03/12/03 第1回がん検診に関する検討会議事録           がん検診に関する検討会(第1回)議事次第                           日時:平成15年12月3日(水)                                 13:00〜14:56                           場所:厚生労働省・省議室 1.開会 2.あいさつ 3.委員紹介 4.座長選出 5.議題  (1) がん検診に関する検討会の趣旨及び今後の進め方について  (2) がん検診の現状について    (1)がん検診の有効性の評価について    (2)市町村で行われているがん検診の現状について 6.その他 ○麦谷老人保健課長  委員の先生方御苦労さまでございます。担当の老人保健課長でございます。今日は本 当にありがとうございます。御案内いたしました午後1時になりましたので、早速、会 を始めさせていただきたいと思います。  本日、座長が選出されるまでの間、暫時私が進行を務めさせていただきます。まず本 日の委員の出席状況でございますが、本日は11名の委員全員から御出席のお返事をいた だいております。したがって、本日は皆さん御出席予定でございます。また、がん検診 のこれまでの研究結果、これを検討会で御報告いただくために、本日は特に東北大学医 学部公衆衛生学教室の辻教授に参考人として御出席いただいております。どうもありが とうございます。  それでは初めに、中村老健局長からごあいさつを申し上げます。 ○中村老健局長  老健局長の中村でございます。まずは、がん検診に関する検討会、私どものところで 立ち上げをさせていただくことになりまして、委員にお願いいたしましたところ、お引 き受けいただきまして本当にありがとうございます。また今日は、大変お忙しい中、全 ての委員の方にお集まりいただいているということで、本当にありがとうございます。 また、辻先生には、今日は参考人ということでおいでいただいきましてありがとうござ います。  がん対策について、私の方から改めて申し上げるまではなく、1981年に死因の第1位 が悪性新生物となって以来、現在もそういう状況が続いておりまして、死因の30%以上 を占めているということで、国民の生命や健康を預かる厚生労働省としては、がん対策 は最大の課題であるというふうに考えております。厚生労働省のみならず、政府全体で も最大の課題と考えておりまして、1984年から「対がん10か年総合戦略」を始めており ますし、1994年からは「がん克服新10か年戦略」、こういったことで様々な対策を、研 究、治療などの分野で取り組んでいるところでございます。  私ども老健局でございますけれども、老健局はどういう立場かと申し上げますと、予 防の一部を担っておりまして、1982年に老人保健法という法律ができまして、高齢者の 保健からリハビリまで治療も含めて一貫的に取り組んでいる。そういった中で中高年の 時代から健康が大事だということで、検診事業をやっておりまして、胃がん、子宮が ん、肺がん、乳がん、大腸がんの検診などを実施しているところでございます。  本年7月に、今日も資料でお配りしておりますけれども、平成16年度から新しいがん 対策の指針となる「第3次対がん10か年総合戦略」が策定されております。死亡率の激 減を目指す、罹患率の激減を目指すということを目的にして、研究、予防、医療の社会 環境の整備、推進するということで、厚生労働省の方でも様々な取り組みをしておりま すけれども、特に国立がんセンターにその一環として、がん予防・検診研究センターを 設置するなど、予防対策の強化を図るということを進めておりますし、当然、市町村が 実施しているがん検診の推進というのが重要になると考えております。  この検討会は、がん検診の様々な問題を討議していただくということでお集まりいた だいているわけでございますし、この会の設置の趣旨なり、進め方については、今日ま た御相談したいと思っておりますけれども、私どもの問題意識としては、近年、乳がん の視触診単独の検診など検診そのものの有効性の問題、子宮頚がんの低年齢化など検診 の対象年齢の問題、それから、低くとどまっている受診率の問題が専門家の皆さんから 御指摘されておりまして、我々としては、市町村のがん検診全般について議論はしてい ただきたいと思いますが、特に急がれるものといたしまして、今申し上げました子宮が ん、乳がんといった女性のがんの問題があるんじゃないかというふうに思います。  この検討会はがん検診について総合的に議論を行っていただきたいと思っております が、まずは御指摘の多い、今申し上げました乳がん、子宮がんといった女性のがんを中 心に、来年3月までに今後の対応のあり方について取りまとめていただいければありが たいと、こういうふうに思っております。このほか、がん検診の精度管理のあり方と か、適切な推進方法、地域において実施すべき新たな検診のあり方といったことにつき ましても、御検討いただきたいと思います。  今日は第1回目でございますけれども、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。 ありがとうございました。 ○麦谷老人保健課長  それでは続きまして、御出席の委員の先生方を、御着席の順に御紹介をさせていただ きます。簡単に所属とお名前だけにさせていただきます。  まず、正面に向かって右側の方から、東京女子医科大学の安達委員でございます。  続きまして、国立名古屋病院の遠藤委員でございます。  東北大学の大内委員でございます。  国立がんセンターの垣添委員でございます。  弘前大学の斎藤委員でございます。  日本医師会の櫻井委員でございます。  向かって左側の方にいきまして、国立がんセンターの笹子委員でございます。  岐阜大学の清水委員でございます。  新潟大学の田中委員でございます。  国立がんセンターの土屋委員でございます。  北里大学の渡辺委員でございます。  今日、参考人として東北大学の辻先生に来ていただいております。  次に、事務局の紹介を簡単にさせていただきます。  まず、ごあいさつした中村老健局長でございます。  それから、これから資料を説明いたします、椎葉課長補佐でございます。  千葉課長補佐でございます。  以上の事務局が皆さんのいろんなお手配をいたしたいと思っております。    それでは座長の選出に移りたいと思います。資料にございます要綱によりますと、委 員の互選ということになっておりますが、私ども事務局からひとつ御提案がございま す。と言いますのは、今日、国立がんセンターの垣添総長が委員のお一人におられます ので、私ども事務局といたしましては、ぜひ垣添総長にお願いしたいと思っております が、いかがでございましょうか。               (「異議なし」と声あり) ○麦谷老人保健課長  それでは、先生方の異義なしというお声をいただきましたので、恐縮ですが、垣添先 生、座長席へお移りいただいて、よろしくお願いをいたします。  それでは、ここからの運営は垣添座長にお願いしたいと思います。ひとつよろしくお 願いいたします。 ○垣添座長  では、御指名にあずかりましたので、この検討会の座長を務めさせていただきます。 私は必ずしも検診の専門家ではございませんが、がん対策における検診の重要性は強く 認識しているつもりです。全力を尽くしたいと思っております。それから、拝見します と、この検討会の委員の皆さん、もちろん検診に大変造詣の深い先生方もおられます し、必ずしもそうでない方もおられますが、多分、私どものこの検討会のミッション は、既にこれまで久道先生や辻先生や、たくさん検診に関する検討をいただいて多くの 提言をいただいていますが、先ほど中村老健局長からごあいさつがありましたように、 具体的にそれぞれのがんに関して、国民のために実効のある結論を出していくことだと 思いますので、それに沿った形で努力したいと思います。どうぞよろしくお願いいたし ます。  それでは、議題に入ります前に、まず事務局の方から資料の確認をお願いいたしま す。 ○椎葉課長補佐  それでは座ったままで確認させていただきます。本日議事次第の下に配布資料一覧と いう紙がございますので、こちらをごらんになりながら資料を御確認いただければと思 います。  まず、資料の1でございますが、本日の検討会の委員の名簿でございます。それから 資料2でございますが、この検討会の開催要綱でございます。そして資料3でございま すが、今後のスケジュール(案)でございます。そして資料4でございますが、これは 「新たながん検診手法の有効性の評価」ということで、これまで公衆衛生協会を中心に おまとめいただいたもので、本日、辻参考人の発表の資料にもなっております。そして 併せまして資料5でございますが、本日、御発表なさいます辻先生の参考資料でござい ます。  以上が本日の主な資料でございますが、参考資料といたしまして、6種類ございま す。参考資料1でございますが、「がん予防重点教育及びがん検診実施のための指針」 でございます。それから参考資料2、これは老人保健事業の関連資料で、これまでの歴 史などがまとめられたものでございます。そして参考資料の3、これは「健康日本21 」関連の資料でございます。そして参考資料の4でございますが、これは「第3次対が ん10か年総合戦略」の文章編の資料と、この参考資料にあわせまして、資料ナンバーは ついておりませんが、対がん戦略のパンフレットを配布させていただいておりますの で、後ほどごらんいただければと思います。そして参考資料の5でございますが、横紙 になっておりますが、これまでのがんの統計資料でございます。そして参考資料の6で ございますけれども、これも横紙になっておりますが、これはがん検診の統計の資料で ございます。そして委員のみの配布でございまして、資料ナンバーはついておりません が、ブルーの「がん検診に関する効果的な推進方法の開発に関する検討報告書」という のがございますが、これは辻参考人の資料、資料5の本物でございまして、委員のみの 配布でございます。また、国立がんセンターのがん予防検診研究センターのパンフレッ トがございますので、これも委員のみに配布ということにさせていただいております。  以上でございますが、もし欠けているものがございましたら、事務局の方にお申し出 いただければと思います。 ○垣添座長  よろしゅうございましょうか。それでは早速議題の方に入りたいと思いますが、(1) がん検診に関する検討会の趣旨及び今後の進め方について、まず、事務局の方からお願 いいたします。 ○椎葉課長補佐  それでは、本日の検討会の趣旨などにつきまして御説明させていただきます。資料の 2と資料の3、そして参考資料1をごらんいただければと思います。  まず資料2でございますけれども、この要綱を御説明する前に若干補足をさせていた だきたいと思います。参考資料の1をごらんいただければと思いますが、これはがん検 診の指針でございますけれども、こちらを1枚めくっていただきますと、右上の方に平 成12年3月30日付けの老健第65号ということで、通知が出ておりますが、これががん検 診についてまとめられた指針でございまして、この指針に基づいて市町村でがん検診を 実施しているというものでございます。  これの8ページをお開きいただければと思いますか、8ページの次からがこの指針の 前文でございまして、8ページの次のページに新たなページ数がついて1ページとござ いますが、この1というところの第3に「がん検診」というのがございますけれども、 ここの「がん検診の種類」というのがございますが、先ほど局長のあいさつの中にあり ましたように、がん検診につきましては、胃がん、子宮がん、肺がん、そして乳がん、 大腸がんという5つの臓器の検診を現在実施していただいているというのが前提でござ います。  それでは資料の2に要綱の方に戻らせていただきます。  まず「1.