04/02/20 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成16年2月20日議事録        薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年2月20日(金) 10:30〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(13名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 岡 田 義 昭、 折 笠 秀 樹、   守 殿 貞 夫、 川 嵜 敏 祐、 後 藤   元、 早 川 堯 夫、   藤 上 雅 子、○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、   吉 田 茂 昭 (注) ◎部会長 ○部会長代理  欠席委員(3名) 神 谷   齊、 木 村   哲、 櫻 井 秀 也 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 平 山 佳 伸(安全対策課長)、   豊 島   聰(審査センター長)    青 木 重 仁(審査センター企画主幹)、    赤 川 治 郎(審査センター審査第一部長)、   森   和 彦(審査センター審査第二部長)、   辻 村 信 正(審査センター審査第三部長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○事務局 定刻よりちょっと早いのですが、吉田委員は若干遅れるという連絡が入って おりますので、医薬品第二部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中お集まり いただきまして、ありがとうございます。当部会委員数16名のうち現在12名の御出席 を頂いておりますので、定足数に達しております。では池田先生、以後の進行をお願い いたします。 ○池田部会長 年度末に近くなりましてお忙しいところ、本当にありがとうございます。 早速本日の審議に入りたいと思いますけれども、審議に入る前にいつものように事務局 から配付資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いします。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。資料1及び2があらかじめお送 りした資料でございます。本日の席上配付資料として、議事次第、座席表、委員名簿、 それから資料3として「医薬品第二部会審議品目の薬事分科会における取扱い、毒薬・ 劇薬の指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の指定の要否について(案)」、資 料4として専門委員のリストでございます。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関係された委員 の確認でございますが、本日の議題については関与された委員はいないということでご ざいます。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。本日の審議事項は2題でございますので、先 生方に御協力をお願いいたします。それでは早速議題1について、審査センターから説 明をしていただきたいと思います。医薬品メロペン点滴用0.25gと0.5gの製造承認の 一部変更申請ですが、よろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは審査センターより説明させていただきます。議題1、資料1、医薬 品メロペン点滴用0.25g、同0.5gの製造承認事項一部変更申請承認の可否及び再審査 期間の指定について、審査センターより御説明申し上げます。  本剤は住友製薬株式会社で開発されたカルバペネム系抗菌薬であり、1995年6月に各 種感染症に対する効能・効果にて承認されております。今回の申請は、適応症としての 化膿性髄膜炎、適応菌種として髄膜炎菌、及び小児用量の追加の三点でございます。  本申請の専門委員としましては資料4にありますとおり、岡部委員を始め、斧委員、 月本委員、藤田委員、宮坂委員の5名が指名されました。  今回の申請に際し、幼若動物を用いた毒性試験、近年の臨床分離株に対する本剤の感 受性試験、一つの国内臨床試験成績が提出されております。幼若動物を用いた毒性試験 の結果、本剤の痙攣誘発のポテンシャルは類薬と比較して低いとされております。