03/12/09 食品規格部会議事録             薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会                  食品規格部会                    議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会議事次第 1.日時:平成15年12月9日(火) 14:00〜15:40 2.場所:経済産業省別館第944会議室 3.議題 (1)審議事項    食品に含まれるカドミウムに関する国際基準への対応について (2)その他 出席委員 池上幸江、小川益男、小沢理恵子、香山不二雄、高鳥浩介、中澤裕之、      廣瀬雅雄、米谷民雄、柳川洋(敬称略) 参考人  新田裕史((独)国立環境研究所研究総合研究官) 関係省庁 農林水産省消費・安全局農産安全管理課 新本調査官 事務局  遠藤食品安全部長、中垣基準審査課長、三浦食品国際企画調整官、太田補佐      他 ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから、薬事・食品衛生審議会 食品衛生 分科会 食品規格部会を開催いたします。本日は御多忙のところお集まりいただきまし てありがとうございます。  本日は部会委員13名中9名の委員に出席いただいておりますので、当部会は成立して おりますことを御報告申し上げます。また、参考人として、本日報告を予定しておりま す厚生労働科学特別研究の主任研究者である国立環境研究所の新田先生に御出席いただ いております。また、関係省庁として農林水産省農産安全管理課の新本調査官にお越し いただいております。  開催に先立ちまして、遠藤食品安全部長よりご挨拶申し上げます。 ○遠藤食品安全部長  食品安全部長の遠藤でございます。本日はお忙しい中をお集まりをいただきまして誠 にありがとうございます。  薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会の開催に当たりまして一言ご挨拶 を申し上げます。  委員の先生方におかれましては、日ごろより食品衛生行政の推進につきまして、御指 導賜っておりますことに心から感謝を申し上げます。御案内のとおり、本年7月に食品 安全基本法が施行されまして、内閣府に新たに食品安全委員会が設置されたところでご ざいます。また、食品衛生法につきましても、本年5月に国民の健康の保護を図ること を目的とした食品の安全性確保のための改正を行い、本年8月より逐次施行をしている ところでございます。  このような施策を通じまして、食品衛生のより一層の向上に努めてまいりたいと考え ておりますので、先生方の御指導、御協力をよろしくお願い申し上げたいと存じます。  この審議会で昨年7月から御議論いただいてまいりましたけれども、食品に含まれる カドミウムに関する規格基準につきまして、本年の7月に食品安全委員会の方にリスク 評価をお願いをするということで、7月1日にはその手続をしたところでございます。 国内的には食品安全委員会のリスク評価を待ちまして、また、本部会におきまして御検 討をいただきたいと考えているところでございます。  他方、国際的にはコーデックス委員会におきまして、食品中のカドミウムに関する国 際基準の検討が進んでおりまして、来年3月の食品添加物・汚染物質部会あるいはその 後の総会等において本格的な議論が行われる見込みでありまして、現在そのための日本 政府としての意見提出を求められているところでございます。本日はそのことにつきま して、我が国としての対応について忌憚のない御意見、御提案をいただければと考えて いるところでございます。よろしくお願いを申し上げます。 ○事務局  それでは、まず食品安全委員会の発足に伴い、これまで部会長であった丸山委員が辞 任されております。部会長につきましては、委員の互選により選出することとなってお り、互選の結果、柳川先生にお願いすることとなっております。また、部会長代理につ きましては、部会長から御指名をいただき、品川先生にお願いすることとなっておりま すので御報告いたします。  それでは、座長を部会長の柳川先生にお願いしたいと思います。柳川先生、よろしく お願いいたします。 ○柳川部会長  柳川でございます。どうぞよろしくお願いします。  本日の部会の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いしたいと思いま す。まず資料を確認してください。 ○事務局  それでは配布資料について確認させていただきます。委員には事前に送付いたしまし たが、本質的には変わりございませんが、一部修正されておりますので御注意いただけ ればと思います。また、小沢委員からコメントをいただいておりますので、それを追加 資料として添付しております。  それでは、配布資料について確認させていただきます。  資料1が「食品規格部会委員名簿」でございます。資料2が「食品中のカドミウム基 準に関する国内における検討状況」というものです。資料3が「食品中のカドミウムに 関する国際的な検討状況」です。資料4が「平成15年度厚生労働科学特別研究(中間解 析報告書)」です。資料5が「カドミウムの国際基準への対応について(検討ペーパー )」です。資料6が「『食品に含まれるカドミウム』に関するQ&A」となっておりま す。  参考資料として、参考資料1が「食品安全委員会への食品健康影響評価依頼」、参考 資料2が「第61回JECFAの結果(抜粋)」、参考資料3が「CCFACからのコ メント要請」、参考資料4が「カドミウムの毒性評価に当たっての検討事項について」 となっております。  その後に添付しておりますのが、小沢委員から提出いただきました意見に関する資料 でございます。  資料ございますでしょうか。 ○柳川部会長  それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は「食品に含まれるカドミウムに 関する国際基準への対応について」ということで御審議をお願いしたいと思います。小 沢委員から御意見いただいておりますが、後ほど説明していただきたいと思います。そ れでは、資料1から3、これについて説明をお願いします。 ○事務局  それでは資料1から3について説明させていただきます。  最初に資料1でございますが、食品規格部会委員名簿でございます。  次、資料2にまいりますが、食品中のカドミウムに関する国内における検討状況とい うことでございまして、平成15年7月以降について書かれてございますが、食品安全委 員会が発足しておりまして、そこに対して、「食品からのカドミウム摂取の現状に係る 安全性確保について」意見を聴いておるところでございます。  平成15年10月10日には、食品安全委員会汚染物質専門調査会(第1回)が開催 されております。その中で、厚生労働省から意見要請があったカドミウムについて、そ の概要に関する説明が行われております。  平成15年12月10日、第2回の汚染物質専門調査会が予定されているということ でございます。  資料3にまいります。食品中のカドミウムに関する国際的な検討状況ということでご ざいまして、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)の食品添加物 ・汚染物質部会(CCFAC)において、カドミウムの最大基準値原案が提案され、議 論が行われております。その下にその原案が書かれておりますが、果実、小麦や野菜、 精米、大豆、軟体動物等、幅広い食品にわたりまして最大基準値案が提案されておると いうことでございます。  Stepにつきましては、Step3ということでございまして、Step8になるとセットとい うことですので、まだ初めの段階の議論が行われておるということになっております。  その次のページですが、これまでの検討状況をここにまとめております。1998年 にデンマークが食品の基準値原案を提案しております。1999年にはその原案に基づ いて、各国にコメントを依頼しているということでStep3という段階に至っておりま す。現在まだStep3ですので、この段階のまま、上がったり、下がったりという形でき ておるということです。  それで、議論がありますのが、カドミウムの規格基準を議論するに当たって、その ベースとなるリスク評価が非常に重要であるということで、2000年にJECFAに おいて検討が行われており、その際にはそういった毒性評価を行うためのデータが十分 でないということで、以下のような疫学研究が勧告されているということでございま す。  次のページにまいりますが、JECFAではそういった勧告が行われて、また、そう いったものについて再度検討するということになっていたのですが、それと並行する形 でコーデックスの下部部会であるCCFACという部会において検討が進められており ます。  2002年のところにアンダーラインを引いておりますが、我が国で現在実施中の疫 学研究と、ほかにも研究があったわけですが、そういった研究も含めて最新の科学的デ ータをもってJECFAにおいて毒性評価を行うこと、また寄与の大きい食品群につい て暴露量を考えるに当たり、その大きいと考えられる食品については上と下のいわば3 つのレベルの基準を設定して、その暴露量、またリスク評価を行うことをJECFAに 要請したということで、コーデックスの部会でも毒性評価及び暴露評価の重要性にかん がみて、そういったものをJECFAにお願いしています。  