03/11/28 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会　平成１５年１１月２８日議事録


               薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録


１．日時及び場所
　　平成１５年１１月２８日　１４：００～
　　医薬品医療機器審査センター

２．出席委員（１２名）五十音順
　　井　上　和　秀、　岩　﨑　　　学、◎河　村　信　夫、　小　嶋　茂　雄、
　　堺　　　秀　人、　櫻　井　秀　也、　首　藤　紘　一、　谷川原　祐　介、
　○長　尾　　　拓、　長谷川　紘　司、　藤　上　雅　子、　村　勢　敏　郎
    （注）　◎部会長　○部会長代理
　　他　参考人１名
　 欠席委員（５名）
　　金　井　　　淳、　永　井　良　三、　南　部　鶴　彦、　早　川　　　浩、
    樋　口　輝　彦

３．行政機関出席者
　　岸　田　修　一（審査管理課長）、　　平　山　佳　伸（安全対策課長）、
　　豊　 島 　　聰（医薬品医療機器審査センター長）、
　　青　木　重　仁（医薬品医療機器審査センター企画主幹）、
　　赤　川　治　郎（医薬品医療機器審査センター審査第一部長）、
　　森　　　和　彦（医薬品医療機器審査センター審査第二部長）、
　　辻　村　信　正（医薬品医療機器審査センター審査第三部長）　他

４．備　　考
　　本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。





○審査管理課長　それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部
会を開催いたしたいと思います。本日はお忙しい中御出席いただきまして、ありがとう
ございます。17名の委員のうち12名の先生方に御出席いただいておりますので、定足
数に達しております。
　まず委員の異動でございますが、国立国際医療センター総長の矢崎委員が御退任され
まして、東京大学大学院医学系研究科内科学専攻循環器内科教授の永井良三委員が新た
に本部会に御参加いただくことになりました。本日は御欠席でございますけれども、御
報告申し上げます。また、本日の議題２の参考委員として、熊本大学医学部小児科教授
の遠藤文夫先生にお越しいただいております。では河村先生、以後よろしくお願いいた
します。
○河村部会長　それでは本日の審議に入りますが、審議に入る前に事務局から配付資料
の確認と、資料作成に関与された委員の報告をお願いいたします。
○事務局　それではまず資料の確認をさせていただきます。資料１～５までがあらかじ
めお送りした資料でございます。本日の席上配付資料といたしましては、議事次第、当
部会の座席表、当部会の委員名簿。それから資料2-2といたしまして、議題２のファブ
ラザイムの添付文書修正版をお配りしております。資料４といたしまして、「希少疾病
用医薬品の指定の取消しについて」の差し替え版をお手元にお配りしております。資料
６といたしまして、「医薬品第一部会審議品目の薬事分科会における取扱い、毒薬・劇
薬の指定の要否及び生物由来製品/特定生物由来製品の指定の要否について(案)」でござ
います。資料７といたしまして、本日の審議品目の専門委員の名簿をお配りしておりま
す。資料８といたしまして、「歯科領域における鎮痛消炎剤の臨床評価の取扱いについ
て」というものをお配りしております。席上配付資料としては以上でございます。お手
元にございますか。
　平成13年１月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関与された委員の確認で
ございますが、議題３の資料作成に永井委員、藤上委員、村勢委員が関与されておりま
す。そのほかの議題については、関与された委員はいらっしゃいません。以上でござい
ます。
○河村部会長　議題３ですか。
○事務局　はい。議題３の糖尿病の薬でございます。
○河村部会長　だそうでございます。本日は審議事項が３議題で、報告事項が２議題と
なっておりますが、 議題２の方から先にさせていただこうかと思います。遠藤先生に遠
くからお越しいただいておりますので、先にこちらの方をやらせていただきたいと思い
ます。事務局の方から御説明をお願いします。
○事務局　それでは議題２、資料２、医薬品ファブラザイム点滴静注用５mg及び同35mg
の輸入承認の可否等について審査センターより御説明申し上げます。
　ファブリー病は、リソソームの加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼＡの活性が低
下、又は欠損していることにより発症する先天性代謝異常であり、本剤の有効成分アガ
ルシダーゼ ベータ(遺伝子組換え)は、ファブリー病の酵素補充療法を目的として米国ジ
ェンザイム社で開発された、遺伝子組換えヒトα-ガラクトシダーゼでございます。また、
我が国のファブリー病患者数は200人程度とされており、有効な治療法がないことより
本剤は1999年８月に希少疾病用医薬品に指定されております。なお、海外におきまして
は、本剤は2001年８月にＥＵで承認されたのを始めとして、現在31か国で承認を取得
しております。
　本日の配付資料７の２ページに示すように、本品目の専門協議では遠藤委員、大野委
員、川西委員、仙波委員、田中委員、奈良間委員、新見委員、西川委員、吉村委員、山
口委員が専門委員として指名されております。
　本品目の規格及び試験方法、安定性、毒性、薬理、吸収、分布、代謝、排泄に関して
提出された資料の内容には特に問題はないと判断いたしましたので、臨床試験成績につ
いて述べさせていただきます。まず有効性に関してですが、男性ファブリー病患者13例
を対象とした国内第II相試験において、本薬１mg/kg隔週20週間投与により、腎組織中
