろうかと思っております。そこに例示しているような幾つかの事項が新たに考えられる のではないかと思っております。  なお、前回の財政検証では、安定性というのは、1ページの一番下にあるように保険 料率が急激に引き上げられたり、負担可能な水準を超えるというようなことがないこと を安定性として考えております。  次に、2ページの「(3)公平性の確保に関する検証」というところですけれども、 下にありますように、前回の検証では制度によって給付と負担の間に大きな差はないと いうこととされましたけれども、今回の制度改正に伴い、これらの考え方を変更する必 要があるかどうかといったことを検討しなければいけないと思ってございます。  なお、これには今後行われるであろう、公的年金の一元化の際の扱いもある程度念頭 に置いておく必要があるのではないかというふうに思っております。  その下の「(4)年金給付の財源構成の検証」では、前回は各年金給付、それから収 入の年金現価を出しまして、どういうふうな財源構成になっているかというのをチェッ クしましたけれども、今回、これについてどのような現価構成をつくりまして、各制度 間でどのように比較するかというような問題があるのかと思っております。  3ページの「2 検証に必要な資料」ですが、以上のような検証において、どのよう な資料が必要かということでございます。  (1)は、各制度で行った財政再計算の結果をどのように見るかということ。  (2)は、各制度がそれぞれの制度に合った財政再計算を行っているわけですけれど も、年金数理部会として、ある程度共通の基準に従った幾つかの前提、基礎率とか、基 礎数の下で再計算をしたらどうなるかということを比較することがいいだろうというこ とは、前回の検証でも言われていますので、そういう場合には、どういうような基準で やるべきかというような中身等々について資料が必要になり、各保険者にお願いしなけ ればいけないということになります。  1枚めくっていただきまして、4ページと5ページ、これも前回に御説明しましたの で、簡単にいたしますけれども、前回財政検証、平成11年再計算結果の財政検証のとき と、今回の制度改正案を比較しております。これは前回の部会で制度改正の内容等につ きまして御説明をいたしましたのが、右側にございます。  資料1につきましては、以上でございます。  次の、資料2につきましては、年金数理官の石原の方から御説明したいと思います。 ○石原年金数理官  それでは、資料2について御説明申し上げます。  資料の2は、旧年金数理部会が、平成12年に行った平成11年財政再計算に基づく被用 者年金制度の財政検証の報告書の抜粋でございます。  左側の検証項目の欄に、報告書で使われている項目名を項目番号、ページ番号ととも に掲げまして、その右側に検証の観点に相当すると思われる文言と、結果ないし評価に 相当すると思われる文言をそれぞれ報告書から抜き書きしてみたものです。  以下、資料の内容順に追っていきたいと思います。  検証報告は、まず「I公的年金制度の概要」としまして、公的年金制度の役割や、年 金制度を取り巻く社会経済状況について触れた後、II番の項で、各制度が行った11年財 政再計算の前提と保険料率設定の考え方を調べております。  まず、財政再計算の前提のうち、経済要素につきましては、検証報告におきまして は、かつて旧年金数理部会の第2次報告で行った指摘である、各制度統一的なものにし ていく必要があるということに触れまして、右側の欄でございますが、平成元年の再計 算から各制度統一されているとしております。  次に、被保険者数・組合員数の将来見通しにつきましては、第5次報告で行った指 摘、すなわち、その動向が財政に与える影響が大きく、見込み方に特段の注意を払う必 要があること。財政に与える影響は大きいが、将来の不確実さが見込まれる要素は、複 数のケースを想定して検討を行うことが必要であると指摘したことについて触れまし て、複数のケースを設定して財政再計算を行うことは、年金財政の将来の姿を予測する 上で有効な方法としております。  その上で、11年再計算につきまして、お手元の資料の右側に抜き書きしてあるとおり でございますが、厚生年金は、女性と60歳代前半の労働力率の上昇などを踏まえた見通 しとなっている上、参考として低位推計、高位推計に基づく推計が行われていること、 また、共済各制度も複数のケースで計算されていると評価しております。  なお、検証報告では、複数ケース設定の場合であっても、実際の動向を反映すること が必要であるとしまして、農林年金につきまして、組合員数見通しを5通り設定してい るが、いずれも今後10年は組合員数一定という見通しで、組合数減少という直近の傾向 を反映していないとしております。  前回の検証は、この後、複数ある前提の中で、厚生年金の被保険者数と同様の傾向で 組合員数が減少する場合の結果を中心に進められております。  1ページの下にあるように、組合数を一定とする再計算結果を基とする検証では、生 産年齢人口が今後減少することが予測される中にあっては適当ではなく、また、厚生年 金等の比較を行う必要があることから、このようにしたとされております。  次に、資料2の2ページの方にまいりますが、検証報告では、その後、各制度の保険 料率設定の考え方を調べております。  保険料率の設定は、成熟状態や給付の財源構成などを踏まえて、被保険者数・組合員 数の将来見通し、収支状況、最終保険料率の水準などを総合的に見て行っていく必要が あるとしておりまして、引き上げ幅、引き上げ間隔、考え方、例えば、国共済について は、最終保険料率は将来にわたり、単年度収支が赤字にならないように設定するなどと いった考え方、こういったことこれらを制度ごとに調べて紹介しております。  続きまして「III 年金制度の安定性」の項に移ります。  