04/02/23 第９回社会保障審議会年金数理部会議事録


　　　　　　　　　　　　　　　　　　 第９回
　　　　　　　　　　　　　 社会保障審議会年金数理部会


　　　　　　　　　　　　　 平成１６年２月２３日（月）
　　　　　　　　　　　　　　　　厚生労働省年金局


時間　：平成16年2月23日（月）14:00～16:00
場所　：厚生労働省　専用第２２会議室（１８階）
出席委員：
　堀部会長　都村部会長代理　栗林委員　近藤委員　田村委員　林委員　宮島委員
　山﨑委員

　議事次第
　１．財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について
　２．平成１６年財政再計算に基づく財政検証について
　３．平成１６年年金制度改革案について
　４．平成１６年財政再計算の考え方について


開会

○田村首席年金数理官
　第９回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
　審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
　座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
　まず、資料１は「『財政状況に間し公的年金各制度から報告を求める事項』に関する
指摘事項とその対応案について」でございます。
　資料２「平成16年財政再計算に基づく財政検証について」でございます。
　資料３－１から資料３－８は平成16年年金制度改革案に関する資料でございます。
　資料４は「平成16年財政再計算について」でございます。
　このほか参考資料として、平成15年３月末における「公的年金制度一覧」をお配りし
ております。
　配布資料は以上でございます。
　次に本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は渡辺委員が御欠席との
ことです。御出席いただきました委員が３分の１を超えておりますので、会議は成立し
ていることを御報告申し上げます。
　なお、局長は本日国会の関係で、また審議官は所用により欠席させていただいており
ます。
　それでは、以降の進行につきましては、堀部会長にお願いいたします。

○堀部会長
　本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日の議題はお
手元の議事次第にありますように４つでございます。
　それでは、最初の議題「財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項につい
て」の議事に入りたいと思います。


議題
１．財政状況に関し公的年金各制度から報告を求める事項について

○堀部会長
　また、例年のように、公的年金各制度の平成14年度の財政状況について、報告を求め
るということになりますけれども、それに先立ちまして、平成13年度の報告を受けた際
に検討の必要があるとされた事項がありましたので、事務局からその対応案について説
明していただいて、審議をすることにしたいと思います。
　それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○田村首席年金数理官
　御説明いたします。資料１をごらんいただきたいと思います。
　昨年、平成13年度の財政状況を各制度からヒアリングをしていただきましたときに、
幾つかの宿題をいただいております。宿題は資料１の１ページにございますように、３
つあったと思います。それぞれ左側がその内容で、右側が対応案ということで考えたも
のでございます。それぞれにつきまして、簡単に御説明をしていきたいと思います。
　１番は、積立金に関連するものですが、時価ベースの評価をしなければいけないとい
う点でございます。これにつきましては、その右側の対応案にございますように、平成
14年度からは全制度で対応していただけるということになりました。
　ただ、後で御説明いたしますが、報告要旨の中に欄を設けるということで対応したい
と思いますが、なお書きにございますように、時価ベースということになりますと、特
にそこにあります運用収入、収支残、運用利回りに関しましては、前年度末と当年度末
の両方が必要になってきます。２年分必要になりますので、14年からスタートいたしま
しても、もう１年ずれるということになります。
　その計算方法等は簡単に書いてありますが、２ページの上１番のところに運用収入、
収支残、運用利回りというのを記してございます。これは１年遅れになりますが、こう
いう形で計算をして出していただくということにしたいと思います。
　なお、一番下にありますように時価ベースの運用利回りは修正総合利回りで見ていき
たいと思っております。
　その報告様式としては、７ページにございますが、横長の紙で各制度の、例えば平成
14年度財政状況の概要という様式の中に、括弧書きをしてあるところに数字を入れてい
ただきます。したがって、括弧外は簿価ベースの数字が入ってきまして、時価ベースを
括弧書きで書いていただくという形にしたいと思っております。
　なお「正味運用収益」というのがございますが、これは下の注にもございますが、現
在有価証券の売却損等、つまりキャピタルロスについては、運用収入のところではカウ
ントしていないということですので、ここに含めて再掲をしていただくということにし
たいと思っております。
　１ページに戻っていただきまして「２　職域部分を除いた財政指標について」という
項目でございます。これにつきましては、共済年金につきましては、厚生年金と比較を
するために、職域部分を除いた財政指標を作成しておりますが、その職域部分の除き方
の点からか、厚生年金相当部分と比較した場合、職域部分の費用率、総合費用率とか独
自給付費用率を分析するときに、職域部分費用率の割合が非常に低いのではないかとい
う御指摘がございました。これに関しましていろいろと考えまして、１つの問題点は、
追加費用の除き方であろうと考えまして、ここでは厚年相当というか、そこに使うとこ
ろの追加費用の推計方法を変更するということにいたしました。詳細は２ページ以降に
書いてございますので、それに沿って御説明をしたいと思います。
　対象となるのは、国家公務員共済組合と地方公務員共済組合の２つでございますが、
データの点から、平成14年度については、それぞれ以下に述べるような別々の方法を取
っていきたいというふうに思っております。
　まず国共済でございます。２ページの２．という真ん中辺りに書いてございますが、
厚生年金相当給付費は、共済年金の中から厚生年金相当を推計しているものでございま
すけれども、まず、その話の前提といたしまして、厚生年金と共済年金で給付の計算方
法が若干違っているということを御説明したいと思います。先生方はもうよく御存じと
は思いますけれども、理解の前提となりますので、御容赦をお願いしたいと思います。
　厚生年金はその２．の（１）の１つ目の○にありますように、平均標準報酬月額（再
評価後）の数字に加入期間を掛けまして、現在の法律だと1000分9.5～7.125という数字
を掛け、それに定額と加給を加えるという計算方法になっています。
　一方、共済年金はやや複雑でして、退職時、裁定時によって若干異なっています。そ
の下の○の後に「新共済年金」と「旧共済年金」と分けて書いてありますが、昭和61年
以降は、上の新共済年金という形で厚生年金とほぼ同じような計算式で計算をされてお
ります。
　ここで２行目に括弧して数字の分数が書いてありますが、左側が上の厚生年金と同じ
で、右側が職域部分と言われるものでございます。0.475～1.425まで掛けるというもの
でございます。
　これはごらんになってわかりますように、年齢の高い人については0.475という若干
低目の数字になっている。通常ベースで7.125、1.425ということで、ここで２割になる
という形でセットをされています。
　蛇足でございますけれども、その右側の小さな括弧でくくってある「0.238～」とい
うところは、加入期間、すなわち公務員であった期間が20年に満たない方については、
この乗率になるということで、数字的にはちょうど半分の数字になっております。それ
に定額と加給が付くという形が今の我々の状況でございますけれども、昭和61年３月ま
での決め方はどうだったかというと、その下にあります２つの方法の高い方を取ってい
ました。その２つの方法と申しますと、通年方式と一般方式ですけれども、通年方式は
厚生年金にほぼ近い方式で、その当時の乗率1000分の10、0.01に退職前１年間の平均俸
給を掛けまして、加入期間を掛けて定額を足すということで、その当時の厚生年金と同
じ形になってございます。ここで俸給というのは、本俸でして、超過勤務等を含まな
い、報酬とは若干違っています。
　一方、一般方式というのは、後でも御説明いたします恩給とほぼ近い形でございます
