03/11/17 第13回社会保障審議会児童部会議事録                   第13回                                 社会保障審議会児童部会                              雇用均等・児童家庭局                          第13回「社会保障審議会児童部会」議事録           日時 :平成15年11月17日(月)15:30〜17:12 場所 :厚生労働省 共用第7会議室(5階) 出席者:岩男部会長、網野委員、柏女委員、堀委員、松原委員、渡辺委員     伍藤雇用均等・児童家庭局長、中村総務課長、北井審議官、     山田家庭福祉課長、古川虐待防止対策室長 議事 :1.開会     2.社会保障審議会児童部会「社会的養護のあり方に関する専門委員会」報告       書について(報告)     3.「児童虐待への対応など要保護児童および要支援家庭に対する支援のあり       方に関する当面の見直しの方向性について(案)」について     4.閉会 ○岩男部会長  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第13回社会保障審議会児童部会を開 催させていただきます。  本日は、大変お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。  まず、本日の出席状況につきまして、事務局から御報告をお願いいたします。 ○中村総務課長  本日は欠席の方が多いのですけれども、阿藤委員、遠藤委員、大日向委員、津崎委員 、服部委員、無藤委員、山委員が所用により御欠席と連絡がございました。それから 、網野委員は遅れてお見えになるということでございます。  定数の3分の1ということで定足数は満たしておりますので御報告いたします。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、議事に移りたいと思います。  本日はまず、「社会保障審議会児童部会『社会的養護のあり方に関する専門委員会』 報告書」を議題といたします。「社会的養護のあり方に関する専門委員会」においては 、社会的養護のあり方全般にわたる様々な課題が検討されてまいりましたが、先月27日 に報告書がとりまとめられました。この報告書につきまして、専門委員会の委員長を務 めていただきました松原委員から、概要を御報告いただきたいと思います。よろしくお 願いをいたします。 ○松原委員  それでは、資料1が、その専門委員会の報告書のとりまとめについてで、資料2が全 体の報告書になっております。せっかくですから、資料2を使って、少し時間をいただ いて御報告をしたいと思います。  この委員会は、全体として8回の議論を重ねてまいりました。当所のころに幾つか確 認されたことがあるのですが、一つは、こういった社会的養護のあり方を検討するに当 たって、何よりも、社会的養護を必要とする子どものニーズに沿って、委員のある方が おっしゃっておりましたけれども、オーダーメードの社会養護を考えていこう、このこ とが確認された1点目でございます。2点目に、従来、ともするとこの社会的養護とい うことを考えていくと、既存の施設のあり方だけを問うようなきらいもあったのですけ れども、そうではなくて、全般的に検討する、その中では、里親という大きな社会資源 のことについても検討するし、施設種別にこだわらず全体的な社会的養護のあり方につ いても検討する。それから、同時に、里親や施設ということだけではなくて、地域社会 にも社会的な養護を必要とする子どもや家族がいるという認識の中で、その地域社会に どのようなサービス提供ができるかということについて考えようということで、幅広の 議論を行うことができたと思います。  報告書の1ページを開けていただきまして、様々な検討をしてまいりましたけれども 、その1ページの下から2番目の段落ですけれども、「社会的養護のあり方について、 当面早急に取り組むべき課題を中心に、取組みの方向性を整理したもの」がこの報告書 になります。  以降の報告書は、取組みの方向性と当面の具体的な取組みに関する委員会としての意 見、今後の課題、それぞれの柱ごとにそういう構成でつくられておりますが、今読みま したところのように、委員の全体の合意が得られました「取組みの方向性」を中心に御 報告をしていきたいと思います。  2ページですけれども、「社会的養護のあり方について」ということで、そこの第4 段落目になりますが、「社会的養護については、現在の仕組みのもとで何ができるかと いうことではなく、制度や意識を転換し、ケア形態の小規模化、親や年長児童に対する 支援、更にはケアに関する児童福祉施設の創意工夫を促す仕組みの導入など、子どもの 視点に立って、子どもや家族の多様な要請に応えていくことが必要である」と、文言と してはこういうまとめを得ることができました。  4ページに参ります。ここが柱の2番目になりますけれども、「家庭的養護(里親・ 里親によるグループホーム等)のあり方について」の第1段落目の途中からですが、「 家庭での生活を通して愛着形成を図ることのできる意義深い制度」、これが里親である 。「子どもの立場に立てば、より積極的に里親制度の普及を図り、活用していけるよう 、この制度の一層の啓発に努めることが必要である」、こういう認識を得ました。さら に、具体的には、「親権の一部代行など里親の責任等を明確化することにより、その専 門性や役割を明確にすることも重要である」、こういう方向性を得ております。  次に6ページになります。3番目の柱として「施設養護のあり方(施設サービス体系 のあり方等)について」ということになります。ここには、先ほど1で読みましたこと をもう少し具体的に書いてありますが、第2段落目のところから読ませていただきます 。「児童福祉施設については、こうした将来的な方向を見据え、子どもの自立を視野に 入れて生活面、治療面で個々の子どもの要請に応えられるよう、各施設が有する特性を 活かした相互支援や、里親や児童相談所などの関係者との幅広い連携を図りつつ、ケア 形態の小規模化を進めていくことが必要である。同時に、入所している子どもの処遇に 支障を来すことのないよう配慮しながら、専門的支援機能や在宅支援機能、一時保護機 能など地域の拠点としての諸機能を充実・強化していくべきである」ということが確認 されております。  その上で幾つか具体的な点として、「乳児院及び児童養護施設で受け入れる子どもの 年齢要件の見直し、虐待を受けた子どもをはじめとする様々な支援を必要とする子ども の状況や意向を踏まえて、適切なケアが提供されるよう的確な支援計画の作成」という ことが確認されております。  その上で、「これら一連の取組みに必要な職員の確保についても十分に検討すべきで ある」という方向性が確認されております。そして、施設に対する措置費の支弁につい てですが、「一人ひとりの子どもが必要とするケアの内容は異なっていることからすれ ば、こうしたケアの内容に関わらず全ての施設に一律に支払う方法から、個々の施設に おける子どもの状況、子どものケアに関する施設の創意工夫や努力といった取組みを反 映したものに見直すべきである」という意見をまとめることができました。  次に8ページの「家族関係調整及び地域支援について」ですが、これが4つ目の柱に なります。先ほど申しましたように、施設に入所している子どもだけではなくて、こう いった家族関係調整や地域支援も必要だということで、第2段落目になりますが、「施 設に入所した子どもの家庭復帰や家族再統合に向けて、子どもへの支援のみならず、児 童相談所等の幅広い関係者と連携しつつ、家族への支援や親権者との関係調整を適切に 実施していくことが必要である」、こういうことがまとめられております。  9ページの5番目、「年長の子どもや青年に対する自立支援について」では、子ども そのものは、この年齢でということで切ることがなかなかできません。個々の子どもの ニーズということがありますので、そういった観点に立って、年長の子どもや青年とい ったことへの自立支援についても少し考え直してみる必要があるのではないかという御 意見の中で、第2段落目以降ですけれども、「施設退所後等の子どもに対し、生活の場 を提供し、その相談に応じる児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)が果たす役割は 重要であり、その設置促進や機能の強化を図るべきである。また、里親児童福祉施設や 自立援助ホームについては、18歳、20歳といった年齢に達した子どもについては一律に 支援を打ち切ることが原則となっているが、こうした施設等の対象年齢から外れた者で あっても必要に応じて支援を継続していくべきである」、こういう方向性が示されてお ります。  11ページになります。「社会的養護の質の向上」ということで6本目の柱になります 。