04/01/16 第2回がん検診に関する検討会議事録           がん検診に関する検討会(第2回)議事次第   日時 平成16年1月16日(金) 10:00〜12:06   場所 国立がんセンター中央病院 管理棟特別会議室 1.開会 2.議題   ○乳がん検診について 3.その他 4.閉会 ○麦谷老人保健課長  おはようございます。老人保健課長でございます。  委員の先生方に御案内を差し上げました時間となりましたので、第2回のがん検診に 関する検討会を開催させていただきます。  まず、本日の委員の出席状況でございますが、笹子委員、渡邊委員より、事前に御欠 席の連絡をいただいております。日本医師会の櫻井委員は出席ということで御返事をい ただいておりますので、ほどなくお見えになるかと思います。  また、本日は、乳がん検診につきまして御発表をいただくために、参考人として、日 本産婦人科医会より永井常務理事、岡山県医師会より岡崎理事、マンモグラフィ検診精 度管理中央委員会より森本委員長に御出席をいただいておりますので、御紹介を申し上 げます。  それでは、以後の進行を垣添座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。 ○垣添座長  皆さん、おはようございます。早朝からお集まりいただきまして、誠にありがとうご ざいます。本日と次回の会場は、いつもの本省と違いまして国立がんセンターにお越し いただきました。たまたま私どもで会場が準備できたということで、特別の意味はあり ませんので、ひとつ御了承ください。  議題は、乳がん検診についてということでありますが、それに移ります前に、まず、 資料の確認を事務局からお願い申し上げます。 ○椎葉課長補佐  それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第でございます。議事次第には名簿や開催要綱も添付しております。  続いて、本日の資料でございますが、資料一覧がございますので、こちらを御参照い ただきながら御確認をお願いしたいと思います。  まず、資料1、大内委員の発表資料でございます。  それから、資料2、永井参考人の発表資料でございます。  資料3、岡崎参考人の発表資料でございます。なお、岡崎参考人の発表資料でござい ますが、9ページに差替えがございまして、修正したものをつけてございます。  資料4、森本参考人の発表資料でございます。また、マンモグラフィ検診精度管理中 央委員会の資料で、水色の冊子、これは、委員のみの配付となっております。  以上でございます。 ○垣添座長  それでは、議事にまいります。乳がん検診についてということで、進め方でございま すが、今御紹介いただきましたように、まず、大内委員から御発表いただきます。それ から、永井参考人、岡崎参考人、森本参考人から引き続きまして御発表いただきます。 それぞれ質疑をお受けいたしまして、全体の発表が終わりましたら、残った時間を使っ て全体の討議を行うという予定でおります。時間が2時間と限られておりますので、ど うぞ簡潔に要点を御説明いただければと思います。  では、まず大内先生、よろしくお願いいたします。 ○大内委員  それでは、資料1に基づきまして、御説明いたします。  まず、目次がついていますが、9項目の資料からなっております。最初に、日本にお ける乳がん検診の研究経緯について簡単に御説明いたします。  昭和62年度からの老人保健事業の第2次5カ年計画で、視触診による乳がん検診のス タート以降の研究経歴です。特に、厚生省、現厚生労働省等の国の研究班の経緯につい て記載しています。アンダーラインはがん研究助成金による研究班の課題名の部分であ ります。この中で、特に注目していただきたいのは、平成3年度の公衆衛生審議会の 「保健事業第3次計画に関する意見」の中に、乳がん検診において画像診断の導入に関 する調査の必要性が指摘されています。下段には「乳がん検診へのX線撮影導入に関す るモデル事業」とあります。これが平成2年度から平成6年度において実施されていま す。  それから、平成11年12月、「医療保険福祉審議会老人保健福祉部会高齢者保健事業の あり方に関する専門委員会報告」におきまして、乳がん検診についてはマンモグラフィ 併用方式の導入となっております。  続いて、平成12年3月に、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」 の改定がありまして、これは老健第65号でありますが、厚生省老人保健福祉局老人保健 課長通知が全国に発出されております。これが、50歳以上へのマンモグラフィ導入に至 った経緯であります。  その後、前回のこの検討会において辻参考人からも資料が出ていますが、平成13年12 月の厚生労働省がん検診の企画・評価に関する検討会議において、40歳代のマンモグラ フィ導入についての提言が述べられております。  以降、平成13年度の厚生労働省老人保健事業推進等補助金による大内班、それから、 平成14年度の同じく辻班とありますが、これは平成12年の通知を受けまして、40歳代へ のマンモグラフィ導入に向けて、いろいろな課題について検討を重ねてきたということ があります。  参考までに老人保健事業の第1次から第4次計画までの流れを簡単に示しました。こ の検討会が恐らくは第5次計画に向けてのがん検診についての基本指針(案)策定の場 になるかと思いますので、これを添付しました。  続きまして、主要部位別の年齢調整罹患率の年次推移ですが、これはウェブ上で閲覧 可能です。厚労省がん研究助成金による津熊班で、地域がん登録研究班というものがあ ります。そこで全国がん罹患数及び罹患率の推計値を見ることができます。右側が女性 の臓器別の罹患率を、上は日本人モデル人口、下は世界人口に合わせてまとめています が、いずれにおきましても1992年ないし1994年から、乳がんの罹患率が第1位になって いるということです。  次に、年齢階級別の乳がん罹患率の推移を見てください。6ページですが、上段は5 歳階級別に1975年からデータ使用可能ですので、1998年までの罹患率を記載したもので す。右側の増加率といいますのは、1975年を1とした場合に1998年は何倍に増えている かということを示しています。45歳から49歳に御注目いただくと、この部分が2.24倍と 最も増加が高くなっています。  更に、下の段で10歳階級別を見た場合に、40〜49歳を見てみますと、増加率は2.20倍 となっています。  下の折れ線グラフですが、これもやはり津熊班のデータによりますが、年次別の推 移、5年ごとですが、1998年が一番新しいので掲載していますが、最近特に45〜49歳の 乳がん罹患率が増えているということを表しております。  次に、8ページに、日本における40歳代のマンモグラフィ検診の実際のデータはどう なっているかということを一部お示しいたします。これは、宮城県と徳島県のデータが 利用できますので、それをここに記載しました。表の見方ですが、左側はマンモグラフ ィ及び視触診の併用、右側が視触診単独です。乳がん発見率を見ていただくとおわかり かと思いますが、マンモグラフィ併用と視触診単独では、マンモグラフィ併用の方が2 倍から3倍高いことと、感度も視触診に比べてはるかにすぐれていることです。  もう一つの見方ですが、40歳代と50歳以上ということでマンモグラフィ検診の左側を 見ていただくと40歳代と50歳代を比べて宮城、徳島とも乳がん発見率が高い、例えば宮 城の場合40歳代で発見率が0.20%、50歳代で0.21%、感度は40歳代で93.8%、50歳代で 95%と遜色ないということが示されます。  特異度と言いますのは、がんでないものをいかに引っ掛けないかを意味し、検診の精 度の指標になります。この場合、注目していただきたいのは、40歳代は特異度が50歳代 に比べて低いことです。この理由は、やはり40歳代女性では乳腺密度が濃いためにがん でないものを引っ掛けやすいということで、その分、特異度が下がっているということ です。この点が40歳代へのマンモグラフィ導入の問題であります。  続きまして、新たながん検診手法の有効性の評価、これは前回の辻参考人の資料でお 配りしていますので、乳がんについてのみお話しさせていただきます。  11ページには、乳がん検診の評価した項目として視触診、マンモグラフィ、及び超音 波とあります。  12ページには、その評価判定、根拠の質とあり、今日は乳がんだけをご紹介します が、13ページに視触診単独、マンモグラフィ併用、超音波併用とあります。「○」と 「−」とありますが、「○」は、そのような研究が行われていて報告が出ていますとい う意味です。効果があるとかないとかの「○」ではありませんので御注意ください。  注目していただきたいのは、マンモグラフィ併用の部分です。ほとんどのところで 「○」、つまり研究が実施されているということです。ほかのがん検診を見ていただき ますと、このマンモグラフィ併用の検診ほど国際的に検証を受けた検診はかつてないと いうことを、まず理解していただきたいと思います。  その上で評価判定が、視触診単独においてはI-c、いわゆる有効性を示す根拠がない とするものです。その根拠の質が3、すなわち症例対象研究です。  50歳以上のマンモグラフィについてはI-aで、40歳代についてはI-bということで す。その根拠の質というのは、最も高いとされるRCT(無作為割付比較対照試験)で あります。  次の14ページには、全体のがん検診のまとめに、I-aとして視触診とマンモグラフィ 併用の50歳代以上、I-bとして視触診とマンモグラフィ併用の40歳代が記載されていま す。一方、死亡率減少効果がないとする相応の根拠があるとして、視触診単独の乳がん 検診がI-cとなっています。  15ページに、乳がんについてのまとめが書いてあります。ここで、特に強調したいの は、視触診単独による乳がん検診については、死亡率減少効果がないとする相応の根拠 があると断定しています。一方で、40歳代について死亡率減少効果を示す相応の根拠が あるとしています。  次のページ以降は、その詳しいデータについてまとめてあります。17ページに年齢階 級別の乳がん検診の受診率及び発見率の推定とあります。30歳代を含めていいのかどう かがよく議論になりますが、ここで参考になりますのは右端の陽性反応適中度、つまり 要精検とされた方が100人いたとして、そのうち何名が結果的にがんであったかという、 いわゆる適中率は、例えば50歳代が2.5%に対して、30歳代は0.8%と、極めて低いとい うことがその実態です。  18ページ、表2に乳がん検診の要精検率・精検受診率等があります。これは日本対が ん協会平成11年度実績とあります。このデータは平成12年のデータで、少々古くなって います。そこで、平成14年度のデータが今週発表されましたので、書き加えて下さい。 対がん協会報476号、全国41支部のデータから、問診・視触診の受診者数が60万4,333 名、マンモグラフィ併用が39万7,871名、超音波併用が7万6,749名、合計107万2,953名 となります。  発見乳がんが、上から視触診単独498名、マンモグラフィ併用887名、超音波併用88 名、合計1,473名です。  発見率ですが、上から順に0.08%、0.22%、0.12%、総計で0.14%となっています。 これからわかりますのは、この3年間でマンモグラフィ併用検診が約3倍に増えている こと。その増えた主な理由は、超音波併用が減ってきているのが一因ですが、しかし、 視触診単独が65万人から60万人と余り変わっていない、視触診単独が今でも実施されて いるという現状です。  