検討会の趣旨」でございますけれども、このがん検診に関する有効性の評 価と精度管理等について検討を行うものでございます。あと「2.検討会の運営」でご ざいますが、老健局長の求めに応じて開催するものでございます。そして「3.検討事 項」でございますが、大きく4つございます。1つは「地域において行われているがん 検診の精度管理に関すること」でございます。それから2つ目は「地域において行われ ているがん検診の有効性評価に関すること」でございます。そして3つ目が「新たなが ん検診の有効性の評価と新たながん検診手法の検討」ということでございます。そして 4つ目、「その他」ということで、従事者の技術の向上やがんの1次予防の方策につい ても検討いただくということです。  がん検診の精度管理について、例示といたしましては、様々な情報から得られる精度 管理の指標の把握と評価、現に行われている都道府県市町村における精度管理の状況の 把握と評価、それから国や都道府県市町村など各ステージがございますので、こちらの 精度管理のあり方の検討を行っていただくというのがまず1番目の精度管理でございま す。  それから、地域において行われているがん検診の有効性評価につきましては、例示と いたしまして、市町村が行うがん検診の実施状況の把握や、これまでの疫学研究に関す る情報収集と論点の整理、そして諸外国の有効性評価に関する情報の収集などがござい ます。  3つ目の新たながん検診につきましては、既にある程度の規模で行われている検診に ついての疫学的な有効性の評価や、それから新たながん検診についての標準的な手法の 検討というようなことでございまして、主にこのがん検診の有効性評価につきまして、 御検討いただきたいということでございます。  それから、「4.その他」でございますが、本日、辻先生に出席していただいており ますが、必要に応じ適当と認められる有識者等を参考人として招致することができると いうことでございます。そしてこの検討会でございますけれども、公開ということで進 めさせていただくということでございます。  それから、併せまして、今後のスケジュール案につきましても御説明をさせていただ きます。資料3でございます。  本年度につきましては、5種類の臓器のがん検診がございますが、主としては乳がん と子宮がんを中心に御討議をお願いしたいというふうに考えております。  まず本日でございますけれども、がん検診の全体的な有効性の評価や市町村の現状に ついて御議論いただきまして、1月中に乳がんと子宮がんについて2回特化した討議、 ヒアリングを行いたいと思います。まずは1月上旬でございますが、乳がん検診につい て御討議、ヒアリングを行いたい。この中では学会や医師会、自治体といった関係機関 の方からいろいろとお聞きしたいということでございます。それから第3回でございま すが、1月の下旬ぐらいをめどに、子宮がん検診について、子宮がんにつきましては、 2つ、頚がんと体がんがございますので、こちらのがんについて御議論をいただくと。 また同じように学会や医師会、自治体等の関係機関のヒアリングも行いたいと。そうい ったヒアリングを経た後、2月に第4回の検討会で乳がん、子宮がん検診について御討 議をいただき、そして3月に取りまとめるという方向でございます。一応予備日という ことも考えてございます。  以上のスケジュールで、こういった検討会の開催要綱に基づきまして討議を進めさせ ていただきたいというのが私ども事務局の案でございます。  以上でございます。 ○垣添座長  どうもありがとうございました。今の事務局からの御説明に御質問とかありましたら お受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。  田中委員。 ○田中委員  資料2の検討事項と今の資料3のスケジュール、ちょっと内容が異なっているように 感じるんですが、これは乳がん、子宮がんに関しての新たな有効性とかそういうことな のか、それとも、全体的ながんについての資料2のようなことについての討議なのでご ざいましょうか、その辺をお教えいただきたいと思いますが。 ○椎葉課長補佐  要綱につきましては、今、実際やっているがん検診すべてについてまとめられており まして、そのうち、今年度につきましては、乳がんと子宮がんを中心に御討議をいただ きたいという趣旨でございます。 ○垣添座長  つまり次年度以降、4月以降残ったがんに関して、それから最後に全体をという、そ ういうスケジュールですね。  今この検討会の開催趣旨と検討事項、それから大体のスケジュールを御説明いただき ましたが、もし御異議なければ、この線で進めさせていただきたいと思います。  続きまして、今度は議題の2に移りまして、(2) がん検診の現状についてということ で2つあります。1つは、がん検診の有効性の評価について、もう一つは、市町村で行 われているがん検診の現状についてということでありますが、この2つの議題に関しま して、辻参考人からプレゼンテーションをしていただきたいと思います。どうぞよろし くお願いします。 ○辻参考人  それでは早速御報告いたします。  まず資料4をごらんください。これは平成12年度の研究事業でありまして、「新たな がん検診手法の有効性の評価」というものです。  1ページ目が全体のまとめとなっておりまして、3ページ目になりますが、報告書の 目的といたしまして、わが国で公的施策として行われ普及しているがん検診と新たな手 法を用いたがん検診について、死亡率減少効果を中心とする有効性を統一的な方法と基 準によって評価をするということであります。  その次のページをごらんいただきたいのですが、この報告書で評価した検討の対象と したがん検診のリストが書いてあります。胃、子宮、卵巣、乳房、肺、大腸、肝、前立 腺、それぞれについて様々な検診方法を評価しております。そして総合評価として、表 2があるわけですが、まず評価判定は、大きく2つに分けるという立場であります。I 群、II群、この2つに分ける。I群につきましては、それぞれのがん検診に死亡率減少 効果が「ある」、あるいは、「ない」と評価するに足りる根拠がある、その場合につい ては、4つに分けております。そしてII群につきましては、まだ現時点では判断しかね る、それほど十分な根拠がそろっていない、根拠不十分であるということで、言ってみ れば判断保留という状況がII群ということであります。そこでI群につきましては、a、 b、c、dという形で、a、bが死亡率減少効果があるとする十分な根拠、あるいは相 応の根拠ということであります。そしてc、dが減少効果がないとする相応、あるいは 十分な根拠があるという形で判定をいたしました。  8ページをごらんいただきたいのですが、表3に各臓器のがん検診、各検査について の結果が書いてあるわけなんですが、検査精度、検診発見がんと臨床診断がんの比較、 死亡率減少効果、経済効率、不利益、そういったことについて何らの研究がされている というものについては「○」を付けまして、それに関する研究結果が見当たらないとい うものについては、「−」を引いております。  こうして見ていただきますと、まず、最も重要と考えております死亡率減少効果につ きましても、十分研究されていないがん検診がたくさんあるんだなということをお気づ きいただきたいんですが、それに基づきまして、最終的な総合評価が次のページの表4 にあります。  「I-a 検診による死亡率減少効果があるとする、十分な根拠がある。」、これは擦 過細胞診による子宮頚がん検診、視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診(50 歳以上) 、便潜血検査による大腸がん検診。  「I-b 検診による死亡率減少効果があるとする、相応の効果がある。」、これは、 胃X線による胃がん検診、視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診(40歳代)、 胸部X線検査と高危険群に対する喀痰細胞診の併用による肺がん検診 (日本) 、肝炎 ウィルスキャリア検査による肝がん検診、以上の4つがI-b。  そして「I-c 検診による死亡率減少効果がないとする、相応の根拠がある。」、こ れはヘリコバクタ・ピロリ抗体測定による胃がん検診、胸部X線検査と高危険群に対す る喀痰細胞診の併用による肺がん検診 (欧米) 、直腸診による前立腺がん検診、視触診 単独による乳がん検診。  そしてII群としましては、まだ十分に判断できない、判断するに足りる根拠、資料が 十分そろっていないというものがこのような形で羅列されているわけであります。具体 的には、血清ペプシノゲン検査による胃がん検診、ヒトパピローマウィルス感染検査に よる子宮頚がん検診、細胞診による子宮体がん検診、超音波断層法(経膣法)による子 宮体がん検診、超音波断層法単独による卵巣がん検診、超音波断層法と腫瘍マーカーの 併用による卵巣がん検診、視触診と超音波検査による乳がん検診、らせんCTと高危険 群に対する喀痰細胞診の併用による肺がん検診、超音波検査による肝がん検診、前立腺 特異抗原(PSA)測定による前立腺がん検診。以上であります。  この詳細につきましては、それ以降のページにありまして、例えば、15ページから先 をめくっていただきますと、それぞれの検診につきまして、具体的な根拠が表にまとま ってありまして、そして結論が詳しく書いてあります。ここは時間の関係で割愛いたし ますので、後でごらんいただきたいと思います。  続きまして、資料5をごらんいただきたいのですが、これは私どもの方で昨年度、日 本公衆衛生協会の委託事業として、させていただいた研究でありますけれども、それに 沿って御報告させていただきたいと思います。  事業組織が右側に書いていますが、1ページを開けていただきますと、その研究班の 班員がございまして、本日の検討会委員の大内先生も入っておられます。  そして1枚開けていただきたいのですが、がん検診の実施状況に関する市区町村実態 調査というものをいたしました。これは全国の三千二百幾つかある市町村すべてに対し まして、郵送でアンケート調査を行いまして、新しく行われています様々ながん検診に ついて実施状況を尋ねたわけであります。その結果、約2,340の市町村から御回答をい ただきまして、地方別回収率としては表1に示すとおりで、東の方は高いというような 状況であります。そしてまた人口規模別といたしまして、A、B、C、D、人口規模別 に分けますと、大都市ほど回収率が高い、そういったデータでございました。  それぞれ説明していきたいのですが、この血清ペプシノゲン(PG法)による胃がん 検診、それの見方ですが、「(1) 平成13年度に、実施しましたか」、「(2) 14年度に、 実施しましたか」、「(3) 14年度に『実施しない』とお答えの場合、15年度に実施する 予定がありますか」とありますが、この中で真ん中の表、(2) をごらんいただきたいの ですが、「平成14年度に、実施しましたか」ということで「実施した」、それが一番左 側を見ていただきますと、全国の市町村のうち、3.4 %、そしてこれは14年度の途中で ありましたので、「今後実施する予定である」とお答えになったのが1.6 %、したがい まして、合計して全国の市町村のお答えいただいた2,334 市町村のうち5%の市町村で ペプシノゲンによる胃がん検診を実施しているという状況であります。  次のページをごらんいただきたいのですが、卵巣がん検診はどうかということで、そ の(2) の「平成14年度に、実施しましたか」というところをごらんいただきますと、一 番右側の全体というところで、「実施した」3.3 %、「実施予定」1.4 %、合わせまし て4.7 %の市町村が卵巣がん検診を実施している。同様に、らせんCT(ヘリカルCT )による肺がん検診につきましても、「(2) 平成14年度に、実施ましたか」というとこ ろでは、一番右側を見ていただきますと、「実施した」4.8 %、「実施予定」0.9 %、 合わせて5.7 %という状況になっております。  