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1.社会的養護のあり方について

 【取組みの方向性】

 
 社会的養護については、子どもの権利擁護を基本とし、今後とも国、地方公共団体、保護者、関係団体などの関係する主体が、それぞれの責任を適切に果たしていくことが必要である。
 今日の社会的養護の役割は、子どもの健やかな成長・発達を目指し、子どもの安全・安心な生活を確保するにとどまらず、里親への委託や施設への入所などを通じて、心の傷を抱えた子どもなどに必要な心身のケアや治療を行い、その子どもの社会的自立までを支援することにある。
 もとより子どもの健全育成、自立を促していくためには、里親や施設のみならず家族や地域の果たす役割も重要である。家族や地域が有していた養育力が低下している現状にあっては、家族の再統合や家族や地域の養育機能の再生・強化といった親も含めた家族や地域に対する支援も、社会的養護本来の役割として取り組むことが必要である。
 こうした認識の下、社会的養護については、現在の仕組みの下で何ができるかということではなく、制度や意識を転換し、ケア形態の小規模化、親や年長児童に対する支援、更にはケアに関する児童福祉施設の創意工夫を促す仕組みの導入など、子どもの視点に立って、子どもや家族の多様な要請に応えていくことが必要である。
 なお、そのためには、家庭的養護と施設養護の協働や、一人ひとりの子どもの状況に応じた最適な支援を行うための子どもや家族の十分な実態把握・評価(アセスメント)を実施できるよう、児童相談所、福祉事務所などの地域の関係機関や児童福祉施設の体制の強化を図っていくことも必要である。
 同時に、これまでの社会的養護は、保護を要する児童を対象とするものとして、いわゆる子育て支援とは別個のものとして進められてきたが、今後は、両者を連続的なものとして捉え、一体的な施策の推進を図ることにより、より効果的な子どもの健全育成や児童虐待の防止等につなげていくことが必要である。

 【当面の具体的な取組みに関する委員会としての意見】
  ・社会的養護は、子育て支援の一翼を担うものとして積極的に位置付けていくべきである。
 ・具体的な施策を検討するに当たっては、支援を行う大人の側からではなく子どもを中心に据えて、「子どもの人としての権利をきちんと守る」という権利擁護の視点を持つことが重要である。
 ・安全な生活を保障するだけでなく、子どもの治療やケアの機能を充実させていくことが必要である。
 ・育児の社会化、「子どもは社会の中で育つ」という認識の下、家庭的養護と施設養護に加え、地域社会全体による養護という視点が必要である。
 ・これからの社会的養護は、基本的に施設養護からより家庭的な養護に移行していくことが必要である。
 ・里親と施設が相互に補い合うという里親機能と施設機能の融合の視点を持ち、里親、施設、更には地域のサービスを連動させることが重要である。
 ・施設の種別を超えた支援体制が必要である。
 ・子どものケアだけでなく、「親」を含めた子どもと家族へのケアが重要である。
 ・必要に応じて、子どもの権利を守るための危機管理について検討すべきである。
 ・「社会的養護をめぐる現在の諸問題は、これまで子どもの養育に社会的資源が十分に投入されてこなかったことの結果である」との認識の下で、支援を充実させていくことが必要である。
 ・子どもにとっての最善の利益を実現するために、国、地方公共団体、保護者、関係団体などが、その責任を適切に果たしていくことが必要である。

 【今後の課題】
  ・これからの目指すべき社会的養護の仕組みを検討するに当たっては、各児童福祉施設を基幹施設として位置付けつつ、これに治療機能を重ね合わせる形で考えていくことが必要である。
 ・今後、子育て支援について施策の具体的目標を設定する場合には、社会的養護についても目標設定の対象とすることを検討すべきである。
 ・地域において十分な支援が行える体制がない場合には、円滑な広域的対応を検討することも必要である。


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