2003年6月にJECFAが開催されております。その際に我が国から提出された 疫学研究、また農林水産省で実施されたカドミウムの実態調査等々に関するデータも踏 まえて検討が行われています。  毒性評価につきましては、現行の暫定的週間耐容摂取量を維持するということで、こ れまで定めていたJECFAの週間耐容摂取量をそのまま維持することになったという ことです。ただ、2002年の3月にCCFACというコーデックスの部会から要請し ました暴露評価については、十分に行われなかったということでございます。時間の関 係、データの関係があったのかもしれません。そういうような状況になっています。  それで2003年8月、Step3という形で各国に対して、現在のカドミウム基準値原 案に対してコメントの要請が来ておるということで、その締め切りが非常に近づいてお りますが、12月15日になっておるということです。  その各国からのコメントに基づいて、来年2004年3月にCCFACが開かれまし て、そこで議論が行われます。その後の予定としては6月にコーデックス総会というよ うな流れになっております。  資料1から3の説明は以上でございます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。何か御質疑ありませんか。特にないようでしたら、次に行 きます。次は資料4、これは平成15年度厚生労働科学特別研究の中間解析報告ですが、 今日お見えになっている主任研究者の新田先生から、その内容について説明をしていた だきたいと思います。よろしくお願いします。 ○新田先生  国立環境研究所の新田でございます。スライドを使って説明させていただきます。                 (スライド映写)  本研究は、「日本人のカドミウム暴露量推計に関する研究」というタイトルになって おります。  実際には、食品由来のカドミウム暴露に限定した推計を行いました。本日は推計の手 順とその結果について御説明させていただきます。  まず推計手順の概要でございます。  まずスタートは食品摂取量ということで、基本的には厚生労働省の国民栄養調査のデ ータを用いて推計を行うというのが1つのステップでございます。ただ、国民栄養調査 は1日調査ということですので、今回の目的に当たりましては、長期的な平均値の分布 が必要だということでございます。ただ、この1日調査から長期平均というところの推 計手順に関しましては、前提条件等いろいろ難しい点がございまして、今回は1日調査 のデータをそのまま平均値に充てるということで推計を行いました。この違いに関しま しては、後で御議論させていただきます。  食品の摂取量に関しましては相互の関係がございます。例えば米をたくさん食べる人 がほかの食品をたくさん食べる、もしくは食べないというような相関がございます。そ の相関を考慮する必要があるということでございます。  一方で、食品中のカドミウム濃度の推計について、基本的なスタートは、農林水産省 が実施しましたカドミウムの実態調査で示されております農水産物中のカドミウム濃度 群、これがこちら側のスタートのデータになっております。  これをこの食品摂取の国民栄養調査の食品分類と合わせる必要があるということで、 ここに変換マトリックスというものがございます。これで濃度を実際に食べているも の、複数の食品が混じった食事を実際には摂取するということはごく普通に行われるこ とですので、この変換マトリックスによって推計する。それで食品中のカドミウム濃度 分布を推計する。それから、先ほど推計した食品摂取量の分布、ここを掛け合わせて、 最終的に全体のカドミウム摂取量を推計するというのが手順の概要でございます。  それから、一部の食品に関しましては、この濃度分布得られていないもの、それから 濃度分布が得られているもののこちらの摂取量のデータが非常に摂取頻度が低くて不正 確なもの、もしくはないものがございます。ですから、これに関しましては、流通デー タで補完する必要があると考えておりますが、今回の中間解析ではこの点の補完は行っ ておりません。  もう少し詳しく用いたデータを御説明させていただきます。  国民栄養調査のデータに関しましては、1995年から2000年までの6年間をプ ールした約5万3千名のデータについて解析を行いました。これは年度ごとの変動をで きるだけ小さくするという意味で6年間のデータをプールして用いております。さらに 国民栄養調査の中で、20歳以上の成人、妊娠していない者に限定しております。限定 した結果、5万3千名ということでございます。  国民栄養調査のデータは、1日の摂取量ということで示されておりますので、それを 体重1kg当たり1週間の摂取量に換算してカドミウムの推計をすべて行いました。  一方の農作物、水産中のカドミウム実態調査でございますけれども、これに関しまし ては、約130の品目に関しまして、4万3千検体の分析データで、実際にはこのうち 米が約3万7千検体ということで、一番米に関して多くのデータがとられている。この データ2つを推計のスタートにしております。  食品分類、報告書にもお示ししておりますけれども、約100の食品群に分類して、 今お話しました推計を行って、最終的にはそれを全部足し合わせたものを分布としてお 示ししております。一部、米、小麦、大豆に関しましては、単独で分布をお示しさせて いただきます。  それから、寄与率、それぞれの推計に当たる寄与に関しましては大分類でお示しさせ ていただきました。  その他、推計に用いたデータですが、小麦、大豆に関しましては、食料需給率を考慮 しまして、輸入品のカドミウム濃度を推計に用いております。先ほど申し上げましたよ うに、変換係数として農産物から食品への変換ということで、材料費、加工による損失 等を考慮した変換係数を与えました。  今回の推計はモンテカルロシミュレーションという手法を用いております。これは今 お話しましたそれぞれの分布を仮定して、その分布に従う乱数を発生させ、それを掛け 合わせて最終的にカドミウムの摂取量の分布を推計するという手順でございます。  まず最初のステップは、食品群別摂取量分布の決定ということで、それぞれ約100 の食品群に関しまして対数正規分布を仮定して推計を行いました。対数正規分布のパラ メータは、国民栄養調査、先ほど申し上げました6年間プールしたデータより推定した ものでございます。  それから、食品摂取量の食品群間の相関の推計ということで、今回は、米、小麦、大 豆の主食もしくは摂取量の多いもののみの相関を考慮しております。  次に食品群別摂取量分布に従う乱数を発生させます。今回は10万個の乱数を発生さ せております。ただし、米、小麦、大豆に関しましては、相互の相関に基づく乱数を発 生させております。その他の食品に関しては独立な乱数を発生させているということに なります。  次に食品群別のカドミウム濃度の分布の決定ということで、これも基本的には対数正 規分布を仮定しております。対数正規分布に関しましては、国際的に一番標準で使われ ている分布ということで用いております。ただ、ほかの米、小麦、大豆以外のカドミウ ム濃度に関しましては、データ数がやや少ないというようなこと、それから時間的な制 約ございまして、今回は中央値を算出して、それを固定して推計しております。  次にこの決定した分布に従う乱数を発生させます。この3の乱数とこちらの5の乱数 を掛け合わせて、これを全体を総和をとります。この操作を10万回繰り返したという ことでございます。  この推計に関しましては、スライドが小さく申し訳ございませんが、報告書の方に書 いておりますけれども、1から7のシナリオ別に推計を行いました。1は、データをそ のまま用いた場合、2は、米のみ0.4mg/kg以上のデータを除いて推計を行ったもの。 3は、基本的にはコーデックスの基準案に従いまして、それを超えるものを除いたも の。4、5、6、7は、農林水産省の方から御提案がありました数値をここに当てはめ て、4、5、6、7に関しましては米の基準値案のみ0.2、0.3、0.4、0.5と変化させ て、これを超えるものを除いた場合の推計を同じ手順で行ったものでございます。  結果に関してお示しさせていただきました。まずシナリオを仮に予測1、予測1と2 を説明を省かせていただきましたけれども、予測1は、米、大豆、小麦以外の食品のカ ドミウム濃度の中央値の推計に当たって、定量限界以下の処理の違いによって予測1と 予測2の2通りの予測を行っております。予測1は、定量限界以下のデータが多い食品 に関しましては、それをゼロと置き換えた場合の推計値。予測2は、中央値の推計に当 たって、定量限界以下のデータが多い場合には、それを定量限界の値そのまま用いた場 合。定量限界以下のものが少ない食品に関しましては、予測1、予測2の場合、両者と も定量限界の2分の1を当てはめた推計になっております。  結果に戻りますと、シナリオ1に関しては、やや裾を引いた分布になっております。  分布の形としては、予測2も同様でございます。1週間体重1kg当たりのカドミウム 摂取量として2.5μg付近が一番山のピークになっているということでございます。それ から大きく裾を引いていく。分布をもう少し実際には引いておりませんけれども、グラ フの表示は途中で切っております。  シナリオ1に関しまして、米、小麦、大豆、個別の分布をお示ししております。これ は米経由で摂取するカドミウムの分布がどうなっているかということで、0からここが 1.5μg、これが3μg付近です。