03/12/24 第8回社会保障審議会年金数理部会議事録                    第8回               社会保障審議会年金数理部会              平成15年12月24日(水)                 厚生労働省年金局 時間 :平成15年12月24日(水)14:00〜16:10 場所 :日本教育会館 9階 喜山 平安の間 出席委員:  堀部会長 都村部会長代理 栗林委員 近藤委員 田村委員 林委員 山ア委員  議事次第  1.公的年金財政状況報告−平成13年度−について  2.平成16年年金制度改革について 開会 ○田村首席年金数理官  定刻になりましたので、ただいまより第8回社会保障審議会年金数理部会を開催させ ていただきます。私は、この8月末の異動で年金局首席年金数理官に就任いたしました 田村でございます。よろしくお願いいたします。  審議に入ります前に、前回の部会開催以降に事務局の異動がありましたので御紹介さ せていただきます。大臣官房審議官年金担当の渡邉でございます。  次に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図、議事次第のほか、次のと おりでございます。  まず資料1は、平成13年度の公的年金財政状況報告(案)です。それから、薄い資料 2は、その要旨(案)でございます。  引き続きまして、資料3−1から3−5まで、これは平成16年年金制度改正に関する 厚生労働省案の資料です。資料4−1と資料4−2は政府与党協議会で合意した改正内 容に関する資料です。以上でございます。  次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、宮島委員と渡辺委 員が御都合により御欠席とのことでございます。御出席いただきました委員の方が3分 の1を超えておりますので、会議は成立していることを御報告申し上げます。  それでは、以降の進行につきましては堀部会長にお願いいたします。 ○堀部会長  年末のお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。  今日はお手元の議事次第にありますように、公的年金の財政状況報告と平成16年の年 金制度改正について審議をすることにしたいと思います。  それでは、最初の公的年金財政状況報告−平成13年度−について、議事に入りたいと 思います。 議題 1.公的年金財政状況報告−平成13年度−について ○堀部会長  年金数理部会は御承知のように公的年金制度の一元化の推進にかかる閣議決定におき まして、財政再計算時における検証及び毎年度の財政状況の報告を求めることが要請さ れており、これを受けまして、平成11年度分から平成13年度分まで、公的年金制度の財 政状況について制度所管省から報告を受けたわけです。  本部会としまして、こういった報告を受けて、あとどうしようかといろいろ議論を行 った結果、報告書を作成しようということになったわけです。そのたたき台を事務局か ら示していただきました。委員の皆様はこれまで事務局が作成したたたき台を事前に御 覧いただいて、御意見、御指摘をいただいております。その御意見、御指摘に基づきま して修正したものがお手元に配布してあるわけでございます。  その内容は公的年金の概要、財政状況、平成11年財政再計算結果との比較、そういっ たものが中心になっております。詳細につきましては事務局から説明をお願いしたいと 思います。それではよろしくお願いいたします。 ○田村首席年金数理官  御説明をいたします。座って御説明したいと思います。  この報告は、前回の部会でのご議論を受けまして、これまで平成14年、15年の6回に わたり行っていただきました制度所管省からのヒアリング資料等をもとにしまして、制 度を横断的に眺めることができるように作成いたしました。また、旧年金数理部会で提 唱されておりました5つの指標につきましても制度間での比較を行っております。  お手元にございます資料1が本体でございまして、資料2が要旨でございます。要旨 は、報告書の本体の中からそのポイントになる事項を抜き出しております。要旨の最後 のほうには、5枚目ですが、この公的年金財政状況報告の趣旨および年金数理部会の設 置の目的について若干触れてございます。  では、分厚いほうの報告の案に沿ってご説明をしていきたいと思います。  1枚めくっていただきますと目次がございます。構成としましては、「はじめに」と いうのがございまして、そのほかに第1章、第2章、第3章と大きく3つに分かれてご ざいます。第1章は導入ということで、公的年金の考え方、その種類や体系、一元化の 動き、財政方式について簡単に述べてございます。第2章、これがヒアリングの結果を まとめたものでございます。ヒアリングの順番に沿いまして、財政収支、つまり決算の 状況、次いで被保険者、受給権者の状況について、それぞれ統計的な分析をしてござい ます。また、先ほども触れました旧年金数理部会の5つの指標につきましても、現状と 推移を見ています。第3章もヒアリングの内容からですけれども、第2章で見ました実 績と、前回の平成11年の財政再計算との比較をしたものでございます。財政再計算の見 通しがどれくらい実績と合っていたか、それがどのような要因で違っていたのかを見て おります。この章の最後の4番目、積立金の実績と将来見通しの乖離の分析となってご ざいますけれども、これは財政のすべての収支が影響します平成13年度末の積立金につ きまして、その実績と将来見通しとの乖離につきまして、各種の要因の影響の程度を分 析しております。最後に、付属資料と参考資料をつけてございます。その中の用語解説 が付属資料にございますけれども、これは共済年金も含めた全制度を観察するのに必要 な事項をとりまとめてみました。  次のページに「はじめに」というのがございます。これは前書きみたいなものです が、当年金数理部会の設置の趣旨、ヒアリングと本報告書の位置づけ及び昨今の年金改 正の動き等について触れてございます。以下の各章につきましては、実際にこの報告を 執筆いたしました年金数理官の石原から御説明したいと思います。 ○石原年金数理官  それでは、第1章から内容について、簡単ではございますが、御説明申し上げます。  まず、第1章は、公的年金の考え方、種類、体系などを3ページ程度にまとめてみた ものでございます。1の「考え方・仕組」におきましては、公的年金が老後をはじめ障 害や死亡の場合の所得保障を図るもので、現在、世代間扶養の考え方を基本としている ことを述べております。  2と3におきましては、公的年金の種類、体系を簡潔にまとめてみたものでございま す。次の4の「一元化の推進」におきましては、公的年金制度につきまして、現在、一 元化の推進が図られていることを紹介いたし、5の「財政方式」におきましては、現在 の財政方式は世代間扶養の考え方で、年金給付に必要な資金をあらかじめすべて積み立 てておく考え方はとられていないこと、ただ一定の積立金を保有し、その運用収入を活 用することにより、将来世代の負担を軽減することになっていることを、図2と共に紹 介しているわけでございます。  先に進みまして、第2章でございます。第2章は13年度までの財政状況を見たもので ございます。以下、表と図に沿って、内容を御説明申し上げます。  まず、表1でございますが、これは13年度における公的年金制度の全体と各制度の財 政収支をまとめてみたものでございます。表1の右端のところに、公的年金制度全体の 欄がございます。御覧いただきますと、公的年金制度全体では保険料収入が26兆4,640 億円、国庫負担が5兆8,340億円などとなっております。運用収入につきましては、厚 生年金と国民年金が評価損益を含む時価ベースであるのに対しまして、共済年金のほう は評価損益を含まない簿価ベースのものしかないため、それを掲げております。合計値 は、単純に合計することが適当ではないことから、ここでは掲げておりません。  なお、この表1を御覧になるとわかるように、収支残あるいは年度末積立金、これに つきましても厚生年金と国民年金が時価ベース、共済年金が簿価ベースとせざるを得な かったところでございます。  支出の項を御覧いただきますと、公的年金制度全体で給付費のほうは28兆6,172億円、 そして基礎年金拠出金が14兆1,880億円などとなっております。公的年金制度全体のい わゆる1階部分も含めました年金給付費としましては、この各制度の給付費の合計の28 兆6,000億円余と、7ページ、右側のところに基礎年金受給権者へというところで9兆 3,633億円とございますが、これの合計の約38兆円がいわゆる1階部分も含めた13年度 における年金給付でございます。  また、7ページの表2でございますけれども、これは主として基礎年金制度に係る制 度間の財政上の関係を示したものでございます。基礎年金給付費や旧法に係るみなし基 礎年金給付費を賄うために各制度が基礎年金拠出金を負担することや、あるいは各制度 のみなし基礎年金給付費に充てるように、基礎年金交付金というものが各制度にいくと いったさまを示したものでございます。  説明を先に進めさせていただきまして、8ページの表3でございます。表3以降は、 各制度ごとに財政収支の各項目を時系列的に見ていったものでございます。表3は、 「保険料収入額の推移」でございます。厚生年金と農林年金は9年度をピークに以後減 少しておりまして、地共済と国民年金、これは12、13年度、2年連続の減少、一方、国 共済と私学共済は増加を続けているという状況になっております。  先に進みまして、10ページでございますが、表5「国庫・公経済負担額の推移」の表 がございます。こちらのほうは、各制度ともほぼコンスタントに増加しております。  11ページの表6は「追加費用の推移」でございます。追加費用と申しますのは、給付 のうち、恩給公務員期間等に係る部分に要する費用に充てられるもので、国共済と地共 済の収入項目にあらわれるものでございます。恩給公務員期間等を有する受給権者の新 規発生は少なくなっていくものでございますので、長期的には減少していくものでござ います。  次の12ページあるいは13ページに「運用収入」「運用利回りの推移」を載せた表がご ざいます。運用収入は各制度ともここ数年総じて減少を続けているわけでございまし て、運用利回りも表8にあるとおり、低下を続けているところでございます。  先に進みまして、表9「基礎年金交付金の推移」でございます。基礎年金交付金と申 しますのは、旧法年金に係る費用であるみなし基礎年金給付費に充てられるものでござ います。発生ベースである下段の確定値のほうで御覧いただきますと、8年度以降、各 制度ともほぼコンスタントに減少を続けております。もともと旧法年金の受給権者の新 規発生は非常に限られておりますので、やはり追加費用と同じように、長期的には減少 していくものでございます。  15ページでございますが、表10に「給付費の推移」がございます。ここから先、支出 の項目のほうに移りますけれども、給付費は御覧のとおり、被用者年金では各制度とも 増加を続けているわけでございます。国民年金の給付費は減少しておりますけれども、 ここに載っている国民年金の給付費は主として旧法国民年金の老齢年金の給付費で、受 給権者の新規発生が限られておりますので、このように減少してきているわけでござい ます。  続きまして、表11でございますが、これは「基礎年金拠出金の推移」でございます。 発生ベースである確定値のほうで御覧いただきますと、コンスタントに増加を続けてお ります。  この基礎年金拠出金と申しますのは、基礎年金給付費とみなし基礎年金給付費の合計 から特別国庫負担を除いたものを各制度が分担する分でございまして、そこで表12とし て基礎年金給付費あるいはみなし基礎年金給付費がどう推移しているかを見たものがご ざいます。