次のページをごらんいただきたいのですが、「マンモグラフィによる乳がん検診」、 これはマンモグラフィ単独という意味ではございませんで、マンモグラフィと視触診の 併用というところがほとんどでありましたが、それを実施しているところが「(2) 平成 14年度に、実施しましたか」ということで、「実施した」48.3%、「実施予定」1.1 % ということで、合計いたしますと49.4%、半数にやや欠ける、そういった実施状況でご ざいます。  また30歳未満に対する子宮がん検診はどれくらいの市町村で実施されているかという ことですが、(2) の「平成14年度に、実施しましたか」をごらんいただきますと、「実 施した」19.7%、「実施予定」0.6 %、合わせて20.3%、約2割の市町村でもし既に30 歳未満に対して子宮頚がん検診が行われている、そういった状況でございます。  次のページ、前立腺がん検診、「平成14年度に、実施しましたか」ということで、 「実施した」33.1%、「実施予定」0.6 %、合計33.7%というデータでございます。そ こで考えてみますと、先ほどの資料4で御提示いたしましたように、マンモグラフィ検 診というものがI-a、あるいはI-bという形で総合評価は推奨されている。その反面、前 立腺がん検診につきましては、現在II群ということで、有効であるかどうかということ についての十分な根拠は世界的にもまだそろっていないというような状況でありますけ れども、マンモグラフィ検診の実施状況が全国の市町村の約半数弱くのところでされて いる反面、前立腺がん検診については、全国の市町村の34%近くのところで行われてい る。そういった現実があるということでございます。  次のページをごらんいただきたいのですが、 これは、地方別に実施状況を見たわけ であります。そうしますと、血清ペプシノゲン検査(PG法)よる胃がん検診を実施し ている市町村の割合が高いところは、中国地方8.3 %、続きまして、関東地方5.0 %で ありました。卵巣がん検診につきましては、北海道15%、東北14.8%が高かった。らせ んCT(ヘリカルCT)による肺がん検診、これは四国が13.1%、中部が9.7 %、その ような状況であります。そして、マンモグラフィによる乳がん検診でありますけれど も、最も実施率が高いところは、北海道の73.1%、東北62.1%と続きまして、最も低い ところが中国地方19.5%という状況であります。  また、30歳未満に対する子宮がん検診では中部地方が25%と最も高い状況でありま す。この30歳未満に対する子宮がん検診については、北海道が11%とやや低い以外はほ とんどその地域的な差はないのかなと、そういった状況でございます。前立腺がん検診 につきましては、最も実施率が高いところは四国44.5%、それに対して中部地方では 19.7%ということで、約2倍の開きがある。これが全国での新しい種類のがん検診にか かわる実施率、実施状況でございます。  次のページをごらんいただきたいのですが、次のページは30歳未満に対する子宮頚が ん検診、先ほどの局長のごあいさつでも、若年層で子宮頚がんの罹患率が上昇している といったようなお話をいただきましたけれども、それを裏付けるようなデータを最初に ご紹介申し上げたいと思います。  図1、図2、図3は、全国の地域がん登録の研究班(厚生労働省の研究補助金により まして運営されている研究班)に参加している各府県のデータをもとに全国値として推 定した結果でございます。図1は子宮頚がんの罹患率の動向(1975年以降の状況)です が、浸潤がんは全体に減少傾向だったのですが、1993年ごろから横ばい、下げ止まりと いう状況です。それと、上皮内がんにつきましては、長期的に増加傾向にある。  年齢階級別の動向が図2で、浸潤がんについて年齢階級別に見ております。一番上の 線は40歳代前半、その次が30歳代後半、その下の三角印が30歳代前半、そして四角が25 〜29歳、そして一番下の横ばいになっているのが20〜24歳です。子宮頚がんのうち、浸 潤がんの罹患率は、35歳以上は、比較的長期的に減少傾向です。その一方で30歳代前 半、そして20歳代後半では長期的に増加傾向が見られる。その一方で20歳代前半につい ては、長期的に非常に低い罹患率のレベルで横ばい、維持していると、そういった状況 が認められます。  一方、上皮内がんの罹患率は各年齢層で増加しておりますけれども、特に30歳代前 半、さらに20歳代後半で増加傾向が非常に著明ではなかろうかと。その一方で20歳代前 半につきましては、若干ずつ増加はしておりますが、それほどの増加率ではない、そう いった印象を私は受けたものであります。  次のページをごらんください。子宮頚がん検診の対象年齢は、日本では30歳以上です けれども、実際問題として、20歳代後半については、顕著に増加傾向が見られる、そう いった状況があります。では、欧米ではどうなのか見てみようということで、8ページ の「表1 北米における子宮頚がんスクリーニングの勧告」をご覧ください。アメリカ、 カナダの勧告が出ていますが、18歳あるいは20歳、あるいは初交年齢、そういったとこ ろが開始年齢となっております。また、下の「表2 EC諸国における頚がん検診の形 式」では、ベルギーが25、デンマークが23、フィンランド30といったあたりが開始年齢 となっており、20歳代で開始する国が多数派ではないかという状況であります。  その一方、日本の子宮頚がん検診は、基本的に毎年実施となっていますが、表1・表 2で欧米における受診間隔を見てみますと、2回あるいは3回続けて毎年受けて、2年 あるいは3年続けて陰性だった場合、その後は3年ごと、5年ごとでよろしいと、そう いった様々なガイドラインが出ております。また、EC諸国では3年とするところが多 いようです。終了年齢についても勧告を出している国もありますけれども、その辺を含 めてわが国におきまして、開始年齢は30歳ということでよろしいのかどうか、あるいは 毎年ということが本当に必要なのかどうか、あるいは終了年齢を設定すべきなのかどう か、そういった議論があるのではないかというふうに考える次第であります。  次のページをごらんいただきたいのですが、EBMの立場に立ちますと、マンモグラ フィ検診が有効性に関する根拠が非常に高い訳ですが、その一方で、十分に市町村に普 及していないという問題があるわけです。その問題の一つの背景といたしまして、マン モグラフィの機器が十分現場に普及していない。そしてまた機器があっても、十分に高 い精度で読影、診断できる医師が足りないという問題がございます。そういった意味 で、医師に対する読影講習会ということを、今回の委員でございます大内先生、遠藤先 生をはじめといたしまして、日本乳がん検診学会、あるいはがん研究助成金によります 大内班、遠藤班、そしてまた大内班という中で、読影講習会、マンモグラフィを読影し たいというドクターに対して講習会をしていますが、その一つの例として、今回は、精 密検査を担当する医師に対して読影講習会を行った事例を紹介いたします。  これは私が簡単に御紹介だけ申し上げて、あとでディスカッションの中で大内先生に お話しいただければと思うのですが、10ページをごらんください。これは100 例のマン モグラフィ画像、その中に乳がんの症例、あるいは良性乳腺疾患、あるいは全くの正 常、様々なタイプの写真をランダムに含めまして、それをドクターに読んでいただきま して、感度、特異度を計算する。その結果をもとに、読影医についてA、B、C、Dと いうランクをつけるということです。Aランク、あるいはBランクの方に読影していた だきたいと、Cランク、Dランクの方についてはもう少し研修を受けていただきたい と、そういった趣旨であります。  表4は、講習会を行う前と2日間の講習会を行った後とで、読影試験の結果を比較し ています。講習後、読影の感度が74%から87%に高まる。そして特異度が少し下がるの です。そして表5ですが、A、Bを1回目と2回目で比べていきますと、A判定あるい はB判定、十分読むだけの能力がありますねという方が受講前では、Aランクの方が 6%、Bランクの方が34%、合計40%いらっしゃったわけですが、土日2日間の講習の 後、Aランク、Bランクの方が合わせて74%にまで増えたということです。現在、日本 乳癌検診学会や厚生労働省の研究班の方で、こういった自主的な努力をしているのです が、これを今後公的にオーソライズしてもいいのでないかなというのが私の気持ちであ ります。そしてまた、このようなことをやっているのは、実は乳がん検診、マンモグラ フィ検診だけでありまして、それ以外の検診については、こういった努力はほとんどさ れていないということが現状であります。それによる精度の問題については後ほど申し 上げたいと思います。  次のページ、11ページをごらんいただきたいのですが、これは英語で申し訳ございま せん。つい最近出たアメリカのJAMMという雑誌、アメリカ医師会雑誌につい一月ほ ど前に掲載されたものであります。これはアメリカの乳がん検診とイギリスの乳がん検 診、ともにマンモグラフィを使っているわけなんですけれども、その精度を比較したと いうものです。英語で申し訳ないんですが、Results が、真ん中に書いています。そこ にRecall rates were approximately twice as high in the United States than in the United Kingdom と書いていますが、このRecall ratesといいますのは、日本語で 言うところの要精検率であります。つまり、乳がん検診の要精検率はイギリスに比べて アメリカで2倍高かったというデータでございます。その分だけ乳がんの発見率が高か ったのかといいますと、次に書いていますが、however cancer rates were similar 、 つまり、アメリカの受診者も、イギリスの受診者も、がん発見率は全く差がなかった。 しかし要精検率はアメリカでは2倍も高かった。そして、途中の方に書いているんです けれども、バイオプシー(生検)の方法が、オープンバイオプシーによるものがアメリ カで2倍多かったということも書いてあります。結論として要精検率とオープンバイオ プシーの頻度がアメリカでイギリスに比べて2倍高かった。しかし、がん発見率は変わ らなかった。結果論ですが、アメリカの女性は不必要な精密検査を受け、場合によって は不必要なバイオプシーによって乳房に傷をつけている可能性があるということを言っ ているわけであります。そして、アメリカのマンモグラフィの検診の精度を上げる必要 がある。特にどういうことかというと、がんの発見率を下げることなく、要精検率を下 げることを目指した精度管理が必要であるということが書いております。  現在、アメリカの女性団体もかなりこれに注目しまして、一般メディアも取り上げる ような状況になってきているのですけれども、今アメリカの女性団体は、自分たちが不 必要な精密検査、あるいは不必要なバイオプシーをされていたのではないかと、乳がん 検診の精度を高めろというような要求をしているわけであります。  ここでアメリカとイギリスとの違いについて考えてみたいんですが、がん検診の精度 を評価する場合、プロセスを中心に考える発想と、アウトカムを中心に考える発想があ るのであります。アメリカは、基本的にプロセスを中心に考えておりまして、MQSA (マンモグラフィ・クオリティ・スタンダード・アクト)という法律がありまして、マ ンモグラフィの機器の規格ですとか種類、いろんなものについて事細かな基準をつくっ ております。そしてそれを満たしているかどうかをFDAが各検診機関を実地調査いた しまして認証すると、そういったことをしております。ですから、プロセスを非常に重 視しております。  