3、4、5μgとかなり裾を引いています。  これが小麦、大豆でございますが、横のスケールが違っておりますので御注意いただ ければと思います。小麦ですと、ここが1.3μgあたりになります。大豆はここが1μg ぐらいの大きさになりますので、横のケールがちょっと違っております。全体として は、この3者を比較すれば、米類のところの寄与が大きいのは容易に予測できるのでは ないかと思います。  各シナリオ別の予測を報告書の方には数値でお示ししておりますけれども、ここでは グラフにさせていただきました。一番下の黄色が25パーセンタイル、50パーセンタイ ル、ここが平均値、75パーセンタイル、90パーセンタイル、95パーセンタイル、97.5パ ーセンタイル、これは予測1に関してです。  シナリオ3の場合が、90パーセンタイル、95パーセンタイルでやや低い値になってお ります。平均値、50パーセンタイル、すなわち中央値に関しては、このシナリオ別に大 きな差はこの推計結果では見られませんでした。  予測2のパターンも基本的には同様でございます。予測2の方がやや全体的に高めに なっている傾向がございます。これも中央値、平均値の付近に関してはシナリオ別の違 いは大きく認められておりません。90パーセンタイル、95パーセンタイル、97.5パーセ ンタイルということでシナリオの違いが読み取れるのではないかと思います。  これはシナリオ1に関してですが、平均値ベースで見た場合の食品の大分類別の寄与 をお示ししました。平均値は予測1では約3μg/kg体重/週になっております。このう ちの約50%が米由来という推計になっております。ただ、この寄与は平均値ベースでご ざいます。先ほど申し上げた90パーセンタイル、95パーセンタイル、97.5パーセンタイ ルのように分布の裾の方も同じような寄与を示すということではございません。  考察でございますけれども、モンテカルロシミュレーション、このようなリスク評 価、リスク管理の部分で国際的に使われている手法でございますけれども、まず比較的 容易に分布全体の推計が可能であり、かなり複雑な手順のものを容易に推計可能だとい う利点がございます。それから種々の仮定、今回お示ししたようなシナリオ別の差がど のように結果に影響を与えるかということを比較的容易にこれも定量的に評価できると いう利点がございます。  ただ、いくつか不確実性の点を指摘しなければいけません。まず推計手法に関しまし ては、どのような分布を仮定するかというようなことで不確実性が生じる可能性がござ います。特に分布の裾の高い方に関しては、その不確実性は大きいだろうということが 予測できます。それから用いたデータに関する不確実性もいくつかございます。先ほど 申し上げたように、1日調査から長期の平均値に当てはめているということで、例えば それはどのようなことを意味するかといいますと、高い頻度、よく食べる方がたくさん 食べるとか、もしくは1回の量は少なくなるということがありますと、ここの1日調査 から長期平均のところに偏りが生じる可能性がございます。残念ながら、ここに関しま しては具体的なデータが入手できておりません。基本的には独立であろうというふうに 思っております。  それからカドミウム濃度に関しましては、一部の食品で濃度測定値がないもの、濃度 測定値があっても食品摂取量の頻度が非常にまれで、国民栄養調査の1日調査では把握 できてないもの等々いろいろ不確実性がございます。  まとめてございます。本報告では、今申し上げましたようなデータに基づきましてシ ナリオ別の結果をお示しいたしました。ただ、不確実性の点がございます。さらに本 日、中間解析ということで時間的な制約もございましたので、最終報告に当たりまして は、さらに定量的に不確実性に関して評価させていただきたいと考えております。  以上でございます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの発表に対して何か御意見か質問あり ませんでしょうか。これらのディスカッションの1つの基になる貴重なデータですが、 ありませんか。それでは、ありがとうございました。  次は資料5について、事務局から説明をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、資料5について説明させていただきます。  「カドミウムの国際基準への対応について(検討ペーパー)」というものでございま す。背景は、先ほど資料3で説明いたしましたが、簡単に要約いたしますと、現在コー デックス委員会において議論が行われており、基準値案が提案されておるということで ございます。  これに対して関係各国は12月15日までにコメント提出が求められているという状 況にあります。そういったコメントを踏まえて、来年の3月、オランダで議論が行われ るという形になっております。  検討に当たっての論点をここにまとめておりますが、論点1から3まであるのではな いかと考えております。論点1としては、消費者の健康保護の観点から、科学的に適切 な基準値の設定が必要ではないか。そのためには、基準値を変動させた場合の暴露量の 変化に関する推定が必要になるのではないかということです。  これの留意点としては、先ほど資料3でも説明いたしましたが、コーデックスの部会 でも、そういったものの必要性から、こういった分布曲線を書くとか、暴露量の変化が どれぐらいなるか、そういったものを推定するようにということで、現在専門家会議で あるJECFAに要請しているところです。JECFAにおいては、6月の時点ではほ とんど検討が行われなかったということです。  コメント案としては、まず論点1に則り、コメント案をそこに書いておりますが、基 準値はJECFAの暴露評価に基づいて科学的に適切に設定されるべきであるというこ とで、2002年のCCFACの合意に基づき、必要な暴露評価をJECFAにおいて 実施されるべきと考えるというのがコメント案の1でございます。  次のページにまいりますが、論点2でございます。コーデックス委員会も、そういっ たバックグランドとなる暴露評価であり、リスク評価の重要性は認識しておるのです が、それと併せて基準値の検討も進めたいという動きもあります。具体的な基準値に議 論が至ることが予想されるということでございまして、我が国といたしましても、コー デックス委員会における議論に積極的に参加する観点が必要ではないかということで、 現時点での利用可能な科学的知見に基づいて、修正案を提示するといった対応すること についてどう考えるのかというのが論点2になるのではないかと考えております。  留意点といたしましては、2003年7月にコーデックス総会が行われておりまし て、その際、CCFACの部会におけるカドミウムの議論について、1998年からやって おり、時間かかっておりますので、作業を急ぐようにということがコメントされており ます。  論点2を踏まえたコメント案でございますが、我が国から具体的な修正案を提出する ことにしてはどうかということでございます。  論点3にまいりますが、それでは修正案を提案する場合にどういったものを出すかと いうことですが、まず我が国の暴露量の推定結果に基づいて、消費者の健康保護を前提 にしたものでなければならない。農水産物等のカドミウム含有実態を前提に、そういっ た実態も踏まえたものとするということについてどう考えるかということです。  留意点としましては、3ページ目、先ほど新田先生から、厚生労働科学特別研究につ いて中間報告をいただきましたが、その際に用いたシナリオが【参考1】のところに書 いております。シナリオ1から7までございまして、シナリオ1は、公的基準等がない 状況ということで、そのままデータを使っている。シナリオ2は、米のみ0.4ppmという ことです。シナリオ3がコーデックス案(米0.2ppm)、シナリオ4は、米は0.2ppmとい うことでコーデックス案と同じですが、野菜とかほかのものに関して、我が国の実態を 踏まえた基準値でシナリオを立ててみたということです。その後、野菜等は我が国の実 態を踏まえた基準値で、あと米だけを動かしまして、0.2ppm、0.3ppm、0.4ppm、0.5ppm という7つのシナリオを置いたということです。  2ページ目の留意点に戻らせていただきますが、こういったシナリオ1から7につい てシミュレーションが行われまして、その中間解析報告によりますと、平均値を見る と、どれも半分切るという形でシナリオに大きな差はないのではないか。また、国際的 な基準値設定の目安とされている95%値を見ると、シナリオ1では、7μgを超える可 能性がありますが、シナリオ3、シナリ4から7ともに週間耐容摂取量7μgを下回っ ておるということが言えるのではないか。留意点の3つ目としては、0.4ppmから1.0ppm は我が国においては農水省で米は買い上げられているというような状況になっておりま す。  コメント案としては、まず我が国で実施されたカドミウム摂取量の推計結果というも のを報告するということでして、次のページにまいりますが、先ほどのシナリオの、特 にシナリオ3と6がポイントになると思いますが、シナリオ3、シナリオ6、いわゆる コーデックス案、また、我が国の農水産物等の実態調査結果を踏まえた提案を比較した 場合に、両者の摂取量に明らかな差異は認められず、平均値は耐容量の半分以下であっ た。国際基準の目安とされている95%値において耐容量を下回っていたということで、 まず我が国で行った摂取量推定の結果をここに報告し、それをベースに修正案を提案し てはどうかというのがコメント案でございます。  