また、 近年国内で分離された小児及び成人由来の各種臨床分離株に対する本剤の抗菌力につい て検討した結果として、本剤はBLNAR、PISP、PRSPのような耐性菌も含め、化膿性髄膜 炎の主たる起炎菌に対して幅広く抗菌活性を示すこと、近年分離された各種臨床分離細 菌に対しても開発当時と変わらぬ抗菌力を示すことから、現在の小児及び成人における 各種細菌感染症に対しても、開発当時の成人での実績と変わらぬ有効性を示すとされて おります。なお、髄膜炎菌についても7株に対して抗菌力が測定され、そのMICはい ずれも0.015μg/mL以下でありました。  臨床試験については、今回の申請に際し小児細菌感染症を対象とした試験が実施され ております。本試験には52例が登録され、その臨床効果の有効率は95.9%、菌消失率 は97.0%でした。  安全性については、有害事象が42.3%に発現し、そのうち12例、16件が副作用とさ れております。その内訳は下痢、注射部位症状などが主なものでした。中等症とされた ものは静脈炎の1例のみであり、重症とされたものはありませんでした。臨床検査値異 常は36.5%に認められております。このうち副作用とされたものは30.8%であり、5% 以上の頻度で発現したものはAST上昇、ALT上昇、血小板増加であり、いずれも軽 度とされております。  申請当初申請者は化膿性髄膜炎に対する本剤の最高用量を1日6gとして申請してま いりましたが、1日6gという投与実績は本邦においては小児において1例報告されて いるのみであり、成人では初回承認時の治験及び市販後調査を含めてこれまでに投与例 がなく、また海外においても成人14例、小児3例の報告があるのみであることから、審 査センターは1日6gという投与量については評価不能であると判断し、最高用量につ いてはこれまでどおりの2gとしております。  また、今回実施された臨床試験においては、髄膜炎菌による感染症が1例も集積され ておりませんし、in vitroの感受性試験においても本剤の髄膜炎菌に対する感受性は7 株しか測定されていないことから、髄膜炎菌を本剤の適応菌種とすべきか否かについて、 専門委員も含め議論を繰り返しました。結果といたしまして、髄膜炎菌性髄膜炎に対す る有効性評価は十分であるとは言い難いが、本邦においては髄膜炎菌性髄膜炎の症例数 が著しく少ないこと、しかしその疾患は重篤であり、早期に適切、かつ十分な治療がな されるべきであること、海外において髄膜炎菌は本剤の適応菌種とされており、海外で 分離された髄膜炎菌と本邦において分離された髄膜炎菌の感受性に大きな差異が認めら れないことなどの理由から、本剤の適応菌種に髄膜炎菌を承認して差し支えないと審査 センターは判断いたしました。ただし、本剤の髄膜炎菌に対する有効性については、市 販後においても継続的に追跡を行う必要があると考えております。  以上のような審査の結果、本剤に小児用量、化膿性髄膜炎、髄膜炎菌を追加承認して 差し支えないと判断し、医薬品第二部会において審議されることが妥当であると判断し ております。また、小児用量が追加されましたことから、再審査期間は4年とすること が適切であると考えております。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほ どよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。メロペネムの用法・用量と適応菌種について の変更でございますけれども、小児用量を規定したということと、適応菌種として髄膜 炎菌を可とすることに対する申請でございます。先生方の御意見をお伺いしたいと思い ます。いかがでしょうか。どうぞ、三瀬委員。 ○三瀬委員 髄膜炎菌、Neisseria meningitidisの世界的な流行が今アフリカなどであ るということを背景にこういうものを申請されたと想像しています。もう承認されたも のがあるかどうかということをちょっとお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。 日本では髄膜炎菌による髄膜炎は非常に少ないとは思います。 ○事務局 アフリカ等そのベルト地帯と言われる地域では、今でも発症率がとても高い と言われておりますし、また昨今国内外の行き来が盛んになっておりまして、そのよう な地域から持ち込まれることも想像に難くないと思われまして、その辺のことも加味し た上で審査を行っております。 ○池田部会長 よろしいでしょうか、三瀬委員。そのほかいかがでしょうか。後藤委員、 何か御意見ございますでしょうか。 ○後藤委員 髄膜炎菌に対して今承認されている薬剤がかなり時間がたっているという ことで、こうした新しい薬剤が髄膜炎菌に適応を持っているということは、患者さんが 出現した場合に大きな臨床的な武器になると思いますので、問題ないと思います。  質問なのですが、これだけたくさんの国が髄膜炎を適応菌種として承認していて、実 際にもう使われていると思うのですが、その中での問題は6gが可であるかということ だと思います。