03/09/18 薬事・食品衛生審議会平成15年9月18日(木)医療用具安全対策部会議事録         薬事・食品衛生審議会 医療用具安全対策部会 議事録 1.日時及び場所   平成15年9月18日(木) 14:00〜   厚生労働省共用第7会議室 2.出席委員(19名)五十音順   天笠 光雄、 井部 俊子、 小野 哲章、 笠貫  宏、   倉田  毅、 小柳  仁、 佐伯 晴子、 酒井 順哉、  ◎桜井 靖久、 佐藤 道夫、 澤   充、 土屋 利江、   土屋 文人、 長尾  拓、 中村 達夫、○外 須美夫、   星  北斗、 目黒  勉、 山口 照英   (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(3名)五十音順   甲斐 知恵子、勝呂  徹、 松谷 雅生 3.行政機関出席者   鶴田 康則(大臣官房審議官)、 平山 佳伸(安全対策課長)、   俵木 登美子(安全使用推進室長)、 日下田 俊彦、 井本 昌克、   宮下 久徳、 浅沼 一成  他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○事務局  定刻になりましたので、これより医療用具安全対策部会を開催したいと思います。桜 井部会長、よろしくお願いいたします。 ○桜井部会長  ただいまから開会させていただきます。本日は報告事項だそうです。まず資料の確認 からやりましょう。 ○事務局  先生方には事前に送付させていただきましたが、それと全く同じものをお手元に再度 置かせていただいております。資料目録が1枚、議事次第が1枚あります。資料1-1が 「生物由来製品に関する制度の概要」、資料1-2が「医薬関係者による副作用等報告制 度の概要」、資料2-1が「平成14年度の安全対策について(まとめ)」、資料2-2が「D EHPを含有しない輸液セット等」、資料2-3が「医用内視鏡の自主点検」、資料2-4が 「医薬品ポリカーボネート製医療用具の併用に係る自主点検」、資料2-5が「植込み心 臓ペースメーカ等の品質管理等の徹底」、資料2-6が「植込み型除細動器等の導線に係 る自主点検」、資料2-7が「ハイドロビュー眼内レンズ」、資料2-8が「電波と植込み医 用機器」、資料2-9が「医用内視鏡の鉗子栓の自主点検等について」となっています。 それ以外に席次表等を御用意させていただいております。  最初に、安全対策課で異動がありましたので、課長及び室長からごあいさつを申し上 げたいと思います。 ○安全対策課長  8月の末に安全対策課長を拝命した平山でございます。よろしくお願いいたします。 ○安全使用推進室長  7月1日付で安全使用推進室長を拝命した俵木でございます。またよろしくお願いい たします。 ○桜井部会長  では議題1から、事務局に説明してもらいます。 ○事務局  事前に申し上げたいと思いますが、資料1-何々というところは、昨年7月に行われた 薬事法改正に関する前施行分、つまり15年度施行に関するこれまでの動きを整理させて いただいたものです。資料2以降が安全対策ということで、個別案件についての報告を 申し上げたいと思います。まず資料1-1には、「生物由来製品に関する制度の概要」と あります。1と2に分かれておりますが、まず1ですが、今回の法改正において通常の 製品とは別に、生物由来製品というものを法律で定義いたしました。これについては、 人又は動物の細胞、組織等に由来する原材料を用いて製造される製品という位置付けを しました。その特性としては、原材料の汚染に由来する感染症のリスクがほかのものと 違うという形で、原材料採取から製造、市販後に至る、一貫した安全対策、安全確保体 制を確立するという概念で導入された制度です。これに対する具体的な施策は、2以降 で例示されるようなことが今年7月30日から施行されております。  2は「生物由来製品に係る市販後安全対策について」ということで、具体的に以下の (1)〜(3)まであります。まず(1)が「添付文書記載要領」です。医薬品・医療用具に ついては、その取扱い、使用上の注意等を含め、添付文書を付けることになっておりま すが、医療用具では、薬事法第63条の2に基づいて、添付文書は既に行われておりま す。ここは宿題になっておりますが、特に生物由来製品に関しては特別の配慮をすべき ということで、今年5月15日付の二つの通知において、生物由来特有の記載事項を整備 させていただきました。これは生物由来製品すべてという形で通知をさせていただいて いるところです。  (2)は、「感染症定期報告制度」です。今回の薬事法改正で新規に導入された制度で す。対象製品は生物由来製品すべてとなります。薬事法第68条の8に基づき、生物由来 製品を造っている製造業者等は定期的に6か月に一度、最新の論文その他で得られた知 見に基づいて当該製品の評価を行った上で、その結果を報告するという制度です。施行 は7月30日ですが、実際には調査期間等の仕切りがありますので、今後これらの方向が 取りまとまって順次御紹介することになろうかと思います。  (3)は、「使用対象者への説明並びに記録及び保存」です。特定生物由来、血液製剤 を中心とする特にハイリスクの感染症の可能性の高い群、リスクが完全に否定できない 群に関しては、特段の説明、使用に関する取扱い上の適正使用のための説明義務があり ます。また、万が一のための遡及調査体制の整備も法律で定められており、その注意事 項についても同じく5月15日付で、ゴシック体で書かれている通知をもって施行されて おります。資料1-1については以上です。 ○桜井部会長  ただいまの御説明について、何か御意見あるいは御質問はありますか。 ○星委員  生物由来製品の製造の所で、記録の保存や説明というのがありますね。前に質問した ときには、具体的に医療機関の中で、あるいはその製品を販売する方々がどのような方 法で保存し管理をするのかといった詳細については、後ほど考えて決めるというお話を 頂いたのですが、その後この辺りの具体的な手法あるいは医療機関が廃院したときの取 扱いなどは、何か示されているのか教えてください。 ○事務局  御指摘の点については、御覧いただいている通知において通知させていただいており ます。具体的にどのような形で記録を保存するか、電子媒体でもいいと、あるいは廃院 された場合、基本的には都道府県の方で取りまとめて保存されるというように、一連の ものについては通知においてその指針を示させていただいているところです。 ○星委員  これは法律に書いたり通知に書いたりする筋合いのものではないのでしょうけれども 、医療機関によっていろいろなものを保管する仕方が違うにせよ、製造する人たちと保 管する医療機関との間でうまくいくような取決めというか、業界が我々にその便宜を図 ってくれるような形で、例えば張付け型のラベルを用意してくれる、あるいはそれを保 存するための台帳を作ってくれるなど、そういうこともお願いしてあったのですが、そ れは業界の動きとして把握されているのか教えてください。 ○事務局  申し訳ございませんが、具体的にどのような便宜を業界の方から各医院に御提供でき るかどうかは、まだ当方では承知しておりません。基本的には各病院ごとにデータベー スを整備されたり紙で保存されたりというように、形式はまちまちですので、それらの 方法論については、一定の指針を紹介させていただいたところです。 ○星委員  特に中小の医療機関などで、前回の薬害エイズのときの反省を踏まえて作ったもので しょうから。あのときに中小のところは、大変苦労していたということがあります。ま た、そのデータが出てこなかったということもあります。もちろんそういう方法で制度 をお作りになるのは結構ですし必要なことだと思いますが、具体的にそれが実効の上が るような形で各医療機関で導入されるような支援までして、初めてこの法律なり通知な りの意味があると思うのです。是非とも引き続きお願いしたいと思います。 ○事務局  引き続き業界等とも、その他の情報交換をしていきたいと思います。 ○佐伯委員  「使用対象者への説明」というのは、「あなたにはこのようなものを使っております 」という患者さんへの説明ですね。それは口頭での説明に終わるのか、文書でいただけ るのか。と言いますのは、そのときは何となく覚えていても、何年かたってから報道で 見て、あれ、ひょっとしてということが起こると思うのです。 ○事務局  基本的に文書のほうがベターということはあるかもしれませんが、義務付けという形 での指針では、少なくとも口頭以上ということで、口でしっかり説明してくださいとい うことですから、文書まで厳格に義務付けてはおりません。 ○佐伯委員  そうしますと何か事が起こったときに患者さんから、「私はどうなっているのでしょ うか」というアプローチをして自分のことを知るには、どうやればいいのでしょうか。 ○事務局  具体的に何をですか。使われた製品のことですか。 ○佐伯委員  使われていたかどうかがはっきりしていない、でもきちんと調べたいというときに、 証拠になるものがないわけです。恐らくそのときには担当の先生なども替わっているで しょうから。病院や施設の方では、あの当時のあの患者さんというのは分かっていても 、個々の患者さんの立場からするとつかめないことがありますよね。それでよろしいの でしょうか。 ○事務局  先生から製品について、少なくとも口頭以上の説明があれば、どの製品をお使いにな られたかは多分分かると思います。そのときの製品の内容については添付文書にその旨 すべて書かれていますので、添付文書を入手することによって、患者さんがそういった ことをお知りになることは可能だと存じます。 ○佐伯委員  添付文書というものは、一般の患者さんが何年か後に簡単に入手できるものなのです ね。 ○事務局  基本的にはそのような形だと考えております。製品が世の中から一掃されてしまって 、そのようなものが廃版になるということがない限り、普通流通している以上は添付文 書はありますので入手できると思います。あるいは患者さんの個々別々の対応かと思い ますが、「使った製品の添付文書のコピーが欲しい」と言われれば、物は存在しますの で可能かと思います。ただ、そこは患者さんと先生とのコミュニケーションの中に入っ てくるので、どのような資料を要求されるのかは、患者さんと医療の中に立ち入る形に なろうかと存じます。 ○佐伯委員  今すぐには無理かもしれませんが、例えばインターネットなどを使って、自分の治療 に使われたと思われる物を検索していくことが可能な、そのような取組を考えていただ きたいと思います。 ○事務局  添付文書等という意味ですか。 ○佐伯委員  そうです。 ○事務局  御指摘の点については、製品のトレースということだけではなく適正使用の推進とい う意味でも、今後添付文書等のデータベース化のようなことにも取り組んでいるところ です。すぐにはできないかもしれませんが、そちらの方向で検討を進めております。 ○桜井部会長  トレーサビリティということから考えると、やはり文書の方が確実性は高いですね。 ○佐伯委員  「特段の注意」とおっしゃっているものが、今こちら側にとっては余り特段とは感じ られないのです。 ○事務局  治療行為においてやはり血液は必須なものですから、そういったものについては必要 枠という医薬品の性格、あるいは医療用具の性格からすると、「特段」と言ってもなく ては困るものなのです。そこの正しい認識をということで始まった制度ですので、アレ ルギー実験も絶対嫌だというものではなく、適切に先生と患者さんとがコミュニケーシ ョンを図れるようにと考えております。 ○桜井部会長  よろしいですか。それでは二番目の議題に入ります。 ○事務局  それでは資料1-2、「医薬関係者による副作用等報告制度の概要」ですが、従来の企 業報告、医薬品・医療用具等の製造業者等が副作用・不具合等を知った場合には、15日 又は30日以内に厚生労働大臣に報告しなければならないという規定に加え、今回の薬事 法改正においては、それらを使用される医薬関係者においても報告義務が法定化されま した。