つまり、アメリカ人の発想の根底にあるものは、いろんなプロセスをきっちりすれ ば、自ずから結果として精度の高い検診が行われるのだろうという考えですが、それに 対してイギリスの方は、プロセスをほとんど考慮することなく、むしろアウトカムだけ を考えております。アウトカムとは具体的にどういうことかといいますと、それぞれの 検診実施機関において、要精検率が何%だった、がん発見率が何%であった、そしてそ の発見されたがんに占める早期がんの割合は何%だった、そういったことについても具 体的な数値基準を決めております。そして、数値基準をスタンダードから大きく逸脱し た検診実施機関に対しては、その理由を解明するために立入検査をする。そういった徹 底的なアウトカム管理をしているわけであります。プロセス管理でいくか、アウトカム 管理でいくかということで考えますと、このデータを見る限りはアウトカム管理の方が よかったのかなということになりまして、今、アメリカでは一般メディアでも、そうし てまた、がんの関係者、あるいは一般の臨床医の中でも非常にホットな議論が展開され ているようであります。  次のページをごらんいただきたいのですが、これは平成9年度の研究事業といたしま して、公衆衛生協会からの委託という形で私どもが実施させていただいた研究がござい ます。これは「成人病検診管理者指導協議会のあり方に関する調査研究」で、がん検診 の精度評価について検討することが目的であります。  13ページをごらんください。これは平成8年度の老人保健事業報告をもとに計算して みたものなのですけれども、図1の各種がん検診における要精検率。胃がん、子宮頚が ん、子宮体がん、肺がん、乳がん、大腸がん、その当時老人保健事業として行われてい たがん検診それぞれについて、要精検率を都道府県別に見ていきますと、これほど大き な差があるということです。例えば、胃がん検診で見ますと、要精検率が一番高いとこ ろが二十何%、一番低いところが7%ぐらい、そういった形でかなり差がある。  14ページを開けていただきますと、表1から表4までで要精検率、例えば胃がん検診 ですと、表1の一番左ですが、平均が13%に対して下2行を見ていただきますと、一番 低い県では7.58%、一番高い県では20.58 %、つまり胃がん検診の要精検率が同じ日本 であっても、一番低い県と一番高い県では3倍違う。子宮頚がん検診、次をごらんいた だきますと、一番低い県では0.28%、一番高い県では1.96%、7倍ぐらいの格差です。 肺がん検診、一番低いところで0.16%、一番高いところで7.9 %、これほどの較差があ ります。  表3をごらんいただきますと、がん発見率ですが、これも一番左側、胃がんをごらん いただきますと、平均が0.15%ですが、一番低いところでは0.03%、一番高いところは 0.25%、8倍も違う。そういった差があるわけであります。  そこでひとつ、極めて単純な発想なのでありますが、要精検率が高いところは、がん 発見率も高いだろうということが当然の発想として出てくるわけでありますけれども、 それを実際に描いてみようということで、次のページをごらんください。  こちらをごらんいただきますと図5といたしまして、それぞれのがん検診につきまし て、横軸が「要精検率」、縦軸が「発見率」となっております。胃がん、子宮頚がん、 様々ながん検診が6種類書いているわけでありますが、例えば、胃がん検診をごらんい ただきますと、相関係数が0.209 ということで、有意な相関はないという状況でありま す。統計学的に有意な相関があったのは大腸がん、相関係数0.527 、非常に高い相関が あります。大腸がん検診、便潜血検査は機械によるものですから、全国的に標準的なも のがあるからだろうと。その一方で胃がんをはじめとするほかのがん検診では、読影の 精度、あるいは要精検とする基準が都道府県で違うのではないだろうか。そういう意味 では、ある都道府県では要精検率が高すぎて、先ほどのアメリカの乳がん検診と同様 に、要精検率が高すぎて、本来不必要であったかもしれない精密検査を受けている方が 多い県もあるかもしれないし、逆に要精検の基準が厳し過ぎて見逃されている方がいら っしゃる県もあるかもしれない。  次のページが、その当時の我々の発想だったわけですけれども、例えば要精検率、精 検受診率、陽性反応適中度について全国平均よりも著しく高い場合、低い場合にどうい ったことを考えればいいかというようなことを羅列してみたわけでありますが、これは ほとんど生かされていないというのが現状であります。先ほどのアメリカの例などを見 まして、やはりこういった形でのアウトカムに基づく標準化ということをしていく必要 があるのだと意を強くした次第であります。  次のページをごらんいただきたいのですが、市町村が検診実施体制を自己点検・評価 するためのチェックリストということについて、平成10年の研究事業として出しまし た。これは胃がん検診のチェックリストでありますけれども、実は宮城県の成人病検診 管理指導協議会、その中の肺がん検診部会におきましては、肺がん検診についてこのよ うなチェックリストを県内のすべての市町村に送りまして、幾つこれを満たしているか ということを毎年調査しております。これは3年前からやっておりまして、3年前に初 めて調査いたしましたらば、72市町村のうち、18ぐらいでこの体制整備が不十分である という結果が出たわけであります。成人病検診管理指導協議会肺がん検診部会におきま しては、そのことを各市町村に個別に指導いたしまして、来年も同じ調査をする、その 時は基準を満たしていない市町村の名前を公開するということを打ち出したわけであり ます。その結果、今年で3年目になりますけれども、ほとんどの市町村で整備が進んで いるという状況があります。  このチェックリストで考えていただきたいんですが、これは市町村が検診実施体制を 自己点検・評価するということでありますが、実は市町村だけではできない内容になっ ていまして、特に2の「受診者および記録管理」、あるいは(3) 検診資料(X線フィル ム)の保存とか、3の「診断技術管理」、読影医、放射線技師、そういったことについ てチェックすることになっているんですが、実は私どものねらいとしては、チェックリ ストを通じて、検診実施機関の質を考えることができるのだと。一般財源化の中で市町 村の検診に対する財政基盤が厳しくなっていく中で、そしてまた、検診実施機関が検診 料金のダンピング競争を行っている地域もある。そういった意味では、費用と精度、質 とのバランスをとった検診実施機関の選定、そういったことを市町村が行う上では、こ のようなチェックリストに十分答えてくれるような検診機関がいいのですよ。そういっ た意味も含めてチェックリストを出したつもりであります。  大分時間になりましたので、間もなく終わりますが、19ページをごらんいただきたい と思うのですが、昨年度の私どもの研究班での検討をもとに提言を書かせていただきま した。  要点のみ申し上げますけれども、子宮頚がん検診につきましては、25歳以上では増え てきているということで、25歳以上を検診の対象値例とすることを提言する。特に妊婦 検診の際に必ず子宮頚がん検診を受けていただく。そしてまた、その後もこれからは受 け続けた方がいいですよ、そういった教育も含めてしていただく、そういったことが重 要ではないかということを提言いたしました。また、欧米等の状況を考えながら、対象 年齢の上限あるいは受診間隔について、私どもの班では結論が出なかったわけですけれ ども、留意すべきではないかということです。  2番の「子宮体がん検診」につきましては、現時点では有効性を示す、あるいは無効 であることを示す、そういった適切な根拠、あるいは研究というものは一切ないんだと いうことを再確認した上で、今後有効性を検証する的確な研究をきらんと一刻も早くし なければいけない。  3番としまして乳がん検診ですが、50歳以上については従来どおり(視触診、マンモ グラフィ併用の隔年実施)で結構ある。40歳代についても、視触診、マンモグラフィ併 用を隔年で導入すべきではないだろうか。しかし、この年齢層は、dense breastと言い まして、マンモグラフィで写りにくいがんも多ございますので、必要に応じて超音波検 査の併用について検討すべきではないだろうか。また、30歳代について乳がん検診が本 当に必要なのかどうかというような議論を提起させていただいたわけです。  次のページをごらんください。4番といたしまして、先ほど局長のお話にもございま したが、がん検診の受診率は欧米に比べて低いというデータがたくさん出ておるわけで あります。そういった意味で、1つは、受診率の算定に関して国民生活基礎調査を活用 することが必要だということ、そして第3段落ですが、「欧米では、たとえば乳がん検 診の受診率が70%以上に対しており、しかも近年、乳がん死亡率が減少を始めている」。 これはアメリカでは1990年から減少しておりますし、現在、EU諸国の過半数で乳がん 死亡率が減少しているわけであります。 その一方で、日本は乳がん死亡率が増加の一 途をたどっている。この違いは何なのかということを考えますと、これは医療水準の違 いではないだろう。むしろ、がん検診の受診率の違い、欧米では受診率60%以上の国で は乳がん死亡率が減少しております。現在の日本のデータが、参考資料6の5ページ目 に書いているのですが、国民生活基礎調査をもとに推計した受診率は、乳がん検診で 17.3%となっております。日本の乳がん検診の受診率17%、それに対して欧米の受診 率、60%、70%、国によっては90%以上というような状況がございまして、そういった 国では国全体での乳がん死亡率の減少という効果が出ている。  受診率17%の国で検診の効果を期待できるかというと、これは望むべくもないわけで ありまして、受診率を高める取り組みが必要ではないだろうかと。その意味で、これは あくまでも私見でございますが、「そこで、抜本的な受診率向上策の立案・推進を行う ことが急務である。それには、がん検診を医療保険より行うこと(いわゆる予防給付)、 がん検診の実施主体を市町村・事業所から保険者に移行すること」と書かせていただき ました。さらに、レセプトの記載情報をもとに、要精検率をオートマチックに把握でき る、あるいは、がん検診の結果につきましても、レセプト情報をもとにオートマチック に把握できる。そしてまた、情報の移転等々をめぐる個人情報の保護、利活用といった 問題につきましても、保険者として行う限りは、そういった問題からもすべてフリーに なりますので、このような大胆なシステム改革の考えが必要なのではないかと考えた次 第です。  そしてまた、受診者の利便をさらに改善する、あるいはがん検診に対する正確で有益 な情報を国民に提供する、そういった対策についても議論が必要です。今から10年、20 年前は日本はがん検診の先進国と言われた時代があったわけですけれども、乳がん検 診、あるいは子宮がん検診、大腸がん検診、この3つにつきましては、完全に受診率に 関しては欧米から比べると後進国になっているわけでありまして、いずれ、そういった 影響がくるだろうと懸念されるわけでありますので、がん検診のシステムに関する抜本 的な改革案が必要だというふうに考えております。  また、検診の精度管理につきましても、先ほど申し上げたとおりでございますので、 もう時間も過ぎておりますので割愛させていただきます。以上でございます。どうもあ りがとうございます。 ○垣添座長  辻先生、大変広範なレビューをありがとうございました。  ただいま辻先生から御報告いただきました内容に関しまして、御質問あるいは御発言 がありましたらお受けしたいと思います。 ○土屋委員  今の資料5の11ページ目の米国と英国との比較は大変おもしろいレポートだと思うん ですが、英国と米国の女性というのは、年齢だけ合わせて比較対照していい母体なのか どうか。