03/11/07 第21回社会保障審議会介護給付費分科会議事録          社会保障審議会 第21回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所    平成15年11月7日(金) 14時から16時    霞ヶ関東京會舘ゴールドスタールーム 2 出席委員    西尾、青井、井形、漆原、喜多、木下、木村、京極、見坊、笹森、下村、田中(滋)、    田中(雅)、中村、橋本、花井、堀江、矢野、山崎、山本の各委員    石上参考人、新井参考人    浅野、坂井の各委員は欠席 3 議題  (1)介護保険制度の実施状況について  (2)その他   ○ 資料1に沿って、平成15年4月介護報酬改定後の動向について、資料2の参考    資料について、資料3の各委員からご照会いただいている資料について、麦谷老    人保健課長より説明。 (青井委員)  全体を見ると、報酬設定時の内容に、特に施設については数値を合わせたように動い ているように感じる。居宅については、介護報酬会計の影響を見るためには、施設の1 日あたりの費用額のように、1回あたりの費用額でも数値を出してもらいたい。時間別 によって利用者の増などもありうる。  株式会社の参入が特にグループホームで増えているが、そのサービス内容の状況を知 りたい。施設整備の問題もあるかと思うが、グループホームに入所している要介護度4 ,5の利用者に対する処遇はどのようになっているかを検証してほしい。  療養型については、8月31日までの医療法に基づく届出が期待よりも医療保険から 介護療養型医療施設に移行していない状況がある一方、地域偏在があるのではないか。 都市型では病室面積確保が困難を伴っていたり、病床を削減すれば人員整理が必要であ るなど、いろいろ経営上の問題があるかと思う。療養型の将来像が見えないのが問題で はないか。例えば施設長の考えなどをまとめてはどうか。  報酬改定に係る通知や運営基準の内容が難解でかつ発出が急である。医療分野との間 に混乱や不整合が生まれかねず、利用者にとっても不都合が生じているのではないか。 (麦谷老人保健課長)  居宅については1回あたりの数値を出す。グループホームの処遇の検証については実 態を把握すべく準備しており、状況が分かり次第、報告したい。療養型については、資 料2の18頁にもあるように都道府県別の資料を出している。医療保険の適用病床のデ ータと突合して改めて出したい。通知等の難解さ、あるいは医療保険との整合性には、 最大限努力し、現場や利用者で不都合がないようにしたい。 (西尾部会長)  資料は次回用意すること。 (矢野委員)  報酬改定の分析でサービス料の変化がわかったが、さらに要因分析をいろいろな角度 から行ってほしい。(1)利用者側からのニーズによるものか、事業者側の重視するサー ビス内容の変更によるものかの検証、(2)在宅復帰、自立支援、要介護度の改善などの 視点に基づくアウトカムの検証などが必要である。また、(3)サービス効果を評価する 仕組みがない。経営実態調査の精度を高めて、サービスに要する費用だけではなく、サ ービスの有効性が介護報酬に反映されたり、不要なサービスを排除できる仕組みとすべ き。こうしたことで、サービスの標準化あるいは効率の向上が期待できる。なお、検証 の際には、個人情報保護に注意してほしい。  資料1の2,3頁については、認定者数と受給者数の差がみられる。主に軽度者に方 であり、介護は必要だが利用するサービスがないのか、とりあえず認定だけを取ってお こうということなのか。今後、いろいろな角度から要因分析をしてほしい。34頁につ いては、退所前連携加算等が老健施設を中心に請求されているということだが、退所や 退所後の再入所の実態について知りたい。12頁については、生活援助の割合が上がっ ている。適切な利用がされているのか検証してほしい。 (中村委員)  要介護度の改善や効果測定が必要。運営基準、特に人員配置について検証をしてほし い。同時に、人員配置と介護過誤との関係はどのようなものか知りたい。適正化事業に ついては、年内までに対応マニュアルの配布等を考えていると思うが、特養については 社会福祉法人の形態が多く、もともと措置費という世界でサービスを提供してきた側で もあるので、サービスの適正化については労働環境の悪化という視点もあることを知っ ていてほしい。この際、「施設の管理者」について、社会福祉法上の「施設長」との関 係についても整理してほしい。