従前は医療機関の先生方にはボランティアベースで、そのようなものにお気付き の際は是非御一報くださいという形で、平成9年5月15日付の通知をもって依頼してき た制度でしたが、今回の法改正をもって法定義務ということで、特に保健衛生上の危害 の発生または拡大の防止の観点から、必要と認めた場合は報告を厚生労働大臣に上げる という制度が7月30日からスタートしました。内容自身は基本的に従前のボランティア ベースのものと変わりませんが、一応それが動いたということです。実施要領について は今年5月15日付で、下に書いてあるような通知で御案内させていただいております。 ○桜井部会長  いかがでしょうか。 ○佐伯委員  「必要と認めた場合」というのは、どういうことでしょうか。9月9日付けの日本経 済新聞の「豊島病院で乳児死亡。類似事故情報現場に届かず」という紙面に、「死亡事 故例ではないことなどから、医薬品・医療用具等安全情報としての発表はなかった」と いうのがあります。死亡事例であれば必要と認めた場合ということになるのか、その辺 りはどのぐらいのところを吸い上げていただけるのか教えてほしいのです。 ○事務局  非常に難しい御質問です。医療の中で何が危険で何が危険でないかということを一概 に申し上げるのは不可能ではないかと思います。ただ、実際に医療用具については道具 ですので、かなり重篤な患者さんの治療や診断に使われることもあります。原疾患で病 態が急変されることもありますので、何が直接の原因になるかというのは、どうしても 専門的な先生方の見識や御判断に委ねるところになろうかと思います。ですから単純に その患者さんがお亡くなりになったからといって、逆にすべての症例において不具合が あったというものではありません。また死亡に至らなかったとしても、ある製品にトラ ブルが発生してニアミス、死亡に近づいてしまった、これは非常に危険だと専門家の先 生が御判断される場合は、必要だと判断せざるを得ないのかと思います。これについて はどうしても個々の症例に立ち入ってしまいますので、具体的にスパッと竹を縦に割っ たようなご回答は難しいかと思っております。ただ、死亡でなければ不要かという御質 問であれば、そうではないということになろうかと思います。 ○桜井部会長  今の問題で大事なことは、やはりきちんとしたシステム作りをすることではないかと 私は思います。判断に任せるというのは非常にあいまいな意味合いで、果たしてそれが 適当かどうかというのは、私個人としてはちょっと疑問のあるところです。何かのアク シデントなりインシデントなりが起こった場合、それが重要なのか、必要があると判断 するのかという基準が今のところはないようなお答えですので、少なくともそれを評価 するシステムを作ることは私は必要なように思うのです。例えば専門家集団である学会 なり何なりと相談して、それがこれから波及すると非常に重大な事故が起こるという判 断をするようなシステムをつくらないと、それが曖昧ではいろいろ問題が残るのではな いかという気がしているのですが、いかがでしょうか。 ○事務局  クライテリアについては全くないわけではありません。企業報告で義務付けられてい るものと類似のものを例示列挙して、こういったものがその対象になりますというもの は示させていただいております。例えば「死亡又は障害(後遺症のように残ってしまう ような重篤な障害)につながるおそれのある症例」、「治療のために病院又は診療所へ 入院又は入院期間の延長が必要とされるような症例」、今申し上げたような症例に準じ て「重篤である症例」「医薬品・医療用具の使用によると疑われた感染症による上記の ものの発生」等が例示列挙されておりますので、一定のメルクマールは示させていただ いております。全く基準がないということではなく、一応基準になるべく指標について は例示させていただいているところです。 ○桜井部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○土屋(利)委員  制度化されたわけですが、これに対する罰則等はありますか。 ○事務局  現時点ではありません。 ○井部委員  7月30日施行ですので、8月から現在に至るまでどのような報告がなされているので しょうか。 ○事務局  具体的な書類はここに持って来ていないのですが、基本的にはすでにボランティアベ ースで平成9年からお願いしてきたものの延長という形で、内容に特段の変更があった ような感じは受けません。 ○小柳委員  世の中の各病院のリスクマネジメントは一見盛んですが、医師側からの、診療側から の報告は非常に少ないのが現状で、どういう事例を報告したらいいのか、必ずしも基準 がないということがあると思うのです。もう一つ、医療用具に関して言いますと、不適 正使用と不具合との区別がはっきりしていない診療側が結構たくさんいらっしゃって、 そういう世代が増えつつあるというお話もいつかここで出たかと思います。もうすべて 完成されたものと取っている若い医師が増えつつありますので、やはり何らかの制度化 は必要ではないでしょうか。説明書の中に、こういうものは不具合と取るのだという明 記をする時期が来ているのではないかと思っています。 ○事務局  その辺については事務局から若干の補足をさせていただきます。医療用具の適正使用 の範囲は非常に不明確だという御指摘がありましたが、2年前の添付文書記載要領でも 御審議いただいたように、既に今年1月から完全施行になっており、すべての医療用具 については原則、添付文書を付けることになっております。承認取得製品であれば、そ こには先生が御指摘のような使用目的、効果・効能、何に使えるのか、その範囲が確実 に書かれます。使用法あるいは使用上の注意についても記載事項が整備されているとこ ろですので、そこについては今後より明らかになってくるように考えております。また 不具合についても重要なものは列記する形になっておりますので、添付文書を御覧いた だければそこら辺はだんだん分かるように、環境整備は進んでいると考えております。 ○小柳委員  これを逸脱すれば、報告に値するという判断ができそうでしょうか。 ○事務局  まず使用目的、効能・効果ははっきり書かれておりますので、そこを逸脱すると委員 が御指摘の不適正使用という形になろうかと思います。使用目的、効果・効能の範囲内 でお使いになられて、使用方法を遵守された場合にあって予期しないトラブルがあった 場合には、不具合という蓋然性が極めて高いので、そういう御判断を頂くことになろう かと思います。 ○星委員  制度も大変大切ですし、制度がなければ始まらないというのもよく分かりますが、実 態として本当に報告が上がってきて活用され、製品の改善につながるというサイクルが 回るためには、やはり現場の意識を変えていくことももちろん必要です。そのためにも 何か目に見える形で、報告というものの価値や意義が現場に理解されるようにする。こ の制度を知っていますか、出さなければいけないのですよというのではなく、もう一歩 何か、「インセンティブ」という言葉が適切かどうかは分かりませんが、現場への働き かけといったものがあればいいなと、前々から思っています。前々のボランティアベー スのときからそうでしたが、いよいよ制度になったわけですから、制度を後退させるの ではなく本当に実効が上がるような方法を考えていただきたいし、現場からもそういう 要求をしていかなければいけないのだろうと思います。 ○桜井部会長  何かうまい方法はありますか。 ○星委員  やはり成功体験がないといけないと思います。警察でいいことをすると表彰状がもら えるというのではありませんが、つまりそういう報告があって、こういうことになりま したという成功体験があって顕賞される。我々は顕賞されたからといって、報告するか どうかは分かりませんが、とにかく制度を作りました、守らないのはあなたが悪いので すよというのではなくてできるようなことを。ここで議論して、ここで考えるべきこと かどうかはよく分かりませんが、考えてみる必要があると思います。 ○審議官  集められた情報によって品物の改善と共に、その情報を的確にほかの医療機関やドク ターなどの医療関係者に早く正確にやることによって、この制度が有効であるというよ うに持っていけたらと思います。やはり企業からではなくドクターから来るのは、私は 違うと思っているのです。中身的にも研究性の高いケースがあろうし、場合によっては コメントの中身も違ってくると思っておりますので、そういった意味でもう少し動かし ながら考えていきたいと思っております。 ○星委員  ヒントがあるのかもしれません。製薬企業は随分変わったと思うのです。副作用を隠 そうということよりも、やはりきちんと見詰めて対処しようというように変わってきて いるのです。医療用具について言うと、販売側あるいは輸入業者側は十分そういう意識 を持っていないのではないかと危惧しているのです。したがって販売する人、製薬の場 合はMRという人たちですが、物をただ輸入して医師に渡すというのではなく、その先 生方の意見がこの製品の改善につながるのだと。それは私どもに頂いてもいいし、遠慮 しないでどんどん厚生労働省の方に報告してくれということを販売をする人たちに言わ せるというのが、一つの方法ではないでしょうか。薬に関して言えば本当に変わったと 思いますので、是非ともその辺の御検討をお願いします。 ○安全使用推進室長  今星委員から大変重要な御指摘をいただきました。今日は法改正の今年度の施行分に ついて御説明させていただきましたが、平成17年度にもう一段の法改正の施行が控えて おります。そこでは今まさに御指摘いただいた製品を流通させる人に対し、いわゆる市 販後の安全対策に明確な責任を持たせてやろうということを、新しく制度化することに なっています。医療用具についても市販後の安全対策を重点にした、流通段階での責任 体制を作っていきたいと考えております。 ○目黒委員  今星委員が言われた実際の例としては、まだ添付文書自身が余り定着していないとい う部分も結構あるのではないかと感じています。一つの例としては、簡単な酸素流量計 で患者さんに1分間何リットルの酸素をやりますという機械があります。その添付文書 の中身を見ますと、「使用前に必ず石けん水で漏れを確認してから使いなさい」となっ ていますが、現場の中では患者さんがしょっちゅう使う機械については、常々毎日そう いうことができないような文書の中身も多々あります。そのほかにも、例えば人工呼吸 器でも機械回路でも、添付文書についてはまだ医薬品ほど完成度の高いものはできてい るとは言えないような現状が実際にはあると思います。ですから、もう少し時間が掛か るのかなと思います。あるいは、またどこかでそれを見直していかなければいけない部 分も多々あるのではないかと考えています。 ○澤委員  添付文書のお話を頂きましたが、医療用具の中でも例えば埋植材料ですと、添付文書 でこれは禁忌です、もしくは注意事項となっていても、我々サイドでは使用することが かなりあるのです。そうしますと、それが不適正使用なのかどうかというのは、大変判 断が難しいというのが実情だと思います。例えば眼内レンズで見ますと、小児や増殖糖 尿病網膜症などは禁忌と書いてありますが、小児の視機能のことを考えると、現在は患 者さん(親)のインフォームド・コンセントを十分に得て使用するということもなされて おりますので、埋植用具になりますと一概に不適正使用という判断は難しいのが実際で す。ですから、いろいろな体外の器具とは違うというところも御理解いただきながら、 添付文書のことも行政サイドで検討していただければと考えております。 ○桜井部会長  酒井委員、添付文書について何か御意見はございますか。 ○酒井委員  現在、医療現場で使っている添付文書は、特に医療材料などについてその場で読めと なりますと、やはり診療自体の形態がとても難しいわけです。したがって新しいものを 入れたときに院内でどれだけの教育体制を取るか、説明会を開くかです。やはりMR的 な要素を持った方が安全について、的確な指導をしていただくことも必要だと思います 。  