けれども、２ページの一番下にありますように、退職前の１年間の平均俸給年額に各期
間に応じた給付乗率を掛けて算定するという形になってございます。
　３ページの頭に恩給等の期間を持っている方についての計算式がございます。ここに
は恩給、その下に旧長期組合員期間と書いてございます。その下に新法期間とありま
す。新法期間は最後に御説明した中身ですけれども、恩給は恩給公務員、旧長期組合員
というのは、雇傭人と言われる方々だと聞いておりますけれども、恩給法を適用されて
いないで役所に勤められていた方に対する年金制度ということです。それぞれにつきま
して、そこにあるような計算式で計算するという方法になっている。
　では、今、一番問題になっている恩給公務員の期間の扱いというか、追加費用の扱い
はどうなっていたかと言いますと、恩給公務員期間を持っている方につきましては、新
法期間を持っている場合でも、その全期間を合算して通算した上で恩給の方から詰めて
いくというような計算方法でやられていたというふうになってございます。
　このような中で、厚年相当水準を算定しているわけですけれども、この厚生年金相当
水準というのはどうなっているのかというのが３ページの（２）にございます。平成13
年度のヒアリングまでで使っていたのは、そこにありますように旧三公社の支援措置で
各制度への分担金を算出するために用いられている数値がございましたので、それを使
用しております。
　これは三公社の支援の分担に当たりまして、各制度の成熟度の差、「すなわち」と書
いてありますけれども、各制度の給付を厚生年金の水準にそろえた場合の負担の重さを
比較するために推計されているものであります。したがって、実際に給付されている年
金額とは直接の関係はないという性格のものでございます。
　具体的には、３つ目の○にありますように、再評価後の平均標準報酬月額を計算いた
しまして、加入期間をかけて厚生年金と同じ給付乗率を掛けて全体を出します。それを
期間按分、恩給公務員期間を持っている方はその期間と新しい法律の期間で期間按分を
いたしまして、恩給期間を除く。その(2)に定額と加給を加えまして、厚生年金相当水
準を計算しているという状況になってございます。
　一方、追加費用の算定の際にはどうしているかと言いますと、一番下の（注１）にご
ざいますけれども、各個人ごとに年金裁定時に、先ほど御説明しました方式で恩給公務
員、それから旧長期組合員期間の年金額と、新法年金額、期間の年金比率というのを持
っていますので、それで按分して出しているということでございます。
　それでは今回どうしようかというのが４ページになります。絵が３つほど描いてござ
いますが、左上が平成13年まで報告を受けていた形でございます。厚生年金方式で全体
の額を算定しまして、期間按分で厚生年金相当であるとみなされる部分を推計をしてお
るというところでございます。一方、決算ベースというか、各共済の職域部分を含んだ
ものから報告を受けている数字は上の右側にありますような絵で分担をしておりまし
て、全体を各期間にかかる年金額で按分をしているという形になります。
　そうしますと、先ほどの計算式でもおわかりだと思いますけれども、古い方から期間
を使っていきますので、年金額で見た方が過去の期間が多くなるという傾向がございま
す。したがって、それぞれを持ってきて、いろいろな費用率等を計算しますと、ちょっ
と変な形になるということで、昨年御指摘をいただきましたので、今回国家公務員共済
組合につきましては、この上で厚生年金方式で額を算定したものを、追加費用という
か、期間にかかる年金額按分で分けようということにしてございます。それが国共済に
関連する対応案でございます。
　地共済についても、本当は国共済と地共済は横並びで一緒にした方がいいのですけれ
ども、現在、手に入るデータ等々の関係から平成14年度につきましては、別の方法でお
願いしたいと思っております。その対応が４ページの下から書いてございます。地共済
につきましては、まず職域部分を分けましょうということです。５ページに式があり、
(1)と(2)というのが上の方にあると思います。これも共済の裁定時点が新しいか古いか
によって、考え方を変えまして、新共済年金につきましては、年度末時点の年金額、左
側の支給額が全体ですけれども、それを年度末における年金額、これも受給権者ベース
で見た年金額、それの全体と、その方々の職域部分の比率で全体の支給額を分けたらど
うかということでございます。
　旧共済年金につきましては、職域部分に相当する給付費を推計するという形で旧共済
の支給額に一定割合をかけたらいかがかなということです。その一定割合といたしまし
ては、（注４）にありますように、10／110という数字を掛ければどうかと思っており
ます。
　全体から(1)と(2)を差し引いたのが職域部分を除いた給付費ということで考えればど
うかと思っています。
　それを推計するためには、次に追加費用部分を取り除かなければいけない。その追加
費用を取り除く方法としても、また、比例配分ですけれども、５ページの一番下に２行
ほど式がありますが、こういう方法で職域部分を除いた給付費に係る部分の追加費用を
推計いたしまして、今求めた(3)のところから差し引けばどうかなということでござい
ます。その職域部分を除いた給付費に係る追加費用というのは、一番下の式にあります
ように、発生ベースの追加費用に一時金を除く給付費分の職域部分を除く給付費。発生
部分の追加費用というのは、これは統計でわかってきますし、右側のものは、前のペー
ジの全体分、要は上と下に職域部分と全体を分ける。その比率で分けてしまおうという
形になります。
　そうやって上の絵のように右左分けまして、右側の四角の右側部分、白いところを今
回の推計で使おうということにしたいと思っております。
　残りが６ページに書いてございますけれども、公経済負担、基礎年金拠出金に係る額
は当然抜いておりますし、それ以外に古い方、昭和36年以前の公経済負担もありますけ
れども、それにつきましても、追加費用における考え方と同様に、給付費で按分をし
て、職域部分を除いた給付費に係る公経済負担を算出しようと思っています。
　それぞれを差し引きまして、ここで使う厚生年金相当であるとみなされる給付費を推
計しようということがこの今回の方法でございます。
　両制度からの報告の様式というのは、８ページ、９ページに付けてございます。８ペ
ージが国共済からの報告で、厚生年金相当給付費というところが変わってくるというこ
とになります。９ページが地共済の変更案の内容で、ここではトータルと職域部分を除
いた給付費というのが出てくるという形になります。
　それから、最後３つ目の宿題といたしまして、「年齢構成の影響を除いた賃金上昇率
」というのかございます。資料１の一番最後にワークシートがありますので、それで御
説明したいと思います。
　この標準報酬月額の上昇率につきましては、決算で報告を受けているわけですが、そ
れを再計算と比較する場合に、年齢構成の影響を除いたものが必要だという御指摘があ
ったと理解しております。再計算では賃金上昇率何％ですよ、というのは全年齢にわた
ってその率で増減するというふうに設定されて計算されている。年齢構成の変化による
賃金の動きは、この上昇率にはカウントされていなく、計算上別に入ってくるという形
になります。
　一方、平成13年度までの決算のヒアリングの際には、年齢構成の変化を気にせずに、
それも含んだ全体で算定をした数字をいただいております。そこで厳密な比較のために
年齢構成の変動による影響を除いた標準報酬月額の上昇を求めたいということでこうい
うような計算シートを考えて、その計算シートの方法で計算をしていただきまして、報
告をしていただこうと思っております。
　内容はそこにありますけれども、各年齢別に見ましても、(1)ｎ年度末、ここに当年
度末の組合員数を書いていただく。
　(2)は前年度末の年齢別の標準報酬月額の平均を書く。
　(4)が当年度末の年齢別の標準報酬月額の平均を書いていただく。
　(3)は(1)当年度末組合員数×(2)前年度末の平均。
　(5)が(1)当年度末組合員数×(4)当年度末の平均ということで、(3)と(5)を出してい
ただきまして、それをずっと足し上げて合計したものが下の(6)と(7)になります。(6)
と(7)の伸び率で年齢構成の変動による影響を除いた上昇率にしたいと思っております。
　ちなみに、ちょっと混乱するかもしれませんが、昨年度までは(2)×(1)、人数が、前
年度末の数字だったということで、それに対応する対比だということになります。
　説明は以上でございます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。それでは、ただいま説明があった事項について、質
問なり御意見なりがあると思いますので、よろしくお願いします。
　国共済と地共済の違いは、この数式ではこういうことなのでしょうけれども、具体的
に言うとどういうことなのでしょうか。