御覧のとおり、基礎年金給付費、こちらはいわゆる新法の基礎年金給付費で ございますが、1年当たり10%以上の伸びで増加を続けております。一方、旧法年金の ほうは減少を続けているわけでございます。  表12は決算ベースで見たものでございますが、表13としまして、確定値ベースで、し かも基礎年金拠出金を各制度がどういうふうに分担しているかを見るために、今申し上 げた基礎年金給付費とみなし基礎年金給付費の合計額あるいは特別国庫負担額、そして この表13で(1)(2)と打っておりますが、特別国庫負担額を除いた(1)から(2)を引いたも のの推移、あるいはこの基礎年金の拠出金算定対象者数、これに応じて各制度、拠出金 を分担するわけでございますが、それがどのように推移しているか、これをまとめてみ たものが表13でございます。  説明のほうは先に進めさせていただきまして、表14は「収支残の推移」でございま す。制度によって違いがございますが、保険料収入の減少や給付費の増加などを受けま して、収支残はここのところ縮小あるいは制度によっては赤字に転じているという状況 でございます。  次の20ページは、積立金でございます。積立金のほうも、各制度とも伸びが鈍化して きている、あるいは収支残が赤字になっているところでは、積立金もそれに応じて減っ ているという状況になっております。  次の21ページからでございますが、第2節としまして、被保険者の現状及び推移でご ざいます。財政収支の背景にある被保険者の状況を見ているものでございます。まず、 表の16あるいは次の22ページ、図3に「被保険者数の推移」がございますが、御覧のと おり、厚生年金は9年度3,347万人を打った後、4年連続して減少してきております。 また国共済は、12年度に地方事務官制度の廃止に伴いまして、地方事務官が地共済から 国共済に移管されたことに伴って増加しておりますけれども、それ以外は、やはり徐々 に減ってきているという状況にございます。  また、地共済、農林年金もやはり減少を続けているという状況でございます。それに 対しまして、私学共済は徐々にではございますが、増加しております。また国民年金の 1号被保険者数、こちらのほうは7年度の1,900万人から2,200万人まで増加してきてお ります。  次は、表17で、これは被保険者の平均年齢あるいは年齢分布を見たものでございま す。平均年齢で見ますと、被用者年金では地共済が最も高くて42.7歳、一方、私学共済 は低くて39.7歳、国共済、39.5歳などとなっております。  24ページの図4にこの被保険者の年齢分布を見たものがございます。この年齢分布を 御覧いただきますと、例えば地共済は54歳以下の層では、年齢が若いほど少なくなって いるという、逆ピラミッド型になっていること、あるいは厚生年金につきましては、50 歳から54歳の層が前後の年齢層に比べて突出していること、あるいは30歳前後の層がや はり前後の年齢層に比べて膨らんでいること、そういうことが見てとれるかと思いま す。  次の表18は、被保険者につきまして男女別に見たものでございます。女性割合は私学 共済が最も高くて52.8%を占めておりますが、国共済は女性の割合が低くて17.7%とな っております。  続きまして、表19あるいは表20は被保険者の標準報酬月額、賃金を見てみたものでご ざいます。標準報酬月額が最も高いのは地共済、次いで国共済などの順になっておりま す。また、男性を100とした女性の水準を見ておりますが、国共済、地共済ではほかの 制度に比べれば男女間格差が少なくなっております。  表20は、この標準報酬月額の推移を見たものでございます。御覧のとおり、総じて増 加はしてはいるものの、増加率は概ね2%未満、特に13年度は厚生年金は横ばい、ほか の制度も1%未満の増加率と、低い伸びになっております。  27ページの表21は、標準報酬月額の総額の推移を見たものでございます。こちらのほ うは、今まで見たように被保険者の減少や一人当たり標準報酬月額の低い伸びを受けま して、減少ないしは低い伸びにとどまっております。  先に進みまして、28ページからは、今度は受給権者の状況を見たものでございます。 まず、表22あるいは図5でございますが、これは受給権者数の推移でございます。御覧 のとおり、各制度とも増加をしてきております。  先に進めさせていただきまして、31ページの図6でございます。これは受給権者を年 金種別に見たものでございます。年金種別と申しますのは、老齢・退年相当の老齢・退 職年金、あるいは通老・通退相当の老齢・退職年金、障害年金、遺族年金と4種類に分 けてみたものでございます。概ね老齢・退年相当が最も多くて、次いで通老・通退相 当、遺族年金、障害年金という順でございますが、制度ごとに見てみますと、国民年金 は遺族年金の割合が少ないとか、あるいは国共済や地共済では通老・通退相当が少な い、あるいは私学共済では逆に通老・通退相当が多いといった制度ごとの特徴がござい ます。  先に進めさせていただきまして、34ページでございます。表25、ここには年金種別別 に見た受給権者数の時系列的な推移を見ております。いずれの年金種別でも増加を続け ているわけでございます。なお、老齢・退年相当の伸びを御覧いただきますと、13年度 では中ほどのところに私学共済の欄がございますが、老齢・退年相当6.6%の増と、ほ かの制度に比べて最も高い伸びを示しております。他方、地共済は2.8%増、あるいは 国共済は1.5%増となっております。国共済や地共済は他制度に比べて増加ペースが遅 いわけでございます。13年度に限らず遅いわけでございますが、これは国共済や地共済 では恩給公務員期間等を通算しておりまして、相対的に成熟の度合いが高いためでござ いますが、年金財政の観点からは、今後、恩給公務員期間等を有する者が割合的にはだ んだん少なくなってきますので、財源が国や地方公共団体が事業主として負担する追加 費用から保険料のほうにシフトし、保険料負担が増加していくということに留意が必要 であろうかと考えております。  次の表26あるいは表27は、年金総額の表でございます。年金総額は、受給権ベースで 見た年金額の総額でございまして、実際に支給されている額ではないわけでございます が、御覧のとおりのような状況でございます。  説明を先に進めさせていただきまして、38ページから何ページかにわたりまして、老 齢・退年相当の受給権者に的を絞りまして、受給権者の男女構成あるいは平均年齢、平 均年金月額などの状況を見ております。表28は、老齢・退年相当の受給権者の人数、男 女構成、平均年齢でございます。女性の割合は私学共済が最も高くて40%、低いものは 国共済の15.7%などとなっております。また、平均年齢のほうを見ますと、被用者年金 では各制度とも70歳前後でございますか、国民年金では72.9歳となっております。  39ページの表29でございますが、こちらは老齢・退年相当の受給権者の平均年金月額 でございます。老齢基礎年金の分も含めて見ております。これを御覧いただきますと、 地共済が最も高くて23.2万円ほどになっておりまして、次いで国共済、私学共済、農林 年金、厚生年金の17.3万円の順番となっております。厚生年金につきましては、厚生年 金基金の代行分も含めて見た平均でございます。この平均年金月額の比較に際しまして は、共済年金につきましては厚生年金と比べまして、報酬比例部分の給付乗率がいわゆ る職域相当の分が高くなっていることに留意が必要でございます。  また、表29には、男女別に見た平均年金月額も載せております。女性の平均年金月額 は厚生年金や農林年金では男性のほぼ5、6割程度の水準でございますが、国共済や地 共済では、総体的に男女間の違いが小さくなっております。  次に、41ページの表30でございます。こちらは平均年金月額の時系列的な推移を見た ものでございます。13年度は国民年金以外の被用者年金では、いずれも減少となってお りまして、また農林年金以外は2年連続の減少となっております。一方、国民年金の平 均年金月額、これは新法の老齢基礎年金と旧法国民年金の老齢年金の平均でございます が、こちらのほうは増加を続けております。  次の42ページに、表31としまして、平均年金月額の動向に影響を与える加入期間の長 さがどうなっているか、これを見たものがございます。御覧のとおり、各制度とも年々 伸びてきております。特に国民年金につきましては、1年当たりで8カ月から10カ月程 度、年々伸びてきているという状況でございます。  42ページの中ほどに文章として書いておりますけれども、被用者年金の平均年金月額 は平均加入期間が伸びていく中で、最近では減少傾向を示しておりますが、その要因と しては、13年度の減少につきましては、13年度中に60歳に到達する男性の特別支給の老 齢・退職年金が定額部分のない報酬比例のみとなっていること、給付乗率の小さい年金 が年々加わってきていること、さらに年金の物価スライドが据え置きになっている年が 8、9、12、13年度とあったことなどが考えられます。  以上、保険料収入は減少とかあるいは給付費は増加といった傾向を見てきたわけでご ざいますが、年金数理部会では従来から制度の成熟度をあらわす年金扶養比率あるいは 総合費用率、独自給付費用率、収支比率、積立比率、こういった財政指標を使って財政 状況把握の一助としてきたわけでございます。  そこで、財政指標の状況を見てみたものが第4節でございます。  最初、43、44ページに、財政指標の定義や意味するところを載せております。説明の ほうは表32に進めさせていただきまして、表32は年金扶養比率を見たものでございま す。これは、老齢・退年相当一人当たりの被保険者数でございますが、私学共済が最も 高くて5.65、一方、国共済では1.85となっております。御覧のとおり、国共済や地共済 で年金扶養比率が低くなっておりますのは、制度発足前の恩給公務員期間等が加入期間 とみなされていることが一因と考えられます。  図7あるいは表33は年金扶養比率の時系列的な推移を見たものでございます。各制度 とも徐々に低下してきておりますが、低下のペースは、国共済や地共済は非常にゆっく りでございますが、ほかの制度では、中でも私学共済の低下ペースは早いものとなって おります。  次の表34あるいは図8は、総合費用率でございます。この総合費用率と申しますの は、制度で賄わなくてはならない、つまり保険料や運用収入で賄わなくてはならない費 用の総賃金に対する割合でございます。農林年金が最も高くて、25.3%、低いところで は私学共済で14.3%となっております。図8はグラフで見たものでございまして、各制 度とも概ね上昇、特に7年度以降で上昇幅が大きかった制度は、農林年金あるいは厚生 年金となっております。  続きまして、49ページから50ページにかけまして、表35、36は総合費用率の内訳であ る独自給付費用率と基礎年金費用率を見たものでございます。また、51ページの表37、 これは総合費用率や独自給付費用率の分子や分母にくる数字の推移を見てみたものでご ざいます。分子にくる、表37で申しますとAと書いてある「実質的な支出−国庫・公経 済負担」が上昇しているものの、表37の下のD欄にある標準報酬月額の総額のほうが減 少している結果、この総合費用率などが上昇してきていると、そういう状況になってお ります。  続きまして、52ページの収支比率でございます。こちらのほうは、農林年金が最も高 くて、110.8%、次いで厚生年金の102.4%などとなっております。厚生年金や農林年金 では、13年度の上昇幅が特に大きくて、10ポイント以上の上昇となっております。これ は分母にくる保険料収入、運用収入の合計の減少によるところが大きいわけでございま して、保険料収入と運用収入とでは、運用収入の減少によるところが大きいわけでござ います。  次に、表40に「積立比率の推移」を載せております。