(1) | 第2点のランク区分及び表示方法の問題については、全員協議会の始めの段階での労働側委員の主張は、
(1) | 最低賃金額と各都道府県の経済実態の整合性の確保が不十分であること、特に、ランク間格差の拡大等という傾向が強まるなかで、各ランク上位県において当該不整合が大きくなっていること、 |
(2) | Aランク、特に東京の最低賃金額が経済実態との関係で非常に低くなっていること |
などでした。 一方、使用者側委員の主張は、
(1) | ランク数の再検討を含めて議論する必要があること、 |
(2) | 目安の「額」の表示を維持すべきであること |
などでした。 |
(2) | その後の会合において、統計データに基づく検討を行ったところ、全体として、都道府県の最低賃金額と経済実態との間に一部整合性に欠ける状況にあること及びランク間格差の拡大等の問題があることが認織され、中賃として現状を放置せずに何らかの方向性を示すことで合意されました。 |
(3) | このため、昨年5月の中間的とりまとめにおいては、「各都道府県の地域別最低賃金と賃金動向をはじめとする諸指標との関係をみると、全国的整合性に欠ける状況がみられる」こと及び「ランク間格差の拡大という現象が生ずる傾向がある」ことを指摘した上で、「今後これらの問題への具体的な対処方法を中心に検討を続ける必要がある」とされました。 |
(4) | 昨年11月以降の会合の中心課題はランク区分の問題でしたが、結局は報告の内容で合意が得られました。以下、報告に沿って説明いたします。 まず、報告においては、地域別最低賃金は、各都道府県の賃金水準、生活水準等の動向を可能な限り反映したものとなることが公平性の観点からも望ましいと考えられることから、各都道府県の経済実態に基づき各都道府県の各ランクへの振分けを見直し、今後見直し後のランクで目安を示すこととしました。
(1) | このうち、各都道府県の経済実態をどのように把握するかという問題に関しては、賃金動向を始めとする主指標を総合化した指数を各都道府県の経済実態と見なすこととし、諸指標としては、都道府県の経済実態を示す指標のうち特に最低賃金に関係が深いと考えられるものとして、報告の3ページから4ページにあるように、
・ | 所得・消費に関する指標(5指標)、 |
・ | 給与に関する指標(10指標)及び |
・ | 企業経営に関する指標(5指標) |
を用いることとしました。 具体的には、何回か指標を入れ替えましたが、最終的には、
イ | 所得・消費に関する指標としては、
・ | 所得を示す代表的なものとして県民所得及び雇用者所得を、 |
・ | 消費を示す代表的なものとして世帯支出、消費者物価及び標準生計費 |
の合計5指標を選びました。 |
ロ | 次に、給与に関する指標としては、主として時間当たり給与(しかも原則として所定内給与)をみることとし、
・ | 規模計の給与として資料出所の異なる2指標、 |
・ | 小規模事業所の給与として資料出所の異なる2指標、 |
・ | 女子パートタイム労働者の給与、 |
・ | 小規模事業所の低賃金層の給与として第1・二十分位数の資料出所の異なる3指標、 |
・ | 新規高等学校卒業者の初任給及び |
・ | 中小・中堅企業の春季賃上げ妥結額 |
の合計10指標を選びました。 |
ハ | また、企業経営に関する指標としては、
・ | 主要定業の生産性を示すものとして、製造業、建設業、卸・小売業、一般飲食店及びサービス業のそれぞれの1就業者当たりの出荷額、販売額等 |
の合計5指標を選びました。 さらに、全員協議会の検討の過程で、都道府県の経済実態の中期的な変化の的確な把握の必要性、数値の安定性等にかんがみ、各指標については原則として直近5年間の数値の平均値に基づいて検討することとなりました。 また、以上の20の指標を総合化した総合指数は、20の指標についてそれぞれ東京を100とした指数を求め、そうやって出された指数を単純平均することによって算出しました。その結果は、報告の別紙6のとおりとなりました。 |