現場はグループ・ユニットケアなどによって変わってき ている。労働基準法関係での「雇主」との違いや「業務執行権」との整理はどのように なっているのか。こうした点も含めてマニュアルづくりをしてほしい。責任の所在をは っきりしてこそ、適正化事業や新しい勤務形態など大きく変わろうとしている介護の現 場に対応していける。 (橋本委員)  分科会としては、第3期介護保健事業計画の策定につながっていく議論になっていか なければいけないと考えるが、3点感想と要望を述べる。  (1)報酬が上がって給付費が上がっている例として資料1の17〜19頁を挙げるが、 通所リハビリテーションにおける個別リハビリテーション加算や老健施設での訪問リハ ビリテーションがのびているが、その中身について第三者評価をしようということにつ いては聞いているが、それとは別に専門家の目でしっかり評価してほしい。(2)34頁 について、老健の退所前連携加算の数が大変多い。しかし、老健から在宅へのケアには 必ずしもつながっていないのではないか。単に双方の間を行ったり来たりしているだけ ではないのか。その中身の検証をするべき。(3)全体の感想として、資料では改定前後 の比較を行っているが、さらに経営実態調査で余裕があった/なかったの違いも踏まえ てサービスを検証しないといけない。平成15年度の決算がでたら経営実態調査をする べきではないか。 (見坊委員)  資料3について、老人医療費の伸びと介護給付費の相関の資料をいただいた。この資 料について、どのようなコメント・評価を事務局として行うか。  4月から保険料が13%アップしており、それに応じて協力しなければならないこと になっているが、足を引っ張る形で最近、報酬の不正請求の報道が各地域でされてい る。貴重な保険料が横流しされていると。事業者・ケアマネジャーが結託しているケー スもあるが、不正請求について検証をするべき。また、利用者サイドとしてはどのよう なチェックができるのか。利用者間で情報提供する機会も少ない。サービスの利用票を 見ただけでは実際の請求額と一致しているのかわからない。保険者側に立った検証も必 要だが、利用者はどうチェックすればよいのか。保険者・行政としてはどのようにして 不正を把握しているのか。さらに、審議会の資料にでているような基本的なデータはど こかで公開されているのか。 (麦谷老人保健課長)  これがベストという意味ではないが、チェックのシステムはできている。具体的に は、各都道府県の事業所情報、保険者の受給者情報、ケアプランの給付管理表と事業者 から上がってきた請求を国保連合会にて突合している。架空の請求はここで返戻でき る。 (見坊委員)  利用者はどう把握できるのか。医療であれば、特に健保連などは支払額が報告されて おり、各人がある程度チェックできる。特に不正請求があったケースについては、利用 者に報告されているのか。 (藤木介護保険課長)  一部の保険者では介護費通知を実施している。介護保険についての相談窓口として国 保連合会の苦情処理などがある。詳しくは資料として次回に出したい。 (麦谷老人保健課長)  老人医療費と介護給付費との相関の資料については、事務局としてはコメントはな い。介護保険事業状況報告と介護給付費実態調査のデータについては当省のホームペー ジにて公開している。 (山崎委員)  施設と在宅についてはマクロで見てそれぞれの需給バランスはどうなっているのか。  15年4月の改訂では訪問看護が一番打撃を受けていると思うが、特に緊急訪問看護 加算については、それまで24時間の連絡体制で安心を提供していたものであり、しっ かりやっていたステーションほどダメージが高い。インセンティブを損なっているので ぜひ見直しをお願いしたい。また、退所時連携加算については在宅の側にも加算をつけ るべき。医療では双方の共同作業として評価されている。これは施設から在宅へのソフ トランディングを促すのではないか。また、ケアプランの検証をやってほしい。調査の 予定はあるのか。 (石井計画課長)  在宅・施設のバランスについては、各地域でそれぞれ計画を策定していただくもので はあるが、マクロとしては、在宅のサービス量に厚みが増してきていると考える。 (香取振興課長)  ケアプランの質については、要介護度などの利用者の状態に応じて、どういったサー ビスの提供が有効であるかを調べる必要がある。実証的なデータを研究して、実際のプ ランの策定や評価に反映させること考えたい。 (笹森委員)  感想を4点述べる。