まず、年金制度の安定性についての基本的考え方としまして、年金制度の安定性と は、保険料率が急激に引き上げられたり、負担可能な水準を超えることなく保険料収入 が確保され、年金給付が将来にわたり確実に支払われることであるとしまして、年金給 付は保険料、国庫負担、積立金により賄われるが、特に保険料率の引き上げを確実に実 現できるかどうかが重要な点であり、保険料率の引き上げ幅や、最終保険料率を検証の 対象とするとしております。  3ページに移りますが、保険料率の将来見通しとして、引き上げ間隔、あるいは引き 上げ幅について再度触れた後、最終保険料率と、その到達年度を調べております。3ペ ージの右側に書いてあるとおりでございます。  その際、国共済につきましては、組合員数はここ数年微減、定員削減方針が示されて いることから、今後の組合員数の動向に十分な注意を払うことが必要、あるいは、地共 済につきましては、40歳代以降の組合員の割合が高いこともあり、2020年頃まで年金受 給者が急増し、成熟化が急速に進むこと、私学につきましては、引き上げ幅が最も小さ く、最終保険料率到達も最も遅いこと。農林年金につきましては、2020年度までの間、 11の年度で単年度収支が赤字となる見込みであり、制度の成熟過程における積立金取り 崩しは望ましくなく、保険料率は財政状況を十分に踏まえて設定する必要があるなどと しております。  また、保険料率のうち、基礎年金拠出金に相当する保険料率というのも調べておりま して、その率につきましては、制度の一人当たりの標準報酬月額が低いほど、また制度 における第3号被保険者の割合が高いほど、基礎年金拠出金に相当する保険料率は高く なるとしております。  続きまして、検証報告におきましては、各制度の平準保険料率、標準保険料率を調べ ております。  平準保険料率と、現在の保険料率を比較することで、後代負担の程度が把握できるこ と、また、標準保険料率と現在の保険料率を比較することで、現在の被保険者・組合員 が後代負担を新たに発生させているかどうか、また、発生させているとすれば、その程 度を把握できるとしておりまして、平準保険料率、標準保険料率を計算し、保険料率の 引き上げ幅や、最終保険料率の設定など、財政運営の指針とする必要があるとしており ます。  結果の方につきましては、3ページの右側に書いてあるとおりでございます。  更に、検証報告は安定性の検証の一環としまして、資料2の4ページに移りますが、 財政指標の見通しを制度ごとに調べております。  特に、総合費用率につきましては、段階保険料方式の保険料率と比較することによ り、積立金による保険料率軽減効果が把握できるとしまして、保険料率見通しとの比較 を行っております。  お手元の資料では、4ページの右下の図、これは報告書の図表5から、スペースの関 係で厚生年金のみ抜粋したものでございますが、このような図で総合費用率と保険料率 の比較を行っております。  更に、資料の5ページの右側に抜き書きしておりますが、総合費用率見通しが最も高 くなる時期はいつか、最終保険料率はどの程度に収まっているかなどについて制度ごと に研究しております。  安定性の検証は、また更に進みまして、前提を変えた場合の最終保険料率を調べてお ります。資料で申し上げますと、5ページの下半分のところでございます。  まず、被保険者数・組合員数につきまして、厚生年金は将来人口推計の低位推計を使 った場合の最終保険料率。共済年金は組合員数一定の場合の最終保険料率をそれぞれ調 べております。お手元の資料では、厚生年金の場合のみ抜き書きいたしました。  検証報告では、保険料率は、被保険者数・組合員数が見通しより減少すると、保険料 率は更に高くなることから、被保険者数・組合員数の将来見通しの変更により、どの程 度最終保険料率が変化するか、これを把握して財政運営を行っていく必要があるとして おります。  また、経済要素につきましても、運用利回りの前提を4%から変更して、3%ないし 5%としまして、ほかの経済要素の前提は変えない場合で、最終保険料率を調べており ます。資料では、厚生年金の場合のみ右側のところに抜き書きしておきました。  続いて「IV年金制度間の公平性」の項に移ります。資料では6ページの方にまいりま す。  まず、年金制度の公平性に関する基本的考え方としまして、年金制度の公平性とは、 基本的には制度間で同じ年金給付に対する保険料水準に差がないこと、したがって、共 済制度の職域部分を除いた場合の各制度の保険料水準と、厚生年金の保険料水準とが、 将来にわたりどの程度の差となっているかが重要な点であり、最終保険料率及びそれに 至る途中段階の保険料率を検証の対象にするとしております。  そして、保険料率の将来見通しを調べているわけでございますが、6ページの右側の 下に抜き書きしておりますが、地共済と私学共済は、職域部分を除く最終保険料率が、 厚生年金よりも1割程度低いと見込まれること、その原因としては、積立比率が高く、 多くの運用収入を得られること、基礎年金拠出金に相当する保険料率が低いことなどが あるとしております。  続いて「V財源構成と積立水準」の項となります。資料2では7ページの方に移りま す。  検証報告では、年金給付の財源構成の把握について、財政状況をより詳細に見るため に必要であり、また、年金給付現価のうち、過去期間に係る部分と、保有積立金の関係 という観点から、積立金水準を把握することが必要としております。  結果につきましては、給付現価と財源構成の図を使って把握しておりますが、現在の 保険料率で賄われる部分と、将来の保険料率の引き上げにより賄われる部分に区分する ことにより、後代への負担の先送りの状況が把握できるとしております。  