ここでは、今まで述べてきました社会的養護全体を通じて、これをより効果あるもの にするために、そして、子どもの権利養護を徹底していくために、その社会的養護の質 の向上が必要であるという認識のために、第2段落目ですけれども、「児童相談所・福 祉事務所や児童福祉施設において、一人ひとりの子どもの状況に応じた最適な支援を行 うための子どもや家族の十分な実態把握・評価(アセスメント)、自立支援計画の策定 等を推進していくとともに、自己評価に加え第三者による評価の実施を促進していくこ とが必要である」、こういう認識がなされました。同時に、養成・研修についてもさら に充実していくべきではないかということが、この中で確認をされております。  12ページに、「学校教育など関連分野との連携」ということで、社会的養護には就学 前の子どもたちももちろん含まれるのですけれども、就学期以降は学校教育との連携と いうことで、ここは非常に大切になるということで、特に取組みの方向性の中では、学 校教育との連携ということが強調されております。  13ページの「おわりに」がまとめになりますので、全文を読ませていただきます。「 以上、社会的養護のあり方について、当面早急に対応すべき課題を中心に取組みの方向 性を整理してきた。一刻の猶予も許されない社会的養護を取り巻く目下の状況を考えれ ば、まず早急に対応すべき課題に取り組み、具体的な成果を挙げることが期待される。 その上で、以上に整理した方向性を重ね合わせれば、これからの目指すべき社会的養護 の仕組みの姿としては、おおむね別添案のような見取図が考えられるが、」とありまし て、14ページの図を見ていただきたいと思います。  これが今後の各児童福祉施設のあり方の案ということで皆さんに議論をしていただい たところですが、里親と各児童福祉施設、これが相互に連携をしながら、下の方では在 宅に対しての支援も行うというような図を書いております。そして、この社会的養護の あり方の中では、母子生活支援施設の代表の方にも入っていただきました。そこで、都 道府県だけではなくて、市町村といった段階から、この連携等ということを考え始めて 、一番左端に「市町村(相談・助言)(実態把握・評価)」ということ。それから「児 童相談所」を仲介させながら、「各児童福祉施設」のところは、本体施設でも小舎制ホ ームを実施し、ここでは一時保護機能、専門的支援機能等を持つということで、地域に 小規模ホームをつくっていく。そして、この本体施設では高度な支援が必要な子どもに ついてケアをしていったらどうだろうか。そして、年長児については自立支援ホームを 用意し、最終的には自立・家庭復帰を図っていきたい、このような案を考えました。  これはまだ案ですけれども、こういったことが考えられたということが、今回のこの 委員会の大きな成果であったと思います。  13ページの「おわりに」の本文に戻らせていただきます。「今後の取り組みの状況、 『今後の課題』も踏まえつつ、社会的養護のあり方については適時適切な検討が継続的 に行われ、必要な措置が講じられていくことが必要である」。そういうことで、今後の 検討についても様々なレベルでされていく必要性を認識しております。  そして、「その際には、先駆的な事例を中心に多くの実践を参考にするとともに、子 どもや保護者をはじめ幅広い関係者の意見を踏まえていくことが必要である。暖かな愛 情に抱かれて育まれるべき子どもが、個々の家庭での養育が困難であれば、社会の責任 として必要な対応を講じるという強い意思の下、社会的養護の改善に向けて取り組んで いくことが必要である」、こういう結論を得ました。  全文をお読みすることはできませんでしたけれども、一応概要ということで、この「 社会的養護のあり方に関する専門委員会」の報告をさせていただきます。 ○岩男部会長  大変ありがとうございました。子どもの視点に立った、また、子どものニーズを踏ま えた、大変目配りの効いた御報告をいただいたと思います。先生方、本当にありがとう ございました。  ただいまの御報告につきまして、何か御質問がございましたら、どうぞ御自由に御発 言をいただきたいと思います。  よろしゅうございますか。先生方、特にございませんか。  堀先生も特に御発言はございませんか。 ○堀委員  大変よくまとめられていて、何も意見はないのですが、最後の図について、後で審議 する児童部会の報告とも関連がありますので、感想を述べさせていただきます。社会的 養護のあり方に関し、市町村とか児相、里親、施設などは、この図に書いてあるのです が、本文の中では、地域社会全体による養護という視点が書かれてあり、これについて は図にはありません。子どもを地域社会で支えるような図があったらなと思いました。 ○松原委員  ありがとうございます。そこのところの御説明を抜かしていたのですが、外側に点線 がついておりまして、少し強くめくっていただきますと見えます。この点線の意味は、 保健・医療・教育機関などの支援・連携ということで、ここに地域全体が、こういった 社会的養護というものを支援していくという意図はここで含めて考えておりました。御 説明が抜けました。申し訳ございません。 ○岩男部会長  渡辺先生、何か御意見ございますか。 ○渡辺委員  ありがとうございます。  医療の側からの付け足しですが、今、新生児医療、障害児医療が発達した結果、病院 から帰れない、病院が家庭になっているお子さんが増えております。実際には、小児外 科の病棟で、生まれてから1度も家に帰れずに、例えば肛門の問題があったり、身体機 能のために病院にずっといる子どもたちが、ベッドにほぼ縛りつけられた状態で、保育 をも何も受けられないということがあります。もう一方では、思春期以降、例えば心不 全などで新機能が悪化した子どもたちが、思春期そして青春期の初めを小児科病棟で過 ごしております。恐らくこういう子どもたちの問題は医療の側では深刻ですが、もう一 方では緊急性の医療の危機がありませんので、病棟の端っこの方に置かれて、みんなで やりくりしている状況です。やはりそういう子どもたちの問題も社会的養護の範疇に入 れていただければなと思いました。 ○岩男部会長  何かコメントがおありでしょうか。 ○松原委員  ありがとうございます。専門分野からの御助言でしたので、ここで医療との連携とい うことで図の中には入れております。ただ、実際、そういう長期にわたる入院について 、こういう連携の中でどう具体的な対応をするかについては書き込めておりませんので 、今後また議論する機会がありましたら、ぜひ視野の中に入れて議論させていただきた いと思います。 ○岩男部会長  ほかによろしゅうございますか。  それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。  次の議題は、「児童虐待への対応など要保護児童および要支援家庭に対する支援のあ り方に関する当面の見直しの方向性について(案)」でございます。これまで当部会に おける議論や、ただいま御報告をいただきました専門部会の議論を踏まえた児童部会と しての全体の報告書案が提出されておりますので、これにつきまして事務局から御説明 をお願いいたします。 ○中村総務課長  それでは、お手元の児童部会としての報告書の案、資料3に沿って御説明をいたしま す。  報告書は5つの部分から成っておりまして、最初に構成を御説明した後で個別部分の 御説明をしたいと思います。  1ページ目でございます。「はじめに」ということで、これは児童虐待の問題を中心 にこの1年ぐらい、2つの専門委員会、当部会ということで検討をしてまいった経緯で ございます。2ページに、「今後の児童虐待防止対策のあり方について」ということで 、6月にまとめていただきました児童虐待の専門委員会の報告書を中心にエッセンスを まとめさせていただいております。4ページは、3ということで「今後の要保護児童お よび要支援家庭に対する『都道府県・市町村、児童相談所のあり方等について』という ことで、当部会が中心になって議論したことのまとめでございます。11ページでござい ます。先ほど御報告がございました社会的養護の専門委員会でのまとめを中心に、「今 後の要保護児童および要支援家庭に対する社会的養護のあり方について」ということで まとめさせていただいております。15ページ、最後に「今後に向けて」という構成にな っております。それから、先ほど議論がございました、別添の社会的養護の今後の姿と いうことでのポンチ絵が最後についているという構成でございます。  それでは、1ページにお戻りいただきまして、「はじめに」のところから要点を御説 明させていただきます。  真ん中のあたりでございますけれども、児童虐待が依然として深刻な早急に取り組む べき社会全体の課題であるとの認識の下、児童虐待防止法が法律の附則において「法律 の施行後3年を目途とした見直しの検討」を求めていることを一つの契機といたしまし て、先ほどお話しいたしましたように、今後の児童虐待防止に向けた対応のあり方を検 討するため、昨年12月に当部会の下に「児童虐待の防止等に関する専門委員会」が設け られまして、6月に報告書がまとめられたところでございます。  