【検討の経緯】
○ | 児童虐待問題が依然として深刻な早急に取り組むべき社会全体の課題であるとの認識の下、児童虐待防止法がその附則において「法律の施行後3年を目途とした見直しの検討」を求めていることをひとつの契機として、今後の「児童虐待防止」に向けた対応のあり方を検討するため、昨年12月に児童部会の下に「児童虐待の防止等に関する専門委員会」を設置し、本年6月18日に報告書を取りまとめ。 | ||||
○ | 同報告書における議論を踏まえ、児童虐待への対応という観点のみならず、広く要保護児童および要支援家庭に対する支援も含めた観点からそのあり方についてさらに議論を深めるため、
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○ | 今般、これらの2つの専門委員会および児童部会における議論を踏まえ、「児童虐待への対応など要保護児童および要支援家庭に対する相談支援体制のあり方に関する当面の見直しの方向性」について、報告書を取りまとめたものである。 |
(参考)
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【報告書の主なポイント】
1 | 今後の児童虐待防止対策のあり方について |
(1) | 基本的考え方 |
○ | 「子どもの最善の利益」への配慮を基本理念とし、以下の視点を基本に据えて施策を展開することが必要。
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(2) | 具体的な取り組みの方向性 |
○ | 発生予防における取り組み できる限り、虐待の発生を未然に防止することが極めて重要。保健師等による専門的な支援については、これまでの「支援を望む人に幅広く」から「支援を必要とする人によりきめ細かく」という考え方に転換し、支援の重点化を図っていくことが必要。 |
○ | 早期発見・早期対応における取り組み 虐待対応の中心的機関である児童相談所の現行の体制には限界との認識の下、業務の市町村との役割分担、より幅広い専門職種との連携強化、市町村における虐待防止ネットワ−クの設置の一層の推進を図ることが必要。 また、家庭裁判所の承認に基づく保護者の意に反する施設入所等の措置を期限付きのものとすることや当該措置にかかる子どもの安全確保のための審判前の保全処分の仕組み、児童相談所の指導に従わない保護者に対する指導の実効性を高めるための司法関与など一定の司法関与の仕組みの導入の検討が必要。 |
○ | 保護・自立支援における取り組み 虐待を受けた子どものみならず、虐待を行った親など「家族」への支援という視点に立ち、保護者に対する治療・指導プログラムの充実・普及、家族再統合に向けたプログラム開発の研究を進め、家族再統合・家族の養育機能の再生・強化を図ることが必要。 また、親子の分離(保護)を行った場合であっても、可能な限り家庭的な生活環境を保障し、子どもの個々の状況に応じてきめ細やかなケアを行えるよう、里親制度の充実や施設におけるケア形態の小規模化、児童自立生活援助事業(自立援助ホ−ム)の充実など自立を促していくための支援を充実していくことが必要。 |
2 | 今後の要保護児童および要支援家庭に対する「都道府県・市町村の役割、児童相談所のあり方」等について |
(1) | 今後の児童相談所、市町村が果たすべき役割、あり方 |
○ | 子どもと家庭に関する相談については、基本的にできる限り身近な市町村を主体としつつ、都道府県(児童相談所、保健所等)との適切な役割分担を図ることが必要。 具体的には、子どもと家庭に関する各種の相談全般を一義的に市町村において受け止め、必要な助言・指導を行い、要保護性の高い事例などについては、児童相談所中心の対応とするなどの役割分担を行い、児童相談所の役割を重点化していくことが必要。 |
○ | こうした役割分担の下、児童相談所においては、介入機能を強化することが必要。介入機能の強化に当たっては、従来の受容的な関わりを基本としたソ−シャルワ−クのみならず、介入的ソ−シャルワ−クの技法を開発、確立していくことが必要。 |
(2) | 児童相談所および関係機関に関する個別の論点についての方向性 |
○ | 中核市による児童相談所の設置 現在、都道府県及び指定都市が設置主体となっている児童相談所について、中核市においても設置が図られるようにすることが適当。ただし、その設置については、地域の実情に応じ、段階的に進めていくことが適当。 |
○ | 障害相談、障害判定、障害児施設入所措置 障害児に関する判定業務や入所措置権限などの行政権限の市町村への委譲については、専門性の確保や効率性などの観点、支援費制度の施行状況等を踏まえ、検討することが必要。 |
○ | 児童相談所職員の配置の充実、専門性の確保・向上 児童相談所の職員の充実については、引き続き、児童福祉司や心理判定員など必要な職員体制の確保に努めることが必要。 職員の専門性の確保・向上については、それぞれの地方自治体において、人材登用に関する様々な工夫、配慮などが求められるとともに、実践的な研修の充実、ス−パ−バイザ−体制の充実を図ることが必要。 |