実際に6gが用量として認められている海外の承認国というのは、どの くらいあるのでしょうか。 ○池田部会長 その資料はございますか。今回6gに関しては申請はあったのですが、 十分な根拠がないということで議論の対象にはならなかったわけですけれども、海外で のデータはございますか。 ○事務局 今のところデータを持ち合わせておりませんので、申請者の方にも確認して みたいと存じます。 ○後藤委員 と申しますのは、先ほどの話のように髄膜炎は重篤な疾患で、これを治療 するために十分な髄液内の濃度が必要だと思うのですが、このデータを拝見しても、薬 剤濃度として検出されないものからMICを超えるものまで、非常にばらつきが大きい。 恐らくこれはblood-brain barrierという特異なところに炎症があるかないかでかなり 通過性が違うということですので、それを最低限担保するためには、例えば2gよりも 6gの方が有効かどうかということが一つ。  それからもう一つは、サンフォードの熱病というよく使われている抗生物質のガイド ブックがあるのですが、それにもメロペネムの用量に関しては6gという記載もござい ますので、その辺を確認していただけるとよろしいかと思います。 ○池田部会長 そうですね。髄膜炎は非常に重症な感染症ですので、十分な抗生物質の 濃度が確保できるかどうかということが大事だと思います。ではそれをよろしくお願い します。そのほかいかがでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 今の血中濃度を維持するということに関連しまして、この製剤の溶 解した後の安定性ですが、添付文書を見ますと生理食塩水などに溶解ということになっ ています。それで添付文書の9ページの下の「9.適用上の注意」を見ますと、室温だと 6時間、5℃ですと24時間以内に使用することとなっています。ところが、68ページ のアメリカの添付文書を見てみますと、溶解液によって大分安定性が異なるとあります。 そのページに表が出ておりますが、塩化ナトリウムの場合には確かに4℃だと24時間と なっていますが、例えばデキストロース注射液とかいろいろな溶解液では安定性がかな り下がると書いてあるのです。これについて、日本の添付文書に記載がないのは片手落 ちかなという気がしますが、必要ないのですか。33ページに英国のものがありますが、 少しの違いはありますが、同じようなことが書いてあります。 ── 吉田委員着席 ── ○池田部会長 センターの方、何かございますか。 ○事務局 御指摘いただきました日本の添付文書の9ページの項目については、もう既 に既承認の部分で書いてあったことでしたので、今回詳細に見ておりませんでしたが、 先生の御指摘のとおりかと思いますので、このような記載をする必要がないかというこ とを申請者の方に確認をとってみたいと思います。 ○堀内部会長代理 添付文書の安定性については、例えば3時間までしか検討していな くて100%あると3時間以内に使用することという表現になっていることがあります。 この点についてはメーカー側も必要以上に安全側にとっているケースが多いと思います が、使用現場ではそれが足かせになってしまうことがあるわけです。したがって、以前 に承認されていることは十分に分かっておりますが、こういう機会でないとなかなか直 していただけないので、よろしくお願いしたいと思います。 ○池田部会長 それではそれは企業の方にフィードバックしていただきたいと思いま す。そのほかいかがでしょうか。どうぞ、よろしくお願いします。 ○川嵜委員 ちょっと細かいことで恐縮ですが、これは添付文書の8、9ページの副作 用のところで、肝臓でGOTなどの上昇があって、これは一番上のところが「5%以上」 となっているのですが、以上というのはどこまでなのかということがあれば、もう少し 定量的なことが分かりやすいのではないかなということ。  それから9ページの7のところも同じようなことですが、下線が引いてあるところで すけれども、「上昇が多く報告されている」と書いてあるのです。この「多く」という のはどれぐらい多いのかなというのも、ある程度目安が分かればやはり書いていただい た方がいいのではないかという気がいたしました。 ○池田部会長 いかがですか。 ○事務局 御指摘いただいた細かい数字については、6ページの「4.副作用」の項目の ところに書いております。こちらの方では注意喚起というか、なるべく目立つような形 と思いまして簡潔にしております。ただ、御指摘いただきましたように分かりにくうご ざいますので、「7.小児等への投与」等に関しては副作用の項を見るようにとか、そう いった指示を加えるように指導させていただきたいと存じます。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。