の毛細血管内皮細胞及び皮膚の毛細血管内皮細胞におけるグロボトリアオシルセラミド
(以下ＧＬ-３)の蓄積を有意に低下させ、ELISA法により測定した腎組織中のＧＬ-３及
び血漿中ＧＬ-３濃度を有意に低下させることが示されました。
　また、ファブリー病患者58例を対象とした海外第III相試験においても、本薬１mg/kg
隔週20週間投与により腎臓毛細血管内皮、及び皮膚毛細血管内皮細胞におけるＧＬ-３
蓄積について、本薬投与群ではプラセボ群に対し有意に高い除去効果が示されておりま
す。しかしながらＧＬ-３蓄積除去効果ではなく、本疾患に対する治療効果としての真の
エンドポイントである腎機能等の臨床症状の改善効果を確認するには至っておらず、更
により長期の投与期間が必要と考えられたことから、市販後特別調査においてその有効
性を確認することといたしました。また、心臓のみに病変が認められる亜型、いわゆる
心ファブリー病に対する有効性は確立していないことから、適切な市販後臨床試験が必
要と判断しております。
　次に安全性に関してですが、本剤の投与によるIgG抗体産生率は国内第II相試験で85
％、海外第III相試験で83％と国内外共に高頻度であり、投与時反応も高頻度で認められ
ましたが重篤なものはなく、そのほとんどが投与速度の調整や抗ヒスタミン剤の前投与
で対処可能でありました。しかし、少数例ではありますが、IgEが発現し臨床試験から
脱落した例が認められていることから、抗体産生については市販後調査において更に情
報を収集することが必要と判断しました。
　以上のとおり、審査センターでの審査の結果、ファブリー病に対する本剤の有用性は
認められ、可能な限り全投与症例を対象とした市販後使用成績調査、小児も含めた長期
使用による有効性及び安全性を確認する市販後特別調査、及び心ファブリー病に対する
市販後臨床試験の実施を条件に承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議
することが妥当と判断いたしました。なお、本品目は再審査期間10年、原体、製剤共に
劇薬に該当し、また生物由来製品にも該当すると判断いたしました。薬事分科会では審
議を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○河村部会長　ありがとうございました。お聞きのように、希少疾病用医薬品であって、
本邦での使用例は余りない、しかし酵素欠損症に対する補充療法だそうでございまして、
かなりの有用性があるということでございます。遠藤先生、何か御追加、御発言ござい
ますか。
○遠藤専門委員　この病気そのものの現状と、それから従来の治療の状況について簡単
に御紹介させていただければと思います。
　先ほど御紹介がありましたように、この病気はリソソーム酵素が先天的に欠損してい
る疾患でして、遺伝形式がＸ連鎖性、つまり男性の患者ではより重篤な症状が出て、女
性の一部でも症状が出るという疾患です。小児のころから四肢の疼痛、それから皮膚所
見等が出現して、進行すると腎臓の血管内皮細胞の障害等によって腎不全に至るという
疾患であります。先ほど御紹介があったような200例ほどの症例というのは、思春期以
降から尿の所見に異常が出てまいりまして、その後腎不全が進行していくと。そして、
最終的には透析に至るという、進行性のかなり重篤な疾患であります。
　この疾患のもう一つの症状として四肢の痛みという少し厄介な問題がありまして、痛
みそのものは小児期から出現してまいります。現在、対症的な抗痙攣剤の長期服用によ
ってその軽減が図られている状況でありますが、根本的な解決にはならず、患者さんの
ＱＯＬに関してはかなりの障害となっております。
　そのほか長期に経過すると、これは成人期に達して以降なのですが、時に拡張性の心
不全を併発してくる患者さんが見られます。まれに拡張型の心筋障害だけで発症してく
る患者さんも一部では報告されております。
　このように多彩な症状を呈するわけですが、治療法そのものは先ほどの疼痛に対する
治療、それから腎不全に至った後の腎臓に対する治療ということくらいしか今まで開発
されていません。今回の酵素補充療法というのは、このリソソーム病の病態の特徴をい
かした治療法として、1970年代から開発・研究が進められてまいりました。リソソーム
病の一つの特徴としては、外から血液中に投与された酵素が細胞の中に取り込まれて、
そこで生理的な活性を発揮してくれるという現象です。ファブリー病はその酵素補充療
法に一番適した治療法と従来から考えられていまして、血管内皮細胞が障害されると。
したがって、血管内に投与された酵素が血管内皮に取り込まれやすいところからそうい
うことが考えられまして、既に70年代には精製した酵素を使った人体に対する投与研究
が行われております。その後、組換え遺伝子技術の発展等でこのような大量に酵素を精
製するということが可能になって、今回の酵素補充療法になってきたと考えております。
以上、現状について簡単に御報告させていただきます。
○河村部会長　どうもありがとうございました。この薬剤について御質問、御討議ござ
いますか。抗体産生するということがちょっと気になるわけですが、御発言ございまし
ょうか。特によろしゅうございましたら…、どうぞ。
○岩﨑委員　本剤の有効性については全く異議がないのですが、症例の取扱いについて
ちょっと…。海外の臨床試験で「As Treated」というやり方でやっていると思うのです
が、これは普通こうやるのかちょっとお伺いしたかったのです。
○事務局　審査センターよりお答えいたします。このケースは非常に特殊でございまし
て、実は投与が終わった後に実際に割り付けた薬を投与していないとか、逆の薬を投与
したというケースが多々見付かりまして、それを正常な状態に戻したのがAs Treatedと
いうことで解析しております。
○岩﨑委員　つまり症例の取扱いだけの話ですが、そのやり方というのが普通というか、