あと、改訂されたのですが、その改訂については今までと同じものを扱っているから ということになりますと、それはとても分からないと。そういうところに不具合の原因 がありますので、添付文書というのは紙1枚だけではなく、ビデオ化するなり、又は電 子化してインターネットでPDFへ配信し、だれでも見られるようにする。したがって 患者も見られるし、医師も見られるという形を、今から考えていく必要があると思いま す。 ○桜井部会長  添付文書というのは、市販承認の条件になっているのでしたか。 ○安全使用推進室長  承認事項ではありませんが、承認のときに添付文書の内容についても、使用上の注意 の内容についても、御審議いただくことになります。 ○桜井部会長  今御指摘の添付文書の改良・改善、あるいは方法論の検討というのは大変大事なこと です。特に器具・機械の場合は、ビデオなどで見せられれば一発で分かるものが、こん な厚いものを見せられても読む人などいないので、その辺も考えていただいた方がいい かもしれませんね。 ○笠貫委員  先ほど医薬品のMRのお話が出ましたが、MRのあり方委員会が始まったときに、委 員の1人として参画したのです。そのときにMRというのは公の仕事であるという位置 付けだったと思うのです。そういう意味で医療機器に関しては、いわゆる情報の収集と 伝達という公の面を、どういうようにだれが責任を持つのかという問題に入ってきてい ると思うのです。医療機器の場合には、医薬品のそういうシステムの問題として、これ から積極的に取り組む必要があるのだろうと思います。報告制度というのは、もろに情 報の収集や伝達という話になりますので、それを是非進めていただけたらと思います。  その問題には医師の意識改革というのがもう一つ大きな問題です。医師の報告は確か に質が高いかもしれませんが、なかなか報告が出てきません。医師が報告した場合、医 師サイドにメリットが出るようなフィードバックシステムをどう持たせるかということ も、我々医療現場としては非常に欲しいのです。学会のお話も出ましたが、フィードバ ックシステムをどうするかについて学会とのバイパスは今はないと思うのです。ですか らそういうことも含めて、制度化に当たって付随してくるものの充実化を図っていただ きたいと思います。  その中でもう一つ。理解と協力の下できたものが、制度化したところでどういう変化 をもたらしたかというのは是非モニターしていただいて、それが、ただ制度化したとい う言葉の問題なのか、実際に実効がどこまで上がったのか、実効が上がっていないとし たら、どういうところに手を付けられたらいいかということが考えられるのだろうと思 います。そういう意味では医薬品が非常にいいモデルとしてありますので、そういう面 で進めていただけたら有り難いと思います。 ○桜井部会長  確かにある制度の実際的な効果の評価が大事で、やりっぱなしでは困るということだ と思います。7月30日にもう発行したわけですから、何か月か分の成果はこれだけあり ましたというものを、次回にでも御報告いただけますか。 ○事務局  今回法改正された7月30日施行の分に関しては、まだ若干の追加分があります。ただ 、どちらかというとこれは運用上のものです。例えば副作用報告、不具合報告を受けた ものを、ここの部会を含めた組織である薬事・食品衛生審議会に報告する規定もありま す。それについてはどの部会に具体的に報告するのかといった運用規定がありますので 、そこでの決定がなされた後には、今御指摘されたような医療機関報告だけでなく、企 業報告、感染症定期報告といった、今、御紹介したような趣旨の法定義務化された報告 についての御報告をさせていただく形になろうかと思います。これについては審議会設 置規則等の整備後に、改めて御報告申し上げたいと思っております。 ○星委員  こういう医師が知っていなければならない内容について、医師国家試験や出題基準に 入っているのかと単純に思うのですが、これは明示されていますか。 ○事務局  出題基準との関係でしょうか。 ○星委員  はい。私は国家試験の出題基準に入れれば、それで話が済むとは思いませんが、少な くとも教科書は読むでしょうし、勉強もしますよね。あるいは、そういう授業もカリキ ュラムに入れられるかもしれない。むしろ今は臨床研修が義務化されましたから、その 目標に入れるべきかと思いますが、少なくともそれらの議論の中にこういったことは出 てこないのです。つまり医師が普通に生活をしていると、4月30日に制度が変わったこ とを知らない可能性さえ相当程度高いと思うので、そういうものを広めていくためのア イディアを。罰則を付けるのか、罰則はあるのかという御質問がありましたが、罰則云 々という発想ではなく、モチベーションを高めるようなアイデアを是非ともお考えいた だきたいと思います。 ○事務局  関係部署と連絡を取り合って、またその方向で考えていきたいと思います。 ○桜井部会長  縦割りでなく、医政局ともよく融合してやっていただきたいと思います。 ○井部委員  今リスクマネジャーをやっているのは看護師が大変多いのです。この報告書の中に看 護師が報告できるといった文言がないということで、リスクマネジャーが憤慨している のを私は聞いたことがあるのですが、これは誤解でしょうか。 ○事務局  ここの説明は難しいのですが、実際に報告できないという排他規定はありません。 ○井部委員  報告書ではどういう文言になっているのか、教えていただきたいのです。 ○事務局  法文上は、医薬関係者という形で法定化されております。 ○井部委員  「医薬関係者」という一文なのですか。 ○事務局  そうですね。 ○佐伯委員  資料2-1の中に、「医師、歯科医師、薬剤師の医療関係者から」となっていますが。 ○安全使用推進室長  法文上は「薬局開設者、病院・診療所若しくは飼育動物施設の開設者又は医師、歯科 医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は」となっております。 ○井部委員  その他に含まれるのは甚だ不本意です。リスクマネジャーの大半は看護師が実務を担 っているわけですので、そういう現状もよく理解の上書いていただくと、やりがいがあ ると思います。 ○安全使用推進室長  法文自体は「その他の」となっておりますが、今後先生方によくご理解いただけるよ うに、パンフレットやいろいろな形で啓蒙していくことが重要だと思っております。そ のような中でまた努力したいと思います。 ○審議官  説明会で説明するというのがいいのではないですか。リスクマネジャーというものが 一般的になっているのであれば検討の余地はあるのですが、そこまで定着していないケ ースとか、一般的に読めるからほかの条文並びということから、法律ではなかなか難し かったと思うのです。今井部委員のおっしゃったことについてはできるということです ので、説明会とかそういったところでお話ししていきたいと思っております。 ○井部委員  説明会レベルではなく、きちんと文言に表していただきたいと私は思います。一方の 医政局の安全管理の方では、安全管理担当者若しくは安全管理者といったことを使って いると思いますし、研究費を頂いて文言の統一も一部やったはずなのです。もしきちん とリスクマネジメントの機能を持った人を表すのでしたら、そうした表現でもいいと思 うのです。大事なことは落とさないようにしていただければと思います。 ○星委員  これは構造上、リスクマネジャーあるいは病院の中でリスク管理をしている人に、報 告義務が課されているわけではないのです。多分法律の作りは、施設の管理者に基本的 な責任を与え、医師を始めとする関連職種の人たちにも同じように報告を求めろと言っ たときの代表性のあるものとして列挙した、これはほかの法文並びで作ったという構造 だと思うのです。ですから、一義的に医療機関の中でリスクマネジメントをしている人 に報告をしろという構造ではないがために、そういう書き方をしていると私は理解する のですが、いかがなものでしょうか。 ○井部委員  私はこの制度の効率性を上げるためには、不具合の報告を一番受ける担当者が意識を 持つことが効果があるのではないかと思っているのです。一般の医師や看護師や薬剤師 もそうですが、こうしたことに最も直接触れるのは、リスクマネジメントの役割を持っ ている人だと私は思っているのです。そうした人たちにも、こうした制度があることを きちんと分かってもらわなければいけないと思います。ですから表現はともあれ、そう いう役割の人がこういう制度を認識しておくことは極めて重要だと思います。 ○安全使用推進室長  条文上は先ほど読み上げたとおりです。法令審査のところで具体的にどうだったかは 分かりませんが、既に薬事法の中には、「医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医 薬関係者」という一くくりの言葉として出てきておりますので、法律の文章としてはそ ういう形で出来上がったと思うのです。ただ委員が御指摘のように、実際に医療機器の 場合には不具合、医薬品の場合には副作用を発見する方として、看護師の方々又は臨床 工学の専門の先生方が入ってくると思いますので、そういった先生方にもこの制度をよ く御理解いただくと。私たちとしては一つでも多くの不具合情報、副作用情報を集めた いわけですから、啓蒙に力を注いでいきたいと思います。 ○桜井部会長  これは先ほど星委員が言われたように、病院の偉い人に対する制度ですか。そうでは なく、関係者全員に対する制度ですか。 ○安全使用推進室長  法文上は薬局開設者、病院の開設者というのが頭に出ており、それに加えて医師、歯 科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者ということで、どちらに重みがあるという ことも条文上は明らかではありませんが。 ○審議官  大体薬事法自身が国家資格をちょっと頭に置いて、後はその他というようになってい るわけです。ですから利用法やその他のところに井部委員のおっしゃったようなことが 入っていれば、将来的にはそういったことも入る可能性はあるのではないかと思います 。法律の方は国会の関係もありますので、今のところはちょっと無理ではないでしょう か。 ○桜井部会長  今審議官の言われたようなことですと、リスクマネジャーはまだ国家資格にはなって いないけれども、看護師や臨床工学技士が入っていないのは片手落ちですね。これは国 家資格ですから。 ○佐伯委員  私は本当に素朴に患者の立場として、チーム医療をやっていただいていると信じてい ると言いましょうか、淡い夢を抱いているわけです。実際に毎日点滴をちょこちょこ触 ったり、いろいろなことをやってくださるのは看護師さんですので、名前が載ることで そういう方のモチベーションが高まるのであれば、一つ二つ文字数を増やすことに何の ためらいがあるのだろうかと、むしろとても不思議な気がいたします。 ○桜井部会長  おっしゃるとおりだと思います。では、それはお考えいただいて。 ○事務局  委員の方々の御意見はよく理解したところですが、私ども審査課からお話しさせてい ただいたように、法律事項に関しては国会に承認を得て可決しているものですので、軽 々に表現が明日変わるということは不可能かと思います。また用語については法令審査 という形で、他方で都の用語の定義あるいは整合性の観点から、その表現をいじること はなかなか難しいことですので、意はよく理解したものですが、この場をかりて「すぐ できます」とか、「いついつできます」ということは御回答しかねるというのが実際で す。 ○小柳委員  昨今の病院の本当の力の発揮のしどころは、院長、副院長、部長、医長というライン だけではありません。また看護師と言えど、看護部長、看護課長等々のラインだけでも ないのです。それを縦糸としますと、大事な横糸があります。それはこういうリスクマ ネジャー、マナーリーダー、教育リーダーといった人間が横糸になっていて病院はでき ているのです。リスクを感じたり、何か不具合があったときにそれを発見していち速く 報告したりする義務は、恐らくラインだけではないと思うのです。