この中では、今後さらに議論すべき問題として、児童相談所のあり方や市町村の役割 、さらには児童福祉施設の体系や里親のあり方などについて、単に児童虐待への対応と いう観点のみならず、もっと広く要保護児童、さらには要支援家庭に対する支援も含め た観点から検討が必要であるということの指摘がございましたので、児童相談所のあり 方や市町村の役割については当部会において、児童福祉施設の体系あるいは里親のあり 方については「社会的養護のあり方に関する専門委員会」を設けてそれぞれ検討してま いりました。社会的養護の専門委員会につきましては、10月27日に報告書がとりまとめ られております。こうした2つの専門委員会あるいは当部会の議論を踏まえまして、全 体として、児童虐待への対応など、要保護児童及び要支援家庭に対する支援のあり方に 関する当面の見直しの方向性ということで、全体的なとりまとめを行おうというもので ございます。  次に2ページの「今後の児童虐待防止対策のあり方について」の (1)として4つの柱 を掲げさせていただいております。まず、1点目が「発生予防から虐待を受けた子ども の自立に至るまでの切れ目のない支援」、2点目が「待ちの支援から要支援家庭への積 極的なアプローチによる支援へ」、3点目が「家族再統合や家族の養育機能の再生・強 化を目指した子どものみならず親を含めた家庭への支援」、4点目が「虐待防止ネット ワークの形成など市町村における取り組みの強化」でございます。  3ページ目につきましては、 (2)「発生予防から虐待を受けた子どもの自立に至る具 体的な取り組みの方向性」ということで3つの柱になっております。1点目が「発生予 防における取り組み」ということで、虐待につきましては、その発生を未然に防止する ことが極めて重要であるということでございまして、これにつきましては、一般的な子 育て支援の充実。これは、今年の国会におきまして、児童福祉法の改正でありますとか 、次世代育成支援の法律等々成立しておりますけれども、そういった一般子育て支援の 充実を進めるとともに、保健師等による専門的な支援につきましては、効果的に虐待を 未然に防止していくという観点から、支援を望む人に幅広くということもあるわけです けれども、支援を必要とする人によりきめ細かくということで支援の重点化を図ってい くことが必要であるということでございます。  2点目の「早期発見、早期対応における取り組み」ということでは、この部会でも議 論になっておりますけれども、児童相談所の現行の体制には限界があるということで、 業務について、市町村との役割分担、あるいは、より幅広い専門職種との連携強化、さ らには市町村における虐待防止ネットワークの設置の一層の推進を図るということを書 かせていただいております。さらに、児童相談所の虐待ケースへの対応力の強化を図る 一環といたしまして、司法の関与について一定の仕組みを導入することが必要であると いうことで、ここでは、保護者の意に反する施設入所等の措置を期限付きのものにする とか、あるいは、審判前の保全処分の仕組みでありますとか、あるいは、保護者に対す る指導の実効性を高めるための司法関与等を書かせていただいております。  4ページでございますが、3点目の柱といたしまして、「保護・自立支援における取 り組み」ということで、その中では、虐待を行った親に対する治療や指導の充実という ことで、そのために保護者に対する治療・指導プログラムの充実、さらには家族再統合 に向けたプログラムの開発について研究を進めることが必要であるということでござい ます。もう1点は、可能な限り家庭的な生活環境を保障するということで、子どもの個 々の状況に応じてきめ細やかなケアを行えるよう、里親制度の充実、施設におけるケア 形態の小規模化を進めるとともに、自立援助ホーム等の充実を促していくことを書かせ ていただいております。  それから、当部会で議論を中心的に行っていただきました「今後の要保護児童および 要支援家庭に対する『都道府県・市町村、児童相談所のあり方』等について」の部分で ございますが、5ページの下のあたり、「こうしたことを踏まえれば」以降ですが、「 今後の児童相談のあり方としては、できる限り身近な市町村を主体としつつ、行政権限 の発動等の役割や専門性を踏まえた都道府県との適切な役割分担を考えることが必要で ある」ということを基本的な考えにいたしまして、6ページの第2段落目のあたりです が、具体的には、養護相談や障害相談を含め、子どもと家庭に関する各種の相談全般を 一義的に市町村において受けとめ、対応可能なものについては必要な助言・指導を行い 、さらなる専門的な指導や判定、一時保護や施設入所措置等の権限の発動を要するよう な要保護性の高い事例など、当該市町村における対応が困難であると思われるケースに ついては、児童相談所に速やかに連絡し、児童相談所中心の対応とするなど役割分担を 行い、児童相談所の役割を重点化していくことが必要であるということの整理をさせて いただいております。  なお、 (2)のところで前回と少し変わった点で付け加えた点をお話しいたします。ネ ットワークの部分ですが、真ん中のあたりですが、「その際、ネットワークが実質的に 機能するためには、その運営の中核となって、関係機関相互の連携や役割分担の調整を 行う機関を明確にするなどして責任体制の明確化を図ることが重要である。また、ネッ トワークにおける情報の共有化が円滑に行えるよう、個人情報の取り扱いに関するルー ルの明確化なども検討すべき課題である」ということで、ネットワークについて、事務 局をきちんとするということと、情報の共有化を進めると同時に、守秘義務なども視野 においたルールの明確化をしなさいということを書かせていただいております。  それから、 (2)の最後のあたりですが、当部会でも議論になりましたけれども、児童 相談所における介入機能を強化するに当たっては、援助を行うためのソーシャルワーク の技法について、介入的アプローチから出発した方法についても確立していくことが必 要だという点を書かせていただいております。  7ページの (3)について簡単に御説明いたします。1点目は、児童相談所の必置規制 についてです。この点につきましては、1段落目の最後のあたりで「慎重に考えるべき である」ということで必置規制の継続を求める書きぶりになっております。2点目の中 核市における児童相談所の設置につきましては、中核市においても設置が図られるよう にすることが適当であるという整理にさせていただいております。ただ、その設置に当 たりましては、7ページの下のあたりですが、「中核市における児童相談所の設置につ いては、地域の実情に応じ、段階的に進めていくことが適当である」ということで、段 階的に進めるという考え方を明らかにしております。  8ページでございます。3点目、「障害相談、障害判定、障害児施設入所措置」につ きましては、こうした権限の市町村への移譲につきましては、専門性の確保や効率性の 観点、さらには支援費制度に移行した障害児に対する居宅生活支援に関する制度の施行 状況等を踏まえて検討することが必要であるということで、引き続き検討していくとい う形になっております。  4点目として、「非行児、不登校児への対応」がございます。  5点目として、「児童福祉施設や里親との連携、協働」についての強化が必要だとい う点を強調しております。  9ページに参りまして、6点目、「児童相談所職員への配置の充実、専門性の確保・ 向上」につきましては、児童相談所について重点化を図っていくわけですけれども、職 員の配置等につきましては、引き続き児童福祉司や心理判定員など必要な職員体制の確 保に努めることが必要であるということと、その職員の専門性の確保・向上につきまし て、それぞれの地方自治体において人材登用に関する様々な工夫と実践的な研修、さら にはスーパーバイザー体制の充実を求めております。  7番目の「児童福祉司の必置規制、任用資格のあり方」についてでございますが、児 童福祉司の必置規制の緩和につきましても、こうした児童相談所の役割を的確に果たし ていくためには、高度の専門性を確保することが必要であるということで、慎重な検討 が必要であるということで、引き続き規制を求める形になっております。ただし、こう した任命につきましては、必要な専門性を確保することを前提にして、児童福祉司の任 用資格を見直し、例えば保健師、助産師、看護師、保育士、児童指導員、教員等、幅広 い人材が登用できるように検討してはどうだろうかということでございますし、その際 に、単に資格を持っていることのみならず、一定期間従事した経験があるという実務経 験であるとか、一定の研修を受講するといったようなこととセットで考えるべきである という指摘にしてございます。  