○田村首席年金数理官
　具体的に言いますと、国共済の方は、決算の数字にかなり近い数字が出てくるだろう
という感じがいたしております。
　地共済につきましても、できるだけ決算と合わせるという方向で知恵を絞ったのです
けれども、データの制約もございまして、こういう形になりました。まず職域部分を除
くというところで、前年に比べまして、大分改善するだろうと思っております。取る順
番が違っており、追加費用などは全体で按分していますので、その辺、若干取りこぼし
はあるかと思いますけれども、そこにつきましても、前年御指摘いただいたよりは一歩
前進するかなと思っています。

○田村委員
　今のところで特に国共済、地共済がどう違うかよくわからないのです。順番は大して
関係ないようなのですけれども、例えば地共済の方は先に職域部分を除くのですね。後
で追加費用を分けるということになっていて、順番が違うのは確かなのですけれども、
何か少し国共済の方と違っているのです。共済組合は３つしか残っていないのに、その
うちの２つの共済組合の間で取り扱いが違っているのは具合が悪いのではないかと思い
ます。どうして同じ方式が取れなかったのですか。

○田村首席年金数理官
　14年度はこういう形でお願いしたいということでございまして、その後はまたもうち
ょっといいように考えたいと思っております。

○堀部会長
　先ほどデータの不足のためという説明がありましたが、制度的な違いは関係している
のですか。例えば地共済の場合、さまざまな共済に分かれていますね。データ不足のた
めだけなのでしょうか。

○田村首席年金数理官
　制度的には先ほど国共済で御説明したようなのとほぼ同じだと理解しています。
　データの点というのは、今、部会長おっしゃいましたように、地共済はかなり多くの
保険者に分かれておりまして、その辺で難しい点があるということでございます。

○都村部会長代理
　70歳以上のところは、今度の改正でも、給付費調整の実施という項目が入っています
ね。ある程度の数があるのかなと思うのですけれども、それまでは全部各歳で、70歳以
上は一括ですか。

○田村首席年金数理官
　これは一括のつもりです。平成14年ですので、16年からはそこは考えなければいけな
いかと思います。15年まではこの形で大丈夫だと思っております。

○都村部会長代理
　しかし、数としてはかなりある可能性もあるわけですね。組合員と書いてあるけれど
も、これは厚生年金もそうですね。年齢構成の影響を除くのは、すべての制度について
ですか。

○田村首席年金数理官
　先ほど申しましたけれども、少なくとも14年度は全部69歳までになっています。

○都村部会長代理
　わかりました。この３点以外でもよろしいですか。

○堀部会長
　どうぞ。

○都村部会長代理
　各制度から報告を求める事項の中に、年金扶養比率が入っていますね。これは分子の
方は被保険者総数ですね。分母の方は老齢・退年相当の受給権者となっております。遺
族年金と障害年金が分母の方に入っていないのですけれども、この前の報告を拝見しま
すと、遺族年金の受給者数は老齢退年相当の受給者数の約40％いるわけなのです。私学
共済などでは68％という高い数字になっているわけですね。これまでの遺族年金の受給
者というのは、被保険者の死亡によるものが多いということを読んだことがあります。
年金扶養比率の算定において、分母に遺族年金と障害年金の受給権者を含めますと、こ
の比率がこの前の報告で厚生年金では3.33であったのが2.93になります。国共済は1.85
で低かったのですけれども、それが更に1.32ともっと低い比率になるわけですね。地共
済では2.24が1.66になる。私学共済では5.65が3.52というふうに、2.13ポイントも下が
るわけなのです。
　費用の方から見ましても、遺族年金の年金総額の増加率というのは、老齢退年相当の
年金よりも高い率で増加しているわけです。賦課方式では、年金扶養比率というのは、
財政面の安定性を評価する場合の非常に重要な指標の１つになっているわけです。確か
に老齢年金に比べて遺族年金と障害年金の対象となるリスクというのは、予測が困難だ
という点はあるかもしれないのですけれども、実際にそれを含めた数字を見ますと、や
はり年金扶養比率の分母を老齢退年相当の受給権者のみで算出することが適切なのかど
うかという点がちょっと気になるのですけれども、いかがでしょうか。