(1)資料1の12頁については、改定当初は、身体介護と生活援 助をしっかり分けることができるのか、事業所が短時間でばっさりとサービスを切って いるなどの利用者の声があったが、いまはそれほど聞こえてこない。身体介護と生活援 助の割合は1:2で落ち着いてきているのだろう。(2)18・19頁については、在宅 におけるリハビリテーションは重要であるが、痴呆性高齢者に対するリハビリテーショ ンはどのような形で提供されているのだろうか。(3)資料3の2頁の住宅改修について は利用者のニーズがある一方であまりこの場で議論していない。人材不足の問題はある が、専門家が何らかの形でサービス提供に関われないものか。(4)34頁の退所前連携 加算については、在宅復帰とうたっているが、やっと特養に入れたと喜んでいる利用者 はあまり復帰を望まないのではないか。3施設の機能分担を考えるべき。加算をなくす こともないが、3施設を一括りに在宅復帰の対象としてよいのか。 (麦谷老人保健課長)  訪問リハビリテーションについては、どの疾患の人が含まれているか調べてみないと 分からない面もあるが、調べてみる。 (下村委員)  現在入手できるデータの集計分析という意味ではよく整理されているが、今のままで は不十分。今回は、今後どうやって改定していくかを考える上でのステップと理解して いる。  医療保険では病名が点数表に書かれている。病気については、これまでの蓄積がある ので内容がこれでよいかどうかある程度の検討はつく。糖尿病の患者の血糖値までは分 からないので医療が十分に提供されているかまでは的確に測れないものの、傷病名によ って判断している。介護保険では、要介護度によって分かれている。ある要介護度の人 にどのようなサービスがよいかについては、まだ蓄積がない。審査のコンピュータで も、ケアプランと符合しているかまでしか判定できない。請求のデータだけでなく、補 足的に別の実態調査をしないとケアプランの評価はできない。また、経営実態調査につ いても3年に1回ではデータが少ない。  施設の場合は、管理者によって質の管理ができるだろうけれども、在宅はなかなか訪 問する先の全てに管理者が一緒に行くわけにはいかない。在宅については、質を確保す る何らかの仕組みがサービス提供側に必要だ。アメリカでは訪問看護士に加えスーパー バイザーがチェックしている。コストは高いが、施設も含め事業者の立場でサービスの 質について保障できる仕組みとができないものか。管理者と異なり、理事長の責任はむ しろ人事権なのだろう。  利用者としては、在宅と施設のミックスがよいだろう。施設に入ったらお終いで、出 たくても出れないというのはだめだ。全体としてのサービス体系を考える必要がある。 施設に入っていても一度家に戻りたいという人はいるのだから、新しいサービス体系を 描いて、最終的には報酬として評価するという流れに持っていくべき。 (井形分科会長代理)  感想を3点述べる。(1)施設サービスの伸びは横ばいだが、在宅サービスはかなり伸 びている。制度が知られるようになったからなのか、介護を要する人が増えているの か、しっかり分けて分析するべき。後者なら健康づくりへの取り組みが必要だ。予防給 付を制度上に用意しているのだが、これが機能していないのではないか。(2)施設ある いは在宅で死亡する人が増えている。最後は病院でというのは現実的でない。施設も看 取りを考えないといけない。また、現在の要介護認定には看取り・死という概念がな い。(3)ケアプランの4種類加算は評価している。医療保険では包括払いのときは診療 計画が立てられて、それが評価されて診療報酬が決められるが、ケアプランもそういう 方向に進んでほしい。 (山本委員)  下村委員の発言に関連して述べる。ケアマネージャーがケアプラン作成する過程で要 介護認定の際の認定調査や認定審査会での審査を基にしているかが重要だ。資料をすで に出しているのだからそれを紹介してほしい。また、グループホームは個人の家庭の延 長ではない。他人ばかりの集団をどんどんつくって、介護を受けると言うのはおかし い。何らかの法的な干渉をもうけるべき。 (藤木介護保険課長)  部会の方で提出された山本委員の資料は、被保険者証のICカード化についてであ り、それにより給付の適正化にも応用できないかというお話があった。現在、国として も2保険者を対象にモデル事業を展開しており、カード化への取り組みについて検討を 進めている。 (花井委員)  資料1の12頁について、身体介護の90分を超える報酬が減額になり、現場では介 護が細切れになってきているという声も出ているが、どういう時間の区切りで、身体介 護及び生活援助が行われているのか、報酬改定以前と比較して欲しい。ユニットケアの ホテルコストについては、1人あたりいくらかを教えてほしい。特養における4〜6人 部屋がどのくらいあるのかも教えてほしい。療養病床の経過措置について、どこまで転 換が進んでいるのかその状況を教えてほしい。 (京極委員)  今回の改定の結果は、全体的にはほぼ予定通りかと思う。在宅サービスの伸びもよい 方向である。ただ、予想以上に増減しているところが一部あり、例えば訪問看護が激減 しているのがよいかどうか、あるいはグループホームが急増しているのも本当にそれで よいのか、それが単価によるものか、条件によるものか、さらに詰めた議論が必要。医 療費と介護給付費の相関については、はっきり分からない。高齢者の定義も双方で異な る。相関の解明は将来の課題としてはどうか。また、事業主体別の介護報酬改定の検証 をしてはどうか。 (西尾分科会長)  介護報酬の改定の影響に関する議論は以上とする。次回以降の見直しに向けた今後の 審議のあり方、調査の方法などについての議論に移りたい。 (堀江委員)  まだ十分に分析できるだけのデータが集積されていないと思うが、その中でいろいろ 議論するよりも、第三者の評価システム、例えば、ケアプランについていろいろ議論が あったが、個別に客観的に第三者が評価するという仕組みを講ずべきではないか。グル ープホームについても、現実にどんどんできてしまい、要介護度4、5の人たちも入っ ており、保険者間の不公平感や不要な負担が生じている実態もあるはずで、是非、第三 者評価システムというものを導入して、問題点を洗い出し、分析、再検討してはどう か。 (木下委員)  人員配置の問題については、特に夜勤の状況、身体拘束や転倒事故、痴呆の問題行動 などとの関連はどうか調査が必要ではないか。前回の調査のときには療養病床は医療保 険と混合病棟があるということで、正確な数字が出ていなかったが、正確にでるような 調査をしてほしい。また、医療・介護の費用が示されているが、福祉の費用も示しては どうか。 (田中(滋)委員)  改定の直前であれば経営実態調査も意味があるが、現在、2年前の段階では、報酬改 定の成果を調査して、改めて考えるという時期だと思う。特にケアプランの評価は欠か せない。特定の事例を抽出して痴呆といった視点も交えつつ調査し、どういうプランで どのような成果を生んだか、評価する必要がある。小規模多機能、地域のつながり等が どのような効果を生み出すかなど未来志向の調査をして、議論のベースとすべき時期だ と考える。 (田中(雅)委員)  要支援・要介護1が非常に増えているが、実際に1年余りの間にどのような形で治癒 されたかなど、動向を知りたい。また、介護給付以外のサービスとして、生活を支援す るシステムができない限り、要介護状態でありたいという利用者側の心理があるのは当 然。例えば福祉用具貸与で介護ベッドを利用することにより、起居動作が容易になり歩 行が可能になるということがあるが、要介護状態が改善されて、介護保険給付の対象外 になったときに、それまでのサービスによって維持されていた生活が維持できなくなる ことに対する不安について、具体的に応えるべき。 (漆原委員)  先ほど来、効果の判定、評価の方法ということが随分出ている。老人保健施設につい て言えば、退所、家庭復帰が進んでいるか、あるいは再入所しているのか、リハビリテ ーションという視点ではADLの改善、地域連携では家族との調整などが、効果判定に 入ってくる。その見方については、非常に難しい問題も含んでいることも覚えていてほ しい。老人保健施設としては在宅復帰や地域支援など、誕生以来の役割、機能を持って おり、今回、いろいろな意味で課題が推進されているという自分たちなりの自信は持て るようになってきた。 (西尾分科会長)  本日の審議はこの程度にしたい。次回以降は引き続き、介護報酬の改定がサービスの 利用の動向等に与える影響について、検証を進めていくとともに、今後の調査の方法な どについて検討していきたい。次回の日程については、改めてご連絡する。  それでは、本日はこれをもって閉会する。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係  TEL03(5253)1111(内3948 3949)