ちなみにこれだと国内の臨床試験ではAST、A LTの上昇は3.1%とか3.8%ですね。これは海外ですね。失礼しました。6.9%、7.9 %ですね。そのほかいかがですか。どうぞ、折笠委員。 ○折笠委員 この経緯が分からないのですが、一つお聞きしたいのは、今回小児が適応 追加になったということですけれども、資料を拝見しているとト-6ですか、前回の段階 でも小児で412例のオープン試験をやっているようですが、そのときはまだ小児までは 無理だということが何かあったのでしょうか。今回更に52例やったのですが、332ペー ジ辺りに付いておりますけれども、細菌感染症(化膿性髄膜炎を含む)患者で小児のオー プン試験を1990年ぐらいに行っていると。そのデータだけでは不十分で小児はとれなか ったのか、それとも何か理由があるのでしょうか。 ○事務局 審査センターより御説明させていただきます。前回実施された試験において は、一部同意取得の問題がございまして、申請を取り下げられている経緯がございます。 ○池田部会長 何か追加することはございますか。よろしいですか。どうぞ。 ○審査第二部長 ちょっと昔の話なので、記憶にとどめているものということで御説明 します。この品物に限った話ではなくて、当時小児における適応の検討のためには血中 濃度の評価が非常に重要だということで、血中濃度の測定と併せて有効性、安全性の検 討が一般的に行われていました。ただその際に、血中濃度の測定をするために一回だけ 投与してデータをとるケースがかなり多くて、これについてはそういう実験的な試験で あるという同意の説明をしていないというのが後で問題になりまして、GCP上の問題 だということで整理をいたしました。当時幾つもの抗菌薬で小児適用のデータ、貴重な データなのですが、残念ながらそういう問題を放っておくわけにいかないということで、 断念せざるを得なかったという経緯がございます。それをデータとしてはできるだけい かしつつも、改めて追加の試験をやってきたというのが幾つものお薬で行われているこ とです。 ○池田部会長 きちんとしたデータで小児に使える方向に今それぞれの企業も努力され ているし、行政の方もそのように進めていることの一環として出てきたというふうに理 解していただければよろしいのかと思います。よろしいでしょうか。委員の先生方から、 そのほか何かございますでしょうか。これまでもずっと使われていたお薬ですし、もし 特に御意見がなければ、小児の用法・用量、そして適応菌種として髄膜炎を追加すると いうことで承認していただけますでしょうか。よろしいですか。それでは承認を可とさ せていただいて、薬事分科会に報告とさせていただきたいと思います。ありがとうござ いました。  それでは続いて議題2に移りたいと思います。審査センターから説明お願いします。 ○事務局 議題2、資料2、医薬品ビリアード錠300mgの輸入承認の可否、生物由来製 品又は特定生物由来製品の指定の要否、再審査期間の指定並びに毒薬劇薬指定の要否に ついて、審査センターより御説明申し上げます。  本剤は抗HIV薬であり、平成15年12月12日に希少疾病用医薬品に指定されており ます。本剤は米国ギリアド・サイエンシズ社で開発された核酸系逆転写酵素阻害剤であ り、米国においては2001年10月にプライオリティーレビューとして承認されておりま す。その後EUを始め21か国で、HIV-1感染症に対し承認されております。本邦に おいては日本たばこ産業株式会社が申請を行っております。  本申請の専門委員といたしましては、資料4にございますとおり木村委員を始め、伊 藤委員、上田委員、大野委員、奥村委員、折笠委員、菅野委員、小嶋委員、白阪委員、 高木委員、根岸委員、林委員の12名が指名されております。  本剤は平成10年11月12日医薬審第1015号、「HIV感染症治療薬の製造又は輸入 承認申請の取扱いについて」に基づいて申請された品目であり、本邦での臨床試験等は 実施されておらず、申請資料としては米国FDAへ申請資料として提出したものと同じ ものが提出されております。  臨床試験は海外において総計1,784例を対象とした四つの第III相試験が実施され、既 存薬に対する非劣性や優越性が確認されております。  安全性においても、本剤に特徴的な副作用は認められておりません。  本剤の特徴といたしましては、耐性ウイルスの発現などにより既存の抗レトロウイル ス療法では十分な効果が得られない患者に対しても有効性が期待できること。既治療、 未治療患者とも有効性、忍容性が期待できること。脂質代謝異常の発現頻度が他剤に比 較し少ないこと。服用回数が1日1回であり、服薬負担の軽減、アドヒアランスの向上 が期待できることがございます。  