○田村首席年金数理官
　それについては御指摘の御趣旨は非常に理解できますけれども、年金扶養比率、かつ
ては成熟度と言っておりまして、逆数になるわけですが、それを計算する際には、一人
前の年金を相手にしようということでやっておられたように聞いております。その辺、
遺族、障害、そこに含んでおりませんが、20年未満の昔の通老相当につきましては、年
金額がやや低いものですから、頭割りで入れるのはちょっとオーバーになるということ
もあって、今のような考え方が導入されていると思っております。
　そうなりますと、例えば年金額で比較するとか、そういうことも考えていかなければ
いけないことになろうかと思います。

○堀部会長
　この問題は、記憶が余り定かではないのですが、過去３年間ヒアリングをしたときに
も、議論になったと記憶しております。社会保障制度審議会の年金数理部会の当時から
こういう指標を使っていて、その当時からもこういう議論はあったと思うのですがどう
でしょうか。

○山﨑委員
　総理府の数理部会では、第一次報告ので、成熟度は老齢年金のみで遺族年金、障害年
金等が反映されていないこともあって、遺族年金、障害年金もすべて合算し、老齢年金
の一人当たり平均額で総額を割り算しまして、老齢年金の何人分に相当するかという数
字を出し、それを修正成熟度としました。
　修正成熟度という言い方で人数を額に換算してやったことがあります。それ以後の報
告では修正成熟度は人数ともつかないし、成熟度というのもおかしいのじゃないかとい
うことで現在の年金扶養比率に変わってきております。

○堀部会長
　どうしましょうか。とりあえず平成14年度はこの３つの修正をした上で各制度所管省
に報告を求めることとし、少し時間がありましたら、今の問題についても後で検討して
いただくということで進めさせていただいてよろしいでしょうか。
　あとはいかがでしょうか。先ほどの国共済と地共済の問題についても、説明が理解で
きなかったという面もあるのですけれども、その点もまた検討を要するということでし
ょうか。

○山﨑委員
　地共済は裁定が各県にまたがっているわけです。国共済だと連合会だけで裁定してい
ます。額も個人ベースでつかまえられる。地共済は各県が保険者として裁定しているわ
けですから、おそらく統計が国共済みたいには、簡単にはつかまらないと思うのです。
保険者が多いため、どの様に調査するのか、統計の取り方から決めていかないと難しい
のじゃないかと思います。

○堀部会長
　ということで、平成16年度に行うヒアリングについては、この修正した形でというこ
とでよろしいでしょうか。それでは、そういう形でお願いしたいと思います。
　次に、議題２「平成１６年度財政再計算に基づく財政検証について」でございます。


議題
２．平成１６年財政再計算に基づく財政検証について

○堀部会長
　年金数理部会は各年度の財政検証の報告だけではなく、財政再計算の財政検証も行う
ことになっております。検証のために各制度に求める資料の検討を始める時期であると
思います。
　今日は検討事項としてどのようなものがあるのかを確認したいということで、検討項
目と考えられるものを事務局につくっていただきました。それを説明してもらって、そ
の後でこの検討の予備知識となる平成16年の改正について、議題３、４ということで説
明を受けることにしたいと思います。
　この議題２につきましては、来週にまた年金数理部会を予定しておりますので、具体
的な議論は議題の３、４が終わってから行うようにしたいと思います。
　それでは、検討項目について事務局より説明をお願いいたします。

○田村首席年金数理官
　それでは資料２について御説明したいと思います。年金数理部会では、今、部会長か
らお話がございましたように、各被用者年金制度の安定性及び公平性の確保に関しまし
て、財政再計算時における検証を行うということになっております。
　この再計算の検証につきましては、前回のこの部会でも御指摘がございましたが、今
回、年金制度改正が行われまして、財政運営の方式が従来と異なってくる。制度改正と
再計算の考え方につきましても、この後で説明がありますけれども、財政運営か変わる
ことによりまして、この検証につきましても、従来と異なった形になるのではないか、
今までだと給付が確定しまして、その上で保険料、もしくは掛金率の検討、それから比
較をするという方法でやってきましたけれども、それができなくなるのではないかと思
います。
　そこで再計算のヒアリング及び検証というのは、もう少し先になりますけれども、そ
の検証の在り方、それから方法などを検討いただきまして、必要なデータを各制度にお
願いしなければいけません。本日の資料２というのは、その議論のための資料という形
で作成をしてございます。したがって、かなり簡単に書いてございますので、その辺お
含み置きをいただければと思います。
　まず、資料の１ページ１の「検証の在り方」です。年金制度の安定性及び公平性の確
保に関し、財政再計算の検証をお願いするわけですが、その内容としては、安定性と公
平性というのがありますが、その検証に使用する計算自体も検証するという必要がある
と思っております。
　「（１）将来見通しの推計方法の検証」というのがそれですが、各制度が作成された
将来見通し等が、年金数理的に妥当かどうかを見るものでございます。安定性、公平性
は、その将来見通しをもとにして検証するわけですけれども、もとがぐらぐらしている
と困りますので、そこが確実だということをまず確かめてからいきたいと思っておりま
す。
　具体的にはそこにありますように、再計算の将来見通しの算定では、どんな基礎率や
基礎数を使っているか、また使うべきか。その基礎率、基礎数の算定作成方法がどうな
っているかということについてお聞きし、検討しなければいけないと思っています。
　また、財政見通しを作成する計算過程につきましても、検証をする必要があるのでは
ないかと思っています。特に厚生年金、国民年金では、保険料を先に決めましてから、
給付を変化させていくという従来と異なった考え方になっていますので、どのような点
に着目をしてヒアリングをし、検証するかという問題点があります。
　また、共済制度では給付水準は厚生年金と同様とするけれども、掛金率は各保険者が
定款で決定するなど、若干違った形になるように聞いており、その状況によっても検証
が変わってくるのではないかと思っています。
　そのような中で特に詳しく聞く事項といたしまして、この前御了承いただきました平
成13年度の公的年金財政状況報告の中で、再計算との比較をして実績との乖離が大きい
というように何点か指摘をしていただいておりますけれども、その項目について今回ど
うしたらよいかというようなこと。それから、今回の制度改正への対応はどうされてい
るかということ。あと一般的な最近の動きですけれども、女性の職場進出とか、高齢者
雇用の進展をどう見込んでいるかということ。それから、総報酬制が動き始めておりま
すので、その実績を踏まえた見込み方などが考えられるのではないかなと思っておりま
す。
　次に「（２）安定性の確保に関する検証」です。安定性というのは、一言で言います
と、年金財政が破綻に至ることなく、安定的に運営していけるかどうかというのを検証
するものです。ここでも制度改正によりまして、財政運営の方法が変わってきておりま
すので、従来のように保険料率の変化に着目した安定性の議論というのは難しくなって
きているのではないかと思っております。
　そこで新しい財政運営の考え方、方式に合った検証項目、それから財政指標の開発な
どが必要になろうかと思っています。
　（２）のところに○が幾つかありまして、１つ目と２つ目の○はそういう疑問点で
す。３つ目に「○例えば」というところで、こんなことはどうかど書いてありますが、
安定性の検証といたしましては、まず経済変動や人口変動に対する財政の安定性の検証
が考えられます。つまり（１）で見ました基礎率、基礎数は出発点だけですから変わり
ませんけれども、基礎率が予定より変動した場合に、財政がどれくらいふらつくか、ど
れくらい安定なのかというのを見たいということです。
　それから、次は今回の制度改正が財政収支にどれくらい影響を与えたかということを
見るというのがあろうかと思います。
　３つ目のポツですけれども、今回有限均衡方式ということで、約100年後の時点での
積立水準が給付の支給に支障がない程度、大体年金給付の約１年分と聞いていますけれ
ども、それくらいにするような財政運営にするということになっていますが、安定性の
観点からいたしますと、その100年という期間が終わった後どうなるのかなというのを
見ていく必要があるのではないかと思っています。
　なお、前回の平成11年の財政検証におきまして、安定性という考え方は、その１ペー
ジの一番下の※のところにありますような考え方でやっていただきました。この時は給
付が決まりまして、保険料を後で決めていくという形になっていましたので、安定性と
いうのは、保険料が急激に引き上げられたり、負担可能な水準を超えたりすることな
く、保険料収入が確保され、年金給付が将来にわたり確実に支払われるということが安
定だということで、その下から次のページにあります各ポツのような内容を検証してい
ただいておりました。
　２ページの（３）が公平性に関する検証です。公平性は前回の検証では制度によって
給付と負担の間に大きな差がないこと。そこの真ん中辺りにありますように、制度間で
同じ年金給付に対する保険料水準に差はないということを検証しました。そのために具
体的にはそこのポツにありますように、最終保険料率、それに至る途中段階の保険料率
を制度間で比較し、どの制度をどの辺で上げるべきか。それから最終保険料に比べまし
て、途中で急激に上げるのはどうかというようなことを検証していただきました。
　それから、同じ年金給付ということで、２つ目のポツにございますように、職域部分
を除いた場合の最終保険料率の比較をしていただきました。
　今回、制度改正により財政運営の考え方も変わるわけですけれども、これらの公平性
の考え方を変える必要があるのかどうか。また、それに合った検証項目、内容を変更す
る起点は何かという辺りについて検討していかなければいけないなと思っております。
　また、この公平性につきましては、一元化というものもにらみながら動かなければい
けないという気もしております。財政状況が同じというのはどういうことなのか。積立
金はどのくらいお互いに持っておかなければいけないのかということも頭の端には置い
ておかなければいけないと思っております。
　次の（４）ですが、これは年金給付の財源構成と書いてございます。これは前回こう
いう項目で項を立てて検証をいただいておりますけれども、前回平成11年の検証の際に
は年金給付につきまして、過去期間分と将来期間分に分けまして、収入や支出の現在価
格を四角い箱で表しまして、左右バランスしているか、どういう負担状況になっている
かというのも比較し、各制度でどうなっているかという辺りを検証しています。これに
つきましても、今回の財政方式の変更で何か変わることがあるのかどうかという問題意
識です。
　前回は（４）の下に※がありますけれども、前回の財政検証では制度ごとの財政状況
をより詳細に見るために財源構成で比較したと。将来の保険料で賄う部分について、現
在の保険料率で賄う部分と、将来の引き上げで賄う部分に区別して、後代負担の状況を
そういうことで把握をしたということがあります。
　それから、下はちょっと状況が変わっていると思いますが、世代間扶養の考え方を取
り入れている公的年金においても、世代間の公平性に配慮した財政運営ということで、
保険料の拠出時点において給付を確定できる、拠出時確定部分につきましては、平準保
険料というか、きちんと積立金を持っておかなければいけないというような、以前の数
理部会の御意見に沿った検証もしてございます。
　こういうようなことを前回やりましたけれども、今回どう変わるかということを考え
ていかなければいけないという内容です。
　３ページの「２　検証に必要な資料」でございます。上で考えたような検証方法、検
証内容を実現していくためには、どういう資料が必要か、各保険者にどういう資料をお
願いしなければいけないかというような項目です。（１）から（６）で書いてございま
すけれども、（１）は各制度ごとに、厚生年金、国民年金はほぼ終わっておりますし、
各共済はこれからだと聞いておりますけれども、各制度の財政再計算において用いられ
た各種前提、それから作成された将来見通しに関する資料、そこにありますように、基
本方針、基礎率・基礎数等々の内容が考えられるのではないかと思っております。
　それから、（２）は、数理部会としては共通の基準に従った各種前提で将来見通しを
つくっていただきまして、横並びで検討しているというのもありますので、そういう方
法で検討するための資料もつくっていただかなければいけない。その共通の基準という
のはどんなことが考えられるのかということで書いてあるのが、これは前回並びで書い
てありますが、例えば共済年金につきまして、被保険者数を厚生年金に連動した組合員
数の見通しでつくるとか、厚生年金に合わせた経済前提で計算する。それから、男女別
に基礎率、例えば死亡率とか脱退率等を計算していないところもございましたけれど
も、それについても合わせて計算したらどうかということ。それから、将来死亡率がど
んどん改善していくと言われておりますが、これは厚生年金、国民年金では織り込んで
いるということですけれども、共済でも織り込んだ失権率を使ったらどうなるかという
ことが考えられるのではないかと思っております。
　また、厚生年金も含む各制度につきまして、ある考え方の下で設定しました別の基礎
率、例えば別の運用利回り等を使うということも考えられるのではないか。これは先ほ
ど申しました各種変動に対する安定性に対する検証指標にもなるのではないかと思って
おります。
　それから、（３）の給付につきましては、そこには２つポツがありますけれども、こ
のような区分でそれぞれ比較検証してみれば、非常によくわかるのが出るのではないか
と思って書いております。
　あと（４）（５）（６）という点につきましても、資料としていただいて検証の参考
にしたいと思っています。
　最後になりますが、４ページと５ページ、これは別添と書いてございます。これは後
で制度改正の説明があると思いますが、今回財政方式がかなり変わっていると思ってお
りますので、それの比較です。上の区分が前回財政検証と、右側が今回の財政検証。そ
れから、その左側の縦の方が保険料率、給付水準、それから積立金等々についてどう変
わっているかというのを参考的に書いてございます。
　なお、厚生年金は法律が提出されておりますので、法律が通ればこのままの形になる
ということですけれども、共済につきましては、まだ法律案がまとまっていないとこ
ろ、また、各保険者で決めますよという内容もございますので、それにつきましては、
わかる範囲で書いてあります。
　説明は以上です。