また、検証報告では、過去期間に係る給付現価、あるいは給付確定部分の給付現価と 保有積立金との関係、あるいは積立比率の将来推移、こういったものについても調べて おります。  検証報告の最後に「VI財政の評価」をまとめております。資料2では、8ページ、9 ページとなります。  まず、制度ごとに財政状況の評価を行っております。厚生年金につきましては、制度 改正に伴い、最終保険料率の見込みが34.5%〜27.6%となり、制度の安定化が図られた としております。そして、厚生年金は大部分の民間被用者を対象とする一般的な制度 で、ほかの制度の基準ともなっていることから、今後とも一層安定性を図っていく必要 があること、また、被保険者数の将来見通しは、年金財政に与える影響が大きく、今後 とも複数のケースを想定して財政見通しを示していく必要があるとしております。  国共済につきましては、最終保険料率が職域部分を除くと、厚生年金とほぼ同程度の 水準となるものの、組合員数はここ数年微減し、公務員の定員の削減方針が示されてい ることから、今後の組合員数の動向に十分な注意を払う必要があるなどとしておりま す。  地共済につきましては、最終保険料率が職域部分を除くと厚生年金より1割程度低く なっているわけですが、総合費用率は、今後、20年間はその増加が最も大きく、成熟化 が急速に進むこと、一方、組合員数はここ数年微減しており、現時点の財政状況は比較 的よいとはいえ、今後は楽観できるものではないとしております。  また、私学共済につきましては、地共済と同じように、最終保険料率が職域部分を除 くと厚生年金より1割程度低くて、更に最終保険料率の到達年度も2045年と、ほかの制 度にくらべて最も低く、また料率の引き上げ幅も最も小さいのですが、ただ、現行の保 険料率の平準保険料率に対する割合が、ほかの制度に比べて低くて、年金給付の財源を 将来世代の保険料に依存する割合がほかの制度よりも高いこと、また、学齢人口の減少 に伴い、組合員数が減少傾向になることが予測されることなどから、現時点の財政状況 が各制度の中ではよいとはいえ、将来は楽観できるものではないとしております。  最後に農林年金につきましては、最終保険料率は職域部分を除くと厚生年金とほぼ同 程度の水準となっているものの、組合員数が直近3年間で1〜2%ずつ減少しているに もかかわらず、今後10年ぐらいは組合員数一定という見通しを基に算出された保険料率 であり、組合員数の直近の傾向を反映していないなどとしまして、財政状況が各制度を 通じて最も厳しいと言える、今後組合員数が見通しより減少すれば、保険料率を更に高 くしなければならないとしております。  検証報告は、次に総合評価を掲げております。  資料では、最後の9ページのところでございますが、まず、将来予測の重要性を言っ ております。内容はごらんのとおりでございますが、保険料率を見込む前提となる被保 険者数、組合員数の将来見通しについて、将来推計人口の推移、あるいはこれまでの被 保険者数、組合員数の動向や、その他制度を取り巻く諸状況に基づき、できるだけ正確 な将来見通しを持つことが極めて重要であるとしております。  次に、制度間の公平性についても触れております。  制度間の負担の公平性とは、先ほども引用いたしましたが、同じ年金給付に対する保 険料率水準がどの程度の差となっているかによること、厚生年金と共済年金を比較する 場合には、全体の1割程度を占める職域部分の保険料率を除いて比較しなければならな いとしています。  現在の保険料率は、私学共済はまだ13.3%と低いわけですが、その他の制度は、職域 部分を含めて、おおむね17%〜19%の間にあり、大きな差はないこと、また、最終保険 料率は、職域部分を除くと、国共済と農林年金は厚生年金とほぼ同程度の水準、地共済 と私学共済は、厚生年金より1割程度低い水準と見込まれているわけですが、このよう に現在の最終保険料率が制度間で異なるのは、成熟化の度合いや、積立比率、基礎年金 拠出金に相当する保険料率の差などが原因であり、制度が分立したままでは、この差を 完全になくすことは難しいとしております。  また、検証報告は、その次に保険料率の計画的な引き上げについても触れておりま す。保険料率引き上げの見送りが年金財政に与える影響は大きくて、年金財政の長期的 安定性や世代間の負担の公平性の観点からは、料率の凍結や計画的引き上げの先送りは すべきではないとしております。また、詳細な情報開示の必要性も述べております。  各制度から提出されなかったデータがあったこと、今回の検証は提出資料の範囲内に とどまらざるを得なかったことについて触れまして、各制度ができるだけ詳細なデータ や情報を公開し、それに基づいて精度の高い財政検証を行うことが、年金制度に対する 国民の理解を深め、信頼性を維持する上で極めて重要であるとしております。各制度の 真剣な取り組みを要請したいとしております。  最後に、今回の改正により各制度とも安定化が図られたものの、基礎年金の国庫負担 の引き上げなど、残された課題も多いこと、政府及び各保険者は、人口や経済などの年 金制度を取り巻く状況、年金制度に対して大きな影響を与える諸要素の動向を見守りつ つ、年金制度の一元化などを含む制度の在り方について幅広く検討し、制度のより一層 の安定性、公平性の確保と、信頼性の向上に努力することを望みたいとしまして、検証 報告を終えております。  以上、資料2の内容につきまして御説明申し上げました。 ○堀部会長  どうもありがとうございました。財政再計算の財政検証ですが、資料1に事務局から 検討項目案が出されています。この項目についても御意見があろうかと思うのですが、 それは後で伺うとして、最初に検討項目案に沿って御意見を伺いたいと思います。  それでは、資料1の1ページの「1 検証の在り方」の「(1)将来見通し推計方法 の検証」について御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。  