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個別NAT陽性血液が混入した原料血漿に由来する
血漿分画製剤の安全性について



平成15年10月7日
血液事業部会安全技術調査会


 日本赤十字社が「供血者の供血歴の確認等の徹底について」(平成15年6月12日付け医薬血発第0612001号)に基づき実施している遡及調査に伴い、個別の検体ごとに核酸増幅検査(以下「NAT」という。)を実施した結果、陽性が判明した血液が混入した原料血漿に由来する血漿分画製剤(以下「対象製剤」という。)の取扱い等については、下記の通りとするのが適当である。
 また、「血液製剤の当面のウイルス対策について」(平成10年11月2日付け厚生省医薬安全局安全対策課、監視指導課、血液対策課事務連絡。以下「三課事務連絡」という。)に係る個別NAT陽性血液が混入した原料血漿に由来する血漿分画製剤等の取扱いについても、意見を取りまとめたので報告する。

1.対象製剤の取扱いについて
1)対象製剤の安全性については、
(1) 十分なウイルス除去及び不活化を実施
(2) 一般に流通している血漿分画製剤は、50プールNATで陰性を確認した血液を原料としているが、個別NATは未実施
(3) 過去、個別NAT陽性血液等の混入事例に際して実施された健康被害調査の結果(かかる血液を原料とした血漿分画製剤を投与された患者に陽転が確認されなかったこと)
(4) 日本赤十字社が実施したNATの結果の第三者機関における検証、及び、その信頼性の確認
(5) 欧米における同様の事例に対する措置の状況
等を踏まえて検討したところ、対象製剤については一般に流通している血漿分画製剤と同等の安全性が確保されており、特に問題がないことから、回収や医療現場への対象製剤であることの情報提供(以下「回収等」という。)を行う必要はないと考えられる。
2)遡及調査により個別NAT陽性血液の混入が判明した原料血漿(中間原料を含む。以下同じ。)についても、これを原料とする血漿分画製剤の安全性に問題はないことから、廃棄を行う必要はないと考えられる。ただし、原料血漿プールに投入される以前の段階で個別NAT陽性が判明した血液を血漿分画製剤の原料として使用すべきではない。
3)なお、個別NATにより混入が確認されたウイルスについて、当該ウイルスに関するウイルスバリデーション値が9未満の製剤については、個別に対応を検討する必要がある。

2.三課事務連絡について
1)三課事務連絡に規定されている措置は、現在では、1.と同様の理由により科学的根拠に乏しいものと考えられる。このため、
(1) 混入するウイルス量は、日本赤十字社が実施する50プールNATで陰性が確認されるレベルであること
(2) 血漿分画製剤の製造業者により、製造工程におけるウイルス除去及び不活化が適切になされていること
を前提とする限りにおいては、個別NAT陽性血液の混入が判明した原料血漿に由来する血漿分画製剤の安全性に問題はないことから、回収等の措置は必要ではないと考えられる。原料血漿についても1.の2)と同様と考えられる。
2)したがって、
(1) 日本赤十字社が実施するNATの精度管理が適切になされること
(2) 製造業者によるウイルス不活化が適切に実施されていることが確認されるなど、安全確保策の一層の充実が図られること
(3) 個別NAT陽性血液の混入事例が発生した場合、厚生労働省への報告が迅速かつ適切になされること
(4) 上記(3)の報告を踏まえ、1の3)の対応がなされること
(5) 製造業者が受け入れた原料血漿のNAT陰性が確認されること、及び、製造業者が実施するNATの精度管理が適切になされること
を条件として、三課事務連絡を見直すことが適当である。


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