ですから今のお話で 、看護師が横糸とは言いませんが、将来は現場重視の考え方に多少考慮を及ぼしていた だく必要があるのではないでしょうか。というのは、非常に広い底辺から物事を拾いま すので。モニター制度というのはそういうものだと思いますので、その点の御配慮をよ ろしくお願いしたいと思っています。ラインだけでは吸い上げられないことではないか と思います。 ○桜井部会長  そのほかにはよろしいでしょうか。大事な御指摘です。旧来のしがらみ、あるいは法 律的な習慣というのも、私はもちろん大事だと思います。それも無視できないと思いま す。ただ安全というのは実効性が伴わないと意味がないので、やはり法律よりも実効性 の方が私は大事だと思います。ですからその辺もよく御配慮いただいて、改めるべき点 は率直に改めていただいた方がいいのではないかと思いますから、よろしくお願いいた します。  では三番目の議題にまいります。 ○事務局  それでは資料2-1に移ります。「平成14年度の安全対策について(まとめ)」の1ペー ジは医薬品に関してで、2ページに医療用具に関する昨年度の報告実績があります。薬 事法第77条の4の2、現在の第1項に基づく報告件数は5,026件です。現在第2項にな った医療機関からの報告はボランティアベースで、法改正施行前ですので226件です。 合計5,252件ということになっております。研究報告というのは企業報告のうちの一つ です。一応ここが昨年度1年間の個別報告のすべてです。  3ページが「安全対策上の措置」についてです。昨年度における「『医薬品・医療用 具等安全性情報』への情報掲載」は5件、「使用上の注意の改訂」の通達が15通となっ ております。  4ページで過去の推移が御覧いただけると思います。平成10年から昨年度に至るまで の、過去5年分のそれらの措置の件数推移が掲載されております。  6ページに、具体的に昨年度1年間の「医薬品・医療用具等安全性情報」という、私 どもの課の月刊誌に掲載された主な掲載記事がここに掲げられています。医療用具につ いては176号、179号、182号、185号、186号の計5号に五つの記事を掲載したところで す。 ○桜井部会長  よろしいでしょうか。 ○星委員  医療用具の平成11年度から12年度のところで、ババッと報告数が上がっているのです が、これは制度と関係あるのでしょうか。 ○事務局  平成11年度から12年度の間における制度改正等は具体的にはありません。ただ新聞を ひもといていただきますと、このころ例えば三菱の車の事故や日本ハムなど、いろいろ な大々的なリコールがありました。雪印のリコールもこのころではなかったかと思いま す。社会気運的に危機管理について大分取りざたされた時期と一致しておりますので、 そういった社会的情勢の変化と考えております。特に法施行的な運用上、何らかの制度 的な変化はありません。 ○星委員  そういう社会的な気運が高まって非常に範囲が広くなったことのほかに、内容的に違 いがあるのですか。また平成14年度に下がっているのが気になりますね。のど元過ぎた のでしょうか。それをどういうように評価されているのか、教えてください。 ○事務局  不具合報告の数自身はうちでコントロールできないので、基本的には受け身にならざ るを得ないのですが、実際に不具合品が多く出た年は、どうしても一時的に上がってし まうのはやむを得ないことかと思います。これは医薬品や海外の層もそうですが、実際 にはある程度の幅を持って変動しております。ここは一過的に落ちても、実際に不具合 が減ったとは思っておりません。氷山の一角というか、実際に認知したものを報告する 制度になっておりますので、全体数に大きな変化があったとは考えておりません。 ○桜井部会長  ちなみにアメリカだと何件ぐらいでしょうか。10倍ぐらい違いますか。 ○事務局  正式に数えたことはないのです。医薬品・医療用具等を全部集めてしまったものだと 、10万件ぐらいあったのではないかという記憶です。海外のその他の規制当局、例えば ドイツやイギリス等の医療用具だけで比較してみますと数千件と聞いておりますので、 今のレベルですとそれほど著しく少ないということではないかと思います。 ○佐藤委員  調べたことがあります。FDAの報告ですと、2001年度で大体6万件ぐらいです。 ○桜井部会長  それは用具だけですか。 ○佐藤委員  用具だけです。2002年度は9月までですが、6万件ちょっと超えている程度です。英 国の例では、2002年に約8,000件です。2001年も大体そのくらいのレベルです。ですか ら表現は悪いかもしれませんが、英国などにかなり近づいてきたのではないかと思いま す。 ○桜井部会長  アメリカで多いのはどういう理由なのですか。 ○佐藤委員  それは分かりません。やはりメーカーの数も多いですし。1997年から企業報告の強制 的な制度ができたのですが、その当時に8万件ぐらいまで上がっていますから、それか ら同程度になっていますね。それまでは、3万件とか1万件以下程度だと思います。要 するに全体的な報告数というか、企業も人口も多いからではないかと思います。 ○桜井部会長  ペナルティーとかインセンティブとか、そういう面での違いがあるのではないでしょ うか。 ○佐藤委員  それはどうでしょうか。FDAであれば報告は全部インターネットで検索できるよう になっていますが、イギリスなどは数は多いですけれども、個々の事例について検索で きるようにはなっていません。日本と同じように、安全性情報のようなものをこまめに 出すというやり方で対応しているようです。 ○酒井委員  先ほど星委員から指摘のあった、なぜ平成12年ごろに増えたのかということについて 、私はこのように考えています。この制度は「医薬品等安全衛生情報報告制度」だった のですが、そのころ医薬品・医療用具というものが入ってきたということがあります。 ちょうどそのとき私は厚生科学研究で医療機関を調査したのですが、そういうことを知 らなかった方が結構多くて、そういうことで認識が出たのではないかと思います。  私が質問させていただきたいのは、医薬品の企業報告と医療機関の報告は約6倍違う のですが、医療用具に関しては20倍なのです。どうして20倍になってしまうのか。これ は私の勝手な考察ですが、医療機関の中には医薬品をコントロールする、管理する、又 は情報提供する薬剤部があります。ところが医療機器や医療材料はだれが管理している かというと、それぞれの医療現場の方がやっているのですが、病院全体としてまとまっ ていないのです。今先駆的な病院では臨床工学部のようなところが、きちんと情報を管 理して保守点検もしてそういうものを情報提供しようとやっているわけで、それがそう いうところにかなり効いていて、情報も出てこないのではないでしょうか。ですから臨 床工学技士のいらっしゃらないところは不具合すら分からない。そういうことを私は非 常に危惧しておりますので、それについて厚生労働省はどうお考えなのか、お教えいた だきたいと思います。 ○事務局  今日の午前中、別の検討会があったのですが、病院での情報センターがないという御 指摘と、集中管理するところがないという御指摘については、その検討会の中の報告書 でも用具の一元的な窓口を作るべきだという答申が出されており、我々の方もそれに基 づいて関係課と連携しながら、先生の御指摘のような組織作りについて検討を進め、い ろいろな施策を打つような準備を進めているところです。  ただ、それが主たる原因かと言われると、その可能性もありますとまでしか解析がで きない。エビデンスがないものですから、その可能性はあると思います。それについて は手を打ち始めているという状況かと思います。 ○小野委員  この報告ですが、現在の報告の様式だと患者の症例、主治医の判断という項目がある わけです。先ほど、どのようなものを報告してほしいかというものの中に、医療用具の 場合は「副作用が発生するおそれがある(不具合も含む)」という部分があります。薬 については使ってみないとどういうことが起こるかわからない。しかし、医療用具につ いては見れば分かるものもある。あるいは取扱説明書を見て、どうしてもこれはおかし な表現である。あるいは、特に輸入品の場合にはどうしても誤訳だと思われるものもあ ります。これをそのまま実行すれば、多分事故が起こるだろうということが想像できる ものがあるわけです。  そのようなものを未然に防ぐための報告というのもあっていいだろう。そのためには 症例、担当医師の名前を書かなくても済むような報告があってもいいはずだろう。です から、幾つかの報告様式が用意されるべきではないかと思います。それができると、例 えば臨床工学技士が単独で機械の不具合について、このアラームはおかしい、このスイ ッチが後ろに付いているのはおかしいということは出せるはずです。それが医療用具の 改善につながる。そして、それが事故を未然に防ぐことにつながるのではないか。その 辺の御検討を願いたいというのが1点です。  もう一つは5,000例近い報告がある。ただ、実際にその中からアクトされたものは20 例、0.3%に過ぎません。あとの99.6%についてはどうなったのか、ということが一番 問題なわけです。これを掘り起こして活用しなければならない。そのために、先ほどシ ステム作りという話がありましたが、それも考えていかなければならない。どういう整 理をして、どのようなものが多いか。それが確実に医療用具の不具合と結びつかなかっ たかもしれないが、起こったことは起こったのだという情報の提供も、その不具合がほ かに波及するのを防ぐという意味では重要なわけです。99.6%の努力、これを無にして はならないのだろうと思うし、そのためのシステム作りも必要だろうと思います。 ○事務局  それについて若干補足させていただきます。先ほど御紹介させていただいたアクショ ン、20例という形で御指摘いただきました。この内容は普遍的なものというか、要する に個別の機種事象というよりは、同種同項のものすべてに及ぶものとご理解いただけれ ばと思います。それ以外、99%以上のものについてはノーアクションではございません 。医薬品でちょっと違うのは、医薬品の場合、同じ化学物質であれば先発も後発もない ので、添付文書の改訂数のように自動的に190に及ぶわけです。  用具の場合、人工呼吸器1台取っても構造、回路、配線、組成、全部違うものなので 、それがすべての製品に普遍しないことの方がむしろ多いという状況にあります。した がって、ほとんどの症例については個別の原因分析、及びそれについてのトラブル・シ ューティングという形での指示・指導を行っていますので、全件指導を行っていると御 理解いただければと思います。  また、それらの結果については先ほど申し上げた、今後規則の改定後に何らかの部会 、恐らくここになるかもしれません。御報告させていただく場をかりて、また改めて御 報告できるかと思っています。  様式の件ですが、今年の10月27日から電子報告が認められる形になり、様式がかなり 改訂されています。そこについて、今日は持ってこなかったのですが、特に医者のコメ ントを書かなければならないような規定にはなっておりません。  あと御指摘のように、不具合というのは必ずしも健康ではなかった者も対象となって います。これは施行規則にはっきり書いてあります。実際の不具合が報告しやすいよう に、患者さんの障害と用具の不良・不具合という二つのファクター、1独立の掛け算と いう形で報告を上げられるように変えています。先生の御指摘のようにどちらかにヒッ トすれば、医療用具が疑われている健康被害が出ているか、用具が壊れていて、健康被 害がないけれども疑われる場合は両方とも出るような形になっています。もちろん、壊 れもしなければ健康被害もなければありませんが、そのような様式については工夫がさ れ、電子化対応して統計処理ができるような形へ移行する予定です。 ○佐伯委員  佐藤委員にお伺いします。先ほどイギリスだと年間6万件とか、「万」という単位で 報告が上がっているというように聞こえました。その中で、日本でも使われているとお ぼしきものは幾つぐらいあるのでしょうか。