審査センターは提出された資料について審査を行った結果、日本人における安全性、 有効性については市販後調査において検討が必要であると判断するものの、「審査報告 書」にあります承認条件、指示事項を附帯した上で、本剤を承認して差し支えないもの と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品、新有効成分含有医薬品であることから、 再審査期間は10年とすることが適当であると判断しております。なお、本剤は製剤は劇 薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品には該当しないと判断しております。 薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。本剤はヌクレオチド系の逆転写酵素阻害剤で ございまして、米国で2001年に承認されて、その後EUでも承認され、他の抗HIV薬 で耐性になった患者さんにも使い得るということで、もちろんまだ国内では臨床試験が ない状況で申請が出されたという薬剤でございます。先生方の御審議をお願いしたいと 思います。何かございますでしょうか。これは国内では試験が行われていないわけです けれども、患者さんあるいはHIVを治療しているドクターの方としてはこういう薬剤 を使用した経験、個人輸入の形あるいはHIVの研究班その他で実際に使用した経験と いうのはあるのでしょうか。その辺は何か資料はございますか。 ○事務局 福武班と申します国内未承認のエイズ治療薬を用いた治療に関する研究を行 っているグループがございまして、こちらの集計によりますと、2002年4月〜2003年3 月までの間に、本剤を用いて治療を行われた患者さん14例が報告されております。こち らについても、臨床検査値異常などは若干認められておりますが、特に大きな安全性の 問題等は報告されておりません。 ○池田部会長 その使用経験は非常に少ないですが、そこで重大な副作用等は指摘され ていないということですか。ありがとうございます。委員の先生方、どうぞ御意見を。 どうぞ、堀内委員。 ○堀内部会長代理 これは今年の1月19日に申請されているわけです。しかし、実際に は米国では2001年から使われており、日本で申請されてくるとできるだけ早く承認する ということで迅速審査が行われることになります。この薬が本当に必要ならば、2001年 に米国で承認された時点でもっと早急に申請が行われるべきだと思いますし、そうでな くて今申請されてきたのでしたら、きちんと時間を掛けて十分に審査することも必要で はないかという気がいたしますけれども、その辺の考え方についてはいかがでしょうか。 ○池田部会長 そこを説明していただけますか。 ○事務局 このお薬そのもの自体は、治療に当たられている先生方からのニーズは大変 多うございまして、米国で承認されて以降すぐに先生方からお使いになりたいという声 が上がっておりました。しかし、米国で承認を持っておりますギリアド・サイエンシズ 社が日本のどこの製薬企業に導出するかということで、契約の点で問題がございまして、 日本たばこ株式会社が今回やっと契約を結べて、日本に導入することができるようにな ったという契約上のトラブルが、米国との承認の時期をずらした理由になっております。 ○堀内部会長代理 それともう一つ、この薬はAMP(adenosine monophosphate)のアナ ログで逆転写酵素阻害剤ということですね。これは9番目の逆転写酵素阻害薬ですけれ ども、同じ逆転写酵素阻害剤の中での位置付け、例えば薬価を付ける場合でもこれは普 通後発品と考えられると思います。1日1回でいいとか、耐性があるものにある程度は 効くということはあると思いますけれども、全体の中での位置付けについて教えていた だけますか。 ○池田部会長 審査センターの方からどうぞ。 ○事務局 確かに系統といたしましては9番目でございますけれども、一応ほかの薬剤 で耐性になった患者さんにも使える点ですとか、服用回数が少なくコンプライアンスの 向上が期待できるといった点で、ほかの薬剤より優れているのではないかと考えており ます。 ○池田部会長 よろしいですか。 ○堀内部会長代理 後発品と考えてよろしいですか。 ○審査第一部長 あと位置付けについて付け加えますと、「審査報告書」の13ページに ちょっと書いてありますが、「2003年7月に改訂された米国DHHSガイドラインにお いても、本剤は抗HIV薬による治療歴がない症例における治療開始時の第一選択薬剤 の一つとして位置付けられている」と。海外でもこういう位置付けにされているという こともございます。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。あとは脂質代謝異常の発現率が低いということ、 どちらかというとそのほかの薬よりも副作用が少ないという海外のデータ、第一選択薬 としても使い得るというガイドラインでの指摘があるというようなことがあると思いま す。