1 | 現行の目安決定方式は、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇率を重要な参考資料としている。その賃金上昇率の算出方法としては、パート労働者を除いた一般労働者について、 まず、前年の1日当たり平均賃金を男女別に求める。具体的には、月給者、日給者、時間給者毎に次の方法によりそれぞれ日額を求めて、それらを平均する。
月給者 | :(前年の基本給 ÷ 調査年の月間労働日数) | + 諸手当 |
日給者 | :(前年の基本給) | + 諸手当 |
時間給者 | :(前年の基本給 × 調査年の1日の労働時間) | + 諸手当 |
次に、拠1日当たり平均賃金を男女別に求める。具体的には、月給者、日給者、時間給者毎に次の方法によりそれぞれ日額を求めて、それらを平均する。
月給者 | :(調査年の基本給 ÷ 調査年の月間労働日数) | + 諸手当 |
日給者 | :(調査年の基本給) | + 諸手当 |
時間給者 | :(調査年の基本給 × 調査年の1日の労働時間) | + 諸手当 |
さらに、調査年について男女構成の変化を除去するため前年の男女横成比で加重平均した男女計の賃金を求め、これを前年の男女計の賃金(前年の男女構成比で加重平均したもの)で除して賃金上昇率を算出している。
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2 | 上記の第4表を中心とした現行方式については、以下の点が検討課題として考えられる。
(1) | 労働時間短縮に伴う1日当たり又は時間当たり賃金の上昇が反映されない仕組みとなっていること |
(2) | パート労働者も賃金改定状況調査の対象となっているが、第5表にわけて集計されており、パート労働者の増加やパート労働者の賃金の変動が、明確には反映されない仕組みとなっていること |
(3) | パートを除く一般労働者について男女構成の変化が反映されない仕組みとなっていること |
即ち、現行の目安決定方式は、労働時間の短縮に伴う賃金上昇が反映されない、また、パート労働者の増加等労働者構成の変化も明確には反映されない賃金上昇率を基準としたものとなっているといえよう。 このため、次のような現象が生じている.
(1) | まず、労働時間の短縮についてみると、最低賃金については1日当たりの賃金上昇率を用いているが、この場合、時短に伴う1日当たり又は時間当たり賃金の上昇が反映されないのに対し、一般賃金についてはその分単価が上昇することから、1日当たり又は時間当たり単価でみれば、格差は当然のことながら拡大すると考えられる。実際に賃構でパート労働者を除く一般労働者の賃金との格差をみると、月額ベースではほぼ横ばいで推移しているが、労働時間の短縮に伴って時間額ベースでは拡大している。 毎勤でもパート労働者を除いた一般労働者(推計値)についてみると、日額ベースでは格差は拡大している。 |
(2) | 次に、パート労働者に関しては、最低賃金については賃金改定状況調査第5表を含めた総合判断の中で考慮されているものの、同調査の第4表ではパート労働者が除かれており、その賃金上昇率とウェイトが明確には反映されない仕組みになっているのに対し、一般賃金についてはパート労働者が増加すれば、パート労働者の賃金が一般労働者の賃金に比べて低いため、その分水準が低下することとなるので、格差は縮小すると考えられる。実際に毎勤でパート労働者を含む全労働者の賃金との格差をみると、パート労働者の増加が縮小要因となっている。 また、パート労働者の賃金の変動についても最低賃金には明確に反映されない仕組みになっているので、パート労働者の上昇率が一般労働者の賃金上昇率より高い場合には、パート労働者の賃金との格差は拡大する。 |
(3) | 実際には、上記(1)と(2)が複合して問題が起こってきている。要は、日額ベースでみた場合、労働時間の短縮は格差拡大、パート労働者の増加は格差縮小の要因となって、それらが複合して一般賃金との格差の問題となってあらわれているといえよう。 |
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3 | 一般賃金(日額、時間額)と最低賃金の格差の変化の問題は、第4表の賃金上昇率を中心とした現行の目安決定方式による最低賃金と、労働時間短縮やパート労働者の増加等の変化が織り込まれた一般賃金とを比較することから生じる問題であると考えられる。今後の目安決定方式のあり方を考えるに当たっては、第4表の賃金上昇率を中心とした現行の決定方式とするのか、労働時間短縮や労働者の構成変化をも考慮した方式とするのかということが重要な論点になると考えられる。 |