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第4回「血漿分画製剤の製造体制の在り方に関する検討会」概要

日時: 平成15年9月19日(金)10:00〜12:00

 委員18名中14名が出席

 委員、参考人による意見陳述。

 主要な議論

【日本赤十字社における免疫グロブリン製剤の製造について】
 日本赤十字社が血液事業の中で行うべき仕事は色々在ると思うが、免疫グロブリン製剤の製造を開始するに当たり、プライオリティーの議論は行われたのか。また、日赤の製剤は、どうしても値段が高くなる傾向がある。
 以前、日赤はガンマ−Fという免疫グロブリン製剤を供給していた。その製造を中止したときには、日赤は国内自給に非協力的との非難を受け、その頃からの懸案事項として検討を進めてきた。小児科の臨床現場からも強い要求があった。製剤の値段については、スタート時点では各社とも同じ値段がつくが、日赤は余り値引きをしないので、それほど薬価査定を受けない。
 臨床の現場としては、新しい静注グロブリンをさらにどうしても作らなければならないという状況は認識していない。国内自給も進展している今、どうして今、差し迫った事業としてやらなければならないのかが分からない。
 実際に製造が始まるのは平成18年とのことだが、ガンマ−Fを中止した平成8年、現在、そして将来の国内メーカーのシェアの推移を踏まえて、説得力のある説明をしていただきたい。日赤が技術提携をして、高価な特許使用料も払いながら、新たなグロブリンの製造に踏み出した真意を知りたい。
 平成8年当時のプライオリティーとしては、ガンマ−Fに替わる製剤の供給が1番であった。その後海外各社と話し合いをしたが、なかなかまとまらず、昨年、ようやくバイエルと話がまとまった。なお、平成8年当時のガンマ−Fの国内シェアは1%未満である。
 本当にその1%のシェアを上げる必要があったのかは検討に値する。また、現在の免疫グロブリン製剤の自給率は、日赤以外の国内メーカーによって上昇している。将来的に、平成18年に、献血由来の製剤で90%の自給率を確保するというのは合理性がないのではないか。また、平成8年までの間にどのような見通しがあったのか。計画がかなり遠大ではないか。
 当時も何とかシェアを伸ばしたいと考えていたが、不活化をしていないということが致命的であり、止めなければならないということになった。その時に臨床現場で歓迎されるものを調べ、液状であるという結論に至った。当時にこのような検討会があれば、当然諮ったと思うが、当時は事業者だけで国内自給に懊悩していた。ただし、今回の取組は、平成8年から検討や交渉を進めてきたものであり、必ずしも今回急に決めた話ではない。
 この検討会は、日赤に免疫グロブリン製剤を製造するなという機関ではない。日赤が頑張らなくても国内自給率は上がっているし、日赤が他に取り組むべき事項はあるという意見があったということである。
 他にやるべきことも着々と実施していることだけは申し上げておく。
 日赤の製剤の価格は何故下がらないのか。
 薬価は、一般的に、医療機関や薬局に対して、現実の価格を調べて査定されている。日赤の製剤は他のメーカーに比べて値引率が低い。あとは、アルブミン製剤のように銘柄別に薬価を決めるか、第VIII因子製剤のように統一収載で薬価を決めるかという、決め方の問題だと思う。
 なぜ日赤の製剤の価格は高止まりして、その他のメーカー、特に輸入品の価格は下がっているのか。
 日赤の基本的な供給の方針として、価格競争には参加しないというのがある。輸入製剤と価格競争をすると、献血由来製剤も20%、30%値引きしなければならず、昔の際限のない競争の時代に入ってしまう。しかし、現実には、そのままの薬価では買ってもらえないので、ある程度の値引きはしている。
 値段を下げることによって安全性が犠牲になったり、将来の供給に問題が生じるなら別だが、そうではなく、競争すると価格が下がるのが嫌だ、というのは、少なくとも、ここに居る委員の納得を得られないのではないか。
 普通の民間業者であれば、売れなくてもいいから価格を高くしたり、どのような製剤を作ろうと自由である。しかし、やはり日赤は特別ではないかという気持ちがあるから話がおかしくなる。日赤は採血事業者と製造業者の二つの顔があり、採血事業については一種の独占企業であるが、ルールさえ守ればあとは自由、と考えれば、勝手にやってもらうしかない。価格を下げないのも自由である。しかし、何かの監督下にある、ただの業者ではないものがあるのであれば、価格を下げないのは問題といえばよい。そういうところが区別されてないと思う。
 グロブリンの製造は、いただいた原料血漿を有効に国民に還元し、より効率性の高い製造体制へ転換するために、やはり作らせていただきたいということである。また、日赤は企業ではないが、企業努力を重ねて効率性の高い製造体制に切り替え、下げられるものは下げていきたいというのが真意である。誤解なさらないようにしていただきたい。
 国内自給の問題として、日赤が特別な存在であるということは共通の認識であると思う。その日赤が、シェア1%の製品に、本当に1番のプライオリティーを置くのかという問題がある。やはり、日赤という大変に公共性のある組織は、患者の立場から見れば、例えばインヒビター製剤や第IX因子製剤などの問題について、もっと力をいれて研究していただきたい。
 1リットルの原料血漿から凝固因子とアルブミンしか作らなければ、どうしてもコスト高になる。同じ量の原料血漿から作れる限りの色々な物を作ればコストは下げられる。日赤は、今までグロブリンの原料を各メーカーに出していたというところにコスト高の一つの原因があると思う。国内メーカーは、フィブリン糊など色々な製品を作っているから、コストも安くなるし、競争力も出てくるのだろう。
 また、病院に口座を取る場合は、あらゆる製剤をすべて持っているところが取りやすい。各医療機関の中に問屋の数を減らそうという動きがあり、血液製剤の中のごく一部しか持っていないところは口座を取りにくい。山売り、山買いというように、化学製剤も含めて色々な薬を一山幾らで、という入札の仕方もある。利幅のあるもの、ないものを全部ひっくるめて入札をして、安いところに落ちるという競争原理がある。
 日赤は凝固因子とHBsグロブリンとアルブミンしか持っておらず、そういった意味では非常にやりにくい。献血供給事業団が分画製剤を販売するときには、免疫グロブリンを他のメーカーから仕入れて販売している。その意味では、今回のグロブリンの製造はコスト減に繋がると思う。
 日赤は原料血漿が全部ダブっているので、分画製剤は値引きしないで売るしかないという側面があるのだろう。製造体制の検討に当たっては、そういったことをすべて考えなければ国内自給は達成できない。
 ただ、現在、平成2年に旧厚生省が出された供給一元化の政策が進んでいる中で、中薬審でA案、B案、C案が提出され、C案は日赤案だった。なぜここで突如として、これらの案のどれでもない、外国のメーカーを通して日赤が販売するルートができてくるのかということに素朴な疑問を感じる。
 小児科の立場から申し上げると、確かに今はあまり緊急性はないが、例えば川崎病に使う場合、副作用その他の面で、グロブリン、ベニロンとは違った特徴がある。今までは輸入しか使えなかったところに献血由来のものがでてくるということは、ユーザーの立場からすればそれなりに意義がある。

