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第1編 総括的事項
 第1章 目的
 「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月、内閣総理大臣決定)は、平成13年11月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(内閣総理大臣決定)と改定され、評価対象として、旧大綱的指針において示されていた研究開発課題及び研究開発機関に、研究開発施策及び研究者等の業績を加えるとともに、評価における公正さと透明性の確保、評価結果の予算、人材等の資源配分への適切な反映、評価に必要な資源の確保と評価体制の整備を図ることが重要な改善点として盛り込まれた。
 国民の保健・医療・福祉・生活環境・労働安全衛生など国民生活の向上に資することを目的とする厚生労働省の科学研究開発においても、行政施策との連携を保ちながら、研究開発活動と一体化して適切な評価を実施し、その結果を有効に活用して、柔軟かつ競争的で開かれた研究開発を推進しつつ、その効率化を図ることにより、一層優れた研究開発成果を国民、社会へ還元することが求められている。
 このため、厚生労働省の科学研究開発(試験、調査等を含む。)に関する研究開発施策、研究開発課題、研究開発機関及び研究者の業績の評価について、外部評価の実施、評価結果の公開、研究費等の研究開発資源の配分への適切な反映等を行うことにより、研究開発評価の一層効果的な実施を図ることを目的として本指針を策定するものである。

 第2章 定義
 本指針において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
  (1) 研究事業等 次章(1)アからキまでに掲げるそれぞれの事業をいう
  (2) 研究開発機関 施設等機関及びこれと一体化した研究機関のうち、別紙に掲げるものをいう。
  (3) 国立試験研究機関 研究開発機関のうち、別紙の1に掲げるものをいう。
  (4) 国立医療機関等研究機関 研究開発機関のうち、別紙の2から4までに掲げるものをいう。
  (5) 評価実施主体 第2編から第5編までの規定により評価を実施する研究事業等の所管課、研究事業等を所管する法人及び研究開発機関をいう。
  (6) 外部評価 評価実施主体が外部の者を評価者として選任して行う評価をいう。
  (7) 第三者評価 評価実施主体とは別の独立した機関が行う評価をいう。
  (8) 事前評価 研究開発施策の決定又は研究開発課題の採択の前に行う評価をいう。
  (9) 中間評価 研究開発施策又は研究開発課題の実施期間中に行う評価をいう。
  (10) 事後評価 研究開発施策又は研究開発課題の終了後に行う評価をいう。
  (11) 追跡評価 研究開発施策又は研究開発課題の終了後一定の期間を経過した後に行う評価をいう。
  (12) エフォート 研究者の年間の全仕事時間を100パーセントとした場合における、当該研究者が当該研究開発の実施に必要とする時間の配分率(研究専従率)をいう。
  (13) 大規模プロジェクト 研究開発に要する費用の総額が10億円以上と見込まれる研究開発課題をいう。
  (14) 少額又は短期の研究開発課題 年間500万円以下又は研究期間が1年以下と見込まれる研究開発課題をいう。

 第3章 対象範囲
 本指針の研究開発評価の対象範囲は、以下のとおりとする。
 (1)  研究開発施策
 厚生労働科学研究費補助金による各研究事業
 国立病院特別会計におけるがん研究助成金、循環器病研究委託費、国際医療協力研究委託費、成育医療研究委託費、精神・神経疾患研究委託費及び長寿医療研究委託費による研究事業
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構が実施する基礎研究推進事業
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構が実施する医薬品、医療機器等の研究開発に対する出融資事業
 保健医療基礎研究費による研究事業
 特定疾患治療研究費及び小児慢性特定疾患治療研究費による研究事業
 結核研究所補助金及び放射線影響研究所補助金による研究事業
 (2)  研究開発課題
 競争的資金による研究開発課題
 ・  研究事業等のうち、公募型の研究開発課題
 重点的資金による研究開発課題
 ・  研究事業等のうち、公募型以外の研究開発課題
 ・  国立試験研究機関に予算措置された基盤的研究費以外の研究事業における研究開発課題
 基盤的資金による研究開発課題
 ・  国立試験研究機関の基盤的研究費における研究開発課題
 (3)  研究開発機関
 (4)  研究者の業績
 研究開発機関に所属する研究者の業績