8番目の「心理判定員の業務および名称の見直し」につきましては、心理判定員の業 務について、虐待を受けた子どもさんや虐待を行った親に対する心理療法の実施等機能 を強化することが求められるということと、名称につきましても、業務の実態を踏まえ た形で見直してはどうかということ。それから、前回の客文に加えておりますのは、9 ページに一番下ですが、相互連携の強化、大学との連携強化というような文言を書かさ せていただいております。  10ページの9番目のところですが、一時保護所につきましては、児童相談所に付置す ることが原則とされている一時保護所そのもののあり方について、他の児童福祉施設等 との機能分担を含め検討が必要であるということと、その際に、児童福祉施設の一時保 護機能の強化あるいは里親さんへの一時保護委託をするなど、積極的な活用を進めてい くことも必要であろうということで、例えば、当面、特に処遇上の課題が多いとされる 、虐待を受けた児童と非行児との混合処遇の緩和の観点から、地域の実情に応じ、児童 自立支援施設の一部を活用することについて、施設入所措置児との処遇の混乱を避ける などの適切な配慮措置が講じられていることを前提にその促進策を検討することである とか、あるいは、そのケアの連続性を確保する観点から、あらかじめ施設入所が見込ま れるケースについて、地域の実情に応じた地方自治体の主体的判断により柔軟に一時保 護制度を運用できる仕組みを検討するという点を提案として書かさせていただいており ます。  なお、前回の文案に加えておりますのは、先ほどのところですが、長期化する一時保 護中の子どもの教育の保障のあり方についても検討することが必要であるということで 、教育の問題についてコメントをさせていただいております。  10番目として「その他関係機関の役割、あり方」について、前回に2つ付け加えさせ ていただいております。1点目は11ページの3段落目でございますが、「また、国にお いては、地域の実情に応じた市町村における様々な効果的な取り組み事例を収集し、情 報提供を行うような取り組みも求められる」ということと、その次の段落の最後ですが 、「児童委員に対する研修の強化を図ることが必要である」ということで、研修の必要 性についても付け加えさせていただいております。  4の「今後の要保護児童および要支援家庭に対する社会的養護のあり方について」に つきましては、先ほど松原先生から御報告をいただいたもののエッセンスをまとめたよ うな形になっておりますが、「基本的考え方」につきましては、社会的養護については 、子どもの権利養護を基本とし、その役割としては、子どもの健やかな成長・発達を目 指し、子どもの安全・安心な生活を確保するにとどまらず、里親への委託や施設への入 所などを通じて、心の傷を抱えた子どもに必要な心身のケアや治療を行い、その子ども の社会的自立までを支援することにあるという役割を強調すると同時に、家族の再統合 や家族や地域の養育機能の再生・強化といった、親をも含めた家族や地域に対する支援 も社会的養護本来の役割として取り組むことが必要であるということで、家族あるいは 親の問題、さらには地域に対する支援ということも社会的養護の視野の中に入れるべき だという形で整理させていただいております。  12ページですが、家庭的養護、里親あるいは里親によるグループホームということで ございますが、この問題につきましては、里親制度の普及あるいは活用ということで、 この制度についての一層の啓発に努めることが必要であるということと、その制度につ いても、里親によるグループホームの問題であるとか、あるいは、里親さんに対する支 援の充実という点、さらには施設については親権の一部代行という規定が既にあるわけ ですけれども、里親さんについてはそういう規定がないものですから、親権の一部代行 のある里親の責任等も明確にするというような法制的な対応についても記述をさせてい ただいております。  (2)の施設養護のあり方については、1段落目のあたりですが、子どもの視点に立って 、大規模な集団生活ではなく、より家庭的な生活の中での個別的なケアの提供を基本と した上で、各施設の本体施設を、治療機能等を有する基幹施設として位置付け、高度な 支援が必要な子どもへの対応が可能な専門職員を配置する方向を目指すべきであるとい う言い方になってございます。児童福祉施設につきましては、こうした将来的な方向を 見据えた上で、子どもの自立を視野に入れて生活面、治療面での個々の子どもの要請に 応えられるようにやっていくこと。さらに、ケア形態の小規模化の必要性、さらには専 門的支援機能、在宅支援機能、一時保護機能など、地域の拠点としての機能を充実させ ていくということで、 2つの方向性を書かせていただいております。  13ページの家族関係調整、地域支援ということですが、2段落目のあたりで、児童福 祉施設については、施設に入所した子どもの家庭復帰や家族再統合に向けて子どもの支 援のみならず児童相談所等の幅広い関係者と連携しつつ、家族への支援や親権者等との 関係調整を適切に実施していくこと。それから、退所後の問題といたしまして、アフタ ーケアを充実していくこと。さらに、養育に関する専門知識、経験を生かして、地域の 子どもやその家族に対して必要な支援を行っていく。そうしたことを記述させていただ いております。  (4)として「年長の子どもや青年に対する自立支援」ということで、子どもの自立を支 援していくための問題として、生活拠点の確保、就労支援が重要であるということで、 施設退所後等の当分の間、あるいは求職期間中の生活を支えることが可能な実効ある制 度的対応を検討すべきであるということと、自立援助ホームについて、設置数の拡大あ るいは機能の強化ということを求めております。さらに、年齢の問題について、対象年 齢から外れたものであっても、必要に応じて支援を継続していくということができるよ うにすべきだということでございます。  (5)の「社会的養護の質の向上」という点では、虐待の防止の徹底など、子どもの権利 養護のための取組みを強化していくことが必要だということがございまして、質の向上 という点では、いわゆるアセスメントということで、一人ひとりの子どもの状況に応じ た最適な支援を行うための家族の十分な実態把握・評価が重要であるということ。それ から、専門性を確保するという点では、養成研修ということの必要性、あるいは、サー ビスの質の向上のために、それがきちんと評価されていくことが必要だということを記 述させていただいております。  (6)のところでは、「学校教育など関連分野との連携」と、先ほど申しましたように別 添の案のような見取図を、目指すべき仕組みの姿ということで掲げさせていただいてお ります。  15ページは、「今後に向けて」ということで、この中では、この報告を踏まえた上で 、児童福祉法などの関連する法律の改正を含めまして、御提案があった課題について着 実に取り組んでいくことを期待するということと、さらに、こうした取組みの延長線上 として、適時適切な制度のあり方の検討が継続的に行われて必要な措置が講じられてい くことが求められるという、継続的な検討の話。さらには、今後、地域の子育て支援サ ービス、保育サービス等社会的養護システムを含めた子どもと家庭に関するサービス全 体を通したサービス提供主体のあり方や措置制度のあり方など、幅広い観点からの議論 が行われることを期待するということで、要保護児童対策と保育を中心にしたサービス との統合的な視野を持ったシステムの検討ということを求めていくという形になってい ます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明に基づいて議論を進めていきたいと思いますが、まず初 めに、本日御欠席の津崎委員からコメントをちょうだいしておりますので、それにつき まして事務局から御説明をお願いいたします。 ○事務局  津崎委員から、本日、大阪市児相の審議会と重なり参加させていただくことができな いということで、実務のお立場を踏まえた御意見をちょうだいしておりますので御紹介 させていただきたいと思います。  読み上げさせていただきます。  児童相談所の体制強化の必要性は、報告書の中にも触れられているとおりですが、特 に中央児童相談所の機能強化については、その役割の重要性を鑑みれば内部職員の強化 だけでは困難であり、外部の専門職や専門機関による支援を前提にした組織全体の体制 強化が不可欠であり、それを可能にするための施策の整備が必要と考えられます。  児童相談所の新たな体制、大筋では特に異論はございませんが、中核市の児童相談所 が中央児童相談所から分離独立した場合、下手をすれば機能の弱い児童相談所が2つで きてしまったということになりはしないかと幾分懸念が生じます。したがって、意図ど おり、連携を前提にしたシステムなり、実務がよりよい形で流れるために、児童相談所 の相当な強化、とりわけ中央児童相談所には集中的な体制の強化策を導入し、ブランチ の児童相談所や中核市の児童相談所、さらには市町村の体制などをサポートできる体力 が要るように思います。  