日本の医療現場でそれだけのものを使われ ているのだったら、もっとFAXなどの数が増えていてもおかしくないという気がしま す。 ○佐藤委員  6万件と申し上げたのは米国、FDAの方です。英国では数千件、2002年で言えば 8,000件ぐらいになります。  日本は車いすは医療用具ではなかったですが、イギリスの場合車いすに関する報告が 非常に多い。それが1,400件ぐらいありますので、それを除けばほぼ日本と同じぐらい のレベルかなと思っています。  それから当然政府間で、例えばイギリスでこういう事象が起これば、そのような情報 は当然厚生労働省にも入るでしょう。お互いの連携は当然取っているでしょうし、それ から同じような医療用具、日本で承認されているものに不具合が起これば、それについ てはそのような情報がお互いにあって、それに対する対応が当然取られていると思いま す。過去にも、インプラントでもそのような事例が起こっていましたから、その辺はき ちんとされているのではないかと思っています。 ○佐伯委員  「きちんと」がどのような形で行われているのかを教えてください。 ○事務局  的確にお答えできるかどうか分かりませんが、まず一つ目、「国際間の情報交換」と いうプログラムについては存在します。ただ、これは実際の協定や正式な取決めという ような協定文書にはまだ至っておらず、現在協議中で、テストプランのような形での情 報公開にとどまっています。  そのクライテリアについては国際文書というか、GHTFという国際会議があるので すが、どのようなクライテリアのものをお互いに交換しようという話については調整が 進んでいる状況にあります。その意味で、もちろんこちらから送る場合もありますし、 向こうから頂いたものを国内で調査することもありますので、それが「きちんと」とい う意味であれば「きちんと」なのかもしれません。  次に、6万件というお話がありました。私が聞いた範囲内ですが、FDAの処理の方 法はほとんど統計処理になっています。1件1件の精査というより、ほとんど数をため ていってどうするかという形だと聞いています。  担当官についても、不確定情報ですが15名ぐらいとなっています。FDAのメドウォ ッチという不具合報告を見ていただくと分かるのですが、ほとんど内容がない。この製 品を扱って何か起きたというだけのものなので、原因が何だったのか。その細かい分析 というのは、ほとんど報告書には盛り込まれていないのです。事実上、数だけしか把握 できないものになっていますので、1通1通の報告の精度という意味ではむしろ、英国 を始め、ほかの先進国の方が細かい分析報告を求めているような感触を受けています。 ○小野委員  その6万件の件についてですが、今は違うかもしれませんけれども、かつてアメリカ のヒューレッド・パッカードの技術者になぜこれだけ多いのか、向こうで聞いたことが あります。要するに報告が義務付けられている。その報告は、例えばICUでうちのモ ニターを使っている患者が死んだとする。そうするとそのことに関して、そのモニター を使っていたのだから、そのモニターが原因であるかないかを書いて報告する。「うち のものはそうではない」という報告も1件と数えられる。その技術者は「毎日何件書く かわからない」ということを言っていました。  ということは、要するに重篤な障害や死亡に関するものもすべて挙げろという法律的 な強制があるから、実質的でない事故というものも挙がっていると言っていました。で すから、その6万件の中にはそういうものが含まれているだろうと思います。むしろ、 先ほどの英国の例のような実際の不具合の方が信用できる。  内容的にそれほど違うわけではないだろうと思います。ただ、日本の場合にはまだそ ういうものを報告していく、ある意味自分たちの恥を報告するという土壌がまだ育って おりません。その意味ではまだちゅうちょする部分が大分あるだろうと思いますが、い ずれは少なくともイギリスレベルまでには行くだろうと思います。 ○星委員  「安全対策上の措置」と書いてあって、「臨床調査の実施指示」で「医療用具、0」 と書いてあります。非常に少ないのですが、具体的にどのような指示を出して何を調査 するのでしょうか。あるいは、市販の調査と言われるものとの関係はどういうものなの でしょうか。 ○事務局  用具の担当ですが、医薬品の細かい点を失念していてお答えすることができません。 申し訳ありません。 ○星委員  後で教えてください。それから、「ヒヤリ・ハット報告」の話が午前中ありましたが 、そのインプットはここに何らかの形で交差する可能性があるのでしょうか。単刀直入 に答えてください。 ○事務局  単刀直入に言うとイエスです。 ○星委員  もう一つ、これは怪しいなと思うものがあったときに、そのトピックに限って厚生労 働省の責任において調査をするというような制度、あるいはそのような事例はあるので しょうか。例えば、ジャクソンリースがありました。あれが問題になってから全国調査 をしませんでしたか。あれは業界でさせたのでしたか。 ○安全使用推進室長  組合せの調査です。 ○事務局  あれは業界にやっていただいたものです。先生の御指摘、「自ら」がどこまでかによ って違うのですが、少なくとも指示の下、業界を中心にという意味であれば、そういう ものはほかにもあります。 ○星委員  ただ、厚生労働省が音頭をとって何か特別な、例えば人工呼吸器のこういうものにつ いて報告を積極的に要請する。つまりターゲットを絞った報告、これは一つの手法だと 思います。そのような事例はないのですか、あるいはそのような制度はないのですか。 ○事務局  現行では「不具合報告制度」がありますので、その中で運用しています。今先生が御 指摘のように、不具合が一つ見つかったからほかに何かあるか持ってきなさいというよ うな形を単独で出したことはありません。ただ、これから御説明する「自主点検通知」 のようなものは、逆に言うと普遍的なものをつぶすために、調査というよりむしろそこ を直してしまえという形でのアクションをしていることはあります。 ○審議官  範囲を絞ってなかったですか。医薬品法の中にもなかったのですか。 ○安全使用推進室長  調査をかけるようなですか。 ○審議官  例えば呼吸器系の薬とか、そういうものはないですか。 ○安全使用推進室長  随分昔、品目を指定してそれに関する情報収集という制度があったかと思いますが、 今は具体的にはないと思います。 ○星委員  先ほど来の議論で、現場から上がってこないという話の一つのインセンティブとして いろいろ考えてみていただきたい。今幾つか申し上げましたが、市販後調査をかけさせ て業界自体に調べさせたり、あるいは類似のものがないかどうかの確認をするというこ とは、縦横がうまくつながって制度が動いている。それが我々の目に数多く触れて、モ チベーションを上げていくというようなことにつながるような気がします。制度ができ ました。待っているのです。そして報告がありましたと。その報告の中で、怪しいもの はつぶしました、ということだけで本当にいいのかなというのは、先ほど来そういう声 があるようですし、私たちもそのことについて言えば「十分にしています」とは答え難 いところもあります。ただ、強制制度にするとか何とかという話になると、またいろい ろと出てくるのでしょう。知恵を出してくれと言われれば、一緒に出していかなければ いけないのだろうなと思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました ○井部委員  医療用具の安全対策上の措置で、このようなことをされているのは3ページでも分か ります。臨床でかなり高度医療をやっている医療機関でも、臨床工学技士が常勤でいな いという調査結果が日本看護協会の調査の中で出ています。そうすると、情報提供も非 常に重要ですが、先ほどから出ている医療用具に関する取扱いの専門家をきちんと置か ないといけないといったことがあったのではないか。恐らく当局の担当範囲ではないと いう回答がありそうですが、やはり情報提供だけではもう済まないと思うので、きちん とした専門家を配置して医療用具を点検整備、それから報告といったことがしっかりで きるようにしないといけないのではないかと思います。  特に夜間は非常に危険です。夜間に臨床工学技士が十分にいるなどということはほと んどありません。そのような中で高度医療機器を使っている現状があります。その点省 を挙げてやっていただくと、とてもありがたいと思います。 ○星委員  今の件、本当にそうだと思います。DIというものがあって、薬剤師はDIというも ので、あるいは服薬指導、それは10階か11階の仕事かもしれません。それにより、世の 中が随分変わりました。おっしゃるとおり、先ほどの御発言にもありますけれども、医 療費の話になると嫌らしいですが、そのようなことは考え得るのかもしれないなと思い ます。  ただ、どういうものにどういう評価をするのかというような議論があると思いますの で、是非ともその辺を明確にしていただきたいと思います。つまり、まずどういう必要 性があって、どのような仕事をどのようにしてもらうのかということが、みんなに分か るようにしておく点が必要かなと思います。大きな病院でもいないということは、大き な病院でもそういう人たちの必要性、役割、重要性を認識していないというのが多分一 つの原因だろうと私は思います。 ○目黒委員  当事者から一言申し上げます。我々は臨床工学技士ですから、随分前からマンパワー が少ないことについて話はしています。少しずつは増えていても、基本的に夜間・休日 まで対応できるだけのマンパワーはそろっていません。  前にも言いましたが、国公立の機関は病院の中で多分組織がないのです。それも前に も言っています。検査課があったり検査部があったり、看護部があったり薬剤部がある のですが、臨床工学部という組織は存在しません。なぜないかというと、人がいなかっ たり、まだ新しいからということがあります。いろいろな要望を出すのですが、聞き届 けられない部分もあります。実際、人が多いところは動けるのですが、我々みたいに少 ない人数で臨床の仕事をやって機械の仕事をやっていると、マネジメントにかかわる部 分は結構動きがとれないというのが現状です。  日常の仕事の中では、要するにインターネットの画面を開いて、薬に関する情報はか なり高度にいろいろなものが入ってきます。ところが、多分看護師でも先生たちでも人 工呼吸器、あるいは輸液ポンプの取扱いを調べようと思っても、インターネットの画面 を開いても多分分からないと思います。それすらできないのです。  私のところは多分、今2,000台以上の機械を少ない人数で扱っています。そのインフ ォメーションを作るには莫大な時間が掛かります。少ない人数ではとてもできないと思 っています。その辺、一応病院もいろいろな組織のことを言うのですが、声が届かない というのが実態です。その部分、こういう席上でいつも「必要だ」という話は出るので すが、声を上げても届かないのであきらめの感が少しありました。もう少し行政の部分 からアプローチしてくれないと、中にいる人たちはほとんど動けないのが実態なので、 外側からの圧力というのはやはり期待するし、行政側ももう少しバックアップしてほし いと考えています。以上です。 ○土屋(文)委員  医薬品情報室というものが、医薬品の場合で果たしてきた役割というのは非常に大き かったというお話がありました。例えば、今業者が医療用具の情報を持ってこようとし ても、その病院で一体だれに渡したらいいのかすら分からないということがあると思い ます。このような制度ができたのなら、是非医療機関に対してそういう情報はどこに出 すのかを決めるようにといった啓発活動というか、そういうこともやはり必要だろうと 。  取りあえず、最初はどこが受けるのかが決まっていないと、結局まとめようにもまと めようもないのかなという気もします。そのような組織作りに対して今すべきは、そう いうことをきちんとしましょう、そこで情報が一元管理できればいろいろなアクション が出る。