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資料No.1

雇用均等分科会報告(案)

 少子・高齢化の急速な進行等我が国の経済社会をめぐる状況が大きく変化している中で、男性も女性も、働く人全てが、主体的にその能力を発揮していくことが求められており、職業生活と家庭生活のバランスがとれた多様な働き方が選択できるようにしていくことの重要性が高まっている。
 こうした中で、仕事と子育ての両立支援については、平成3年の「育児休業等に関する法律」の制定により設けられた育児休業制度を中心として、平成9年には深夜業の制限の制度が設けられ、平成13年の制度改正では、時間外労働の制限の制度が創設されるとともに、育児休業終了後に、労働者が子育てに必要な時間を確保しつつ働き続けることができるようにするため、勤務時間短縮等の措置の対象となる子の年齢の引上げや子の看護休暇制度の努力義務化がなされる等、その充実が進められてきたところである。
 このような取組が進む中で、育児休業の取得率は、女性では64%(平成14年度女性雇用管理基本調査)まで上昇したが、一方で、仕事を続ける希望を持ちながら、妊娠、出産を機に退職する女性も依然として存在する。また、男性の育児休業の取得状況や勤務時間短縮等の措置の導入状況を見ても、男女ともに育児をしながら働き続けられるような職場環境が実現されているとは言い難いのが現状である。
 他方、夫婦出生力の低下という新たな現象が見られるなど、我が国の少子化は一層深刻な問題となっているが、その要因の一つとして、仕事と子育ての両立の負担感が軽減されないことが指摘されており、政府が今年3月に取りまとめた「次世代育成支援に関する当面の取組方針」などの次世代育成支援対策の中心的な課題の一つとしても、仕事と子育ての両立のしやすい環境づくりが要請されている。
 とりわけ、育児休業の取得が進む中で、保育サービスとの関係で育児休業制度をより利用しやすい仕組みとすること、職場復帰後の子どもの病気やけがの際に対応できるようにすること等の課題が指摘されている。このうち、子の看護休暇の問題は、平成13年の制度改正に際しても、「当面は」努力義務とすべきとの結論に至ったものであるが、第156回国会においても、次世代育成支援関連法案の審議において、その請求権化を検討することが決議されている。
 さらに、期間を定めて雇用される者の多くが契約の更新を繰り返すことにより一定期間継続して雇用される等雇用形態の多様化が進んでいる状況を踏まえて、期間を定めて雇用される者の仕事と子育ての両立支援についても、そのあり方を考えることが求められている。
 一方、介護の問題については、平成7年に創設された介護休業制度が平成11年4月から施行されたことに加え、平成12年4月からは、介護保険制度が施行されており、介護をとりまく状況は大きく変わっているが、少子・高齢化が進む中で、介護をしながら仕事を続けるための環境整備も引き続き重要である。
 以上のような点を総合的に考慮すると、下記の考え方に従って、仕事と家庭の両立支援策の充実のために必要な法的整備を行うことが適当である。
 あわせて、次世代育成支援対策推進法に基づく事業主行動計画の策定、実施等により、男性の育児休業の取得促進や、勤務時間短縮等の措置の導入促進を含め、職場における取組を積極的に進める必要がある。
 また、子育てを社会全体で支援していくことが必要であり、そのためには、仕事と家庭の両立がしやすい職場環境の整備のみならず、改正児童福祉法及び次世代育成支援対策推進法に基づいて地方公共団体が策定する保育計画及び行動計画に則って、民間活力の活用も含め、低年齢児を中心とする保育所等の受入れ児童数の増加を図るなど待機児童問題の解消に向けた施策を真摯に推進すること、病後児保育などの多様なニーズに合わせた保育サービスの充実を図ること等の取組が強く求められるものである。

 期間を定めて雇用される者についても、雇用の継続という観点から、申出時点において、同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者であり、かつ、子が1歳に達する日を超えて雇用が継続することが見込まれる者(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者を除く。)については、育児休業の対象に加えることが適当である。
 同様に、介護休業についても、申出時点において、同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者であり、介護休業開始予定日から3か月を経過する日を超えて雇用が継続することが見込まれる者(介護休業開始予定日から3か月を経過する日から1年を経過する日までに雇用関係が終了することが申出時点において明らかである者を除く。)については、介護休業の対象に加えることが適当である。
 なお、期間を定めて雇用される者を育児休業及び介護休業の対象とした場合、休業の申出や取得を理由として雇止めを行うことは不利益取扱いである。一方、休業の申出や取得にかかわらない雇止めについては、別途その可否が判断される。

 育児休業の期間については、子が1歳に達するまでの間を限度としているが、国及び地方公共団体が待機児童問題の解消に向けた取組をこれまで以上に積極的に推進することとあわせ、育児休業制度についても、雇用の継続を進め円滑な職場復帰を図る観点から、その基本的枠組みを維持しつつ、子が1歳に達する時点で保育所に入れない等特別の事情がある場合については、子が1歳に達した後6か月を限度として、育児休業ができるようにすることが適当である。
 なお、育児休業を再度取得できる事由として、配偶者が死亡したこと等により子を養育することができなくなった場合を追加することが適当である。

 介護休業を取得できる回数については、介護休業が、労働者の家族が要介護状態になったときに介護に関する長期的方針を決めるまでの間、当面家族による介護がやむを得ない期間について休業ができるようにすることにより、雇用の継続を図る制度であるとの観点から、同一の対象家族1人につき、要介護状態ごとに1回、通算して3か月まで休業できるようにすることが適当である。

 子を養育する労働者が子育てをしながら働き続けるためには、労働者にとって避けることができない子どもの病気やけがの際の対応も大きな課題であり、労働者が申し出れば、病気やけがをした子の世話をするための子の看護休暇を取得できる法的枠組みを作ることが適当である。
 その内容については、子の病気等により休むことを余儀なくされる日数、年次有給休暇の付与日数等は労働者により様々であるが、最低基準としては、制度の普及状況等も考慮し、対象となる子については小学校就学前までの子とし、労働者1人について、年5日とすることが適当である。

 短時間勤務制度等労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置については、業種、業態等の多様性を考えると、選択的に措置を講ずることを義務づける現行の枠組みを維持することが適当であるが、子育てをしながら働き続けるためには、現実に働く時間を短縮できる短時間勤務制度を推進することが有効であり、この考え方を明らかにすることが適当である。


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