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2003年12月5日
第10回「健康食品」に係る制度のあり方に関する検討会

経済活動に係る規制の考え方についてのメモ

一橋大学 松本恒雄

 目的による規制の分類
  (1)経済的規制
 需給調整の観点からの競争制限的規制
 参入規制、設備規制、輸入規制、価格規制
免許、許可、認可、届出
  (2)社会的規制
 社会的見地からの規制
 安全、健康、環境、高齢者・障害者
  (3)自由な競争を確保するための規制・公正な市場を形成するための規制
 インフラストラクチャー
独禁法規制
ディスクロージャ(開示規制)
  (1)と(2)の区別は相対的、運用により相互に代替可能
  業界振興行政と規制行政が未分離であることから生じる
  消費者保護は従来(2)として位置づけられてきたが、最近は(3)の視点も

 規制主体による規制の分類
  (1)行政規制
 手法
 法規によるもの
行政指導によるもの
税法や補助金による誘導
 機関
 主務官庁による規制(縦割り規制)
 参入規制・価格規制
行為規制
開示規制
 独立した行政機関による規制(横割り規制)
 公正取引委員会
オンブズマン
  (2)刑事規制
 刑法独自
行政規制の担保措置
  (3)民事規制
 民事ルールによる司法的規制
 製造物責任法
消費者契約法
独禁法違反の民事差止請求権
 競争事業者による
消費者による
消費者団体訴権(検討課題)
  (4)自主規制(self-regulation)
 個々の事業者による
業界団体による
第三者機関による
  (5)共同規制(co-regulation)
 事業者・消費者・行政が共同してのルール形成と執行

 時期による規制の分類
  (1)事前規制
 参入規制
 予防の確実性
競争制限のおそれ
  (2)事後規制
 行為規制
 実効性
違反監視のコスト

 規制緩和と行政の役割の変化
 規制緩和は「行政による事前の経済的規制」の緩和
規制の廃止ではなく、規制のやり方の変化
 「規制改革」regulatory reform (OECD)
 最近では、responsive regulationといった新たな概念も提起
 規制改革の下での行政の役割の変化
 振興行政と規制行政の分離
 医薬品行政
食品行政
主務官庁による縦割り規制から横断的規制へ
 事前規制(参入規制)から事後規制(行為規制)へ
 明確なルール・基準の設定
 安全性の問題についてはなお事前規制
 リスクアナリシスに基づくリスクマネジメントとしての規制
基準認証制度の緩和
 政府認証から民間第三者認証や自己適合宣言へ
仕様規定から性能規定へ
 事後チェック機能の強化
 食品におけるトレーサビリティ
リコール制度の強化
行政によるチェック能力の限界
他のモニタリングチャンネルとしての
 消費者 → 申出権
従業員 → 公益通報者保護制度
事業者団体 → 公正取引協議会
 違反に対する制裁
 罰金額の引き上げ
事業者名の公表

 規制と消費者利益
 消費者の利益・権利
 (1)安全・健康・衛生・環境
(2)選択(品質と価格)
(3)公正な取引条件・取引環境
(4)苦情処理・被害救済
 消費者問題はなぜおこるか
 情報の量と質の格差 主として(2)の問題
交渉力格差 主として(3)の問題
生身の人間であることからくる被害回復不可能性 主として(1)の問題
 表示規制
 食品衛生法  (1)の問題
JAS法 (2)の問題
 
 GMOの問題の位置づけはあいまい
 (2)(3)の利益は、自由で公正な競争が実現することによって達成される
 消費者政策と競争政策の同質性
ここでの消費者のための規制は、社会的規制ではなく、競争のための規制
正確な商品情報が適切に提供されることは競争を促進し、消費者の利益
 (1)の利益は、競争に還元できない

 消費者利益確保のための規制のあり方
 取引に係わる利益((2)(3))
 自由で公正な競争を促進するための規制
事前のルール設定と事後的チェック
 表示規制
 表示事項の義務づけ
実際よりも優良・有利な表示の禁止
 行為規制
 法執行
 行政に限定する必要はない
私人(消費者・消費者団体・競争事業者)による執行
  高齢者被害や高額金融商品被害のような回復が困難なもの
  なお参入規制等の事前規制が必要
 安全に係わる利益((1))
 事前規制が必要

 「健康食品」
 安全の面
 食品衛生法による一般的食品の安全規制
「新開発食品」としてのプラスαの安全規制
 取引の面
 効能効果の虚偽・誇大表示
 金銭的損失のみならず
健康被害につながるおそれもある
 正確な情報を適切に提供させるための規制
 メーカーの出したくない情報を出せる表示の義務づけ
虚偽・誇大・不正確な表示の規制の強化


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