【大平委員・花井委員からの意見書について】
 第2回目の検討会でもお願いしたと思うが、血漿分画製剤の製造・供給がペイする事業であるかをしっかり言っていただかないと、国内自給ということは検討できないのではないか。日赤を含めた国内メーカーがどのような展望を持っているのか。ペイしないのであれば国内自給は絵に描いた餅になる。話を聞いて考える場を設けた方がよい。
 血液製剤や血液の需給体制の議論は、色々なマスコミに取り上げられており、国民の関心が非常に高い。しかし、一般の方にとって非常に難しい問題である。実際の市場としてはどういうことが考えられて、メーカーの側ではどういう風に思っているかが一度も議論されていない。
 昭和50年に血液問題検討会の結論が出て、それ以降幾つもの検討会があったが、今日のような内容の議論はほとんどなかった。実際に値引きがあると言っても、血液行政の在り方に関する検討会では、もはや値引きがないということで、平成2年の供給一元化は現状に則さないという結論が導き出されたが、ここは製造供給体制に特化した検討会であるから、あらゆるものを実際に即した形で議論していただきたい。日本で作れないから輸入に頼るというような甘えは許されない。どんなに希少で採算が合わない血液も、入手するかを決めて、各メーカーも赤十字も安心して、できるだけ安いコストで取り組むことができる体制を作るしかない。
 基本的には、価格競争の中に、献血で供給一元化をするというのはそぐわないと思う。献血で国内自給をするということは、ある意味での統制経済の中に入れていくしかないと思う。その辺りを曖昧にしないで、議論をしていただきたい。
 国の責任の議論がなさ過ぎる。数が少なくてコストが高くつくものは市場としてはやめてしまう。もっと広い話として、国民の健康や生命を守るのは市場原理では無理である。血液製剤について、これだけ法律で決めてあるのであれば、市場原理では無理であるということを皆が認めなくてはいけない。日赤が一業者であるなら自由にやればよく、日赤たる者がというのであれば、その辺りをきちんとして、色々なことを決めてやるしか仕方がない。一部では日赤たる者がと言いながら、一部ではどうだというのはおかしい。業者を呼んで展望を聞くということではなく、国がきちんと展望を出すべきで、それに従ってやるしか仕方がない。
 国が法律を決めて実施しているのだから、国の何らかの支援は必要だろうが、そこへ行く前に実際はどうなのかが分からないと、どこまで国が関与していくかが見えてこないのではないか。少なくとも、日赤を含めた血漿分画製剤の供給者は本当にしんどいのか。本当に事業として成り立たないのか。それが分かれば、十分な展望が見えてくると思う。最初から国がどうなっているかと言うのは、少し合わないところが出てくるのではないか。
 この問題だけでなく、日本が直面しているのは、昔であれば公が担ってきたものをどんどん切り離して競争原理に持っていくという全体の流れの中で、どのようなルールを立てていくかということである。その中でこの問題について出発するには、やはり現実がどうなっていて、どういう問題があるかというところから出発して、どのように公的なパブリックなものへ持っていくかを議論しなければならない。
 総合的に考えた場合に、すべての条件を満たす解などあり得ない。公的な部分、国の責任、民間業者の責任、どこの責任と言うように、日本社会はすべて他に要求しがちであって、それぞれの立場からの意見にはそれなりの理由がある。一元供給を求める意見を追及すると、先ほど値段を下げない原則があるという話があったように、かねてから主張している独占供給価格体制になる。統制経済もしかりである。果たしてそれで良いのか。国家統制とか、独占的事業に任すと、結果として、血液製剤を使用する患者や、大勢の国民に大きなマイナスを及ぼすことになると思う。やはり自由主義経済の中でそれぞれ関与しながら、理想に近づける努力をしなければならない。
 まずは現状がどうなっているかを確認しなければならない。グローバル化への動きがとうとうと流れている中で、すべて自由競争とした場合に問題があるのかどうか。それは将来的に考えなくて行かなければならない。
 昭和39年の閣議決定のときは売血が90%、献血はわずかに数%だった。延々と約40年努力した結果,ようやく国内自給が法律にも載った。輸血については100%自給を達成して、あとは分画製剤の問題になっているが、それも長い努力によって、国内自給率が伸びてきたのである。その大きな議論の中にも、国民の協力があって血液が集るのだから、その国民の善意を裏切るような答えを出していただいては困る。その辺をはっきりして、問題を処理していただきたい。