実際にコメント案ですが、4ページにまいりますが、参考2で、シナリオ6というこ とで、具体的に見ますと、米は0.4ppm、小麦0.3ppm、大豆0.5ppm、ホウレンソウ0.3ppm、 また、レタス、白菜などは逆に強化する形で0.1ppm、サトイモは0.3ppm、等々というよ うな形で、シナリオ6の実際我が国の実態を踏まえて設定した基準値で修正案を出して はどうかというのがコメントでございます。  こういった考え方はコーデックス委員 会の方でもALARAの原則というのがございまして、この考えに基づいて汚染物質等 の基準設定が行われておりまして、簡単に説明いたしますと、消費者の健康をまず害し ない。毒性学的な観点から問題ない、受入れ可能であるというのを前提に置いている。 その範囲で到達可能な範囲ということでできるだけ低く設定するということで、ALA RAの略を言いますと、As Low As Reasonably Achievableです。合理的に達成可能な 範囲ということで定めることになっております。ですので、そういった考えにもこ れは適合するものであるということでございます。  事務局としては、コメント案をこのような形で考えているということでございます。 資料については以上でございます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。それでは食品に含まれるカドミウムに関する国際基準への 対応について議論いただくわけですが、小沢委員から御意見をいただいていますので、 最後のところに皆さん付いていると思いますが、資料の2ページ目のQ&Aの前までを 手短にまず説明していただきましょうか、5分程度で。 ○小沢委員  5分ほど発言させていただきます。最初、食品安全部長のご挨拶にもありましたよう に、7月に食品安全委員会が発足して、この委員会は従来と違ってリスク管理の場とし て位置づけられているのではないかと認識しております。そういう意味ではいろんな立 場の情報があってしかるべきだと思いまして、1つの議論の材料として意見書を準備さ せていただいております。  この間の、この食品規格部会の場で疫学調査の御報告も伺っておりますし、今回暴露 量の推定の御報告も出されているのは承知しておりますけれども、そういった資料を拝 見した上で、今回の趣旨は、コーデックス委員会に我が国がどういう姿勢で臨むかとい うのが一番の趣旨だと思うのですが、ほかに関連する見解がないのかと見ておりました ら、環境学会が、ことしの4月にまさに「コーデックス食品添加物・汚染物質部会での 審議条項に関連して」というサブタイトルをつけて、食品中のカドミウムの基準値に関 する検討という御報告がございました。それは私の資料の後ろの方に全部コピーを付け させていただいておりますが、この中を拝見しますと、コーデックスでどのような議論 がなされてきたかということを非常に丁寧に、例えば私のような消費者の立場にもわか りやすく書かれておりますのですが、結局はまとめとして何が書かれているかという と、日本の風土なり歴史的な背景も全部踏まえた上で、なおかつ過去にいくつかの疫学 調査も出されていたのも踏まえても、現在のコーデックスのCCFACの最大基準値を 受け入れる必要があるであろうというまとめをなさっています。  とりわけ米についても、0.2ppm という数字を示されておりますので、環境学会とい うと、消費者にとっても非常に関心のあるところもございますし、貴重な提言として、 ひとつここのまな板に乗せていただく必要があるのではないかということで載せさせて いただいていますのと、それからコーデックスのCCFACでこうした汚染物質の議論 をするときに、最大限の基準というのはどうやったら減らせるかということを前提とし て考えなくてはいけないと。そのことが消費者のリスクの低減に一番役に立つのではな いかということも言われていて、それを踏まえる必要があるのではないかと思っており ます。  日本が特殊な状況だというのはわかっていますが、日本が国際基準をいくつかのシナ リオとコメントの案が提出されていますけれども、上げるという方向で日本が臨むとい うのは、なかなか日本の消費者にとっても納得がしがたい部分があるのではないかと 思っております。  あとは先ほどの分布の御報告を拝見していても、一応95パーセンタイルでクリアーで きるだろうというふうな中身のようなのですが、この辺は素人なのでよくわかりません けれども、97.5パーセンタイルまで見ると、かなり7μgをオーバーしてしまうと。そ うすると、95と 97.5パーセンタイルを見る違いの意味という、つまり残された、例え ば3〜4%の人々というのか、人口で考えると、500万人分ぐらいになるのかなと素 人は考えるのですが、そんな考えでいいのかどうかよくわかりませんが、その辺をもう 少し見る必要があるのではないかと思っております。  それと先ほどALARAの原則の理解の仕方として、リーズナブルというところなの ですが、この翻訳、訳したコメントの中に「無理なく」という訳がございまして、無理 なくというのは、一体だれが無理をしないのかということを思いますと、むしろ合理的 にできるだけ低くするのだというふうなことをきっちり踏まえる必要があるのではない かと思っております。  以上でございます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。今、触れられたのは資料の初めの方ですよね。  それでは、いくつかの点について、これに対して事務局なり、専門の香山委員、新田 先生のお考えをお聞きしたいと思います。  今日提出されました資料の(1)の(1)、(2)の(2)については香山委員から、1 ページの一番下、(3)の(1)については新田先生から、そのほかについては事務局か らお考えをいただきたいと思います。香山委員よろしいですか。 ○香山委員  私のわかる限りでお答えさせていただきますが、基準値の算定に当たっては、実際 に、私は第55回のJECFAと今年の61回のJECFA、カドミウムが議論された 2回のJECFAに参加させていただいておりますし、その後のCCFACも2回テク ニカルアドバイザーとして参加させていただきまして、その議論の過程をすべて把握し ております。  その中で、これまでの日本の疫学調査、最近行われた疫学調査の結果を総合的に評価 いたしまして、もちろん日本環境学会にも引用されているいろいろな米のデータなどの 論文も全部考慮に入れた上で、PTWIは現状のままでよろしいという結論が、第61回 で出ました。これで基本的にはPTWIを受け入れるという形でこのシナリオはつくら れておりますので、本質的な問題点は特にないかと思われます。小沢委員のおっしゃら れたとおりだと思います。それがCCFACでは、これはオランダ案として出てきたも のでありますので、それがどれだけのエクスポージャーアセスメントが行われているか ということがまだ欠けているのではないかというので、もう少し科学的なエクスポー ジャーアセスメントを加えた段階で議論をしましょうというのが今の論点だと思いま す。  第1点はそれでよろしいかと思いますが、それで、米の基準に関してというのは、今 の議論をしているのは、全体のPTWIの算定を基準に基づいて決めていくということ でありますので、それがどこに妥当であるかという議論を科学的に進めていくというこ とが大前提だと思います。ですから、ここで急に全国の米が一番寄与が大きいから、米 のことをまず最初に議論しましょうということではなくて、全体のバランスの中で話す べきではないかと思っております。  以上です。 ○柳川部会長  ありがとうございました。それでは、新田先生、お願いします。 ○新田先生  (3)の(1)、それから若干(2)の(1)の御質問も関係するかと思いますので、併せ てお答えさせていただきます。  今回の推計に関しましては、加えて申し上げますと、食品の摂取については国民栄養 調査の約5万人以上のデータに基づく摂取量の分布、カドミウムの濃度に関しては、米 については、先ほど申し上げましたように、3万検体以上の測定値に基づいて推計をし ております。したがいまして、その分布、かなり高濃度、多量摂取の方に裾を引いた分 布になっておりますけれども、推計上はたくさんの量を食べた人が確率的には低いもの の高濃度を含んだ米に確率的に当たるということも含めた推計になっております。単純 に平均値掛ける平均値という推計、従来行われているようなものではなくて、たくさん 食べている人がたまたまその確率は一定の分布に従う確率でございますけれども、それ を考慮した推計になっております。  ですから全体としては、御指摘の点を理論上はある程度考慮した推計になっているの ではないかというふうに考えております。ただ、たくさん食べている方がもし一般の平 均的なものよりも、カドミウム濃度の高い米を食べる傾向があるというようなことです ね。ですから摂取量と濃度が独立ではないという場合には、今回の推計は少し低めにな る可能性は残っているかと思います。ただ、その両者の相関を示すようなデータはござ いませんでしたので、独立と仮定して推計したということでございます。以上でござい ます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。それでは事務局、追加すべき点あったらしてください。 ○基準審査課長  その他の点について事実関係だけお話しをしたいと思います。