| (2) | 次に、各都道府県の経済実態に基づいてランク数をどうするか、また、各都道府県をどのように各ランクに振り分けるかという問題に関しては、報告にありますように、今後の目安制度の円滑な運用を図るためには、昭和53年度以来実施され定着している面もある現行のランクとの継続性に留意する必要があるとともに、目安が法定労働条件としての最低賃金額に関わるものであることにかんがみ、その法的な安定性という面も考慮しなければならないことを踏まえつつ検討しました。 まず、ランク数については、労働者側委員は東京を別ランクにするためにランク数を増やしたいという考えは根底にあったでしょうが、4ランクでやむを得ないという意見でした。また、使用者側の一部委員は、下位ランクを中心にランクを増やすべきであるとする意見でしたが、
・ | ランク制度が発足した53年当時と最近とで総合指数の上位数県と下位数県の格差に大きな変化はないこと |
・ | 都道府県の総合指数の分布の状況がほぼ同一であり、ランク数の変更を特に必要とする顕著な事情はみられないこと |
等から、従来と同様4つとすることで合意いたしました。 また、各都道府県の各ランクへの振分けに当たっては、各都道府県の経済実態を示す総合指数を基本に、原則として総合指数に比較的大きな格差のある府県間に注目するとともに各ランクにおける総合指数の分散度合を全体的に小さくする方向でランクの境界を設定するという考え方に基づき、報告の別紙7のとおり、茨城、栃木、滋賀、宮城、岐阜、三重、香川の7県について適用される目安のランクを変更することといたしました。 |
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(5) | ところで、この総合指数は、中賃においてランク区分の見直しのための基礎データとして用いたものであり、それ以上のものではなく、したがって、地賃において総合指数の順位を踏まえて最低賃金額の順位を是正すべく措置されることを予定するものではないので、誤解のないようにお願いします。 |
(6) | なお、地賃の会長の皆様には、今回のランク区分の見直しに伴い、今後の地賃の自主性についてどのようなこととなるのか関心をお持ちのことと存じますが、今回のランク区分の見直しは、各都道府県の地域別最低賃金額と賃金動向を始めとする経済実態との間に一部に整合性に欠ける状況がみられるため、これを改善しようとするものであって、いわば現行目安制度の枠内において改善を図ろうとするものであり、過去中賃において合意されてきた目安の性格、地賃の自主性発揮のあり方等について一切の変更を加えるものではないという整理をしておりますので、今後の地賃の審議に当たってよろしくお願いいたします。 |
(7) | 次に、表示方法についてでありますが、目安を示す場合の中賃のこれまでの慣行、すなわち、目安額は額で示すが、その算定上各ランク同率の引上率となるようにしてきた慣行を踏まえた場合、「率」表示なら全国で1つだけ○%という目安を示せばよく、ランク別に目安を示す意味がなくなり、また、地賃で大幅に自主性を発揮しない限り現在の各都道府県の地域別最低賃金額の格差が固定され、今回のランク区分の見直しの趣旨にそぐわないことから、現行の各ランクごとの引上額による表示を引き続き用いることとしました。なお、今回の審議の過程で各都道府県の地域別最低賃金額のランク間格差の拡大という現象が指摘されましたが、各都道府県の各ランクへの振分けを見直すことにより、適用される目安のランクが変更される県が出てくることから、当面、この点は緩和されることが期待できます。 |
(8) | 次に、報告に、「(4)目安額の算定」として、「各ランクごとの目安額の算定の基準となる額については、現行の「各ランクの地域別最低賃金額の最高値と最低値の中間値方式」を改め、今後「新たに各ランクに振り分けられた都道府県の地域別最低賃金額の単純平均値方式」とすることが適当である。」とされています。 |
(9) | さらに、報告の(5)にあるように、各都道府県の各ランクヘの振分け等ランク区分については、今まで一度も見直さなかったことから問題が生じたという認識に立ち、今まで御説明した考え方を参考として、今後5年ごとに、今回用いた20の指標を総合的に指数化した総合指数に基づいて見直しを行い、その間の各都道府県の経済実態の変化が反映されるようにすることとしています。 |