都村委員どうぞ。 ○都村部会長代理  1の(1)のところに関連してですけれども、平成11年財政再計算における将来見通 しと実績の乖離の要因を見ますと、収入面で非常に大きな差が生じている要因の1つと して、被保険者数の減少が挙げられています。将来の被保険者数というのは、年金財政 に与える影響がかなり大きいものです。平成13年度における将来見通しと実績の乖離を 厚生年金について見ますと、252万人の減少となっています。これはかなり大きい数字 だと思うのです。  財政再計算では、将来推計人口、労働力率の見通し、それから基礎数及び基礎率、す なわち人口学的要素と経済的な要素を前提にして考慮されています。  しかし、年金財政に影響を及ぼすリスクとして、もう一つ個人的リスクがあります。 サラリーマン個人の将来の職歴に関する不確実性に起因する個人的リスクというのがあ ると思うのです。解雇とか倒産等による離職により人生が破綻する可能性がある等で す。  実際に社会保険庁の調査によりますと、平成13年度、第2号被保険者から第1号被保 険者に移行した者の数は407万人いるわけです。第3号被保険者から第1号被保険者へ 移行した者も含めますと、517万人いるわけです。このうちかなりの割合の人が国民年 金の保険料も未納状態となっています。移行する者の増加傾向は平成13年度だけではな くて、ここ数年間続いているわけです。ですから、もし、将来推計人口が見込みとずれ ていないとしても、そういう個人的リスクの可能性は高いわけです。長期的な失業のほ か、高卒とか、大卒で労働市場に参入するはずの者ができないということがあるわけで す。  今回の推計の際に、実績との乖離が大きい被保険者数の減少について、どのように配 慮を行っているのかということを伺いたいと思います。  それから、今の資料1のところで、将来見通しに関する資料として厚生年金の被保険 者数に連動した組合員数の見通しというのを挙げているのですけれども、比較的雇用が 安定している各種共済組合の組合員数は、個人的リスクの高い厚生年金の被保険者数に 必ずしも連動しないのではないかと思います。これらの点を今回の推計では配慮すべき ではないかと思うわけです。もし、財政検証でそういう個人的リスクを考慮しないので あれば、先ほど御説明がありました、前提を変更した場合の保険料率の変化というのを かなり詳しくチェックして示していただいた方がいいのではないかと思います。  以上です。 ○堀部会長  この問題は、どなたにお答えいただけばいいのか。問題としては、二つほどあると思 うのです。  一つは、現在、推計している中でどういうふうに配慮しているかということと、もう 一つは、これから財政検証をやる際の検証方法の中にどう組み込むかという問題です が、いかがでしょうか。 ○坂本数理課長  このところ数年間起こっております、いわゆるリストラ、あるいは新規採用の縮小と いったことから2号被保険者につきましては、前回の再計算から比べましたら、見込み がかなり大幅に乖離しており、こういう現象につきまして、これを今後の再計算でどの ように活かしていくか。そして、今回はどうやったのかということも含めてテーマとし てあるわけでございますけれども、今回の再計算におきまして、これはまた後日詳細に 御報告させていただきたいと思いますが、今回におきましては、一番新しいところまで の被保険者数の減少は勿論織り込んでおります。  それ以降につきましては、いわゆる労働力率の見通しから得られます労働力率に対し ます長期的な雇用者の労働力人口に対する割合というものから出しておりますので、あ る意味でボラティリティーに相当するようなものは、短期的なぶれというふうなとらえ 方になるのかもしれませんが、そこは先生の御指摘のような形での反映というのは、今 回行っておりません。  ただ、先生が御指摘になりましたように、失業の状態というよりも雇用の縮小が起こ っているというのが長期的なものであるという前提に立ったらどうなるかというふうな 検証は今後必要になってくるのではないかと考えております。 ○堀部会長  年金数理部会での財政検証の項目として、そういうものが入ってくるかどうかについ てはどうですか。 ○田村首席年金数理官  先生方の御議論の結果を受けまして行いますので、私からは入ります、入れませんと いうことを言うのはどうかなと思いますけれども、一つの面白い観点だと思います。し たがって、必要であればやっていきたいと思います。  2点ほどあるのですが、今の数理課長の説明にありましたが、基礎率・基礎数等々に つきましては、厚生年金、国民年金は特にそうなってしまいますが、政府が決めたもの を使うという形になりますので、そこは若干難しい点があるかなという感じがいたして おります。  それから最後の方に都村委員がおっしゃった共済の見込みですけれども、それまで は、共済年金の将来加入者の見込みというのは、加入者一定、変わらないという前提で 総数を決めまして、脱退した分だけ毎年入ってくるという前提で計算されていたという ふうに聞いております。  そこで、人口が減少する際に、それではちょっとよくないということで、前回、平成 11年の検証では厚生年金に合わせて動かすというふうにやって計算していただいたとい うことを聞いておりますので、都村委員の先ほどの御発言で、ちょうど間ぐらいになる かもしれません。 ○都村部会長代理  労働力率の見通しでまとめて被保険者数が推計されているのですが、労働力率の見通 しは、男子については60歳台前半において若干上昇する。それから女子については、20 歳台後半以上のすべての年齢層において上昇するという見通しでしたね。  ただ、先ほど申しましたように、厚生年金ではその乖離が250万人という非常に大き な数ですね。