19ページには発見契機別の進行度の比較が示されています。乳がんの生存率は発見の ステージに大きく影響します。この「Tis」といいますのは非浸潤がんで、これを含 めて、0、Iまでが早期がんです。II以上が通常がんになりますので、早期がんといい ますと左の3つの枠が当たります。早期がん合計は、マンモグラフィ併用では76%、視 触診では55%、外来群では30%ということになります。  次に20ページですが、視触診検診による死亡率減少効果に関して今まで研究はなかっ たのですが、1999年に発表した宮城と群馬における症例対象研究が紹介されています。 乳がん死亡に対する乳がん検診受診歴のオッズ比、つまり乳がんで亡くなった方々の検 診の受診歴をチェックすることによって、検診受診がどれだけ乳がん死亡を減らしたか ということがわかります。その結果は、オッズ比で見ますと0.93、すなわち7%の減 少。しかし、95%信頼区間を大きく超えますので、有効性は示されません。同じような 研究を子宮頸がん、胃がんで行いますとオッズ比が0.3から0.4、つまり60%から70%の 死亡率減少効果があると言われています。したがって、視触診単独による乳がん検診の 有効性は、ここでは示されないということになります。  次のページですが、これは世界22か国の乳がん検診の現状についてまとめた表です。 日本を除くすべて、特に先進国においてはマンモグラフィが乳がん検診の基本になって います。  日本においては、今までRCTあるいは症例対照研究による、マンモグラフィの死亡 率減少効果についての研究が行われていませんので、マンモグラフィ検診が乳がん死亡 率を下げるというエビデンスはまだ得られていません。したがって、日本のデータを、 今まで有効性があるとされてきたHIP等のRCTあるいは、Non-RCTである米国の BCDDPトライアル等と比較することによって、その有効性を推定することができます。 そのデータが表8でして、これを見る限りにおいては、米国におけるRCTと遜色ない か、それ以上の成績を示しているということが言えます。  ページをめくっていただきまして、検診による不利益あるいは経済効率の評価、更に は総合評価を行っています。結論としまして28ページにあるように、これは平成12年度 末の結論ですので、今から3年前になりますが、このときに既に40歳代へのマンモグラ フィ導入が必要であるということを提言しています。  29ページから科学的根拠に基づく乳がん診療ガイドライン作成に関する研究班の報告 を示します。これも厚生労働省の研究班ですが、昨年度に終了しました。その中で特に 乳がん検診について触れた部分がありますので、これを御紹介いたします。いわゆるE BMに基づく診療ガイドラインです。ページをめくっていただきますと研究班構成メン バーがありまして、31ページにアンダーラインで示しましたが、乳がん診療で遭遇する 疑問点(リサーチ・クエスチョン)に対して、科学的根拠に基づいた適切な医療を提供 するための支援として、この研究班が組織されたということです。乳がん診療の国際的 合意を示すということです。女性がんの第1位であるということは日本でも同じです。  次に32ページですが、実はこの研究班では10万9,320件の論文を網羅的に解析してお ります。33ページに推奨の強さとして、根拠が明確であるものをグレードA、Aに劣る が推奨できるものをグレードB、不利益を与える根拠があるものをグレードDとして、 それ以外をグレードCとしました。Cはグレーゾーンでして、お勧めできないというこ とです。AとBはお勧めできる。特にAは十分な根拠があるということです。次のペー ジに、その推奨の強さが示されております。  35ページには、この乳がん診療ガイドラインの作成手順について要約したものであり ます。これについて、特に本検討会で重要と思われるところをピックアップいたしまし た。  36ページですが、まず、視触診による乳がん検診は死亡率を減少させるかという、リ サーチ・クエスチョンを提起して、答えは視触診単独による乳がん検診の死亡率減少効 果を示す根拠は不十分である。ただし、無症状の受診者においては死亡率を減少させる 可能性があるとしています。これは先の日本における症例対照研究の中で、検診のとき に既に有症状であった方、しこりとかの症状があった方を全部省いて、検診歴なしとし てカテゴライズすると、すなわち、無症候の人だけをピックアップしますと、一定のオ ッズ比、具体的には0.56ですが、得られました。ただし95%信頼区間1を超えますの で、有効性は証明できませんでした。そのことを示しています。  次をめくっていただきますと、50歳以上においてはどうかという設問です。これがグ レードAでございます。すなわち、十分な有効性があるとされています。  次のリサーチ・クエスチョン、本課題であります40歳代についてはどうかということ ですが、これはグレードBです。それについていろいろな文献がここにリストアップさ れていまして、42ページからは、いわゆる構造化抄録と言いまして、それぞれの文献を 確認して、更にコメントも添えています。視触診から自己検診も含めて幅広く行ってい ますが、ここに挙げたものは、その中でもよりコアになるものだけを取り上げておりま す。今日は時間の関係で詳しく述べることはできませんが、AあるいはBという根拠の 元となった文献をここに掲載しております。文献リサーチのときにも御参考にしていた だきたいと思います。  続きまして、57ページは、平成15年度がん研究助成金による研究中間報告要旨でござ います。これは先週、国立がんセンターにおきまして発表がありました平成15年度の研 究班報告の抜粋を掲載させていただきました。最も新しいデータになります。  59ページに研究組織、タイトルがあります。タイトルは「乳がん検診の精度及び効率 の向上に関する研究」です。  この中で、種々検討すべき課題があるのですが、60ページに、枠で囲ってありますの は、6)「40歳代へのマンモグラフィ導入に関する基本指針」です。これが研究班として の現在の提言であります。ここを読ませていただきます。「検診精度、費用効果分析の 結果、マンモグラフィと視触診併用の隔年検診が基本である。ただし、乳腺実質の多い 40歳代に対しては2方向撮影が望ましい。高濃度乳房に対しては、超音波の効率的活用 を検討すべきである。50歳以上と同等の精度を保つためには、乳腺実質の多い受診者を 絞り込み、超音波等の追加検診により、効率のよい検診になると考えられる。なお、追 加検診導入の際にも、検診の精度を把握し、その有効性を評価することが望ましい。い ずれの年代も基本はマンモグラフィ検診である。50〜59歳は、従来通りであるが、60歳 以上については、マンモグラフィ単独を考慮すべきである」、これが基本的な考え方で あります。2方向撮影といいますのは、今までは50歳以上について1方向撮影できまし た。それはある意味でコストの問題とか被曝の問題を考慮したわけですが、40歳代にお いては高濃度乳房が多いということで、2方向撮影が望ましい、これは欧米の傾向でも ありますので、このことを提言しました。  次に62ページ、これは辻先生も何度か示されましたが、USタスクフォースのファイ ナル・リコメンデーションがここに掲載されています。63ページにはCBE、つまり Clinical breast examination alone、視触診単独です。これはグレードEというこ とで、根拠はないということです。  マンモグラフィ併用は、40歳以上はすべてグレードB、すなわち、相応の根拠がある としています。  最後の67ページですが、これは『新医療』という雑誌からの抜粋ですが、つい12月に 刊行されています。乳がん検診を世界的に見た場合どうなっているかについてレビュー しております。要旨にありますように、世界の乳がん検診の基本はマンモグラフィで す。IBSNといいますのは、International Breast Cancer Screening Networkで、 国際乳がん検診ネットワークです。日本も加盟しています。詳細を見ますと、50歳以上 とする国が多いわけですが、それは年齢罹患率の違いによります。日本では罹患率が最 も高い40歳代への適切な導入が急がれます。一方、精度の高い検診を実施するには、施 設及び個人の評価が欠かせません。  表1は、各国のプログラムの概要を国別に示しています。例えば、日本は上から8行 目にありますが、年齢開始が30歳からで、上限はないということです。それでCBE、 すなわち視触診単独です。ちなみに比較としてイギリスとアメリカも見ていただきたい と思います。いずれもマンモグラフィを基本として、対象年齢は50歳以上あるいは40歳 以上となっています。  表2は組織構成について示しています。日本は組織されたのが1989年とありますが、 これは宮城で導入された年度を書いています。カバー率は厚生労働省が目指している30 %と書いています。同じくイギリス、アメリカと比較しますと、例えばイギリスは1988 年に国として始まっているということです。  表3は大変注目すべきデータですが、精度管理状況です。日本のプログラム形式はど うであるか。1989年のときは県レベルあるいは自治体レベル、すなわち、宮城県で行っ ていましたが、2000年から一応、厚生労働省からの指針が出ましたのでナショナルにな っています。50歳以上ですが。ただし、この厚生労働省通達に法的効力があるかといっ た場合には「なし」、すなわち法律では縛られておりません。  一方、アメリカでは、1996年に施行されたMQSAという法律で遵守が義務づけられてい ます。  図1は、アメリカの乳がんの罹患率と死亡率の推移を示しますが、死亡率が1990年か ら下がってきているのがわかります。  アメリカのマンモグラフィ検診受診率ですが、図2が50歳以上で、図3が49歳以下で す。いずれも70%ないし60%の受診率があるということです。  図4は、アメリカと日本の乳がんの年齢階級別の罹患率の違いを示しています。アメ リカでは60歳代にある一方で、日本では45歳代にピークがあることが、これでおわかり かと思います。  最後のページ、「結語」では、後でマンモグラフィ検診精度管理中央委員会委員長の 森本参考人の方から御報告もあるかと思いますが、私の考えとしてここに挙げました。 「乳がん検診を国際的視野からもみれば、マンモグラフィによる検診である。国別に精 度管理に関する状況は様々であるが、施設基準については米国FDAのMQSAに見られる ような体制が整いつつある」。MQSAといいますのは、Mammography Quality Standards  Actで、これは刑事罰を伴う法律であります。ただし、これは施設基準でありまして、 個人評価ではありません。「しかし、読影医師・撮影技師の個人評価に関しては日本が 進んでいるといえよう」という文章は、米国で行われていない個人の評価が日本では行 われつつあることを示しています。実はアメリカのFDAとも情報交換していますが、 米国において現在、マンモグラフィを読む医師の資質が大きな問題となっています。個 人の評価・資格についても、これからしっかりとした体制でサポートする必要があると いうことです。  以上です。 ○垣添座長  大内先生、どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの御報告に関して御質問等がありましたら、お受けしたいと思い ます。 ○清水委員  50歳以上のマンモグラフィによる乳がん検診が有効であることはよくわかりました。 40歳代が有効らしいということもわかりましたが、40歳代に視触診を併用すべきだとい う根拠がわかりませんでした。