(1) | 在留資格の拡大 いくつかの在留資格について定義を拡大するとともに、業務独占資格に係る分野について、受け入れ範囲を拡大する。
〔技術の定義〕
| 現在、入管法第七条第一項第二号の基準を定める省令(以下、省令)の「技術」の項の下覧に掲げる活動に関して、全ての業種において、「大学を卒業し若しくはこれと同等以上の教育を受け又は十年以上の実務経験により」とする要件を削除する。現在、情報処理技術者については、情報処理技術に関する試験の合格、または資格の保有を前提に、この要件が緩和されている。全業種にこうした要件緩和を拡大することが求められる。 |
〔人文知識・国際業務の定義〕
| 省令の人文知識・国際業務の項の下覧に掲げる活動に関して、大学を卒業していない場合に求められる「十年以上の」実務経験という要件を「四年以上の」と改正する。大学卒業に係る年限は通常4年であり、同等年数の実務経験で十分であると考えられる。 |
〔企業内転勤の定義〕
| 省令の企業内転勤の項の下覧に掲げる活動に関して、申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において「一年以上継続して」業務に従事するという要件を「一カ月以上継続して」と改正する。外国において採用後、基本的な業務・日本語研修(1カ月程度)を終えた後、すぐに日本において活用したい(外国人としても日本で就労したい)場合に、1年以上という要件は長い。 |
〔投資・経営の定義〕
| 省令の投資・経営の項の下覧に掲げる活動に関して、投資については「二人以上の本邦に居住する者が従事すること」が要件とされているが、これを削除する。二人以上の本邦居住者が従事しなくても、日本経済の活性化に資する投資を行なう外国人を受け入れることができるようにする。 |
〔業務独占資格分野における受け入れ範囲の拡大〕
| 弁護士、公認会計士といった「法律・会計業務」、医師、歯科医師といった「医療」においては、前者における、外国法事務弁護士、外国公認会計士を除けば、日本国の法律上資格を有する者が行なうこととされている業務に従事する活動(いわゆる「業務独占資格」)となっており、要件がきわめて厳しい。弁護士、公認会計士、医師、歯科医師については、たとえば、アメリカ、欧州連合加盟国等の先進国、経済連携協定を締結する国、アジア諸国等が認定する同様の資格について、資格要件の緩和によって、在留資格(入国・滞在、就労)を認めるようにする。 企業活動の国際化に伴い、諸外国の弁護士、公認会計士に対するニーズは高まっている。現在も、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法、公認会計士法第十六条の二によって一定の業務が認められているが、その範囲は限定されている。また、医師、歯科医師についても、日本人に限定しなくても、業務に支障のない範囲で日本語を習得していれば、その技術を活かすことは可能である。 これらは、国の総合規制改革会議においても既に指摘されており、国民生活の利便性の向上、当該業務サービスに係る競争の活性化等の観点から、業務範囲の見直し、資格間の相互乗り入れ、資格の廃止等を含めた制度のあり方を見直すこととなっている。 |
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(2) | 在留年数の延長
〔最大在留期間の5年への延長〕
| 現在、「外交」「公用」及び「永住者」以外の在留資格に伴う在留期間は、3年を超えることができない(法二条の二、3項)こととなっているが、これを5年に延長する。たとえば、ドイツ、イギリスは5年、フランスは10年となっている。在留期間については、1999年10月に改正が行なわれ、在留期間の延長が行なわれているが、その後の国際的な経営環境の変化を踏まえ、さらに延長することが望ましい。 |
〔在留期間の区分の細分化と区分選択の自由化〕
| 在留期間は、省令において、14資格のうち、「興行」を除く13資格について、在留期間が3年又は1年となっている(「興行」のみ1年、6月又は3月)。これを5年に拡大するとともに、期間の区分を5年、4年、3年、2年又は1年へと細分化した上で、在留資格認定証明書を申請する外国人が、この区分のなかから、従事する業務に応じた在留期間を選べるようにする。そうなれば、在留期間に応じた基準の明確化が図られるとともに、申請する側の外国人も柔軟な対応が可能となる。 |
〔在留期間と有期労働契約期間との整合性〕
| 現在、入管当局の指導により、在留期間1年の就労ビザを毎年更新し、雇用契約も1年として毎年更新を繰り返している企業がある。外国人は自己のキャリア・プランを明確にもっており、日本企業で3年、5年と働いて、その間どのような仕事を成し遂げられるかを常に意識している。前述のように在留期間が延長されても、有期労働契約期間が1年では、高度な技術、専門知識をもった外国人を日本企業に惹きつけることはできない。 在留期間の見直しの際には、有期労働契約期間との整合性をとることが必要である。現行の労働基準法上では、有期労働契約期間は1年(高度の専門的知識を有する者は3年)であり、これが2004年1月より、3年(同5年)に改められる。そのため、在留期間と労働契約期間を3年に合わせることが可能となる。さらに在留期間を5年に延長する場合には、入管法上の在留資格の要件と、改正労働基準法上の高度な専門知識等を有する者の要件を調整することが必要となる。 |