また54ページは、厚生年金や国 共済、地共済、私学共済、農林年金の今申し上げた財政指標をレーダーチャートで見た ものでございます。レーダーチャートで見てみますと、各制度は大きく2つに分かれま して、一つは国共済、地共済のグループ、これは年金扶養比率が低くて、積立比率が相 対的にちょっと高めの制度、そして残りの3つの制度というふうにこのレーザーチャー トで分けてみることができます。  それでは、第3章に移りまして、第3章は前回の財政再計算結果との比較をしてみた ものでございます。  55ページに財政再計算における将来見通しと比較することの趣旨、ねらいを書いてお ります。  次の56ページから57ページにかけましては、実績と財政再計算における将来見通しと を比較する際の留意点、例えば留意点の(2)などでございますが、厚生年金の将来見通 しというのは厚生年金基金の代行分も含めて作成されていることなど、そういう留意点 を幾つかまとめて掲げております。  次の58ページの表41あるいは61ページの表42に、保険料収入と保険料収入のもととな る標準報酬月額総額、被保険者数、一人当たり標準報酬月額について、将来見通しと比 較してみたものがございます。御覧のとおり、保険料収入やあるいは標準報酬月額の総 額など、制度によって違いは多少ありますが、概ね将来見通しを下回る実績と、そうい う結果になっております。  表43は、国庫・公経済負担について、実績と将来見通しを比較してみたものでござい ます。また、表44は、運用収入、運用利回りについて見たものでございます。運用収 入、運用利回り、各制度とも見通しを下回っている状態でございます。  このうち、運用利回りにつきましては、財政再計算結果と比較する際には、年金額が 名目賃金上昇率に連動して改定されていることから、運用利回りが名目賃金上昇率を上 回る分でもって比較することが適当であるという考え方から、64ページの表45におきま して、運用利回りが名目賃金上昇率を上回る分、つまり名目賃金上昇率と実質的な運用 利回りに分解しまして、財政再計算における将来見通しと比較してみたものを載せてお ります。  御覧になりますと、13年度の実質的な運用利回りにつきましては、地共済以外では財 政計画上のものを上回っている、そういう結果となっております。名目運用利回りは、 将来見通しを下回ったわけでございますが、名目賃金上昇率のほうがより大きく下回っ たため、実質的な利回りのほうは上回ったと、そういう結果になっております。  次の表46は、実質的な支出額について、将来見通しと実績とを比較してみたもので、 実績が将来見通しを下回っているという結果でございます。また、表47は受給者数につ いてやはり比較したものでございます。  続きまして、67ページから69ページにわたりまして、基礎年金給付費やみなし基礎年 金給付費あるいは拠出金算定対象者数など、基礎年金拠出金関係の数字につきまして、 実績と財政再計算上の将来見通しとの比較をしてみたものを幾つかの表に分けてまとめ ております。  説明を先に進めさせていただきまして、70ページには積立金について実績と将来見通 しを比較して見ております。  次の71ページには、乖離の要因として、各制度が年金数理部会に報告してきたものを 掲げております。賃金上昇率や物価上昇率、被保険者数が見込みとずれたこと、運用利 回りの実績が低かったことなどを乖離の原因として掲げております。これは各制度がこ ういうふうに報告してきたというものでございます。  次の72ページからは、財政指標につきまして、将来見通しと実績とを比較してみたも のでございます。表の54あるいは図12で年金扶養比率の実績と将来見通しを比較してお りますが、御覧になりますと、特に厚生年金で実績が将来見通しを下回っている、その 下回り方がほかの制度に比べると大きくなっております。これは表55で年金扶養比率の 分母に来る数字と分子に来る数字をそれぞれどちらが乖離しているかを見ておりますけ れども、厚生年金で年金扶養比率が将来見通しを下回ったのは、この分子に来る被保険 者数が将来見通しを専ら下回ったためであることがおわかりになるかと思います。厚生 年金の場合は、被保険者数というものが景気の影響を受けやすいわけでございますが、 受給者のほうは景気に左右されにくいことから、年金扶養比率が経済環境の変化の影響 を受けやすい指標になっているということに留意が必要かと思います。  先に進みまして、表56あるいは図13でございます。これは総合費用率について実績と 将来見通しを比べてみたものでございます。御覧のとおり、国共済以外の各制度では 12、13年度とも総合費用率は実績が見通しを上回っております。厚生年金につきまして は、これは74ページの下から3分の1くらいのところにコメントしておりますけれど も、年金扶養比率が将来見通しを下回り、総合費用率が将来見通しを上回る結果となっ たわけでございまして、今後、この被保険者数と標準報酬月額の総額の増減率が将来見 通しと同じになったとしても、水準までが将来見通しの水準に復帰するかどうかは疑問 でございますので、仮にこの総合費用率の将来見通しとの差が今後も0.5ポイント程度 で推移することになると、保険料率に与える影響もその程度になるものと考えられま す。そこで、今後の動向を注目する必要があろうかと考えております。  また、私学共済も厚生年金同様、この総合費用率の実績と将来見通しの差が大きいわ けでございますが、特に13年度までの上昇の傾き、この図13で御覧いただきますと、実 績のほうが将来見通しよりも傾きが明らかに大きくなっております。この傾向が今後も 続くのであれば、この将来見通の乖離が広がっていくことになりますので、財政的には 大きな影響を与えることになりかねませんので、やはり今後の動向を注目する必要があ るということでございます。  続きまして、77ページのほうは表58として収支比率、あるいは79ページ、積立比率に ついて比較してみたものがございます。  81ページの第4節は積立金の実績と将来見通しとの乖離の分析でございます。ここに おきましては、被用者年金につきまして、13年度末の積立金の実績が将来見通しと乖離 した要因を分析しまして、13年度末における積立金が年金財政の観点から見てどのよう な水準にあるのかを調べてみた結果を載せております。  最初に表62、これは13年度末の積立金の状況を再度まとめてみたものでございまし て、国共済が将来見通しを0.7%ほど上回っている状態でございますが、ほかはいずれ も将来見通しを3%前後、厚生年金でいいますと5.9兆円ほど将来見通しを下回る水準 に積立金はございます。なお厚生年金は厚年基金の最低責任準備金を含むベースで考え ております。  このような乖離を要因分解してみたわけでございますが、恐縮でございますが、88ペ ージに図17として要因分解したものを図で表示したものがございます。図が小さくなっ て恐縮でございますが、各制度とも左側のところに将来見通しと実績を2本、将来見通 しの水準を100にして並べております。左上の厚生年金の場合で申し上げますと、実績 は将来見通しを3.3%ほど下回った、約97の水準にあるわけでございます。したがって、 この乖離と申しますのは、100から97のラインまで下向きの矢印でもって示してござい ます。厚生年金で見ますと、(1)以外は全部下向きでございますが、(1)から(5)に分解 しております。  この(1)と申しますのは、11年度末で既に生じていた乖離が13年度末に寄与している 分でございまして、これは各制度ともわずかでございます。(2)と(3)が12年度発生分、 (4)と(5)が13年度発生分でございまして、(2)が12年度の名目運用利回りの寄与分、(3) が12年度の運用収入以外の収支残の寄与分、(4)が13年度の名目運用利回りの寄与分、 (5)が13年度の運用収入以外の収支残の寄与分となっております。  図からわかりますように、国共済は後で申し上げるようにちょっと異質でございます が、13年度末の乖離の大部分は12、13年度において、名目運用利回りが将来見通しと異 なったこと、つまり(2)と(4)の下向きの矢印により発生していることがわかるかと思い ます。  この具体的な数字につきましては、表63、82ページに載せております。例えば、厚生 年金について申し上げますと、13年度末におきまして、厚生年金は額にして5.9兆円ほ ど積立金が見通しを下回ったわけでございますが、そのうちの2.8兆円は12年度におい て名目運用利回りが将来見通しを下回ったことにより発生した分、また2.2兆円は13年 度において名目運用利回りが将来見通しを下回ったことにより発生した分となっており ます。  これに対しまして、運用収入以外の収支残の寄与分と申しますのは、厚生年金の場合 で申し上げますと12年度が0.3兆円のマイナス、13年度が△0.7兆円となっておりまし て、名目運用利回りの寄与分に比べればずっと小さいものとなっております。  ただ、この本文の83ページでコメントしておりますけれども、運用収入以外の収支残 の寄与が国共済以外ではマイナスで寄与していることには、ある程度留意が必要でござ いまして、この部分がマイナスである要因としましては、例えばこの被保険者数が将来 見通しよりも少なかったといった人口要素が乖離している要因が考えられまして、その 場合、こういったマイナスの寄与というのは今後も続くことになる可能性が高いわけで ございます。そうしますと、財政にマイナスの影響を与え続けることになるという点に は留意が必要かと思います。  また、国共済につきましては、図17でもわかるように、ほかの制度と比べて状況が異 質でございましたけれども、これは12年度に地方事務官制度の廃止に伴いまして、地方 事務官が地共済から国共済に移管されたことに伴いまして、地共済から国共済に1,436 億円ほど、積立金が移管されております。そのあたりのことを考慮しなければいけない わけでございまして、その点をちょっと触れさせていただきます。  この要因分解につきましては、また図17に戻りますけれども、名目運用利回りの寄与 分を実質的な運用利回りの寄与分と名目賃金上昇率の寄与分にさらに分けてみた計算も しております。  図17で申し上げますと、(2)と(4)の斜線で書いた矢印のすぐ右側のところに、ちょっ と上向きに薄い網かけの矢印と下向きの黒塗りの矢印がございます。この網かけの上向 きになっている矢印のほうが実質的な利回りの寄与分で、濃い黒塗りで下向きになって いる矢印が名目賃金上昇率の寄与分でございます。具体的な数字は表64に載せておりま すが、図17からもわかるように、この名目賃金上昇率の寄与分、つまり黒塗りの下向き の矢印が各制度とも大幅にマイナスであったこと、財政比較の上で意味のあります実質 的な利回りの寄与分は、12、13年度プラスであったこと、こういったことがわかろうか と思います。  そうしますと、13年度末の積立金が将来見通しよりも下方に乖離いたしましたが、専 ら名目賃金上昇率が将来見通しと違って低かったことによって生じていることがわかり ます。公的年金の保険料や給付費といったものは長期的には概ね名目賃金上昇率に応じ て増減することから、積立金がこの要因によって予測から乖離したとしても、財政的に は、長期的にはあまり影響はないものと考えまして、この名目賃金上昇率の寄与分を除 いて考えてみたもの、これは図17で申し上げれば各制度の一番右側のところに名目賃金 上昇率が異なったことによる乖離の寄与のみを考慮した場合の推計値とございますが、 これがちょうど黒塗りの矢印の分を除いて考えてみた場合の積立金の水準でございまし て、この積立金の水準に対して、実際の積立金がどうなっているかを見ることが実質的 に財政状況を見ることになると考えてみたものが表65でございます。  表65の一番下の寄与分ABCの合計は、名目賃金上昇率の分を除いてみたものという ことでございますが、あるいは図17で申し上げれば、実際の積立金と各制度の一番右側 にある、この黒塗りの矢印の部分を除いてみた水準との差に相当しますが、各制度とも 若干のプラスとなっております。