確かに先ほど堀内委員が言われたように、2001年で今ということになるとその間は どうだったか。ただ、実際にはもうその班で使うという…、患者さんからの要望もある し、それからHIVの治療専門医からも非常に強い要望が実際にはあったということだ と思います。そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 用量設定の問題ですが、米国では300mgが使われているわけですけ れども、15ページの上の方を見ますと、「本剤の剤型、含量からも適宜増減の設定は不 適切と考えられることから、『年齢、症状により適宜増減する』との記載を削除する」 ということで、300mgになっていると思います。この薬剤はほとんど腎排泄の形だと思 うのですが、米国のFDAの報告書の55ページにSteady-stateを投与したときのドー ズディペンデントな体内動態が出ています。添付文書の用量設定を見ると、例えばクレ アチニンクリアランスの程度に応じて、2日に1回投与とか週に2回投与という設定に なっているのですが、腎機能が落ちている患者については本当にそういう投与の仕方で 血中濃度はきちんと維持されるのですか。 ○池田部会長 センターの方から何か。 ○堀内部会長代理 腎機能が変化しているときの動態についてのデータはあるのでしょ うか。 ○事務局 一応腎機能別の動態のデータは添付文書の7ページにも記載がございます が、米国においては919試験で確認されております。このような得られたデータを基に、 先ほど御指摘のございました添付文書の2ページの「用法・用量」の調節を米国におい ても行っていると聞いております。 ○堀内部会長代理 体の大きさなどいろいろ違うと思いますが、それも含めてアメリカ の用量をそのまま日本へ持ってきてよろしいのですかということを聞いているのです。 ○事務局 本薬の動態パラメーターに影響を及ぼす因子としては、申請者の方に確認し ておりますが、体格差による違いは大きな影響を及ぼさないという回答は得ております。 ○審査第一部長 ちょっと付け加えさせていただきますと、基本的には抗HIV薬の場 合はあらかじめ非常に動態の違いが予想されるということでなければお認めいただきま して、承認条件の中にもございますように、薬物動態については市販後に実際の患者さ んに対して使ってみて調べさせていただくと。HIV薬に対して平成10年11月から導 入された制度においては、基本的にはそういう体制を採らせていただいておりますので、 市販後でまた更に問題があれば、そこは抽出していくということをさせていただきたい と思っております。 ○池田部会長 ありがとうございました。どうぞ。 ○堀内部会長代理 それと関連してよろしいですか。今話の出た動態についても承認条 件になっているのですが、これについては試験終了後可及的速やかに提出することとな っていますけれども、基本的には再審査期間の終了までという意味だと思うのです。「再 審査の申請資料として提出すること」ということは、HIVの場合10年間ですね。私は 市販後が大事だと一般的にも思っているのですが、このような条件を付けても結局は発 売されてしまうとなかなかアクティブに検討が行われないケースがあるものですから、 どうフォローするかお聞きしたいのですが。 ○事務局 抗HIV薬にかかわらず安全性定期報告という資料が、承認されてから最初 の2年間は半年に1回、それ以降は1年に1回審査センターの方に提出されてまいりま す。承認条件を付けた品目については、それがきちんと実施されているかということを フォローしております。もし実施されていない場合には、どうして実施されていないの かという理由を申請者に確認しまして、それと同時に承認条件であることから速やかに するように指導しております。また、そのような中で結果が出ました品目については、 安全性定期報告の提出日ないしはそれとは関係なく結果がまとまった段階において、報 告書として審査センターの方で受け取り、内容について確認を行っております。 ○池田部会長 よろしいですか。これは当然全例調査ですよね。 ○事務局 拠点病院における全例調査になります。 ○池田部会長 その調査はどれくらいの期間でこちらの方にデータを返してもらえるこ とになっているのですか。 ○事務局 抗HIV薬の場合は、HRD共同調査協議会という抗HIV薬の承認を持っ た会社が共同で市販後調査をしておりまして、1年に1回サマリーレポートを受け取っ ております。 ○池田部会長 そのほか先生方…。どうぞ、上原委員。 ○上原委員 この薬は日本たばこ産業株式会社が輸入するということですが、この会社 でこれまで抗HIV薬を取り扱ったことがあるのでしょうか。私はちょっと知らないの で教えていただきたいのですが。 ○事務局 審査センターよりお答えいたします。