人種構成的なものとか、肥満度とか、その辺が果たして本当に比べるべき対象 例であるのかという、そういう議論はないのでしょうか。 ○辻参考人  確かにおっしゃるような問題は多々あるのだろうと思います。ただ、人種の違いです とか、肥満度とか、そういった違いで要精検率が2倍になるほどの差を説明できるかと いうと、恐らく違うだろう。やはりイギリスとアメリカとの間で、乳がん検診の精度が 違っているのだろうと思います。これは確かにアメリカの2か所でのモデル事業と、イ ギリスの全国民データを比べただけというラフなものですが、その種の重要な問題をさ ておいても、それだけでは説明つかないような検診精度の差があるのではないだろうか という論調であります。 ○土屋委員  もう1点よろしいですか。今、このレポートのことだけではないんですが、要精検率 が高いか低いかを論ずるときに、精密検査というものの定義が各検診によって違うので はないか。特に大きな違いは、精密検査が侵襲的な検査なのか、非侵襲的な検査なのか によって、高い、低いという判断がかなり違ってくるんじゃないかという気がするんで すけれども、その点はいかがでしょうか。例えば乳がんの場合に腫瘤が見つかって、こ れはバイオプシーをしないとだめだ、これはかなり侵襲度が高い。ところが、肺がんの 場合に、単純写真で見つけたものをCTを撮る、これはほとんど侵襲性がないと。そう いうものによってかなり臓器の温度差があるんじゃないかという気がするんですが。 ○辻参考人  おっしゃるとおりだと思うんです。臓器や検診方法によって要精検率は違うだろうと 思います。ただ、同じ検診に関しては、同じ日本でやる限りでは、要精検率はそれなり の範囲に分布するはずだし、要精検率とがん発見率との間にはそれなりの関連はあって しかるべきだと思うものです。 ○土屋委員  ばらつきがあるのは問題だと思うんですが、高い方がいいのか、低い方がいいのかと いう根本的な指標としての価値が臓器によってかなり違うかなという気がしているんで すが。 ○辻参考人  おっしゃるとおりです。それは全くそのとおりと思います。ですから、それぞれの臓 器、それぞれの検診について、どの程度の要精検率が妥当な範囲なのか、データをもと に検討して、標準化への方向を検討すべきではないかと思っております。 ○笹子委員  先ほどの同じ11ページのものですが、これは、偽陰性率はこの本文に書いてあるのか どうかわかりませんが、コンクルージョンのところに余り出ていないと思うんです。そ の社会(ソサエティ)の中で見逃すということが、例えばアメリカであれば、訴訟にな って負けるというようなもののインパクトがどれだけあるかという、価値観というもの の影響というのはかなりあると思うんです。そういうのがイギリスとアメリカじゃかな り違うという気がするので、こう単純な比較だけではいかないんじゃないかという気が 僕はしたんですが。 ○辻参考人  偽陰性率につきましては、この論文には載っておりません。この著者たちがディスカ ッションの中で述べているのですか、なぜアメリカとイギリスで要精検率が2倍も違う のだろうということで、その要因が挙げられているのですが、第一に挙がっているの が、今まさに先生がおっしゃったように、アメリカは医療訴訟が非常に多いので、医師 が見逃しを非常に恐れるが余り、ほんのちょっとの所見でも要精検と判定する、その結 果、要精検率を高めている、そういった可能性があるんじゃないかということが1つあ りました。  2つ目としては、イギリスとアメリカと比べて読影医の読影枚数が違う。イギリスの 方が一桁多いというデータです。3つ目が、精度管理について、イギリスではセントラ ライズされた形で国全体としてのレギュレーションを行っている、そういった3つぐら いの要因が出ていましたけれども、まさに先生がおっしゃるみたいに、最初の要因が関 係あるかなと思います。 ○笹子委員  これは全然話が違うんですが、20ページにある提言の4番目の一番最後のところで、 検診実施の主体を市町村から保険者にという話があって、レセプト等から情報をコント ロールする方が自動的に確実に入ると記載されています。これに関して、これが実際に 本当に個人情報保護に抵触しないかというと、それはまだ不確定であると思います。現 状において、レセプトにおける個人情報というものの目的というのはかなりはっきりし ていて、こういう目的で使っていいという合意はどこにもないということですので、そ の辺はまだ検討しなきゃいけないところだと思います。 ○辻参考人  現在、今の問題として、がん検診の精度に関して一番問題になっておりますのは、例 えば、市町村が精検を実施したところに結果を問い合わせても、「これは患者のプライ バシーだ」ということで教えていただけない、あるいは逆に、精密検査実施機関が検診 の実施機関に対して検診のときの写真なりデータを見せてくれというふうに頼んでも、 「これは受診者のプライバシーだからだめだ」というような形でかなりガードがかたく なってきていて、個人情報の保護というところでがん検診にかかわる各市町村、検診機 関、精密検査を実施する機関の間で、情報の移転、流通というものがかなり制限される よう制限されるようになっています。その結果、精度管理ができないという問題が生じ ているんですね。それに対する一つの回答としては、例えば保険者がそれにかかわる限 りは、保険者の枠の中だけで検診結果と精検結果とのリンケージですとか、そういった ことができますので、その情報の移転にかかわる問題は起こらないので、その方がやり やすいのではないかなということを考えたわけです。もちろん、先生がおっしゃるよう に、レセプトというのは基本的には診療報酬の請求のための目的に使われているわけで すので、そういったことを別の形で請求外に使用できるかということについては、もち ろん、これから実際に行うに当たっては慎重な議論が必要かなというふうに考えており ます。いずれにしましても、個人情報の保護と利活用という相反する要素を調和させ て、検診の精度を高め、受診者の利益を高めるには、何らかの制度改革が必要なんだと 言うことを申し上げている次第でございます。 ○笹子委員  今の件とも関わるんですけれども、実際に個人情報保護法が動いてくる状況の中で は、各施設の人たちが検診事業をやっている人に対して、患者の情報をそういう形で扱 おうとするのは当然のことであって正しい方向である。だけど、検診の方から見れば情 報収集をどうやってよくするかということは重要です。やはり検診を受ける人たちへの インフォームドコンセントをもうちょっとしっかりするという意識があれば、受益者と いうか、検診を受ける人自身からフィードバックを受ける方法だっていろいろある。あ るいは、その時点で同意を盛り込んでしまってということはできるので、そういう方法 も捨ててしまうという必要はないというふうに思うんです。 ○辻参考人  それに関して時間の関係で申し上げなかったんですが、資料の21ページ、最後のペー ジをごらんいただきたいのですが、21ページの上から数えて10行目ぐらいですが、「個 人情報の保護と利活用の高度な調和(情報インフラの整備)を図ることが必要である」 と書いております。  現在、市町村、検診実施機関、精検実施機関の間で受診者の情報が円滑に伝達されて いるとは言いがたい状況がございます。しかし、市町村や検診実施機関が精検結果、治 療内容、予後、そういったことを把握することはがん検診の精度管理にとって非常に重 要な必須事項であります。同様に、精検実施機関は検診時のデータ、画像を含めて、そ れを閲覧する権利を有すると考えるべきだというのが私の考えであります。これら情報 伝達を円滑化するための措置といたしまして、ガイドライン、指針、通達、それに加え て、今、先生からもおっしゃっていただきましたような、受診者からのインフォームド コンセント取得、そういったことが求められるのではないだろうか。  さらに地域がん登録が行われている自治体におきましては、がん登録データと検診デ ータをリンケージするような形で検診の精度(感度・特異度)、あるいは発見がん患者 の予後などを定期的に把握できるような体制整備が望ましい。そういった形で書き込ま せていただいたのですが、まさにこの検診・精検などの個人データにつきまして、どう して情報移転しなければいけないのかということ、その必要性、そしてまた個人情報保 護の状況、そういったことを国民が周知した上で自らコンセントを与えていく、そうい ったような状況をもちろんつくっていくべきなのだと考えております。 ○垣添座長  私からですが、20ページの乳がん検診の欧米での受診率は70%と報告されましたね。 それから日本での17%というのは、これはマンモグラフィでいくと、この数値は半分に なりますか。 ○辻参考人  欧米における受診率でありますが、これは過去2年以内にマンモグラフィを受けた方 というような形になります。ですから、この乳がん検診、日本のデータは過去1年間で すので、欧米と比べるには2倍するべきなのかどうか、どう考えればいいのでしょう か。 ○大内委員  ただいまの御質問は、マンモグラフィ受診した方のいわゆるカバー率だと思います。 この17.3%といいますのは、ほとんどのケースが視触診単独かと思います。平成13年度 の日本対がん協会の全国のデータベースから見ますと、105 万人ほど受診されていまし て、そのうちの28万人がマンモグラフィ併用です。全国的には300 万人以上受けていま すので、恐らく対がん協会ベースの方がマンモグラフィ検診の受診率が高いかと思いま すので、推測ですけれども、全国では50万人ぐらい。そうしますと、全国では恐らく受 診対象者の2%程度しかマンモグラフィ検診を受けていないということであります。 ○垣添座長  そうすると、欧米とマンモグラフィという観点からすると、70%対17.3%以上のもっ と大きな違いがあるというふうに理解すべきなんですね。  それともう一つ、先ほど受診率の報告をされましたけれども、この17.3%というの は、市町村の検診を毎年受けている方のパーセンテージですよね。 ○辻参考人  これは参考資料の(6)をごらんいただきたいんですが、これは老人保健課の方で用意 していただいたものなのですが、「がん検診の統計資料」というものがございます。3 ページ目に「がん検診の受診者数及び受診率」というものが書いてあります。これは老 人保健事業報告でございますので、市町村が実施主体となって行っている検診を受けた 方の数、そして対象者に対する割合ということで、乳がん検診ですと、12%ぐらいの数 字になっておりますが、これは御存じのとおり、職域の方は定義上省かれてしまいます ので、その辺を補正する必要があるということで、同じ資料の5ページをごらんいただ きたいんですが、「国民生活基礎調査」、これは厚生労働省が実施していまして、全国 から無作為抽出された何十万人かの方々に対してアンケート調査をしているものであり ます。したがいまして、職域とか、地域の違いはなく全国民から無作為抽出されたもの です。それで見ますと、あなたは去年1年間で乳がん検診を受けたことがありますかと いうような形での設問で、17%の女性が「はい」というふうにお答えになられた。これ は30歳以上での数字であります。 ○垣添座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。田中委員。 ○田中委員  まず1点は、資料5の7ページの30歳未満における子宮がん検診のこの直近の数字が どのようになっているか教えていただきたいと思います。というのは、私が限られた地 方で見る腫瘍登録のデータなんかで見ますと、もう少し若年化ということが顕著になっ ているのではないかと思います。ですから、これは97年ですが、その後がどうなってい るか、もしおわかりだったらお教え願いたいと思います。  2点目は、乳がん検診のことが言われましたが、マンモグラフィという、その機械の 台数とか、その精度自身が欧米とは違うのではないか。