ただ、このプラス幅と申しますのは、本文のほうでも 書いておりますけれども、保険料率に換算してみますと100分の1%程度のオーダーで ございまして、プラスの影響といっても12、13年度の2年間だけで発生した乖離分であ って、影響としては非常に軽微なものにとどまっております。  89ページ以降に各寄与分の具体的な計算式あるいはもととなったデータも含めて補遺 として載せておりますが、後ほど御参照していただければと思います。  以上が本文の内容でございます。 ○堀部会長  どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見をお願いしたいと思いま す。 ○都村委員  財政収支、財政指標や積立金に関して、実績と平成11年財政再計算の結果との乖離の 分析結果が明らかにされていますが、この結果は次期財政再計算に生かされるべきだと 考えます。今回の分析結果はどのように次期財政再計算に活用されているのか、あるい はされつつあるのか、その点を教えていただきたいと思います。 ○田村首席年金数理官  今、報告書の案について議論していただいている段階でございますので、次期再計 算、もうかなり進んでいるのかもしれませんけれども、今計算の途中だと思いますの で、そのときの基礎率の算定見込みの中に過去にこういうのが違っていたよというの で、何らかの形で織り込まれるのではないかというふうに思っております。経済の見通 しはなかなか難しいのですけれども、被保険者数の見通しなどは実績とできるだけ合う ような推計をされるのではないかと思っています。 ○堀部会長  今年各制度所管省から御報告をいただいた際、かなり乖離があるということで、その ときに私は「こういう結果を各制度所管省では知っておりますので、それぞれの財政再 計算の時に考慮されると思います」ということを申し上げました。ここにおられるのは 厚生労働省の方々ですけれども、厚生労働省としては今の田村首席年金数理官のお答え でよろしいでしょうか。 ○坂本数理課長  今回、財政状況報告書で指摘されましたものの中には新しい御指摘もありますので、 再計算の中に今回は入れられなかったという部分もございますけれども、準備の途中で いろいろ検討するときに出てまいりましたテーマもございます。したがいまして、今回 の指摘も踏まえまして、今回の財政再計算の報告をまとめますときには、こういう視点 を取り入れて報告をまとめていきたいと思っております。 ○堀部会長  よろしいでしょうか。あとはいかがでしょうか。 ○田村委員  一つだけ教えていただきたいのですけれども、積立金の表示が厚生年金と国民年金が 時価になっていて、共済が相変わらず簿価なのですね。ヒアリングのとき、これから時 価をという話があったように思うのですけれども、その後、この件について進捗状況と いいましょうか、こうしたいとか、するとかいう話はないのでしょうか。 ○田村首席年金数理官  このヒアリングでは、平成13年までは簿価で、これはしようがないなということで、 そうなったと聞いております。14年度以降、できるだけ出すようにということで、各制 度が頑張っていただいているというふうに聞いております。その辺はまた今後の話にな りますけれども、14年の決算の状況を各省からお聞きするときにお願いしようと思って おります。 ○堀部会長  この問題は、ヒアリングの際、渡辺委員などからできるだけ時価ベースでという意見 があり、各制度所管省にそのようにされるようお願いしたというふうに記憶しておりま すので、多分、そういった要請に応えられるのではないかと思っております。  あとはいかがでしょうか。はい、近藤委員。 ○近藤委員  80ページの積立比率のときに、厚生年金基金の数値を入れる・入れないでいつも年金 の財産が136兆円なのか175兆円なのか、2つの数字があってよくわからないという話が あります。  今度、再計算をやるときに、もし可能でしたら分離して2つの数字を出していただけ れば後で比較しやすいのかなと思うのですが。次のときには、できたら分離してできる ような形で考えていただければなと。これは要望です。 ○吉武年金局長  基金はその数が動きますので、基金だけを分離して計算してもほとんど意味がありま せん。今、代行返上で非常に動いていますので、基金の代行返上分を予測的に入れると いうのは非常に難しいと思います。代行返上は開始されてからも非常に動いていますの で、これからも代行返上がどれだけ出てくるのかというのはなかなか予想ができませ ん。  ただ、代行返上しましても、その代行返上分は本体のほうに引き継ぎますので、そう いう意味で財政再計算上は基金の代行部分も厚生年金の公的な年金給付の責任分野の一 つだということで、一体的に見るという、そういう形でやらせていただいています。 ○近藤委員  代行部分は、厚生年金本体の財政方式とはちょっと異質の形にはなっているのです が。 ○吉武年金局長  ただ、1,800くらいありました基金が解散も相当出ていますし、代行返上がこのまま 進むと、残るのは1,000以下くらいになるだろうという状況です。このように非常に動 いている状況でこの代行部分が幾らだということを、5年間、10年間、推計すること自 体が非常に不安定ではないかという感じがします。国会などでもそういう御議論が確か にあるのですけれども、分離した形でお示しするというのは非常に難しいのではないか という感じを持っています。 ○近藤委員  そういっても、結局、基金を含めた全体を推計しているのですね。 ○吉武年金局長  結局、基金の代行部分というのは、端的に申し上げて公的年金部分の一部を代行して いるのですね。テクニカルに代行してもらっていただいていることなので、そういう意 味で、ここは公的年金分野だということで考えています。結局、解散なり、代行返上の ときには基本的には責任準備金を返していただいて、給付義務を引き継ぐという、そう いう給付の引き継ぐということが本質的なところにあります。  ですから、分離して計算しても、多分、非常に当たり外れが大きい分野で、そのこと 自体があまり意味があるのかなという感じがあります。 ○堀部会長  よろしいでしょうか。では、栗林委員。 ○栗林委員  ここの部会の検討事項になるのかどうか、私もよく判断できないのですが、いわゆる 実績と見通しを比較していくときに、どういうふうに乖離しましたというのはわかるの ですけれども、なぜ見通しがそういうふうに開いたのかという問題点ですね。  それをここでは人口要因と経済要因に分けてあるのですけれども、人口要因は人口要 因でいろいろ難しい問題があるのですが、経済要因の場合、やはりここで出てきている のは、組合員数の予測がいかに難しいかということだと思うのです。  そのときに、いわゆる将来の経済を予測したときに就業構造がどう変わっているの か、例えば雇用者数がどういうふうに変わっていくのかと同時に、雇用者の中でパート 化みたいなものが進みますと、組合員数の弾性値が落ちてくるという問題があるわけで すね。  そういう問題というのは、前回どういうふうにやってきて、この次の見通しではその 点をどういうふうに見ていくのかというのはどこで明らかにされるのでしょうか。 ○堀部会長  社会保障審議会で決められた年金数理部会の審議事項は、財政再計算時における検証 と毎年度の報告ということで、今審議しているのは毎年度の報告のとりまとめです。  前回改正の財政検証は既に旧年金数理部会が行っています。今回の財政再計算の検証 はこれから我々の部会で行わなければならないのですが、そのときにやるのかどうかで すね。事務局としては、その辺はどういう考えでしょうか。 ○田村首席年金数理官  平成16年の財政再計算の結果というか、検証をどういう形で進めるかというのは別 途、御相談したいと思います。その中で、今の御質問の中の事項につきましても、含め て検討させていただければと思います。 ○堀部会長  今回の財政再計算の検証については、財政方式が変わるとかいろいろあり、事前に皆 様に考えていただくことがたくさんあると思います。それはまた追ってご相談したいと 思います。よろしいでしょうか。 ○田村委員  一つだけ確認なのでございますけれども、積立金のところで88ページに大変見やすい 図をつくっていただいたのですけれども、ここで言いたかったことは、標準報酬の上昇 率が低かったので、積立金の実績が予想よりも少なくなってしまったと、それを明らか にしたのだと思うのです。  ところが、積立金は名目額で表示されますが、全体的に給付のレベルが縮小していま すから、相対的に積立金の価値は高くなっているわけです。その分だけは財政的にはプ ラスではないかと思うのです。だから、一律にマイナスと言ってしまってはどうかなと いう感じがするのですけれども、その辺どうなのでしょうか。 ○田村首席年金数理官  ちょっと御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、まさしくここで言 いたいのは、今、田村委員がおっしゃった中身でございます。みかけ上、積立金は再計 算に比べましてマイナスになっている、ただ、将来的に長期的に見れば、給付も保険料 も名目の賃金で動きますから、名目賃金が2年間下がったという影響を除去すれば、今 の積立金はどれくらいあればいいかというのを再計算結果から推計しまして、それと実 績とを比較して、実績より高いですというような御説明をしたつもりなのです。そのま とめが86ページの表65に、先ほど石原から御説明しましたけれども、一番下の寄与分の 合計、厚生年金でいえば実質的に見れば1.9兆円のプラスですよということにしていま す。  ただ、プラスとは言っても、財政上の影響としては料率で見たら非常に小さいオーダ ーですので、そんなに喜ぶようなオーダーではないですけれども。 ○田村委員  気になったのは、要旨のほうを見ていましたら、マイナスのことしか書いていないの です。要旨の4ページの(1)のところです。「賃金上昇率が将来の見通しと異なったこ との寄与は、マイナスであった」としか書いていないので、これだけでは、少し不正確 ではないかと思って、実はプラスのところもあるのですよということを言っておいたほ うがいいのではないかということです。 ○田村首席年金数理官  要旨の4ページの一番下に(「実質」で見た財政状況)とカッコで慎みやかに書いて あるのが、ここの本音です。  ここで、個人的な意見を申し上げては良くないのですけれども、あまりプラスですよ というのも数理を担当している面からすると、ちょっと躊躇いたしまして、これくらい の表現になっているということです。  もっと大々的に「プラスですよ」と書けということであれば、書きますが。 ○田村委員  プラスの要素もあるのだということを言っておいたほうがいいのではないかなという 感じだけです。 ○田村首席年金数理官  要旨の一番最後だけではちょっと弱いという感じでしょうか。 ○堀部会長  山ア委員、この問題に関連してでしょうか。 ○山ア委員  いや、全体に関連してです。今聞いていますと、部会でほとんど議論していないもの ばかりです。本来、報告書案をつくる前に部会で議論してからつくるべきだと私は思い ます。それが全くなく、事務局任せでつくったわけですが、むしろ事務局はよくやって いただいたなと思うくらいです。  できればもうちょっとこの部会で議論していただく方法を考えていただきたい、これ は要望でございます。 ○堀部会長  実は、私も事務局から相談を受けて、2回部会を開いて、1回目は皆様の御意見を聞 いて、2回目にまとめるというやり方にしたらどうかということも検討しました。しか し、事前に委員の御意見を伺ったところ、若干の修正意見はありましたけれども、余り 大きな修正の御意見はなかったということで、1回だけにしたという経緯がございま す。  