 第4章 評価実施主体、評価者及び研究者の責務
  (1)  評価実施主体及び評価者の責務
(1)  評価実施主体は、本指針を踏まえ、評価のための具体的な仕組み(実施要領等の策定、評価委員会の設置等)を整備し、研究者の能力が十分に発揮される環境が創出されるよう、厳正な評価を実施するとともに、その評価結果を適切に活用し、また、国民に対して評価結果とその反映状況について積極的な情報の提供を図る。
(2)  評価者は、中立かつ公正で厳正な評価を行うべきことを常に認識するとともに、優れた研究開発をさらに伸ばし、より良いものとなるように、必要に応じ、適切な助言を行う。また、自らの評価結果が、後の評価者によって評価されることになるとともに、最終的には国民によって評価されるものであることを十分に認識しなければならない。
(3)  評価者は評価に関し知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。

  (2)  研究者の責務
 研究者は、研究開発活動の一環として評価の重要性を十分に認識し、自発的かつ積極的に評価に協力する。また、研究者は、専門的見地からの評価が重要な役割を果たすものであることを十分に認識し、評価に積極的に参加する。

 第5章 評価の基本的考え方
  1.外部評価の実施、評価者の選任等
  (1)  外部評価の実施
 評価実施主体は、評価の客観性・公正さ・信頼性を確保するために、外部評価を実施することを原則とする。また、必要に応じて第三者評価を活用するものとする。

  (2) 評価者の選任等
(1)  評価者は、当該研究分野及びそれに関連する分野の専門家から選任し、国際的な観点から評価を行うために、必要に応じて、海外の研究者に評価意見を求めることもできるものとする。ただし、研究開発の性格や目的に応じて社会・経済のニーズを適切に反映させるために、産業界や人文・社会科学の人材を選任する等、当該研究分野の専門家以外の有識者等からも選任できるものとする。なお、必要に応じて、評価実施主体、当該研究事業等の所管課又は関係課に所属する者、被評価主体に所属する者も評価者として選任できるものとする。
(2)  評価者の選任にあたっては、利害関係の範囲を明確に定める等により原則として利害関係者が評価者に加わらないようにする。なお、利害関係者が加わる場合については、その理由を示すものとする。さらに、評価の客観性を保つために、例えば、年齢、所属機関、性別等に配慮して評価者を選任するように努める。
(3)  また、研究者間に新たな利害関係を生じ、公正な審査の妨げとなることのないよう、評価者に対し評価に関わる諸情報の守秘の徹底を図る。

  2.評価時期
  (1) 研究開発施策及び研究開発課題
(1)  研究開発施策及び研究開発課題については、原則として事前評価及び事後評価を行う。
(2)  研究開発施策については、研究開発をめぐる諸情勢の変化に柔軟に対応しつつ、常に活発な研究開発が実施されるよう、評価実施主体は、3年から5年程度の期間を一つの目安として、定期的に評価を実施する。
(3)  研究開発課題については、3年の研究開発期間の場合、原則2年目で中間評価を実施する。5年以上の期間を要する又は研究開発期間の定めがない研究開発課題は、評価実施主体が、当該研究開発課題の目的、内容、性格、規模等を考慮し、例えば3年程度を一つの目安として定期的に中間評価を実施する。また、優れた成果が期待され研究開発の発展が見込まれる研究開発課題及び目的上継続性が重視される研究開発課題については、切れ目なく研究開発が継続できるように、研究開発終了前の適切な時期に評価を実施し、継続を決定することができるものとする。
(4)  研究開発施策及び研究開発課題については、必要に応じて追跡評価を行い、成果の波及効果、活用状況等を把握するとともに、過去の評価の妥当性を検証し、関連する研究開発制度等の見直し等に反映するものとする。

  (2) 研究開発機関
研究開発機関については、(1)(2)に準じて定期的に評価を実施する。

  (3) 研究者の業績
研究者の業績の評価については、研究者が所属する機関の長が自ら定める方法に従い、評価を実施する。

  3 .開かれた評価の実施
 厚生労働省の科学研究開発の現状について国民の理解を得るとともに、評価の透明性・公正さを確保するため、評価に係る諸情報を積極的に公開することが必要である。
  (1)  評価方法の周知
 評価実施主体は、評価における公正さ、信頼性、継続性を確保し、実効性のある評価を実施するために、評価目的や評価対象に応じて、あらかじめ評価方法(評価手法、評価項目、評価基準、評価過程、評価手続等)を明確かつ具体的に設定し周知する。
  (2)  評価内容等の被評価者への開示
 評価実施主体は、評価実施後、被評価者に結果を開示し、その内容を説明する等の仕組みを整備する。なお、研究者の業績の評価については、所属する機関の長が定める方法に従う。
  (3)  研究開発評価等の公表等
(1)  評価実施主体は、個人情報や企業秘密の保護、国民の安全の確保、知的財産権の取得状況等に配慮しつつ、研究開発成果、評価結果をインターネットを利用すること等により、分かりやすい形で国民に積極的に公表する。ただし、研究者の業績評価の結果については、個人情報の秘密保持の点から慎重に取り扱う。
(2)  評価者の評価に対する責任を明確にするために、評価実施後、適切な時期に評価者名を公表する。この場合において、研究開発課題の評価については、研究者間に新たな利害関係を生じさせないよう、個々の課題に対する評価者が特定されないように配慮するものとする。
(3)  特に、大規模プロジェクトについては、(1)に留意しつつ評価結果を具体的に公表する。

