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「健康食品」に係る今後の制度のあり方についての論点整理(案)


平成15年○月○日
「健康食品」に係る制度のあり方に関する検討会

はじめに
  当検討会では、本年4月以降、計7回の検討会を開催し、関係団体からのヒアリングやご意見募集も行い、「健康食品」に係る今後の制度のあり方について検討してきた。
 次回以降、関係団体からの推薦者も委員に追加して、今後の制度のあり方について検討していくこととしているが、この論点整理は、これまでの議論を踏まえ、その検討すべき論点を整理したものである。

 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割をどう位置付けるか。
 「医薬品−現行制度に基づく保健機能食品−いわゆる健康食品−一般食品」の体系のあり方。

(1) 国民の健康づくりにおける「健康食品」の役割
 「健康食品」の役割については、そもそも「健康食品」の定義や位置づけが定まっておらず、当検討会でいただいた各意見の念頭に置かれた「健康食品」のイメージが異なっていることから、評価が分かれている。例えば、その有効性や安全性が確保されている「健康食品」を念頭に置いた意見としては、一定の保健上の効果や日常の食生活で不足する栄養素の補給により国民の健康の保持増進に貢献しているとの評価につながる一方で、健康被害を起こす「健康食品」や表示が虚偽又は誇大である「健康食品」を念頭に置いた意見としては、国民の健康づくりに有効に機能しているとは考えられないとの評価につながっているものと思われる。
 このため、健康づくりのためにはバランスのとれた食生活が重要であるが、高齢化の進行、食生活の乱れ、生活習慣病の増加等により国民の健康に対する関心が高まる中で、安全性や有効性に疑問のある「健康食品」を排除すれば、「健康食品」は、一定の保健上の効果や日常の食生活で不足する栄養素の補給といった面で、国民の健康の保持増進に果たす役割は今後も増大していくものと考えられる。

(2) 保健機能食品の評価
 現行の保健機能食品については、表示等について改善すべき点があるものの、確かな科学的根拠に基づき、有効性・安全性が認められたものとして、国民の健康づくりに貢献してきていると考えられる。

(3) 「健康食品」の名称及び定義
 「健康食品」の名称及び定義について検討する際には、消費者への適切な情報提供を確保する観点から、消費者にとって、
有効性について科学的根拠があるのか無いのか
定義及び制度が分かりやすいかどうか
といった点が重要である。
 現状として、「健康食品」の名称については、関係法令において、制度化されている「保健機能食品」、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」と紛らわしい名称の表示が禁止され、運用上特に「機能」という文字を含んでいる名称の表示が禁止されているが、市場に流通している名称としては、このほか、「健康補助食品」、「栄養補助食品」、「栄養強化食品」、「栄養調整食品」、「痩身用食品」、「健康飲料」、「サプリメント」など様々な名称があり、それぞれ健康に対して有効性があることを示唆した名称となっているが、どの食品が実際にどのくらい有効なのか(科学的根拠があるのか)については不明であり、このように「摂取すれば健康になる」との印象を安易に消費者に与える名称の表示が乱立していることは、消費者への適切な情報提供を確保する観点からは適当でないと考えられる。
 「健康食品」全般の名称あるいはその定義については、消費者への適切な情報提供を確保する観点から検討することが重要であり、国際的な動向に従い、コーデックスの「健康・栄養強調表示の使用に関するガイドライン案」で定義されているHealthclaim、いわば「健康の保持増進の効果」を表示しているか否かという観点から検討する必要がある。仮に健康の保持増進の効果を表示している食品と定義するとすれば、その名称は、「健康保持増進効果表示食品」あるいはその簡略化した名称とすることが適当と考えられるが、「健康食品」という名称は、「摂取すれば健康になる」といった印象を消費者に安易に与えるため問題であるといった指摘や、また、消費者が混乱するため現在既に制度化されている名称を安易に変えるべきではないといった指摘に留意する必要がある。
 また、「健康の保持増進の効果」の表示とは、保健機能食品で認められているような「お腹の調子を整える」、「血圧が高めの方に適する」、「骨や歯の形成に必要な栄養素」、「赤血球を作るのに必要な栄養素」といった表示のほかに、既に市場に流通している「健康に有効」、「体にいい」、「ダイエット」、「(脂肪が)燃焼する」、「(血液が)サラサラになる」、「スリムになる」、「いつまでも若々しく」といった表示まで対象とするのか、さらに、「カロリーの取り過ぎが気になる方に」、「食べた栄養素の○%をカット」といった熱量や栄養素の量に関する表示や、「肌がつるつるになる」といった美容的効果に関する表示についても、対象に含めるかどうか検討する必要がある。
 一方、別の論点として、錠剤、カプセル状、エキス状、顆粒状等といった形状の違いや、加工食品か生鮮食品かといった形態の違い、あるいは、「通常の食事で摂取することが意図されていない」といった目的の違い等に着目して定義するかどうかについても検討する必要がある。あわせて、そのような違いに着目して定義する考え方を整理する必要がある。

