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I 相談体制の在り方について

 1 ケースワーカーの資質向上の在り方について

 (1) 社会福祉主事任用資格保有率
  査察指導員(生活保護担当以外を含む。) 現業員(生活保護担当)
職員数 有資格率 資格保有率 職員数 有資格者 資格保有率
10 2,879人 2,171人 75.4% 9,195人 7,134人 77.6%
11 2,892人 2,172人 75.1% 9,353人 7,062人 75.5%
12 2,852人 2,163人 75.8% 9,531人 7,158人 75.1%
13 2,893人 2,150人 74.3% 9,932人 7,373人 74.2%
14 2,913人 2,168人 74.4% 10,318人 7,693人 74.6%
※社会福祉主事: 社会福祉主事は、事務吏員又は技術吏員とし、厚生労働大臣が指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者等から任用される。福祉事務所の査察指導員及び現業員は社会福祉主事でなければならないとされている。

 (2) 社会福祉士資格保有率
  査察指導員(生活保護担当以外を含む。) 現業員(生活保護担当)
職員数 有資格率 資格保有率 職員数 有資格者 資格保有率
10 2,879人 47人 1.6% 9,195人 121人 1.3%
11 2,892人 46人 1.6% 9,353人 115人 1.2%
12 2,852人 42人 1.5% 9,531人 191人 2.0%
13 2,893人 46人 1.6% 9,932人 194人 2.0%
14 2,913人 50人 1.7% 10,318人 211人 2.0%
※社会福祉士: 専門的知識及び技術をもって、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うことを業とする。大学等において厚生労働大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者等で社会福祉士試験に合格した者は、登録を受けて社会福祉士になることができる。

資料: 福祉事務所現況調査(厚生労働省社会・援護局総務課)
 各年10月1日の状況

 (3) 「生活保護担当職員の資質向上に関する提言」(生活保護担当職員の資質向上検討委員会)概要

  1) 課題
 問題解決の視点と課題
(1)  職務に対する魅力のつくり方
 研修内容の充実、専門性の整理、担当職員業務内容の明確化が課題
(2)  組織的に取り組む仕事の進め方
 制度の周知、専門性の確保、人事評価の適正化、研修システムの体系化が課題
 問題解決の基本的考え方
(1)  制度への信頼
住民から信頼される業務遂行のあり方
(2)  専門性の確保
担当職員に専門性をどこまで求めるのか
組織的に専門性をどう確保していくのか
(3)  業務の安定的な継続
研修のあり方

検討の基本フレーム
検討の基本フレームの図

  2) 資質向上のあり方
 基本的枠組みを明示
 生活保護業務と一般的な福祉相談支援業務との区分、業務内容を明確化
 仕事の意義が感じられる研修や自らの仕事の結果を評価する研修等、現任研修を工夫、充実
 相談・監督の充実、他の組織等とのコーディネートや様々な専門家の活用等、査察指導員の業務向上
 職員の経験のバランスを図る、ケース検討会の定期的開催、研修環境の整備充実等、組織的に対応
 PDSシステム(Plan Do See System)〜業務活性化のための新たな人事育成システム〜
(1)  集中と選択の研修システム(目標・計画策定:Planサポート)
 集中的に能力を向上を誘導する研修体系の構築
 実践カリキュラムの開発と教材の提供
 義務づけ研修の導入
 研修実施の責務と分担(国、地方公共団体及び福祉事務所が有機的連携)
(2)  説明責任を果たす情報提供システム(実践活動:Doサポート)
 生活保護制度説明方法のマニュアル化
 実践研修カリキュラムと焦点化した教材を活用したOJT
 生活保護行政に係る情報発信(広報)と他の行政部門とのネットワーク化
 説明責任という観点からのケース記録
(3)  効果的な点検システム(点検・評価:Seeサポート)
 自己評価・バックアップ体制の構築
 職場における職務遂行課題の洗い出し


