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参考資料2

今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)のポイント

 近年の障害のある児童生徒の教育をめぐる諸情勢の変化等を踏まえて、今後の特別支援教育の在り方について、平成13年秋に調査研究協力者会議を設置して検討を行ってきたところであるが、同会議ではこれまでの調査審議を踏まえ最終報告をとりまとめた(平成15年3月)。そのポイントは以下のとおり。

1.現状認識
 (1)  特殊教育諸学校(盲・聾・養護学校)若しくは特殊学級に在籍する又は通級による指導を受ける児童生徒の比率は近年増加しており、義務教育段階に占める比率は平成5年度0.965%、平成14年度1.477%となっている(平成2年度より減少傾向から増加傾向に転換)。
 (2)  重度・重複障害のある児童生徒が増加するとともに、LD、ADHD等通常の学級等において指導が行われている児童生徒への対応も課題になるなど、障害のある児童生徒の教育について対象児童生徒数の量的な拡大傾向、対象となる障害種の多様化による質的な複雑化も進行。
 (3)  特殊教育教諭免許状保有率が特殊教育諸学校の教員の半数程度であるなど専門性が不十分な状況。また、専門性の向上のためには、個々の教員の専門性の確保はもちろん障害の多様化の実態に対応して幅広い分野の専門家の活用や関連部局間及び機関間の連携が不可欠。
 (4)  教育の方法論として、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズを専門家や保護者の意見を基に正確に把握して、自立や社会参加を支援するという考え方への転換が求められている。
 (5)  近年の厳しい財政事情等を踏まえ、既存の人的・物的資源の配分について見直しを行いつつ、また、地方分権にも十分配慮して、新たな体制・システムの構築を図ることが必要。

2.基本的方向と取組
 
 障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う「特殊教育」から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図る

(1) 特別支援教育の在り方の基本的考え方
【特別支援教育】
 特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである。

 (1)  「個別の教育支援計画」(多様なニーズに適切に対応する仕組み)
 障害のある子どもを生涯にわたって支援する観点から、一人一人のニーズを把握して、関係者・機関の連携による適切な教育的支援を効果的に行うために、教育上の指導や支援を内容とする「個別の教育支援計画」の策定、実施、評価(「Plan-Do-See」のプロセス)が重要。
 (2)  特別支援教育コーディネーター(教育的支援を行う人・機関を連絡調整するキーパーソン)
 学内、または、福祉・医療等の関係機関との間の連絡調整役として、あるいは、保護者に対する学校の窓口の役割を担う者として学校に置くことにより、教育的支援を行う人、機関との連携協力の強化が重要。
 (3)  広域特別支援連携協議会等(質の高い教育支援を支えるネットワーク)
 地域における総合的な教育的支援のために有効な教育、福祉、医療等の関係機関の連携協力を確保するための仕組みで、都道府県行政レベルで部局横断型の組織を設け、各地域の連携協力体制を支援すること等が考えられる。

(2) 特別支援教育を推進する上での学校の在り方
 (1) 盲・聾・養護学校から特別支援学校へ
 障害の重複化や多様化を踏まえ、障害種にとらわれない学校設置を制度上可能にするとともに、地域において小・中学校等に対する教育上の支援(教員、保護者に対する相談支援など)をこれまで以上に重視し、地域の特別支援教育のセンター的役割を担う学校として「特別支援学校(仮称)」の制度に改めることについて、法律改正を含めた具体的な検討が必要。
 (2) 小・中学校における特殊学級から学校としての全体的・総合的な対応へ
 LD、ADHD等を含めすべての障害のある子どもについて教育的支援の目標や基本的な内容等からなる「個別の教育支援計画」を策定すること、すべての学校に特別支援教育コーディネーターを置くことの必要性とともに、特殊学級や通級による指導の制度を、通常の学級に在籍した上での必要な時間のみ「特別支援教室(仮称)」の場で特別の指導を受けることを可能とする制度に一本化するための具体的な検討が必要。

(3) 特別支援教育体制を支える専門性の強化
 ・  国立特殊教育総合研究所、国立久里浜養護学校のほか、研究実績の豊富な大学等が密接に連携協力することにより、専門性の高い総合的な特別支援教育体制の構築を図ることが重要である。
 ・  同研究所は、企画調整機能を強化し、より効果的・効率的な研究・研修推進体制を構築。
 ・  同養護学校は、近年課題となっている自閉症の教育研究を行う学校として基礎的な研究を含め総合的な取組のため、大学の附属学校となり、その機能が最大限に発揮されることが期待。
 ・  なお、特殊教育教諭免許状については、障害の重度・重複化や多様化を踏まえ、総合化など制度の改善が期待。


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