戻る

輸血用血液製剤でエルシニアの感染が疑われる事例について


1. 経緯等
 平成15年10月2日、日本赤十字社から、輸血(人赤血球濃厚液)による敗血性ショックで死亡した症例の報告があった。現在、日本赤十字社において、調査を実施中。

2. 事例
 65歳の女性。左大腿骨転子部の骨折で、合併症に糖尿病、慢性腎不全、高血圧を有する患者。
 今年の9月22日に慢性腎不全に対して午前9時26分から血液透析を開始、午前10時24分から貧血に対し、輸血(人赤血球濃厚液2単位)を実施。午前11時45分に輸血終了。直後に悪寒戦慄を感じ、午後0時に気分不良、午後0時50分には意識低下、ショック状態となり、午後3時にICUにて救命救急処置を開始。
 24日午前8時50分、血液培養でグラム陰性桿菌(26日にエルシニアと同定)を検出、午後0時にエンドトキシンショックと診断、出血傾向(DIC)、多臓器不全状態となり、25日午前4時33分に死亡(死因は敗血症)。

3. 状況
1)輸血された輸血用製剤について
当該患者には1人の供血者から採血された赤血球製剤を輸血。
当該製剤に関わる血漿は使用されないよう措置済、血小板製剤は製造していない。
2)検体検査の状況
10月16日の日本赤十字社の報告によると、地方衛生研究所等複数の機関に依頼して、輸血された人赤血球濃厚液の原料血液から製造された新鮮凍結血漿を検査した結果、地方衛生研究所の検査では、無菌試験及び生菌数試験において、菌(エルシニア)が検出されなかったとのこと。
また、10月22日の医療機関の報告によると、地方衛生研究所に依頼して、輸血バックに残留していた血液を検査した結果、患者から検出された菌(エルシニア)と遺伝子型が一致した菌が検出されたとのこと。なお、医療機関の調査によると、輸血セットの点滴筒内から採取された血液を分離培養した結果、検出されたエルシニアの菌量は約107CFU/mlであった。

4.今後の対応
1)現在のところ、因果関係は不明。
2)問診強化策や細菌を除去・不活化する方策の検討。

【参考】
エルシニア :
  ・汚染されたブタ肉などを介して感染する食中毒菌であるが、汚染された血液の輸血による敗血症もある。抗生剤による治療が一般的であるが、エンドトキシンショック(菌の毒素によって生じるショック)を起こすと数日で死亡することもある。
  ・5℃以下でも増殖する低温細菌(人赤血球濃厚液は4〜6℃で保存)。


トップへ
戻る