この体力の強化のためには、報告書にも触れられていますような内部組織の強化のた めのいろいろな手立てが必要ですが、それだけでは不十分で、外部人材の導入によって 組織をより強化する対策が要るように思います。  私たちの経験で言うと、これまで最も力になったのはやはり弁護士さんたちのバック アップです。今、大阪では二十数名の弁護士がサポートしてくれており、大阪府も含め て8か所の児童相談所に複数の窓口弁護士を配置し、問題のケースが生じればいち早く 窓口を通じ数名の弁護士がチームをつくって対応していただける体制ができています。 このことにより、職員のストレスが低減され、また法的対応に臆することなく取り組め て組織の安定化と強化に大いに寄与しています。したがって、このような体制の普及、 拡充が課題の一つのように思います。  続いて、さらには小児科や精神科医によるサポートが必要に思います。これに関して は、現在、大阪市で、24行政区の実務者会議をサポートするために、医療支援システム を構築すべく調整しているところです。  要は、県あるいは政令市等の医療機関や医師が、児童相談所や実務者のネットワーク 会議をサポートできるよう支援システムを整備し、必要に応じて兼務発令を出すなど福 祉と一体となった体制を構築する必要があるように思います。  さらには、力量のある職員による日常的SV体制の構築も欠くことができない要素です が、内部に適任者がいない場合、外部人材を活用した実践的な評価、処遇戦略、行動決 断と実践的やり取りのできる組織体制をつくり上げる必要があるように思います。よく 耳にしますのは、会議を持っても堂々巡りになり一向に決断ができないということが多 くあるように思いますので、子どもの虹情報研修センターなどから月単位での派遣も含 めて、実践力のある人がノウハウを直接的に伝授できる体制の整備が必要なように思い ます。  そして、最後になりますが、市町村のネットワークや相談体制が実質的に機能するた めには、単なる事務的担当者の配置ではない、専門職配置を窓口やコーディネーターと してしっかり確保する必要があるように思います。大阪市の場合、そのような観点から 、市内24区に虐待・DVの専任対応主査と子ども家庭支援員を新たに配置して、実務者 のネットワーク体制を児相と本課の協働でつくりつつあります。しかし、新たな要員配 置は相当壁が厚いことも事実ですので、困難であれば家児相の常勤化による組織として の責任体制の明確化でもかなり違うだろうと思います。実際に現場を見ていますと、組 織的動きという意味で、常勤と非常勤ではかなり仕事の中身や影響力が違うように思い ます。非常勤の場合、下手をすると個人的趣味のような仕事で終わってしまうような実 態が少なからずあるように思います。  なお、市町村や区のネットワークを軌道に乗せるには、会議の実質的リードやケース に対するノウハウの蓄積など、児童相談所職員の相当のてこ入れが必要で、少なくとも 最初の数年間はかえって児童相談所の負担が増す覚悟を引き受けることが大切なように 思います。  以上、実務を通しての幾つかの印象をお伝えさせていただきます。  ということでございます。なお、御趣旨を踏まえた若干の加筆をさせていただきまし て、報告書そのものの内容につきましては、了解、御一任をちょうだいしております。  以上、御報告でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、報告書案について御意見を伺いたいと思います。どなたからでも御発言を お願いしたいと思います。  なお、本日をもちましてこの報告書のとりまとめとしたいと思っておりますので、御 協力をよろしくお願いいたします。 ○渡辺委員  大変包括的なまとめをいただきましてありがとうございました。実際に私どもの診療 の日々は、新たな虐待状況が次々と出てきておりまして、そのたびに家庭で障害児のケ アに疲れ果てたお母さんが首を絞めかけているときにどうするかというと、保健所の保 健師さんたちで、そのお母さんを私どもがケアしている間に、障害がある子どもさんの 一刻も手抜きのできないケアをしていただく。  そういったことですけれども、そのときに改めて思ったのですけれども、この報告書 の中で、恐らくは、当たり前のことと思っているのであえて書かれていないのではない かと思いますが、24時間子どもの命を守れる体制があるところは小児科病棟です。小児 科病棟というものが、小児科医が当たり前のように、子どもさんが家でケアできなくな ると預かっておりますし、もう一つは、小児科医が地域で唯一家庭の中まで自然に入り 込んで、必要があれば往診もできますし、親子のやりとりも見れます。しかし、小児科 は決して弁護士を呼んだりせず、そういうところで自分が見ているケースを虐待まで行 かない前に何とかしようと思っているわけです。いわゆる虐待が見えない、早期発見シ ステム、予防システム、あるいは進行させないシステムが、小児科医のホームドクター や、小児科病棟でなされているんだなと思いました。て  そこで、津崎先生のメッセージにもありましたように、私は、例えば連休のときの緊 急体制といっても、児童相談所は閉まっていますので、もちろん、特別な緊急の24時間 システムがある地域は違いますけれども、唯一子どもが安全に過ごせるところは、各地 域の小児科の病棟の空いているベッドですので、これからは特に、市町村の方に機能を もう少し広げていただく場合、公立の小児科病棟が果たし得る機能は意外と奥が深いの ではないかと思いました。  まず、周産期センターには、乳幼児の虐待のケースは常時あります。未熟児が家に帰 って、思うようにミルクを飲んでくれないとか、帰った家が、赤ちゃんの鳴き声でお父 さんが怒ってしまうとか。ですから、常時、周産期センターは虐待のケースを当たり前 のように扱っております。それから、私ども大学の病院ですけれども、私立の大学病院 でも、常時、虐待のケースを受け入れています。それは、純粋に虐待だと思うので入れ る場合もありますし、疾患がある子どもたち、障害がある子どもたちは、家族が疲弊し ますので、そこから母親がたたいてしまったり、苦しめてしまったりが日常茶飯事です し、子どものケアにお母さんがのめり込みますと、今度は父親が浮気したりいろいろな ことを起して、父親のドメスティックバイオレンスもありますので。  そういった虐待を24時間体制でわりとオープンに見れる場所として小児科があります ので、小児科医の機能をもう少し生かしていただければと思いました。小児科医は、当 然のごとく、研修医1年目から虐待をどう早期発見するかとか、どのように通告するか ということは、小児科内部の研修の中で、いろいろなマニュアルにも全部書いてありま すし、小児科は小児科でやっておりますけれども、私どもは、児童相談所の方と密に連 携ができて、児童相談所の方たちも見に来てくださったり、日ごろ必要があれば私ども が出かけていったり、置いていただくということは、公的な一つのシステムとして実現 すればと思いました。ちなみに、慶応では、毎月、重い幾つかのケースに関して児童相 談所の方たちが来てくださって、大変熱心に私どもと話していただいて、一つのモデル ケースは実現していると思います。  それから、この報告書の中に大学のことを加えていただきまして、本当にありがとう ございました。私も、津崎先生のメッセージの中にもありますように、私どもがどのよ うに児童相談所の機能をささやかながら応援できるかということですけれども、そこら 辺を発言しながら、何かエビデンスがなくて発言していて非常に心苦しかったのですけ れども、たまたま今週から来週にかけまして、児童虐待の問題などにかかわる助産婦、 保育士、看護師、小児科医が集まる会が富山で行われまして、そこにオーストラリアの メルボルン大学から児童精神科医が来ます。彼は、地域の保健婦さんや保母さん、学校 の先生たちに対してトレーニングコースを持っていて、トレーニングシステムをしてい て、そういったものを客観的に評価しているんですね。キャンベル・ポールという児童 精神科医が水曜日に来まして、土日と富山におりまして、火曜日に慶応に参ります。そ れから、土曜日に、安田生命という私立の財団ですけれども、そこで講演会をいたしま す。たまたま気がつきましたので、この講演会のチラシなども持ってまいりました。こ れは単にたまたまあったもので、少しリアリティがある方がいいと思ったもので。ぜひ 、こういったものを通じて、自発的に現場の方たちが力をつけようとしているというこ とです。  もう一つは、同じ大会にワシントン州のシアトルの大学が、地域の保健婦さん、保母 さんたちに対して、2年コースの乳幼児の虐待を防ぐための家庭訪問の仕方のトレーニ ングをしているコースがありまして、それもこういったパンフレットがあるのですけれ ども、これは公募で、地域のやる気のある人がいくらでも応募していいものです。