○堀部会長
　ありがとうございました。先ほど言いましたように、この議題については、後で議論
していただくとしまして、その前に議題の３「平成16年年金制度改革案について」と、
議題４の「平成16年財政再計算の考え方について」の説明をお願いしたいと思います。

○木倉年金課長
　それでは、資料３の枝番が付いておりますものが制度改正関係でございます。資料４
の方は後で数理課の方から御説明申し上げます。
　先に３－１、これまでにもごらんいただいた大きい紙でございます。年末にもそれま
での合意の内容としてごらんいただいておりましたけれども、それの現在時点のもので
ございます。それをお開きいただきたいと思います。
　３－１の左側半分がおおよそ年末の段階で予算編成に関係する事項として、政府与党
の間で合意を得た事項でございます。それから右半分の方は年が明けましてから、法律
案作成に至るまでの間に、直接、16年度予算には影響しないけれども、制度改正事項で
あるということで合意を得た事項に分けた表になっております。それをまずごらんいた
だきながら御報告申し上げたいと思います。なお、この厚生年金、国民年金法等の改正
法案は、２月10日に閣議決定を経まして、国会に提出をされております。
　それから、共済関係は国共済の改正法案、私学共済の改正法案が先週金曜日、２月20
日に閣議決定を経て提出されております。地共済は予算に直接関係しませんので、来月
になる予定でございます。
　この大きい紙の左側でございますが、昨年12月末の数理部会で御報告申し上げたもの
と大きく変わったものはございません。まず、国庫負担２分の１への引き上げの点でご
ざいます。これは法律本則を２分の１と書き直しをいたしますが、それを平成21年度ま
でに完成をするということで、16年度から税制改正に伴います財源措置ともども措置を
していくということでございます。
　参考までに次の資料の３－２をごらんいただきたいと思います。縦に３つ分けた一番
右側に基礎年金国庫負担の引き上げについて書いております。まず16年度、初年度でご
ざいますが、これは税制改正の法案、今、御審議願っておりますが、これが通ります
と、16年度これに盛り込んでおりますのは、年金課税の見直し、公的年金等控除、65歳
以上の控除を基本的に65歳未満と同じようにするということ。あるいは老年者控除を廃
止するということでございますが、これによりまして、満年度ベースですと、2,400億
円の増収がございますが、それで国分は約６割余りの1,600億円ということでございま
す。これを丸々基礎年金の国庫負担の引き上げに充てるということでございますが、今
回の法律が成立いたしましても、最初の年は17年所得から適用ということでございまし
て、17年になりましてから、年金の支払いは、偶数月に２か月分支払っておりますが、
その最初の２月分にその効果が出てくるということで、６分の１相当。厚生年金は200
億円余りですが、その他も含めまして、272億円程度最初の年増額ということになりま
す。これを実額で法律上各制度別に引き上げの額として書かせていただきます。
　２段階目といたしましては、次の四角枠ですが、17年度、18年度、これは与党の税制
改革大綱の中で国と地方の財源の在り方、事務の在り方等を見直す三位一体改革と言わ
れるものと合わせまして、個人の所得課税全体の抜本的見直しを行うということになっ
ておりまして、これは率の明示はされておりません。適切な水準にまでもう一段階引き
上げるということの税制改革大綱に記述がされておりまして、これに沿ってもう一度税
制の見直しがある。そのときにもう一段階の引き上げを図るということでございます。
　最終的には21年度、本則で書き直します２分の１までの引き上げの間に、19年度を目
途にということでございますが、税制改革大綱上、消費税を含む抜本的な税制改革を実
現の上行うと。これはその中で年金、医療、介護等の社会保障全体の費用の見通しを踏
まえてやられる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む抜本的税制
改革を実現するということで規定がなされておりまして、このおおよその旨を年金法の
改正法の附則にも記述をさせていただきまして、段階を追っての引き上げを行うという
ことで改正案とさせていただいております。今の与党の合意事項は次の資料の３－３に
付けさせております。年末段階で御報告したものと同じものでございます。
　次に大きい紙に戻っていただきまして、左側の２番目「財政検証の実施」、これは先
ほどの資料の最後にありましたように、保険料率を少なくとも５年ごとに設定をし直す
という作業自体は、今回は保険料水準固定方式でございますので、なくなるわけでござ
いますけれども、少なくとも５年ごとに人口等新しいものを踏まえました財政の見通
し、現在財政の状況、スライド調整の進捗状況等についての報告、公表をさせていただ
くということになっておりまして、この規定は置かせていただく。この際に前回御報告
申し上げましたように、おおむね100年程度を見通しての最終年度において１年分程度
の給付費となっているかどうかというチェックを行うという意味の検証を行っていくと
いうものを前提としての財政検証を行わせていただくということでございます。この話
につきましては、資料４で数理課の方から御報告申し上げます。
　次に方法につきましては、保険料水準の固定方式の下で、収入を固定した段階で給付
の方をスライドの調整という方式によりまして、緩やかに調整を行っていく。支える力
の均衡を図っていくということでございまして、この方式も年末段階で与党の合意の中
で既に合意がされているものでございますが、それをそのまま記述させていただいてお
ります。
　方式も年末の動きと変わっておりませんが、最終保険料率が若干の変更、あるいは国
民年金につきましては、予算に直接かかわりのない17年度からでございますので、新し
い年に決まっております。
　中身につきましては、資料３－２の真ん中の欄でございます。「保険料負担」の欄で
ございますが、厚生年金の方につきましては、現在の13.58％から、毎年の小刻みの引
き上げを行わせていただく。毎年の幅は５年前の再計算で示しましたものの５分の１と
いうことで、労使合わせて0.354ということでございまして、最初の年の10月から引き
上げ。翌年度以降は標準報酬の改定と合わせまして、９月からの改定にさせていただき
たいと思いますが、これで引き上げを行わせていただくということでございます。直近
の男子の平均賃金で見てみますと、36万円程度でございますので、これで見てみると、
各月650円程度の引き上げ。月分としては650円程度、ボーナス月で3.6か月分を半分に
割って1.8か月分で計算してみると、ボーナス１回で1,150円程度の引き上げということ
になろうかと思います。
　年明けての合意の中では、国民年金につきまして、当初、厚生労働省案の中では、５
年前の引き上げ幅と同じ600円の引き上げ幅で引き上げていってということで示してお
りましたが、それですと、引き上げの終了時点が、厚生年金20％に相当する場合です
と、2011年で終了ということでございましたけれども、国民年金の方だけ最終保険料へ
の負担の上昇が早いということについての議論がございまして、同程度の期間で引き上
げを終了ということを前提にして計算をしたらどうかという指摘の中で、最終的には同
じく2017年までの引き上げの期間を取るということで、保険料の引き上げの計算をして
みますと、現在の価格表示で280円ということになります。この280円というもので引き
上げをし、最終保険料、厚生年金の方で18.30％というのがございますが、これと同等
の給付の伸びの調整をさせていただくことによりまして、そのときの国民年金、バラン
ス水準は、2017年度以降１万6,900円、現在の価格表示でございますが、このような表
示での最終的な決着を見たところでございます。
　なお、年末段階では厚生年金につきましては、18.35％を上限として、最終的な法案
提出までに在職老齢年金等の見直しでのさらなる引き下げの努力をするということでご
ざいましたが、70歳以上での在職中の支給調整を65歳以降の60代後半と同じ支給調整を
行わせていただくということの分の効果を見込んで、18.35のところを18.30にとどめる
ということでの最終的な姿ということになっております。それを前提としたものとさせ
ていただいております。
　これが保険料の収入の固定のものでございまして、これを各年の階段と最終的なもの
両方を法案に規定をさせていただいております。
　また、大きい紙に戻っていただきまして、その保険料水準固定の下での四角の下、給
付水準の調整の方式、マクロ経済スライドの調整の仕方、これは変わっておりません。
また、毎年のスライド調整をする場合でも、賃金の上昇の幅、物価の上昇の幅以内で行
うということで、ゼロ以下にはしない。前の年よりも年金額の計算が下がることはしな
いという名目額を下限とするやり方、これも年末のときに御報告申し上げたとおりのも
のでございます。
　また、スライドの調整の数字につきましても、そのときも申し上げておきましたが、
公的年金全体の被保険者数、１号、２号、３号全体の被保険者数の減少率、これは毎年
の実績を取らせていただきます。それプラス平均余命の延び、これは固定値でこれから
25年までの人口推計上のものの各年平均、0.3％程度でございますか、これを毎年置か
せてもらうという法律改正の仕方を取っております。これで見込みますと、被保険者数
の減少率は多い年少ない年あるかと思いますけれども、おおむね平均余命の延びと合わ
せて0.9前後ではないかというふうに見込んでおるところでございます。
　最終的にこれでどのような給付水準になる可能性があるかということでございます
が、与党の年末の合意でもありました。これはもともと大臣の試案で申し上げておった
以来のものでございますが、調整をした場合でも現役時代の男子手取賃金の50％、標準
世帯のモデルでございますが、それを上回るものとしていくということの合意が与党の
方でもされておりまして、それを前提としてのものとさせていただいております。
　資料３－２の４ページでございますが、一番左側は現在でございます。これは先ほど
申し上げましたように、男子の平均賃金、従前の36.7万円から若干小さくなっておりま
す。これは直近の男子平均標準報酬36.0を前提に、一番左の39.3というのはボーナス分
の１月分を加えておるということでございます。
　これを分母といたしまして、現在の物価スライド特例水準23.3と申しますのが、男子
の平均賃金で40年加入されたという場合で、基礎年金は満額を２人分。これの３か年、
12、13、14と物価スライドが下がったときのマイナス1.7％は下がっておりません。こ