【その他:青木委員の意見書について】
 10年前の日本の血漿分画製剤の国内自給率は25%だった。それが昨年は60%にまでアップしている。これは血液法による名分もない時代の話である。何のルールもない中でここまで来た現象をどのように説明されるのか。社会統制や価格統制をしなくても、あと40%については、日赤と国内事業者で努力をするし、並行して、血液法に基づく適正使用などの取組を実施することによって、間違いなく達成可能と思っている。
 まず現状認識を共通にして、そこから議論を始めようという点については納得。しかし、平成2年のデータを出されても、現状認識としては物足りないと思う。事務局は、現時点でのデータを調べていただきたい。また、日赤の1リットル48000円という価格がリーズナブルなのか、どうしてもそれだけかかるのか、ということも現状認識としては必要と思う。
 医学的な観点から見た血液製剤の機能や品質の評価については、国内の献血由来のものが海外に比べて絶対に良いという議論は成り立たない。国内自給を達成すること、客観的に品質をどう考えるかは別の議論としておいたほうがいい。
 平成2年ではなく、現在の日赤のコストの構成、国内の製品の品質について、事務局で調べていただきたい。
 日赤はどうしても高コスト体質があると思う。48000円の採血コストが下げられる余地があるのかを是非検討いただきたい。また、国内メーカーや日赤が国内自給を達成できるのかについては、決意表明ではなく、実際問題としてできるかどうかを是非重ねて検討していただきたい。
 我々が議論するに足るだけの資料を事務局にお願いするということと、日赤のコスト構造についても資料の提供をお願いしたい。
 血漿分画製剤にはどういうコストがあって、どのような負担になっているのか、国民の目では分からないところが多々ある。そういうところをオープンにするべき。最終的には、血漿分画製剤の製造が適正に位置付けられるかが重要なポイント。そういった面での新しい資料、コストが換算できるような資料を提供して欲しい。
 これまで内在していた問題が改めてこの場で色々と出てきていると思う。現実を直視するということで、国内メーカーの実態、国内血を外国の企業が使うことも含めての実態、可能性を直視したいと思う。
 日赤は特殊法人改革から外れている。実質独占になっているし、よほどきちんと開示しないと、どうしても疑われる状態になる。コストの推移も含めて、透明性をできるだけ確保していただきたい。
 輸血用血液製剤は善意の人から血液を集めて成り立っている事業であるから、やはり日赤のような公的機関がやらないと、今ひとつ信用がないということがある。一方、血漿分画製剤になると、海外の血漿は自由に入ってこられる。国内企業の製造方法も様々である。やはり緩やかな企業原理が入ってくる部分ではないかと思う。そういうところに、公的機関である日赤がどの程度関与するかというのが議論の対象になろう。非常に希少的な疾患に対する薬というものは、やはり公的な機関が行うべき仕事ではないか。また、日赤は国家を代表する公的機関の一部であろうから、採血のような、比較的利益が薄く、国民の利益になる部分を担当するのが妥当ではないか。

【その他:「むさしのヘモフィリアの会」要望書について】
 もしコンコエイト−HTがなくなると、フォンビルブランド病の製剤はコンファクトFの1剤だけになる。国内血で2剤作れるようになったから、ヘマーテPという輸入血漿由来の製剤の輸入を中止したという経緯を考えても、コンコエイト−HTがなくなることは、クリスマシンMも含めて非常に大きな問題である。2剤を残すような要望を、厚生労働省の方に発議していただきたい。
 この要望書はこの検討会あてではなく、厚生労働大臣に提出されたもの。本検討会としては、このような問題も視野に入れて、検討を進めたい。

(了)


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