だからやはり人口学的な要素と経済的な要素以外に、そういう個人的なリ スクのようなものが現代社会では非常に大きくなってきているので、それをある程度考 慮しないと、また乖離していくのではないか。年齢階級別の労働力率の推計だけで、そ こに組み込めるのか、あるいは組み込んでいないのであれば考慮するのかどうかという 点があると思います。 ○堀部会長  ちょっと関連して私もお聞きします。厚生労働省の年金改正案ではパートへの適用拡 大が盛り込まれましたが、政府案では5年後に先送りということになりました。今回の 財政再計算では、5年後にパートに適用拡大するということを見込んで計算するのです か。  もう一つは、国共済、地共済の場合はパート自体が少ないのではないか。  世界的にもパート化はものすごく進んでいるわけです。それが厚生年金に表われて、 国共済、地共済には表われないのかどうか、その点はどうでしょうか。 ○坂本数理課長  まず、都村委員の御質問の件でございますが、今の状態というのを短期的に非常に悪 くなっている状態で、これが長期的には平均的な状態に戻るのかどうかという問題が別 途あろうかと思います。  それで、財政再計算におきましては、一応、今はかなり悪い状態だけれども、そして 足元は悪い状態から出発しているけれども、長期的にはもう少し戻るだろうというふう な前提の下で結果的には計算していることになるのではないかと考えております。  したがいまして、先生がおっしゃいました傾向が本当に長く続くんであれば、これは またその点も見直していかないといけないということになろうかと思いますが、今のと ころ長期的には高齢者の雇用を、あるいは女子の雇用というのが進んでいくのではない かと、そういう前提で計算しているということでございます。  パートの点でございますが、これは5年後までに結論を得るように今回決めようとし ているわけですけれども、この点につきましては、今回の再計算では織り込んでおりま せん。パートは被保険者としては全くカウントしていないということでございます。 ○堀部会長  わかりました。そのほか、いかがでしょうか。  よろしいでしょうか、いずれにしましても、後で議題になりますけれども、数理部会 で検討する細かい点は、委員会をつくってということになりますので、そのときに御意 見をいただきたいと思います。  それでは、1ページの「(2)安定性の確保に関する検証」について御意見、あるい は御質問はございますか。  この安定性というのは、前回の検証を見ると、保険料が急激に引き上げられること、 あるいは負担可能な水準を超えることがないということです。厚生年金については今回 の改正により一応この問題がなくなるのですが、共済がこの前質問したように、この点 は今回の改正ではクリアできない。この点は厚生年金というよりは、むしろ共済年金に ついて検証するのかなという感じがするのです。  前回、国共済について聞いたのですが、地共済も同じく、保険料水準固定方式を取ら ないのでしょうか。 ○木倉年金課長  地共済は、来週の閣議決定で、3月9日予定でありますが、今のところの説明ぶりは 全く同じです。 ○堀部会長  私学共済も。 ○木倉年金課長  私学共済も閣議決定で国共済と同じ考え方で、マクロ経済スライド、スライドの考え 方は5年にそろえていくけれども、保険料というのは、その手段の中で考えざるを得な いというふうに聞いております。 ○堀部会長  有限均衡方式も厚生年金と同じですか。 ○田村首席年金数理官  国共済は100年程度というのを書いてありますので、有限均衡になると思います。  地共済は、まだ法律案を見ていませんので、わかりません。  私学共済は、ちょっと発見できなかったので、それも決まっていないのではないかな と思います。 ○木倉年金課長  地共済は、国会提出予定の案の中では財政均衡期間は国共済と同じ100年程度として の有限均衡方式で考えているということを言っております。 ○堀部会長  ほかはいかがでしょうか。それでは栗林委員。 ○栗林委員  ちょっとお伺いしたいのですが、安定性というときに、今までの制度ですと保険料を 変えていくということなのですが、今度は保険料率を固定しておいて、給付の方が変動 していくというふうに制度が全く変わるわけですね。ですから、安定性というのは、逆 の見方をしていかなければならないのではないか。  したがって、保険料率を固定しておいて給付の方が急激な変動、あるいは経済変動に 応じてどういうふうに変わってくるのか。あるいは100年という間で、図のようにずら していきながら100年うまくもつのかどうかというふうに全く発想を転換しないと、安 定性の概念が変わってくるのではないかという気がしますが、その点はどうなのでしょ うか。 ○堀部会長  私はそう思いますけれども、どうですか事務局は。 ○田村首席年金数理官  おっしゃるとおりだと思います。後の方の均衡期間の話は、そのとおりだと思いま す。前者の給付の安定性については法律に給付水準の下限が50%と書いてありますの で、それが守られるかという辺りを見ていくのかなとは思っています。ただ、そこでい ろいろな見方ができますので、もうちょっと検討していかなければいけないなと思って おります。 ○堀部会長  渡辺委員どうぞ。 ○渡辺委員  今のことに関連して、有限均衡をやっても50%の給付をやるわけなのだけれども、極 端に言うと基礎係数が悪い方に、悪い方に行ったとすると、まさに積立金の取り崩しが 早まるわけでしょう。  つまり、そういったあらゆる可能性についての検証をここでする必要があるのかどう かという疑問をしだしたら切りがないわけでしょう。保険料を固定し、給付も固定して しまったわけだから、保険料の心配はなくなったものの、給付を50%と固定してしまっ たわけだから、そうなったときに、またあらゆる想定ができてしまう。そこまでいちい ち検証するのですか。