小沢先生の意見書の中 で、まず(1)でございますけれども、今回は国際基準への対応を考えておりますの で、そういう意味から申し上げますと、JECFAの耐容量7μg/kg体重/週、これを ベースに議論をしていただくというのが必要かと思います。  また、(4)でたばこについて触れられておりますが、WHOのレポートによりますと、 たばこ1本の中に1〜2μg入っておって、そのうち10%程度が経気道的に吸収される 可能性があるということでございますから、20本だと仮定しますと、2〜4μgとい うことが推定されるわけでございますけれども、体重kg当たり1日1μgが安全域でご ざいますから、それを前提に考えますと、50kgで50μgとなり、そのうちの2〜4μgと いう数字がそこに当てはまる可能性があるということです。  なお、ここで書かれておりますように、禁煙対策の推進というのは、我々カドミウム 対策だけではなくて、厚生労働省として、いわゆる健康増進のために推進をさせていた だければと思います。  (2)の基準値の設定のところでございますが、(1)のところ、今、新田先生から理 論的に考慮しておるという御説明だったかと思います。なお、この(1)にございます汚 染米生産地で自家消費する農家というのがございますけれども、食品衛生法でございま すから、市場に流通する米の対策を考えておるわけで、仮にその田んぼでつくられた米 をすべて自家消費されるということになりますと、食品衛生法が係る余地がない。た だ、一部でも出荷されるということなりますと、当然のことながら、食品衛生法が関与 してまいるわけであります。  次に(2)の日本環境学会及び(3)でこの推定がされております。すなわちどういう推定 がされているかというと、JECFAの耐容量の半分程度を米の摂取量で割り算をする という推定がされておるわけでございます。言い換えますと、基準値限度いっぱいまで カドミウムが含まれた米を毎日一生涯にわたって摂食するというシナリオが推定されて おるわけでございます。こういったシナリオというのは、国際的にはTMDI (Theoretical Maximum Daily Intake)方式という形で使われておる推定方法でござい ますが、この方式、平成9年ごろでございますか、WHOで国際的な専門家会議が開催 され、我が国からたまたま池上委員に参加していただいたのでございますけれども、T MDIという方式はあまりに過剰な推定を与えてしまうというようなことから、実際の 分析値に基づいた手法、例えば今日の新田先生の御報告もそうだと思いますし、農薬で すと、農薬を試験したときの中央値を使うというのが国際的なルールになっておるわけ でございますが、そういう形でこのTMDI方式というのは、現在国際的に言うと基準 設定の是非に用いられるような手法ではないという評価です。  また、この件については、池上委員より、御専門の観点から説明していただければと 思います。  (3)でございますが、(1)について、新田先生からコメントをいただいたところで ございますが、最初のポツあるいは2番目のポツで、先ほど97.5%の問題が指摘された ところでございます。この点につきましては、明文で規定されていますのは米国FDA でございます。米国FDAは90パーセンタイルを基準設定の根拠とするということが書 かれております。EUは明文化されておりませんが、過去つくられたものを見てみます と、95パーセンタイルを目安にしているようでございます。国際基準も明記されており ませんけど、90パーセンタイルあるいは95パーセンタイルが用いられておるようでござ いまして、その背景にあります考え方としては、基準を設定することによって、基準以 上のものというのは、例えば日本ですと食品衛生法違反になるわけでございますから、 基準を超えないように濃度分布が左側と申しますか、少ない方に動くのだろうというよ うなことが背景にあるのだと思いますし、また、先ほど新田先生から御紹介いただきま したとおり、1日の摂取量を基に今回推計されておるわけでございますが、1日の摂取 量の分布の広がりに比べますと、長期的な摂取量は常識的にいって分布の広がりが狭い と申しますか、ピークがあるのだろう。例えば、今日はたまたま食べなかったという人 が一生涯食べないというのはちょっと考えられないので、それは食べる。今日はいっぱ い食べたという人が、次の日もまたいっぱい食べるとは必ずしも限らないということか ら、分布の広がりが狭くなるのだろうというようなこともあるのだろうと思いますけれ ども、90パーセンタイル、あるいは95パーセンタイルを用いて基準の設定に当たってお るということでございます。  (2)でALARAについて御指摘いただいております。確かに「無理なく」というの は、小沢先生御指摘のとおり、「合理的に」という訳の方が適切だと考えますので、訂 正させていただきます。ありがとうございました。 ○柳川部会長  ありがとうございました。この資料をいただいたおかげで、かなり議論が明確になっ てくるような気がします。  それでは、資料5の論点1から順次これでいいのかどうか、委員の御意見をいただき たいと思います。まず論点1です。これは科学的に適切な基準値を決めることと、暴露 量の変化に関する推定、暴露評価が必要であるということなのですが、それはそれでい いかどうかということでいかがでしょうか。  よろしければ、論点1は、皆さんこれで同意していただいたということで、論点2に 行きますが、よろしいですか。特に御意見ありませんか。 ○小川委員  国際的にはJECFAは時間の都合等いろいろあって、ほとんど検討はされなかった 様子ですが、ほかの国にこういったデータはないのでしょうか。 ○柳川部会長  いかがでしょうか。 ○事務局  カドミウムの場合、こういった精密な暴露評価に基づいてやるというよりも、欧州な どは既に基準があるわけですが、7μgから考えると、基本的に達成可能であるという ことで、暴露評価として粗いものはありますけれど、要はもっと下げられるということ で基準値が設定されているということで、特にこういった精密な暴露評価というのはや られていないということです。 ○柳川部会長  よろしいですか。ほかにはいかがですか。それでは、論点1については、基準値は、 暴露評価を含むリスク評価結果に基づいての科学的に適切に設定されるべきであると。 JECFAにおいて必要な暴露評価が行われるべきであると、そういうことで御同意を いただいたということにしたいと思います。  次のページの論点2、この論議に積極的に参加するという観点から、現時点の利用可 能な科学的知見に基づいて修正案を提示する等の対応をするかどうかということなので すが、これについては御意見いかがでしょうか。質問なり何かありませんでしょうか。 これは対応するということで進めていきたいということでよろしいですね。  それでは、次に論点3です。この論点3は、修正案を提案する場合、我が国の暴露量 の推定結果に基づく消費者の健康保護、これは非常に重要である。同時に農水産物等の カドミウム含有実態も踏まえる。そういうことにしたらどうかということですけれど も、これについて御意見をいただきたいと思います。留意点には3つのことが書いてあ ります。平均値で見る限りはシナリオ3、これはコーデックス案ですが、これとほかの シナリオとでは大きな差がない。国際的な基準値設定の目安とされている95%値、これ においてもシナリオ1〜7、1では7μgを超える可能性があるけれども、3と4以上 とではいずれも下回っているというようなことが書いてありまして、それではコメント 案というのがここに書いてありますけれども、このコメント案でいくかどうかというこ とについて御意見をいただきたいということですね。  先ほど小沢委員からいただいた御意見も十分考慮して、各委員の御意見をいただきた いと思いますが、いかがでしょうか。 ○池上委員  先ほど課長の方から御紹介いただきましたように、私もWHOの専門家会議に数年前 に出席いたしました。この会議は残留農薬、環境汚染物質その他の基準を決めるときの 科学的な考え方を専門家で議論するという場になっていたわけです。そこでの暴露評価 の方法に関する議論を踏まえて、厚生労働省で新しい残留農薬の暫定基準をつくるとき に、精密化を図るというようなことで新しい国際的な流れに沿って我が国の残留農薬の 基準値も決めていくというようなことで、その専門家会議がベースになって議論をされ てきました。  その専門家会議で議論されている中で、精密化を図る場合に、今回、新田先生がお示 しになったモンテカルロシミュレーションというのが最も正確ということでした。シ ミュレーションとしては非常に適切な方法なのだというようなことは専門家の間からは 出てはいたのですけれども、実際にはその専門家会議ではモンテカルロシミュレーショ ンを採用するというようなところまでは議論は煮詰まってはいませんでした。実際には 正確な内容をきちんと把握していませんけれども、摂取実態と食品中の残留実態を基に して基準値を決めていくという考え方が提案されて、それを我が国も採用して、その後 の基準を決めるのに使っているわけです。  今回、私も初めて新田先生のデータを見せていただいて、残留農薬に関しては、以前 に研究的なレポートとして報告されているものもあるのですけれども、今回のようにカ ドミウムに関して、多くの食品を実際に分析したデータに基づいて、国民栄養調査に関 しては若干問題があるというふうな御指摘もありますけれども、今、日本で使えるもの としてこれしかないわけですから、それに基づいて、これだけ厳密にシミュレーション されたものは今までないわけで、その点では私は非常に高く評価できるのではないかと 考えています。