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中央最低賃金審護会目安制度のあり方に関する全員協議会報告
平成2年4月27日

 本全員協議会は、中央最低賃金審議会から目安制度の見直しについて付託を受け、平成元年2月16日から同年11月1日まで計8回にわたり鋭意審議を重ね平成元年11月1日付けで「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を提出してきたところである。
 本全員協議会は、その後もさらに審議を重ねたが、データの処理等議論が専門的となったため、本年3月16日に専門委員会を設置することとし、以後3回にわたり目安の表示方法と金額審議の参考資料を中心に審議を重ねてきたが、本日専門委員会において別添報告書を作成し本日、全員協議会に提出した。
 本全員協議会は、この専門委員会の報告を受け審議した結果、専門委員会報告を全員協議会の報告とすることとした。


中央最低賃金審議会専門委員会報告
平成2年4月27日
 地域別最低賃金の改正の基本的な考え方
(1)地域別最低賃金の水準と改正の幅と頻度
 わが国においては、労使の交歩により賃金が毎年引き上げられるという慣行があり、最低賃金についてもこのような一般的な賃金水準の上昇を念頭に置きつつ、改正を行っていくべきである。
 最低賃金制の目的の一つは、低賃金労働者の賃金の着実な改善を図ることにあるが、そのためにも最低賃金の改正は、労働市場の実態や賃金動向、低賃金労働者の賃金実態などを踏まえて決定されるべきものであり、最低賃金は、ある程度の影響率を持つ水準に設定する必要がある。また、適度な改正が行われることが、最低賃金制に対する信頼につながることにも留意する必要がある。
 複雑で多様な経済社会の状況において、最低賃金の改正について、自動的に改正幅を示すルールがあるとは考えられない。毎回の改正は、その時々の状況に応じ、最低賃金審議会において、識見を有する委員の意見交換を通じて、検討を加え、決定されるべきものであると考える。この点、昭和52年の答申に基づく目安制度発足以来、毎年目安を提示し、これを参考として毎年の地域別最低賃金の改正決定が行われてきたことは、適切であったと考える。
(2)地域別最低賃金の地域間格差
 最低賃金の決定に際しては、(1)労働者の生計費、(2)類似の労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めるという原則が最低賃金法第3条にうたわれているところであるが、それぞれについては地域によって差がみられることに鑑みれば、最低賃金にはある程度の地域間格差が存在することは、許容されよう。
 わが国の賃金の地域間格差をみると、一般的な賃金についても、低賃金層の賃金についても格差が存在するが、相対的にみれば、一般的な賃金に比べて低賃金層の賃金の地域間格差の方が小さくなっている。
 現実に定められている最低賃金の地域間格差は、更にそれより小さくなっている。
 このことからして、地域別最低賃金は、低賃金層の賃金の地域間格差の拡大を抑えるという役割を果たしてきたと考えられる。
(3)地域別最低賃金の順序
 各都道府県の賃金の実態の順序と地域別最低賃金の水準の順序は、概ね整合的であるべきであり、現時点ではこの整合性について幾つかの地域において問題があるものの、多くの地域については問題がないとみられる。

 今後取るべき具体的措置
(1)中央最低賃金審議会による目安の提示
 中央最低賃金審議会は、今後も、昭和52年(9月28日)の小委員会報告に当たり了解されたとおりの考え方(別添)に立つものとする。
(2)地方最低賃金審議会における審議
 地方最低賃金審議会が、上記の基本的考え方を踏まえ、中央最低賃金審議会の示す目安を参考として、客観的データに基づき、また、参考人の意見聴取、実地視察を行うなどし、次のような事項を十分検討し、地域別最低賃金の水準について公労使三者の合意を形成していくことが望ましい。
(1) 各種の経済指標、有効求人倍率等から判断される各都道府県の労働市場の実態
(2) 春季賃上げの状況、初任給の引き上げ状況、毎月勤労統計、賃金構造基本統計調査等に示される賃金の動向
(3) 賃金構造基本統計調査、最低賃金に関する基礎調査等に示される賃金の構造
(4) 最低賃金に関する基礎調査等により把握できる低賃金労働者の実態
(5) 最低賃金に関する基礎調査等により把握できる最低賃金の影響
(6) 最低賃金に関する基礎調査等から判断される履行確保の可能性
 なお、その点で従来にもまして今後は、地方最低賃金審議会の公労使委員が合理的態度をもって、審議に臨まれることを期待する。また、労使団体にも実態に応じた合理的な最低賃金の決定の重要性の理解を求めたい。地方最低賃金審議会においては、以上のような努力が払われていくことを強く期待する。
(3)目安の形態
 「地賃の自主性を拡大し、地域別最低賃金の各県別順位を是正し、全国的な整合性を確保するために」労働者側から提案のあったゾーン方式については、使用者側から地方最低賃金審議会の自主性を確保しつつ全国的整合性を漸進的に実現するという観点から十分考慮に値するとの評価もあったが、その適正な運営につき不安があることも表明された。この点については、今後、検討を続けることとする。
(4)資料の整備、充実
 現在、各都道府県の賃金実態、特に産業別、企業規模別、地域別の賃金分布を把握し、地方最低賃金審議会における審議に資するため「最低賃金に関する基礎調査」が実施されているほか、賃金構造基本統計調査、毎月勤労統計など各種の統計も利用できるが、上記の点を十分検討し、公労使三者の合意形成の重要性に鑑み、これらの資料の整備、充実を図ることが必要である。
 このため、平成2年度から資料の整備、充実を図ることとする。


<別添略>


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