(4) 「健康食品」の体系上の位置づけ(医薬品、一般食品との区別のあり方)と「いわゆる健康食品」の役割、位置づけ(その制度化の是非・方法)
 「健康食品」の体系上の位置づけについては、現行では、「特定保健用食品」、「栄養機能食品」、及び両者を合わせた「保健機能食品」については、健康増進法又は食品衛生法の法体系の中で位置づけられているが、当検討会では、身体機能への作用を強調するものは本来医薬品であり薬事法で管理すべきとの意見もある一方で、食品が身体機能への作用を持つことを正面から認め、薬事法の規定から「食品」を除くなどの改正を行うべきとの意見や、医薬部外品の中には、成分・機能から見て、食品に移行すべきものがあるとの意見もあり、上記(3)の「健康食品」の名称及び定義の検討と併せて検討していく必要がある。さらに、2(2)でも触れることとなるが、「特定の疾病リスクが低減する(リスクリダクションの)」ような作用まで食品について認めるか、あくまで、医薬品にのみ認められるものとするかも検討する必要がある。
 現行では制度化されていない「いわゆる健康食品」の役割、位置づけについても、上記(3)の「健康食品」の名称及び定義の検討と併せて検討されるべきものと考えられる。
 いずれにしても、新たな制度化に当たっては、消費者への正しい情報提供を確保するため、どういった観点からどこまで規制するべきか、事業者や消費者の責任をどこまで求めるのか検討しながら、規制の実効性も踏まえて検討するべきである。

 「健康食品」の利用・製造・流通の実態は、国民の健康づくりに有効に機能しているか。
 「健康食品」の安全性・有用性の確保、消費者に対する適切な情報提供、利用者の期待に応えうる「健康食品」はどうあるべきか。

(1) 消費者への適切な情報提供のあり方(求められる表示の内容・程度、教育・啓蒙のあり方、有資格者やアドバイザリースタッフの役割)
 消費者への適切な情報提供を考えるにあたっては、国民の健康づくりに資するよう、消費者である国民各自の健康状態に適した食品が選択されることを基本的考え方とするべきである。
 そのためには、消費者が、自分自身の健康状態を把握していることが期待されるが、一方で、薬剤師、管理栄養士、アドバイザリースタッフ等の有資格者等が、消費者の希望に応じて、例えば、消費者の食生活等から判断してある栄養素が不足している可能性があることを指摘するなど、健康状態についてアドバイスを行い、消費者の適切な「健康食品」の選択を支援することも重要である。
 この際、アドバイザリースタッフなるものを公的なものとして制度化するのか、既に様々な形で存在するアドバイザリースタッフについてある一定の能力等を確保するため、基準等を作成し、関係者の自主的な努力を期待するのかなどについて検討するべきである。
 また、あわせて、消費者に対する適切な情報提供を確保するためには、選択する「健康食品」の表示が、広告も含め、
ある一定の科学的根拠を有すること、
消費者が理解できる分かりやすく明確な表示であること、
といった点で適切であることが欠かせない。
 その他、消費者が自分の健康状態に適合した「健康食品」を適切に選択することを確保するためには、新たな制度の仕組みや「健康食品」の適切な摂取方法について、普及啓発を進めていく必要がある。