よく取り違えて違う薬剤を投与したということがあると思うのですが、このように取り
扱う方がいいとお考えなのですか。
○事務局　私は普通あり得ないと思っております。
○岩﨑委員　その辺がＩＴＴと絡んでいて、ちょっと微妙な問題だと私は思っているの
ですが、これでも差し支えないということですか。
○事務局　ＦＤＡの審査では正常な状態が確認できたということですので、データとし
ては一応科学的な判断はできるものと判断しました。
　また、ＩＴＴに関しても一応効果は示されておりますので、特に問題はないと考えて
おります。
○河村部会長　御発言ありますか。どうぞ。
○村勢委員　この製剤に関しての異議はありませんが、お聞きしたいのは、こういう酵
素補充療法はリソソームの疾患についてはかなり古い歴史があるものもあるのではない
かと思います。ゴーシェなどの疾患の場合には、もう10年以上前から使われていると思
うのですが、ここで副作用として一番気になるのはやはりイミューンレスポンス(免疫反
応)ですけれども、今までかなり長い治療経験がある疾患ではイミューンレスポンスに関
してどうであったのか、例えばファブリー病だと２年くらいの経過ですけれども、５年、
６年治療しているうちにだんだんと反応が強くなることはあるのかどうかということで
す。
　もう一点は、恐らく治療するとすれば臨床症状が出るよりも前に、できるだけ早い時
期から治療を開始した方がよろしいだろうと思われるのですが、そういうときに非常に
長期になるわけですので、イミューンレスポンスがほかの疾患でどうであったのかにつ
いてお聞きしたいということでございます。
○河村部会長　遠藤先生、よろしゅうございますか。
○遠藤専門委員　簡単によろしいですか。御指摘のように、酵素補充療法として世界的
に使われ始めた最初のゴーシェ病の治療薬として開発されて、我が国でも適応を取って
使われているわけですが、幸いなことにゴーシェ病は長期投与において抗体産生のため
に投与が不能となった例というのはほとんどないと聞いております。その一つの理由と
して、ゴーシェ病の中で今の適応を取って一番使われているのは、多分「慢性型」と呼
ばれている疾患だと思います。慢性に経過する患者においては、遺伝子欠損と抗体産生
との関連があって、異常な酵素が少し産生されたような患者では抗体産生が余り目立た
ないのではないかということが考えられております。ゴーシェ病でも非常に重篤な若年
発症型の、いわゆる「神経型」と呼ばれている患者についての投与というのはまだそれ
ほど広く行われていませんので、そういうケースで遺伝子が完全に蛋白を造らないよう
な変異になったときに抗体はどうかというのは、実際のクリニカルトライアルにおいて
はまだ確認されていないと思っております。
○堺委員　遠藤先生にお教えいただきたいのですが、このファブリー病の患者データベ
ースというのは現在存在しないのでしょうか。と申しますのは、ずっと以前のことなの
ですが、私の患者さんが蛋白尿だと思って腎生検したらファブリーであっと驚いたこと
があったのです。そのときにどこかに届けるのかと思ったのですが、ちょっと見付けら
れなかったのです。この薬剤は今後市販後で効能を見ていこうということでございます
ので、現在何か調査の母体のようなものがあるかどうかをお教えいただければと思いま
す。
○遠藤専門委員　厚労省の班研究において、そういったリソソーム病の研究がされてお
りまして、班研究の一環としての患者の掘り起こしというのは以前からなされておりま
す。ただ、公的にそういうものが実際存在するかというと、一つの可能性としては小児
慢性特定疾患事業において、小児期に診断された患者は基本的に地方自治体の審査会で
の最終的な診断を受けて登録されるということになっております。御承知のように成人
期においては、リソソーム病は特定疾患ですので診断基準に従って診断されて、特定疾
患のリストには載ってきているものだと思っております。ただ、そのデータベースがど
のように利用されているかについては、まだ私はよく把握しておりません。
○櫻井委員　薬効などという話ではなくて、１mg/kgというところに関係して、５mgと
35mgという組合せの規格が二つできる理由を教えてください。
○事務局　審査センターよりお答えいたします。これはそもそも海外で最初に開発され
まして、海外では70mgが標準で35mgを二つ投与して微調整するという形になるのです
が、日本に持ってくると若干不都合な面があるかもしれません。
○櫻井委員  ５mgというのは調整用ですか。
○事務局　そうです。
○河村部会長　ほかにございましょうか。希少疾病用の医薬品ですし、かなり有用性が
認められているようでございます。私もこの前「内科学」という朝倉の教科書を読みま
したら、ファブリー病のところにもうこの薬を使うべしと書いてあるのです。既にこの
薬を使うべしとなっているくらいですから、これは分科会で審議していただくというこ
とで、上へ上げたいと思います。よろしゅうございますか。では遠藤先生、遠いところ
をどうもありがとうございました。
　では続きまして、議題１、医薬品オルメス、オルメス錠の製造承認の可否ということ
ですが、審査センターの方で御説明ください。資料１でございます。
―　遠藤専門委員退席　―
○事務局　資料１、オルメス、オルメス錠10mg及び20mg、一般名オルメサルタン メド
キソミルについて審査センターより御説明いたします。
  本薬は三共株式会社で創製されたアンジオテンシンII受容体拮抗薬であり、2002年４
月に米国で承認されたのを始めとして、現在では欧州14か国で承認されている薬剤で
す。
 本薬の審査に関しましては、資料７の１ページにありますように本部会委員である岩﨑
委員を始めとして、江馬委員、小嶋委員、小柳委員、是恒委員、櫻井委員、茅野委員、
奈良間委員、林委員、宮崎委員、安原委員を専門委員として指名しました。