今、山ア委員から御意見がありましたが、内容にわたることはぜひとも今回の年金数 理部会でおまとめいただきたいと思っています。あと字句の修正については、私も若干 意見がありますので、それは直したいと思います。何か山ア委員のほうで内容について 御意見がございますか。 ○山ア委員  いや、そういう意味ではなくて、報告書案がつくられたら、字句程度の修正はよいと しても、中身の議論が出てきていたものですから、できれば事前にそういうことは部会 で議論してからやってほしいと要望しただけです。 ○堀部会長  それでは、御要望だということにさせていただきます。  今の田村委員の御意見についてはどうでしょうか。 ○田村首席年金数理官  今の田村委員の内容につきましては、内容的にはおっしゃっていることと相違はない と思いますので、要旨の書きぶりをちょっと修正させていただければと思います。 ○堀部会長  今、修正案はございますか。 ○田村首席年金数理官  今から考えたいと思います。 ○堀部会長  すぐできますか。それとも少し時間が必要でしょうか。制度改正の説明を聞いた後に しますか。 ○田村首席年金数理官  少しお時間をいただきたいので、制度改正の説明の後にやっていただければ思いま す。 ○堀部会長  それでは、その点を年金数理部会として積み残したということにして、字句の修正と いったことについては、私に御一任していただいて、平成13年度の公的年金財政状況報 告とさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。              〔「異議なし」という声あり〕 ○堀部会長  ありがとうございました。  それでは、次の議題に移りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いしたいと 思います。 議題 2.平成16年年金制度改革について ○木倉年金課長  年金課長でございます。制度改正の今の状況について御報告を申し上げたいと思いま す。座ったままで失礼します。  お手元に、資料3の枝番がついているもの、これが11月に公表させていただきました 厚生労働省案でございます。それから、最後の2点、資料4−1、4−2とあります が、現在まで政府与党間での議論で合意された事項、あるいは今後議論していただかな ければいけない事項というふうに整理したものでございます。  まず、最初の資料3のほうでございますけれども、資料3−1、これに厚生労働省案 の全体像を整理してお示ししております。これは9月にいただきました社会保障審議会 年金部会の意見を踏まえまして、私どものほうで検討し、省の案という形で11月17日に 公表させていただいたものでございます。  ざっと全体を眺めていただきたいと思いますが、大きく分けまして、改正の基本的な 考え方が大きな紙の左半分のところのオレンジ色をつけてありますが、「社会経済と調 和した持続可能な制度の構築を図っていきたい。それによって制度に対する信頼の確保 を図っていきたい」ということでございまして、これの基本が「現役世代の負担へ配慮 して、その負担に応じた年金の給付の仕組み、緩やかに調整された仕組み、マクロ経済 スライドを導入していきたい」ということを書き出しているものでございます。  それから、右側のほうは2として、「多様な生き方、働き方に対応し、より多くの者 が能力を発揮できる社会につながる制度」にしていきたいということでございまして、 これが高齢者の働き方との調和ということで、在職老齢年金あるいは短時間労働者、パ ートタイマーの方々への適用の拡大の問題、あるいは次世代の育成の問題、女性の年金 の問題、障害者の問題等を書き出しておると、このような全体構成で省の案を出させて いただいております。  次に、省の案の中身について御覧いただきたいと思います。  資料3−2、横長のものでございますが、これに今の大きい紙のものを少し細かめに 書き出しております。1ページ目は、今申し上げましたような2点を改正の基本的な考 え方として述べさせていただいております。2ページを御覧いただきたいと思います。 改正の具体的内容といたしまして、1番の「社会経済と調和した持続可能な制度の構築 」を書き出しておりますけれども、右側が省の案でございます。ここでは、保険料水 準、将来の最終保険料水準までを法定する、それで固定するという保険料水準固定方式 を採用するということ。そのもとで、給付について若干調整される自動調整の仕組みを 採用するということを言わせていただいております。  その次に、財政均衡期間のあり方でございますけれども、年金部会の段階では両論あ りというようなことを御紹介させていただいておりましたけれども、これについて従来 の永久均衡方式から財政均衡期間を100年度程度とりながら、それをずらしながら見て いくという有限均衡方式を導入したいということを述べております。この数字は後で見 ていただきます。  それから、保険料の負担の水準でございますけれども、厚生年金は、現在の13.58% で凍結されておりますものを段階的に引き上げていって、2022年以降、20%で固定した いということ、あるいはそのときに1階、2階とも同程度スライド調整を進めていくこ とによりまして、国民年金のほうは今の1万3,300円が1万7,000円台。このときに、1 万7,300円という表示をしておりましたが、現在の価格表示で1万8,000円台にとどめた いと いうことを述べさせていただいております。  次に給付のほうでございますけれども、そうのような収入固定のもとで、このような 保険料、これが年金制度を支えていただいているということで、社会全体の保険料の負 担能力の伸びに合うように、年金の給付の改定のあり方を調整していきたい、スライド の伸び方を調整していきたいということを述べております。  ただし、そこで※に書きましたように、賃金スライド率あるいは物価スライド率で調 整する場合でも、その率をマイナスにはしないと。すなわち、前の年に比べて年金額が 下がるということはしない。ぎりぎりマイナスにしない範囲内での調整をするというこ とを言っているわけでございます。  そこに囲みがありますように、新規裁定の方につきましては、これまでの一人当たり 賃金の伸び率で賃金再評価をしていた、賃金スライドをしていたというものの数字をス ライド調整分だけ小さくさせていただきたい。あるいは65歳以降の既裁定につきまして は、物価の上昇率で毎年伸びていくときに、その率からスライド調整分だけ小さくさせ ていただきたいということでございます。  そのスライド調節率についての考え方でございますけれども、これは審議会の段階で は、被保険者数の減少率を使うということは申し上げておりました。あるいは寿命の伸 び分も加味して、少し早めに調整させていただきたいと申し上げておりましたけれど も、まず被保険者数の伸びにつきましては、それまでの試算で見ていただいておりまし たのは、厚生年金や共済年金、被用者グループの被保険者数の減少率、小さくなってい る率だけを使っておりましたが、これは国民年金グループのほうも同じように、そのス ライド調整をしていくという考え方からしますと、国民年金も入れた全体の被保険者数 の減少の率でその実績をとっていくべきではないかと考えまして、その率をとらせてい ただくという案を示させていただいております。そうしますと、毎年、こちらのほうが マイナス0.6%程度減少していくのではないかということで、毎年、実績によりますの で、大きい年、小さい年ございますけれども、平均するとその程度ではないかと。それ と今後の平均余命の伸びの毎年の一定率は今の人口推計を見ますとマイナス0.3程度、 あるいは平均下方ということで示しておりましたものとの差も0.3くらいあったという ようなことを総合勘案しまして、平均余命の伸びを勘案した一定率、マイナス0.3も加 えさせていただき、トータルで毎年のスライド調整率は、毎年のその被保険者の実績の 変動はありますが、平均的に見るとマイナス0.9%程度調整させていただくということ になるのではないかということを示させていただきました。  それから、前後しますが、左側に黄色で囲んでおりますように、今回見直しの前提に なります基礎年金の国庫負担割合は2分の1に引き上げていただくことを示しておりま す。このときの試算では、16年度から直ちに2分の1に引き上げるという試算でやって おりました。  そのような前提を置きまして、あとで試算表を見ていただきますけれども、試算して みますと、このような保険料固定のもとで給付水準、一番下にありますように、人口中 位等の基準ケース、夫のみが働いている家庭の所得代替率で見て、今の59%台のものが 54.7%、2013年まで10年程度スライド調整をさせていただければ、均衡する期間が来る ということで、54.7%程度まで調整すれば、その後、この一定率で維持していけるので はないかというようなことを示させていただいたところでございます。  少し試算の数字を見ていただきたいと思います。試算結果を資料3−4につけてござ います。  まず、前提のページを御覧いただきますと、3−4の資料の4ページにつけておりま すように、保険料水準は、厚生年金のほうは段階的に毎年0.354%の刻みでございます が、5年前に合意されておりました総報酬ベース1.77%という再計算で表示しておりま したものを5分の1に刻みまして、0.354%、この階段で引き上げていって、最終的に これは参考の19、18も一緒に示しておりましたが、最終的な2022年度以降、20%を超え てのケースでの試算を示しておりました。  それから、国民年金のほうは、1階、2階を同程度調整していく、その中で国民年金 グループのほうで均衡するときということで、これも5年前の再計算のときに示してお りました毎年600円の引き上げという階段のもとで、2011年度以降は1万7,300円、1万 7,000円台でとめられるという前提で見ていただいております。基礎年金国庫負担割合 は16年度からただちに2分の1にするという前提を置いております。  それから、人口等の前提でございますが、5ページ以降にございますように、人口は 中位係数を基準ケースとして見ていただいております。それから、少子化の進行ケー ス、これは低位推計のケース、それから少子化改善ケース、これは9月の大臣試案のと きに見ていただいておりましたように、合計特殊出生率が1.5程度まで回復するケース。 夫婦2人が一緒の子ども数まで持てるという状態まで回復すると、1.5程度まで回復を 前提にした2050年、1.52の出生率の数字を少子化改善ケースとして表示させていただい ております。  それから、経済前提、物価上昇率等は内閣全体の数字等々から下に表示しております ようなもの、次のページにかけての賃金上昇率、これも年金資金運用分科会で8月末に 御報告いただいたものが3パターンございましたが、その数字を使ったものを前提とし て置いて見ていただいているということでございます。  資料1ページ目に戻っていただきますと、一番左側が20%の場合でございますけれど も、基準的なケースの場合で10年程度調整をし、2013年で54.7%程度でとどめられると いうようなことで、少子化改善ケース、少子化進行ケース、共に示しております。この 調整の時期につきましては、2ページに棒グラフでつけておりますけれども、現在の 59.4が伸び方が少し抑えられていることによって、2013年程度で調整を終わり、その後 は従来の一人当たり賃金の伸びあるいは物価の伸びで改定ができるということで見てお ったということでございます。  それから、有限均衡でございますが、この資料の7ページでございます。この2つの 考え方があるというところまでを審議会の段階で御紹介させていただいておりましたけ れども、上半分にこれまでのやり方、人口の推計等、参考推計も含めまして2100年まで 色を付けて見えておりますが、それから先においても2100年程度の高齢化の状況等が続 いていくという前提のもとに、期間を定めずに将来にわたるすべての期間で均衡するよ うにという考え方、これでやってきたのが従来での方法であります。