ですから、このシミュレーションに基づいて考えていくというのが極め て適切ではないかと私は思います。  それから、もう一つ、今回いただいた資料の中に、マーケットバスケット方式で実際 に食品を分析されている数字も、これと極めて近い数字が出ています。摂取実態はもう 少し低くなっていますけれども、恐らく検出限界の関係で、やや、新田先生の方が高め に出ている可能性は十分考えられると思いました。新田先生のシミュレーションをベー スにして考えていくことが適切ではないかと思われます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。ほかに各委員、忌憚のない御意見いただきたいと思いま す。 ○香山委員  これも質問かコメントか、その中間的なものになるのですけれども、先ほども新田先 生がおっしゃった1日の摂取量のデータなのがちょっと弱点かもしれないとおっしゃっ たのですけれども、我々が厚生科学研究研究でさせていただいた1,600人余のカド ミウム準汚染地域から正常な範囲まであったわけですが、その方々の過去1カ月間の 147品目の食品の摂取のデータがございますので、それはかなりの分布をとったデー タとしてありますので、それをシミュレーションに取り入れるということで、さらに精 度が上がるのではないかと思うのですが、作業量としていかがなものなのでしょうか。 ○柳川部会長  新田先生、何かお答えいただければ。 ○新田先生  1,000以上のデータで1カ月のデータがあれば、日間変動を評価して、その分布 を検討することによって、偏りがあるか、ないかということがまず第1点。それから、 分布の日間変動の大きさを考慮するパラメータをここから推定できるということで、手 間という問題はあまり生じないかと思います。精度はそれによって不確実性のところで 大きい部分がクリアーできる可能性があると思います。 ○香山委員  1カ月にどのくらいの頻度で食べるかということですから、30日分のデータがある という意味ではないのですけれども。 ○池上委員  国民栄養調査について若干私も意見を言わせていただきます。1日調査というふうな 調査方法に変わったのは、平成7年からだったと思うのですが、それ以前は3日間調査 というのをやっていたわけです。ただし、これは家族単位でやっていて、個人別の調査 にはなっておりませんでしたから、こういった今回のシミュレーションなどに使えるよ うな調査の方法ではなかったということで、平成7年から個人調査となっています。  個人調査と同時に、家族単位の調査も併せてやっています。調査が大変だということ で、以前の3日が1日に短縮されたという経過があるわけですが、これまでの3日間 やっていた国民平均のいろんな食品の摂取とか、栄養素の摂取のデータを見ますと、1 日になってからのものとは、そこで大きく違いがあれば、データに大きなガタつきが出 るはずなのですが、実際にはほとんどガタつきがなく、今までの経過をそのままずっと 踏襲しているような図を書くことができます。私は1日になったとはいえ以前の3日間 の調査とそれほどデータ内容に大きな変動があったとは判定しにくいのではないかと 思っています。 ○柳川部会長  ありがとうございました。ほかにどうでしょうか、論点3について。 ○高鳥委員  新田先生にお尋ねしたいのですが、資料4の4ページ、5ページ、今の論点3の(1) のところで、シナリオ3、これはコーデックスの基準案として出ているのですけど、表 3で、シナリオ1〜7まで、これをグラフにしましたとき、3と4が若干低く、ほかは 高くなる。これで、今、大きな差はないという言い方はどういうように解釈していい か。つまり有意差はもちろんない。しかし、ここで3と4は低く、ほかは若干高いと。 これでも大きな差はない。ほとんど差がない。表現としてどうとらえていいのか、それ をちょっと教えてもらえますか。 ○新田先生  平均値で申しますと、数字で言うと、小数点以下1桁、2桁のところには差が見えて おります。このシミュレーションの手法自体の誤差で言えば、10万回の試行をしてお りますので、誤差はそれ以下ということで考えております。ただ、先ほど申し上げまし たように、用いたデータによる不確実性の点で、不確実性が定量的に十分評価できてお りません。ですから、その誤差を考えますと、この数字の差を、差があるというような 判断は現状では難しいのではないか。そういう意味で、大きな差はないというような表 現をさせていただいております。 ○柳川部会長  ほかによろしいでしょうか。 ○高鳥委員  ちょっとくどいようですけれども、そうするとここのあたりで結論になるシナリオ、 1〜7に関しては、まず、その差がないという見方でいくと、そう判断してよろしいと いうことですか。 ○新田先生  それは平均値、中央値というレベルでのことでございます。 ○柳川部会長  それでは、まだ御意見もあるかもしれませんが、今、論点3で言われたように、シナ リオ3に対応してシナリオ4、5、6、7とあるのですが、6を修正案として提案しよ うとしているわけなんですね。確かにいろいろ御意見があると思います。消費者の立場 から、これは低ければ低いほどいい。これは当然のことで、私もそう思いますし、それ から、5%というところで切るのが本当にいいのかどうか。10%で切っているところも あれば、97.5%、要するに 2.5%で切っているところもある。いろんな御意見あると思 いますが、国際的な基準の目安としては、多分95%値というのは標準的であり、最も多 いのではないかと思います。  ということで、シナリオ6を基に修正案として提案するということでいかがでしょう かということなのですが。諸先生方の御意見も踏まえて、その点はよく頭に置きなが ら、シナリオ6という修正案を提案させていただくということなんですけれども、いか がですか。特に御意見がなければ、その線でいきたいと思います。よろしいでしょう か。  では、そのようにさせていただきたいと思います。  それでは、次は資料6についてお願いします。 ○基準審査課長  すみません。もし差し支えなければ、小沢先生の意見の(3)の(2)の最後のポツに ございます低減対策について述べられておりまして、農林水産省からも今日御出席いた だいておりますので、簡単にその現状を説明を。 ○柳川部会長  ぜひいただきたいと思います。それは非常に重要なことだと思いますので、よろしく お願いします。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課 低減対策の状況を御説明したいと思いま す。稲・米に関してでございますけれども、カドミウムの吸水抑制技術の研究成果を踏 まえて、今、実証、普及を進めておるところでございます。具体的には水管理というこ とで、稲の穂が出る前後3週間ずつの間、水田の水を溜めっぱなしの状態にする。そう すると、土壌が酸化状態から還元状態になって、カドミウムを吸いにくいような状態に なるというのが1つ技術としてございます。それから、アルカリ性の土壌改良剤を水田 に投入することで、土壌のpHを酸性から中性に持っていく。そうすると、これまたカ ドミウムが植物に吸収されにくくなるということがわかってございます。  そういった技術で、実際に実証をやってございまして、両者を含めました実証の結果 を見ますと、0.2ppmを下回るような結果、低減の効果が出ている例もございます。た だ、一方で下がっても0.4ppmとか0.7ppmぐらいまでしか下がらないというような例もご ざいまして、必ず0.2ppm以下になるというような技術にはまだなってないような状況で ございます。やはり土壌の状況というのは、土壌の条件も様々ございますし、栽培状況 もありますし、気象条件によってもまたそういった状況が変わってくるということで、 なかなか0.2ppmを担保できるような技術というところにはまだ至ってございませんが、 ただ、当方も全体のカドミウムの吸収濃度を下げて、全体のリスクを低減するという観 点から、この辺の普及を進めてございまして、比較的濃度の高い地域、県内において は、こういった取組については熱心に進めていると、そんな状況になってございます。 ○柳川部会長  積極的な低減対策を農林水産のサイドからやっていただく必要があると思います。よ ろしくお願いします。 ○小沢委員  ぜひ熱心にやっていただきたいと思うのですが、現実に今日本で採れているお米で 0.2〜 0.4ppm、0.4ppm以上は工業米に回るとして、3.3%あるというのは、必ずしも消 費者全体がよく知っている状況ではないのですが、この 3.3%というのは決して低い量 ではないと思うんですね。こういう努力でいろいろされているのはよくわかるのです が、ある程度目標値なり、現実に可能でどのくらいに減らせるとかということはお考え なのでしょうか。 ○農林水産省消費・安全局農産安全管理課  定量的な目標という点ではなかなか難しいところがございますけれども、我々も今申 した技術をマニュアル化して、各県で地域に合った形で実証、普及を進めるという作業 を財政支援も含めて現在進めているところでございまして、そういった形で全体のリス クを下げるという取組を確実なものにしたいというふうに考えてございます。 ○柳川部会長  小沢委員、それでいいですか。もうちょっとありますか。 ○小沢委員  お米のことについては気にかかるので、確かに先ほど中垣課長さんがおっしゃったよ うに、自家消費のお米で高い、私たちは一般的に神通川の流域とか気にかかるようなこ とがずっと言われてきている中で、自家消費でお米食べている分は、確かに食衛法の対 象としては市場に流れない限り、そういう扱いになるのかと思うのですが、本当にそう いう方が長くそういうお米を食べ続けていることについて、何か考えなくていいのかな と思うのですけど、いかがなのでしょう。法律的には確かにおっしゃるとおりだと思う んです。 ○柳川部会長  どなたがお答えしますか。香山委員どうぞ。 ○香山委員  我々これまで各地の米中のカドミウム濃度が高いものが見つかっている地域のJAに 協力していただきまして、JA女性部、ですから農家の実際に自家保有米を食べていら っしゃる方の調査を行ってまいりました。現時点で最も高い暴露を受けていらっしゃる と思われる地域、日本国内で、そういう方々を現実的に調査してまいりまして、昨年ま でで調べたところでは、腎機能障害、骨粗鬆症に関しては有意差が出ておりませんでし た。  また、さらに、先ほどおっしゃった地域、婦中町とか、そういう地域でも、個々は全 部土壌改良が終わっておりまして暴露はないのですけれども、国内で一番高いと思われ る方々を調査しておりますので、そこら辺の情報は適宜出していけると思っておりま す。 ○柳川部会長  どうぞ。 ○基準審査課長  私の話が冷たい印象を与えたようで申し訳ございません。私が強調したかったのは、 ある田んぼで採れた米をすべて自家消費をされることになると食衛法の外と申し上げた わけですが、逆に申し上げますと、一部でも出荷されれば、それは食衛法の規制の下に 置かれるわけでございます。したがいまして、通常の場合に、例えば米が10俵採れた とすると、10俵すべて自家消費されるというよりは、そのうちの4俵を自家消費に回 して6俵は出荷するというようなケースが、うちも農家だったのでそのあたりよくわか るのですけれども、大半ではないかと思います。その6俵については、検査の対象に なってくるわけでございますので、そういう点から申し上げますと、そこで仮に基準を 超えるようなものがあれば、その農家に情報が伝わるわけでございますし、その際に仮 に自家消費されているとすれば、御注意くださいみたいなことも併せて伝えていくよう な温かい行政を目指さないといかんのかなと、今、小沢先生の意見を聞きながら思って いたところでございます。 ○柳川部会長  確かに食品衛生法の対象にならなくても、国民の健康を守るということは非常に重要 なことであり、濃度の高い米を食べていらっしゃる方がいらっしゃるとすれば、それな りの情報はきちんと開示をして、わかっている情報は提示をして、それに対応する食生 活を考えていただかなければいけないということはありますよね。それはいろんな分 野、ここの食品衛生だけの問題ではなく、健康づくり全体に通じる問題ですし、農林水 産の面の問題でもあるということで、これはこれからも重要な課題として対応していた だきたいと思います。  それでは、次へ行ってよろしいですか。次は資料6ですね。資料6はQ&A、これに 関しては、小沢委員もコメントが出ていました。細かいところまで今日ディスカッショ ンできるかどうかわかりませんが、資料6について説明、事務局お願いします。 ○事務局  それでは資料6について説明をさせていただきます。1ページめくっていただきまし て、2ページ目からになりますが、問1、「カドミウムはどのような物質ですか?どの ような害があるのですか?」、全部丁寧にすると時間がありませんので、ポイントだけ 説明させていただきますと、土壌中なり天然に存在する重金属であるということで、腎 機能障害を引き起こす可能性があります。特に腎皮質のカドミウムが定常濃度になるの に40年以上かかるという具合に言われておりますが、そういうふうに長年摂取するとそ ういうことが起こる可能性があるということです。  なお、イタイイタイ病、こういったものとは低濃度のカドミウム暴露ですので、全く 状況が異なっております。それでイタイイタイ病が発生することは考えられませんとい うことです。  問2ですが、「どうしてお米等の作物にカドミウムが含まれているのですか?」とい うことですが、鉱山開発や精錬などの人為的な活動によって環境中に排出されてきた。 ほかにもいろいろな原因により水田などの土壌に蓄積されてきています。そういったも のが吸収され蓄積されたものですということで、米以外にも多くのものにそういったも のが含まれていますということです。  問3ですが、「お米にどの程度カドミウムが含まれているのですか?」ということ で、全国の3万7千点の調査でやると平均は0.06ppmであったということです。  次のページにまいりますが、分布はこのようになっているということでして、大部分 は、0.10ppmを下回るところにあるということでございます。  問4ですが、「日本人はカドミウムをどの程度摂取しているのですか?外国と比べて 摂取量は多いのですか?」ということですが、これは国立医薬品食品衛生研究所のトー タルダイエットスタディとかマーケットバスケットスタディと呼んでおりますが、日常 食の汚染物質の摂取量調査が行われておりまして、大体30μg/day/人とような形になっ ておりまして、体重50kgであると6割程度というような形になっておるということで す。  次の4ページに図が書かれておりまして、そのうちの半分程度が米からによるもので あるということでございます。  それで、外国はといいますと、5ページにまいりますが、JECFAで簡単に見積も っておりまして、 0.7〜6.3μg/kg体重/週ということで、JECFAは7μgを耐容摂 取量と定めておりますので、それから見るとこういった状況になっておるということで す。また、GEMS/FOODという形で地域ごとの平均的なカドミウム摂取量を見て みると、2.8〜4.2μg/kg体重/週という形になっておるということでございます。  問5ですが、「我が国の規制はどのようなものがありますか?」ということで、食品 衛生法に基づく規格基準ということで「玄米は、1.0ppm以上を含んではならない」と定 められております。  問6ですが、「我が国ではどのような対策が取られていますか?」ということで、ま ず0.4ppm以上1.0ppm未満のお米は農林水産省において買い上げられ、非食用に処理され ています。  そのほかにも客土とかそういった土壌汚染対策が行われていますということと、鉱山 等についても排出を抑制する規制等がとられておるということでございます。  そのほかに、先ほど説明がありましたが、水を張ったままにするとか石灰等を用いて 土壌のpHを中性にするといった営農技術対策という吸収抑制対策というものが行われ ておるということでございます。  次、問7ですが、「食品中に含まれるカドミウムについて国際基準が検討されている と聞きましたが、本当ですか?」ということで、これも先ほど説明いたしましたが、コ ーデックス委員会において、今、0.2ppmという基準値の原案が提案されておるというこ とで、それに基づいて議論が行われています。  次のページにまいりますが、先ほどのALARAの原則によりますと、消費者の健康 保護を最優先にして、その範囲で合理的に達成可能な、できる限り低い水準とすること が原則にされ、その原則に則って検討が行われているということです。  次、問8ですが、「我が国は国際基準の策定にどう貢献しているのですか?」という ことで、これも資料3で説明いたしましたが、JECFAという専門家会議でカドミウ ムの毒性評価を行うに当たってデータを提出しておるということで、我が国の疫学調査 研究等、これまでも、それ以外にも多くのデータを提出してきたところでございます。 JECFAの評価は15年6月にカドミウムの暫定耐容摂取量を維持することが決定し たということでございます。  次に問9ですが、「今後どのような手続きで国際基準が定められるのですか?」とい うことでして、今回コメントの依頼が来ておりますが、そういった各国からのコメント を踏まえまして、平成16年3月、コーデックス委員会食品添加物・汚染物質部会にお きまして検討が行われるということです。  その後、来年の6月にコーデックス総会ということで、通常ですと、今Step3ですの でStep4で議論が行われまして、総会で了承されてStep5という段階に至るわけで、通 常ですと、もう一度Step6でコメントする機会があってStep7で議論する機会があり。 Step8で総会で議論するという、もう一度同じ手続を繰り返す形になります。  ただ、ここにも書いておりますが、アクセレートできるという仕組みもございまし て、そういうのを適用すれば、16年6月に最終決定されることもあり得るということ でございます。  次に問10でございますが、「食品中に含まれるカドミウムに関する我が国の修正意 見のポイントはどのようなものですか?」ということですが、まず、先ほどの論点1に ありましたが、暴露評価が科学的に基準値を設定するに当たり重要であるので、そうい った専門家による検討が行われるべきである。それとともに具体的な基準値を提案する ということで、修正案を提案する。修正案は以下のとおりになっているということでご ざいます。米、小麦、大豆、野菜等々多くのものについて修正案を提出するというこ とを考えております。  次に問11ですが、「どうして規制案の緩和を要求するのですか?カドミウムの規制 は厳しい方がいいのではないですか?」