  4 .研究開発資源の配分への反映等評価結果の適切な活用
 評価結果を十分に活用し、研究の一層の活性化を図るため、画一的、短期的な視点のみにとらわれないよう留意しつつ、評価結果を研究開発費等の研究開発資源の重点的・効率的配分、研究開発計画の見直し等の研究企画に適切に反映することが必要である。このことは、柔軟かつ競争的で開かれた、より創造的な研究開発環境の醸成に寄与し、活力あふれた研究開発を推進することにもつながるものである。

  5.評価支援体制の整備
  (1)  電子化の推進
 研究開発の評価を行うに当たっては、評価者・被評価者双方において、関係資料の準備やその検討など、一連の評価業務に係る作業が必要となるが、評価に伴うこれらの作業負担が過重なものとなり、かえって研究開発活動に支障が生じてはならない。そこで、評価実施主体においては、さらに効率的な研究開発の企画等を図るため、被評価主体や研究者の協力を得て、各課題ごとに研究者(エフォートを含む。)、資金、研究開発成果(論文、特許等)、評価者、評価結果を含むデータベースを構築し、管理する必要がある。
 さらに、審査業務及び評価業務を効率化するために、申請書の受付、書面審査、評価結果の開示等における電子システム化を進めることが望ましい。
  (2)  人材の確保
 評価実施主体は、評価体制を充実するため、評価担当者をおき、国の内外から若手を含む研究経験のある人材を適性に応じ一定期間配置するように努める。さらに、研究開発課題の評価プロセスの適切な管理、質の高い評価、優れた研究の支援、申請課題の質の向上の支援等を行うために、研究経験のある人材を充てることが望ましい。また、研修、シンポジウム等を通じて評価人材の養成に努めることも必要である。

  6.評価における客観性の確保と研究の性格等に応じた適切な配慮
  (1)  評価の客観性を確保する観点から、質を示す定量的な評価手法の検討を進め、具体的な指標・数値による評価手法を用いるよう努めるものとする。
  (2)  本指針が対象とする研究は、多様な目的を持つものであり、例えば遺伝子資源の収集・利用、長期縦断疫学研究など短期間で論文、特許等の形で業績を上げにくい研究開発分野や試験調査などそれぞれの研究事業等が持つ性格や目的を十分に考慮し、それぞれの研究事業等や研究開発機関に適した評価を行うことが必要である。
  (3)  国立試験研究機関の試験・調査等は、各種の研究活動の基盤整備的な役割を担うものであり、評価に当たっては個々の業務の性格を踏まえ、一般的な研究開発活動の評価の際に使用される評価指標、例えば論文数や特許権の取得数などとは異なる評価指標を用いるなどの配慮が必要である。

  7.評価に伴う過重な負担の回避
  (1)  評価に伴う作業負担が過重となり、本来の研究開発活動に支障が生じないように、大規模プロジェクトと少額又は短期の研究開発課題とでは評価の方法に差を設けるなどの配慮が必要である。評価方法の簡略化や変更を行う場合は、評価実施主体は、変更の理由、基準、概略等を予め示す必要がある。
  (2)  研究開発施策、研究開発課題、研究開発機関及び研究者の業績の評価が相互に密接な関係を有する場合には、それぞれの評価結果を活用して評価を実施するなど、効率的な評価を実施する。
  (3)  個々の研究開発施策、研究開発課題等が、行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)に定める政策評価(以下単に「政策評価」という。)の対象となる場合には、評価業務の重複による過重な負担が生じないよう、本指針による評価と政策評価とを一体として行うものとする。

  8 .その他
 独立行政法人については、独立行政法人評価委員会による評価が行われることとされており、本指針の対象としていないが、本指針を参考として独立行政法人に係る評価を行うことを妨げるものではない。

 第6章 本指針の見直し
 厚生科学審議会は、評価の実施方法について必要に応じて再検討を行い、本指針をより適切なものとすべく見直しを行うものとする。


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