応募 しますと、これは授業料が必要ですが、ワシントン州が奨学金を出しまして応援してお ります。これは2年コースで、16名の大ベテランの保健婦さんや自閉症の治療者、そう いう方たちが本格的な専門家になるためのトレーニングをしているのですけれども、概 要を日本語でこの中に書いてもらったものが今朝出来上がりましたので、これをまたお 配りします。  そして、たまたまシアトルからの研修プログラムを受けている日本人も、この1週間 ぐらい慶応の近くにおりますし、ポール・キャンベルという先生も私がお世話すること になっておりますので、たまたまおりますので、せっかく日本の児童相談所が大きく脱 皮しようとなさっている時期なので、もし何かお役に立てるようでしたら、私の方に問 い合わせていただければ、いくらでも個人的に会っていただいたり、そういうお手伝い ができると思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。 ○中村総務課長  先ほどの小児科の先生方の活動についての部分ですが、3ページを見ていただきます と、小児科の先生方を中心にしたお医者さんの活動の中での虐待の早期発見につきまし ては、虐待の専門委員会の中でも随分議論になりました。そういうこともありまして、( 1)の「発生予防における取り組み」ということで、保健事業の充実と並んで保健・医療 や福祉等の連携による取り組みということも書かせていただいておりますし、「具体的 には」というところのあたりですが、「妊娠中から出産後間もない時期を中心に、母子 保健事業や日常診療等の強化を図り」ということで一応書かせていただいておりますの で、実際に今後、日本医師会では発見のマニュアルのテキストなどもつくられて会員に 配られたというような取組みもしていただいておりますので、より一層そうした取組み を進めていただければと思っております。  それから、公立の病院・診療所というお話も出てまいりましたけれども、実は、国民 健康保健の直営診療所とか病院の会の方でも、やはり少子化の中で、これまで介護の話 で随分と地域包括医療ということでやってこられたのですが、少子化が進む中で、国保 の直営診療所あるいは病院がどのようなことができるかということの議論を始めていた だいたり、医療のサイドでも、虐待の問題のみならず子育て支援、例えば病後児保育と か、そういうものについてどういうことができるかということを考えていただけるよう な気運が出ておりますので、今日、渡辺先生がおっしゃったような話がうまく生かされ ますように、我々も取り組んでいきたいと思っております。 ○岩男部会長  ほかにいかがでございましょうか。 ○松原委員  報告書全体としては大体よくまとめられていると思いますが、少し気になることで一 つだけ発言しておきます。  具体的な例としては、母子生活支援施設だろうと思いますが、入所の圏域が狭くなる 。かつては措置ということで市単位の措置でしたが、保育所方式による利用に変わりま したが、なかなか広域の利用が実際的には難しいということがあって、児童相談所が中 核市等でも設置できるようになりますと、その中核市と圏域での一時保護や児童福祉施 設の入所の広域での措置がすごく気になって、これがうまくいきませんと、片方で一時 保護所が満杯で、片方で人員に余裕がある。でも、なかなかうまく融通がきかない。あ るいは、児童福祉施設の入所についてもそうであるというようなことが懸念されますし 、児童相談所が持つ大きな機能として措置機能があって、それがうまく生かされない。 それは、先ほど津崎委員がおっしゃっていた、2つの弱い児童相談所ができてしまうと いう懸念にもつながるかと思うので、具体的に言うと、そういった措置の広域的な連携 も大切なことだろうと思います。  そういう意味では、連携ということを随分書いていただいておりますので、それで包 含されているという理解でもいいのかと思いますが、例えば8ページのところに、第2 段落目ですが、なお中核市が児童相談所を設置することになった場合ということで、こ こには様々な具体的な連携ということが書かれておりますけれども、ここの中に、例え ばどこかにそういう措置に関する相互連携という文言が入れられないか、あるいは、も う少し広域的な措置に関する連携とか、最後の段落のどこかにそういう文言が入れられ ないかなと思っておりますが、いかがでしょうか。 ○岩男部会長  ただいまの津崎先生の御指摘、渡辺先生の御指摘、またこれからほかの委員からも御 指摘があるかと思いますけれども、できるだけ委員の御意見を盛り込んで、若干の修文 をして最終案にすることにさせていただきたいと思っておりますので、事務局の方で、 例えばただいまの松原先生の御指摘について、何かございませんか。 ○中村総務課長  今お話があった件は、中核市による児童相談所の設置のみならず、どちらかといいま すと、児童相談所同士の連携のような話、あるいは、場合によると県を超えてもあるの かもしれませんので、そういう趣旨で適当な場所にそういう文言を書いていくことがよ ろしいのかなという感じを持ちました。 ○岩男部会長  例えば「柔軟な連携」というような言葉でしょうか。 ○松原委員  そうですね。やはりそういうことがないと、細分化されることでそれぞれの力が弱く なってしまうということがあるので、場所等はお任せしますが、言ってみれば、あまり 縦割り行政にならないような何か留意点がつけられたらなと、そういう気がします。 ○岩男部会長  ほかにどうぞ。 ○網野委員  私も、この内容は、2つの委員会の報告と、児童相談所あるいは市町村についてはこ こでも随分議論されましたので、これを踏まえた総括的な報告書になっていると思って おります。  ただ、3つの点で、意見として申し上げたいことがありますので、順に申し上げたい と思います。  1点目は、9ページの「児童福祉司の必置規制、任用資格のあり方」のところで述べ られていますが、この趣旨は、もし地方分権とか規制緩和ということで児童福祉司をも っと任用しやすいようにということの趣旨であれば、いろいろ考えられることがあると 思いますが、むしろ、この報告書の全体のトーンは、児童相談所の専門的役割がますま す重視しているというところがかなり強調され、しかもそれが本当に大事なことになっ ていると思います。そういう点では、必置規制を緩和するというよりも、どちらかとい うと必置規制を改善するような趣旨が若干含まれているのではないかと思います。もっ と押し進めた表現をしますと、この児童福祉司の専門性を充実・強化するために必置規 制をどうしたらいいかという部分まで含まれているのかなと思います。  ちょうど津崎委員がコメントを述べられた中にもありましたが、内部人材の導入とい うときに、弁護士という職の人が児童福祉司になることも不可能ではないと思いますが 、どちらかといいますと外部との協力で、ソーシャルワーク、ケースワークを進めてい きやすい、ケースへの対応が進めやすいという大きな利点があると思いますが、現在の 任用資格の要件から言いますと、言うまでもなく、準じるという部分はそぎ落としてい く方向が、むしろかなり改善になると思いますし、それは緩和ではなくて、もっと充実 させる方向になると思います。  ここに書かれているような保健師、助産師、看護師、保育士、児童指導員、教員、こ ういった方たち、あるいは弁護士。医師は現在でも児童福祉司になれるわけですが、そ ういった点で言いますと、ちょうどこの報告書に出されているように、受容的なアプロ ーチと介入的アプローチ、今回の報告書では、新しいこれからの方向性ということでは 非常に重要なポイントを指摘していると思いますが、その両面から充実させるという点 で、私は、この指摘、9ページの内容は非常に重要だと思っています。むしろ、規制緩 和はよろしくないというよりも、規制をもっと本格的にきちんと捉えた方がいいという 趣旨でこのようなことを表現上も、そのような性格があらわれるような表現がもし可能 なら、私はそれの方がよろしいかと思います。  2番目が、随所にいろいろ表現されている一時保護の機能でちょっと触れたいと思う のですが、特に虐待への対応がかなり中心になって、一時保護所の機能あるいは一時保 護の委託ということがいろいろ出ているかと思います。そういう点では、8ページの(2) のところがそうですし、10ページも、言うまでもなく児童相談所の一時保護所のあり方 あるいは機能分散もそうですし、さらには12ページでも、社会的養護のあり方委員会の 報告を踏まえた施設養護のあり方で、特に12ページでは、報告書にもありましたが、「 入所している子どもの処遇に支障を来すことのないよう配慮しながら」という中にも、 一時保護機能が含まれています。さらに、13ページにかけてのところでも、(3)の「家族 関係調整及び地域支援」でももう一度、「一時保護機能など諸機能の充実・強化」と書 かれています。  