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特別養護老人ホーム


施設サービス全体からみた「特別養護老人ホーム」の利用者率と費用額のシェア率

 利用者数(749.1千人)のグラフ

利用者数(749.1千人)
  費用額(257,551百万円)のグラフ

費用額(257,551百万円)
(平成15年9月サービス提供分)


「特別養護老人ホーム」及び「施設サービス」の利用者と費用額の伸び。(指数)

 利用者数

利用者数のグラフ


 費用額

費用額のグラフ


要介護度別にみた、利用者の構成割合。

要介護度別にみた、利用者の構成割合のグラフ

  出典:介護給付費実態調査



特別養護老人ホームにおける個別ケアへの取組

 施設は、常時の見守りと、必要に応じて臨機応変の介護を提供することによって、入所者に365日・24時間の安心を提供してきた。
 しかしながら、多くの要介護高齢者を一堂に集めて処遇するという施設の性格上、入所者には集団生活の中でケアを提供せざるを得ない面があったことは否定できない。

 こうした集団生活の中でのケアや、4人部屋・大きな食堂など入所前と大きく異なる施設の環境は、入所者にとって在宅での暮らしと落差が大きく、できる限り自立した生活を営んでいけるよう支援するという観点からは問題があり、施設には入所者一人一人の個性と生活のリズムを尊重した介護(個別ケア)を行うことが求められている。

 個別ケアを実現するための手法として、特別養護老人ホームでは、「ユニットケア」を導入する施設が増えつつある。

 ユニットケアは、在宅に近い居住環境の下で、入居者一人一人の個性や生活のリズムを尊重し、入居者相互が人間関係を築きながら日常生活を営めるよう介護を行うもの。

 ユニットケアには、在宅に近い居住環境が不可欠であることから、居室は個室(サービス提供上必要と認められる場合は、2人部屋も可)とし、居室の近くには共同生活室(少人数の家庭的な雰囲気の中で生活できる部屋)を設けることとしている。

 ユニットケアは、これまでのケアとは大きく異なるものであることから、ユニットケアを導入する特別養護老人ホームの管理者及びユニットリーダーに対して平成15年度から研修を実施。

 1.特別養護老人ホームにおけるユニットケアの制度化

  ○ 昨年4月の指定基準省令等の改正により、ユニットケアを行う施設を「小規模生活単位型」として、その運営基準、構造設備基準を設定。
 また、これに合わせて「小規模生活単位型」の介護報酬を設定。
 (介護報酬の改定)
 ・  小規模生活単位型    要介護1  784単位/日
 要介護2  831単位/日
(新設)  要介護3  879単位/日
 要介護4  927単位/日
 要介護5  974単位/日
 ・  従来型
要介護1  769単位/日    要介護1  677単位/日
要介護2  841単位/日  要介護2  748単位/日
要介護3  885単位/日  要介護3  818単位/日
要介護4  930単位/日  要介護4  889単位/日
要介護5  974単位/日  要介護5  959単位/日

  ○ 新設する特別養護老人ホームは、「小規模生活単位型」が基本。
 特別養護老人ホームは、これまでに約5,000施設(約34万人分)が整備されている。(4人部屋主体の従来型)
 選択の幅という意味で、従来型と「小規模生活単位型」が半分ずつになるまでは、国庫補助を受けて新設する施設は「小規模生活単位型」を基本としているが、それだけでは2015年時点で「小規模生活単位型」の利用者は全体の3割に過ぎない。(従来型の中の個室を含めても約4割。)

イメージ図
イメージ図
(注1) 小規模生活単位型については、平成15年度(2003年度)における新規着工分(約14300人分)が今後2014年度まで継続すると仮定。
(注2) 従来型については、平成15年度(2003年度)における新規着工分(約800人分)が今後2014年度まで継続すると仮定。

  ○ 小規模生活単位型特別養護老人ホームの施設数、費用額の推移

  平成15年4月 平成15年9月
請求事業所数 42 74
費用額
(単位:億円)
6.5 14
出典:「介護給付費実態調査月報」

(*)請求事業所数には、一部小規模生活単位型特別養護老人ホームを含む。


 2.ユニットケア施設研修について

 (1)施設管理者向け研修
 高齢者痴呆介護研究・研修東京センターにおいて、今年度より開始。
 施設管理者を対象に、ユニットケア導入の意義、施設運営に係る留意点等に関する研修会を実施。
 座学中心に1泊2日。
 これまでの4回で計110名が受講。

 (2)ユニットリーダー向け研修
 高齢者痴呆介護研究・研修東京センターにおいて、今年度より全国9か所の実地研修施設の協力を得て開始。
 ユニットケアにおける介護方法、情報の共有や職員の指導体制に関する研修会を実施。
 ユニットケア実施施設における演習・実習を中心に10日間程度の研修を実施。
 これまでに計85名が受講。
 今後、実地研修施設を増やしていく予定。



