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第3編 研究開発課題の評価の実施方法
 第1章 競争的資金による研究開発課題の評価
  1.総括的事項
  (1)  厚生労働省の科学研究開発の大部分は、行政施策に関連する研究であり、専門的・学術的観点及び行政的観点の両面から評価を行うものとするが、必要に応じて、広く国内外の専門家の意見を取り入れた国際的水準の評価を行うことができる。
  (2)  評価に当たっては、評価に伴う負担が過重にならないようにするため、効果的・効率的な評価を行う等の工夫や配慮を行う。少額又は短期の研究開発課題では、事前評価による審査を中心とし、事後評価は省略する、評価項目を厳選する等の配慮を行う。
  (3)  評価は基本的に書面によるものとするが、必要に応じ当該研究申請者に対して出席及び説明を求めること(ヒアリング)及び施設の訪問調査を実施するものとする。
  (4)  特定の研究者への研究費の過度な集中を防ぎ、効果的な研究開発の推進を図るため、研究代表者及び分担研究者のエフォートを明らかにし、新規課題の選定等の際に活用する。
  (5)  緊急時の行政的要請に基づいて行う調査研究等は、事前評価の対象としないことができる。

  2.評価の実施体制
  (1)  評価委員会の設置
(1)  事前評価及び中間評価・事後評価を行うため、各研究事業等の所管課又は各研究事業等を所管する法人(以下この章において「所管課等」という。)は、研究事業等ごとに、事前評価委員会及び中間・事後評価委員会(以下、評価委員会)を置く。
(2)  事前評価委員会及び中間・事後評価委員会の委員の数はそれぞれ10名から15名程度を標準とする。
(3)  評価委員会は、原則として当該研究分野の専門家から構成される。また、必要に応じて専門家以外の有識者等や、所管課等及び本省関係課に所属する者も委員とすることができる。
(4)  中間・事後評価委員会の委員の概ね3分の1は、事前評価委員会の委員とは異なる者をもって充てるものとする。

  (2)  評価小委員会の設置
(1)  所管課等は、必要に応じて当該研究分野の専門家、本省関係課に所属する者からなる評価小委員会を置くことができる。
(2)  評価委員会は、評価小委員会の委員を選任する。

  (3)  評価委員会及び評価小委員会による評価の実施
(1)  評価小委員会は、各研究開発課題について、専門的・学術的観点と行政的観点から書面による評価を実施し、評価委員会に報告する。
(2)  評価委員会は、各研究開発課題について、専門的・学術的観点からの評点、行政的観点からの評点等から(評価小委員会を置いた場合には、評価小委員会の報告も踏まえて)評価を行う。
(3)  評価においては、1課題に対して評価委員会又は評価小委員会の複数名の委員が行うものとする。

  (4)  利害関係者の排除
(1)  評価委員会及び評価小委員会の委員は、当該研究事業等に応募すること(分担研究者として応募することを含む。)ができないものとする。
(2)  委員は、自らが現在所属している機関に所属している者の研究開発課題については、評価しないものとする。

  (5)  その他
 評価に必要な申請書等の様式、委員の任期等については、所管課等が別途定めるものとする。

  3.評価事項
  (1)  事前評価の評価事項
 事前評価に当たり考慮すべき事項は、次のとおりとする。
(1)  専門的・学術的観点からの評価に当たり考慮すべき事項
 研究の厚生労働科学分野における重要性
・ 厚生労働科学分野に関して有用と考えられる研究であるか
 研究の厚生労働科学分野における発展性
・ 研究成果が厚生科学分野の振興・発展に役立つか
 研究の独創性・新規性
・ 研究内容が独創性・新規性を有しているか
 研究目標の実現性・効率性
・ 実現可能な研究であるか
・ 研究が効率的に実施される見込みがあるか
研究者の資質、施設の能力
・ 研究業績や研究者の構成、施設の設備等の観点から、遂行可能な研究であるか
(2)  行政的な観点からの評価に当たり考慮すべき事項
 行政課題との関連性
 ・ 厚生労働行政の課題と関連性がある研究であるか
 行政的重要性
 ・ 厚生労働行政の課題における重要性が高い研究であるか
 ・ 社会的・経済的効果が高い研究であるか
 行政的緊急性
(3)  総合的に勘案すべき事項
 いずれの観点の評価においても、各府省や学会の定める倫理指針に適合しているか、又は倫理審査委員会の審査を受ける予定であるかを確認する等により、研究の倫理性について検討する。
 主任研究者及び分担研究者のエフォート等を考慮する。
 これまで研究実績の少ない者(若手研究者等)についても、研究内容や計画に重点を置いて的確に評価し、研究遂行能力を勘案した上で、研究開発の機会が与えられるように配慮する。
 申請者に対してヒアリングを実施する場合は、上記の評価事項の他、申請課題に対する研究の背景、目的、構想、研究体制、展望等についても説明を求めるものとする。
(4)  申請課題の採択に当たっては、研究開発資金の重点的・効率的配分を図る観点から、関係省庁等と十分な連携・調整等を図ることとする。