例えば、子宮がんに関していい ますと、住民の方が受けようと思えば自由に受けられる。ところが、マンモグラフィの 台数とか、受け入れ制度はどのようになっているかということも少しお教え願えればと 思います。 ○辻参考人  第1点の直近のデータということですけれども、今、持ち合わせておりません。後日 文書でお答えしたいと思います。  第2点につきましては、むしろ私よりも厚生労働省の研究班をしておられます大内先 生の方が適切かと思うのですが、お願いしてよろしいでしょうか。 ○大内委員  マンモグラフィの日本医学放射線学会の仕様基準を満たした台数が全国で約1,500あ ります。基準を満たさないものも含めますと恐らく3,000 近くあると思います。その中 で実際にマンモグラフィ検診に使っていいかという評価基準を研究班で定めました。こ れはあくまでも国の基準としてではなく、研究班の基準として定めました。現在はマン モグラフィ検診精度管理中央委員会というものを組織しまして、その中で各施設から上 がってくるフィルムあるいは機器のチェック等を行っていますが、現時点で約200 台ほ どチェックしたところです。約80%の施設が合格しておりますが、こういったところが その整備を努めているところですので、先生の言われるように、まだ検診目的にマンモ グラフィが使用される場合の具体的な基準を満たしている施設というのはそう多くない と思います。  ただし、今の全国的な流れの中で、マンモグラフィの機器そのものの購入に当たって は、実際に検診目的に使う場合は、この基準でなければいけないということを、既に3 年ほど前から研究の方で勧告書、あるいは日本医学放射線学会から勧告を出しています ので、今、地方自治体等で使われている検診の施設、その機器については、整備が整い つつあると思います。 ○清水委員  資料4の9ページ、表の4についてのお尋ねなんですが、ここではI-aのところで、 視触診とマンモグラフィの併用による乳がん検診は死亡率減少効果があるとしてありま して、I-cのところに、視触診単独による乳がん検診は死亡率減少効果がないというふ うになっております。この表の中にはマンモグラフィ単独の効果について説明がないの ですが、視触診単独によって効果がない、視触診とマンモグラフィの併用による検診は 効果があるということは、マンモグラフィ単独だけで効果があるというふうに解釈して よろしいんでしょうか。 ○大内委員  大変貴重な御質問です。マンモグラフィ併用としてありますのは、これは日本で行わ れてきました検診が昭和62年から老人保健事業の第2次計画の中で乳がん検診、視触診 法で始まりましたので、それに組み合わせる形でマンモグラフィが入っております。現 状の日本における導入を考えた場合に、マンモグラフィ併用で進めた方が導入しやすい ということで、あえて視触診+マンモグラフィという形でまとめたわけです。  先生の御質問のマンモグラフィ単独の有効性評価はどうなっているかといいますの は、これは欧米のRCTが7つほどありますが、米国、カナダを除いた5つのトライア ル、ヨーロッパのトライアルはほとんどマンモ単独です。その中で有効性が得られてい ます。  それから、米国においての検診のモダリティですけれども、マンモグラフィ+触診と なっていますが、マンモグラフィ陰性で触診で陽性だった乳がん症例については、偽陰 性とするという定義があります。したがって、モダリティの中に触診は組み込まれてい ますけれども、マンモグラフィで陰性であれば、これは検診陰性という判断をされてお りますので、米国、カナダにおきましても、マンモ単独で走っているというのが現状で あります。 ○清水委員  ありがとうございました。 ○櫻井委員  恐らく乳がん検診については、各論的に議論するんだと思うんですが、今日、そうい う議論に入るんですか。 ○垣添座長  御指摘のとおり、まず総論を議論いただき、ついで乳がん検診、子宮がん検診に関し て各論に入ります。 ○櫻井委員  今の問題は意見があるんですが、また後で触れることにさせてもらって、今日の資料 の範囲と全体的なことで。  まず、資料5のこの調査はがん検診の実施状況に関する市町村実態調査、ちょっとそ ういう説明があったわけですけれども、これは今普通に行われている、例えば胃がん検 診であれば胃のレントゲン検査とか、内視鏡とか、そういうことは聞いていないんです ね。このペプシノゲン法だけを聞いた調査なんですか、これは。 ○辻参考人  おっしゃるとおりです。 ○櫻井委員  今やっているのはどういう方法で、これをやっていますかとかということではないわ けですね。 ○辻参考人  違います。 ○櫻井委員  そうすると逆に、ペプシノゲンによる胃がん検診というのも両方やっているかもしれ ないんですね。レントゲン検査もやりながらペプシノゲンもやっているかもしれない。 それとも、ペプシノゲンに変えちゃったというふうには必ずしもとれないんですね。 ○辻参考人  事務局配布の参考資料(6)の1ページをごらんいただきたいんですが、がん検診市町 村実施率ということで、例えば胃がん検診ですと99.9%です。胃がん検診をやっていな いところは4市町村だけでした。ですから、基本的にはすべての市町村が、従来のバリ ウムによる検査をした上でペプシノゲン法をやっているのかなというふうに解釈してお ります。 ○櫻井委員  というふうに、これはそう考えられますね。そうすると、全部肺がんなんかもそうな んですか。肺がん検診というのは受診率が違うから、これはヘリカルCTの場合にはダ ブっているかどうかはわかりませんよね。 ○辻参考人  それは聞いておりません。 ○櫻井委員  これはわからない? ○辻参考人  わかりません。 ○櫻井委員  なるほど。それと、その前に聞かなければいけないのは全体像ですけれども、全体の ここに地方別と人口規模別の回収率が書いてあるんですが、全体の回収率というのは、 大体想像ですと70%ぐらいですか、地方別で70%とか60%とかあるから。 ○辻参考人  おっしゃるとおりです。 ○櫻井委員  大体の回収率は何%ですか。 ○辻参考人  72%です。 ○櫻井委員  約3割、1,000 近い市町村が答えていないんですね。 ○辻参考人  はい。 ○櫻井委員  そうなると、どこの市町村かわからないけれども、3分の1ぐらいが答えていない。 大体こういうアンケート調査というのは、質問されたことをやっていないところは答え ないですから。これは想像ですから、そこまで言ったら言い過ぎだけど、大体アンケー ト調査の結果というのは、公衆衛生学会の先生が発表されたのを聞いたことがあるんで すけれども、何となく不都合とか、答えにくいものは答えないですから、28%という と、三千何百の市町村のうちの約1,000は答えていないので、この実施率というのが、 必ずしもこのまま当てはめていくというのは、もしかしたら誤解というか、間違いを生 じるかなという気がするんですね。もちろん、それは答えていないんだからどうしよう もないから、答えている中でという、72%の市町村の回答の中でこうだったということ の理解で議論をしないといけないかなということを思います。  続けてよろしいですか。同じ資料の16ページですか、いろんな受診者数、要精検率と かあって、これは御説明いただいたけれども、これについて何も議論はないんですけれ ども、それから後でここに指摘があったように、問題はこの表でAの受診者数というと ころの前の前に、仮に対象差というか、人口というか何か知りませんけれども、Tなら Tとすれば、TからAへ行くところの受診率ということが、もう既に御指摘があります けれども、大問題なんだろうと思うんですね。だから、こういうシェーマというか、絵 をかくと、ひとつ受診者の前に対象者数というのか何というのか僕は正確な表現はわか りませんけれども、地域であれば、そこの人口になるのか、つまりは対象数があって、 受診率がどのくらいかということがここで議論されるようにきちんとこの絵もかいてお いてほしいなということと、それは事実後ろで指摘されていますけれども、特にこれも 各論のところでまた申し上げますけれども、さっきのたまたま数字が出された乳がん検 診について、欧米が70%以上で、日本では十何%という受診率がある。逆に言えば83% の人が何ら検診を受けていない人がいるということですから、そっちが大問題であっ て、後ろの要精検率とか、適用率とか、それは非常に大事だけれども、8割以上が受け ていないんだから、そこは精検率も適用率も何も関係ない人たちが8割以上もいるんで すよという問題がもっと大きな問題としてあるんだということで考えておかなければい けないということだと思うんです。  それで、それの解決策として御提案も確かにあったんですけれども、予防保険を導入 して、そこで管理すればというのも一つの御提案ですが、実現は非常に難しいですね。 保険制度の中にそれを入れるということは、今の医療費でさえ減らせと言われていると ころに、どこから財源を持ってくるのかとか、そういう話もあるわけですし、事実、例 えば乳がん、子宮がんをこれからやるというところだと、国保へ入っている人が恐らく 保険でも対象者が多くなるはずなんです。そうでない人ももちろんいっぱいいるわけで すけれども。保険者といっても、市町村保険者というのは、市町村と同じだからという こともあるから、必ずしもこれでうまくいくかどうかわからないなという気がするのが 1つと、むしろ、やっぱり受診率の低さを保険にして補うのはとても無理だと思いま す。必要なのは、簡単に言えば、がん検診が一番身近にあって簡単に受けられる体制。 もちろん、それは受けるべきだという教育も必要だけれども、受けやすい体制、受けや すいものをつくるということが大事なんだというのが基本にあるだろうと思います。  とにかく今、がん検診の一番の問題点は、これはどう考えても受診率を上げることだ と思うんです。そう言っては失礼だけど、要精検率がどうだとか、適用率がどうという 以前に、受診率を上げなかったら、残りの人たちは全部それは放っておかれているとい うか、放ってあるということになるわけで、これも各論のときに述べますけれども、 私、内科医ですけれども、我々内科医みたいなところでも、我々がちょっと触っただけ でも、「えっ、こんなものどうして放ってあるの」というような乳がんの人が来ている わけです。それは放置されたままになっている。むしろ、検診を受ける必要があるんだ ということのプロパガンダがまず第一、それをどうするかが一番の大問題だろうと思い ます。 ○垣添座長  どうも貴重な御意見をありがとうございました。特に受診率の問題は御指摘のよう に、この検討会でも非常に重要な検討課題になると思いますので、これは次回以降十分 に御議論いただこうと思います。  それで、時間の関係もありますので、一応、辻参考人の方からは資料4、5、あるい は6に沿って御説明いただきましたが、これまでの議論は概して乳がん、あるいは子宮 がんの検診の話に集中しておりましたけれども、一応、本日は総論でありますので、胃 がんあたりからもう少し何か御意見がありましたら御発言いただければと思います。 ○渡辺委員  資料5の13ページと15ページなんですが、大腸がんの検診は便潜血ですし、それから 子宮体がん、頚がんは細胞診ですので、割と客観的な指標だろうと思います。それにし てはばらつきが、その体がん、頚がんは大きい。それから体がん、頚がんで乖離してい るのは、体がんは要精検率と発見率が比較的パラレルである。ところが頚がんでは、そ れが相関しないというあたりの原因は何かということが1つと、それから、逆に乳がん は要精検率は割とそうばらつきはないんですけれども、そういう意味でこのマンモグラ フィの検診の精度管理が行き届いているのか、今、日本でこれをやった対象者であるの かということ、それにしては今度発見率にばらつきが出てきている、この辺がどうも僕 は頭の中で理解できないところなんですが、教えていただきたいんですけれども。 ○辻参考人  最後の御質問ですけれども、乳がんにつきましては、これは平成8年当時でございま すので、マンモグラフィはほとんど行われていないです。ほとんどすべてが視触診単独 法ということで御理解いただきたいと思います。それから、子宮がん、大腸がんの各検 診ですが、私はこの実態を見て驚いたのですけれども、むしろ、これにつきましては、 それぞれの先生方もいらしてますので、先生方からコメントをいただければなと思うん ですが、いかがでございましょうか。 ○安達委員  子宮頚がんの要精検と実際の発見率の乖離に対する推測としましては、恐らく頚がん の要精検というものが細胞診でクラス4とか5ということではなくて、それよりはるか に頻度の高いクラス3の段階で、要精検と連絡が行くためと思います。クラス3です と、ほとんどが悪性のいわゆるがんではなく、いろいろな程度の異形成ということなん ですけれども。今後のフォローアップとか、もしくは高度異形成のレベルで種々の治療 とか対応がなされるので、いろんなことを兼ねて要精検に入るのは意味のあることだと 思うんですね。恐らくそういうことで、頚がんの要精検率と発見率の間に相関が悪いの かな思っております。 ○笹子委員  この表というか、こういう方法論そのもの全体についての感想なんですが、これは対 象がホモであって、方法がホモのときには全部パラレルになるんですけれども、例え ば、都道府県とか見ても、胃がんの罹患率なんてかなり違うわけですね。ヘテロのもの で、こうやって要精検率と発見率を比べることがどれぐらい意味があるのか。つまり、 罹患率の差が相当影響しますよね、という気がして見ていたんです。 ○辻参考人  罹患率の差がありますので、そうである以上は、もしも要精検とする判断基準がすべ ての都道府県で等しいとすれば、基本的には要精検率は罹患率と相関するはずです。発 見率というのは罹患率により決まりますので、その場合は、当然ながら、要精検率と発 見率はあるレンジまでは相関するはずです。その関係が見られないことを問題にしてい る訳です。 ○櫻井委員  相関の15ページのところですけれども、もちろん、これはちゃんと計算されているか ら何とも言いようがないんですが、ここから先は素人の言い方ですけれども、例えば肺 がん、左下のところを見ますと、どっちかというと、右の方に3つぽつぽつぽつという 三つ星が並んでいて、47のうちこの3つ、こういうことをこういうところで言ったら非 科学的なんですが、この3つを除いて考えると、この線の方向が全然違うような気がし てしょうがないんですけれども、そういうことはないんでしょうか。だから、何かそう いう一つ一つのうんと離れているところについての何かの検討がないと、これをただ、 47のプロットをして、それをするということの意味合いがちょっと、統計学的にどうか わかりませんけれども、教えてほしいなと思うんです。 ○辻参考人  まさにおっしゃるとおりだと思います。例えば肺がんですと要精検率が4%を超すと ころが3つありますけれども、この3つを外してしまいますと、かなり直線が上がって きて、相関係数が多分有意になるだろうと思います。全くそのとおりだと思います。た だ、そのときに、3つの県を外すということがどういう意味があるのかということを考 えていきますと、特に今回、このときに個別にその辺を見ようというよりは、むしろ47 都道府県の地域格差の実態を見たいということだけでしたので、こういった実情なのか なというようなところだったわけです。 ○櫻井委員  その辺が統計学的には僕はわからないんですが、今度は逆に言うと、外そうと今僕が 言った3つをつないでも非常にいい相関になっているんですよね。ちょうどこの3つの 相関の線を引いて、それを外すと、残りもちょうどパラレルで同じぐらいの線が引けそ うな気がして、大変素人の意見ですけれども、でも、現実にそういう気がするので、こ の3つが何か特別な共通の事情を持っていれば、そこはそれなりに精検率と発見率は相 関して、その他の44は普通のやり方でやって、それなりに相関しているというようなこ とにもなりかねないなということなので、統計のマジックみたいなものに引っかかると ころは幾つもあるような気がしてしょうがないんですね。罹患率もあるし、それから受 診数と数なんかの重みも恐らく違うのだろうという、都道府県単位ですから、数は別に その比率で同じだと言われれば、そうなんでしょうけれども、人口的にも1,000 万人以 上いるような東京都と、100 万人ぐらいの県とかというところの重みがどうだとかいろ んなことがあるんじゃないかなと思うんですけれども。 ○安達委員  資料5の3ページのところに卵巣がんの検診というのがあるんですけれども、ここで 答えていらっしゃる検診の内容というのは何なのでしょうか。卵巣がんというのはもち ろん腹腔内の奥にあるわけですので、骨盤内の奥ですので、検診そのものの有効性とい うのも問題かと思うのですが。 ○辻参考人  誠に申し訳ないのですが、今回の調査では、卵巣がん検診を実施したかどうかしか聞 いておりません。具体的な方法までは調査しておりませんでした。 ○田中委員  私がお答えいたしますと、経膣プローブによるエコーの診断が主で、それにプラス腫 瘍マーカーと、この2つを組み合わせたのが試験的に行われているというようでありま す。 ○垣添座長  今日まだこれまで余り議論されておりませんけれども、肺がんの検診に関して何か御 発言いただくことはありましょうか。どうぞ土屋先生。 ○土屋委員  私、肺がんが専門なんですが、肺がんの他の検診とちょっと絡めて先ほど櫻井委員の 言われた受診率ですね。今日御報告いただいたのは、市区町村で行われているがん検診 ということになりますと、医師会がお手伝いしてやるのが多いと思うんですが、私ども 肺がん専門家にとっては非常に便利なんですね。というのは、主体が60代、70代の病気 ですから、これは市区町村でやられると非常に効率的に受診する。データも大部担って おりますが。  今日伺っていて乳がん、子宮がんの低年齢化が問題ですね、そうしますと、これは就 業者が主体になってきますので、市区町村で特に就業を終わって地域の開業医の方のと ころでの検診ではなかなか受診しにくい。恐らく職域での検診というようなことを考え ないとなかなかこの辺がカバーできないのかなというのが今日の印象です。 ○垣添座長  次回以降、具体的な各論で議論していく中で今受診率を上げるというときに、対象の 設定の仕方というところで非常に重要な問題だと思います。ほかに肺がんに関してよろ しいでしょうか。あとは大腸がんの話が余りなかったですが、何かありましょうか。 ○渡辺委員  大腸がんは、基本的に2日法もしくは3日法の便潜血陽性反応だと思いますが、それ によって見落とされる進行大腸がんが30%ぐらいございます。ですから、それをカバー すると、さらに死亡率の減少につながるだろうというふうに考えます。 ○垣添座長  今おっしゃったカバーするというのはどういう意味でしょうか。 ○渡辺委員  最近では、たしか今年のニューイングランド・ジャーナル・メディスンだったと思い ますけれども、シグモイドスコピーと便潜血を併せるということによって、さらに推進 率を上げられるというデータが出ておりますし、それも間隔としては毎年ではなくて、 5年ごとでいいというデータが出ておりますので、受診の間隔はまた別の議論ですけれ ども、そういう組み合わせが既に欧米では行われようとしていますし、その辺も今後議 論していかなきゃいけないだろうと思います。 ○斎藤委員  今の見逃される進行がん30%というのは、それはどこのデータですか。 ○渡辺委員  5年ぐらい前のたしか厚生省だったと思うんですけれども。 ○斎藤委員  そのデータは測り方にもよりますが、一般的ではないと思います。追跡法つまりネガ ティブテストの人を、がん登録で追跡してフォールスネガティブを把握する方法でみま すと、早期がんを入れてももっと少ないです。 ○渡辺委員  何%ぐらいでしょうか。 ○斎藤委員  たとえば最初の久道班(昭和63年)の進行がん症例で検討したものでは検査キットで 異なりますが、2日法で15%かそれ以下だと思います。本来の感度の測り方である検診 受診者での測定では早期がんも含めて15〜20%位です。 ○渡辺委員  失礼しました。30%の早期がんを見逃して、20%の進行がんを見逃すという、20%の 進行がんを見逃す可能性が便潜血反応だとあるということだと思います。 ○斎藤委員  その場合に、今も申し上げましたが、症例を集めて検討したのか検診受診者集団で 測ったのかどうか、その辺の分母と分子がはっきりしないと比較性がありません。後者 が本来の感度に近いものです。  今はちょっと、そのような細かい話をする場ではないと思うんですが。 ○垣添座長  今日はここまでにしておきましょう。 ○櫻井委員  それは将来のこととして、今の御議論のデータを両方出していただくことにしたらど うでしょうか。当然、大腸がんも個別にやるわけですね。 ○垣添座長  そのとおりです。 ○櫻井委員  ぜひ、それは事務局も覚えていて、先生方から報告を。大変重要な議論だと私は思い ます。 ○垣添座長  おっしゃるとおりだと思います。 ○斎藤委員  それに関しては、久道班の報告書に既存のデータは収載してあると思います。 ○垣添座長  検診の総論という形でほかにご意見がありましたらお受けしたいと思います。どうぞ 斎藤先生。 ○斎藤委員  総論ということですから、大もとの方法論についてひとつコメントします。ひとこと で言うといわゆるエビデンスに基づいたアプローチであるべきということです。受診率 ということが出てきましたが、高い受診率を達成している米国、あるいはヨーロッパの 諸国ですね。これらで行っている施策による検診というのは、子宮がん、乳がんと、そ れから最近は大腸がん、これに限定されているわけです。いずれも有効性の示されてい る検診です。例えば、米国では3月が大腸がん認知月間、それから、10月が乳がんの認 知月間となっていて、そこで国中でキャンペーンを広げて受診率を高める努力をしてい る。それに呼応して乳がんの意識も高まってきましたし、受診率がパラレルに上がって きた、死亡率が下がってきたという経緯があります。それから、大腸がんも今遅まきな がら受診率が増えてきています。  ここでわが国との違いを見ると、わが国は有効性のエビデンスの有無に拘らず総花的 に検診をアピールしてきた。その結果受診率の向上は見られていないわけです。死亡率 を実際に下げるには、死亡率減少効果がはっきり示されたものにプライオリティを与 え、集中的にやるという原則が重要です。ですから、この検討会での議論はエビデンス に基づいて行うのを原則とすべきことを確認したいと思います。  以上です。 ○垣添座長  ありがとうございました。櫻井委員どうぞ。 ○櫻井委員  おっしゃることはわかるんですけれども、私がさっき受診率をまず上げるべきだと申 し上げた中には、今の受診率で有効性を議論しているのと、もし70、80%の人が受けて いることの場合の有効性というのは僕は違ってくる可能性が十分あると思っているの で、それは各論のところでまた申し上げたいと思っているんです。なぜなら、乳がん検 診というのが、特に今度問題がありそうですから申し上げますが、乳がん検診というの は、自己検診という視触診検診が自分でできる検診ですから、検診を受けるか受けない かというところでものすごく内容が違ってきて、恐らく今、乳がん検診を受けている人 は、自分でやる視触診で陰性だった人が受けているというところがあるわけなんです。 自己検診を全然やっていない人が8割ぐらいいる。全然やっていないとは言いませんけ れども、大体検診を受けないという人の意識として、検診は受けないけど自己検診は一 生懸命やっているという人は少ないですから、大体検診を受ける人が自己検診をやって いるんですけれども、その辺の問題があるので、その辺の議論をしなきゃいけないなと いうのはさっき言ったつもりなんです。