どの辺りのデータからそういうことになるのでしょう か。 ○大内委員  まず、40歳代の罹患に関しては、国際的に見てアジア諸国が高くなっていて、今まで 欧米においても余り集約的な研究はされていなかったということです。特に視触診につ いては、そういった根拠を示すようなデータは存在しておりません。先生の御質問の40 歳代にも視触診を残すのかどうかということですが、これは強いて挙げれば、1999年に Kanemuraらの報告による視触診検診の効果に対する、いわゆる症例対照研究の中で、無 症候であった方々だけを振り分けて見た場合に、relative riskが0.56まで下がるとい うことが挙げられます。  それから、厚生省富永班から1989年に発表された、黒石論文の中に、生存率の比較に よる研究がありますが、これも有症状の方を除いた場合に限ってみれば、やはりオッズ 比が0.55というのが出ています。ただし、これは年齢別に調査したものとは言えません ので、視触診併用がどれほどの根拠があるかということは確かに問題があろうかと思い ます。 ○斎藤委員  今の件に関してですけれども、今のお話は症例対照研究で、有症状者の方の受診した 方の受診歴のカウントを外したということですよね。この場合に、対照の受診歴はどう いうふうにしているんですか。セットで外しているんですか。 ○大内委員  対照の受診歴もセットで外しています。 ○斎藤委員  ということは、症例に関しては診療録がありますので、症状があったかどうというこ とは詳細にドキュメントされているわけですね。しかし、対照の方は、診療録と同じク オリティの情報源がないので、これを外しますと検診受診率が相当高くない限り症例の 受診歴だけを過小評価することになりますので、効果としては過大評価になりがちだと 思います。ですから、もし、今の仕掛けで解析されているとすれば、無症状者で視触診 でオッズ比が下がるというのは、あるいはそれは効果の過大評価である可能性があると 思います。 ○清水委員  関連して、今のが仮に過大評価でないとしても、その対象者にマンモグラフィをやっ たらどの程度の効果があるのか。例えば、0.55とか0.56とおっしゃいましたが、その集 団にマンモグラフィをやったらもっと下がるかもわかりません。私には、視触診を併用 することの意義がわかりません。 ○大内委員  ここに資料はございませんが、特に40歳代においてマンモグラフィと視触診併用の検 診のデータがございまして、両方で発見されるのが感度で言いますと90%を超えます。 マンモグラフィ単独で見た場合には75%、一方、視触診単独で見た場合に70%というデ ータになります。お互いに相補うデータといいますか、チェックする機能を果たしてい ます。それが1995年から1998年までの宮城県対がん協会のデータによります。 ○清水委員  そのデータを是非、拝見したいと思います。 ○垣添座長  もう一つぐらいお聞きしましょうか。 ○土屋委員  今のに関連しますが、21ページのところで、各国の乳がん検診の検診方法をお示しい ただいていますが、欧米でも今、清水委員から指摘があったように、視触診が併用され ていたり、されていなかったりです。ということは、全体的に見るとこの視触診の併用 の意義というのは、まだ議論の余地があるという解釈でよろしいのですか。 ○大内委員  大変重要なポイントだと思います。先生の御指摘、清水委員の御指摘ももっともでし て、私は例えば、先ほど最後の結論のところで研究班の報告の中で、60歳以上について はマンモグラフィ単独でいいのではないかということを書きましたのは、いわゆるモダ リティベースにマンモグラフィ単独、視触診単独で見た場合のいわゆる有所見率を見ま すと、やはり視触診は少なくとも60歳代では要らないといえます。ただし、実際の日本 人のデータで見た場合に、40歳代ではマンモグラフィ単独検診の感度は82%です。50歳 代のマンモグラフィ単独検診の感度が92%です。60歳以上が100%となっています。そ れが宮城の1995年からのデータになっています。米国では視触診も併用しています。イ ギリスではマンモグラフィ単独です。北欧もマンモグラフィ単独です。これが本当にそ れでいいかという問題はまたありまして、実は、マンモグラフィ単独の場合の感度が、 大体80%前後になっています。ですから、例えばアメリカのNIHのガイドラインの中 にも、mammography is not perfectと書いてあります。したがって、視触診も必ず追加 しなさいということは書いてあります。しかし、アメリカでは、視触診で発見されたが んについては、検診発見がんとカウントされていません。データ上ではマンモグラフィ 発見がんだけがピックアップされます。一方で、受診者の利益を考えてマンモグラフィ は完全ではないので視触診も加えるべきだということがNIHの勧告になっています。 ○土屋委員  もう一遍簡単にお願いしたいんですが、60ページの40歳代のマンモグラフィ導入に関 する基本指針の中で、超音波についても記載されていますが、高濃度乳房とか乳腺実質 の多いというのは、絞り込みの基準というのはある程度できているのでしょうか。 ○大内委員  はい。乳房構成を4つに分けますと、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度とあ ります。不均一高濃度異常が40歳代で4割から5割ぐらいあります。高濃度乳房がやは り2割ぐらいあります。その辺をまずマンモグラフィで絞り込んで、これはマンモグラ フィでは診断は不可能であるという判定のもとに次のステップで超音波検診というのが 考えられます。 ○土屋委員  その分類ごとに検査を実施する人によっての誤差は余りないのですか。画像診断がか なり難しいかなと思ったのでお聞きいたしますが。 ○大内委員  それは、先ほどの乳房の構成については一定のガイドラインがございまして、後で森 本参考人が示されますが、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会による講習会を受講 されていて、その試験に合格している方については理解されているはずです。 ○櫻井委員  がん検診の中で、乳がんに関して特徴的なのは、それがすぐがんかどうかは別として も、一般平易な言葉でしこりというか、要するにtumorを自分で発見することができると いう、つまり自己検診の部分があるわけです。ほかのがんについては、肺がんで咳とか 痰が出るとか、大腸がんで下血があったとか、子宮がんで出血があるとか、それは症状 ですけれども、乳がんだって出血があったりすればそれは症状ですが、そうではなく て、tumorそのものを発見するという自己検診という手段があるのは、乳がんの特徴だ と思うんです。そうすると、自己検診というのはわかりやすく言うと視触診ではないか と思っているんですけれども、それについて評価はどういうふうになっているんです か。 ○大内委員  自己検診に関する評価はさまざまありまして、これも論文検索では相当確認いたしま した。有効性があるとするものと、ないとするものと賛否両論です。最近のデータで、 上海の10万人以上を対象にした自己検診の有効性については、米国シアトルのFred Hutchinson Cancer Research Centerの研究者たちによって報告されています。その結 果では、自己検診を毎月指示した群とそうでなかった群では、乳がん死亡率に差はなか ったということが示されております。 ○垣添座長  今の話は、自己検診に関してはどんなふうに結論の中で取り入れていくかということ で、非常に重要なポイントだと思いますが、一応、今日の会議の予定もありますので、 大内先生の発表は以上にさせていただきます。ありがとうございました。  続きまして、日本産婦人科医会の永井先生、お願いいたします。 ○永井参考人  日本産婦人科医会から来ました永井と申します。  今の大内先生のお話を聞きながら、私の立場を説明させていただきたいと思います。 今の大内先生の発表に関しては、私は富永班、木戸班以来ずっと現在の大内班まで一 応、班会議の研究協力者として傍聴させていただいたので、今の大内先生の主張、それ から、マンモグラフィ併用検診の重要性、位置付けというものは十分承知しているとい うつもりです。  ただ今日、私が言いたいのは、この委員会の趣旨に合うかどうかは別としまして、私 は昭和37〜38年から子宮がん検診を宮城県でやってきて、その間における子宮がん検診 がいろいろな形を変えてきた、その真っただ中にいた者として、乳がん検診の精度の重 要性ということは十分理解しております。そして、併用検診というものを今後の方向性 として基礎となっていくということは十分承知していますが、ただ、今度はそれを切り 離して、がんの検診ということを考えていった場合、がんの検診には今問題になってい る精度というものと同時に、いわゆる受診率ということも十分考えなくてはいけないと 思っておりますし、受診率を確保するためには検診に携わる人の底辺拡大というものが 非常に大事だと思っています。そんなようなことを中心として話させていただきたいと 思います。それに対するEBMというか、詳しいデータを持っているわけではございま せんが、一応、参考資料として、老人保健事業の第2次5カ年計画で乳がん検診が視触 診を中心として行われていたときの婦人科医のスタンスというものと、次の資料として は現在、これは日本全国というわけではなくて、マンモグラフィ併用検診のガイドライ ンが出されて以来、その中の同時検診B方式という検診のガイドラインを中心として、 仙台市で行われている部分、この策定には今、発表があった大内先生も入っていらし て、一応ガイドラインに沿った検診を進めると、確かに発見率にも効果がある。  それから、外科と婦人科を比較したデータもありますけれども、2年間しかやってい ませんが、最初の年と次の年を比べると検診の進化が見られるというようなこと。そう いうことを重点として私たちの考え、この考え方は、私は個人的にいろいろなことを言 う癖があるので、なるべく産婦人科医会の見解として持ってくるようにという御忠告を いただいているので、一応、幅広く常務理事会等で検討して大体まとまったような意見 としてお聞きいただければと思います。今日実は、この委員会で違う論議がされている のかと思って来たんです。ところが、今の大内先生のお話を聞いても、長年班会議でず っと繰り返されてきた論議、そういうことは私個人としては、併用検診の重要性という のは頭の中では完全に必要であると。それを一体どうやって社会に還元するか、どうや って産科の医師に還元するかという観点から、こんなことを考えているんだというふう にお聞きいただければ幸いです。  産婦人科と女性がんの検診というのは、女性のがん検診が昭和36年ごろより東北大学 によって最初子宮がんに対して器具持込み検診という形、続いて、子宮がん検診による という検診で始まりました。この時代は、いわゆる子宮がん専門医による検診だった。 それがやがて検診車による子宮がん検診は宮城県、東京地区を先進として、地区におけ る婦人科医が受け持つ施設検診が中心となって、1973〜1974年ごろまでに全国的な広が りを見せました。この子宮がん施設検診は現在、全国的に定着して、日常診療の中に組 み入れられて、子宮頸がんの発見を第一目的としておりますが、女性に対するプライマ リーケアとして重要な役割を担って発表しております。  乳がん検診というのは御存じのとおり、子宮がん検診に遅れて1975年に日本対がん協 会が乳がんの検診委員会というものを立ち上げて、問診・視診・触診によって対がん協 会方式として検診が始められました。