例えば当院では医療安全対策室がやるとか、そういうことを少なくとも医療機 関が決めておかないとなかなかできないのではないかという気がします。 ○目黒委員  この会議でいつも疑問に思っていることがあります。薬品については薬剤部があるの ですが、尿道カテーテル、あるいはエラスターといった細かなものに対するインフォメ ーションを与える場所、あるいは収集する場所が院内にないような気がしています。要 するに、DI室のインフォメーションが臨床の現場では意外とトラブルの種になること がある。その辺、医療機関で意外と明確になっていない部分があるのではないかという 気がしています。その辺、もう1回調査すべきかなという感じがします。 ○審議官  新たに医療機器のDI室のようなものを作るのも一つのやり方かも分かりませんが、 医薬品のDI室をちょっと拡充して、臨床工学技士などに入っていただいて安全情報を 集中的に管理していく。そのようなこともあり得るのでしょうか。それとも、全く医薬 品と違うのですか。 ○目黒委員  ノウハウはドラッグ・インフォメーションで薬剤部の方が持っているとすれば、最初 から作るといってもマンパワーもないということであれば、やはり方法論としてはその ような形でやっていかなければいけないところもあるのかなと感じます。本来はその方 がベストだと思いますが、それは方法論なので、皆さんの御意見を聞いてみないと分か らない部分もあると思います。どうなのでしょうか。  本来は独立して、機械の立場からという方がいいかと思います。ただ、具体的な作業 になると、やっている内容としては医薬品情報を収集する、インフラを整備する、教育 するという部分では手法としては同じですから、共有できる部分は共有するという点が 一つ方法としてはあると思います。 ○審議官  それも一つの方法ということであれば、私どもも一つの提案のようなことを考えてい きたいと思います。 ○目黒委員  基本的に、組織化においては独立した部分を作っていかないと、多分動きがとれなく なっているのが現状だと思います。医薬品情報室、あるいは医療機器情報室が一緒にな ってあってもいいのですが、臨床工学部門というものを組織化してほしいというのは当 然別の問題としてあると思います。インフォメーション情報を与えるものと、機械を整 備し使えるようにして、患者のわきにあるいは看護部門に届けるまでの仕事というのは 非常に重要だと思っています。そのほかにも人工心肺なり人工呼吸器、人工透析、高圧 酸素治療、臨床部門、危機管理部門を含めていろいろな業務がありますので、それを組 織化していかないといけないのではないかと思います。そうしていくべきだと私は考え ます。 ○土屋(文)委員  組織というものももちろん必要ですが、医薬品情報室で持っている機能をとりあえず 拡大させておいて、その中で、現実としてそこの医療機関は別にするのかということを 検討していくのかなと思います。その意味で言うと、取締り法規は同じ薬事法でありな がら、医薬品情報室は医薬品だけということで余りに固めてきたということがあるかも しれません。医療機関の中も結構縦割りになっていますので、その辺を横断的にどうや ってやっていくのか。これは医療安全の話と同じで、従来の形式の分類だけではもうで きなくなってきていることが多いのかなという気がします。そういったことを取りあえ ずどうしていくか。なるべく早い段階であるべき姿を出していく必要があるのではない かと思います。 ○酒井委員  医療用具を大きく分けると、医療材料のように1回使い切りとか、医療機器のように 何回も患者に使っていくというものになると思います。その大きな違いというのは、医 療材料は割と医薬品に似た形で「使って終わり」です。しかし、今多くの病院では資材 部や材料部があります。本来、材料部や資材部は物の受発注だけでなく情報の管理まで するべきなのですが、そこまでやっていないという状況があり問題視しています。  もう1点は医療機器の方です。先ほどから、薬剤部の中に吸収してというお話があり ます。情報だけであればできるのでしょうが、実態として安全に物を使うということを 考えた場合には、医療機器には保守点検は必ず必要です。  現在、医療用具の添付文書が出ています。その文書の中に、医療機関はどこまで定期 的な点検をしなくてはいけない、日常点検をしなくてはいけないと。その中のルールを 全部守っていくと、とてもではないけれども薬剤部に1人、2人出したところで全然作 業量が足りないのです。そうすると、実際の添付文書に書かれている内容をやっていな いために医療事故が起こったのではないか。これは不適正使用ではないか、不適正使用 というのは使う側ではないですが、点検自体ができなかったのはなぜだということにな る。  やはり、臨床工学部のようなしっかりとした組織体系がなければ、医療機器のメンテ ナンスはできないだろう。また、患者に使っていて事故が起こってから直しましたでは なく、事故が起こらないように使うような形をとらないと、やはり医療事故が激減する ということは難しいのではないかと思います。 ○星委員  DI室のときはそうだったのですが、私の記憶が間違っていなければ、特定機能病院 を作るときに多分DI室を必置にしたのです。平成何年だったかは忘れました。あれで 爆発的に増えたというか、あれにより少なくとも大学病院にすべてできて、それを横目 で見て「なるほど、いいね」となった。一方で院外処方に変えながら、言葉は悪いです が、薬剤師たちは次の生きる世界を広げていったという歴史的なものがあります。  やり方として、単に今DIのものを横から取ってきてそのまま材料にすることより、 むしろモデルを示してもらう。今先生のいるような病院でも大変だと言うなら、ほかの 病院はどうすればいいのかよく分かりませんが、そのようなモデルを自分たちでという か、何も臨床工学技士たちがということではなくて、病院側が、それも必要性を感じて いる病院があるモデルを提示する。それを何らかの形で制度の中に入れ込んでいく。一 般の病院はその考えを横目で見ながら成長していく。その間に人もたくさん育ってくる だろうし、もしかしたら人の育て方も変わっていくのではないか。DIでそういうこと があったと思います。薬剤師教育に非常に影響を与えた。したがって、多分、工学技士 たちの教育にも大きな影響を与えるだろうと。  ですから、急にポジションを作ればいいという議論ではないような気がします。きっ とここで議論すべき話ではないのだろうと思いますし、研究費でというような話でもな いような気がします。酒井委員あたりはその辺がお得意なのでしょうから、そういうモ デルを御提示いただくようなことをこの会議として提案というか、厚生労働省に指示を するなり何なりして具体的なアクションを期待したいと思います。 ○桜井部会長  この点、草分けの小野委員、いかがですか。 ○小野委員  モデルはもう30年前からあると申し上げておきます。幾つかの私立病院では10人近い 臨床工学技士がいます。ただし、30年前にはそういうものはありませんでした。ME技 師を抱え、一元的な管理ということをしてきた。それは成功しているし、効果があるこ とも分かっています。ただ、それはやはり人が必要な問題です。現在の医療の逼迫した 状況から言うと、「人を入れろ」というのが難しいわけです。ただ、やればできるとい うことは既に分かっているわけです。  ただ、ほとんどが私立病院です。これを国公立病院でどこかに例を作ってやっていく 。国立病院できちんとした組織を作ってやっていく。それが効果があることを示してい く。それはあるところで、ある予算を立てて実験をするということは容易にできるかと 思います。例えば、それを今年は10病院でやるなど、今後計画もあるのではないかとは 思いますが、そのようなことをやっていけばそれが「臨床工学室」、あるいは「医療機 器管理室」か分かりません。そのようなものが有効に作用していけば、このような安全 対策には資することだろうと思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました。時間のこともありますので、ほかに特に御発言がなければ 次に進みます。次は個別の例で8件ほどございます。 ○事務局  個別の例に行く前に、星委員から御質問があった2件について御回答いたします。今 の資料2-1の3ページに戻って、医薬品等における「動物実験等の実施指示」の具体的 な内容であります。コウジ酸という物質の肝臓での発がんメカニズムを明らかにする動 物実験を行っています。「臨床調査の実施指示」の方は、イレッサ錠に関する気管支性 肺炎、急性肺障害の危険因子、ハイリスクの患者背景等を明らかにするプロスペクティ ブな調査分析という内容です。追加で御報告申し上げました。  次に資料2-2に移ります。「DEHPを有しない輸液セット等」というものです。こ れは平成14年10月17日付けでポリ塩化ビニル製の医療用具に関する注意事項等につい て、注意喚起させていただいた後のフォローアップになります。これについては前々回 の部会、平成14年の当部会において、ポリ塩化ビニル製医療用具の可塑剤であるDEH Pの溶出量、暴露量評価等からどういった注意事項をすべきかという話を御審議いただ いた案件の続報という位置付けになります。  その会でも御指摘いただいたように、実際にDEHPを含有しないセットにはどうい うものがあるのか、その辺についての具体的な例を示してほしいという御指摘を受けた ところです。これについてはここに書いていますように平成14年10月17日付けで通知し ているのですが、その内容について「安全性情報」といった形でこのような別添の記事 で、全リストを公開させていただきました。もちろん、この当時現在の調査結果に基づ くものになりますが、それについては5枚目、数字は3ページになっていますが、安全 性情報の記事の表題が付いているところを御覧ください。チューブ類の関連業界として 日本医療器材工業会というところがあります。こちらのホームページにも同じ内容を掲 載し、閲覧できるような状態になっています。以上が資料2-2の御説明になります。 ○桜井部会長  ありがとうございました。何か御意見、御質問はありますか。よろしいですか。それ では、次に進みましょう。 ○事務局  資料2-3、「医用内視鏡の自主点検」に移ります。別添の資料は「自主点検通知」と 言われている指導通達になります。  医用内視鏡、いわゆる内視鏡ですが、これにも当然対物レンズや照射レンズといった 種々のレンズが搭載されています。このレンズが臨床使用中、ポロッと落ちているとい う例が2例ありました。実際、落ちたものが患者に入っているということは確認できて おりませんが、先ほども御指摘があった可能性の議論があり、他の製品においても同様 の類似構造をとるということで、下記の1〜4の自主点検を指示したところです。  簡単に申しますと、基本的に接着、あるいは装着、はめ込み、構造等の改変を行い、 簡単に落ちることのないようなものにしなさいという内容でございます。また、自主点 検を行った上で耐用性、耐久性の試験を行って、科学的根拠に基づいてどのぐらいもつ のか。あるいは、貯蔵や保管方法についても所要の整備をするように指示をしたところ です。  それ以外にも3、4と書いてあります。そのとおり読みますと、販売先の医療機関等 に対してそういった製品を定期的に保守点検をしてくださいというお願いをして、適正 に使用するような注意喚起をすると同時に、脱落要因が洗浄・消毒・滅菌といったメン テナンスによる可能性も否定できないので、そういったところの取扱いについても添付 文書等の改訂を行い、十分注意喚起するように指示したものです。以上です。 ○桜井部会長  ありがとうございました。何かございますか。それでは次をお願いします。 ○事務局  資料2-4、「医薬品とポリカーボネート製医療用具の併用に係る自主点検」です。こ れも先ほどの自主点検通知と同じ種類のものをお付けしています。  冒頭、1行目にありますが、平成14年11月のころに一度三方活栓については自主点検 通達を出したところでございます。そのときは、デュプリバンという麻酔薬との組合せ で三方活栓が割れるということでした。