ということですが、今回の修正案は、国民のま ず健康保護を最優先に考えて、その上で、我が国において流通している農作物のカドミ ウム含有量の実態を踏まえたものとなっているということです。95パーセンタイルとい うことで議論をいただいたわけですが、カドミウムの暫定的な耐容摂取量と比較した場 合、それを下回っておりますので、国民の安全は確保されているものという具合に考え ているということでございます。  問12にまいりますが、「我が国の修正意見でも国民の安全は確保されるのですか? 」ということで、問11と関連する質問になっておりますが、先ほど新田先生から御報告 ありましたが、国民栄養調査と農水産物に含まれるカドミウムの実態調査結果という2 つのデータを用いています。その2つのデータからランダムに数値を抽出しておりま す。その2つの数値を掛け合わせると、それが摂取量になるわけですが、その作業を 10万回繰り返して、それをプロットしております。そうすると以下のような図になりま す。そういった分布に基づいて基準値について検討を行っております。  2番のところにまいりますが、基準値を設定した場合のシミュレーションをその上で 行いまして、3番目にまいりますが、平均値や95パーセンタイルという摂取量で暫定耐 容摂取量を下回っておるということで安全性は確保されていると考えるということでご ざいます。  次に問13、9ページ目でございます。「安全確保について、推定された暴露量分布 の95%値をもって安全といっていますが、 100%でなくていいのですか?」ということ ですが、まず、耐容摂取量について説明しております。カドミウム濃度の高い食品を長 年(40年以上で定常状態になる)にわたり摂取した場合に、腎機能障害になる可能性 があるというものです。したがって、仮にカドミウムの摂取量が一時期に暫定耐容摂取 量を超えたとしても、それで直ちに悪影響が発生することはないということで、まず耐 容摂取量に関する考え方をここに書いておるということです。  その上で、先ほどのカドミウム摂取量の推計に基づいて、95パーセンタイルについて 検討を行ったということで、海外においては汚染物質の基準設定に当たり、95%値以外 にも当該物質の特性等を踏まえて、90%値等々を目安に使われておるわけですが、国際 的に最もよく使われている数値は95%値でそれについて御議論いただいたということ で、また明日、食品安全委員会の汚染物質専門調査会においても御議論いただく予定で す。  3番ですが、 100%値というものはどうかということです。これは分布をまず仮定し ますので、それが先ほど説明のありました対数正規分布というものになっておりまし て、その分布の特性から、要は食品の摂取量、カドミウムの接収量ともに分布を設定す るわけですが、その分布で最大値が基本的に無限大になるということですので、そうい ったものは現実を反映していないものとなっているということで、100%値自体は現実 を反映しないものであるということになっております。  次は問14ですが、「食品中に含まれるカドミウムに関する国内基準はいつ頃整備さ れるのですか?」ということで、今回、国際基準の対応の議論をいただいたわけです が、国内基準はどうかということです。これにつきましては、厚生労働省が、現在、食 品安全委員会に健康影響評価というものをお願いしておるということで、その評価結果 が出された後に薬事・食品衛生審議会で議論を行って、可能な限り、できるだけ速やか に国内基準を設定する予定としております。  最後になりますが、次の10ページの問15でございます。「国際基準が定められたら、 それに併せて国内基準を変更するのですか?」ということですが、国際基準が定めら れ、その時点で国内基準がどうなっているかはっきりしませんが、国内基準と仮に異な っているような場合には、国際基準の設定に至った科学的な検討の経緯、そういったも のを十分に評価し、検討を行う必要があるだろう。その上で、その理由を勘案しつつ、 我が国においては、国内基準の見直しの必要性も含めて検討を行う予定にしておりま す。  資料6のQ&Aについては以上でございます。 ○柳川部会長  ありがとうございました。このQ&Aについては、小沢委員からもいろいろな御意見 をいただいております。今日はこれを1つ1つディスカッションする時間とてもないの で、ぜひ、小沢委員と事務局とでよく相談していただいて、必要なところを改定するな り何なりということはやっていただきたいと思います。できるだけ早く公表する必要が あるということのようですので、それをやっていただくと。  そのほかに、ぜひこの点はという御意見がもしありましたら、小沢委員も含めて何か ありましたら、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。 ○米谷委員  問4の答のところに、うちがやっていますトータルダイエットの結果出ておりますけ れども……。 ○柳川部会長  何ページの問何番でしょうか。 ○米谷委員  3ページの問4の答のところでございます。我々の国立衛研の食品部が地方衛研と やっておりますトータルダイエット、汚染物質の摂取量調査の結果が出ておりまして、 2001年までということですけれども、2002年も既にそちらの方といいますか、 課がちょっと違うかもしれませんけれども、出しており、値はほとんど変わっておりま せん。この答にありますように、「10年間ほとんど変わっていません」というのは正 しいですので、新しいものを引用していただけるなら、そちらの方を引用していただけ ればと思います。 ○柳川部会長  ぜひ、それは引用していただくということで、ほかにいかがでしょうか。 ○基準審査課長  小沢委員からの質問については、先ほど部会長の御指示のとおり、別途やらせていた だきますが、1点だけ間違いに気がつきましたので変えさせていただきたいのですけ ど、5ページの末尾に問7の答がございます。6ページ一番上、その答えが続いている のですが、「通常の生産技術」とこう書いているのですが、小沢委員から、「通常の」 は要らないのではないかということをご指摘いただいて、ALARAのコーデックスの 文章を読んでおりましたところ、発音は悪いのですが、current adequate technological methodsと書いてありますので、現行の適正な生産技術というふうに変 えさせていただきたいと思います。  あと1点、8ページの2の2行目ですが、「基準を設定した場合、基準値以上の農水 産物は流通しなくなる」ということでございますけど、「基準値を超える」の間違いで ございますので、変えさせていただきたいと思います。それ以外の点については、小沢 委員の御意見を聞いて、また調整したいと思います。 ○柳川部会長  ぜひ、丹念に協議していただきたいと思います。  それでは、予定の時間も来たようなので、議論はこの辺にして、あと事務局から、今 後の予定等の説明をいただきたいと思います。 ○事務局  それでは、今後の予定ということで、CCFACへ提出するコメントにつきまして は、本日いただいた御議論を踏まえまして、12月15日が締切りですので、それまでに提 出することといたしたいと思います。また、Q&Aにつきましては、本日の意見を反映 したものをホームページ等に掲載することという具合にしております。 なお、カドミ ウムの国内基準については、先ほども説明いたしましたが、現在、食品安全委員会にお いて健康影響評価が行われております。この評価結果を待って、この本部会においてカ ドミウムの国内基準について今後検討いただくというのを予定しておりますので、そち らの方もよろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○小沢委員  1つ質問してよろしいですか。 ○柳川部会長  どうぞ。 ○小沢委員  明日の食品安全委員会でのリスク評価というのは、PTWIが7μgで妥当かどうか というふうな御議論というか、そういうお話をされるのでしょうか。個別のこういった 作物の基準まで議論の対象になるのでしょうか。 ○基準審査課長  我々が聞いている範囲で申し上げますと、食品安全委員会に頼んでおりますのはリス ク評価を頼んでいるわけでございまして、その2回目の審議が行われる。ただ、国際基 準への回答をするというような時期でもございますので、今日の新田先生の御報告が、 また向こうでも御報告されて、それについても議論がなされるというふうに聞いており ます。ただ、基準値の具体的なものについて良し悪しみたいな話にはならないのだろう と思います。いわゆる暴露評価としていくつかのシナリオがある。そのシナリオの中で も、安全、いわゆる7μgを超えている、超えてない、安全と言えるのか、言えないの かみたいなものについての議論はあるのだろうと思いますが、個々の基準値についてど うのこうのという話にならないかと思います。 ○柳川部会長  それでは、これで。そちらにお返しします。 ○基準審査課長  どうも今日はありがとうございました。国際基準への対応を今日の議論を踏まえてや らせていただきたいと思いますし、安全委員会の評価結果をもって、また、再度先生方 に国内基準の設定について御議論願うことになると思いますが、今後ともよろしくお願 いいたします。ありがとうございました。                                     (了) 照会先 :医薬食品局食品安全部基準審査課 中村・横田 電話  :5253−1111(内線2484・4280) ファックス:3501−4868