そうしますと、将 来の高齢化率、2100年のような高い高齢化率がずっと続いていくという見通しのもとで は、運用収入を相当程度期待しなければいけないということで、積立金水準はずっと一 定水準が必要になってくるということであったということでございます。  それに対して、下の四角で囲みましたように、有限に、ここでは2100年、現在生まれ ていらっしゃる世代が概ね受給を終えるであろうと考えられる2100年あたりをとって、 その時点までの均衡をまず考えていく。その時点で、積立金については1年分になるよ うな目標を設定し、この目標時点を人口推計等が出し直される5年ごとに見直していく と。財政の再計算といいますか、今度の規定上は保険料が固定されますので、財政検証 というような形になろうかと思いますけれども、5年程度、人口の新しい数字、経済の 新しい数字等で、またその5年先まで見通したものでこの財政が均衡を図れるかどうか ということのチェックを続けていくということで見通しを立てていくということに変え させていただいてはどうかということを提案させていただいたところでございます。  そのような試算をさせていただきながら、先ほどの資料3−2に戻らせていただきま すが、3−2の2ページの最後に書きましたように、現在の基準ケースの見通しであれ ば54.7%に保たれるだろうということでございました。このときに、給付水準の下限に つきましては、スライドの調整を進めていくとしても、一定の下限は必要ということを 年金部会のほうでも述べていただいておりました。また、大臣の試案では50%を下限と して、経済活性化の努力、少子化改善の努力等をさせていただくことによって、50%の 半ば台を目指していきたいということを述べさせていただいておりましたが、ここでも そのようなことを目標として述べさせていただいておったところでございます。  それから、次の3ページでございますが、こちらのほうは多様な生き方、働き方を選 ぶ方が増えてくる中で、それに応じた年金制度にしていきたいということでございます が、まず在職老齢年金制度、高齢者の就業との関係でございますけれども、その右側に ありますように、60から65歳未満、60代前半の在職老齢年金制度につきましては、働き はじめますと賃金にかかわりなく、一律2割がカットされております。これが就労の抑 制を生んでいるのではないかという強い御指摘がある中で、この部分は廃止させていた だきたいと。働きはじめて2割はカットされないという仕組みにさせていただきたいと いうことを提案させていただいております。  それから、もう一つは、60代後半に在職老齢年金の仕組み、基礎年金は65歳から全額 支給されるにしても、2階の厚生年金部分と賃金とあわせて平均値以上になる方につい て、60代後半で在職老齢年金の仕組みを前回改正で入れさせていただいておりますけれ ども、これにつきまして70歳以降も在職されて、被保険者にとどまられるという方につ いては、在職老齢年金の仕組みを入れさせていただきたいということで、全体の負担の 均衡を図っていきたいということを提案させていただいておるところでございます。  3つ目の丸は、65歳以降での繰下げ制度、これは基礎年金のほうについてはございま すけれども、厚生年金につきましては65歳以降について、前回の改正のときに在職老齢 年金制度を導入すると共に繰下げなしで調整を受けていただきたいということで廃止を しておりました。これにつきまして、調整後の額を計算して、選択された年齢から調整 後の額で繰下げを計算するという仕組みを導入していくということを提案させていただ いているところでございます。  それから、年齢の論議がございました。支給開始年齢も将来に向けて見直していくべ きではないかという御議論がございましたが、現在の雇用の状況あるいは男性は2025、 女性は2030という調整を今現在まさに初めているところでございますので、この段階で 支給開始年齢を引き上げることは、今回の改正では行わないということを明示させてい ただいたところでございます。  それから、短時間労働者の方々の厚生年金の適用の拡大の問題、これは年金部会で御 指摘をいただきましたように、週の所定労働時間が40時間労働であれば、その半分以 上、20時間以上の者を基本に適用を考えていく。ただし、その場合に、短時間労働者を 多く抱えていらっしゃるような産業、企業に対する影響を十分考慮して、経過措置等を 十分配慮するということを書かせていただいているところでございます。  それから、9万8,000円の標準報酬の下限につきましても、実態に合わせて引き下げ て適用を考えていきたい。その場合に、本人の給付で設計をし、被扶養配偶者の給付は つけない形で設計を考えたい。これは年金部会などの御指摘を踏まえたもので提案させ ていただいているところでございます。  それから、次世代育成支援策についてでございますが、これも年金部会での御指摘を 踏まえまして、育児休業期間についての厚生年金保険料の免除、これは今現在1歳まで でございますけれども、これが3歳まで選択的に育児休業をとれる、あるいは育児休業 はとれないけれども、時間を短縮しながら、賃金が低下しても働いておられる方々がい らっしゃる中で、3歳までの育児休業期間をとられた方については保険料免除措置を拡 大する、あるいは3歳までの間で勤務時間短縮等で頑張っていらっしゃる方の場合に、 賃金低下分については、従来の賃金での納付をされたものとみなすというような仕組み を入れるということで、支援を拡大していきたいということを提案させていただいてお ります。  女性と年金の分野につきましては、まず3号被保険者期間につきまして、夫だけが働 いている場合であっても、夫婦共同で厚生年金を納付されたものとみなしまして、両方 で納付の記録をつけておいて、65歳以降、基礎年金がそれぞれに給付されると同時に、 厚生年金のほうについてもそれぞれが御負担をされた記録に基づいて給付を受ける。そ の期間については、そのような計算をさせていただきたいということを示させていただ いております。  それから、離婚をされた場合の厚生年金の分割でございますけれども、御夫婦が合意 をされて分割をされた場合には、その合意の内容に沿って厚生年金の権利を分けるとい うことで、納付記録を夫婦それぞれの方の名前に書き換えをしまして、その記録を前提 にその後の年金の権利を移せるもの、あるいは受給者の方もその納付記録を書き換えた もので給付を受けていただくというふうにしたいということで提案させていただいてい るところでございます。  それから、遺族年金制度につきまして、これは夫婦それぞれが老齢厚生年金を受けて いるときに片方が亡くなったときに、夫が亡くなった場合には夫のほうの老齢厚生年金 のほうが多いということで、その4分の3の額を受け取る方が大多数であるというとき に、自分の厚生年金が消えてしまう、受けられないのはおかしいという御指摘がありま したので、まずは(1)でございますが、自分自身の老齢厚生年金を受け取っていただき、 その上で現行の仕組上、計算された遺族年金、夫のほうの額、4分の3なり、2分の1 を使って計算された場合に、そのほうが多ければその差額分も受け取っていただくとい う仕組みに変えていきたいということ、あるいは(2)でございますけれども、若い時代 に夫が亡くなった場合に、奥様のほうにずっと遺族厚生年金が出続けるわけでございま すけれども、これにつきまして、従来から御指摘のある、子どもさんのいらっしゃらな い若い時代で遺族になられた方について、生涯、年金が出るということについての見直 しが必要ではないかという点を踏まえまして、20代の子どもさんがいらっしゃらない場 合に遺族になられた方については5年の有期の給付にさせていただいてはどうかという ことを提案させていただいているところでございます。  それから、障害年金につきましては、障害年金を受けながらも、これからは厚生年金 の職場で頑張って働かれる方も多いという中で、現在は65歳以降の年金、障害基礎年金 に対しては、障害厚生年金の組み合わせのみということでございましたが、これについ て障害基礎年金を受けておられた方でも、65歳以降、自分が働かれた老齢厚生年金もあ わせて受け取れるという仕組みに変えていきたいということを提案させていただいてお ります。  その他、年金課税の見直し。最後のページでございますが、これは今回の税制改正の 中で、公的年金と控除につきましては65歳以降の上乗せ部分はなくして、60歳前半と揃 えると。ただし、年金の低い方にも配慮した一定の最低保障額はつけるということの合 意がなされたところでございます。  あるいは老齢者の老年控除そのものについては廃止をするという合意がなされたとこ ろでございます。それらの財源につきまして後で御説明申し上げますが、年金のほうの 国庫負担になっているというものの見直しがございました。この段階では、まだこの提 案をさせていただいたと。あるいは国民年金の保険料の徴収体制の強化と段階の免除制 度導入等について、提案させていただいておりました。  それから、個人に関しては納付状況等を被保険者の時代から毎年定期的にお知らせを していく。その中には、年金の額が簡便に計算しやすいようなポイントで表示をしたよ うなものもあわせて組み込んでいきたいということを述べさせていただいております。  それから、過去の3号の未届けの期間があった。それはやむを得ない事情で未届けに なっておったということについては、改めての届け出で救済をしていくような策も盛り 込んでいきたい。  あるいは、積立金の運用につきましては、今の特殊法人の年金運用基金につきまして は、いったん廃止をして、新たな仕組みを検討するという閣議決定がなされております ので、この閣議決定に基づきまして、新たな仕組みを今回入れていきたいということを 提案させていただいております。あるいは企業年金の安定化、厚生年金基金の凍結解 除、解散時の措置、あるいは確定給付、確定拠出等についての改善の事項を提案させて いただいております。  最後の点は、福祉施設等々のあり方についても、閣議決定を踏まえた見直しをしまし て効率化を図って適正な見直しを図っていくということを提案させていただいておりま す。  このようなことを提案させていただきまして、政府・与党の中で御議論いただきまし た。それで、現在までに合意をされている事項を簡単に御報告申し上げますと、資料4 −1でございます。資料4−1の大きな紙でございますが、左半分が12月17日までの政 府・与党の間の協議会の場で正式に合意をされたもの、右半分のほうは今後改めて御審 議をいただき、法案提出までに検討していくべきものということでございます。  左側のほうを見ていただきますと、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引上げと いうことは、平成21年度までに完全実施という形でございますが、その道筋も含めて明 らかにされたということでございます。別添4−2にそのときの与党の合意あるいはそ の税制改正の大綱もつけておりますけれども、それに表現されておりますのは、まず16 年度はその年金課税の見直しを行う。公的年金控除あるいは老齢者控除等の見直しを行 いまして、その財源を充てていく。その増収分、これは税制改正でございますので、初 年度については明けて17年の1、2、3月のときに実際に施行されるということは、2 月支給分から、すなわち年間の6分の1分が国庫負担が初年度増えるということになり ます。  それから、次の17年、18年の2段階目ということでございますけれども、これは今の 所得税等の定率減税を至急見直していく、あるいは廃止の可能性もあるという見直しを していくということ、それから国と地方の関係を見直す三位一体改革。