つい先日御審議いただきましたビラセ プト錠など、この会社は既に幾つか抗HIV薬の承認を有しております。 ○池田部会長 よろしいですか。日本たばこ産業は今後もこの医薬品の部門をやってい くのですか。未確認ですが、この会社そのものが医薬品部門から少し離れていくという ことも私はちょっと聞いたものですから。 ○事務局 会社の全般的な動きはちょっとこちらでは把握していないのですが、少なく ともこれ以降にもう一つ抗HIV薬を申請する予定であるということは聞いておりま す。 ○池田部会長 そうですか。どうぞ、センター長。 ○審査センター長 実は1月の始めに医薬担当の重役が私のところに来ました。それで これからまた十分やっていくということでした。 ○池田部会長 そうですか。それは安心しました。どうぞ、上原委員。 ○上原委員 お聞きした理由の一つは、そういうことでしたら市販後調査とかきちんと 責任を持ってやっていただけると思いますので、その辺をしっかり確認しておく必要が あったということ。  それから、最近外国から入ってくる薬が非常に多いのですが、多分輸入申請というこ とで向こうからアプローチするには、販売、それからきちんと安全に使ってもらうため にということで、そういうものを得意とする分野にまず最初にアプローチすると思うの です。そういうことがあってしかるべきだと思うのですが、日本たばこ産業さんという これまでそれほど経験がなかったところに来たのがちょっと不思議だったので御質問し たということ。  それから、先ほどの2001年にアメリカで承認されていながらなぜこれだけ時間が掛か ったかということについて、最初に打診した企業がこの内容について果たして安全かど うかというところの審査というか、受け入れる側で危惧を持ったということで、もしか したらトラブルというか、契約に結び付かなかったということがありはしないかと、そ ういうこともちょっと考えたものですから。それはちょっと内情に入り過ぎますが、契 約がうまくいかなかったということについて、もう少し何か補足して御説明いただける ことがあればと思いました。 ○池田部会長 その辺の説明はありますか。去年の中ごろですか、交渉が成立して日本 たばこ産業が引き受けるということになったと伺いましたけれども。 ○事務局 契約上でどのような問題があってここまで時間が掛かったかということはち ょっと把握しておりませんので、確認しておきたいと思います。 ○池田部会長 これは一貫して日本たばこ産業が交渉していて、その交渉が長引いたと いうことですか。もちろんその辺は今の時点では分からないですね。 ○事務局 申し訳ございません。確認してみたいと思います。 ○審査第一部長 一言よろしいですか。一般的には契約の問題は個々の企業間の、正に 当事者の問題だと思いますので、基本的には私どもは立ち入れないと考えております。 ただ御指摘の点の、安全性上の問題で何かそういう懸念される点がなかったのかという ことについてだけは確認させていただきたいと思います。 ○池田部会長 そうですね。センター長、何か。 ○審査センター長 別に日本たばこの肩を持つわけではないのですが、逆に言うと日本 たばこ産業は今まで抗HIV薬しか出した経験がほとんどありません。抗HIV薬につ いてはかなり経験があるというだけの話です。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。どうぞ、折笠委員。 ○折笠委員 先ほど薬物動態の話が出ましたが、「審査報告書」の11ページに薬物動態 がコーカシアンと我々アジア人と変わらないということですけれども、蛋白結合とか代 謝酵素は余り関係ないのでそう言うのですが、AUCが逆に低くなっているというのは どうしてなのか。例えば低い用量はアジア人、ヒスパニックに多く使われていたのか。 何か理由があるのか、それとも単なるばらつきなのか、分かったら教えていただきたい のですが。コーカシアンなどは3,000ぐらいで、アジア、ヒスパニックが2,300、2,500 と低AUCになっています。 ○事務局 審査センターよりお答えいたします。これは総数が2例ということで非常に 少ないところなのでちょっと悩ましいのですが、専門委員の先生からも高脂肪食で若干 AUCが上がってくるので、その辺の影響もあるのではないかという御意見も頂いてい るところで、その辺はちょっとまだ明確になっていない状況です。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかに、どうぞ。 ○川嵜委員 これは問題があるということではないのですが、添付文書の最初の「禁忌 (次の患者には投与しないこと)」のところに、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のあ る患者」とございますが、こういうものはこういう例があると書くのでしょうか。