下に書いていますけれども、今回それ以外の免 疫抑制剤であったり、その他の脂肪乳剤などでも割れるといったことが示唆されました 。ポリカーボネート製の三方活栓、硬質のプラスチックですが、かなり医療用具に使わ れています。医薬品との組合せによっては簡単に割れてしまうと危険ですので、これに ついても医薬品・医療用具、両側面から点検を指示する通達という形で指導させていた だいた案件であります。概略は以上です。 ○桜井部会長  ありがとうございました。 ○小野委員  1件戻って医用内視鏡の自主点検についてですが、第3項目に「販売先医療機関等に 対し、当該製品について定期的に保守点検を行うよう周知し」とあります。この保守点 検というのは医療機関が主体的にやるべきもので、業者に委託するのは勝手ですが、基 本的にはこの機械について責任を持つのは医療機関である。  そうすると、この通知は医薬局から出されると同時に医政局から各医療機関に出され るべきものではないか。要するにこれは医薬局の会議であるし、医薬局の仕事の内容を 言っているわけです。基本的にはすべてが関係業者というか、製造業者の責任ではない 。長く使っていれば劣化していくわけですから、こういうことは起こり得ることです。 それを事前に食い止めるのは医療機関の責任でもある。行政としても両者にわたってそ の辺をしっかり規制していく必要があるのではないかと思いました。 ○事務局  はい。 ○桜井部会長  よく分かったようですので次に進みます。 ○佐伯委員  続けて同じ質問で申し訳ありません。先ほど井部委員がおっしゃったように、大きな 病院でも常駐では専門家の方がいらっしゃらないということでした。例えば胃の内視鏡 を行ったとしたら、それを次の患者さんに使う前に洗浄、消毒してということをする。 手間としてはどのぐらいの時間が掛かって、実際どのような頻度でやっていらっしゃる のでしょうか。目黒委員のところではいかがですか。 ○目黒委員  私のところでは内視鏡を余り使わないのです。具体的にお答えできなくて申し訳あり ません。 ○中村委員  気管支鏡などだと専用の洗浄機があって、そこに1時間ぐらい滅菌液の中でよく滅菌 する。それから使う前に扱う医師が確認して使います。洗浄に関しては、その場に医師 が置いておくと看護師やその場にいる補助員が洗浄機にかけていきます。使う前の確認 は医師が責任を持ってするということにしています。 ○桜井部会長  ほかにはよろしいでしょうか。その次に進みましょう。 ○事務局  資料2-5、「植込み型心臓ペースメーカ等の品質管理、市販後安全管理等の徹底につ いて」に移りたいと思います。これは今年の5〜6月にかけて植込み型心臓ペースメー カで多くの不具合、突発的に回収が数件続いたことがありました。そのようなことがな いように関連業界等に指示、指導徹底をするための通知でございます。  御存じのように、ペースメーカは埋め込み型の生命維持装置ですので、特にハイリス ク郡の医療用具として指定されています。これについての製品管理、情報収集の徹底を 図るという意味で通知になっています。以上です。 ○桜井部会長  いかがでしょうか。この次が「植込み型の除細動器」なので、そちらも説明をお願い します。 ○事務局  資料2-6、「植込み型除細動器等の導線に係る自主点検」について御説明いたします。 植込み型除細動器は機能は違うわけですが、埋め込み型心臓ペースメーカと非常に似た 構造のものがあります。いずれにしても、心臓に電気的信号、あるいは衝撃を与えるた めのリード(導線)というものがあるわけです。この導線を心臓に埋め込むときの方法 が何種類かあるのですが、俗に言うコルクボーラー、コルク栓抜きのようにクルクル回 って進んでいく、「スクリューイン・リード」と呼ばれていますが、そのようなタイプ のリード線において、実際に突き抜けてしまうというリスクが企業報告で報告されまし た。その内容について注意すべき点は、どの会社のリードも同じような構造体、同じよ うな不具合を起こしますので、下記のとおりのものを注意喚起するための添付文書を整 備するように徹底したものです。  コルクボーラーは基本的にねじれば前に進む形になっていますので、リード線を心臓 内に埋設する効果は絶大なのですが、ねじり過ぎると当然突き抜ける、あるいは心臓が 動いていますので、薄い部位にランチすると当然突き抜けやすくなるということもあり ます。そこは専門家の先生であれば御存じではあるものの、症例もありますので注意徹 底をしたものです。 ○桜井部会長  ありがとうございました。笠貫委員、何かコメントがあればお願いします。 ○笠貫委員  御説明があったように、突然死を予防するという意味では確実にリードを固定したい という問題がある。一方ではそれに伴うリスクをどうするか。この植込み型除細動器に ついては、導線の持っているもともとの目的と、それに伴う合併症として起こり得るも のを考えなければならないと思います。その意味では機器の十分な点検が大切だと思い ます。  それから植込み型除細動器はかなり厳しい施設基準になっていますので、ドクターの 研修、あるいは指導の両面から徹底していく医療機器として時々喚起をしていただくと 有り難いと思います。学会としてもこういうことは十分注意していただき、行政と学会 の両方から必要と思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました。 ○小柳委員  はしなくもこのペースメーカのことが話題になりましたので、一番最初に話が出た不 適正使用なのか、不具合なのかという点の境界線にある問題かと思っています。佐伯委 員がおっしゃったように施設基準がしっかりしていますので、不適正使用というのは非 常に少ないのではないかと思っています。スクリューインのスクリューのところの長さ がバラバラというのは今初めて知ったのですが、そのような点のご検討は是非していた だくといいのかなと思いました。  もう一つ、昨今看護師の常駐の話などと絡めて、臨床工学技士の責任がどんどん重く なるような規定ができつつあるやに聞いています。生命維持装置にほとんど臨床工学技 士の名前が入ってくる、というような規定案がだんだん増えているような気がしていま す。まだ検討中なのだと思いますが、責任が大変なのだなと思っています。  この植込み型除細動器も、補助人工心臓も含めて規定の中に臨床工学技士の名前が何 度も何度も出てきています。先ほどお話に出てきた臨床工学部のテストケース、私学で はたくさんあるのですが、国の力、国の目で臨床工学部を幾つか運営していただくとい うのは非常に意味があるのではないかと思っています。以上です。 ○桜井部会長  ほかにはいかがでしょうか。それでは、その次をお願いします。 ○事務局  資料2-7、「ハイドロビュー眼内レンズ」に移りたいと思います。「医薬品・医療用 具等安全性情報」の記事を掲載させていただいています。当該製品において、カルシウ ム沈着が起きるということの注意喚起であります。この製品は先ほど来話が出てきてい る眼内レンズということで、白内障手術後の無水晶体眼における視力補正を目的として います。  当該製品は1999年に承認された製品でありますが、どうもカルシウム沈着が起きてく る。カルシウム沈着はいろいろな要因で起きるわけですが、その原因が定かではないと いう状況で、日本でもちらほら出てきています。  4ページを御覧ください。原因を追求していったところ、実際に眼内レンズを入れる バイアルですが、どうも密封のためのシリコーン製ガスケットから低分子シリコーンの 微粒子が出ているのではないか。それが眼内レンズの光学部表面に付着し、その付着し た低分子シリコーンに房水中の遊離脂肪酸が結合した結果、リン酸カルシウムの凝集を 惹気しているのではないかということが実験的に分かってきました。これは可能性の議 論なのですが、in vivoではそのような結論だということで注意喚起という形のもので す。  現時点ではこういったガスケットは使っていませんが、旧ガスケットをお使いになら れた患者さんもおります。ちょっと上を見ていただくと、最終的には我が国の総摘出総 数の予測では160〜260ぐらいで推移するだろうという状況になっています。もちろん、 患者さん個別の体調、バックグラウンドによって多少動きがありますので、必ずしも全 部摘出するわけではありませんが、臨床使用上使えない程度のものの数は大体このぐら い行くのではないかという見込みになっています。現時点でもこの中に入って推移して います。これについては以上です。 ○桜井部会長  ありがとうございました。澤委員、何かごさいますか。 ○澤委員  このハイドロビュー眼内レンズというのは、要するに親水性のハイドロジェルレンズ についてある程度考慮する必要のある問題を注意喚起していただいたのだと思います。 我が国ではハイドロビューというボシュロム社のものが一番多いということで、これが タイトルになっています。このバックグラウンドとして、ガスケットがすべて原因であ ればこれでいいということになりますが、今お話があったようにかなりの因子が考えら れます。その一つには、ソフトコンタクトレンズと同じ物質をある程度含みますと、ソ フトコンタクトレンズでは体質によってレンズにカルシウムが沈着することが分かって います。そういった因子も考える必要があると思います。  現在、世界的には親水性の眼内レンズが少しずつ増えてきています。今後、日本にも 同類の親水性の眼内レンズが出てくると思いますので、その点をよく注意していただき たいと思います。  ちょっと話が飛ぶのですが、眼内レンズのISO、国際標準化機構で治験の方法、眼 内レンズの規格等に関するドラフト会議が先々週にアムステルダムでありました。私も 出席したのですが、FDAとヨーロッパの方は出ておられました。やはり是非厚生労働 省の方に治験やレンズの規格についてのドラフト作りのところで参加していただいて、 我が国にとってためになるドラフトに持ち込むようにお願いしたいと思います。  もちろん、最終的な承認は厚生労働省が参加して、国際的にドラフトを承認して初め て有効になるのだと思います。たまたまドラフト作りがFDAとヨーロッパのサイドで は、企業名を挙げると問題かもしれませんが、ファーマシア・アップジョンからエキス パートとして出ておられます。そうすると、眼内レンズの治験は1治験300例でやろう とか、60例でいいだろうということ。眼内レンズの残留EO濃度は、今我が国では25ppm ですが、それは厳しいのではないか。50ppmでもいいのではないか、という議論がどん どんなされているわけです。ドラフトとして固まってしまうと、多分国として承認する かしないかということになるのだと思いますので、是非厚生労働省の担当の方にそのよ うな会議に出席していただきたいと思います。  我が国の治験のシステムも、常にISOではどうだということがあります。医療用具 の分類もすべてISOの分類でどうだということが基準になっていると思います。その ISOの基準を作っているドラフトの会議がそのぐらいのわずかな人数で構成されてい るのを、初めて知りました。是非、これからよろしくお願いしたいと思います。ちょっ と脱線しましたが以上です。 ○桜井部会長  ISOの何番ですか。 ○澤委員  ワーキンググループの170幾つだったと思います。 ○桜井部会長  当然、日本からも委員の方が出られているのでしょうか。 ○澤委員  私が出ています。日本からもほかに出ておられますが、多分ほかのISOも同じよう なレベルでドラフトはなされているのではないかと思います。 ○桜井部会長  ISOあたりで日本が弱いのは、やはり日本にはドラフト・スタンダードがないので す。どうしても向こうの方が先行していますから、決まったと言うと反論するネタがな いものだから、「ああ、そうですか」ということになるわけです。 ○澤委員  決めるところへ入りたいと思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました。ほかはよろしいでしょうか。それでは、8の電波に進みま しょう。 ○事務局  資料2-8、「電波と植込み医用機器」について御紹介します。これは「医薬品・医療 用具等安全性情報」の190号の記事を掲載しています。  資料を見ていただくと分かるのですが、具体的には総務省で予算を取っていただいた 研究班があります。そちらの方と、厚生労働省からも委員派遣をして、植込み型心臓ペ ースメーカ、除細動器に対する電波の影響ということを見ています。今まで、特に平成 8年、12年のときには主に携帯電話、あと病院内の医療機器という環境を行ったわけで すが、今回は大きく分けて二つ、違うものとのペースメーカの合性という形の調査を行 っています。  一つはワイヤレスカードシステムというものです。言葉ではよく分からないのですが 、ITビルからの入退室を電子的にチェックするシステム、あるいはスイカカードのよ うなものもこの類のシステムの一類型です。あと盗難防止装置、これはよく小売店等に 二つのバーが立っているのを見受ける方も多いかと思います。そういったものが植込み 型心臓ペースメーカや除細動器にどのような影響を与えるかについて、現在有効なもの を中心に調査をした中間報告のものです。  記事の1ページ目に書いてありますが、先ほど言ったワイヤレスカードのようなもの とペースメーカ、除細動器との関係を調査したものです。次のページはペースメーカ、 除細動器と盗難防止装置との影響関係について調査したものです。結果については 「(3)調査結果の概要」にありますが、ワイヤレスカードシステムについては事実上ほ とんど影響がない。ワイヤレスカードシステムについては近接型、近傍型と2種類ある のですが、主にどのぐらいの距離で電波を交換するかという私的設定距離があります。 実効上、近傍型というのは1機種しかないのですが、それについては事実上干渉は発現 されなかった。一方で10cm以下である近接型については、ものによって8cmまで近づけ ると何らかの影響を及ぼすというものが観測されています。  除細動器については次ページの頭に書いてありますが、影響を受けた機械はなかった ということであります。実際には患者の方がべったり機械に抱きつくわけではありませ んし、埋め込まれている距離もあります。あと、リード線の長さや面積等にもセーフテ ィ・マージンが入っているのは事実上、この距離以上開いていれば特に問題はないとい う内容です。  盗難防止装置との関係ですが、組合せによってはかなり影響が出ています。実際、万 引き防止装置にもいろいろなモードがあり、電波方式、磁気方式、磁気自鳴方式、音響 磁気方式など、いろいろなシステムのモードがあるようです。それぞれに対する影響の 出方というのはまちまちです。  昨年度試験を全部できなかったものですから、中間報告のデータとしてはこの表で御 覧いただくような状況になっています。特に注意喚起した点ですが、最大干渉距離42.5 cm、植込み型除細動器でショックを出してしまうものがある。これは患者にとっては非 常に危険なものですが、実際にはゲートに対して垂直に、対流することなく過ぎ去った 場合には影響は観測されないということでした。特にゲートの間にずっと座り込む、あ るいは身体をよじって、対極板の間にはさみ込むような行為などしなければ、特に問題 にならない結果でした。  ただ、実際に影響を及ぼした実寸が42.5cmと、非常に長い距離でも影響が出ていまし たので、そこについて注意の徹底を関係医療機関等にもお願いしているという内容の記 事です。まだ中間報告ですので今年度の結果を踏まえ、来春ぐらいに最終報告について の何らかの御紹介ができるのではないかと考えています。 ○桜井部会長  ありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。 ○佐伯委員  飛行機に乗るときの搭乗口などがありますが、そこも同じに考えていいのですか。 ○事務局  システムとしては似たものでございます。 ○佐伯委員  そうすると、お店のところだけでなくそのようなところも気を付けてくださいという ことは、埋めていらっしゃる患者さんにも伝えておく必要がありますか。 ○事務局  それについては御指摘のとおりであります。実際には「患者手帳」のようなもので、 特にこういったものについては先生から注意喚起、指導をいただく。手帳をもらうので すが、そこにも既に注意喚起を盛り込んであります。そういったものについては、この 報告を受けて迅速にパンフレットで啓蒙したり、ポスターをはったり、あるいは患者さ ん個人に渡す手帳にも注意の文章を入れるなどして注意喚起をしています。 ○佐伯委員  飛行場のそれも書いてあるわけですか。 ○事務局  飛行場の特出しでは書いてあったか、細かい表現は失念しました、すみません。 ○桜井部会長  病院で携帯電話を使ってはいけないというのは、本当にいけないのでしょうか。患者 というのは、携帯電話を持っているといないでは非常に許容量が違うと思います。うち の長男の嫁が妊娠したとき、使ってはいけないので待合室までフーフー言いながら歩い ていったということがありました。本当に使ってはいけないのでしょうか。 ○事務局  それについても御説明いたします。今お話がありましたが、平成8年、12年にも携帯 電話と機器との影響ということでの検査をしたわけです。まずペースメーカについては 、22cm離していただければ事実上影響はないというスコアは、基本的な組み合わせ等は 出ています。  15cmの根拠は平成8年のときの検証です。15cmに出たもののルート2倍、ルート2倍 は電解強度が距離の二乗に反比例するということで、安全係数にルート2を掛けて数字 を設定しています。実際のスコアではもっと距離を近づけないと出ない機種が多いとい うことですが、一応ペースメーカについても配慮してくださいということでした。  一方、普通の医療機関に置かれている輸液ポンプ、あるいは診断機器等だと数メート ルでベースラインがゆがんでしまう。いきなり人が死んでしまうほどの重篤なものでは ないにしても、医療機器としてはベストな状況ではないという影響が見てとられたもの ですから、基本的にそういった医療機関内での不要な電波については、導入されるので あれば自己責任というか病院の中の機器等の合性を見てもらわないと、診療に何らかの 不具合を生じる可能性があるということから、「やめた方がいい」というガイドライン ができたというものです。 ○井部委員  私の経験ではそのガイドラインに従って、病院の中の安全なゾーンと安全でないゾー ン、注意ゾーンの3種類に分けて掲示を出しています。病室の中では、特に精密医療機 器を使っていないところは携帯電話可能というようにして、先ほどの御指摘のように不 都合をなくすようにしました。その点は入院した患者さんに指摘されたのです。「この ような通知が出ているのに、なぜあなたたちは無制限に禁止するのか」という指摘で、 調べたらそのような通知があることが分かりました。ですから、もう少し病院の中を合 理化できると思います。 ○澤委員  PHSは比較的安全という話になっているわけです。ただ、そのPHSを院内で使え るようにするために、私たちのところは工事中ですが、現在3,500万円ぐらい掛かりま す。ですから、先生がいつもおっしゃるように、やはり安全はお金で買うのかなと思っ ています。基線が揺れるというのは非常に危ない、患者の方のペースメーカだけの問題 ではないわけです。病院としては、安全を施すには大変お金が掛かります。 ○笠貫委員  先ほどの院内の機器に関する影響というのは、重大な場合には人工呼吸器の問題があ ります。重篤に応じてどういう影響を受けるかというのは一応出してあります。そうい う意味では、やはり携帯電話というものではなくてPHSが基本だと思いますし、そう いう意味での安全管理について各病院にもっと周知徹底するということは必要かなと思 っています。  それから、先ほどのペースメーカの件ですが、飛行場においては基本的にはペースメ ーカを埋め込んでおられる方はゲートをくぐらない、一応ペースメーカの手帳を見せれ ばそれで通るという形にはなっています。ゲートというのは各国、あるいは飛行場によ って違うものですからほとんど影響ないという結果なのですが、影響が出たというもの もある。これは患者さん個人への指導として、ある程度徹底しているのだろうと思いま す。そういう意味で、手帳にも書くかどうかということは再考する必要があるかと思い ます。  先ほどの植込み型除細動器も含めてですが、電波というのはいかに共存するかが非常 に難しい問題である。一方では、必ずペースメーカを埋め込んだ後に条件を変えなくて はいけない。あるいはテレメトリーということで、外から外への情報を得なくてはいけ ない。一方では監視装置もそうですが、こういったもので感度をできるだけ上げなくて はいけない。そのぎりぎりのところだということもあります。  一方では安全を守るということで、必要以上に不安をもたらしてはいけないというぎ りぎりの基準を作っていく。そのような、お互いにペースメーカを造る側、単子装置の ような機器を造る側とがどこでお互いに共存を図っていくかという非常に大きな問題が あるのだろうと思います。その意味では、私も総務省内に関係はしていますが、一つ一 つこのようなものを詰めていって、その都度情報を開示していくという点が必要と思っ ています。 ○桜井部会長  最後の点、お願いします。 ○事務局  資料2-9の「医用内視鏡の鉗子栓の自主点検について」に移りたいと思います。鉗子 栓とは何かというと、内視鏡の中には実際にバイオプシーをするために、レンズとは違 い道具を入れるラインが用意されています。そこにふたをする鉗子栓というものが通常 はゴム等、あるいは樹脂であるわけです。  簡単な構造で言うと、大きなゴムの栓を頭に描いていただき、真ん中に切れ目を入れ た形になります。ふだんはゴム等の弾性力で閉まっている。そこの中に道具を刺すと中 に入って、内視鏡下で何らかの作業ができる。その栓の構造です。  実際スリットが磨耗していたり破損することによって、内視鏡下で手術をすると出血 等が起きそれが逆流してくる。腹腔内圧等が上がれば当然ビュンと出てくる。普通鉗子 栓がしっかりしていればそこで止まるので、医療従事者が血を浴びることは通常ない。 もちろんそういうときは眼鏡等をして防護していただくわけですが、そういった例が実 際にイギリスの方でも報告されています。  我々の方で検査をしたところ、やはり中にはそういうものもあるということでした。 プロテクターを別に付けていただく等はしても、長年使っていただくものについて磨耗 、単回使用だけのものではなくて複数回使用のものもありましたので、そこについての 見直しを図るように指示、徹底したものでございます。これについては以上です。 ○桜井部会長  よろしいでしょうか、何か御質問はありますか。資料の説明は以上ですか。 ○事務局  最後に事務的な御連絡を一ついたします。先ほどちょっと御説明させていただきまし たが、薬事分科会等、まだ「薬事・食品衛生審議会」の規則の細かい改正等が行われて おりません。改正された暁にはいろいろな所掌等が変更されると思います。どうなるか 分かりませんが、今後の開催頻度が若干上がる可能性があります。また、事務局から追 って日程調整等をさせていただこうかと考えています。  今まで当該部会は年1〜2回ぐらいだったのですが、四半期に一度ぐらいの開催とい うように、開催頻度をちょっと上げさせていただくことになるかもしれないことを御連 絡申し上げたいと思います。今回は非常にたくさんの御出席をいただけたのですが、先 生方が忙しくていらっしゃるので、定足数を満たすのがなかなか危険なときもありま す。今後も御出席のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。 ○桜井部会長  どうもありがとうございました。以上で閉会します。                                    ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 安全対策課 課長補佐 渡邊(内線2748)