このような中 で、個人の所得課税全体を抜本的に見直すという中で、年金につきましてももう一段適 切な水準に引き上げていくということが明記されているところでございます。それか ら、最終段階、3段階目でございますけれども、19年度を目途に、年金だけではなく、 年金、医療、介護等の社会保障の給付全般に関する費用の見直しを踏まえて、消費税を 含みます税制全体の抜本的な改革を実現した上で、21年度までに2分の1完全実施を図 るということが合意をされておると。政府・与党の場でもこれを明記されておるという ことでございます。これが最初のほうでございます。  その次に、厚生年金、国民年金の保険料の凍結解除の問題でございます。これにつき ましては、最終保険料率のあり方と同時に議論されまして、まずは厚生年金、これは予 算に関係しますので、年内に合意ということでやっていただきまして、厚生年金の保険 料は来年10月分から省案のとおり、毎年0.354%の引上げを図っていただくということ でございました。国民年金のほうは、年度単位の引上げでございますので、年明けで御 議論いただき、17年4月分からの引上げのお願いをしてまいりたいと思っております。  次に、有限均衡方式の導入。これも省案の提案のように、100年程度を見通しての有 限均衡の導入ということが言われております。  それから、その次に保険料水準を固定したもとでマクロ経済スライドでの給付のほう の緩やかな調整があって、この方式についても合意されておると。そのときに厚生年金 の最終的な保険料水準でございますが、これにつきましては年金審議会の場でいろいろ 御議論があって、それで我々の省案では20%で提案させていただいておりましたが、経 済財政諮問会議あるいは政府・与党の中での議論等を踏まえまして、最終的には政府・ 与党全体の場で当面18.35%を上限として設定し、初年度は0.354%引き上げますが、設 定をし、これにつきましては、法案提出、2月7日だと思いますが、法案提出時までに 例えば在職老齢年金制度70歳以上まで適用するのかどうかというようなことも含めて、 この保険料水準がさらに一層抑制できるのかどうか、それについて最大限の努力をする ということでの合意となっております。  それから、スライドの調整の仕組みにつきましては、新規裁定者、既裁定者と共に、 ここに書きましたように、省案のようなやり方で調整を図っていただけるという方式が 合意をされているところでございます。  これでやってみますと、その次でございますけれども、現在の18.35%までの引上げ を前提に、どこまでのスライド調整が必要かということで見させていただきますと、 2022年までは必要だろうと。そこで財政均衡を図れるだろう。そこまで進めますと、所 得代替率は50.1%という水準になるということで示させていただいているところでござ います。  右半分は、先ほど申しました在職老齢年金等以降の問題でございまして、これはまだ 予算に直接かかわりのない、年明けてのさらなる御議論が可能という部分でございます ので、さらに御審議をいただき、法案提出までに確定をさせていただくということで残 されているところでございます。  簡単でございますが、現在の状況は以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○堀部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対して御質問がありました らどうぞ。田村委員。 ○田村委員  年金数理に関係あるところだけちょっとお伺いしたいのでございますけれども、一つ は共済のほうがどういうふうになるかということです。要するに、保険料固定方式を共 済組合がとれるかどうかということ、それから有限均衡方式も共済のほうでとれるかと いうことなのです。その点については厚生労働省と共済の所管省との間に何かお話はあ ったのでしょうか。 ○木倉年金課長  現段階までは、審議会のときからでございますけれども、そのときどきの審議会の審 議の状況あるいは我々の省案の考え方、政府・与党での段階の議論の状況の報告を、共 済各省共々させていただきまして、このような考え方で今のところ進んできているとい うことで、どこまで同じような考え方で御議論いただけるか、そこは最終的なところは まだ伺っているわけではありませんけれども、それは1階、2階の設計としてぎりぎり 伸ばしていく考え方等については、同じような考え方での検討をお願いしてきていると いう段階でございます。 ○田村委員  すると、数理計算の中身もちょっと変わってくるのですね。保険料固定方式だと今ま でと逆になって、今までは給付のほうを計算して、それに応じた保険料率が決まってく るという形だったのですけれども、逆に保険料が固定され給付が変わることになりま す。さらに、給付のシステムそのものを変えなければいけないということにもなると思 うのですが、そういうことが共済の側で対応できるものなのかどうなのか、大変疑問な のです。その辺どうかなと思ってお聞きしたのですけれども。 ○木倉年金課長  最終保険料水準とあるいはその途中の階段を固定するということについては、今、例 えば国共、地共のほうもこの夏までの段階で、これから何段階か経て、保険料水準を一 つにして、途中の階段も一つにして、それぞれ財政の調整を図っていきたいというとこ ろまでの合意になっております。  ですので、現在の段階で厚生年金と同じ最終保険料に設定するとか、同じ階段の上げ 幅にするとかというところまでは、今の我々、事務当局同士で議論しているときはなか なかそこまで、同じ形には持っていけないのではないかと。ただし、2階のスライドの 考え方等につきましては、従来から被用者グループ全体での再評価率等も使わせていた だいているということでございますので、その辺については同じ考え方が取り入れてい けるのではないだろうかというような議論をさせていただいているというところでござ います。 ○田村委員  それから、もう1点よろしいですか。ちょっと細かいことになるかもしれませんけれ ども、先ほどスライド調整率のところに、公的年金の被保険者全体の動向を考慮すると いうことだったと思うのです。国民年金も同じ率で給付を調整していくということにな るからそういうことにしたと思うのですけれども、そうすると、ここのところは20歳か ら60歳までの人口そのものと同じというふうに考えてよろしいのか、それとも未加入の 者を除くのか、いかがでしょうか。 ○木倉年金課長  これは本文を参照しませんでしたが、3−3の資料に、一応、公的年金全体での被保 険者数を使う理由を挙げさせていただいております。16ページでございます。少子化の 進みます、支える力の減少をどう見るかということで、従来の0.3程度の数字で方向性 と論点の時代にずっと試算を御紹介させていただきましたけれども、これは被用者グル ープのほうの数字でございまして、ここに公的年金全体を使用する理由として、今、田 村委員の御指摘のように基礎年金も厚生年金も同様の調整を行っていきたいということ で、あるいは世代間の公平の観点から考えますと、より早くに速やかな調整を行ってい くことも必要ではないかということですが、実際には60歳までの国民年金グループのほ うで、そこで被用者を抜けられる方々の動きというものがこれに反映されてくるという ことは、それは大きな違いとして出てくるということでございます。 ○田村委員  人口そのものではなくて、違うというところがどこかにあるのですか。 ○木倉年金課長  厚生年金のほうは、60歳以上の被保険者の方も入ってはおりますので、そういう被用 者年金のほうはですね。 ○田村委員  そうすると、その分は国民年金の基礎年金の負担の能力と違いますね、60歳以上のと ころの被保険者をカウントすると。基礎年金の負担の仕方と整合性がとれないような感 じがするのですけれども、その辺いかがなのですか。 ○木倉年金課長  もともと国民年金と厚生年金、共済年金、全く同一指標がとれればということではあ るわけですけれども、そこのところは全体のトレンドとしてどの程度かと。国民年金グ ループの方々の支える力をどう見るのか。所得の伸び方の把握もなかなか難しゅうござ いますけれども、従来、審議会でも見ていただいたのですが、厚生年金グループの賃金 の伸び方と同程度の伸び方で、一応、限られた所得情報でありますが、所得の伸び方を 見られていますので、その辺で両方、共通の指標で1階、2階の伸び方を同じに、調整 しているときに使わせていただくことも可能ではないかということで提案させていただ いているところでございます。 ○田村委員  わかりました。 ○堀部会長  よろしいでしょうか。  ちょっと田村委員の最初の質問に関連してお聞きしたい。年金数理部会は一元化の際 の費用負担の年金数理的な検討を行う、そういうことが一つの役割になっているのです が、永久均衡方式から有限均衡方式に変わると、仮に将来共済年金と厚生年金とが統合 した場合に、移管金については今までと考え方が変わってくるのでしょうか。 ○田村首席年金数理官  考え方自体、変わってこざるを得ないと思っていますけれども、どういう考え方にな るかはまだこれから検討し、御相談したいと思っています。農林年金でもそうですけれ ども、予定利率自体も変わってきております。 ○堀部会長  利率はいいのですが、今まで給付確定部分を移管するという考え方だったと思うので すが、厚生年金本体自身に給付確定部分がなくなるという、そういう事態になると思う ので、今後積立金を移管する場合はそれでいいのかなという疑問を持ちました。  それと、年金数理部会と関係ないのですが、厚生年金基金は給付確定部分を積み立て ているのに、厚生年金本体にはそれがなくなるという似たような事態が生ずるのです が、それは数理課長にお聞きしてよいのでしょうか。 ○坂本数理課長  今、先生が御指摘のように、給付確定部分というのがこのようにマクロ経済スライド を導入いたしますと、自動的に給付水準が変わっていくということで、何が給付確定部 分かということが特定しにくいということがございますけれども、そういう意味ではこ れまでとはちょっと概念を変えていく必要が出てくるのではないかと。そこはこれから の検討事項になるのではないかというふうに思うところでございます。 ○堀部会長  一元化というか、統合自体は未定ですので、それは仮定の話なのですが、考え方が変 わってくるのではないかという印象をもちます。  ほかにいかがでしょうか。田村委員。 ○田村委員  私ばかりで申しわけないのですけれども、数理部会として制度横断的な検討というこ とを言われていますので、どうしても共済も含めて、共通の指標をもう一度ここで新し い制度に基づいて考え直さなければいけないのではないかと思うのです。今、ちょっと お話があった有限均衡方式か、永久均衡方式かというのは、これは制度の選択に任せる のか、強制的にというか、全制度一斉にやるのかによって随分違ってくると思うので す。それによっては積立レベルをどういうふうに考えるかとか、それが今ちょっとお話 があった移管金の問題につながってくると思うので、積立比率みたいなものだとか、収 支比率みたいなものとか、今のままではちょっと具合が悪いのではないかという感じが しているのです。何かそういうものを検討するということをお考えなのでしょうか。 ○堀部会長  私も事務局と相談して、今後、年金数理部会の運営をどうするか検討を行いたいと思 っています。とりあえず、来年度早々には14年度分のヒアリングをやって、あとは財政 再計算の際の検証をやる。そういった場合、永久均衡方式から有限均衡方式に変わった 場合の財政検証のやり方なども違ってきます。それから、まだ時期は先になりますけれ ども、報告の様式とかそういうものも変わってきますので、それらを年金数理部会で今 後御検討いただきたいと私は思っています。