　次に審査センターにおける審査の概略を御説明いたします。品質及び非臨床に関する
資料については、審査の過程において申請者から適切な対応がなされたことから、特に
問題はないと考えております。
  臨床試験成績に関して、降圧効果については漸増法によるエナラプリル対照二重盲検
比較試験において、本薬群10～40mgと対照薬マレイン酸エナラプリル群５～20mgとの
非劣性が検証されました。しかしながら、より低い開始用量５mgでの降圧率は、用量設
定試験において既承認類薬の開始用量あるいは通常用量の最低用量と同程度であり、さ
らに用量設定試験から継続して投与が実施された長期投与試験においても、104例中25
例の症例が１年間５mgで投与が継続されていたことから、本薬の開始用量を５～10mg、
通常用量を10～20mg、最高用量を40mgと設定することが妥当であり、これらの用量に
おける降圧効果が検証されていると判断しました。
  安全性については、海外の固定用量試験において20mg以上の投与群にめまいの発現例
が多くなる傾向があるものの、国内臨床試験では開始用量の違いにより有害事象の発現
に差はなく、重篤な有害事象の発現など安全性上重大な問題は認められなかったことか
ら、10mg以下の用量から投与を開始し、忍容性に応じて漸次増量を行えば安全性の確保
は可能と判断いたしました。
 以上のような審査の結果、審査センターは本薬を承認して差し支えないと判断し、本医
薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしました。本薬は新有効成分含
有医薬品で、再審査期間は６年、原体及び製剤はいずれも毒薬・劇薬、並びに生物由来
製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、分科会へは報告が適当と判断してい
ます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○河村部会長　ありがとうございました。降圧剤の申請でございますが、御質問、御討
議ございますか。
○審査第二部長　審査センターの方から、今の説明に補足させていただきたい点がござ
います。本品の販売名についてでございますが、今オルメサルタンという成分について、
「オルメス錠」という販売名を申請しているところでございます。一般的には、一般名
を販売名に使うのは余り適当ではないという指導が過去からあるのですが、その点もさ
りながら、最近医療機関における医療事故防止対策の強化が非常に注目を浴びていると
ころでございまして、そうした観点での精査をしてきたところ、「オルヂス」というケ
トプロフェンの製剤で既承認のものがございました。これは読みははっきり違うのです
が、手書きの処方の場合オルメスの「メ」とオルヂスの「ヂ」が非常に間違える危険が
あるということに思い至り、急遽申請者とその点を協議した結果、オルメスの販売名に
ついては変えるという決定を得ております。本日の審議にはその対案を間に合わせるこ
とはできませんでしたが、速やかにこの点を考慮して別途商標権上の問題も調査した上
で、事故のないような名前に変えることが既に決まっておりますので、その点を御報告
させていただきたいと思います。
○河村部会長　そういうことだそうでございます。ほかに御討議ございましょうか。こ
れは今のところ単剤での申請ということで、ほかの薬剤との併用を考えていないで申請
しているわけですね。
○事務局　その点につきましては、海外では米国において既にヒドロクロロチアジドと
の配合剤が承認されておりまして、国内でもそちらについての試験等は現在予定されて
いるようですので、申請者の方は特に利尿剤との配合剤ということは意識して開発され
ているものと思います。
○河村部会長　そういうことだそうでございますが、御発言ございますか。どうぞ。
○谷川原委員　今の販売名のことなのですが、森部長がおっしゃったように、しばらく
前にタキソテールとタキソールを間違えた非常に重大な事故等がありましたし、既存の
製剤で紛らわしい、しょっちゅう間違いを起こしているようなものがたくさんあるわけ
です。経緯を伺いますと、変えるのは大変結構だと思います。ただ、申請者の方から申
請があってようやく変えるのか、それとも例えば審査の段階で非常に紛らわしいものは、
審査センターの方から指導するという働き掛けは現実としてあるのでしょうか。できた
ら今後はこういう形で御指導していただく方がよろしいのではないかと思うのですが。
○河村部会長　これは当局の方でどうお考えですか。
○安全対策課長　医療事故防止の観点から、安全対策課でもいろいろ対策を考える担当
をしております。ちょうどこの件があるから出したわけではないのですが、タキソテー
ル、タキソールの問題等、それからリドカインの製剤の問題やいろいろ医療事故につな
がってしまった経緯がございまして、昨日通知を出させていただきました。医療現場に
おいて類似の名前のものがあるならば、それに対して危険防止の対策を採るようにして
いただきたいという注意喚起をさせていただきました。この医療事故の観点から見てい
きますと、既に承認されてしまうと商品名を変更するというのはなかなか困難を伴うこ
とがございまして、できるだけ早く、少なくとも承認前にそういう危険性があれば一つ
でも排除していくという態勢を採りたいとずっと考えております。
　その一つの方策として、名称類似というのが一つのキーポイントで、今回も「オルメ
ス」と「オルヂス」という名称が、少なくとも３文字が一緒というものは、今までもそ
ういうものがたくさんあるので事故につながりやすいのではないかという指摘がされて
おります。そういうこともありまして、名称がどのくらい類似しているかを調べるよう
なソフトを研究班で開発しまして、今日本医薬情報センター(JAPIC)の方で試運転をして
いただいております。そういうものを作りましたので、是非ともこれからそのソフトが