の水準分だけは前提にした数字。あとの15、16は0.9、0.3を下げた数字でございます
と、右側の本来数字23.1％でございますが、特例水準を実際に支給されておりますの
で、39.3分の23.3ということで、59.3％、これが現在でございますが、これが現在の人
口中位等々の経済前提の下で見込みますと、2023年までスライドの調整を続けまして、
50.2％という水準で均衡が図れるということで、その時点に重点を置いているところで
ございます。このようなことで現在の見込みを置かしていただいております。
　なおこれにつきましては、50を上回るものにする。これについてこの旨を法律に明記
をするということでございますが、法律の上ではその財政検証を５年ごとに行いますと
きに、次の財政検証までの間で新規に裁定を受ける65歳の方が実際に先ほどの40年加入
モデルで置いてみて、50を切るという見通しが出てきた時点におきましては、このスラ
イド調整を終了する等の措置を別途法律で国会で御議論いただきまして、さらなる合
意、このままスライド調整を行っていくのか、それとも新しい合意をいただくのかどう
かということの御議論をいただくと。そういう別途の法律の規定によりましての検討を
加えるという旨の規定を法律の附則で置かしていただいておるというところでございま
す。
　大きい紙の左側がそういうようなことでございます。
　右側でございます。右側の方は年が明けてからの合意に基づく改正事項でございま
す。まず在職老齢年金制度につきましては、60歳代前半の今のものにつきまして、働い
ている方の実質２割カットをやめる。これは従前どおりでございます。
　それから、次の70歳以上の部分、これが新しい事項でございまして、70歳以上の在職
調整の仕組みをどうするかということにつきまして、秋の厚生労働省案の段階では60代
後半と同じ。保険料負担も求めるけれども、給付調整の方も同じようにさせていただき
たいということでございました、結論としては、保険料負担は求めない。給付調整の方
で協力を願うということでございます。これは保険料負担を求めることについてありま
した議論は、退職時改定をするとしても、退職後の給付に反映できる期間というのが短
くなり過ぎではないか。どこかで割り切りをすべきではないかということで、給付の調
整の方で御協力を願うということで結論が出たところでございます。それを盛り込ませ
ていただいております。
　65歳以上の繰り下げは同じく従来どおり盛り込んでおります。
　次に「短時間労働者への厚生年金の適用」でございますけれども、これにつきまして
は、資料３－４、２月４日付の与党協議会合意でございますが、それの２ページをごら
んいただきたいと思います。これは実際の短時間労働者を抱えていらっしゃる分野の意
見等を踏まえながら、あるいは労働界等の意見も直接聞いていただきながらの御議論で
ございました。結果的には今回結論を得るに至っておりません。５年後を目途として更
に検討を加えて結論を得るということでございますが、そのときの視点として、年金部
会以来御指摘いただいたたものを書き出してございますが、「このような中で」と書い
てありますが、短時間労働者の適用については、被用者としての年金保障を充実する観
点。それから、企業間の負担の公平を図る観点から、今後見直していくことが重要な課
題だということに認識を置いて、その上で見直しをするに当たって、まず、短時間労働
者が多く就労している企業への影響、事務効率性の問題、それから短時間労働者側の意
識なり雇用への影響等を十分踏まえて、検討をしていくという点が書き出されておりま
す。
　「このような考え方に立って」というところに、最後に厚生年金がそういう企業や被
用者の雇用形態選択にできる限り中立的な仕組みになるように更に検討をしていくとい
うふうな視点を書き出して、この旨を改正法の附則に明記させていただき、更に検討を
続けていくということにさせていただいておるところでございます。
　次に「次世代育成支援の拡充」につきましては、御報告申し上げていました厚生労働
省案のとおりでございまして、３歳までの間、育児休業を取った、あるいは時間短縮を
して働き続けた場合の保険料については、その直前の保険料で納付したものとみなすと
いうことで支援をしていきまして、不利にならないようにということで盛り込ませてい
ただいているところでございます。
　その次の「女性と年金」、第３号被保険者問題等についての部分でございますけれど
も、これにつきましても、与党等の御議論は大分ありました。先ほどの与党合意書、資
料３－４をもう一度ごらんいただきたいと思います。
　３ページの「４、女性と年金」という部分でございますが、これにつきまして、私ど
もの省案では、昨年の秋に出しましたように、年金の分割ということで、65歳時点、あ
るいは離婚時点での基礎年金と同等に厚生年金部分につきまして、被扶養配偶者の間に
ついては、２分の１での計算ということで、それぞれの名義で給付がなされるというこ
とでどうかということの提案をしておりましたが、ここではこの３ページのところに書
いてありますように、「この問題を考えるに当たり」ということで、被扶養配偶者を有
する厚生年金の加入者が負担した保険料は夫婦で共同して負担したものであり、被扶養
配偶者にもいわゆる潜在的な権利があることは基本であるが、当面必要な事情がある場
合として、離婚時などが挙げてありますが、離婚時など分割の必要があるという場合に
限り分割できるものとするという取り扱いとするということで、更に全体の在り方は議
論を続けていくということでございます。
　それにつきまして、具体的には「このような認識に基づき」ということで、３号被保
険者期間、これは法律施行後の期間、将来に向けての期間でございますけれども、これ
につきましては、離婚した場合、あるいはこれに準ずる場合として行方不明、所在不明
という場合は、厚生年金の請求があったときに、配偶者につきまして、例えば夫の方で
ありましたら、その納付記録の２分１を分割できるという規定を置くということでござ
います。
　65歳時点で当然に別々ということについては、今回その措置を取らないということ
で、このようなものは入れられていないということでございます。
　これと同様の趣旨になりますが、「（２）離婚時の厚生年金の分割」につきまして
も、省案で出ておりましたようなもの、そのままでございますが、配偶者同士の同意、
あるいは合意ができない場合には、裁判所の決定があれば分割ができるということでご
ざいまして、これは施行されたときから以後の離婚につきましては、それ以前の期間も
含めて２号２号期間、あるいは２号３号期間等につきまして、その報酬比例部分につい
て、お互いにその婚姻期間分を足して半分までの間で合意または裁判所の決定により、
分けられるということの規定を置いているところでございます。
　それから、遺族年金につきましても、省案同様の合意をいただいているという状況、
あるいは合意書の次のページを見ていただきますと、障害年金につきましても、障害基
礎年金を受けながらも働き続けられて、老齢厚生年金の権利を得られた期間につきまし
ては、老齢厚生年金を併給できる仕組みに変えていということでございます。
　以上のようなことで、合意を新しくいただいた改正案となっております。
　なお、国民年金の徴収対策につきましても、徹底した徴収をということで、指摘を受
けておりますが、これにつきましては、資料３－２の一番最後のページをごらんいただ
きたいと思います。
　この中で「国民年金保険料の収納対策の強化」ということで、法律改正によらない部
分も含めて、打ち出しをしておりますけれども、現在、大臣の下に本部を置きまして、
徹底した対策ということで取り組んでおるところでございますが、まずは右側半分のよ
うに、保険料、その納付義務を果たしていただく必要があるということで、既に報道が
ありますけれども、全国で繰り返しの督促によりましても、納付をしていただけない方
につきましては、抽出させていただきまして、最終的な督促状を出して、期限が来たと
ころについては、一部の県では既に金融資産の差し押さえということでやらせていただ
いておるところでございます。
　あるいは所得情報の把握ということで、御本人から未納者、免除者等から所得の情報
をまず求めて、得られれば免除制度を促す、あるいは納付を促すというようなことを行
いますが、得られない場合には、市町村からもその所得情報を得られという根拠規定を
置きまして、その情報に基づきまして、まず納付を促すとともに、得られない場合には
強制徴収も辞さないという措置を取りたいと思っております。
　また、社会保険料控除、納付をされていない方には控除の適用がないように国税の方
と社会保険の方で情報のやり取りをさせていただくような仕組みも設けていきたいとい
うことでございます。
　左側半分にありますように、より納めやすい仕組み、国庫負担２分の１で支えていた
だくわけでございますけれども、保険料というのは更に一定程度までは伸ばさなければ
いけないという中で、その負担の中でより払いやすい仕組みということで、そのときど
きの所得に応じて払いやすくするため、今の２段階の免除制度、ゼロか半分かというも
のにつきまして、４段階程度の免除の仕組みという対応にさせていただきたい。
　あるいは所得の免除基準等が控除の枠を使っております関係上、単身の方に厳しいと
いうものについては、単身枠の方にやや基準を緩和する措置を取りたい。
　更に納付していただきやすくするために、口座割引制度も拡充をする。あるいは20代
のまだ就業定着できない方についての納付の猶予制度、学生と同じような10年間納付猶
予制度を設けたいということ。
　更に３番にありますように、農村部等におきます地域の納付組織への再度の協力のお
願いということで、勿論、従前からの自治会等へお願いもしていきますけれども、新た
に農協、あるいは同業者組合、あるいは商店の商工会等も含めて農業者団体も含めたお
願いを申し上げていく、委託をしていくということも広げていきたい。
　あるいは右下にありますように、年金の個人情報を定期的にお知らせする。その年金
額が簡易に計算できるようなポイントのような仕組みも組みも合わせる中で、より納付
の意欲を持っていただくような仕組み、こういうものを総合的に徹底して講じてまいり
たいと思っております。
　最後に大きい紙の右下の方に書いてございますが、資料として概要等法案要綱を付け
ておりますけれども年金積立金の運用につきましても、新たな組織においてより責任を
明確にやらしていただくということで、現在の特殊法人の年金運用基金を独立行政法人
という形態で、年金積立金管理運用を独立行政法人に切り替えさせていただきたいとい
うことで、３－７、３－８にその法案の概要を付けておるところでございます。
　現在、提出しております法案の概要を御報告申し上げました。よろしくお願いいたし
ます。