つまり、出生率が東京都並みの1.1までいったらということも例 えばあるわけですね。私たちはどこまで検証すればいいのですか。 ○堀部会長  その問題は前回、少し私もお聞きしました。要するに5年後に財政見通しをやり直す ときには当然50%を上回っています。しかし、将来的に下回る可能性があるときには、 給付とか、負担とかを見直すという表現でしたか、そういうことをするということです ね。これは厚生年金についてですね。  それとは別に年金数理部会として、それに対してどう考えるかという問題はあると思 います。 ○木倉年金課長  そのとおりでございますが、法律上の規定として、少なくとも5年ごとに財政の見通 しを示すということは義務づけられております。これは保険料を設定し直すという意味 での再計算ではありませんで、今の保険料率固定の下での財政の見通し、今のスライド 調整等の見通しを示すということでございますけれども、それを5年後の次の見通しま での間に、新規裁定の方が平均的な賃金で計算した場合に50%を切る可能性があるとき に、この調整を止めるべきか、更に調整のやり方によって均衡を図っていくべきなの か、その給付と負担の在り方についての検討を行って所要の措置を講ずるということ で、方向性については、今、どちらの方向ということが法律上明記されているわけでは ありません。 ○堀部会長  それで意外だったのは、負担についても見直すというふうな法律の表現になっている のですね。給付だけではなくて、給付と負担の在り方ということですね。 ○木倉年金課長  給付と負担の在り方についてです。 ○堀部会長  負担にも入っているので、そこはちょっと意外に思いました。 ○渡辺委員  そうすると、国共済、地共済、私学もそうなのだけれども、国共、地共ともに、言わ ば給付を厚年に合わせると、保険料を自動調整みたいな格好で、それも当然5年後に見 直せばいいんですね。  そうすると、安定性という観点からいうと、少なくとも5年のタームで考えた場合に は、国共も地共もそういった意味では今回も出しているわけで、5年後の見通しまでは ね。更に言い出したら、それこそ行政改革の在り方とか、地方分権の在り方で随分変わ ってくるのだけれども、数理部会としてはそこまではまた5年後という解釈でいいとい うことですか。 ○堀部会長  ややこしいのは、年金局サイドでの見通しを財政検証と称しているのですが、その年 金局サイドの財政検証を年金数理部会で財政検証するというややこしいことになってい るのです。少しその辺も含めて、委員会で検討してもらいたいと思います。 ○木倉年金課長  検証という言葉遣いは、今、財政の状況、その見通しを示してございます。今、見通 しを示したものについてのチェックをお願いしていかないといけないと思います。 ○堀部会長  よろしいでしょうか。 ○渡辺委員  さっき都村委員もおっしゃったけれども、一般的には、幾ら我々が財政検証しても、 例えば厚年被保険者が減っている、あるいは零細事業所は厚年に入ろうとさえしない と、幾ら厚生労働省が、あるいは数理部会も含めて、この財政検証をした結果、これは 正しい云々と言ったとしても、現実はもっと不信感があるのです。もっと減っている じゃないかとか、あるいは厚生年金もさっき言った零細がどんどん納めていなくなって いるという、適用事業所になっていないという、そこまで行ってしまうと非常に年金不 信になってしまうわけで、ただ実態は、世間の受け止め方はそうですね。何かバーチャ ルな世界でこれは正しいよなんてやっているような気がしてしょうがいない部分がある わけです。非常に冷たい言い方をすればね。だからそこをぎりぎりやって、さっきも首 席がおっしゃったけれども、それは政府が決めたものに対してというのはわかるから、 その前提を除いてしまったらきりがなくなってしまうけれども、そういった疑問がある から申し上げたわけです。 ○堀部会長  年金数理部会としては、あくまでも幾ら政府が決めたものでも、それが妥当かどうか という検証はやるということです。  よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。  それでは、2ページの「(3)公平性の確保に関する検証」について御意見をよろし くお願いいたします。  渡辺委員どうぞ。 ○渡辺委員  一般的に公平性の確保というと、世代間の公平もあるし、世代内の公平もあるわけで す。それから制度間の公平もある。そうしておかないと、少なくとも今度の問題は、保 険料固定で一番批判を浴びているのは、世代間の不公平性が解消されていないという批 判を浴びているわけです。  そうなると、公平性というのも世代間、世代内、3号の問題も先送りになってしまっ たから世代内の不公平もいまだに残っていると言われているわけで、制度間だけに限る ならまだわかるのだけれども、ただ公平性だけだとどうなのかなという気がします。 ○堀部会長  山ア委員どうぞ。 ○山ア委員  今の点に関連しまして、2ページの下の方に、前回の数理部会では、世代間の扶養の 考え方を取り入れている公的年金においても世代間の公平性に配慮して運営していく必 要があるというふうに言って、平準保険料が望ましいとしています。制度間だけの公平 性ではなかったと思うのです。  世代間の給付と負担の差が現状のまま続いていればよいけれども、世代間で差が広が っていくのは、問題が出てくるのではないでしょうか。  前回はこういうことで、やはり平準化の必要があるという言い方をしたわけで、初め から世代間扶養という考え方が入っているから、差があるのは当然しょうがないと思う のです。その差がどんどん開いていくようなのは困るのではないでしょうか。  公平性の確保というのは、渡辺先生も言ったように2つあると思うのです。制度間と 世代間というのがあると思うのです。