○ | 児童福祉司の必置規制、任用資格のあり方 児童福祉司の必置規制の緩和については慎重な検討が必要。任用資格については、例えば、保健師、助産師、看護師、保育士、児童指導員、教員等幅広い人材が登用できるようにするような検討が必要。 |
○ | 心理判定員の業務および名称の見直し 児童相談所の心理判定員の業務については、虐待を受けた子どもや虐待を行った親に対する心理療法の実施等の機能を強化するとともに、名称についても見直しを検討することが適当。 |
○ | 一時保護所のあり方、混合処遇緩和のためのシェルタ−機能の分散 一時保護所(機能)のあり方について、他の児童福祉施設等との機能分担を含めた検討、児童福祉施設の一時保護機能の強化や里親への一時保護委託の積極活用なども進めていくことが必要。 さらに、例えば、虐待を受けた児童と非行児との混合処遇の緩和の観点から、地域の実情に応じ、児童自立支援施設の一部を活用することなど、柔軟に一時保護制度を運用できる仕組みを検討することが適当。 |
3 | 今後の要保護児童および要支援家庭に対する社会的養護のあり方について |
(1) | 基本的考え方 |
○ | 社会的養護の役割は、子どもの権利擁護を基本とし、子どもの安全・安心な生活を確保するにとどまらず、必要な心身のケアや治療を行い、その子どもの社会的自立までを支援することにある。 |
○ | 家族の再統合や家族や地域の養育機能の再生・強化といった親も含めた家族や地域に対する支援も、社会的養護本来の役割として取り組むことが必要。 |
(2) | 家庭的養護、施設養護、年長の子どもや青年に対する自立支援などのあり方についての方向性 |
○ | 家庭的養護(里親・里親によるグル−プホ−ム等)のあり方 里親制度の一層の啓発に努めるとともに、乳幼児期から自立期に至るまで里親を活用できるよう、里親によるグル−プホ−ムなど工夫を図ることが必要。また、里親の心身両面での負担軽減に向けた支援の強化、研修体制の充実、親権の一部代行など里親の責任等を明確化等も必要。 |
○ | 施設養護のあり方(施設サ−ビス体系のあり方等) 中長期的なあり方としては、大規模な集団生活ではなく、より家庭的な生活の中での個別的なケアの提供を基本とした上で、各施設の本体施設を基幹施設と位置付け、高度な支援が必要な子どもへの対応が可能な専門職員を配置する方向を目指すべき。 児童福祉施設については、こうした将来的な方向を見据え、ケア形態の小規模化を進めていくと同時に、専門的支援機能や在宅支援機能、一時保護機能など地域の拠点としての諸機能を充実・強化していくとともに、それに必要な職員の確保についても十分検討すべき。 また、乳児院及び児童養護施設で受け入れる子どもの年齢要件の見直しなど、可能な限り子どもに対するケアの連続性等に配慮することが必要。 |
○ | 家族関係調整及び地域支援 児童福祉施設においては、施設に入所した子どもの家庭復帰や家族再統合に向けて、子どもへの支援のみならず、家族への支援や親権者との関係調整を適切に実施していくとともに、施設を退所し、地域で生活する子どもに対するアフタ−ケア(施設退所後のケア)を充実させていくことが重要。 さらに、児童福祉施設は、養育に関する専門知識、経験を生かし、地域の子どもやその家族(里親を含む)に対して、必要な支援を行うことも必要。 |
○ | 年長の子どもや青年に対する自立支援 児童福祉施設を退所した子どもなどの自立を促していくためには、生活拠点の確保と就労支援が重要であり、施設退所後等の当分の間や求職期間中の生活を支えることが可能な実効ある制度的対応を検討すべき。 また、児童自立生活援助事業(自立援助ホ−ム)の設置促進や機能の強化を図るべき。 里親、児童福祉施設や自立援助ホ−ムについては、18歳、20歳といった施設等の対象年齢から外れた者も必要に応じて支援を継続していくべき。 |
○ | 社会的養護の質の向上 社会的養護における虐待の防止の徹底など、子どもの権利擁護のための取り組みの強化、関係機関における子どもや家族の十分な実態把握・評価(アセスメント)、社会的養護関係者の養成・研修の充実などが必要。 |
4 | 今後に向けて |
○ | 提言の実現に向け、児童福祉法などの関連する法律の改正を含め、これらの課題に着実に取り組まれることを期待。 また、こうした取り組みを第一歩として、適時適切な制度のあり方の検討が継続的に行われ、必要な措置が講じられていくことが必要。 |
○ | さらに、今後、地域の子育て支援サ−ビス、保育サ−ビスと社会的養護システムを含めた子どもと家庭に関するサ−ビス全体を通したサ−ビス提供主体のあり方や措置制度のあり方など幅広い観点からの議論が行われることを期待。 |
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