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中央最低賃金審議会小委員会報告
昭和52年3月29日 中央最低賃金審議会了承

1 審議経過
 (1) 当小委員会は、昨年3月22日に総会に報告し、その了承を得たとおり、その後「最賃の決定において、中央最低賃金審議会の積極的機能を発揮する方向」について検討をすすめてきた。
 (2) この検討過程においては、上記の方向に沿った具体的提案として、次の2つの基本的考え方が主張され、これらを中心に論議がなされた。
(@)全国的な最低賃金を中央最低賃金審議会で決定し、これをもとに上積みが必要な地域については、中央最低賃金審議会が上積みの基準を提案するか、あるいは各ランクごとの上積みの最低額を決定するものとすること。
(A)最低賃金の調査、審議は、地方最低賃金審議会を主体とし、その自主性を尊重する方式が最善であり、中央最低賃金審議会の積極的機能の発揮は、地方最低賃金審議会のより一層の機能発揮に資する方向を基本とすること。
 (3) 上記の具体的提案をめぐる論議においては、(A)の考え方をとる立場においても、最低賃金の決定にあたって全国的に統一的な処理を行う必要がある事項については、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会に対して援助、助言を行うことの必要性を否定するものではないとの見解が明らかにされ、また、(@)の考え方をとる立場からも、地域的特殊性をもって存在する低賃金の改善にあたっては、地域の実態を把握しうる地方最低賃金審議会の機能を評価する見解が示された。
 (4) 地域別最低賃金の決定実績については、昭和51年度の状況が従来に比し円滑であったことは評価されたが、今後とも同様な状況が期待できるかについては、問題があるという見解も表明された。
 (5) さらに、当小委員会の公益委員は、昨年11月17日に開催された全国最低賃金審議会会長会議の席上において、その意見をきく機会を得たところであるが、その主要なものは次のとおりであった。
(@)地域別最低賃金と産業別最低賃金のそれぞれの性格と機能分担の問題、高齢者の扱いその他適用労働者の範囲の問題など全国的に統一的な処理が必要な事項については、中央最低賃金審議会が考え方を整理し、提示することが望ましいこと。
(A)全国的な最低賃金を中央最低賃金審議会において審議決定する方式は、現状においては条件が熟しておらず、時期尚早と考えられること。
 (6) 当小委員会においては、以上のような経過を背景に、昨年12月から、公益委員と労働者側委員および使用者側委員との個別的会合を行うなど小委員会意見のとりまとめの努力を続けてきた結果、今日までの段階においては、次の点について結論が得られた。

 得られた結論
 都道府県ごとの地方最低賃金審議会において、最低賃金を審議決定することを原則とする現行の最低賃金の決定方式は、今日なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在し、したがって依然として地域特殊性を濃厚に持った低賃金の改善に有効である。
 しかしながら、現行方式は、最低賃金の決定について全国的な整合性を常に確保する保障に欠けるうらみがあることも否定しえない。したがって、当面の最低賃金制のあり方としては、地方最低賃金審議会が審議決定する方式によることを基本としつつ、その一層適切な機能発揮を図るため、全国的な整合性の確保に資する見地から、中央最低賃金審議会の指導性を強化する次のような措置を講ずる必要がある。
 (1) 最低賃金額の決定の前提となる基本的事項((1)地域別最低賃金と産業別最低賃金のそれぞれの性格と機能分担、(2)高齢者の扱いその他適用労働者の範囲、(3)最低賃金の表示単位期間のとり方など)について、できるだけ全国的に統一的な処理が行われるよう、中央最低賃金審議会がその考え方を整理し、これを地方最低賃金審議会に提示する。
 (2) 最低賃金額の改定については、できるだけ全国的に整合性のある決定が行われるよう、毎年中央最低賃金審議会がそのときの情勢に応じ、何らかの方針を作成し、これを地方最低賃金審議会に提示するものとする。なお、この方針の具体的なあり方については、さらに若干の時間をかけて検討を行うこととする。


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