うまく運営されるように努力していきたいと思いますし、そういうものが出れば一つの
ツールとしてどのくらい似ているのかを調べることができると。名前は一つずつずっと
調べていけばいいのですが、日本にはたくさん医薬品の名前がございますので、手数も
掛かるだろうと。それをもう少し効率良くできるようなツールを利用してはどうかと考
えております。このものについては、JAPICの方で今年試運転的なことをやりまして、
内容を更にいいものにしていこうとしております。そういうものを使って、これからも
審査の面でいかしていただければと考えております。
○河村部会長　だそうでございます。いい話だと思いますが、ほかに御質問ございまし
ょうか。どうぞ。
○堺委員　この薬物そのものに対しての疑義は全くございませんが、市販後調査に対し
ての要望がございます。これを拝見しますと、高齢者、それから腎障害、肝障害等につ
いて薬物動態のデータが出ております。近年、我が国でも高齢者の腎障害患者が非常に
増えておりまして、今後市販後調査で層別化というのでしょうか、高齢でかつ腎障害と
いう方のデータを是非お取りいただきたく存じます。
　もともとＡＲＢは糖尿病性腎症で腎障害の進展防止ということも見られております
が、その種の治験では例えばクレアチニンは3.5以下、年齢は75以下とか、高齢の腎障
害は治験の段階ではカバーされておりません。層別化というのは相当症例数がたまらな
いとなかなか困難かとは思いますが、今後御検討いただければと思います。よろしくお
願いいたします。
○河村部会長　ではこれはメーカーの方にお伝えいただいて…。
○事務局　特に高齢者での治験の実施数が少ないのではないかということは、専門協議
の席でも御指摘いただいているところでして、十分解析可能な程度の高齢者の症例が集
まるような使用成績調査等を実施していくよう指導してまいりたいと思います。どうも
ありがとうございます。
○谷川原委員　私も同じことを考えていたのですが、「市販後調査基本計画書(案)」と
いうＡ４の一枚紙を見ますと、使用成績調査の中から腎機能障害や高齢者の該当症例を
抽出して検討するという非常に受け身のやり方なのです。審査報告書を見ますと、高齢
者が少ないとか、腎機能も重度障害の人は治験には入っていないとか限界が書かれてい
ますので、もう少しターゲットを絞ったアクティブな調査方法にした方がよろしいので
はないかと思いますが、いかがでしょうか。
○事務局　現在での使用成績調査の案というのは本当にまだたたき台の段階でして、今
のところ詳しいことは記載されてはおりませんが、申請者の方から高齢者、腎機能障害
患者である程度の症例数以上を組み入れるような調査にするという内容で一応は回答さ
れてきております。今後そのような症例が通常の使用成績調査で十分集まるかどうかを
まず審査センターの方でもよく見まして、そのような内容で一応は大丈夫だということ
ならば、通常の使用成績調査をやった上で症例数が足りないようでしたら、上乗せの特
別調査のような形で高齢者、腎機能障害患者を対象にした調査を行うような形で、市販
されてからそれなりの年限のうちにそのような情報が集まるような形にしていきたいと
考えております。
○谷川原委員　十分な年限を掛けて、例えば６年後に結果が出るというので本当にいい
のか…、市販されると非常に多くの方に使われますから、できるだけ市販後早期のタイ
ミングでそういうことを重点的に調査する方がいいのなら、どちらかというと後の方が
いいのではないかと考えるのですが。
○審査第二部長　今日の御審議での御指摘を踏まえて、まず高齢者対象の特別調査を実
施するという方向で申請者には検討を求めたいと思います。具体的な計画につきまして
は、また必要に応じて先生方にも御相談させていただきたいと思いますが、その際はよ
ろしくお願いいたします。
○河村部会長　そうなればなおよろしいことかと思いますが、御発言ございましょうか。
どうぞ。
○岩﨑委員　私は本品の専門委員で、血圧の組入れ基準について専門協議のときにも言
ったのですが、29ページに書いてあるのですけれども、例えば収縮期が160mmHg以上
などいろいろあるのです。端的に言えば、それがＡという組入れ基準で第二調査会のこ
ろからずっと見てきたわけですが、Ｂという組入れ基準がありまして、収縮期が150mm
Hg以上ということで少し下がっているわけです。これが第III相の組入れ基準になってい
るわけですが、こういう組入れ基準というのはこれからずっと続くのかということが第
一点。
　もう一点は、今まで承認してきたものが160mmHg以上ということでずっとやってきた
と思うのですが、それがここで見ますように今だんだん高血圧の患者数が増えてくると
いうことで、160mmHg以上で承認した中には150mmHgというものも高血圧として投与
されると思うのです。それで安全性といったことが大丈夫かちょっと気になったのです
が、その辺についてちょっとお伺いしたいです。
○事務局　まず今後もこのような組入れ基準が続くかどうかですが、本剤の開発が行わ
れた当時と比べまして、高血圧の臨床評価のガイドラインというものが現時点では新し
くなっております。ただし、以前そのガイドラインでどの薬剤、どの試験でも同じよう
な組入れ基準や評価方法などが採られていたのは、ある意味ガイドラインの方でその辺
がかなり詳しく決められていたからというところが大きかったかと思うのです。現時点
でのガイドラインの中では基準等の記載は余り細かく記載されておりませんで、大まか
な考え方を決めるようなガイドラインになってきておりますので、今後はそれぞれの薬
剤がターゲットとする患者層に合わせたような組入れ基準というものも出てくる可能性
はあるかと思いますが、大きく変わることはないのではないかと予想しております。
　二番目の御質問の点ですけれども、最近特に高血圧の治療方針である意味どんどん下
