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介護家族のニーズと事業の現状

介護に関する家族の相談内容としては、「心身の疲労」、「介護方法」、「人間関係のトラブル」等が多い。
最近は、「人間関係のトラブル」についての相談や、「行政や事業者に対する苦情」等が増加している。また、痴呆性高齢者を抱える家族からの相談も増えている。
その他、世論調査では、要望する重点施策として「在宅で介護をする家族に対する支援の充実」「介護問題に関する相談窓口や相談体制の整備」といった事項も挙げられている。
一方、市町村による家族を対象とした事業としては、金品の支給、家族介護教室、痴呆性高齢者を抱える家族支援といったものが行われている。

国際長寿センターによる「介護支え合い相談」事業の実施状況

・相談集計:平成14年度:4,833件
累計(平成12年10月〜):9,619件

・相談内容:(平成14年度/複数相談あり)
介護の悩み 3,309件 心身疲労 1,662件
介護方法 1,239件
行動異常 262件
その他 146件
家族間のトラブル 1,062件 人間関係 913件
法的問題 29件
経済的問題 98件
その他 22件
介護に関する問い合わせ 1,802件 介護保険関連 511件
施設・病院 502件
法律 501件
その他 288件
行政などに対する苦情 761件 施設・病院 331件
介護従事者 253件
行政全般 129件
その他 48件
家族介護相談外の相談 267件 サービス従業者からの相談 55件
介護保険対象外からの相談 20件
相談者本人の悩み 147件
その他 45件
その他 385件 高齢者本人 364件
今後の介護相談 21件
※平成14年度「介護支え合い相談・研究事業報告書」より抜粋


介護支え合い相談への相談内容の変化

■相談内容(表7)
相談内容(表7)


表7からは以下のことがわかる。
 ・介護方法、あるいは情報の問い合わせなど、解決策を明示できる相談内容が3年間を通じて高い割合を占めている。情報の整備や、容易に入手できて理解しやすい情報の届け方などにおいて、介護者負担を軽減するためにできることが残されていると示唆されている。
 ・人間関係のトラブルは割合が高く、かつ増加傾向である。
 ・苦情を訴えるケースが増えている。これは介護保険に伴う権利意識の向上、サービス利用者の増加によるものであろう。



介護は当然と感謝の言葉もないの図

物盗られ妄想などが出てきたの図



「高齢者介護に関する世論調査」
(平成15年7月 内閣府大臣官房政府広報室)

調査対象者:全国20歳以上の者5,000人(有効回答数:3,567人)

要望する重点施策
(複数回答)
要望する重点施策のグラフ



(参考)

「家族介護者のエンパワーメント」に関する調査研究
(平成11年高齢者ケア未来モデル事業(老人保健健康増進等事業)より)

〔調査の概要〕
  ○実施主体:千葉県鎌ヶ谷市
  ○調査対象:市内に居住している要援護高齢者及びその家族(465ケース)

〔調査結果の概要〕
 ○ 家族の中に介護に関する愚痴や心配ごとを相談できる環境にあるものは、ストレス症状の生起する割合が少なく、在宅で介護を継続していく上で、家族成員の理解と協力が重要であることが指摘できよう。・・家族からの情緒的なサポートを期待できない介護者については家族以外の別の関係をつくることにより介護者のストレスの緩和、孤立感、孤独感の解消を計る必要がある。
 ○ また、ストレスに対して、積極的なコーピング(対処)〔「家族やまわりの人に協力を頼む」「自分の健康管理に気を付ける」「保健・医療・福祉の専門職に相談する」など〕を行っている介護者ほど、抑うつ度は低く抑えられている。このことは、介護者が積極的なコーピングを行えるようになることによって、ストレス症状が極限まで達してしまうことを阻止できる可能性を示しており、専門職によるエンパワーメント・アプローチの有効性と必要性を示している。

要介護度と同居家族の情緒的サポートが抑うつ得点に及ぼす効果のグラフ

-図6 家族介護者のコーピング(対処)と抑うつ得点のグラフ



家族介護支援事業(介護予防・地域支え合い事業)


家族介護支援事業(介護予防・地域支え合い事業)の表


介護相談員派遣等事業

介護サービスの利用者の希望を事業者に伝えサービスの向上を促すため、市町村において「介護相談員」の派遣が行われている。
現在、約500市町村において、約4,000人が活動している。
平成15年4月より、介護保険施設に対し、介護相談員の派遣等に協力するよう努力義務規定を設けたところ。

○事業概要

事業概要の図

○実施状況(平成15年12月現在)
 
実施市町村数   489 市町村
相談員数 4,054 人
受入事業所数 6,623 か所
  在宅 3,055 か所
施設 3,568 か所

○平成15年度予算額 4億円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)

○介護保険施設等の運営基準の改正(H15〜)
  介護相談員を積極的に受け入れる介護保険施設等を増やしていくため、平成15年4月より、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等の運営基準を見直し、以下のような規定を設けた。
(指定介護老人福祉施設の場合)
  指定介護老人福祉施設は、その運営に当たっては、提供した指定介護福祉施設サービスに関する入所者からの苦情に関して、市町村等が派遣する者が相談及び援助を行う事業その他の市町村が実施する事業に協力するよう努めなければならない。



(参考)
介護相談員の在宅訪問での主な相談事例

(家族からの相談)介護で疲労困憊している。介護保険サービスの内容の説明をしてほしい。

(家族からの相談)痴呆で徘徊し、転んで入院した。黄疸も出て心臓も悪いと言われた。入院中も徘徊で抜け出したりしたので、神経科の病院に移ってもらうかもしれないと言われ、不安である。

(家族からの相談)最近同居したが、日中独居で閉じこもっている。時々訪ねてきて話をきいてほしい。

(家族からの相談)娘夫婦は外国におり、元気でいるかどうか心配になる。時々訪問して様子をみてほしい。

(家族からの相談)他県の施設を退所して同居した。介護保険やその他のサービスを知りたい。訪問して本人の話相手になってほしい。

(本人からの相談)話相手がほしい、近所にも話相手がいない。(家族構成は、相談者夫婦、長男夫婦のみで孫はいない。妻は日中畑仕事、長男夫婦は会社勤めをしている。)

(本人からの相談)嫁に顔を殴られる。引き出しからお金がなくなったことがある。息子にも話を聞いてもらえない。

(本人からの相談)母と二人で暮らしていたが、母が特養へ入所したので、ひとり暮らしになった。友人のすすめで(知的障害者の)作業所に通ったが、トラブルが発生し、通えなくなったため、引きこもっている。


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