子宮がん検診が細胞診という強力なスクリーニン グの手段があったのに対し、乳がん検診は視触診を主眼として始められたことから、検 診の精度を高めるために、乳がん臨床に習熟した乳腺専門医によって始められました。 そして、その当時の宮城県における乳がん検診のスタートの記録を見ますと、宮城県の 乳がん検診は、乳がんに対する精鋭の医師を集めた検診が誇りであるという記載が見ら れて、子宮がん検診がそのとき誰でも参加できる検診であったのに対して、違う背景の スタートというのが乳がん検診にあります。  乳がん検診が始まると同時に、我々の日本産婦人科医会では、乳房に対する臨床知識 の向上のために、いろいろな乳房検診の手引とか小冊子を出し、昭和61年の山形におけ る大会には、その当時の日母大会、要するに婦人科医の集まりの会で、乳がん検診がシ ンポジウムに取り上げられて、そこで大分参加者の共感を呼び起こしました。  昭和62年には、御存じのとおり老人保健事業の第2次5カ年計画に問診・視診・触診 が入るようになって、その中のものに「検診の担当者は視触診に習熟した外科・婦人科 医等による」と明記されておりまして、これに対応して、我々は視触診の勧めのビデオ をつくったり、視触診に習熟したという条件を満たすための婦人科医の育成に努めまし た。  2000年3月に、大内先生が中心となって出されたガイドラインによる検診では、体制 の整った市町村より導入されるというようなことになったけれども、これは婦人科だけ ではなく、全国的に非常に歩みが遅いことが懸念をされていました。そういうところ に、皆さん御存じの朝日新聞のキャンペーンでああいう記事になって、この委員会など の見直し論議が急務となってきたのだと思います。  そして、我々日本産婦人科医会としては、更に一層会に対する啓発を強化していく所 存です。そして、いわゆる今の検診にどうやって参加するか、そのためには何が必要か というようなことを十分トレーニングしていくつもりです。  婦人科の現状をちょっと説明させていただきます。乳がん研究会というものが大阪医 大の植木教授を中心として発足して、年に2回関西、関東で行われておりますが、この 研究会は非常に若い先生方、実地医師、大学の医師を問わず、若手の参加が多く、将来 に対する明るい手ごたえと我々は理解しております。  そして、マンモグラフィ併用検診の参加のためには読影力が不可欠で、それに対して も精中委の研修会とは別に産婦人科医会としても研修会を開き、10回を超えておりまし て、歩みは決して速いとは言いませんけれども、それなりに読影医を育成しているとい うのが産婦人科医会の現状です。  ただ、乳がん検診に関して言うと、老人保健事業の第2次5カ年計画で取り上げて以 来、今日の資料の最初の方の3ページぐらいにありますけれども、乳がん検診の受診者 の多くは婦人科医を訪れています。と言いますのは、婦人科の検診には、いわゆるライ フステージに合わせて、がん検診以外にも産婦人科医を訪れていることが多く、女性の 受診者の方も婦人科医に乳房チェックをしてもらうのは非常に慣れているということ、 また、産婦人科医も何らかの形で乳房に対するいろいろな臨床に携わっているというこ とがあるのです。こういう考え方は、日本産婦人科医会の坂元会長が言っている、「産 婦人科医は全婦人のプライマリーケア・ドクターになるべき」との考え方に非常に合致 し、乳がん検診に対する婦人科医の期待が今後も増えてくると思い、我々はそれに対応 していくつもりであります。  先ほど冒頭に申したように、精度を高めることと同時に、がん検診は受診率を高める ことも非常に重要な問題です。そして、そのためには産婦人科医としましては、受診者 の多くが選んでくれるという期待にこたえられるよう、今後とも研鑽には十分力を注い でいくつもりでございます。  そういうわけで、今度こういうことに併せて改めて調査をしましても、各地域ではか なりそれなりの形で研修会、その他を持っております。だから、新聞でたまたま研修を 受けたことがないという医師の話があって、それが産婦人科医全体を指すようなとられ 方をしたんですけれども、それはその人が例外的であって、あの記事を見て、すべて産 婦人科がそうなっているというふうな見方をしてほしくないと思います。我々として は、研修を受けたことがないという人は、やはり検診医としての参加は不適切、これは 産婦人科だけの問題ではなく、すべての検診担当者に該当する問題だと思います。  今日こういう場ですので、我々日本産婦人科医会として何をやっているかというのを 説明させていただきますと、現状の把握を再チェックというか、改めて調査しました。 そして、どのような基準で検診体制をやっているかとか、それから、視触診に関してど のような記載法をやって、どのような判定法をとっているかとか、それから、検診に関 して今、乳がんに限らず子宮がんでもいろいろ検診のトラブルというのが起こってきて おりますが、その全国調査をやっております。そして、乳がん検診に関しては、改めて マニュアルをつくって、検診の方法とか、検診に対してこれからやはりインフォームド ・コンセントというか、同意書というか、そういう系統的な説明、理解というものの確 認というようなことを普及させていくべきだろうと考えています。  それから、検診従事者の資格の再チェックの対応。それには、研修会などに出るとき の開催、主催者に対して修了証の発行を依頼する。これは、医師会に対しても日本産科 婦人科学会等に対しても、同じスタンスでお願いしていこうと思っております。  それから、今、検診体制というのは、御存じのとおり国ではなくて市町村単位となっ ているので、これは地域ごとに理解をして、いろいろそういう管理をしていただきたい と思います。そういうようなことでやっておりますけれども、最後にまとめて申します と、今、産婦人科の方では子宮がん検診が受診率、精度ともに目標に近い状態で成果が 上がってきています。そして、精度の方は検診の普及と並行して、産婦人科の子宮がん に関して言えば、日本臨床細胞学会の活動が活性化されて、指導医制度ができて、細胞 診の精度が著しく向上を見ました。それから、底辺の拡大に関しては、「どこで受けて も同じ精度の検診が受けられる」という、かかりつけ医で受けましょうという基本理念 で検診医が増大して受診率が上がりました。ただし、こういうシステムのときにキャッ チフレーズは「どこでも同じ精度の検診を受けられる」とは言いながら、大幅に専門医 たちが一般医師の弱点をカバーしたという歴史がございます。乳がん検診に関して言え ば、精度の向上や資質のことに関して異論はございません。ただ、精度向上を謳う余 り、検診参加医の門戸を狭めるようなことを懸念しております。精度と受診率の双方を 上げて、乳がんの死亡減少を目指すように我々は努力していくので、よろしくお願いし たいと思います。検診といえども、医師と受診者の人間関係を無視することはできない と考えて、一応発表を終わらせていただきます。 ○垣添座長  どうもありがとうございました。  ただいまの永井先生の御発表に対して何かございますか。 ○田中委員  長年検診をやってこられた宮城県の先生にお尋ねいたしますが、マンモグラフィ併用 検診が今、先生のところにどのくらいの準備状況と申しますか、別の言葉で言いますれ ば、需要に対して100%対応できるような体制にあるのでございましょうか。 ○永井参考人  仙台市においては、参考資料の中に我々の行っている乳がん検診というのがあります けれども、一応ガイドラインに沿った形で進んではおります。ただし、問題はありま す。というのは、うちはB方式というものをとっているんですが、それにはマンモグラ フィをまずどこかの施設で撮ってきて、そのフィルムを持って受診するという形なんで すけれども、やはり写真を撮ってもらえる施設を探すのが非常に大変。これは病院とし ては余り面白くないんですよね、写真を撮るだけですから。ただ、それを医師会の努力 で結構確保して、一応形としては、詳細は資料を読んでいただけるとわかると思います けれども、進化しながらどうにか効果を上げてきている。発見率はやはりマンモグラ フィ併用検診が高いし、今後ともこれをどうにか育てていきたいと思っております。 ○遠藤委員  婦人たちが最初に乳がんの検診を受けたいと思ったときに、非常に多くの方が産婦人 科の門をたたくということも理解しています。産婦人科医がマンモグラフィ導入検診に 努力しているということもよく理解しております。多くの女性たちは、視触診を産婦人 科において受けるというのが現状だと思うんですけれども、その視触診に対する精度管 理への努力は、どのようなことをなさっていらっしゃるのでしょうか。 ○永井参考人  本部としてやっているわけではなくて、本部としてはいわゆるメニューを提供してい るというだけで、地域ごとで実施されています。今後、今申したような、全国調査を始 めて更に詰めていこうと思います。現在までのところは、そういう研修が精度を高めて いるという疫学的な検証は行っておりません。 ○遠藤委員  疫学的な検証ということの前に努力が必要だと思うんですね。研修あるいは教育メニ ューですね。実際にどのくらいの効果があるのか、こういうことがあって産婦人科医が プライマリーケアとして受け皿になるということが言えるのではないかと考えている次 第でございますけれども。 ○永井参考人  それは今まで私たちが、いわゆる小冊子を初めビデオづくりをやっております。だか ら、更にそれを体系的に進めていきます。今までもいろいろ地域ごとに研修会というも のはやっているんですけれども、それを具体的数字で表すことは困難です。これは多 分、次の岡崎先生から視触診の実際のデータというものはお話ししていただけると思い ます。ただ、私たちは視触診をやりながら、先ほどちょっと話題になった自己触診指導 というものを重大な項目として考えております。といいますのは、仙台市でやったマン モグラフィ併用検診でもいわゆる中間期がんというものが何例か出ている。仙台では勿 論ダブルチェックシステムの対象をとっているんだけれども、中間期がんになった例と いうもののフィルム、その他を全部見直しても、やはり中間期がんは存在します。その 中間期がんの発見の動機というのは、やはり自己触診があるので、自己触診が全体の精 度としてどうのこうのと言う前に、やはり併用検診といえども中間期がんというものの 発見機会には自己触診が非常に大きかったということは、私たちは臨床医として認めて おります。 ○櫻井委員  乳がんの場合は、さっき言いましたことともう一つの特徴として、勿論男性の乳がん がゼロとは言いませんが、一応、女性特有のものだということは大きな特徴になってい るわけで、その意味で、女性がいわゆるかかりつけ医として産婦人科の先生を選んでい るというケースは結構多いのではないかと思うので、そういう意味で、永井先生もおっ しゃったので重複してしまいますけれども、がんという臓器のごく一部のものの話では なくて、1人の人を見るという意味でのかかりつけ医の役割があって、乳がんは見つか らなかったけれども貧血があったとか、そういうようなことがあるのではないかと思い ますが、それについては先ほどおっしゃったと思いますけれども、もう一度そういう効 果というか、その辺のことについて教えていただきたいと思います。 ○永井参考人  先生のおっしゃったとおりに、やはりがん検診以外にも乳房というものでいろいろな ものを発見しております。そういう意味で、この検討会に産婦人科医である安達知子先 生が入っておられるのは、女性のライフステージのお話を詳しくお話ししてもらうため に加わっていただいているのだと思いますけれども、私たちはやはり乳がん検診が窓口 となって、いろいろな全身疾患チェックということをかなり重点的に考えております。 ○垣添座長  永井先生、どうもありがとうございました。  それでは、続きまして、岡山県医師会の岡崎先生、お願いいたします。 ○岡崎参考人  岡山県医師会から参りました岡崎でございます。本日は、岡山県で行っております乳 がん検診を中心にお話をさせていただきます。  平成12年に、皆様方御承知のように老健第65号の通知が出ました。岡山県もマンモグ ラフィ併用検診導入のために、いろいろ準備をしなければいかんということになったわ けであります。しかし、岡山県の方で、どうも市町村が余りマンモグラフィの導入に関 しては積極的でないという情報を私はもらいました。では、私の方から出掛けていっ て、県下78市町村がありますけれども、その78市町村の全員が出てくださるような、そ ういう場所を県の方にお願いして設定してくださいと。2〜3か所でいいだろうという ことで、結局、岡山市と津山市で皆さん集まっていただくことになりました。そのとき に私は、マンモグラフィ併用検診の有効性、特にマンモグラフィが被曝量の問題で非常 に当時恐れられておった面があります。そういうことがないということをいろいろ説明 させていただきました。それに伴う問題も申し上げて、今後中心になるべき検診方法で あるから、皆さん御理解をということを申し上げました。  この理解は得られたのでありますが、では、従来の視触診検診がどうかということ で、いろいろ地方の保健師の方あるいは検診担当の方々のお話を伺いますと、我々が医 師会で考えていたような、決して視触診検診に対して満足していないと。そのときに私 に返ってきた言葉は非常に厳しいものがありまして、県の医師会としては、精度のいい 検診を提供する医療機関を責任持って紹介しろ、あるいは精度の悪い検診はやるべきで はない、こういう意見がどんどん出てきました。私は県の乳がん部会長として、これは 放置できないという考えに立ったわけでありまして、早速、部会を招集いたしました。 従来は、昭和62年から乳がん検診が始まった時点、このころの部会というのは10人全て 医師でした。ところが、平成12年のメンバー構成を見ますと、医師は私を含めて3人、 あと3人は、行政の方が1人、それから、保健師の代表が1人、市民代表が1人入って おります。この保健師の代表あるいは市民代表からは非常に手厳しい、やはり同じよう な意見が私にぶつけられました。委員会でいろいろ検討して皆さんの意見を総合します と、視触診に関しての参加する医師の再教育が必要だということになったわけでありま す。  従来は、視触診というのは非常に簡単に考えられておりました。医師免許を持ってい る医師なら誰でも触ったらすぐわかるのではないかと、しこりを見つけることなんか簡 単だよというふうに考えられて、ろくな教育はしていなかったわけです。その結果、視 触診の結果が悪いということになるわけでありますが、実際には、外科で触診の話は外 科各論で少し教えるだけ、あるいはほとんどそれも素通りというような状態。一方、腹 部の触診については随分丁寧に教えたと思います。そういう現状ですから、そういう人 が巣立って、嫌々ながら、忙しいのに厚生省が当時言うから、仕方なしに乳がん検診を やろうかなどというようなことになってしまった。これではいい結果が出るはずがない わけなんですね。これが現実だと私は理解しております。  それで、いよいよ岡山県でどうするかということになったわけでありますが、部会の 結果を県の医師会へ持って帰り、理事会へ提案しました。そうしましたら、毎週の理事 会で1時間ずつその問題でディスカッションの時間をもらいました。4週経ってもまだ 結論が出ない。外科の理事が非常に反対しました。産婦人科の先生がやるから悪いんだ というようなことを言うわけです。私はこれはだめかなと思っていたところが、現在の 県の医師会長、小谷会長ですが、「部会で県民に対して我々が視触診の研修をして質の 良い検診を提供することに何が反対なんだ」、「県民のためにいいことをやるのがなぜ 悪いんだ、こういう議論は今日でやめてくれ」といった発言があり、彼の英断でこれは やろうということが決まったわけであります。私は早速、参加者を募集しましたら、 3,000人の医師会員の中から600人応募してまいりました。資料をごらんいただきます。  資料の1ページ目は、日米の比較でありますが、これは非常に日本の検診がアメリカ に比べて、先ほど御指摘もあったようによくない結果が出ております。  次に、視触診の参加の医師の条件でありますけれども、これは初年度、基礎講習3回 を受講すること、次年度からは継続講習として1回、これを各時間2時間の計6時間と いうプログラムであります。  基礎講習の内容につきましては、次のページをごらんください。視触診法について2 時間、マンモグラムの読影の基礎について2時間、マンモ併用検診の実際が2時間、合 計6時間で、3回終わった人には修了証を交付するということであります。  私が強調しましたのは、まず視触診の検診では手技上の要点としまして、検診の現場 では所見があるかないかを判断して、有所見者はすべて要精検に回しなさいということ をしつこく申しました。そこで、質的診断は問わない、つまりこれが乳腺症であるとか 線維腺腫であるというようなことは一切言わない。手に触れたらすぐ、おかしかったら 要精検にしなさいと。これは基礎的なデータがありますので、全部引っ掛けても要精検 率は10%以上にはならないということは私も承知しておるから、そういうことを申し上 げております。  次の7ページをごらんください。これは1979年、たしか29回だったと思うんですが、 乳がん研究会で聖マリアンナ医科大学の学長をされていました渡辺先生が代表世話人 で、こういうアンケートを全国でおとりになったわけです。これは、原発巣の大きさと 診断率とありますが、これは我こそはというプロがエントリーしたわけでありますけれ ども、これをごらんいただきますと、2cm以下では視触診のいわゆる読み足らずという のがかなりございます。ところが、2cm以上になりますと読み足らず、見逃しが非常に 少なくなります。プロが見た場合には、このくらいのレベルになるということ。  それから、もう一つは、視触診というのはmassを探していくのですから、したがっ て、このときにマンモグラフィは画像でnon-palpableのものも見つけていこう。感度、 特異度、いろいろお話がありましたように、確かにマンモグラフィがいいわけでありま すが、一方で、視触診がだめだということになりますと、進行がんを見逃さないという 点では、かなりな力を発揮するわけであります。そういうことで、やはりかなりのトレ ーニングを受けた医師が視触診に参加する必要があるだろうと。そういうことで、いろ いろ視触診による検診のトレーニングをしてもらったわけであります。  次のページをごらんください。基礎講習を受けた医師会員がどのくらいいるかといい ますと、昨年8月のデータでありますけれども、5回とか4回とかいろいろあります が、医師会員で3回以上の方が587名、非会員を含めると652名ぐらいの人が受けてい る。更に1〜2回を合わせますと950人ぐらい。現在200人ぐらいその上にアップしてい ますので、1,000人以上の人が、講習に関係してきたということであります。ちなみに 岡山県医師会会員は約3,000名です。  次の表をごらんください。9ページは差替えの表でございます。平成9年から平成11 年まで、平成12年は少しやかましく言い出した時期なんですけれども、平成11年までの がん発見率は0.04〜0.05%、これは全国の平均で見ますと、最下位あるいは45位の辺り でうろうろしています。これではだめなので、平成13年からは3回参加した医師が中心 にやるようになりました。そうしましたら、一遍に0.13%、全国でも非常に高いレベル のところまで来たわけであります。平成14年は0.11%になっておりますが、平成15年度 の中間報告を見ますと、ほぼ平成13年、平成14年の中間ぐらいのところに位置しており ます。したがって、かかりつけ医のこういう先生方の視触診のレベルというものは、か なりなところに到達したと考えております。  次のページをごらんください。これは岡山市でございますが、岡山市は集団検診は行 っておりません。全部施設検診であるわけでありますが、ここでも300人ぐらいの先生 方が講習を終えております。そして、ここをごらんいただきますと、平成12年までは 0.04%、ところが、平成13年度になりますと0.17%、つまり600人に1人ぐらい視触診 で見つけているということになります。平成14年も0.12%であります。ちなみに岡山市 の胃がん検診がどのくらいのがんの発見率かといいますと、大体700人に1人ですから、 岡山市内で見た場合は非常に視触診の検診というのは高率にがんを見つけている。しか も、かかりつけ医が見つけているということが特徴的であろうと思います。  それから、平成13年にマンモグラフィ併用検診を始めました22の市町村であります が、3,792人、20市町村、2町村で2,500人ぐらいで、がん発見が10名で0.3%、これは 当然のことでありますが、マンモグラフィ併用検診がいいということであります。  次の12ページは視触診単独とマンモグラフィ併用検診になりますが、マンモグラフィ 併用検診の方は早期(TIS)を含めて60%、視触診の方は大体44〜45%。ですから、 これは当然の結果であろうと、マンモグラフィ併用がいいということであります。  次に、講習会修了の医師の情報公開になります。これは平成14年に岡山県の方でやっ ていただいたのでありますが、一番下の欄をごらんいただきますと、78の市町村のうち 49、63%が何らかの形で公開している。ただ残念なことに、岡山市が公開してくれてい ないので、これは市長にでも頼もうかと思っております。  次の表をごらんください。14ページです。これはマンモグラフィ併用検診における視 触診の重要性ということですが、先ほどからマンモ併用検診の場合は視触診が有効であ る。ただし、視触診単独では云々という議論が出ておりましたが、大内先生もお書きに なっているように、マンモグラフィ単独による検診では併用群に比べて検診成績が劣る ことから、視触診にマンモグラフィを併用することがいいんだと。マンモグラフィ単独 と視触診単独を違った時期に同じ患者でやってみても、ほとんどがんの発見率は変わら ないということも、先生はガイドラインにお書きになっております。  一方、癌研究会の高橋の結果ではマンモグラフィ検出不能の腫瘤触知乳がんが、かな りマンモグラフィでは見逃されることがあるんだと。特に、50歳未満では12%と高率で あって、必ずしも早期乳がんではなく、しかも、進行がんが見逃されることがある。が ん検診の場合に、これは胃がん検診の場合に今までよく言われてきたことなんですが、 進行がんを見逃すということが一番問題になります。早期はまだ罪が軽いと言うと語弊 がありますけれども、進行がんを見逃しますと、一般の受診者は大変ショックを受ける わけであります。したがって、そういう面で視触診は非常に有効だと思います。  先ほどからお話のあります、誰が自己検診を指導するのか。これはやはり視触診に精 通した医師が指導するのが一番いいと考えます。  次のページにまいります。岡山県における導入でありますが、やはり撮影装置あるい は撮影技師、読影医師、それから、いい写真を撮って専門家が見るというのが基本原則 となります。  次のページをお願いします。そうしますと、従来の精密検査機関が問題になってくる わけでありますが、7項目あるうちの特に6項目で、これはやはり読影がしっかりした B判定以上の医師がいるということ。