げる方が、心血管系のイベントが少ないのではないかという結果が出ている点もありま
して、どこで薬物治療が必要と判断されるかというところは、今後治療ガイドラインな
どの動きにも依存してくるのかと思いますが、今まででは高血圧と思われていなかった
患者さんにも薬物療法が行われるという現実はあるかと思います。この辺につきまして
は、詳しい調査結果などがないので憶測にすぎないのですが、拡張期の血圧が例えば10
違うか違わないかで安全性に大きな問題があることはないのではないかと考えておりま
す。と申しますのは、基本的に高血圧薬というのはそれぞれの患者さんに応じて、初期
は大体１剤の一番下の用量からそれぞれお医者さんが処方されて、どんどん様子を見な
がら増量したり、他剤と組み合わせるという形で、個々の患者さんに応じて薬剤の量や
組合せが決められていきますので、その辺の安全性というのは個々の患者さんに応じて
決められていっているのではないかと考えております。
○河村部会長　ほかによろしゅうございますか。よろしければ、この薬剤は薬事分科会
の方へ報告という扱いになります。どうもありがとうございました。
　では議題３に移ります。ミチグリニドカルシウム水和物、糖尿病のお薬だそうでござ
います。事務局の方からお願いいたします。                           　　　　　　
―　藤上、村勢委員退室　―
○事務局　それでは議題３、資料３、医薬品ミチグリニドカルシウム水和物「ＳＦＬ」、
グルファスト錠５mg及び同10mgの製造承認の可否等について審査センターより御説明
申し上げます。
　有効成分ミチグリニドカルシウム水和物は、キッセイ薬品工業株式会社において合成
された即効性・短時間型インスリン分泌促進薬であり、食事療法・運動療法で十分な効
果が得られない２型糖尿病患者における食後過血糖の改善を目標に開発されたものでご
ざいます。類薬としましては、1999年６月にナテグリニドが承認されております。なお、
海外においては治験中であり、承認を取得した国はまだございません。
　本日の配付資料７の３ページに示すように、本品目の専門協議では青柳委員、荒木委
員、岩﨑委員、仙波委員、中江委員、中山委員、西村委員、林委員、福井委員、安原委
員が専門委員として指名されております。
　本品目の規格及び試験方法、安定性、毒性、薬理、吸収、分布、代謝、排泄に関して
提出された資料の内容は妥当であると判断いたしましたので、臨床試験成績について述
べさせていただきます。
　まず有効性に関してですが、食事療法により十分な血糖コントロールが得られていな
い２型糖尿病患者314例を対象に、プラセボ及びボグリボースと比較した国内第III相臨
床試験において、１日３回毎食直前に12週間経口投与することにより主要評価項目であ
るヘモグロビンＡ１Ｃの変化量で本薬10mg群、及びボグリボース0.2mg群はプラセボ群
に対する優越性が確認されております。また、さらに本薬群はボグリボース群に対して
も有意な改善作用が示されております。また、副次的評価項目でありました食後血糖２
時間値変化量においても、本薬群はプラセボ群及びボグリボース群に対して有意な改善
が認められました。
　次に安全性に関してですが、国内第III相臨床試験における有害事象及び副作用の発現
率は、本薬群、プラセボ群、ボグリボース群間で差は認められず、特に大きな問題はな
いと判断いたしましたが、食事のタイミングのずれによって予想される低血糖、１例に
認められた本薬との因果関係が否定できなかった重篤な有害事象である急性心筋梗塞、
及び類薬で報告されている肝機能障害に関しては、添付文書上で重大な副作用として情
報提供することといたしました。また、長期投与時における安全性につきましては、市
販後に調査が必要と判断いたしました。
　以上のとおり、審査センターでの審査の結果、食事療法・運動療法で十分な効果が得
られない２型糖尿病における食後過血糖に対する本品目の有用性は認められ、承認して
差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議することが妥当と判断いたしました。な
お、本薬は再審査期間６年、原薬及び製剤とも毒薬・劇薬いずれにも該当せず、また生
物由来製品及び特定生物由来製品にも該当しないと判断いたしました。薬事分科会では
報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○河村部会長　ありがとうございました。糖尿病薬ですが、どなたか御質問、御発言ご
ざいましょうか。堺先生、御発言ございますか。
○堺委員　糖尿病の薬は、インスリンと内服薬で非常にいろいろな薬効のものが近年出
てまいりました。お陰様で、糖尿病の治療はここ数年一変したと言ってもいい状況であ
ります。インスリンを打ちながら、ヘモグロビンＡ１Ｃが5.8％以下の人はちっとも珍
しくない状況になりまして、今糖尿病を扱っている者たちの間ではヘモグロビンＡ１Ｃ
が低いのは当たり前で、食後高血糖をいかに抑えるかというところに注意が集まってお
ります。そのような風潮を踏まえて、こういう薬がまた出てきているのだろうと思いま
すが、怖いのは高齢者の低血糖だと思います。副作用のところを拝見しても、高齢者の
方が低血糖の発現頻度が明らかに高いということが出ております。「添付文書(案)」を
拝見しても、「５.高齢者への投与」のところに血糖に留意して使うということが書いて
ありますが、ここは是非できるだけ強い言葉で注意喚起していただきたいと思います。
かなり昔のＳＵ剤の時代から高齢者ではとんでもなく遷延する低血糖が時々出ますの
で、このような薬剤の場合にはそこはできるだけ強く注意喚起していただきたいと考え
ます。
○河村部会長　そういう御意見があったということで、なるべく大きい字で…。
○事務局　先生の御意見を踏まえまして、添付文書の記載を検討させていただきます。
