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 3.指標による回帰曲線の特徴についての考察

 2.でみたように、社会生活指標は、いくつかの異なる視点で作成された指標でありながら、その回帰曲線が描く形状は概ね同じ形を示した。
 常識的に考えれば、収入や消費支出が増加するに従って、生活水準の向上が図られることから指標は上昇すると考えられるが、プラトーになる部分が存在した。
 図表A、Bは、今回得られた回帰曲線を模式的に表示したものである。図表Aの1より右、2より左、図表Bの3より右及び4と5の間で水平に近い部分があり、これらの部分に特徴があると言えよう。
 ここで、調査対象世帯を、変局点の前後で、補正実収入については、1及び2で3グループに分類し、補正消費支出については、3、4及び5で4グループに分類した。
 具体的には、補正実収入については0-17万円、17-40万円、40万円以上の3グループ、補正消費支出については0-16万円、16-21万円、21-30万円、30万円以上の4グループに分割した。

図表 ⅳ-8.回帰曲線のイメージ
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 (1)収入における変局点についての分析

 図表 ⅳ-9は補正実収入グループ別の世帯類型の構成比をあらわしたものである。0-17万円のグループでは高齢者世帯が43.5%、母子世帯が14.8%と合計に比べて構成割合が高くなっている一方、40万円以上のグループでは高齢者世帯、母子世帯の割合が少なくなっている。高齢者世帯、母子世帯は平均に比べて収入が低い世帯が多くなっていることがわかる。

図表 ⅳ-9.世帯類型と補正実収入グループとのクロス集計
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 図表 ⅳ-10~図表 ⅳ-12は収入グループに分けたあと、さらに世帯類型に分類し、赤字世帯、黒字世帯の構成比を示したものである。17万円未満では高齢者世帯、その他世帯で赤字の割合が高い。

図表 ⅳ-10.世帯類型別の赤字-黒字世帯構成比(17万円未満)
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図表 ⅳ-11.世帯類型別の赤字-黒字世帯構成比(17万円~40万円未満)
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図表 ⅳ-12.世帯類型別の赤字-黒字世帯構成比(40万円以上)
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 (2)消費支出における変局点についての分析

 次図は補正消費支出グループでグループ分けされた調査客体を世帯類型の構成比をあらわしたものである。高齢者世帯はどの区分にも20%以上の占有率がある。補正実収入でグループ分けした図表 ⅳ-9では収入が高くなるにつれて高齢者の割合が低くなっていることと比較してみると、その差が明らかである。高齢者世帯の消費支出は貯蓄の取り崩し等で対応しているものと考えられる。0-16万円のグループでは母子世帯の占める比率が大きくなり、消費支出の金額が上がるに従い、母子世帯の占有率が縮小している。

図表 ⅳ-13.補正消費支出グループ別の世帯類型の構成比
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 図表 ⅳ-14は、4グループごとに補正後の10大消費支出の構成比を比較したものである。16-21万円のグループと21-30万円のグループでは、構成割合に大きな違いはないが、0-16万円のグループでは食料費や光熱・水道費の割合が高い一方でその他の消費の割合が低くなっている。また、30万円以上のグループでは、食料費や住居費等の割合が減少する一方で、教育費やその他消費支出の割合が多くなっており、選択的な支出の割合が増加していることがみてとれる。積み上げグラフでみても、30万以上では教育費の支出(2.5万)が他のグループと比較して多いことがわかる。

図表 ⅳ-14.補正消費支出グループ別10大消費支出項目構成比
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図表 ⅳ-15.補正消費支出グループ別10大消費支出項目積み上げ額
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図表 ⅳ-16補正消費支出グループ別10大消費支出額
  0-16万
(n=169)
16万-21万
(n=177)
21万-30万
(n=238)
30万以上
(n=171)
10大消費支出計 122,913 186,308 251,993 389,558
食料 39,772 48,590 60,979 79,330
住居 13,875 21,903 35,731 44,019
光熱・水道 14,629 17,248 18,055 19,040
家具及び家庭用品 3,969 6,041 7,695 15,227
被服及び履物 5,214 7,479 10,206 16,017
保健医療 4,578 8,030 9,197 16,638
交通・通信 11,159 18,542 26,521 46,677
教育 2,738 6,040 9,548 25,227
教養娯楽 8,900 16,585 23,829 40,920
その他消費支出 18,078 35,849 50,232 86,463


社会生活指標のまとめ

 この章では、いくつかの視点から社会生活指標を作成し、実収入及び消費支出との関係をみた。
 その結果得られた主な事実は次のとおりである。

 (1) いくつかの視点から作成した社会生活指標と実収入及び消費支出との関係を回帰曲線で表現すると、いずれも同じような形状の特徴があった。実収入のグラフでは、プラトーから下への変局点、そして、再びプラトーになる。一方、消費支出については、プラトーから下への変局点、そして、再びプラトー、さらに、プラトーから下へと3つの変局点があることが窺えた。

 (2) 変局点は、いずれの指標においても、補正実収入では40万円前後、16~18万円、の2点で、補正消費支出では30万円前後、21万円前後、16万円前後の3点で確認された。

 (3) 補正実収入の下位の変局点(17万円)以下の収入しかないグループの約7割が赤字となっており、特に高齢者世帯は、76.6%が赤字となっている。高齢者世帯は、補正実収入が17万円未満のグループの43.5%を占めるのに対して、補正消費支出が16万円未満のグループの27.8%にとどまっていることから、貯蓄の取り崩し等により生活水準を維持していることが窺える。


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