(1) | 本審議会における最低賃金制のあり方についての今回の審議においては、労働大臣から諮問のあった際重要参考資料として提出された労働4団体(日本労働組合総評議会、全日本労働総同盟、中立労働組合連絡会議、全国産業別労働組合連合)の全国一律最低賃金制についての統一要求および4政党(日本社会党、日本共産党、公明党、民社党)共同提案の最低賃金法案に留意しつつ、最低賃金の中央決定方式を中心として審議をすすめた。 |
(2) | 今後の最低賃金制のあり方について、中央決定方式を根幹とする制度を確立すべきであるとする考え方は、次のような基本的な見解と展望とに立つものである。
(@) | 本来、最低賃金は、労働条件に関するナショナル・ミニマムの重要な一環をなすものとして、中央で決定すべきものである。 |
(A) | 今後のわが国においては、労働力の需給緩和にともない労働条件の自律的な平準化の動きにはあまり多くを期待しえない事情にあるので、最低賃金の全国的基準の必要性はますます高まる。 |
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(3) | このような見解をめぐっては、次のような論議が行われた。
(@) | わが国の最低賃金制の実績は、地方最低賃金審議会の調査審議に基づく決定を原則としつつ発展をとげてきたものであるので、一挙に中央決定へ転換をはかっても円滑な運用が可能かどうか疑問である。 |
(A) | ナショナル・ミニマムの設定は、中央決定に限定されるものではなく、全国的な整合性を確保することが重要である。 | (B) | わが国の現実の状況の下では、すくなくとも賃金実態に即した地域別決定を考慮する必要がある。 |
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(4) | 他方、地方最低賃金審議会を中心とするこれまでの制度運用の実績については、次のような論議が行われた。
(@) | 都道府県ごとに、最低賃金を独自に決定するものであるため、
(1) | 最低賃金の決定における全国的な整合性を常に確保する保障に欠ける。 |
(2) | 各都道府県においては、それぞれ相互間の比較を重視するなどの事情により、改定作業が遅延するおそれがある。 |
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(A) | 地域別最低賃金と産業別最低賃金のそれぞれの性格と機能分担、高齢者の扱い、その他適用労働者の範囲などの点について、都道府県ごとにその理解と取扱いが区々になるおそれがあり、このことは地域別最低賃金が全国的に定着した現段階においては、とくに問題である。 |
(B) | これらの現状から、地域別最低賃金の決定方式について何らかの改善の必要がある。 |
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(5) | 以上の論議の結果、本審議会は、当面、最低賃金の決定において中央最低賃金審議会の積極的機能を発揮する方向について検討することを適当と認めた。 |
(6) | 本審議会は、前述のような検討の方向に沿って論議をすすめ、次のような案について検討を行った。
(@) | 全国的な最低賃金を中央最低賃金審議会で決定し、これをもとに上積みが必要な地域については、中央最低賃金審議会が上積みの基準を提案するか、あるいは各ランクごとの上積みの最低額を決定するものとすること。 |
(A) | 最低賃金の調査、審議は、地方最低賃金審議会を主体とし、その自主性を尊重する方式が最善であり、中央最低賃金審議会の積極的機能の発揮は、地方最低賃金審議会のより一層の機能発揮に資する方向を基本とすること。 |
上記の案をめぐる論議においては、(A)の案をとる立場においても、最低賃金の決定にあたって全国的に統一的な処理を行う必要がある事項については、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会に対して援助、助言を行うことの必要性を否定するものではないとの見解が明らかにされ、また、(@)の案をとる立場からも、地域的特殊性をもって存在する低賃金の改善にあたっては、地域の実態を配慮しうる地方最低賃金審議会の機能を評価する見解が示された。 また、地域別最低賃金の決定実績については、最近の状況が従来に比し円滑であったことは評価されたが、今後とも同様な状況が期待できるかについては、問題があるという見解も表明された。 なお、全国最低賃金審議会会長会議で表明された種々の意見も参考とした。 以上の審議の結果、労働者側委員の一部の反対はあったが、次の結論が得られた。 |