それから、もう一つは、精密検査施設であります から、日本乳癌学会の認定医、または専門医の資格を有する医師が常勤して、しかも精 密検査を担当する、これが非常に私は重要だと思います。通常、消化器を診ている医師 がいきなり乳がんの精検ということは私は不可能と考えております。したがって、この 一言を私は謳い込みました。  それから、あとは画像の機械の問題であるとか、これは当然こういうことでありまし て、それから、最後に、この施行を平成13年4月から、既に3年前にやっているわけで す。この3年間を移行期間にして、今年の3月31日でこれが切れます。この間部会を開 きまして、これに該当しないところ、40ある施設のうちの恐らく半分は落ちるだろうと 思います。これは、例えば総合病院もありますし、大学病院もその中に1つ入っていま すが、そういう病院をどうしようかということを委員会に諮問しました。委員の全員 が、「資格を取っていないところは本年4月には入れるべきではない、全部落としてく れ」と。そういうふうな結論でありました。  それから、次の17ページをお願いします。これは受診率のアップのことでいろいろお 話が出てまいりました。具体的な方法というのは、どなたもまだおっしゃっておりませ ん。ただ、非常に大事だ、大事だということは叫ばれておるんですが、私は岡山県の平 成9年から平成11年までの各種検診の受診率を検討しました。この中で、一番下の基本 健康診査がほぼ50%公的に行われております。したがって、基本健康診査というのは、 それぞれの医師がかかりつけ医のレベルでやるわけでありますので、かかりつけ医のと ころで基本健診を受けると同時に乳がん検診も受けていた。そして、ここに質のいいマ ンモグラフィの導入ができれば、受診率は確実に上がってくるということを私は確信を 持っております。  では、どういう方法をとるかといいますと、次の18ページをごらんください。これ は、受診者がまずかかりつけ医の紹介状を持って、マンモグラフィの撮影認定施設へ行 きます。そして、そこで撮ってもらったマンモグラフィをかかりつけ医に持って帰りま す。そこで、かかりつけ医のところで併用検診をやっていただくと。写真はまた一方で 集めて、そこでプロによるチェックをもう一度受けて、それをかかりつけ医に返して、 最終的にはかかりつけ医の判断で診断を下すということになるわけであります。  それから、19ページをごらんください。これは、私の私見が随分入っておりますけれ ども、「岡山方式」などという生意気な言葉を使って申し訳ないんですが、対象は30歳 以上、年1回視触診、40歳以上、年1回視触診併用検診、これはなぜ年1回とするかと いいますと、私は現場におりまして、ほかのがん検診は全部1年に一遍、これが国民の 間に浸透しているわけであります。乳がんだけ何で2年に一遍にするのという質問をよ く保健師から受けます。そして、いや、大丈夫だよと、2年にこういうガイドラインが 出て、これでやってくださいということを言いますと、では、その間にトラブルが起こ ったら、先生は責任を持ってくれるのかというところまで今、いろいろコンセンサスを 得るのが難しいと。乳がんを例外にするのでなく、ほかのがんと同じペースでゆきたい と考えています。  それから、検診の方法は集団であろうが、施設であろうがどちらでもいいと。  それから、集団方式としては、検診車の精度管理をきちんとやると。  それから、施設方式は、ただいま説明したような具合であります。  かかりつけ医の資格であります。これは、県医師会の定めた講習会を3回受けるこ と。これは専門科を問いません。何科でもいいから受けてくださいと。こういうことに して、裾野を広げております。  最後に、この検診医の医療事故対策であります。これが非常に大事で、これが難しく なってきますと、萎縮してかかりつけ医が検診してくれなくなります。県の定めたルー トによってちゃんと検診が行われた場合、私どもは県の医師会で、もし受診者との間で トラブルが起こった場合は、医師会で対応しようという、これは医療事故対策委員会と も話がついております。  そういうことで、最後になりますが、乳がん検診の受診率の向上ということは、自分 の健康は自分で守るということがよく言われます。しかし、外国と違って日本ではなか なかこれは難しいと思います。やはり同時に、県の医師会としては、精度の高い検診を 提供しなくてはなりません。かかりつけ医のもとで精度の高いマンモグラフィ併用検診 ができれば、受診率50%も夢ではないのではないかと考えます。  最後に、官民一体となった、岡山県の医師会は非常に行政とうまくいっております。 岡山県で従来の関部長あるいは現在の宇都宮部長、健康対策課も我々と一緒に非常に努 力してくれます。私どもは、医師会が県民のためにいいものをしようという視点に立て ば、行政の方は本当に協力してくださるということを私ども考えております。そのほか に勿論、婦人団体、岡山にはいろいろな婦人団体があるわけでありますが、愛育委員会 とかいろいろ強力なものがあります。そういう人々に納得してもらえるような検診を提 供していきたい。それによって受診率も上がってくるだろうということであります。  少し長くなりましたけれども最後に、この検診システムを考える場合には、簡潔で明 瞭なものがいいと私は思います。国民の理解を得るためには、それでないとなかなか難 しい、理解していただけないということがあるわけであります。この検討会では今後、 第一に真の国民のために役立つ検診システムを検討していただきたいと考えておりま す。コストベネフィットの問題は、第2番目というふうに私は考えております。第1 は、やはり国民に対していい検診を提供していただく。それはまず、青写真を描いてい ただきたい。そういうシステムが学問的に立派なものでも、国民に対して使いづらいも のだったら机上の空論に終わることがありますので、その点、現在のマンモグラフィ併 用検診の受診率は全国でわずか5%程度に過ぎません。委員の先生方にはよろしくお願 いしたいと思います。  以上です。 ○垣添座長  どうも岡崎先生ありがとうございました。岡山県医師会の乳がん検診に対する取り組 みを大変詳細にお話しいただきましたが、御質問等ございますか。 ○土屋委員  かかりつけ医の方が積極的にやっていただくのは、私ども専門病院として大変ありが たい面だと思います。要精密検査の方への説明というのはかなり時間が掛かると思いま すし、その説明だけでもやっていただくだけで大きな効果があると思いますし、専門病 院がますます生きると思うんですが、2点ちょっと気になったのは19ページの通常2年 に1回を患者の希望が多いから年に1回ということなんですが、それをやると、本当に 必要なものはどこかということがわからなくなってくるのではないか。これは、確かに 2年に1回で大多数が大丈夫だということであれば、希望される方に個別に対応すると いうか、まさにその次のページにありますが、自分の健康は自分でという、そちらに持 っていくべき問題で、ちょっとここは混同しているのではないかという気がいたしま す。 ○岡崎参考人  その点ですけれども、私は自分の健康は自分で守るという教育は私は5年間徹底して やったつもりです。反応がありませんね。残念なことに、なかなか動いてくれません。 ですから、それは皆さんおっしゃるんですけれども、現場の我々としてはとても難し い。 ○土屋委員  ただ、そのために、大多数の不必要な検査を皆さんに押しつけるというのは本末転倒 なので。 ○岡崎参考人  勿論それは私も理解しております。ただ、現在ほかの検診が年1回という、これが非 常に国民的コンセンサスを得ているわけです。 ○土屋委員  それは、ものすごく特異性がありますから、乳がんと肺がんと胃がんというのは一緒 にできないと思います。 ○岡崎参考人  おっしゃることはよくわかりますが、国民はその様なことは理解していません。 ○大内委員  土屋先生の御質問の検診間隔ですが、2年、3年というシミュレーションをして、実 際のデータを当てはめて2年間隔にした場合に、中間期乳がんがどの程度発生するか、 その場合のステージはどうかというデータもあります。簡単に申しますと、2年間隔に してがんが発生します。しかし、それは95%以上が早期乳がんであるということがわか っています。それから、費用効果も分析していまして、2年に1回というのが最大効果 を生むということがわかっております。それから、諸外国のデータを見ますと、日本と ハンガリーを除いてすべての国が2年以上、イギリスは3年に1回の検診間隔です。 ○櫻井委員  今の資料の12ページに、平成13年度の乳がん検診結果という表がありますが、視触診 単独とマンモグラフィ併用となっています。これは、単独は単独でよろしいでしょう か。 ○岡崎参考人  これは89例ですね。これは視触診単独でやったデータです。それから、その隣のマン モグラフィ併用検診10例が、マンモグラフィ併用で見たデータです。 ○櫻井委員  これは、同じ平成13年ですか。 ○岡崎参考人  はい、そうです。分けて検討しました。 ○櫻井委員  というのは、これは併用をやった全体の例が少ないという意味ですか。 ○岡崎参考人  実際の例は少ないですね。 ○櫻井委員  逆に、全体の中でマンモグラフィを併用した、つまり逆に言えば、マンモグラフィで は見つからなかったけれども、視触診で見つかったものがどこかに入っているとかそう いうことなんですか。 ○岡崎参考人  もう一遍説明させていただきますが、22のうちの20市町村が2,560名、これはマンモ グラフィ併用をやっているわけです。そこで見つかった乳がんが10例で0.4%というこ とになるわけです。視触診で見逃されたとか、これはこの数値の中には入っておりませ ん。 ○田中委員  14ページのマンモグラフィ検出不能の腫瘤は大体どれくらいの頻度であるのですか。 先生の過去の経験から。 ○岡崎参考人  これは、私自身は調べておりませんけれども、癌研究会の高橋先生のデータでは、オ ールオーバーで見た場合は7%見逃しがあると。つまり、視触診で触れてもマンモグラ フィに出ない。それから、50歳以下の場合は12%ぐらいだと言うんですね。 ○田中委員  岡山県では、実際にそのような例はあったのでございましょうか。 ○岡崎参考人  個人的に私は統計はとっておりませんが、私のクリニックでこういう人はぼつぼつ出 てまいります。まだトータルの数はとっておりません。 ○垣添座長  どうもありがとうございました。  それでは、先に参ります。マンモグラフィ精度管理中央委員会の森本先生、どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○森本参考人  私は、精度管理中央委員会、以下「精中委」と称しますけれども、その委員長という 立場で、今回の検討会での意見を述べさせていただきたいと思います。  お手元に資料がございますけれども、パワーポイントを使用して説明させていただき ます。                (パワーポイント使用)  資料の方には、後半の14ページ以降、参考資料ということで詳細な現在の精中委の活 動状況が示されておりますけれども、前半の部分の説明資料というところをパワーポイ ントで説明させていただきたいと思います。  今日、私がお話しする内容は、精中委の設立経緯と現在どういう位置付けであるか、 そして、どういう活動状況であるか、そして、今後の課題ということで精中委のかかわ りというようなことをかいつまんでお話しさせていただきます。  まず、経緯でございます。これは先ほど大内委員から御説明がありましたとおり、厚 生省のがん研究助成金等の研究班(大内班)のデータ等に基づきまして、この精中委と いう精度管理システムの制度ができました。  