  (2)  中間評価の評価事項
 中間評価に当たり考慮すべき事項は、次のとおりとする。
(1)  専門的・学術的観点からの評価に当たり考慮すべき事項
 研究計画の達成度(成果)
・ 当初の計画どおり研究が進行しているか
 今後の研究計画の妥当性・効率性
・ 今後研究を進めていく上で問題点はないか
・ 問題点がある場合は、研究内容等の変更が必要か
・ その際にはどのように変更又は修正すべきか
 研究継続能力
 研究者の構成、研究者の能力や施設の設備からみて研究を継続し、所期の目的を達成することが可能か
 研究者の構成に変更が必要な場合は、どのように変更すべきか
(2)  行政的観点からの評価に当たり考慮すべき事項
 「期待される厚生労働行政に対する貢献度」等を評価事項とする。
(3)  総合的に勘案すべき事項
 いずれの観点の評価においても、各府省や学会の定める倫理指針に適合しているか、又は倫理審査委員会の審査を受けているかを確認する等により、研究の倫理性について検討する。
 研究継続申請者に対してヒアリングを実施する場合は、上記の評価事項の他、次年度の継続研究開発課題に対する研究開発課題の概要、研究の経過、今後の展望等についても説明を求めるものとする。

  (3)  事後評価の評価事項
 事後評価に当たり考慮すべき事項は、次のとおりとする。
(1)  専門的・学術的観点からの評価に当たり考慮すべき事項
 研究目的の達成度(成果)
・ 計画していた目的を達成したか
・ 計画していた目的を達成できなかった場合、どこに問題があったか
 研究成果の学術的・国際的・社会的意義
・ 研究成果の学術的・国際的・社会的意義がどの程度あるか
 研究成果の発展性
・ 研究成果の今後の研究への発展性があるか
 研究内容の効率性
・ 研究が効率的に実施されたか
(2)  行政的観点からの評価に当たり考慮すべき事項
・ 期待される厚生労働行政に対する貢献度等。
(3)  評価の際には、専門学術雑誌への発表、学会での講演、発表など研究成果の公表状況や特許の出願及び取得状況について考慮する。
(4)  当該研究の主任研究者に対してヒアリングを実施する場合は、上記の評価事項の他、研究開発の結果及び成果と今後の展望等についても説明を求めるものとする。

  4.評価方法
  (1)  各研究開発課題につき、総合的に勘案すべき事項に配慮しながら、専門的・学術的観点からの評価及び行政的観点からの評価を行う。評価は、5段階等の評価段階を設定し、評点を付けることにより行う。
 各研究事業等の特性を踏まえ、それぞれの観点の重要性を考慮して重み付けを行った上で、総合点を算出し、点数の高い研究開発課題を優先的に採択することを原則とする。
  (2)  評価の基準(評価段階、重み付け等)は、評価委員会において定める。

  5.評価結果の通知
  (1)  事前評価
 所管課等は、課題の採否結果を個々の研究者に通知する。なお、必要に応じて評価結果の内容等を研究者に通知するものとする。
  (2)  中間評価
 所管課等は、研究継続の可否を事前評価委員会及び個々の研究者に通知する。なお、必要に応じて研究計画の変更、研究費の増減、共同研究者の変更、研究の中止等の評価結果の内容を研究者に通知するものとする。
  (3)  事後評価
 所管課等は、評価結果を事前評価委員会及び個々の研究者に通知する。

  6.評価結果の公表等について
  (1)  以下の事項について、所管課等は、評価終了後の適切な時期に、刊行物、厚生労働省ホームページ等により公表するものとする。
(1)  研究採択課題、研究費の交付予定額や研究報告書の概要
(2)  事前評価委員会及び中間・事後評価委員会の委員の氏名
  (2)  公表に当たっては、個人情報・企業秘密や未発表の研究成果・知的財産権の取得等について、それらを保護する観点に配慮するものとする。

 第2章 重点的資金による研究開発課題の評価
  1 .評価の実施主体
 重点的資金による研究開発課題の事前評価、中間評価及び事後評価については、各研究事業等の所管課(国立試験研究機関又は法人に予算措置された基盤的研究費以外の研究事業における課題については当該国立試験研究機関又は法人)において実施する。

  2 .評価の実施方法
 評価は、行政的な施策と適合しているか、専門的・学術的・社会的・経済的観点等から有効に実施されているか等について行う。その際、科学技術の進展、社会や経済の情勢の変化により、評価の項目、基準等が変わることに留意する。特に応用研究、開発研究等については、社会的・経済的な観点からの評価を重視する。また、大規模プロジェクトについては、責任体制の明確さ、費用対効果等を含めて、特に厳正に評価するとともに、評価の客観性および公正さをより高めるため、必要に応じて第三者評価を活用する。

  3 .評価結果の通知等
 評価結果については、研究開発課題の研究実施者に通知するとともに、その概要について、個人情報・企業秘密や未発表の研究成果・知的財産権の取得等について、それらを保護する観点に配慮しつつ、インターネット等を通じて公表する。また、国立試験研究機関に措置された研究事業における課題の評価結果については、研究開発機関の評価において活用する。

 第3章 基盤的資金による研究開発課題の評価
  1 .評価の実施主体及び実施方法
 基盤的資金による研究開発課題の事前評価、中間評価及び事後評価は、研究開発機関の長において、研究開発機関の目的等に照らして、重点的資金による研究開発課題の評価方法等を参考としつつ、評価方法を適切に選定し、実施するものであり、必ずしも外部評価を求めるものではない。その際、例えば論文発表等を通じた当該研究分野における研究者間における評価等を活用するとともに、必要に応じて、研究開発機関の評価の対象に含めるなど、効率的で適切な方法で実施する。

  2 .評価結果の活用等
 評価結果は、必要に応じて、研究開発機関の評価に活用し、経常的な研究開発活動全体の改善に資するよう配慮する。
 研究開発機関の長は、基盤的資金による研究開発課題の評価結果の内容を所管課に提出するものとする。


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