(1) | 地域別最低賃金と各都道府県の経済実態との乖離 各都道府県の地域別最低賃金額と賃金動向を始めとする諸指標との関連をみると、都道府県間の比較を行った場合、一般賃金額が相対的に高いにもかかわらず地域別最低賃金額が相対的に低い県があり、またこの逆の場合もあるなど、一部に整合性に欠ける状況がみられる。 昭和53年度以来現在まで、全都道府県を4つのランクに分けて目安を示しているが、このような問題が生じるのは、この間各都道府県の経済実態には都道府県により相当の変化があったのに対し、各都道府県の地域別最低賃金額の相対的な水準に大きな影響を及ぼす目安制度のランクについては、各都道府県の各ランクヘの振分けを固定してきたことによるものと考えられる。 |
(2) | 各都道府県の各ランクヘの振分けの見直し 地域別最低賃金は、各都道府県の賃金水準、生活水準等の動向を可能な限り反映したものとなることが公平性の観点からも望ましいと考えられる。そこで、上記の問題点を改善するため、各都道府県の経済実態に基づき各都道府県の各ランクヘの振分けを見直し、今後見直し後のランクで目安を示すこととする。
(1) | まず、各都道府県の経済実態をどのように把握するかという問題が生じるが、その点についての考え方は次のとおりである。 賃金動向を始めとする諸指標を総合化した指数(以下「総合指数」という。)を各都道府県の経済実態とみなすこととした。諸指標としては、別紙4のとおり、都道府県の経済実態を示す指標のうち特に最低賃金に関係が深いと考えられるものとして、
・ | 所得・消費に関する指標(5指標)、 |
・ | 給与に関する指標(10指標)及び |
・ | 企業経営に関する指標(5指標) |
を用いた。 具体的には、
イ | 所得・消費に関する指標としては、
・ | 所得を示す代表的なものとして県民所得及び雇用者所得を、 |
・ | 消費を示す代表的なものとして世帯支出、消費者物価及び標準生計費 |
の合計5指標を選んだ。 |
ロ | 給与に関する指標としては、主として時間当たり給与(原則として所定内給与)をみることとし、
・ | 規模計の給与(資料出所の異なる2指標)、
| ・ | 小規模事業所の給与(資料出所の異なる2指標)、 |
・ | 女子パートタイム労働者の給与(1指標)、 |
・ | 小規模事業所の低賃金層の給与(第1・二十分位数)(資料出所の異なる3指標)、 |
・ | 新規高等学校卒業者の初任給(1指標)及び |
・ | 中小・中堅企業の春季賃上げ妥結額(1指標) |
の合計10指標を選んだ。 |
ハ | 企業経営に関する指標としては、
・ | 主要産業の生産性を示すものとして、製造業、建設業、卸・小売業、一般飲食店及びサービス業のそれぞれの1就業者当たりの出荷額、販売額等 |
の合計5指標を選んだ。 さらに、都道府県の経済実態の中期的な変化の的確な把握の必要性、数値の安定性等にかんがみ、別紙5のとおり、各指標については原則として直近5年間の数値の平均値をとり、検討した。 また、以上の20の指標を総合化した総合指数は、別紙6のとおりとなった。 |
| (2) | 次に、各都道府県の経済実態に基づいて各都道府県をどのように各ランクヘ振り分けるかという問題が生じるが、その点についての考え方は次のとおりである。ランク数及び各都道府県の各ランクヘの振分けについては、今後の目安制度の円滑な運用を図るためには、昭和53年度以来実施され定着している面もある現行のランクとの継続性に留意する必要があるとともに、目安が法定労働条件としての最低賃金額に関わるものであることにかんがみ、その法的な安定性という面も考慮しなければならないことを踏まえつつ検討した。
この結果、ランク数については、
イ | 総合指数の上位数県と下位数県の格差には大きな変化はないこと(総合指数の上位5県の平均を100としたときの下位5県の平均は、昭和53年等が75.7であるが、平成5年等は73.5である。) |
ロ | 都道府県の総合指数の分布の状況からみてランク数の変更を特に必要とする顕著な事情はみられないこと
等から、従来と同様4つとすることが適当である。 また、各都道府県の各ランクへの振分けに当たっては、各都道府県の経済実態を示す総合指数を基本に、原則として総合指数に比較的大きな格差のある府県間に注目するとともに各ランクにおける総合指数の分散度合を全体的に小さくする方向でランクの境界を設定するという考え方に基づき、別紙7のとおり、7県について適用される目安のランクを変更することが適当である。 |
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(3) | 表示方法 目安の表示方法については、これまでの慣行(目安額は額で示すが、その算定上各ランク同率の引上げ率となるようにしてきたこと)を踏まえ、ランク制度の意義を損なわないようにするため、現行の各ランクごとの引上げ額による表示を引き続き用いることとする。なお、今回の審義の過程で各都道府県の地域別最低賃金額のランク間格差の拡大という現象が指摘されたが、前記のように各都道府県の各ランクヘの振分けを見直すことにより、当面、この点は緩和されることが期待できる。 |
(4) | 目安額の算定 各ランクごとの目安額の算定の基準となる額については、現行の「各ランクの地域別最低賃金額の最高値と最低値の中間値方式」を改め、今後「新たに各ランクに振り分けられた都道府県の地域別最低賃金額の単純平均値方式」とすることが適当である。 |
(5) | ランク区分の今後の見直し 各都道府県の各ランクヘの振分け等ランク区分については、上記(2)に示した考え方を参考として、今後5年ごとに、今回用いた別紙3の20の指標を総合的に指数化した総合指数に基づいて見直しを行い、その間の各都道府県の経済実態の変化が反映されるようにすることが重要である。 |