それ とも、何かある基準で判断して可能性があるという場合に記載されるのでしょうか。ち ょっと教えていただけたらと思います。 ○池田部会長 センターの方、どうですか。 ○安全対策課長 普通は実際に市販後にそういう症例があったとか、あるいは既に類薬 で報告されていて、これも構造上考えてそういう蓋然性が高いのであれば注意喚起をさ せていただくということではないかと思います。 ○川嵜委員 今回はその後者の方だったわけですね。 ○安全対策課長 今回のはちょっと審査の内容まで精査しておりませんので、こちらの 立場としてはちょっと分かりません。 ○池田部会長 センターの方、何か答えられますか。 ○事務局 米国における副作用でございますけれども、今回アレルギー反応等も出てお りますことから、米国の添付文書においてもこの禁忌が書かれておりまして、また日本 では臨床試験は実施されていないのですが、日本においても副作用としてアレルギー反 応も認められていることから書いておくことが適切であろうと判断し、記載するように しております。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかは…。これまでも特に抗HIV薬に関し ては我が国での臨床試験がなくて認められて、承認された後の承認条件とか指導事項と いう辺りの記載、あるいはそれの遵守ということがいつも問題になるのですが、その辺 については何か追加の御質問、あるいは御意見はございますでしょうか。かなり多くの 専門委員の先生方に御意見を聴いて、皆さんこの薬剤の有用性を非常に認識されている ということで意見は一致しているようにお聞きしております。ここの承認条件、指導事 項の文章、あるいはこれについて特に先生方から御意見を頂きたいと思いますけれども、 何かございますか。どうぞ、溝口委員。 ○溝口委員 今おっしゃった指導事項ではないのですが、よろしゅうございますか。「添 付文書(案)」の5ページにあります今おっしゃったアレルギー反応のことですが、頻度 不明で「アレルギー反応」と書いてあったので、少ないだろうと思って質問しなかった のですが、「皮膚及び皮下組織障害」の2%以上に「発疹」とありますが、それではこ のアレルギー反応は発疹ではなくて、どういう反応だったのでしょうか。アナフィラキ シーだとすると問題かなと思いますので、どういう種類のアレルギー反応だったかもし お分かりでしたらお教えいただきたいのですが。 ○池田部会長 センターの方、分かりますか。 ○事務局 アレルギー反応の詳細については現在審査センターの方で把握しておりませ んので、具体的にどのような症状をもってこの「アレルギー反応」という副作用名とし て記載したのかについて、確認してみたいと思います。 ○池田部会長 よろしくお願いします。そのほかはいかがでしょうか。この錠剤は割れ るのですか。これは見るからに簡単に割れそうですが。 ○事務局 割ることは念頭には置いておりませんが、形状からして割ることはそう難し くはないと思われます。 ○池田部会長 そのほか…。どうぞ。 ○堀内部会長代理 この剤型はやはりかなり大きいと思うのですが、この半分で2錠飲 むよりも、こういう大きいものを一つ飲む方がアドヒアランスがいいということですか。 こういう剤形にすることの意味は何かあるのですか。 ○事務局 その点については申請者の方に確認しておりませんが、米国でこの形で造っ ているので、そのままそれを輸入してきているということになっております。 ○池田部会長 そのほか何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。特にござい ませんか。もしないようでしたら、このビリアード錠は承認を可とさせていただいて、 薬事分科会へ報告させていただきたいと思います。ありがとうございました。本日は審 議事項が二つで、報告事項もないということで議題は以上ですけれども、事務局の方か ら何かございますか。 ○事務局 事務局から御報告させていただきます。当部会で昨年御審議いただきました 塩酸インジセトロン「ニッシン」、それからシンセロン錠8mg、動注用アイエーコール 100mg、動注用コナブリ100mgの品目については、今年の1月29日付けで承認いたしま したので御報告いたします。  また、次回の日程でございますが、4月15日木曜日の2時からとなっております。よ ろしくお願いいたします。 ○池田部会長 それでは先生方、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとう ございました。本日は時間が少し早いですが、これで終了させていただきたいと思いま す。ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 13 -