私は、歴史的に見ても、審議会がこれだけ児童相談所について詳しく丁寧に触れて方 向性を示した点で、この報告書は非常に意義があると思いますし、さらに一時保護とい う点でも、今充実していかなければ、またなかなか難しい面があるかと思いますので、 これだけ触れているという点で非常に結構だと思いますが、実際にどう強化していくか という点では、やはり社会的養護のあり方の方でも、一時保護の委託といいますか、そ ういう点で、施設の体系を充実させ、職員の体制を充実させていって、そこに一時保護 の委託を可能な方向で広げることもあると思いますが、もう一つは、施設の役割として 、一時保護の委託を受けることができる部分をもう少しきちんと位置付けるかどうか。 これについての議論は今後の課題かもしれませんが、かなり議論をする必要があるかな と思います。  さらに、私は、実は渡辺先生が先ほどおっしゃられたことで、例えば、公立の小児科 病棟の有効性といいますか、そういうお話もありましたけれども、これは一時保護と表 現するのか、一時入院と表現するのかわかりませんが、やはり施設だけではなくて、今 でもやはり重症心身障害児施設のようなところは、一時保護の委託がかなり必要になっ てきていますし、医療的なケアを含めて、しかも保護ということから言いますと、児童 相談所の一時保護所以外の部分の一時保護機能をどのように位置付けていくか。それぞ れの社会資源が有効に機能できるような、そこまで踏み込むような表現が可能かどうか わかりませんが、その点で一時保護機能の強化ということを、できれば具体的な形でも う一歩強めることができるなら、私は大変賛成いたします。  3番目ですが、特に社会的養護のあり方で、本当に委員会でここまできめ細かくまと めていただきまして、その内容がこの報告書の随所に出ているわけですけれども、その 中で、施設養護のあり方、たくさん充実・強化しなければいけない。それから、職員の 養成・研修を強化しなければいけない部分が出てきていると思います。明らかに、例え ば小規模化とか地域子育て支援の強化、これは本当に必要だと思いますが、どうももう 一つ踏み込んでいくと、この中にも書かれていますが、施設全体の体系といいますか、 システム、これを見直していく、その施設の再編成という表現で出ているような部分を 、私は今後大切にしなければいけないと思っています。これは単に分化するだけではな くて、統合もあるでしょうし、連携もあるでしょうが、そういう施設体系の見直しをそ れぞれ考えていかなければいけない。恐らく、審議会は、今後そういうことがまた次の ステップとしてあるのかと思いますが、このような現状の分析と方向・課題を踏まえて 、施設のあり方について、今後十分議論していく必要がある。その点を表現するかどう かはともかく、欠かせない部分だと思っています。  具体的にもう一つ、施設養護のあり方の中で、専門職員をどう考えていくか。それを 考えていった場合、養成や研修を強化するだけではなくて、どうしても児童指導員とか 保育士、そのほかの様々な指導員さらには家族・ソーシャルワーカーと言っていいので しょうか、そのような児童福祉分野にかかわる施設職員の再編、かなり重要な質的強化 、これも結局は必置規制というか、規制緩和ではなくて、もう少し経験年数とかに準ず るのではない部分を本格的に踏み込んだ、例えば児童指導員、これは名称とか役割も全 部含めてもう一回見直す方向が出てくるのではないかと思います。特に家族ソーシャル ワークをどう位置付けていくか。児童相談所の仕事との関連で、この面も見直してどの ように方向付けるか、議論を今後ぜひ進めていければと思います。  以上です。 ○中村総務課長  3点のお話があったのですけれども、いずれも当面やれることと今後の話と整理させ ていただいて考えてみますと、特に最後の施設養護のあたりは、一応今回の報告書では 、社会的養護の委員会でもいろいろ御議論をいただいて、本体施設と小規模化という施 設全体の流れの方向をお示しいただいて、それを前提に当面こういう措置を講じたらと いう報告を出していただいたのですが、それを超えてさらに施設体系全体を議論するこ とについては、今回、当面講じようとしている措置を講じた上で、次のステップでまた 考えていったらどうだろうかという御議論であったかと思います。  それから、一時保護についても、現在抱えているいろいろな課題について、現在取り 組めることについてあちこちで触れていただいたのですが、それをさらに整理していく ことについては、また当面やった後の問題の議論かなと思っております。  それから、児童福祉司につきまして、今回考えておりますのは、地方分権会議から規 制緩和ということの指摘があったものですから、そういう方向ではなくて、むしろ、専 門性が期待されるという話なものですから、そういう緩和の措置については、否定的な 話をすると同時に、より子どものケアについていろいろ経験を積んだ方が、単なる資格 ではなく、任用できるように考えていってはどうなのかなという整理をさせていただき ました。  そして、弁護士さんの議論について、あるいは、小児科医さんの話については、7ペ ージの一番上のところですが、困難ケースについて児童相談所の対応力を高めていく。 もちろん、児童相談所の職員を充実していくこともあるわけですけれども、一方で児童 相談所は地方公共団体の施設、機関だという制約もあるものですから、中だけでなかな か対応できないとすれば、今日も津崎委員のお話がありましたけれども、児童相談所に よっては、外部にそうした応援チームをつくって、その機能を高めていくという現実的 なやり方をとっておられますけれども、そうしたことを進めていくことが重要ではない だろうかというような整理をさせていただきました。  いずれもそれぞれ御指摘の点はあろうと思いますが、なかなかいっぺんにできなくて 、まずはできるステップを踏んで、次の段階でまた考えていくというようなことかなと 思っております。そういうこともあって、これで全部終わりということではなくて、よ り広くいろいろなことを考えていかなければいけないというのを、「今後に向けて」の ところで書かせていただきました。 ○岩男部会長  こういう報告書はどうしても、非常に多くの議論をコンパクトな形にするものですか ら、ここに挙がっている言葉から多くのものを読まなければいけない書き方になってお りますので、恐らく先生はそれぞれ、もっとここを強くというお気持ちがあって、例え ば「一時保護機能などの諸機能の充実・強化」という言葉はちゃんと入ってはいるので すが、もっと強くというような御不満が残るのかなという気がいたします。  これまでいろいろ御指摘がございました点、修文ができるところはお任せをいただい て、できるだけ先生方の御趣旨を踏まえて若干の修文をすることにさせていただきたい と思っております。また、「当面の課題への対応」というところでは、十分にできない ことにつきまして、課長からお話があったように、「今後の取り組み」の方で扱うとい う形にさせていただきたいと思っております。  ほかにどうぞ。 ○柏女委員  私から2点を申し上げさせていただきたいと思います。この修文を求めるものではあ りません。今後のことを考えながらということで発言をさせていただきたいと思います 。  今回のこの児童部会の報告書につきましては、今ほど部会長さんからもお話がござい ましたように、当面の改善策についてとりまとめていただいたという点で、私は明日に でも取り組んでいかなければいけないということ、そして、取り組める可能性があると ころということでおまとめをいただいたことを大きく評価したいと思っております。  その上で、実はこの報告書をどのように具体化していくかというところに私の関心は あるわけですけれども、最後のところに、児童福祉法の改正を含め、制度の改革に具体 的にこれが生きていかなければいけないことになるわけで、どのように法制化されてい くのか、あるいは、事業として実現をするのか、そこが大事だろうと思っております。 この辺のところは、まさに我々の提言を事業化していくプロとしての厚生労働省の事務 方に本当に大きな期待を寄せたいと思っています。  そのときに、例えば6ページですが、都道府県の役割と市町村の役割についての役割 分担を行って、現実的には児童相談所の役割を重点化していく。そして、市町村の役割 として責任体制を明確化していくことがここで書かれているわけですが、これを具体的 にどのように児童福祉法の中で担保していくのか。例えば、今の次世代育成支援対策推 進法に伴う児童福祉法の改正の中では、子育て支援事業のあっせん・調整は市町村の役 割ということで規定されたわけですけれども、その市町村と児童相談所をつなぐルート は、現在の児童福祉法の中ではまだ書かれていないわけですね。福祉事務所と児童相談 所は相互に送致したり、調査の委嘱をしたり、照会したりすることはできるような仕組 みになっているわけですけれども、特に町村部についてはそれがないわけで、それをき ちんと、例えば児童相談所と市町村のあっせん・調整を行うところがうまくつながるよ うな仕組み、双方向につながる仕組みをぜひ検討していただければなと思います。