○坂本数理課長
　引き続きまして、資料４に基づきまして、平成16年財政再計算をどのような形で行っ
ているかということを御報告させていただきたいと思います。
　表紙をめくっていただきまして、まず１ページと２ページでございます。図１、図２
におきましては、今回の再計算の流れの概要を、前回の再計算と比較する形で示してご
ざいます。基本的には再計算の流れは同じでございます。ただ、今回、マクロ経済スラ
イドというものが入ってまいりましたので、そのマクロ経済スライドによるコントロー
ル部分というものを従来のものにくっ付けているというのが前回と今回の違いでござい
ます。基本的には同じような計算をしているということを最初に申し上げておきたいと
思います。
　まず１ページの図１でございます。これは前回の試算の全体像でございまして、「給
付水準維持方式」とございますが、これまでの給付を決めて、その給付を賄っていくた
めに、保険料計画をどういうふうに立てていったらいいかということの試行錯誤をする
ための計算過程というふうにとらえていただけたらよいと思います。
　したがいまして、給付費を推計することがメインの目的になるわけでございますが、
そのためにいろいろな過程を経ていくわけでございます。
　まず左の方を見ていただきたいと思いますが、被保険者データの実績、それから社会
保障人口問題研究所が５年に１度発表いたします将来推計人口、また、職業安定局が発
表いたします労働力率の見通し、こういったものを使いながら、まず将来の被保険者数
の推計を行う。これは制度別に、つまり厚年、共済、自営業者。そしてまた要素別、こ
れは性、年齢別といったもので分類いたしまして、それぞれの要素に属するところにつ
きまして、将来の年度ごとに何人いるかということを推計するわけでございます。
　そして、将来の被保険者数が推計できましたところで、次に今度は制度内容、あるい
は被保険者データ、受給者データ、そしていわゆる基礎率、１年動くごとにどういうふ
うに変化するか。現役の被保険者がどういうふうに制度をやめていくか。あるいは受給
者がどのように失権していくかということなどを盛り込みました基礎率。また、賃金上
昇率、物価上昇率といった経済要素の前提を使いながら、将来の年度ごとの給付費を推
計していくというわけでございます。
　そして、今度は右側に行っていただきまして、この給付費を推計したところで、給付
費は要素ごとにつくられていますので、給付水準を維持した場合の２階部分の将来給付
費とか、また同時に保険料の基になります被用者年金それぞれの将来の報酬総額と、年
度ごとの報酬総額というものもここで推計していくわけでございます。
　また、給付水準を維持した場合の将来の基礎年金給付費というものもここで推計す
る。そして、この基礎年金給付費につきましては、更に先ほど推計いたしました将来の
被保険者数の推計を基にいたしまして、基礎年金拠出金を推計する。そして、制度ごと
に推計するわけでございますが、それを基に給付水準を維持した場合の将来の基礎年金
拠出金を厚生年金なら何年度は幾ら、次の年度は幾らというふうな推計を行う。共済年
金についても同様の推計を行う。国民年金につきましては、自営業者分、いわゆる国民
年金勘定から基礎年金勘定へ移管する分が幾らであるということの推計を行う。このよ
うな過程を経まして、更に積立金の現在の状況をインプットいたしまして、運用利回り
の前提とともに、将来の収支見通しを作成していくというような過程を経ておったわけ
でございます。これが前回までの財政再計算の過程で、これは先に給付水準が決まって
いる。それに対して適合する保険料計画はどのようなものがあるかということを試行錯
誤で見出していくための計算過程だったということでございます。
　２ページ、図２の方でございますが、これが今回の保険料水準固定方式の計算の過程
でございます。左側は全く変わりません。まず、現行の給付水準を維持した場合の給付
費の推計を行うわけでございます。したがいまして、Ａとありますところ、「現行の給
付水準を維持した場合の給付費等の推計」、ここはこれまでと全く変わらないわけでご
ざいます。
　右側に行っていただきまして、この給付費の推計と同時に出てくる産物といたしまし
ては、被用者年金の将来報酬、これは標準報酬の合計でございます。
　それから、現行の給付水準を維持した場合の２階部分の将来の給付費もここで出てく
る。
　そして、一番右側でございますが、現行の給付水準を維持した場合の将来の基礎年金
の給付費の推計が出てくるということで、ここら辺も同じような過程をたどっておるわ
けでございます。
　マクロ経済スライドは被保険者数の減少率をスライド調整率とするということがござ
います。それがＣにあるわけでございます。スライド調整率の推計ということで、１つ
の年度でスライド調整を行うとするならば、被保険者数はどれくらい減っているかとい
うことを調べないといけないわけでございます。
　これは左側の将来被保険者数の推計の部分から導かれるわけでございまして、減少率
をここで計算しておく、これがＣでございます。
　また、先ほどと同じように、基礎年金拠出金を制度別に算定し、積立金の初期値を入
れて、今回保険料計画も固定されておりますので、その保険料計画を加味いたしまし
て、これでその次のＤのプロセスに移っていくわけでございます。
　「給付水準調整の終了年度の計算」というところがございます。これが今回新たに加
わっているところでございまして、このような前提の下で、もし、マクロ経済スライド
を１つの年度で、その年度以降マクロ経済スライドを行わなかったとしましたならば、
給付と負担の均衡が保てるかどうかということを各年度ごとにやっていくわけでござい
ます。そして、均衡が保たれないということがわかりますと、その年度はマクロ経済ス
ライドを実施するということで、将来の収入の総額と給付の総額、いわゆる収入原価、
給付原価を比較いたしまして、給付原価の方が多いということになりますと、その年度
はマクロ経済スライドを実施するという状態で計算を行う。
　そして、また最初のルーチンに戻りまして、１年先の年度を計算する。
　もう一度このＤの過程にまいりまして、その１年動いたところで、またマクロ経済ス
ライドを実施しないとしたら、給付と負担の収支均衡が図られているかどうか。収入原
価と給付原価が均衡するかどうかということをそこで調べるわけでございます。
　もしそこで均衡するということがわかったら、そこでマクロ経済スライドの終了とい
うことになるわけでございます。
　このように１年ごとにマクロ経済スライドを実施しながら、同時にマクロ経済スライ
ドをやらないとしたら、均衡するかどうかというのを調べながら、均衡するということ
がわかったところで、マクロ経済スライドを中止するという計算を行っております。こ
れがＤの部分でございます。
　その結果、給付水準調整割合というものが年度ごとに出てくるわけでございまして、
それで将来のスライド率が決まったことになりますので、それを基に収支計算を行うと
いう過程になっておるわけでございます。
　したがいまして、繰り返しになりますが、給付費を求めるというところで、これまで
と同じルーチンでございまして、何が違うかと言いますと、年度ごとにそこでマクロ経
済スライドをやめたら、収支均衡するかどうかということをチェックした上で、収支均
衡するまでマクロ経済スライドを続け、収支均衡したと同時に、そこから現在の賃金ス
ライドに戻るという計算を行っているというところがこれまでとの相違点でございま
す。
　以上が今回の再計算の概要でございます。
　それから、３ページでございますが、今回もう一つ、財政方式でこれまでと違う考え
方を取り入れてございます。それは有限均衡方式と呼ばれる考え方でございます。上の
四角にございますように、前回までの方式というのは、未来永劫にわたる期間において
均衡を考えて、積立水準を維持する考え方というものでございました。この１つ目の○
にございますように、均衡を図るべき期間は、将来にわたるすべての期間と考えて、そ
の永久期間の中で永久に給付と負担が均衡するという考え方の下に財政計画をつくった
わけでございます。
　この考え方を取りますと、将来の高齢化率が高い見通しになっている今のような状況
の下では、運用収入を活用して、財源の一部に充てるということをどうしても行います
ので、積立金の水準が一定の水準を維持すると、かなり大きな水準になるということが
ございます。
　一方でその積立金の規模につきましても、非常にシビアな議論がございましたので、
この考え方を少し変更いたしまして、有限均衡方式というものに変えたところでござい
ます。
　今回取りました方式と言いますは、給付と負担の均衡を図るための財政期間として100
年程度の長期の均衡を考えまして、永久ではなくて100年程度。つまり、現在生まれて
いる人が大体受給を終える程度の期間の均衡を考えまして、積立金の水準を抑制する考
え方を今回取ったわけでございます。
　ここにございますように、まず最初の○にございますように、均衡を図るべき期間
を、既に生まれている世代がおおむね年金受給を終えるまでの期間、例えば95年間とい
うことで、今回2100年までの期間を考えておるわけでございますが、その期間で均衡を
図るように考えまして、その95年間について、2100年までの期間について、給付と負担
の均衡を考えるという考え方を取ったわけでございます。
　アメリカが現在、このような方法で財政状況をチェックしているということがござい
まして、このような考え方は実例もあるということでございます。
　２つ目の○にございますように、財政期間の最終年度におきましては、その後の期間
も続いてまいりますので、支払準備金程度の積立金は保有しておく。給付費の１年分程
度の積立金を保有しておくということも条件に加えております。これもアメリカと同じ
考え方でございます。
　ただし、次のところは非常に重要なところでございまして、定期的に行う財政検証ご
とに財政均衡期間を移動させまして、常に一定の将来までの給付と負担の均衡を考える
ということでございます。
　今回、2100年までの均衡を考えておりますので、５年後には、2105年までの均衡を考
えて、2105年において、給付費の１年分程度の積立金を持つように均衡させる。そのよ
うな考え方で財政を運営していく。財政検証を行っていくという考え方でございます。
　このように今回は永久均衡方式ではなくて、有限均衡方式というものを採用したわけ
でございますけれども、ここの注にございますように、永久均衡方式と有限均衡方式の
どちらを取りましても、保険料引き上げとスライド調整の方法には全く変わりはないと
いうことでございまして、ただ、給付水準調整の程度や調整の終了する時期の見通しに
違いが表れるということでございます。
　この下の図は今申し上げました有限均衡方式の考え方を図に示しておるものでござい
まして、５年ごとに財政均衡期間をずらしていく、ローリングしていくということをや
りまして、今回、手の届かなった地平線から向こうにあったものも、その５年間は地平
線の内側に入ってくると。必ずそれをやっていくということをやる。
　これを５年後も2100年までとして、95年を90年の財政均衡にいたしますと、これはや
はり不健全性が出てくるであろうと考えられるところでございまして、ここは厳格に守
っていかなければいけないところだと考えております。
　この右側の四角にちょっと注釈が書いてありますけれども、５年後にまた有限均衡方
式で財政検証をやった場合にどういう違いが出てくるかということでございますが、こ
の最後の2100年から2105年の５年間の高齢化の状況が現在よりも高いという状況になり
ます場合には、給付と負担の均衡する給付水準は、今回示しますもの、先ほど年金課長
の説明の中にございましたが、50.2％という水準でございますが、それよりは低下して
くるであろうということが考えられるところでございます。
　以上が有限均衡方式の考え方でございまして、最後の４ページ、今回、マクロ経済ス
ライドを実施するに当たりまして、基本的に賃金スライドなのでございますけれども、
その賃金スライドの反映のさせ方に工夫を要するのではないかということで、そのやり
方をいわゆる過去３年平均を使いながら賃金スライドを行っていくという方式に変えて
いるということを図示したものでございます。
　一番上の図でございますけれども、従来の改定の考え方というものは、このような状
況になっていたと。つまり、65歳まで賃金上昇による改定を行って、65歳からは物価上
昇率による改定を行うということになっておるわけでございます。今回も基本的にこの
考え方は踏襲するわけでございますが、マクロ経済スライドを行いますために、毎年賃
金スライドをやっていかないといけない。これまでは５年に一度再評価率を見直すこと
によって、賃金スライドを実施してきたわけでございますが、今回からは毎年マクロ経
済スライドを実施していきますので、毎年再評価率表を変えていくということになるわ
けでございますが、その際に大きな問題がございます。
　左の２番目の○でございますけれども、毎年度賃金上昇率や公的年金受給者者減少率
を用いて、自動的に年金改定を行うということをしていこうと、今回の改正案でしてい
るわけでございますが、これらの指標については、ある程度と言いますか、いわゆるフ
ラクチエートするわけでございます。変動するわけでございまして、その場合、そのま
まそれを反映しておりますと、年金額の逆転等が非常に技術な部分で起こってしまった
りしまして、それはフェアではないということから、そのフラクチュエートする率をス
ムージング、平滑化して使っていこうというのが今回の考え方でございます。
　具体的には直近の３年間の賃金上昇率の平均を反映させながら再評価率表をつくって
いく。それが右の図にあるわけでございますが、例えば65歳に達する年度、一番上の部
分でございますけれども、65歳に達する年度の年金に反映させる要素ということをここ
で図示してございます。賃金上昇につきましても、実質賃金上昇率を実績として取って
いく。その３年平均を使うというものでございます。
　したがいまして、この人が65歳に達しますときに判明しております実績は、２年前の
63歳代のときのものまで反映しておりますので、61歳、62歳、63歳のときの賃金上昇
率、これの３年平均を取るわけでございます。これも物価を除きました実質賃金上昇で
その３年平均を取る。
　それを65歳に達する前の暦年の物価上昇率に上乗せするという形で賃金上昇率を反映
していく。これをやりますと、反映のされ方がそういう意味で少しずつ遅れてくるわけ
でございます。しかしながら、これまで65歳までは賃金上昇率ということをやろうとし
ておりましたので、それを補いますために、このやり方を終えますのを67歳までにす
る。67歳まではこのやり方で賃金上昇を反映する。68歳以降は物価上昇のみという形で
反映させるということでございます。
　つまり、今65歳に達する年度の図を見ていただきましたが、66歳になりましたときに
は、62歳、63歳、64歳のときの３年平均、実質賃金上昇の３年平均、これと全暦年の物
価上昇を加えました率を用いて年金額を改定する。
　その下の図でございますけれども、67歳に達する年度には、63歳、64歳、65歳のとき
の実質賃金上昇率の３年平均をつくりまして、これをその前の年の物価に上乗せまし
て、改定率とする。このようにしますと、ここに見ていただきますように、近似的では
ございますけれども、65歳の実質賃金上昇率の３分の１が反映されておりまして、これ
がちょうど64歳で反映されておりません。64歳時点の賃金上昇率の３分の１部分をちょ
うど補う形で、要は65歳までの賃金上昇を反映した形になっているわけでございます。
68歳以降は物価スライドのみという考え方でございます。
　以上でございます。