○河村部会長　ほかにございましょうか。どうぞ。
○谷川原委員　審査センター、御専門の先生でもいいのですが、第III相試験の対照薬が
ボグリボースというのはこれでよろしいのですか。というのは、既存薬との比較である
ならば、類薬ナテグリニドとの比較というのが我々現場にいる者としては一番知りたい
情報なのですが。「審査報告書」の最初の５ページでも、αグリコシダーゼ阻害剤とい
うのは血糖コントロール指標であるヘモグロビンＡ１Ｃの改善効果は十分ではないとう
たっているものを比較対照薬として、それに勝っていたから有用性が認められたという
お話ですが、もともとこの試験のセッティングで本当にこの薬剤の評価ができていたか
ということと、今ほかに海外でどういう比較試験がなされているのかとか、その辺りの
情報はあるのでしょうか。
○事務局　審査センターよりお答えいたします。今でもそうだと思うのですが、申請者
の言うことによりますと、この治験を始めた段階では日本ではボグリボースが標準的な
治療薬だったと、ナテグリニドはなぜか余り使われていない状況だったので、これを対
照薬に選んだという説明になっております。
　それからもう一点、海外の状況なのですが、レパグリニドとの比較試験が海外で現在
実施中でございます。ナテグリニドにつきましては、治験は行われておりません。     ○
谷川原委員　その辺りが分からないので教えていただきたいのですが、確かによく使わ
れているのですが、よく使われているということとこの薬剤の評価をする対照薬として
適切かどうかという問題は別だと思うのです。もともと週評価指標で見た場合に余り効
果が期待できないものを相手に選んで、それに対して勝っていたから有用性が認められ
たというロジックでいいのかどうか教えてほしいのですが。この領域としては、どのよ
うに考えられているのか…。
○事務局　治験を計画したのは申請者でございますので、審査センターはどうお答えし
たらいいかよく分かりませんが、少なくとも治験を始める段階では申請者が申しますよ
うに、ナテグリニドというものがまだ臨床的位置付けが全くはっきりしていない状況で
したので、αＧＩを比較に選ぶのは妥当であったのではないかとはセンターは考えてお
ります。
○審査第一部長　ちょっと付け加えさせていただきますと、ナテグリニドは先ほど御説
明したように1999年６月に承認したものでまだ再審査期間中でございますので、そうい
う意味においては安全性についてはまだ市販後調査という形で広く収集させていただい
ている状況でございます。通常は再審査期間中のものを比較対照薬として選ぶことは、
安全性などの問題からこれまでもしてきていないところですので、ある意味ではやむを
得なかったと考えてございます。
○谷川原委員　この期に及んで、これ以上何を言っても仕方ありませんから結構ですが。
○河村部会長　ほかにございますか。ではとにかく御了解いただいたということで、こ
れは薬事分科会に報告させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。　
あとは報告事項、希少疾病用医薬品の指定の取消しその他をお願いいたします。
―　藤上、村勢委員入室　―
○事務局　それでは本日差し替えをさせていただいた資料でございますが、資料４に基
づいて希少疾病用医薬品の指定の取消しについて御報告いたします。１ページめくって
いただきますと、成分名塩酸サプロプテリン、対象疾病がマチャドジョセフ病というこ
とですが、これは遺伝子欠損の病気でございまして、それによって脊髄小脳変性が起こ
って運動障害が起こるという病気でございます。
　また１ページめくっていただきますと、「塩酸サプロプテリンの開発中止理由書」と
いうものが出てまいります。ここに書いてございますように、サントリー株式会社がオ
ーファンの指定を平成８年に受けまして、その後臨床試験を幾つかやって、最終的には
臨床第III相試験を実施したところでございます。しかしながら、その結果プラセボとの
有意差がないということで、有効性が証明できませんでした。したがって、有効性が認
められませんので、今後開発を進めていくのがなかなか難しく、指定の取消しの届出が
出されたということでございます。以上でございます。
○事務局　続きまして、報告事項の議題２について御説明申し上げます。資料といたし
ましては、資料5-1のハイトラシン錠、バソメット錠から、資料5-5については枝番が
１～４までありますが、ソマトロピン(遺伝子組換え)関係の合計五つの成分、八つの再
審査報告書になります。これらの品目につきましては、市販後の使用成績調査、特別調
査の成績等に基づいて再審査申請が行われ、それぞれ審査の結果いずれの品目について
も薬事法第14条第２項各号承認拒否事由に該当しないこと、すなわち効能・効果、用法
・用量等の承認事項について変更の必要はないカテゴリー１と判定したものでございま
す。これらの結果につきましては、近々通知する予定といたしております。以上でござ
います。
○河村部会長　この２項目について御質問ございますか。よろしゅうございますか。で
はほかに事務局からの報告をお願いいたします。
○事務局　それでは本日お配りさせていただいた資料８について御報告、御相談させて
いただきます。
　「歯科領域における鎮痛消炎剤の臨床評価の取扱いについて」ということでございま
す。「１.背景」として、部会に御相談させていただく背景を述べさせていただいており
ます。歯科領域で痛みという効能につきましては、主に「抜歯後疼痛」と「歯痛」とい
うものがございます。現状でありますけれども、例えば鎮痛消炎剤で「抜歯後疼痛」と
いう効能を取得しているものがあるのですが、「歯痛」の適応がないものについては同
じ歯科関連の痛みであっても歯痛には用いることができないという現状がございます。
　そういうことになっている現状でございますが、「２.現行の取扱い」というものがご
