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社会保障審議会介護保険部会(第11回)提出資料


介護保険部会委員 秦 洋一



安全性の確保は? 再び介護移送について

 この問題については国土交通省との協力で「中間整理案」が出され、暫定的な方針が出されました。とりあえずセダン型、白ナンバーが正式に認められました。いわゆる“青白問題”が解決したことになり、厚生労働省の労を多としたいと思います。
 しかし、「中間整理案」で利用者の“利便”は前進したものの、利用者の“安全確保”については明確な方針がまったく出ていません。NPOであれ指定訪問介護事業者であれ、“ナンバー”の面よりはるかに大切なことは、「共通のきちんとした安全基準」を取得することではないでしょうか。「中間整理案」で安全性の確保に踏み込んでいないことは残念です。
 介護保険と障害者支援費とのドッキングが議論されており、移送の問題は通院にとどまらず、介護予防にとっても意義が高く、必ず再浮上するでしょう。自治体の役割も問い直されるでしょう。
 またタクシー業者が訪問介護事業所の指定を取って運営している通称「介護タクシー」も、平成15年4月の診療報酬改定で、100単位の「通院介助」が創設されましたが、少額であり、積雪など地域での実情を反映していません。
 “最終整理案”では、様々な矛盾をなくし、介護保険の名にふさわしい方針を出していただくよう要望します。(部会員:秦 洋一)


(参考資料)
 介護移送サ−ビスにかかる要望書

社団法人  北海道シルバ−サ−ビス振興会
交通協議会 座長 西野俊典


1.要望の背景

 高齢者が要支援・要介護状態になった場合、真っ先に困るのは、買い物や食事と通院等の外出である。前者の食事については、近年、各市町村とも配食サ−ビスが拡充されてきているところである。また、訪問介護で買い物・調理サ−ビスを利用することも可能であり、基本的な生活をする上での条件は、制度上急速に整備されつつある。しかし、後者の通院等の外出については、制度上不十分といわざるを得ない。介護予防・生活支援事業の中に、外出支援サ−ビスがあるが、市町村の委託事業であり、メニュ−事業であるということから、地域のニ−ズに応えられているとは言えない。また、市町村によっては、福祉タクシ−券を重度障がい者に配付する外出支援サ−ビスを行っているが、モラルハザ−トの問題がある。

 現在、介護保険制度の訪問介護の中にある通院介助を利用して、通称「介護タクシ−」と呼ばれている訪問介護事業所がある。タクシ−会社が訪問介護事業者の指定を取得して始めたものである。通院介助サ−ビスは、居宅介護支援事業所に所属する介護支援専門員が作成する個々のニ−ズに即した居宅サ−ビス計画に基づき行われ、サ−ビス実施後はモニタリングも行われるので、先の福祉タクシ−券と違って、サ−ビスの目的外利用は、制度上は防止されることになる。しかしながら、通称「介護タクシ−」は、介護保険制度上大きな課題を抱えている。

 介護保険制度における訪問介護は、「身体介護」「生活援助」「通院介助」の三つの類型であるが、訪問介護そのものは、介護福祉学からいっても、利用者の生活を支えるため、「自立支援」と「介護予防」の観点から、利用者の生活を買い物、調理、食事介助、排泄介助、入浴介助等広く総合的に支えるという体系化されたサ−ビスである。そのためにサ−ビス提供責任者は、訪問介護計画のなかで利用者の生活をアセスメントし、ニ−ズを抽出し、訪問介護サ−ビスの中身を細かく規定することになっている。しかし、平成15年4月、介護報酬改定のなかで「通院介助」が新たに創設されたが、制度上「介護タクシ−」対策という印象を否定することができない。

 「通院介助」による移送サ−ビスは、疾病の悪化を防ぎ身体機能を維持し、長期にわたる在宅生活の継続を可能とする。それは施設給付に偏りがちな介護保険財政を安定化させることにも繋がる。特に北海道のような国土の1/4を占める広大な面積を有し、過疎地を多く抱え、積雪寒冷という特殊性を兼ね備えた地域では、「通院介助」による移送サ−ビスを保障することは、介護保険財政の安定化、国民健康保険財政の安定化のために、必要不可欠である。

 しかし昨年4月に新設された「乗降者介助」100単位という単価に問題があり、このような低い単価では新たに通院介助を届出る事業者は現れないだろうし、現在行っている事業者も維持継続が難しい状況である。要介護状態にある高齢者が病院等に通院するという最も切実なサ−ビスである「通院介助」を新たな保険給付項目として仮称「外出支援給付」の創設を要望するものである。また、北海道における通院等外出支援は、生命に関連したサ−ビス事業の一つであり、その事業の継続性は、東京をはじめとした大都市圏と比較して、多くの労苦と経費が必要とされるものであることをご理解願いたい。

 次に平成16年2月に厚生労働省老健局振興課と国土交通省自動車交通局旅客課から「介護輸送に係わる法的取扱いについて」の「中間整理案」が出された。現状の訪問介護現場では、訪問介護員が運転手を兼務して利用者を病院等に移送する場合、利用者と現場の訪問介護員は常に交通事故と隣り合わせの状況にある。「介護輸送に係わる法的取扱いについて」の「中間整理案」では、指定訪問介護事業者が道路運送法に抵触する違法な行為を行った場合、当該介護サ−ビスについては、介護報酬の対象としないことと記述されている。この様な政策は歓迎するものである。


2.要望項目

(1) 介護保険制度の訪問介護における通院介助を新たな保険給付項目として、仮称「外出支援給付」として創設すること。
(2) 仮称「外出支援給付」には、過疎地域及び積雪寒冷地域における移送経費も対象とした加算を加えること。


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