両方を検討していかないといけないのではないで しょうか。世代間というのは非常に難しいと思いますけれども。 ○堀部会長  栗林委員どうぞ。 ○栗林委員  今の問題は、(3)と(4)で、前回、これを決めたときに私は入っていませんので わかりませんが、使い分けたのではないのでしょうか。(3)の方では制度間の公平性 を問題にして、(4)の方で、いわゆる財政方式として世代間、あるいは世代内の公平 性というものを分けて考えようということではないかと私は思うのですが、ですから、 私はそういう意味で分けて考えた方がいいと思うのです。公平性というのを一緒にしな いで、制度間での公平性はどうなっているのかという問題と、財政方式として世代間あ るいは世代内での公平性はどうなっているのか。  特に、ここでやっている検証というのは、基本的には制度がどうなっているかという ことを基本にしてやっておりますから、むしろ、(3)の方の公平性を基にして、特に ここでもって、先ほど都村委員が言われたように、個人の問題として、いろんな制度を わたり歩いたときに不利にならないとか、なるとか、それはやっていなかったのかもし れませんけれども、そういうことも含めて、ポータビリティも含めて制度間の公平性と いうものをどう考えるかというのと、(4)の方では、むしろ今度は世代間の公平性と いうのを財政方式としてどういうふうに担保するのかという2つの議論に分けてやられ た方がやりやすいのではないかという気がしています。 ○堀部会長  総理府時代の年金数理部会の考え方は、推測なのですが、いわゆる給付確定分、拠出 時に給付が確定した分については、その分の保険料を拠出する必要があるというもので す。その後のインフレ、あるいは賃金の上昇部分については後代負担と、そういった意 味で、まずは給付確定部分さえ拠出しておけば、世代間の不公平はないということだっ たわけです。  したがって、給付確定分が積み立てられているかどうか、それが財源構成という表現 だったと思うのです。  しかしながら、今回の厚生年金の改正では、給付確定分について積み立てるという考 え方はなくなって、1年分しか積み立てない。そうすると、純粋な賦課方式に近くな り、高齢化が進めば世代間の不公平は当然生じてくる。  そういうふうに厚生年金の財政方式が変わったことに伴って、世代間の公平に関する 考え方が変わってくる。総理府の年金数理部会における世代間の公平の考え方、あるい は給付確定分を積み立てるという考え方自体が、もう合わなくなってきているというよ うな感じがするのです。  それを年金数理部会としてどう考えるか。総理府時代の数理部会のように、給付確定 部分は世代間の公平のため積み立てておきなさい、という考え方を維持するかどうかと いう問題も関連すると思うのです。  これは非常に大きな問題で、もしも総理府時代のそういう考え方を維持するとすれ ば、今回の厚生年金の財政方式と真っ向から反するわけです。それは大問題で、今後も う少し詳細に詰めてもらう必要がります。今日はこの問題についてはその程度にしてお きたいと思うのですが、いかがでしょう、何か意見はありますか。  田村委員は、総理府時代の委員でしたけれども、いかがでしょうか。 ○田村委員  お話のように、今度の有限均衡という方式の中で考えると、やはりおかしなことにな る可能性があります。だから、確かにこの辺は整理しないといけないと思うのですけれ ども、早急に結論を出すのは難しいですね。 ○堀部会長  それでは、この項目の整理も含めて、全部先送りになっているのですが、委員会の方 での検討事項ということで設定してもらってよろしいでしょうか。  それ以外、(3)についての御意見はありますでしょうか。  それでは、既に(4)の議論に入っている面があるのですが、(4)について御意見 があればどうぞ。  よろしいでしょうか、これは非常に大きな問題なので、是非詰めていきたいと思いま す。  それでは、最後の3ページですが「2 検証に必要な資料」について御意見を伺いた いと思います。よろしくお願いいたします。  先ほどの石原数理官の説明では、前回の財政検証で、共済組合からデータがもらえな かったものがあるということをおっしゃっておりました。私は総理府の数理部会に入っ ておりませんので、どういうものかなのかわかりませんが、あるいは今回はもらえそう なのか、それはいかがでしょうか。 ○石原年金数理官  前回の財政検証時点においていただけなかった資料としましては、例えば地共済の標 準保険料率がございました。ほかに財源構成の方でも、一部の制度からデータが入らな かった経緯がございます。今回につきましては、そういうこともございましたので、各 制度に要求する資料というものを、なるべく早い時期に固めておきたいというふうに考 えているわけでございます。 ○堀部会長  それは是非ともよろしくお願いいたします。  渡辺委員どうぞ。 ○渡辺委員  我々数理部会としては、当然共済も対象としてやるわけですが、国共済、地共済の財 政単位の一元化がありますね。それと今の時点での資料と、財政単位の一元化になった 後の資料というのは当然異なってくると思うのですけれども、その辺についてはどっち を使うか、その辺について見解を教えていただきたいと思います。 ○田村首席年金数理官  今回、国共済、地共済は財政の一元化を目指して、財政単位を合わせるため財政調整 ということをやるというふうに聞いておりますけれども、財政調整をやるという前提で 再計算をするだろうと思いますので、再計算をされた結果を基に検証を行うということ になろうかと思います。 ○堀部会長  よろしいでしょうか。ほかはいかがでしょうか。  御意見もないようですので、議題の2の「技術作業委員会(仮称)の設置について (案)」に入りたいと思います。 議題 2.