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(3) | 在留資格認定証明書不交付理由のさらなる明確化 外国人が、短期滞在以外の資格において入国しようとする際には、在留資格該当性・基準適合性の要件に適合しているかどうかを法務大臣が審査し、認められた場合のみ在留資格認定証明書が交付される。そして不交付が決定された場合には、別表以上の具体的な理由が明示されない。省令あるいは告示によって、不交付理由がより明確にされれば、入管によって基準が異なるのではないかという疑念を払拭することにもつながる。 この場合、人権(プライバシー権)の問題にも最大限の配慮が必要である。たとえば申請者の適性等に関する情報のみを公開した上で、審査基準を具体的に明確にされれば、入管行政の透明性を高めるとともに、外国人の側でも申請する際に十分準備を行なうことが可能となる。
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(4) | 在留資格取得時の手続きに係る処分の簡素化・迅速化 日本に入国を希望する外国人は、前述の通り、本人または代理人の申請により、審査で認められた場合に在留資格認定証明書が交付され、在外公館においてこれを提示して査証の発給を受けて、入国・滞在、就労が可能となる。在留資格認定証明書の交付申請に当たっては、共通の申請書のほか、在留資格別の書類が必要となるが、在留資格によっては、多くの書類が必要であり、また記入内容・方法等が複雑であるため、多くは行政書士や受け入れ機関がこうした手間を負担している。したがって、不要な書類の提出を求めないとともに、一般にも分かりやすい記入方法とする。 さらに、法務省入国管理局における書類審査に時間がかかるという問題も指摘されている。個人差はあるが、平均で2〜3カ月、長い場合には半年という審査期間を要するケースもある。こうした状況は、優秀な外国人をいち早く受け入れて事業を遂行したい企業からすれば余りに長いといわざるを得ない。これは、行政手続法上も適用除外となっており、標準処理期間も設定されていない。こうした煩雑な手続きに係る手間やコスト等は、企業がスピード感を持ってビジネスを展開する上で大きな障害となる。煩雑な手続きのため、受け入れを断念するケースもあり、手続きの簡素化が図られれば、外国人自らが申請を行なうことも可能となろう。 加えて、たとえば過去数年間にわたり申請において不許可になった事例がなく、かつ許可された外国人に関して事故が発生した事例もないような企業等を優良事業者として認定する制度を設け、こうした事業者が代理人として在留資格認定証明書の交付を申請する場合には、特別に迅速かつ簡易な手続きにより、当該申請に対する処分を行なえるようにすべきである。 なお、イギリスでは、電子申請システムが導入されており、申請書受理後1日で7割、受理後1週間で9割が処理されている。
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(5) | 社会保障協定の早期締結 日本との人材交流が活発な国との間において社会保障協定の締結をすることは、海外の優秀な人材を日本に誘致する上でも、きわめて重要である。現在までのところ、日本が締結した社会保障協定はドイツ(2000年発効)、イギリス(2001年発効)の2カ国とのものに過ぎない。 今般、アメリカ、韓国との間で交渉が実質合意に達したことは評価できるが、引き続き、社会保障制度が整備されている国との間での協定の締結をめざしていくよう求めたい。特に、既に交渉中の国(フランス、ベルギー)、申し入れのある国(オランダ、イタリア、ルクセンブルグ、カナダ、オーストラリア)、その他の重点国(アジア諸国)との協定は、外資系企業が日本に優秀な人材を送り込むインセンティブともなろう。
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(6) | 高度人材の定住促進に向けた制度(日本版グリーンカード)創設の検討 専門的・技術的分野の外国人がその能力を日本で十二分に発揮できるようにするためには、彼らが日本において自己のキャリアプランを長期的に考えることができる環境を用意する必要がある。たとえばイギリスでは、2002年1月、科学、金融等の専門技術者の受け入れを拡大する観点から、「高度技能移民プログラム」を導入している。図表5の得点計算方法に基づき75点以上ある場合、求人がなくてもまず1年間の滞在が許可され、さらに最大3年の滞在延長が可能となっている。また合計4年間、高度技能移民として就労した後には、定住が申請できることになっている。 研究人材など、極めて高度な専門的・技術的分野の外国人の受け入れ、定住の促進は、世界的にみて既にひとつの大きな流れになっている。日本においてもこうした制度・システムの創設に向けて検討を行なう必要がある。
図表5−イギリスの高度技能移民プログラム得点方法 |
学歴 |
博士号保持者=30点、修士号保持者=25点、学士号保持者=15点 |
職歴 |
学卒レベルの職に5年(博士号保持者は3年)以上就労=15点、上級レベルないし専門職に2年以上=10点 |
過去の収入(年収) |
4万ポンド以上=25点、10万ポンド以上=35点、25万ポンド以上=50点 ←EU諸国、アメリカ、日本の場合 |
就労希望分野での業績 |
「例外的な」業績がある場合=50点、「重要な」業績がある場合=25点 |
一般開業医特別枠 |
国家保健サービスの一般開業医として就労を希望する海外の医師を招致するための特別枠 |
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出典:『通商白書2003』(経済産業省平成15年7月) |
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