(2) 有効性の検討(コーデックス、EU、アメリカ等の国際的な動向を踏まえ、科学的根拠をどのくらい求めるか)
 「健康食品」の有効性に関する表示を認めるに当たっての条件としては、現行の特定保健用食品と同様に、国による厳格な審査等を経たものでなければならないものとするといった考え方がある一方で、安全性が別途担保されていることを前提に、厳格な審査を求めず、一定の科学的証拠を製造者が保持しているということで有効性の表示を認めるものとするといった考え方等があるが、国民の健康づくりが進展している中で、食品の有効性やその科学的根拠に対する国民の強いニーズを踏まえ、我が国において、科学的根拠をどのレベルまで求めるかについて検討する必要がある。
 その際、国による審査に代え、第三者機関における証明などの客観的な証明を義務づけるなどの意見もある。
 また、現行では「特定の疾病リスクが低減する旨の表示」は、食品には認められていないが、コーデックス、EU、アメリカにおける統一的な動向も踏まえ、こうした表示の可否及び認める場合の条件について検討するべきである。

(3) 現行の保健機能食品制度の問題点
 現行の保健機能食品については、特定保健用食品の評価基準の緩和、医薬品と誤認しないような表示の見直し、特定保健用食品の安全性及び効果の再評価、栄養機能食品の基準の拡大といった意見のほか、例えば、いわゆるダイエット食品がミネラル類又はビタミン類を栄養強化することによって、ダイエット効果を強調しながら栄養機能食品である旨を標ぼうしたり、他の機能を併せて表示するなど制度の趣旨から見て不適当な事例への対応といった論点について検討するべきである。
 保健機能食品制度は平成13年に創設されてまだ間がなく、特定保健用食品や栄養機能食品の趣旨やその区分について必ずしも十分に浸透したとは言えない状況にある。こうした状況を踏まえ、新たな制度の検討に当たっては、制度自体が消費者の混乱を招かないよう検討していく必要がある。

(4) 「健康食品」の安全性の確保
 「健康食品」の安全性については、今回の食品衛生法改正により強化されたが、さらに、品質を確保する観点から、食品GMP等の導入について、その担保措置(監視のあり方)や内容等について検討するべきである。
 また、「健康食品」の安全性については、運用面でも、監視指導を徹底するとともに、健康食品の過剰摂取や医薬品との併用による健康被害について調査研究及び対策を進めるべきである。

 1及び2を踏まえ、行政、関係業界、消費者の果たすべき役割、制度はどうあるべきか。
(1) 行政の果たすべき役割
 行政については、国民保健の向上を目的としつつ、行政改革の流れの中で最小限の関与にとどめるべきという考え方や、国民の健康の保護の観点からより積極的な対応を図るべきといった考え方等を踏まえて検討を進めるべきである。
 健康被害発生や有効性に関する情報等を国民及び関係者に幅広く迅速に提供してリスクコミュニケーション等を積極的に図ることや、実験データ等の情報提供システムを構築して公開することなど、民間では実施困難な施策については積極的に行政の役割を果たしていくべきである。
 また、虚偽誇大広告等の監視を含め、表示制度が正しく運用されるためには、行政コストを最小限にしつつ監視指導を徹底する必要があり、効率的な監視方法を検討するべきである。

(2) 関係業者の果たすべき役割
 食品安全基本法あるいは食品衛生法に規定されているとおり、「健康食品」の安全性の確保が一義的に関係業者の責務であることは言うまでもないが、これに加え、「健康食品」の表示の裏付けとなる根拠を示すことも関係業者の責務であると考えられる。
 また、関係業界は自主的に表示の適正化に取り組むとともに、消費者に対するより一層の正確な情報提供や消費者からの相談や苦情の解決など、消費者に対してより積極的な役割を果たすべきである。

(3) 消費者の果たすべき役割
 消費者は、「健康食品」に関する知識と理解を深め、自分の健康状態に適した「健康食品」を選択できるよう努めるべきである。

(4) マスコミの果たすべき役割
 マスメディアなど「健康食品」等の健康情報の発信者については、国民の健康づくりにおける情報源として大きな役割を果たしていることに鑑み、健康の保持増進の効果等について正確な情報提供に努めるべきである。

(5) 関係有資格者等の果たすべき役割
 薬剤師、管理栄養士又はアドバイザリースタッフなど十分な知識と経験をもつ有資格者等が、販売や普及啓発等に際して、より積極的に役割を果たすべきである。


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