平成9年11月に、まず、日本乳癌検診学会の理事会で、必要性を認めまして設置いた しました。前述のごとく、大内班で検討された検診システムですが、この委員会には2 つの委員会がございます。教育・研修委員会は、平成11年3月から活動を始めました。 そして、平成13年4月からもう一つの委員会、施設画像評価委員会が活動を開始しまし た。この間、平成12年3月31日、老健第65号通知が出まして、この中で精中委の位置付 けというものが明記されました。  この精中委という精度管理システムは、他の検診には見られない画期的な精度管理シ ステムと考えています。  現在、医師・技師・施設を認定しているんですが、その結果はホームページで公開し ております。  まず簡単な経緯ですが、これも平成9年に現在の老人保健法に基づく指針の元ができ また。これを厚生省大内班で検討したものを日本乳癌検診学会がサポートしたという格 好で、ガイドラインが作成されました。50歳以上にマンモグラフィの併用、2年に1回 ということが示されたわけです。そして、それ以後に、平成11年までの間に老人保健事 業推進費等補助金という格好で、大内先生が班長で実施施設の基準というものが示され ました。乳房エックス線撮影装置は、日本医学放射線学会が定める仕様基準を満たすこ と、少なくとも適切な線量3mGy以下及び画質基準を満たすこと、さらに、基本講習プ ログラムに準じた講習会を終了した技師が撮影することが望ましい、そういう基準を示 したわけです。  こういうことを受けまして、平成12年3月に老健第65号が出まして、この中で医師、 技師に関して、それぞれ先ほどの講習会を受講して、一定の評価を得た者がするように ということがここに示されました。これをサポートするというような格好で我々の精中 委活動が始まったということでございます。  そのシステムを示します。この精中委の成り立ちは日本乳癌検診学会が中心ですが、 日本乳癌学会、日本医学放射線学会、日本産婦人科学会、日本放射線技術学会、日本医 学物理学会という6学会からの委員構成でございます。  そして、教育・研修委員会は、本日委員の遠藤先生が委員長でございます。施設画像 評価委員会は、福岡大学の岡崎教授が委員長でございます。この教育・研修委員会がマ ンモグラフィ講習会をやっておりまして、これは1日半の講習・実習のプログラムで、 大変ハードなスケジュールのプログラムでございます。これを受けた後に読影試験もや り、一定の基準に達した者に対して認定をするという制度でございます。  この講習会試験と別に、更にグレードアップをねらうということで、マンモグラフィ 試験というものを単独でやっております。そのほか、講習会講師の研修会というのを昨 年から始めております。たと、こういう行事をやっておるということです。  もう一方、施設画像評価委員会は、提出された書類審査と臨床画像とファントムの画 像評価、そして、線量測定です。先ほどの線量が3mGy以下という基準に達しているか どうかもチェックしています。こういう評価を総合的に判断して、検診に適するという 認定をした施設に対して認定証を出しております。  現在の精中委のメンバーです。委員が14名で、顧問が3名、計17名の構成でございま す。  そして、実際に試験をやるわけですけれども、試験の基準というものを簡単に示しま す。医師の読影に関しては100例のマンモグラムを100分で、左右ありますから200枚を 100分で読影していただいて、一定の基準を達した者、すなわちB以上を読影OKとし ています。評価基準は、感度・特異度等の組み合わせで決めています。  一方、技術部門の試験に関しては、講習会後にマンモグラム読影と精度管理に関する 筆記試験をやっております。この合計でもって、これも同じようにA、B−1、B− 2、C、Dという5段階の評価を行っています。こちらの方もB以上の者が望ましいと しております。  お手元にも出ていると思いますが、昨年12月末で3,726名の医師が受講し、受験して おります。B以上は合計で2,751名です。それぞれ科別に見てみると、やはり外科医が 圧倒的に多い。あと放射線科医、産婦人科医、その他ということになっております。  これは、都道府県別に見たものですけれども、各地区別には多少のばらつきがありま す。北海道地区、それから、四国、九州が少ないということで、今年から重点的にやら ないといけないと考えております。  一方、技術部門に関しましては、12月31日現在で3,336名です。受験してB以上が約 2,000人というのが現状でございます。  更に、地域別に見ますと、やはり北海道、四国、九州などでは少ないというデータで ございます。  もう一つ、画像評価に関しては、臨床画像の評価の項目別の点数を定め、これに従っ て評価し、総合評価しています。B以上を合格として、それぞれ認定するというような 格好をとっております。  現在の施設画像評価の結果でございます。お配りの資料と少し違う、新しいデータが 出ていますが、後半の参考資料のところにありますので御訂正ください。現在、250台、 242施設が施設画像評価を受け、B以上が227台、219施設です。非常に合格が高く、認 定数が多いんですが、これを出すための努力が大変大事でして、これを認定するという ことで、技師さんを含めて勉強してきます。これを受けることによって、非常に画像が よくなります。我々は、これをできるだけ100%にしてもらいたいと思っており、落と すのではありません。C、Dの方に関しましては、それがどうすればよくなるかという ようなことを細かくサポートするというような体制をとっておりますので、この施設認 定を受けられた施設は大変いい画像が撮れているのが現状でございます。  これは、厚生省がん研究助成金による遠藤班のときに、検診受診者に対して読影医師 がどのくらい必要かということを試算したものでございます。これは50歳以上の女性人 口が1,580万人おります。30%の受診率で2年に1回としますと、240万人の人を診ない といけない。それを二重読影でするとすれば、何人の読影医が要るかということで試算 すると、2,000人となっています。現在、全国で2,800名の読影医がおりますので、この 試算はクリアできるかなというものでございます。  それから、台数に関しまして、現在日本では2,890台ございます。先ほどの学会の仕 様基準を満たすものというのは約半数の1,500台。満たさないものが約1400台です。実 際に、撮影するに望ましい技師さんが2,000人おりまして、施設画像認定を受けた台数 が250台です。これが先ほどの医師・技師に比べて少ないというのが懸念材料でござい ますけれども、最近はどんどん増えておりますので、ここ数年の間にこの数は増えてく るのではないかと考えております。  マンモグラフィというのは現在、フィルムによるアナログ画像を主体にやっておりま すが、日本ではデジタル画像という形で使用している施設が747施設、約26%あるんで すね。この辺が問題でして、今のアナログ画像での評価基準ではAになりません。とい うことで、このデジタル画像をどのようにするかということで、評価基準を改定する方 向に向かっております。  これは現在、我々が公表しております精中委のホームページのトップのページでござ います。これを見ますと、講習会の日とか試験の日がわかるようになっております。随 時更新しております。  仮に、ここにあります読影医師のリストというのをクリックしますと、全国の県が出 てきまして、県名をクリックしますと、医師・技師の名前が出るというようになってお ります。勿論これは本人の承諾を得て、公開しています。  それで、先ほど大内先生から出されましたけれども、現在どれくらいのマンモグラフ ィ検診がやられているかという2つのデータをここに出しました。日本対がん協会の一 番新しいデータですけれども、39万7,781人がマンモグラフィ併用検診受診者数です。  一方、老人保健事業報告の平成13年度版を見ますと、受診者数44万8,916人です。で すから、ほとんどが対がん協会が行っていることになり、先ほどの1,580万人を対象と しますと、受診者数約45万人ですから、実際には日本のマンモグラフィ検診受診率は 2.8%、3%に足らない受診率であるということが推定されます。  これは、欧米の例を先ほど大内先生が説明されましたけれども、大体60〜80%の受診 をしております。地域保健・老人保健事業報告では視触診で12〜13%、マンモグラフィ 検診はわずか3%です。この辺が非常に問題点になろうかと思います。  今後の課題ということで、私の立場でまとめてみました。精中委というのは全国規模 で各都道府県をサポートするような格好で我々は始めました。やはり各県の精度管理委 員会は乳がん部会がやっているかと思います。これとの連携をうまくやらないといけな い。そして、マンモグラフィ検診実施機関と読影医の確保ということをサポートすると いうのが、これからも必要になると思います。  あと、先ほどの受診率を向上するためにはどうするかということが1つの問題です。 そして、今日の本題の40歳代へのマンモグラフィ導入ということになろうかと思いま す。このことについて少しだけ、私の考えを述べさせていただきたいと思います。  これも先ほど大内先生が出されましたけれども、米国予防サービス特別委員会、いわ ゆるUSPSTFというのがあるんですが、この報告で、40歳代の死亡率減少効果というのが 相対危険度0.85、15%の減少効果、50歳以上で相対危険度0.78、22%の減少効果、両者 合わせて相対危険度0.84で16%の減少効果があるというのが最近出てます。こういうこ とから40歳代は50歳以上に比べて死亡率減少効果は少ないんですけれども、やはりこれ はレベルBという格好で認められているわけです。  それから、2002年2月のNCIのstatementでもこういう記載があります。40歳代の 女性でも1ないし2年ごとに受けるべきというstatementがあります。これらのことか らも、やはり40歳代もマンモグラフィ検診を導入することが必要だろうと思います。  これは、先ほど出ました久道班の新たながん検診手法の有効性の評価報告をまとめた ものですけれども、40歳代に関してはI-bという判定で、死亡率減少効果があるとする 相応の根拠があるという判定でございます。ただ、超音波に関しては、特に根拠がない というような報告でございました。  そういうことで、これは2003年11月に大内班で出されたものですが、結局40歳代にマ ンモグラフィを導入して2方向、そして、視触診ということになっています。ここに超 音波を入れるかどうかというのが1つの議論になるかと思うんですが、もし、これに超 音波検査を入れるとするならば、やはりきちっとした精度管理をする必要があろうかと 思います。我々は今、マンモグラフィの精度管理委員会ということでやってきました が、将来これが導入されるとするならば、やはりどこかでサポートする必要があろうと 考えます。それを担うのは我々精中委かなと思っていますが、これをサポートするだけ の余力が今のところはない、これから検討すべき問題ではないかと思っております。  また、60歳以上を視触診をなしにマンモグラフィ単独にするかという議論は、いろい ろあろうかと思いますけれども、40歳代にはマンモグラフィ2方向を追加して実施する という方が、一番素直な見解ではないかと思います。  以上でございます。 ○垣添座長  森本先生、どうもありがとうございました。  マンモグラフィの精度管理ということでお話をいただきましたが、大変時間が押し迫 ってまいりましたけれども、今の森本先生の御発表に関して御質問等がありましたら、 お聞きしたいと思います。 ○土屋委員  非常によく管理されていると思うんですが、先ほど永井参考人の御報告では、現場で の検診ですと産婦人科医の関与というのが大変大きいと思うんですが、特に、日本産婦 人科医会が精中委に加わっていないというのは、何か理由があるんでしょうか。 ○森本参考人  精中委というのは学会をバックにしたんですね。それで、永井先生はこの委員会のメ ンバーなんですけれども、日本産婦人科医会の代表なんですが、学会という立場で出て いただいております。それから、バックにあるメンバーはすべて学会ということにして おります。そういう格好で入ってもらっております。 ○土屋委員  ちょっとわからないんですが、医会と学会というのは、かなり密接に連動して動いて いらっしゃるんですか。 ○永井参考人  医会と学会とは表裏一体で動いております。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。  今日は、乳がん検診ということで、方法、対象、それから、間隔、受診率あるいは精 度管理といったところで4人の先生方にお話をいただきました。大変駆け足でしたけれ ども、ほんのちょっと時間を延長させていただき、もう少し全体に関して御発言いただ くことがありましたら、お受けしたいと思います。 ○田中委員  マンモグラフィを用いた検診がいいということは自明の理だと思いますが、ただ、実 際全国レベルを見ると、なかなか費用とかそういう点で100%にマンモグラフィを使用 するということは難しいのではないかと思うんですが、この点について、国の方で何か 施策とかそういうことでお考えはおありになるのでしょうか。 ○麦谷老人保健課長  今のところ、特に私どもで具体的に考えているプランはございません。といいますの は、この検討会でお決めいただいて、恐らく次々回ぐらいに婦人科系のがんをすべて統 括して御議論いただくときに、先ほど森本先生も出されましたが、マンモグラフィの分 布状況あるいはマンモグラフィが例えば仮に分布していても、必ずしもそれが検診にす べて使えるわけではありませんので、検診に使えるマンモグラフィがどれくらい世の中 にあって、その稼働率と隔年ごとの受診状況を見て、どのくらい世の中にあればいいか ということで、足りないということがわかれば、私どもとしては何らかの措置を講じた いと思っています。 ○垣添座長  これは、御指摘のように非常に重要なポイントの1つになろうかと思います。この検 討会に課せられた非常に大事なポイントかと思います。ほかにいかがでしょうか。 ○土屋委員  先ほど遠藤委員が指摘されたように、女性なので乳がんの場合にも婦人科を受診され る方が多いということなんですが、産婦人科の専門医の教育課程で、乳がんの研修とい うものは現在含まれているのでしょうか。私どもが教育を受けた段階では、大体外科だ けで習って、産婦人科ではそういう課程がないという解釈でいたんですが、もし、先ほ どの仙台のような状況であれば、新しく加わっていく方が基本的なところから勉強され て、しかも、マンモグラフィもかかりつけ医が判定の専門のところで精査した結果を受 けるにしても、御自身も写真の判断力がないと、本来の意味での検診の体制というのは 整わないのではないかと思いますので、その辺の現状を教えていただければと思いま す。 ○田中委員  私でよろしいですか。私は学会を代表いたしまして、今そのようなカリキュラムが含 まれております。また、今度4月からの新しい卒後研修制度の中でも、婦人科もコアに 入っております。その中で、女性をトータルに診るという観点のもとで乳房についても 知識を得る、あるいは技術を得るということが含まれてございます。 ○櫻井委員  今のことに関連してですけれども、産婦人科の専門の先生のカリキュラムの中に入っ ている。勿論それは含まれているというお話ですが、この話は産婦人科の専門医がどう という話ではなくて、岡崎先生が指摘されたように、かかりつけ医の役割であって産婦 人科専門医がやるということではないのだろうと思うのです。地域で岡山県の医師会で は3,000人ぐらいの会員について1,000人ぐらいの人が研修を受けて、きちんとした効果 を上げているということですから、勿論、産婦人科の専門医の先生がそれをやっている ということはすばらしいことですけれども、そういう問題とはちょっと別の視点がある のではないかと思うんです。 ○土屋委員  それは、産婦人科という縛りであっても、かかりつけ医という縛りであってもよろし いんですが、検診にタッチする方の資格というか、それに至る教育課程というものがし っかりないと、レベルが保てないのではないかと思ったのでお聞きしました。 ○大内委員  永井参考人が仙台市医師会の実施体制について書かれていますけれども、仙台市医師 会でのマンモグラフィ併用検診に携わる医師、かかりつけ医は、精中委が共催する講習 会を受講しています。一次検診から実は資格がありまして、試験の結果、C以上の評価 判定であるとされています。ダブルチェックについては、Aの方が行っております。デ ータにもありますけれども、ダブルチェックについては、それで精度保障がされるわけ ですので、乳がんの基本検診の入り口としましても、きちんとした資格を有する者、あ るいは教育を受けた者が実施するということが前提になろうと思います。 ○岡崎参考人  検診医の資格の問題が出てまいりましたが、マンモグラフィ併用検診なんですから、 視触診とマンモグラフィの両方の資格が必要です。マンモグラフィの方は精中委の御努 力が非常に大きい、特に大内先生の御努力が大きいと私もいつも思っておりますが、た だ、視触診は放ったらかしなんですよね。それを私は強調しているわけで、岡山の場合 には、かかりつけ医で3回講習を受けて、これは科は全然考えずにやって、そこで認定 した人にやっていただく。そうすると、わずか6時間の講習であれだけ何倍も上がって くるわけですから、こういう努力はそれぞれの医師会でおやりになってほしいと私は思 っております。ただ、ここの資料につけておりますが、「公衆衛生情報」に書いている ような、一次的にはそれをやると非常に医師会の反対もあるかもしれません。しかし、 岡山はそれを乗り越えて今はよくなったと私は解釈しております。視触診に関しても資 格が必要だろうと思います。  以上です。 ○斎藤委員  1点だけお聞きします。今、視触診単独での検診をやっている受診者の方には、効果 が不明だという説明はされているんでしょうか。永井先生でも岡崎先生でもどちらでも 結構ですが。 ○岡崎参考人  視触診の説明といいますか、これだけのリスクがあって、これだけ見逃しがあるよと いうことは申し上げません。というのは、そこまで言いますと、では、やめたという方 が出てきますので。それよりも、私は検診を受けているとほとんどの人が結果はいいん だという説明はします。しかし、ネガティブなデータを示しますと、やはり現場として は非常に難しくなってくるだろうと思います。 ○永井参考人  具体的に仙台の場合で言いますと、検診の視触診の制度というよりも、検診の持つ意 義付けというものの意識を統一して検診に参加してもらう。例えば、要するに検診とい うものと診断書きとは違うというような立場、検診医のやるべきこととか、そういうこ との理解というものは検診登録の前に、検診というのはこういうふうにして行われると いう合意をとって、その会に参加しない人は検診登録医にしないという立場を我々はと っております。ですから、勿論、講習会として視触診の臨床的知識は言いますけれど も、それより大事なのは、一体、検診と診断書きの違いというものを十分理解した上で 検診に参加してほしいと。 ○斎藤委員  今、私が申し上げたのは、直截に申し上げますと有効性があるかないかという話で す。検診では、たとえそれが有効でなくても臨床の現場よりは早期診断ができるのであ りまして、きちんとやればいいとかそういう情緒的な話ではなくて、検診を受けること で受診者の集団にメリットがあるかどうか、要するに、死亡率減少効果があるのかどう かという話をされているかどうか、それをお聞きしたんです。 ○永井参考人  今の死亡率という考え方が検診の世界に持ち込まれたというのは意外でした。といい ますのは、スタートのときには発見期別ということで有効性を評価していた。子宮がん の場合は発見期別で、それが死亡率に直結したんですよね。ところが、乳がんの場合は 必ずしもそうではない。死亡率効果というものの認識には、勿論そういう指導はしてい ますけれども、それが完全にみんなに行き渡るにはちょっと時間が要ると思います。 ○櫻井委員  視触診のみは全く有効性がないというように御発言されましたが、私はそういうふう には聞いていません。それから、岡崎参考人からもあったような、視触診のやり方その ものの問題も、今までの問題との違いが十分あるということも入れなければいけない し、更に、さっき御質問した自己検診の問題も、それが否定されるということであれ ば、それこそ対がん協会等パンフレットをたくさんつくってやってきたものを全部否定 するのであれば、それこそ、それをまず国民に知らせなければいけないということで、 結構大問題になると思いますので、その辺は十分御検討いただきたいと思います。 ○大内委員  先ほど櫻井先生から、自己検診の有効性についてのいろいろなエビデンスがどうなっ ているかという御質問に対して、最初に私がお答えしたのは、有効性があるとするの と、ないとするのと論文の結果が半々ぐらいで混在しているということを申し上げたの です。最も新しくて、最もスケールの大きいデータとして、上海データがありますとい うことを申し上げただけであって、その文献はone of themでありますので、決して否 定しているわけではございません。 ○櫻井委員  私も勿論そうだと思います。つまり、単純に言えば、自己検診というのは視触診の、 しかも、個人という医療の専門家でない人がやる視触診検診なわけですから、それにつ いての意見が半々であるということがわかれば、それでいいと思います。 ○垣添座長  ほかに。よろしいでしょうか。  それでは、少し時間をオーバーしてしまいましたけれども、長時間の大変熱心な御議 論、ありがとうございました。  それでは、これ以降の予定、その他で事務局から何か御説明がありましたら、お願い いたします。 ○麦谷老人保健課長  委員の先生方、どうもありがとうございました。次回は1月27日火曜日の午前10時か ら、場所は、国立がんセンターのこの部屋を予定しております。次回は、子宮がん検診 について関係団体からのヒアリングを今日と同じように予定しております。  その後の予定も申し上げた方がよろしいかと思いますが、今日が乳がん、次回は子宮 がんのヒアリングを行いましてから、その後、2月に入りましてから乳がん、子宮がん 検診について両方合わせた討議をさせていただきます。それはディスカッションを中心 に2時間とってあります。その次、3月に入るかと思いますが、そのときに取りまとめ をしたいと思います。  あと、予備日を設けてございますが、もし、第5回目の3月上旬の検討会で取りまと めが終われば、予備日は特に会議をする必要はないと考えております。  以上です。 ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、本日はこれで閉会にいたしたいと思います。皆さん、どうもありがとうご ざいました。                                      以上                         照会先:老健局老人保健課                         担当者:西村泰人                         連絡先:03-5253-1111 内線3946