 2 福祉事務所の体制の在り方について

 (1) NPO等の民間団体との効果的な連携、アウトソーシングの事例

 
「宿泊所入所者等相談援助体制強化事業」の実施
 目的
 現在、東京都新宿区においては、路上生活者に対する保護は、その件数の多さから、住居となる宿泊所の確保を中心として行わざるを得ず、必ずしも入所後の健康・金銭管理の指導、就労確保の支援等が十分ではないことから、次の事業を実施。
2 事業内容
(1)  NPO団体の運営する宿泊所に主任生活援助相談員及び生活援助相談員(3名)を配置し、以下の相談援助活動を委託により行う。
  (1)  日常生活に対する援助(食生活、健康管理、金銭管理等)
  (2)  地域及び職場での対人関係に関する援助
  (3)  家族、親族との交流促進
  (4)  求職活動、就労に関する支援
  (5)  アパート等の住宅確保に関する支援
(2) 実施場所
基幹となる宿泊所(生活援助相談員を配置する宿泊所)及び地域の宿泊所(巡回)
事業の仕組みの図
その他福祉事務所における定型的事務のアウトソーシング
 扶養義務調査等の各種調査のうち、郵送、資料整理等の定型的事務について、福祉事務所に配置される嘱託職員に行わせることなどにより、保護の適正実施を推進するとともに、ケースワーカーがその本来業務を重点的に行えるようにする。

 (2) 諸外国における民間と連携した公的扶助施策

 
アメリカ合衆国
 貧困家庭一時扶助(TANF)
 未成年の児童等がいる世帯に対する扶助であり、原則として5年間までの給付
 以下のような就労活動等を平均週30時間原則義務 づけ(違反の場合、給付の減額又は停止)
通常の雇用
助成金が支給される民間又は公共部門での雇用
実地職業訓練(on-the-job training)
地域サービス施策(community service programs)
職業教育訓練

 メリーランド州の例
 就労支援に当たって、地域諸団体との連携が行われている。
例)・ コミュニティカレッジにおける職業訓練コースの提供
NPOによる運転教習の実施
 
イギリス
 就労プログラム(ニューディール政策)
 ブレア政権下の「福祉から就労へ」を主眼に置いた雇用対策プログラム
 求職者手当(※)を給付しながら、失業者の就労
 能力を向上させ、労働者として市場に送り込む
(1)  最長4ヶ月の求職活動(公務員の資格を持つ個人アドバイザーの援助)
(2)  (1)によっても就労できない場合には、以下のいずれかを選択
補助金付き雇用
職業訓練
ボランティア団体での就労
環境保護団体での就労
 障害者対策では、民間の障害者向け就職あっせん組織(Job Brokers:入札により就労支援に参加)への紹介も実施

 求職者手当
 失業保険給付に相当する拠出制求職者手当と、資産調査を伴う資産調査制求職者手当の総称
 職業安定所と求職協定を締結することを義務づけ(協定違反の場合、給付の停止)

 (3) 医療扶助におけるアウトソーシングの現状

 
各福祉事務所においては、被保護者に対する医療・保健面での専門的助言指導を行うため、保健所や医療機関等の関係機関との連携を図っている。
いわゆる社会的入院患者の退院に向けた支援を行うため、専任の嘱託職員を雇い上げ、その活用を図る。
(事業名:「退院促進個別援助事業」(平成16年度から実施予定))
指定医療機関からの診療報酬請求の内容点検については、半数以上の実施機関が民間の点検業者に委託している。

○自治体における関係機関との連携施策の事例
福祉事務所、精神保健福祉センター、医療機関等の担当者による連絡会議及び合同ケース検討会を実施し、協力して自立支援を行っている。
ケースワーカーの家庭訪問に、保健所の保健師が同行し、被保護者の保健指導等を行っている。
看護師や保健師等の有資格者を、福祉事務所の嘱託職員として雇い上げ、被保護者の病状把握、保健指導を行っている。

○「退院促進個別援助事業」の概要(平成16年度〜)
 医療扶助費の約7割は入院に係る費用であり、いわゆる社会的入院の解消が緊急の課題とされている。このような社会的入院患者の退院に向けた支援を行うため、福祉事務所に嘱託職員を配置(又は社会福祉法人、NPO等適当な機関に委託)し、患者の退院阻害要因の把握、患者の状態に即した適切な受入先の確保及び退院後に必要なサービスのコーディネートを行う。
(生活保護費補助金のメニューとして実施予定)