そう しないと、前に申し上げましたような、市町村と児童相談所の見立ての違いによるすき 間に子どもが落ちてしまって命を失ってしまうということが起こってしまいますので、 そうしたところが非常に大事だろうと思います。そういう意味では、どのように法令上 に明記していくのかということはとても大切なことだと思います。  もう一つ併せて、児童福祉法に規定するということは、全国一律の仕組みとすべきだ という視点のものをそこに置いていく形になって、今度は、そこで細かく規定すればす るほど、都道府県や市町村で各自創意工夫すべきことを縛ってしまうことになることも あるだろうと思います。  例えば先ほどの、県立の医療機関に委託する、兼務発令をするとか、あるいは弁護士 さんを活用するとか、これらは国で一律に規定しなくても、各自治体の裁量といいまし ょうか、力量でできるわけですね。例えば教育委員会で委嘱して、スクールカウンセラ ーを知事部局で兼務発令して保育所に配置するとか、こうしたことは都道府県の段階や 市町村の段階でもできるわけで、こうしたことは都道府県や市町村の裁量といいましょ うか、あるいは、創意工夫といいましょうか、そこがすごく大事だし、それを阻害する ものであってはならないという思いがあります。そういう意味で、綱渡り的な法制上の 整備が必要になってくるのではないかと思っていますので、その力量に期待をしますと 。あるいは、調整の段階でまたこの審議会のメンバーの方々に、いろいろと専門的な意 見、識見をお持ちの方がいらっしゃいますので、聞いていただければありがたいと思っ ています。  2点目は、今後の検討ということですけれども、現在の仕組みを抜本的に改正する必 要、時期が来ているのではないかと思っています。現在の仕組みは都道府県が中心で、 行政による職権保護が中心で、そして児童福祉施設が中心。こういう仕組みは、子育ち とか子育ての第一義的な支援が、いわゆる地域社会の互助で担われていた時代につくら れたシステムだろうと思います。現在は、その地域社会における第一義的な支援という 互助の仕組みが崩れてしまったわけです。そして、その結果として、いわば出生数が史 上最低になり、みんなが保育所に入りたがり、さらにネグレクトが増える、子どもを生 まない、育てない、そんな社会になってきたのだろうと思います。  この時代では、児童家庭福祉サービスというのは、その互助を前提に都道府県で施設 中心で職権保護でやるというようにしていた仕組みを、もはや組み直さなければいけな いのではないかと思っています。それは、互助が崩れてしまった地域レベルに新しい仕 組みをつくりながら、昔の互助に代わる連帯の仕組みをつくっていく。そしてもう一つ は、今まで弱かった、そもそも援助を必要としない人たち。自分のしつけだからよけい なことはしないでほしいと言っている人たちを回復のプロセスに乗せていく仕組みがも ともと弱かったわけです。それを強化していく。子どもを生まない、育てない社会の中 ではそれを強化していくことが必要ではないか。そう考えますと、全体をもう一度と再 構成する時期ではないかと思います。  そういう意味では、今回の報告は、そのとりかかりということで評価しておりますけ れども、ぜひこれに続けて、今中村課長さんからお話がありましたけれども、次のステ ップに進んでいかなければいけないのではないかと思っております。  長くなりましたけれども、そんな感想を持ちながら参加させていただきました。 ○岩男会長  ありがとうございました。最初におっしゃった点は、恐らく全員が共通に強く希望し ているところで、「今後に向けて」というところにもこれらの課題に着実に取り組まれ ることを期待すると書かれております。  今朝のニュースでも、5歳の女の子が虐待で死亡したという報道がされておりました 。急ぎながら聞いたので間違っているかもしれませんけれども、たしか児童相談所が3 回かかわっていたという報道があったと思います。  ですから、国民の共通の理解として、とにかく今、支援のシステムがうまく機能して いない、何か問題がある、こういう共通理解が出来上がっていると思います。それで、 とにかく何とかしなければいけない、待ったなしでこれを改善しなければいけないとい う気持ちをみんなが強くしていると思います。したがって、この報告書は本当に待った なしで、内容を十分に生かしていただくことが何よりも大切なことだと思います。その 点について柏女委員がおっしゃったことは、委員全員の願いであって、厚生労働省には 是非がんばっていただきたいと思っております。  ほかに何か御意見ございますか。 ○堀委員  意見ではなくて質問になり、しかも内容にかかわることではないのですが、お聞きし たい。  1点目は、4ページの3の表題は「都道府県・市町村、児童相談所のあり方」とあり ますが、本文では「都道府県・市町村の役割、児童相談所のあり方」となっています。 このように表題と本文とで区別をしているのは、何か理由があるのですか。都道府県や 市町村については、そのあり方というよりも、役割のあり方の方がいいような感じがし ます。  もう1点は、これは児童部会としては初めての報告書になると思いますが、「報告」 というスタイルをとっています。年金部会などでは「意見」というスタイルだったと思 いますが、その使い分けというか、あるいは後での取り扱いに違いがあるとか、どうい う趣旨でしょうか。あるいは、厚生労働大臣に対する意見という形をとらないという意 味があるのかどうかをうかがいたい。  3点目は、児童福祉法と児童虐待防止法の振り分けがよくわかりません。児童部会で の検討は、たぶん児童虐待防止法の見直し規定による検討でもあると思いますが、児童 福祉法と児童虐待防止法との関係についてはどのようになるのか、教えていただきたい 。 ○中村総務課長  それでは、3点の御質問がありましたが、最後の点からお話しいたします。  児童虐待防止法は議員立法で制定された経緯がございまして、虐待の問題について、 今回、当部会では全体的に御議論をいただきましたけれども、そのうち児童虐待防止法 については、これから国会が19日にも召集されますと、今回、報告書をまとめていただ きましたので、それも御報告をした上で、児童虐待防止法の改正事項として考えられる ことについてはそちらでやっていただきます。我々の方は、政府提案ということで、来 年の2月上旬ぐらいまでには、他に児童手当法とか育児休業法についても見直しをして おりますので、3本一括で法案を提出させていただく腹積もりで準備を進めております 。  細かい点の実際上の振り分けは、そういう作業になりますので、実際に児童虐待防止 法の国会での立法作業、あるいは、こちらの児童福祉法の立法作業、それぞれがある程 度できたところですり合わせをしながら、漏れがないようによく話し合いをした上でつ くっていくことになるのかなと思っております。  それから、今回の児童部会について、「報告書」という形で書かせていただいている ことについて、「意見書」とどう違うのかということですけれども、特にそういう違い を意識して書いたわけではなくて、おまとめいただいたということで、特段そこに差異 があって考えたということではございません。  それから、4ページの「『都道府県・市町村、児童相談所のあり方』等について」と いうことですが、御指摘のように、「都道府県・市町村の役割、児童相談所のあり方」 の方がわかりやすいと思います。 ○岩男部会長  先生の第1点目は、そういう形で修文するということになると思います。  ほかに特に御意見がございませんでしたら、以上をもちまして第13回児童部会を終了 したいと思います。大変長い間熱心に御議論をいただきましてありがとうございました 。  局長から一言お願いします。 ○伍藤雇用均等・児童家庭局長  長期間にわたりまして御審議をいただき、報告書をとりまとめていただきまして、大 変ありがとうございました。  今、御発言もありましたように、これをもとに来年の法律改正、具体的に今後、エン ゼルプランの見直しですとか、市町村段階で次世代育成支援計画、いろいろな計画づく りを迎えますので、こういったところで議論をされたことを具体的にできるだけ法律に きめ細かく盛り込み、また、各行政主体のそれぞれの計画にできるだけ反映するように 私どもも努めてまいりたいと思いますので、今後ともまた御指導をよろしくお願いした いと思います。  どうもありがとうございました。 ○岩男部会長  最後に1点だけ確認をさせていただきますけれども、事務局の方で先生方の御意見を 盛り込んで修文いたしましたものを私の方で確認するということで、私にお任せいただ きたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。  どうも本当にありがとうございました。 ○中村総務課長  どうもありがとうございました。 (照会先) 雇用均等・児童家庭局 総務課  TEL 03−5253−1111(内線7823)担当:湯本