何か事務局からありますか。 ○田村首席年金数理官  今、部会長からお話のあったとおりでございますけれども、今後、幾つか議論をして いただかなければいけない内容があると思います。1つは、すぐに平成14年度のヒアリ ングをお願いしなければいけませんので、その内容について。その次に、再計算の検証 をしていただかなければいけませんから、それのヒアリングの内容についても考えてい かなければいけません。それから、今の田村委員と部会長のお話にもございましたけれ ども、一元化の際の具体的な費用負担のあり方の検討というのも数理部会の目的にござ いますので、その内容につきましても考えていかなければいけないと思っています。先 ほどの財政指標につきましてもガラッと変わりますので、これも考えていかなければい けませんが、今、知恵を絞っている最中でございますので、今後、詰め次第、御審議を いただければと思っております。 ○堀部会長  この問題はよろしいでしょうか。  ほかに先ほどの年金課長の御説明について御質問ございますでしょうか。 ○栗林委員  ちょっとすみません。ここの部会と直接関係ないかもしれませんが、よろしいでしょ うか。 ○堀部会長  はい、どうぞ。あまり時間がありませんけれども。 ○栗林委員  基本的に、今回、政治的な決着ですから、お答えにくいかもしれませんが、今回のこ の考え方というのは、国民の受け止め方として、負担のほうを固定して、給付のほうは 負担に応じるのだよというメッセージと、給付は50%以下にしないという、2つの制限 があってやっているように見えるのですね。だけれども、これは2つの制限というの は、基本的にはどっちかが崩れる可能性はいつでもあるわけです。そのときにどちらを 重視した年金改定をこれからはやっていくのだというメッセージとしては、一般の人は どういうふうにつかまえるのでしょうか。ちょっとお答えにくいかもしれませんけれど も、我々はどういうふうに説明したらいいのでしょうか。例えば、外に行って、審議会 に入っているメンバーとして何か言われたときに、メッセージはどっちなのだと聞かれ たときにどういうふう答えたらよろしいか、もしお答えいただければありがたいので す。 ○木倉年金課長  まず経緯から申し上げますと、これは社会保障審議会年金部会の御意見でもそうでし たし、我々の省案でもそうなのですが、政府・与党合意に至る前の段階のそういう意見 書、省案の段階では、保険料水準固定方式のもとで、若い方々の負担はここまでですよ ということを明確にした上で、その給付のほうを緩やかに調整させていただきたいとい うこと、これは一貫して変わらず申し上げてきております。  その際にも、しかしスライド調整をどんどんしていくといっても、やはり一定までの 下限を設けながらやっていかないと、いくらでも調整が進んでいってしまうと。万が 一、経済の調子が悪いときにということで、下限を設けていこうではないかということ は、審議会の意見書でもいただいておりますし、省の案でも、その下限を50という言い 方で提示をさせていただきながら、その段階のときにどうするかということについて は、やはり制度の根幹に立ち戻って、もう一度社会全体の合意を取り直させていただく 省案ではないでしょうかということを御説明をさせていただきました。  その考え方は、保険料を負担する方々のほうに軸足を置きながら、給付の伸び方を緩 やかに調整させていただくという考え方は変わっていない。そういう説明をさせていた だいていると我々は思っております。 ○吉武年金局長  4月くらいに内閣府に年金の改正についての世論調査をお願いしたり、有識者調査を お願いしています。片方で、経済諮問会議などの議論があるわけですけれども、私もあ る意味で考え方は相当離れているという感じがします。  内閣府の世論調査というのは5,000人くらいのサンプルをとっておりますので、サン プリングとしては多いのですが、若い方はどちらかといいますと、「負担」を重視する という方が多い。それでも、多いといってもせいぜい全体100のうちの50を少し超える くらいです。全体を見ますと、年金は給付が重要だという方が多い。それは、30代もそ うですし、40代もそうだし、50代はもちろんそうだということです。  ただ、経済財政諮問会議での御議論などを、私なども随行してお聞きしていますが、 そちらはどちらかといいますと、今のこういう経済状況もあって、ある意味では負担に ついては非常に悲観的な御議論が強くて、負担で決めるのだという御議論が強い。た だ、医療保険などと違いまして、年金の場合には中長期の仕組みです。しかも中長期の 間に日本の経済社会はどういうふうに動いていくかというのはいろいろな想定があっ て、非常に悲観論的な想定をすれば非常に厳しい想定になるわけです。悲観論的な想定 で考えれば、ある給付に対して必要な保険料率なり、国庫負担も非常に高くなります。 経済が良くなってくれば、保険料率は低くなってくるという、そういう中でどう考えて いくかということですけれども、私どもの立場としては両方だろうと思います。  ただ、重要なのは、今まで給付を確定して、保険料率はこうですというふうに申し上 げても、実際に決まっているのは13.58%という保険料率でして、その先は財政計算で 厚生労働省が責任を持ってお示ししているだけです。一応そういうことを前提に御議論 が行われていますけれども、では前回の国庫負担2分の1で、厚生年金の保険料率19.8 %というのは、本当に国民的な合意があるかというと、それは法律になっていませんか ら、そういう意味では国民的合意はできていないというのが実態だと言えます。  今回、最も違いますのは、13.58%から、私どもが御提案申し上げる20%、経済財政 諮問会議などでは16%という御議論もあったわけですけれども、一応、18.35%を基本 としながら、少しそれを抑制できないかというところで、これは完全に法律に盛り込 み、その引き上げ方の階段も毎年小刻みに上げさせていただくということになりますの で、国会の御審議の結果、それを認めていただければ、これは国民的な意思になるだろ うというふうに、そこが最大の違いだろうと思います。  ですから、保険料率が先か、給付が先かという御議論があるのですが、今までは給付 が先とは言いながら、給付に対応した保険料率は実は将来の形としてなかった。今回 は、もちろん、経済情勢なり、社会経済情勢によって、例えば18.35%の保険料率でも、 将来どういうところにいくだろうというのは変わってくるわけですけれども、一応、基 本的な意思としては18.35%、それから人口の中位推計、それから経済成長というか、 賃金の上昇は、20年、30年という世界ですけれども、1.1%が確保できれば、給付は50 %という水準を確保するという、そういうある意味で明快なメッセージを出していくと いうことだろうと思います。  ただ、いろいろな条件が変わったときに、どういうふうに考えるかということを、今 回の法律の中でどういうふうに盛り込むかということはこれからよく検討していきたい と思っています。そういう意味では、一番どこに軸があるかと申し上げれば、ここに書 いてございますように、2022年までの保険料率を法律で定めて、それについて御審議を いただいて、御賛同いただければ確定していくというところであろうと思います。  それから、その後の状態というのは、多分、財政再計算、先ほどの検証のお話がござ いましたけれども、今までの検証では、給付はこれだというお約束になっているのに対 して、例えば19.8%の保険料の世界というのはもちろんないわけで、そこは一応それを 念頭に検証していただいていたわけです。そして、現実に検証していただいているの は、今の13.58%の世界が、例えば5年間どう動いていくかということを検証していた だく。その次のステップはどういうことになるかといいますと、次の法律改正で、法律 改正の結果によってまた検証していただくということです。  今回はむしろ逆になってくるだろうと思います。保険料率によって保険料収入が経済 状況によっても、人口構成によっても変わっていますが、それを見ていただきながら、 給付にどうリンクしていくかという状態を見ていただくということになります。そうい う意味で財政再計算ではありませんけれども、財政的な検証を、特に人口推計が5年に 1回変わりますので、財政再計算に匹敵するくらいの財政的な検証を5年に1回やって いただきながら、その間も経済社会の状況、それから年金給付のほうはもちろん現実、 結果は出てまいりますので、それを見ていただきながらということになってくるのでは ないかと思っております。 ○堀部会長  約束した時間が過ぎました。今回の改正についての御質問はまだ多々あると思うので すが、それは後で個人的に年金局にお聞きいただきたいと思います。一応、改正の件に ついては終了したいと思います。  持ち越しになっていました要約の文章ですが、お手元にいっていると思います。読ん でいただけますでしょうか。 ○田村首席年金数理官  本体のほうからの切り貼りで、手が入っていますけれども、今、お配りした1枚紙で 「積立金の実績と将来見通しとの乖離の分析」というところです。  上3行も含めて読みますと、  「積立金は国共済では実績や将来見通しを0.7%上回ったものの、国共済以外の被用 者年金では実績が将来見通しを3%程度下回った。これは主として「名目運用利回りが 将来見通しと異なったこと」がマイナスに寄与したことことによる。」  その下に、カッコで「実質で見た財政状況」といたしまして、  「このように13年度末積立金が、将来見通しより実績のほうが下方に乖離したのは、 名目賃金上昇率が将来見通しと異なったことにより生じている。そこで、各年度の乖離 について、財政的にあまり影響がないと考えられる部分を除いてみると、すなわち実質 的な運用利回り、名目賃金上昇率以外の経済要素、人口要素等だけで見ると、各制度と もプラスの要因となっている。ただし、この分の積立金のプラスへの乖離幅は保険料率 に換算すると、どの制度ともおおむね100分の1%のオーダーでしかない。」  ということで、もとの文章がちょっとゴチャゴチャしていましたので、簡単にし、か つ、「実質で見た」というところを多くしたところでございます。 ○堀部会長  ただいまの案について、何か御意見ございますでしょうか。 ○近藤委員  表題ですが「実質」で見た財政状況ではなく、財政状況についての評価というような ことで、まとめられないでしょうか。我々として、評価までしたことにはできないので しょうか。 ○堀部会長  それは、私もいろいろ考えたのですが、我々の任務は報告を受けることです。この問 題に関しては、評価をするということは年金数理部会の権限外ではないか、そういうこ とで、分析はするが評価はしない、そういうことにしたいと思っています。  いかがでしょうか。 ○近藤委員  了解しました。 ○堀部会長  それでは、この要旨についても御了解いただいたということで処理させていただきま す。  時間が遅れまして申しわけありませんでした。本日はこれまでにしたいと思います。 次回の日程等については事務局に確認をお願いします。 ○田村首席年金数理官  次回、第9回になりますけれども、年金数理部会の具体的な日程につきましては、事 務局から各委員の御都合をお伺いいたしまして、調整させていただきまして御案内を申 し上げたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。 閉会 ○堀部会長  それでは、本日はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。                                     −了− (照会先)  厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室  (代)03-5253-1111(内線3382)