ざいます。「鎮痛消炎剤の臨床評価方法に関するガイドライン」というものが1985年に
できております。このガイドラインは、歯の関係以外にはリウマチや腰痛といったもの
に対する鎮痛消炎剤の評価方法を定めたものでございます。その中で歯痛、抜歯後疼痛
については、それぞれ二重盲検比較試験が1985年の段階ですから、現在のところは必要
とされておりました。症例数は１群60例以上ということになっております。
　「３.問題点」でございますが、「抜歯後疼痛」、それから「歯痛」という二つの痛み
については、御存じのとおり歯、歯周辺組織の痛みということで、主に炎症に起因する
痛みでございます。このような炎症性の痛みに対しまして、例えば鎮痛消炎剤のプロス
タグランジン生成抑制といった抗炎症作用に基づく効果がある薬剤について、それぞれ
二重盲検試験が必要ないのではないかという御意見が出ているということがございま
す。
　したがいまして、「４.取扱い(案)」でございますが、「抜歯後疼痛」、「歯痛」に関
して同じ作用機序で「鎮痛効果」が期待される薬剤については、「抜歯後疼痛」又は「歯
痛」のいずれかの適応で二重盲検比較試験を実施していただくと。その他の適応につい
ては、必ずしも二重盲検比較試験を求めないということでいかがであろうかと。なお、
他の効能で必要なデータについては、薬剤個々に様々なデータがあるはずでございます
ので、そのデータによって例えばオープン試験をやるか等々について個別に判断させて
いただきたいということでございます。
　「５.その他」ですが、日本口腔外科学会から抜歯後疼痛の適応を有する薬剤について、
「歯痛」を加えていただけないかという要望等が出てきているわけでございます。以上、
取扱いの案について御相談させていただきたいということでございます。
○河村部会長　ということだそうでございまして、普通の疼痛と歯の痛みというのは区
別されていたということですが、何か御質問、御意見ございましょうか。井上先生、何
かございますか。
○井上委員　患者からすれば同じような痛みですよね。この取扱い案では「同一の作用
機序で」というきちんとした縛りがあるので、私としてはこの取扱い案で結構かなとい
う気がするのですが。
○河村部会長　何か御意見ございましょうか。どうぞ。
○長谷川委員　私は歯科でございまして、この問題の背景を若干…。今審査管理課の方
からかなり詳しい背景の御説明があったのですが、現場としてはちょっとお恥ずかしい
ような話なのですけれども、もちろん歯科、口腔外科領域の疼痛ということは歯痛ある
いは抜歯後疼痛という二つの大きな効能でくくられているものが大多数であるわけで、
この辺の中で一方しか効能を取っていないものがあるということが現場では理解不足、
あるいは消炎鎮痛剤であるならば基本的に疼痛発生機序が同じなので、使えるのではな
かろうかといううかつな判断が現場に若干あったのだろうと思います。こういう経緯か
らいわゆる効能を取っていない薬剤、例えば抜歯後疼痛だけでしか効能を取っていない
薬剤を歯痛に使っていたという経緯が割と広くございました。
　ここ最近保険の取扱い等が変わった関係もありまして、薬剤名が表に出てくることに
なりこの問題が非常に表面化しました。当然のことながら、効能を取っていないものに
ついては使ってはいけないという指導がされているわけですが、現場の臨床の先生方は
今まで使ってきてその効果、有効性を認識している中にあって混乱が生じているのが現
状でございます。その一つの形が、口腔外科学会からの要望書という形で出てきたのだ
ろうと思います。現状のルールはルールでございますので、当面今事務局の方から取扱
い案として出された方向でやっていただけると歯科会、あるいは歯痛、抜歯後疼痛にか
かわる専門学会においても大変感謝申し上げられるような状況になるのではないかと思
っております。以上でございます。
○河村部会長　ありがとうございました。なぜ日本歯科学会から出なくて、日本口腔外
科学会なのかというのがちょっと…。
○長谷川委員　先生よく御存じで、いわゆる歯学会の専門学会を最終的に統括するのは
日本歯科医学会でございます。ただ、いわゆる各参加分科会の活動の独自性というもの
は、必ずしも十分拘束されているわけではございませんし、比較的問題が差し迫ってい
るようなこともございまして、恐らく日本口腔外科学会が単独で出してきたのだろうと
思います。恐らく同一の認識は、他学会もございますので、もしこの問題を放置してお
きますと、ほかの学会からもそういう形でどんどん要望が出てくる可能性は多々あるか
と思います。
○河村部会長　そういう御説明でございましたが、ほかに御意見、御追加ございましょ
うか。鎮痛剤は私どもから見ると、へそから上だけ効いてへそから下は余り効かないと
いうのはたまにあるのですが、へそから下が効いてへそから上は効かないというのは見
たことございませんし、大体同じような作用機序で同じように働くのではないかと思う
ので私は構わないと思います。皆様同じような御認識でしたら、そういうことにさせて
いただきたいと思います。あと報告事項はございましょうか。
○審査管理課長　一応本日の議題、報告事項は以上でございます。次回の日程でござい
ますが、来年１月30日金曜日になりますが、午前10時からを予定いたしております。
○河村部会長　１月30日だそうでございます。
○審査管理課長　そういう意味では、本日が今年最後の第一部会ということでございま
す。１年間どうもありがとうございました。
○河村部会長　どうもありがとうございました。皆さんいいお年をお迎えください。
                                                                      (　了　)


連絡先：　医薬食品局　審査管理課　課長補佐　佐藤（内線２７３４）
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