(参考)既存施設のユニットケア化の効果

  6人部屋の特別養護老人ホームを建て替え、個室・ユニットケアを導入した事例において、建て替え前後の入居者及びスタッフの行動の変化を調査した結果、以下のような点に変化がみられたことが分かった。
『介護保険施設における個室化とユニットケアに関する研究報告書』(平成13年3月・医療経済研究機構)
『普及期における介護保険施設の個室化とユニットケアに関する研究報告書』(平成14年3月・同)

1 建て替え前後の居室配置の状況

建て替え前(6床室主体)
建て替え前(6床室主体)の図
  建て替え後(ユニット部分)
建て替え後(ユニット部分)の図

2 入居者の生活の変化
 (1) 居場所の変化
居室内にいる時間が約3/4→約1/2に減少。
リビング・小リビングにいる時間が約2割→約4割に増加。
生活の中心がベッドからリビングへ。

(1) 居場所の変化のグラフ
*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (2) 行為の変化
睡眠が約4割→約2割に減少。
コミュニケーションや食事の時間が増えるなど、姿勢が横たわりから座位へ。

(2) 行為の変化のグラフ
*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (3) 食事場所の変化
 ベッド上での食事が約4割→約1割に減少。また、食堂での食事が約4割を占めていたところ、約9割がリビング・サブリビングで食事をとるようになり、生活にメリハリができた。

建て替え前
建て替え前のグラフ
↓
建て替え後
建て替え後のグラフ

 (4) 残飯の変化
一人当たり残飯量が92g→43gに減少し、食事摂取量が増加。

 (5) 排せつの変化
ポータブルトイレの設置数が29台→14台に減少し、排せつが改善。

3 家族の変化
 ○建て替え前後の面会者数を比較すると、建て替え後は増加。

3 家族の変化のグラフ


4 スタッフの行動の変化
 (1)居場所の変化
居室にいる時間が減少し、リビングにいる時間が増加。
(1)居場所の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (2)行為内容の変化
身体介助中心のケアから、余暇を過ごしたり交流を図ったりといったケアへと、質的に変化。

(2)行為内容の変化のグラフ

*午前7時から午後7時までの状況を調査。

 (3)運動量の変化
介護時の移動スピードを測ったところ、建て替え前と比べて、全体的に移動をしている時間が減少し、「安静状態」にある時間が増加している。
(3)運動量の変化のグラフ

*各職員の勤務時間帯における状況を調査。



特別養護老人ホームにおける地域展開への取組

 特別養護老人ホームにおける地域展開への取組としては、
  (1) 施設の有する人的・物的資源を、地域で生活する高齢者に提供するもの(サテライトデイサービス等)、
  (2) 施設の入所者に対し、地域の中でケアを提供するもの(逆デイサービス)
といったものがある。
(1)施設機能を地域の在宅高齢者に提供している事例

 特別養護老人ホーム「アザレアンさなだ」(長野県真田町)

 ○ 施設の有する人的・物的資源を、地域で生活する高齢者に提供。

 地域の高齢者に、24時間・365日の訪問介護・訪問看護、365日・3食の配食・訪問入浴サービスを提供。

 地域のコミュニティセンター等で、「サテライトデイサービス」を実施。
特別養護老人ホーム「アザレアンさなだ」(長野県真田町)の図


(2)施設の入所者に対し、地域の中でケアを提供している事例

 特別養護老人ホーム「いずみの園」(大分県中津市)

  ○ 特別養護老人ホームで生活していても、地域の一員であることを大切にすることを具体化するという目的で行っている取り組み。

 特別養護老人ホームから6キロ(車で約10分)離れた場所にある入所者の自宅を利用し、数人の入所者が日中を過ごす。(逆デイサービス)

 毎回、決まったメンバーで、同じユニットの中の痴呆を持つ入居者5人(要介護2〜3)で行う。

 近所に住む人がボランティアとして訪れたり、野菜を届けたり、地域との交流がある。また、ボランティアは、高齢者と一緒に食事の準備や高齢者の話し相手をすることで、家庭的な雰囲気をつくり出す重要な役割を果たしている。
 


実施日:週3〜4回(水、金、日曜が多い)
職員数:2人(専従スタッフ1人、非専従スタッフ1人)
時間:10:00〜16:30



 <ある日の一例>

 
10:00 施設出発
10:15 スーパーで昼食の買い物
10:50 逆デイサービスの場所に到着
11:00 昼食準備、掃除
12:00 昼食
お昼寝
14:00 片づけ、散歩、草むしりなど
16:00 「いずみの園」に帰園準備、帰園。


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