○堀部会長
　どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して御質問があれば
よろしくお願いします。

○田村委員
　先ほど年金課長の方から御説明があったのですけれども、国庫負担のところで、要綱
を見ていましたら、３分の１プラス1000分の11という数字が出てくるのですが、1000分
の11というのは何なのでしょうか。

○木倉年金課長
　説明を抜かしたなと思っておりました。初年度272億程度、200億余りが厚生年金に書
かれてあり、国民年金に50何億が書かれてあり、あと共済に数億ずつ書かれてあります
が、これは２月支払分だけでございますが、その次の年からは1,600億、満年度ベース
のものが各制度に乗るわけでございますけれども、これは２年度目から定率で書いてい
く。1,600億、今の率で見込みますと、大体1.1％くらいが乗るものですから、千分率で
言いますと、1000分の11程度ということでございまして、これは毎年度変動させたりし
ておくと、非常に技術的に難しいということで、現時点での見込みの1,600億程度のも
のを1.1％として見込みました。ただし、17、18年度におきましては、今年の暮れにか
けてになろうかと思いますけれども、税制改正の中でもう一段階引き上げの可能性が議
論をされるということであるのですが、原則の法律の形では既に初年度はその額で書い
てあって、２年度以降は３分の１プラス1000分の11を加えると書いておるのです。そう
いうふうな規定にしております。

○田村委員
　坂本数理課長から説明していただいた収支見通しの表がございますね。今までと全く
同じ様式になっているのですけれども、今度、制度改正によって新しい方式になったと
きに、少し違う項目を加えるとか、様式を変えるとか、そういう考え方はないのです
か。
　例えばスライド調整率みたいなものの数字だとか、この年度はどれだけ給付費が下が
ったかということがわかるような数値を加えるということを考えてはいらっしゃらない
のでしょうか。

○坂本数理課長
　収支見通しにつきまして、これまでと基本的に同じ項目で比較できるように示してお
りますが、今、田村委員がおっしゃいました要素というものは、別途資料を用意させて
いただきたいと思っております。

○堀部会長
　先ほど年金課長の説明で、例えば５年後に経済見通しが変わるとか、あるいは人口の
見通しが変わるとか、そういった場合には将来の給付水準が50％を切るかもしれない。
その場合には、スライド調整を終了するとおっしゃったような気がするのですが、そう
しても、最終的には50％を切るということになるのではないかと思うのです。
　この年金数理部会では50％を切るかどうかという点の検証をやるのかどうかも問題に
なると思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。

○木倉年金課長
　細かくなりますが、資料３－６「国民年金法等の一部を改正する法律案要綱」です
が、それの最後から１枚目31ページに「二　給付水準の下限」とございます。それの
（２）の方でございますけれども、（１）の方は「百分の五十を上回ることとなるよう
な給付水準を将来にわたり確保するものとすること」と書いてございますが、（２）の
方では、「財政の現況及び見通しの作成に当たって、次の財政の現況見通しが作成され
るまでの間」、ですから、少なくとも５年置きに財政見通しを示していく。その次の見
通しが示されるまでの間に、（１）の比率というのは、新規裁定者の40年モデルで取っ
たときのでございますけれども、この比率が65歳の新規裁定の方が、平均賃金で直近の
もので計算してみて、50を下回るということが見込まれる場合には、この調整期間の終
了について検討を行って、その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置、その他の
措置というのは、例えば再調整のスピードを、そのとおりの数字を使わずに少しゆっく
りするというようなことで、足踏みをする。立ち止まっての検討を加えるという意味で
ございますけれども、それを講ずる。これは法律が要るわけでございます。
　その検討を加えながら、（３）の方で（２）の措置を講ずる場合には、給付、負担の
在り方についての検討を行い、所要の措置を講じる。この所要の措置の中身というの
は、現在、新たな合意がなされているわけではありません。財政収支でございますか
ら、給付の在り方、それから負担の方としては、保険料、国庫負担、積立金というもの
しかないわけですけれども、それについて再度どのような合意が得られるかということ
の検討を加えるということでの規定を置いていると。
　５年ごとでございますから、今申し上げましたように、見通し上あり得ると思われま
すのは、５年できちんと今年の再計算から財政検証が行われていけば、例えば15年後と
いうことなると、2019年のときの財政検証のときに直近でそれを割り込むような可能性
が見えてくる。この直近５年のうちにという可能性はあり得ようとは思いますが、それ
に向けての規定が置かれているということでございます。

○田村首席年金数理官
　今の規定で法律に決まっていますので、100分の50、50％というのはある種メルクマ
ールになるかなというふうには思っていますけれども、先ほどの資料２のところで、安
定性の観点のところで、保険料を上げてもこれ以上給付できないと。逆に従来は保険料
を決めて、これ以上取れないということで考えていましたけれども、逆の見方からする
と、その辺が安定性にも関係してくるのではないかと思いますので、そこもこれを考え
ながら、資料２の検討をお願いしたいなと思います。

○堀部会長
　もう一点、共済組合の関係で、これは前回、田村委員からも御質問があった点につい
てです。これは厚生労働省の方にお聞きするのは筋違いかもしれません。知っている範
囲でお答えいただきたいのですが、厚生年金は保険料水準固定方式ということなのです
が、説明を聞いてみると共済はそうではないという気がするのです。そうすると、年金
数理部会で厚生年金と各種共済の検討をする際に、いろいろ問題が生じてくるのではな
いかと思うのですが、この辺はどういう状況なのでしょうか。

○木倉年金課長
　共済の方ですが、この20日に国共済、私学共済と改正案が出されておりますが、その
前提になります考え方については、国共済の方には財政審議会の分科会がございます。
その方で意見が前提として述べられておりまして、今の保険料水準の仕組み、それから
給付調整の仕組みにつきましては、議論の経過が報告をされております。簡単に申し上
げますと、保険料水準を固定する仕組みをどのようにすべきか、またその給付水準につ
いて、これまでと同様の、今もスライド率は同じものを使っておりましたが、それを維
持できるのか検討しなければならないということで、国家公務員共済の方の母集団、こ
れは組合員110万人であると。財政単位が一元化になるので、地共済を入れて320万人を
加えたとしても、その集団での中での別途な考慮を求められていくのではないかという
下で、共済グループが保険料水準を固定した場合には、更に問題が今のままでは生じて
しまうと。そこで給付水準の方については、官民の格差をなくすということで同じ給付
の考え方で設定していくということを併せかんがみて、給付水準の方の調整の仕組みと
いうことについては、官民のバランスを確保していくということで同じ率を使うという
ことにならざるを得ないと思うけれども、保険料については、保険料率を今の段階で単
純に固定をしてしまうということでは、財政悪化に直結することになるということで、
今回の改正で国共済に保険料水準を固定することは適当でないと考えられるので、共済
年金制度の仕組みを勘案しつつ、従来同様給付水準を厚生年金に準拠して定めながら、
この組合員数の変動率を反映して保険料を決定する仕組みを当面は取っていくべきであ
るという考え方が述べられているところでございます。

○堀部会長
　そうすると、財政再計算の検証も年金数理部会での検証も少し違ってくるのではない
か。次回に議論する検討項目も、そういった点も踏まえて議論する必要があるのではな
いかなと思います。
　時間が迫ってきたのですが、そのほか年金課長、数理課長に御質問ございますでしょ
うか。よろしいでしょうか。


閉会

○堀部会長
　それでは、本日の議論はこれまでにしたいと思います。次回以降、検証の在り方、要
求資料に関する議論を行いたいと思います。
　次回の日程等について事務局に確認をお願いします。

○田村首席年金数理官
　次回、第10回になりますが、年金数理部会につきましては、来週の３月２日、火曜日
午後２時から、場所は霞が関ビルの33階、東海大学校友会館にて予定をしております。
よろしくお願いいたします。
　以上です。

○堀部会長
　それでは、どうもありがとうございました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－了－


（照会先）
　厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室
　（代）03-5253-1111（内線3382）