また、それは各論のところで意見として申し上 げます。 ○遠藤委員  現在まで受診率等が非常に大きな問題だということで議論されていまして、私も全く 同感でございます。今回のデータに関しましては、市町村主体ということの結果が出て いるわけでございますが、職域検診を含めた検診全体としての把握、また検診実施主体 機関の精度管理、これらの実態が全く表に出てこないという体質ですね、このあたりの ところもこの検討会で議論していく必要があるのでないかと思っています。 ○垣添座長  おっしゃるとおりでしょうね。つまり、受診率の向上と、それから受診率の内容の把 握というのが非常に大きな問題だろうと私も認識しております。  どうぞ櫻井委員。 ○櫻井委員  そういうことにも関係しているんですけれども、もう一つは、今、斎藤先生からあり ましたけれども、検診という制度が諸外国といろいろ比較されていますけれども、どう いう制度基盤で行われているかというのを、本来は知りたいなと思うのです。日本では 昔から公衆衛生というような形から出発して、それが今普通に行っている市町村の検診 は、老人保健法という法律の中に組み込まれた。ところが、最初はそれはある程度国の 責任だったんだけれども、一般財源化ということで市町村の責任に転嫁して、そういう ことで制度上の動きがあって、一部の地域では、これは市町村の責任ですから市町村の 自由なのかもしれないけれども、いろんな内容の変化とか、つまり、負担額を増やすよ うな形で受診しにくくしているような制度が起きてくるとかということが日本の中でも あるわけです。そうすると、今、斎藤先生からお話があったようなアメリカではどう だ。アメリカは公衆衛生で全国で国がやっているわけではないわけですし、恐らく保険 者の中でHMOならHMOの中でそういうものを保険料によってはやってくれるとか、 いろいろな差があるんじゃないかと思うんです。  そのほか今、議論の中で出てきたのは、イギリスとアメリカはどうという話がありま したけれども、イギリスというのは、医療制度的にはほとんど国営医療という形でやっ ているんですけれども、検診をどういう形でやっているか私はよく知らないんですが、 そういうことはどうなっているとか、そういう制度基盤みたいなことが、結構、受診率 等には絡んでいるんじゃないかという気がしているんですけれども、その辺は資料があ れば教えてほしいなと思うんです。 ○垣添座長  大変重要な問題だと思います。どうぞ、辻参考人。 ○辻参考人  私が知っている限りのことをとりあえず御報告したいと思います。アメリカでは、65 歳以上の方が加入する国の保険、メディケアというのがありますが、そのメディケアの 中で子宮がん検診と乳がん検診については、それぞれ3年に1回、2年に1回無料で受 けることができます。予防給付です。それから、先ほど櫻井委員がおっしゃったよう に、民間の医療保険に入っている方は、HMOですとか、そういった方では基本的に検 診を無料で受診できます。そして、加入者に対しては保険の方で受診の勧奨を強力に 行っているということがあります。  では、アメリカで保険に入っていない方ですが、これはBreast and Cervical Cancer Mortality Prevention Actという法律がございまして、その中で子宮がん検診と乳がん 検診については無料で検診を提供するという法律がございます。そういった形で、基本 的には受診料を無料化するという形で進んでおります。  もう一つ、北欧に関しましては、基本的に社会政策が充実していますので、これは国 の施策として行う。しかも無料でやるということが基本だそうであります。たしかフィ ンランドだったと思うんですが、5年ほど前に実験的なことをしまして、受診者に対し て幾ばくかの費用をとるということをしましたらば、その年から受診率が落ちたという データもあって、また無料に戻したという、一つのエビデンスを構築したという話も聞 いております。  イギリスですと、ナショナルヘルスサービスという形で医療が提供されているわけで すが、その担当医は基本的にプライマリー・ケア・フィジシャンですので、子宮頸がん 検診の検体採取(パップスメア)は自分の外来でとって、細胞診は専門のところに送 る。そしてマンモグラフィについては、専門の機関に送るということをしてます。  実はイギリスの話を聞いておりますと、受診率が80%というマジックナンバーがある そうでして、ナショナルヘルスサービスの担当地域での乳がん検診なら乳がん検診の受 診率が80%を超したらば、そのドクターにボーナスが来るというような話を聞いたこと がありまして、一つの受診勧奨のインセンティブではないかと思います。  ここまで言いましたので、日本についても一言だけ。欧米各国は基本的には受診者の 受診料を減らす、あるいは基本的に無料にするという形で、経済的なバリアを完全に外 しまして、そして、例えばアメリカですと、民間の医療保険の中で強力に受診勧奨す る、あるいは先ほどのイギリスのようにドクターに受診勧奨のインセンティブを与え る、そういった形で受診者に対しては経済的なバリアを撤廃する、そしてプロバイダー に対していろんなインセンティブを与える、そういった形で受診率を上げることが現実 に起こっており、それ相応の結果を出しているのですが、翻ってわが日本はどうかと申 しますと、例えば、一般財源化に伴いまして、がん検診に対する市町村の財政基盤が厳 しくなっていく中で、実態としては、市町村として受診者を増やすということは、むし ろ市町村自身の財政負担を増やしてしまうことになるわけです。受診勧奨することが市 町村にとってインセンティブにならないという現実があるわけです。その辺の深いとこ ろから制度改革について御議論いただければなと思います。  以上です。 ○安達委員  検診の受診率を上げるということは大変大切なことでそれが基本だと思います。例え ば、先ほどの大腸がんの検診につきましては、潜血反応だったら検査を受けたいけれど も、シグモイドスコープを組み合わせたらば受けたくないというような方たちもいらっ しゃると思うんですね。ですから、今後の問題としましては、精度の高いものを組み合 わせたスクリーニングでの検診と、受診者が受診しやすいような検診と2つを提示し て、どちらかを検診者が選ぶというような形にもっていくとか、そういうような方向も 必要なんじゃないかと思います。  私、産婦人科医なのでいつも思うんですが、胃がんとか、ほかのがんのスクリーニン グ検診は受けても、産婦人科は結構ですとおっしゃる方が今だにいらっしゃるんです ね。産婦人科の受診というのは非常に敷居が高いと言われているんです。しかし、特に 若い年代で子宮頚がんが増えているということを踏まえますと、妊娠したときが最初の 産婦人科の検診という方も大変多いですし、妊娠以外は来ないという方も実際にいらっ しゃるので、妊娠のときの一番はじめに子宮頚がんのスクリーニングをすることを無料 にするというようなことも有効だと思います。さらに、もっと年齢を下げて必ず20歳、 あるいは資料の中に25歳が出ていましたが、25歳では必ず検診するようにというキャン ペーンをするとか、何かそういう形をとらないといけないと思います。受診する患者さ んの気持ちへの配慮とか、受けやすい機会の数を増やす施策が一番根本に必要じゃない かと思います。  以上です。 ○垣添座長  大腸がんのことに関しては議論のときに御提案いただければと思います。どうぞ、櫻 井委員。 ○櫻井委員  辻先生と安達先生から大変貴重な御意見をいただいたと思います。先ほど検診率を増 やすことが重要で、そのためということを少し発言したのですけれども、1つは、医師 会で各地区の医師会を通してがん検診についての一般財源化後の影響の調査をしたとこ ろ、大体実施していること自体はあんまり変わらなかったんですけれども、悪い方とい う言い方はよくないのかもしれないけれども、我々としてマイナス方向に働いた変化は 何かというので一番多かったのが、一人一人の負担額の増加なんです。実施はするけれ ども、負担額を増やすという形をとった市町村があった。そんなに多数ではありません けれども、少なくとも調査したときにそれがあったということは、つまり今、辻先生が 御指摘のように、やはり一般財源化によって市町村が苦しんで、確かに全体の数が増え ても市町村の予算は増えますし、だから、そういうことを抑えようと思っているとは思 いませんけれども、受診者に対して負担額を増やす形をとっているということが大問題 なのです。国が補助金を出すのはいけないという一部の人たちの意見がありますけれど も、我々とすれば、こういう国民の健康管理みたいなものは国が責任を負うべきだと 思っているので、がん検診の一般財源化をやめて、きちんとした国の予算化をしてやれ ば、先ほどから言っている受診率の把握等もきちんとできるのかなということも含めて お金の問題が1点。  それからもう1点は、今、安達先生からおっしゃっていただいた、私もさっきちょっ と言ったんですけれども、やはり受診率を上げるためには、受診することの有効性を住 民にわかってもらうことはまず必要なんだけれども、さらに受けやすい検診体制をつく るということが一番大事なんです。当たり前ですけれども、検診というのは何でもない というか、健康というか、本人は少なくとも健康と思っている人を受診させるわけです から、それをどうやって動かすかというのは、受けやすさということが非常に大きな要 素になると思うので、その辺は今度各論のところでも一つ一つ議論していくべきだと思 います。 ○垣添座長  ありがとうございました。笹子委員、それから田中先生、それで議論は終わらせてい ただきます。 ○笹子委員  日本の受診率が低いことに関しては、胃がんのデータを海外で示すと驚かれます。ど うもちょっと記憶があんまりはっきりしていなくて申し訳ないんですけれども、オラン ダとかでは、検診に行く日はペイドホリディといいますか、有給で休めるというような システムがあるように聞いたように思います。そうすると、結構みんな行くんじゃない かという気がします。 ○垣添座長  受診率向上のところでまた議論いたしましょう。田中委員どうぞ。 ○田中委員  受診率あるいは精度管理というときには、1つは、事業所検診及びドック等の検診の 数をぜひ入れて一緒に討議しないと、私も受診率は実際もっと高いと思っております。 ですから、せっかく役所も厚生労働省になったわけでありますから、情報のデータをま ずどこかで一緒に討議する場所をつくっていただきたいと、このように思っておりま す。以上です。 ○垣添座長  ありがとうございました。私もかねてから感じていることですが、日本の受診率は非 常に低いと言われていますけれども、市町村の検診以外のデータもできれば次回以降、 どこかで示していただければ大変ありがたいと。それから、先ほどどなたかの御発言で 欧米とわが国の実態に関しても、もしデータが準備できれば、どこかでお示しいただけ ればありがたいと思います。  本日は初めての会合でしたが、大変活発な御議論で誠にありがとうございました。一 応 本日はこれで閉じさせていただきますが、事務局の方から何か連絡事項がありまし たらお願いします。 ○麦谷老人保健課長  どうもありがとうございました。次回は乳がん検診について、関係団体からのヒアリ ングを行いますので、それを踏まえて御議論いただくということで、日程につきまして は、もう既に先生方から実は出していただいておりますが、具体的な日にちにつきまし ては、また私どもから御連絡をいたしたいと思います。  事務局からは以上です。どうもありがとうございました。                                      以上                         照会先:老健局老人保健課                         担当者:西村泰人                         連絡先:03-5253-1111 内線3946