技術作業委員会(仮称)の設置について(案) ○堀部会長  今まで御議論がありましたように、年金数理部会での審議は数理技術的な事項が大き く係わってきます。そういった専門的事項については、事前に別の場で整理、検討し て、部会では、その報告を受けて議論するという方法がよいのではないかと考えまし て、事務局に検討してもらいました。  その検討結果について、事務局より説明をお願いします。 ○田村首席年金数理官  御説明します。資料3でございます。  今、部会長からお話がありましたし、先ほどの議論の中でも大分難しい課題がありま したけれども、かなり技術的な部分にわたる事項が多々ございます。これを検討してい ただかなければいけないのですが、この部会で議論していただく前に、今、会長がおっ しゃいましたように、事前に検討しておいた方がいいと考えました。  内容的には、「1 趣旨」にございますけれども、年金数理に関わる技術的な事項に ついて整理、検討するということをやりたい。そのために技術作業委員会というのを設 けていただいてはいかがかと思います。  委員の構成は、「2 構成」にございますけれども、部会の各委員のうち、年金数理 の専門家の4人の委員と、部会長でお願いしたいと思っております。  審議事項は、先ほど来のお話でもありましたが、「3 審議事項」にございますよう に、年金数理に係る技術的な事項ということで、具体的には、その下に6つばかり例を 並べました。  将来見通し推計方法の検証方法。  将来見通しに係る基礎率・基礎数作成方法の検証方法。  経済要素・人口要素の変動に対する財政の安定性の検証方法。  平準保険料、年金給付の財源構成などをどう検証するかという方法。  検証のために必要となる各種資料の項目とか、様式等々。  最後に、実績と将来見通しの乖離、これは第8回の平成13年度の公的年金財政状況報 告のところでやりましたけれども、その要因分析についても、もう少しいろいろな分析 方法があるのではないかということで、これらを御検討いただきたいと思いまして、技 術作業委員会の設置をお願いできればと思います。  差し当たっては、例が6つほどありますけれども、上の方の幾つかということになろ うかと思います。  技術作業委員会の設置に関しましては以上でございます。  それから、前回の部会で都村委員から年金扶養比率について御指摘がございました。 再度調査をいたしまして、平成14年5月の第5回の部会でお諮りをいたしまして、次回 財政検証までに、つまり、平成16年再計算の財政検証までに解決するというのが事務局 の宿題となっていました。  それにつきまして、いろいろ過去の状況を調ましたところ、昔の制度審の数理部会で の扱いでございますけれども、前回の部会でも山ア委員から御説明がありましたが、昭 和59年4月の第1次報告では、成熟度とともに、修正成熟度とか、換算成熟度というの を出しておりました。  ところが、第2次報告、昭和63年ですけれども、このときには、年金扶養比率という 数字だけになっております。この間の記録を調べましたところ、この間に基礎年金の導 入がありまして、この前も議論がございましたけれども、修正成熟度とか、換算成熟度 にしますと、年金の額が入ってきます。そうすると、基礎年金拠出金等の扱いをどうす るかというような概念が出てくる。  また、遺族や障害、それから通老も入れていきますと、だんだん複雑な概念になり、 最終的には、総合費用率に概念的に近くなってくるということが、その当時も議論され て、その結果、今、使っている年金扶養比率ということになったということになってお りました。  ただ、前回の御指摘もあり、宿題になっておりますので、この件につきましても、 今、御説明をいたしました技術作業委員会で検討していただければありがたいと思って おります。  以上でございます。 ○堀部会長  ただいまの御説明に対して、御質問、御意見があればよろしくお願いいたします。  それでは、御質問、御意見がないようなので、ただいま御説明のあったとおり、技術 作業委員会を設置することにしてもよろしいでしょうか。               (「異議なし」と声あり) ○堀部会長  ありがとうございました。では、異議がないということで、設置をするということに したいと思います。  委員会の委員の先生にはよろしくお願いします。  技術作業委員会の日程等は、今後事務局と相談して決めたいと思いますけれども、部 会における検証の在り方とか、あるいは要求資料についての議論に役に立つように、夏 ごろを目途に検討をお願いしたいと思っております。  委員会については以上ですが、先ほど議題1について忘れたのですが、項目の立て方 自体について、後で御意見を聞くと言ったのですが、それについても技術作業委員会で 御検討いただくということでよろしいでしょうか。 閉会 ○堀部会長  それでは、予定した議題について議論が終わりましたので、本日は、これまでにした いと思います。次回と次々回については、例年のように公的年金各制度の平成14年度の 財政状況について報告を受けることにしたいと思います。  日程等について事務局から説明をお願いします。 ○田村首席年金数理官  第11回、第12回年金数理部会の具体的な日程につきましては、事務局から各委員の御 都合をお伺いいたしまして、調整をさせていただきたいと思います。  その後、正式な開催の御案内を申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたしま す。  以上でございます。 ○堀部会長  では、本日はこれで終了します。                                     −了− (照会先)  厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室  (代)03-5253-1111(内線3382)