診療報酬明細書(レセプト)の内容点検の状況
−実施体制別の実施機関数−

実施機関数 * 点検業者委託 点検職員雇上 ケースワーカー・
嘱託医等
1,183 643 392 148
100.0% 54.4% 33.1% 12.5%
(H14年度実施状況:保護課調)
*  本庁で一括実施している場合があるため、福祉事務所数とは一致しない。
 レセプト点検に係る費用(委託料、賃金等)については、生活保護費補助金において補助。

医療扶助費の内訳(平成13年度)の図

 3 生活保護の実務の現状

 (1)会計検査院による検査結果

  (1)検査期間   平成15年1月〜7月
  (2)調査対象県   24都道府県、130事業主体(平成14年は24都道府県、130事業主体)
  (3)指摘内容
   ア 件数   8都府県市(12事業主体)21ケース(不当事項として平成15年に国会に報告された事項)
(平成14年は10都道県市、11事業主体)
   イ  指摘事由
(1)  就労収入の無申告及び過少申告により保護費が過大に給付されていた事例  14ケース
(2)  各種年金・恩給による収入の無申告により保護費が過大に給付されていた事例 2ケース
(3)  恩給を担保として借入を行い、その一時金収入の未申告により保護費が過大に給付されていた事例 2ケース
(4)  社会保険が適用される者に、医療費の全額が医療扶助として給付されていた事例 2ケース
(5)  就労収入及び各種年金による収入の無申告により保護費が過大に給付されていた事例 1ケース
   ウ  不当支出金額(概数)  (14年不当事項分)
 過大保護費  85,393 千円   ( 133,696 千円)
 過大国庫負担金 64,044   ( 100,185
 国庫返還金(時効消滅分を除く) 61,818   ( 86,643
 時効消滅額 2,226   ( 13,542
  (4)不当支出が生じた要因
   ア  被保護者の要因
 稼働収入、各種年金についての申告が虚偽又は無申告
   イ  実施機関の要因
(1) 収入申告書の徴収が不徹底
(2) 関係先調査が不十分  ・課税調査
 ・年金受給権の調査
(3) 調査結果の確認、照合が不十分

 (2) 生活保護法に関する審査請求の年度別裁決件数

年度 すべての審査請求事項 うち保護の開始又は変更申請の
却下に関する事項
裁決件数(単位:件)

[b]/[a]
裁決件数(単位:件)

[d]/[c]
総数
[a]
うち認容裁決
[b]
総数
[c]
うち認容裁決
[d]
平成10 156 30 19.2% 81 26 32.1%
平成11 142 30 21.1% 59 21 35.6%
平成12 174 28 16.1% 75 16 21.3%
平成13 191 29 15.2% 74 12 16.2%
平成14 161 25 15.5% 61 14 23.0%
資料: 福祉行政報告例
注) 「認容裁決」の主な理由としては、処分の理由附記不備、収入状況の認定誤り等がある。


   他法他施策との関係 −各種入所施設に入所する被保護者の各扶助の取扱い−

施設名 生活扶助 住宅扶助 医療扶助 他の制度による給付
救護施設 救護施設等基準生活費 なし あり 住宅費・施設内サービスに係る人件費等(措置費)
更生施設 救護施設等基準生活費 なし あり 住宅費・施設内サービスに係る人件費等(措置費)
病院 入院患者日用品費 なし あり 食事代・住宅費・施設内サービスに係る人件費等(医療扶助)
介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
介護施設入所者基本生活費 なし あり 食事代・住宅費・施設内サービスに係る人件費等(介護保険・介護扶助)
養護老人ホーム なし なし あり 食事代・日常生活諸雑費・住宅費・施設内サービスに係る人件費等(措置費)
婦人保護施設 なし なし あり 食事代・日常生活諸雑費・住宅費・施設内サービス係る人件費等(措置費)
軽費老人ホーム A型 居宅基準生活費 なし あり 住宅費・施設内サービスに係る人件費等(措置費等)
           ケアハウス 居宅基準生活費 あり あり 施設内サービスに係る人件費等(措置費等)
知的・精神障害者グループホーム 居宅基準生活費 あり あり 施設内サービスに係る人件費等(支援費等)
母子生活支援施設 居宅基準生活費 なし あり 住宅費・施設内サービスに係る人件費等(措置費)


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