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IV 社会生活指標の作成・分析

 1.社会生活指標の考え方

 1-1.変局点と社会生活指標作成の意義

 本章では、「変局点」と呼ばれる最低限度の生活を確保するために必要な収入や消費支出の水準を探ることとする。
 一般に収入や消費支出が減少するに従って、生活水準は次第に低下すると考えられる。しかし、タウンゼント等の研究によれば、その低下の傾向には一定の傾向が見られることが明らかにされている。
 図表 ⅳ-1のように収入や消費支出の減少がある水準を下回るとそれまで以上に生活水準が低下するというものである。
 このような変化を示す点が「変局点」と呼ばれ、その点が示す収入や消費支出の水準が最低限度の生活を確保するための水準を検討する上で重要な点となると考えることができる。
 なお、家計の収入、支出は世帯人員による影響が大きく、その影響を除外して比較分析を行う必要がある。このため、本章ではOECD方式 にもとづく等価スケールを使い、実収入と消費支出を3人世帯に補正して比較する。これ以降は、等価スケールにより補正された実収入を補正実収入、等価スケールにより補正された消費支出を補正消費支出という用語を用いる。

図表 ⅳ-1. 変局点の考え方
図

 変局点を抽出するために、「社会生活に関する調査」の質問項目を活用して、その生活水準を示す指標(「社会生活指標」という。)を作成した。
 指標の作成にあたっては、いくつかの視点により12種類のモデルを試行したが、ここでは例示として、次の3つの指標を紹介する。


 1-2.モデルの概要

  (1)一般流布モデル

 ほとんどの調査対象世帯が所有している、もしくは生活実態として行っているものを項目として選択している。
 具体的な質問項目と得点化基準は以下のとおり。
図表 ⅳ-2.一般流布モデル(ダミー変数)の項目と得点化基準
選択された
質問番号
質問内容 1点の回答基準 0点の回答基準
Q1 外食を楽しむ頻度が高い 1.2 3.4
Q3 洋服の購入頻度が高い 1.2.3 4
Q5 家族分の十分なふとんがある 1. 2.
Q6
((1)~(5))
「トイレ・洗面所が専用であるなど住居機能がよい点が多い」について関連5質問のうちの該当質問数 3つ以上 2つ以下
Q8 入浴の頻度が高い 1. 2.3.4
Q10
((1)(8)(10)(13))
「活動や行動の種類が多く、活発である」についての4質問のうちの該当質問数 3つ以上 2つ以下
Q23 新聞の購入頻度 1.2.3 4
Q24 雑誌の購入頻度 1.2 3
F5
((1)(2)(6)(9)(11)(14))
「耐久消費財の保有状況」についての6質問のうちの該当質問数 5つ以上 4つ以下
上記質問項目のうち1点の回答の数の合計を指標の値とする。(図表ⅲ-3,ⅲ-4について同じ)

  (2)生活格差モデル

 調査対象世帯によって、所有の有無、生活実態としての行為に格差がある質問項目を選択している。
 具体的な質問項目と得点化基準は以下のとおり。

図表 ⅳ-3.生活格差モデル(ダミー変数)の項目と得点化基準
選択された
質問番号
質問内容 1点の回答基準 0点の回答基準
Q2
((1)~(4))
「食事」について関連4質問のうちの該当質問数 4つ 3つ以下
Q6
((6)~(10))
「よい日当たり・雨漏りなし、など住居環境がよい点が多い」について関連5質問のうちの該当質問数 4つ以上 3つ以下
Q7 電話の頻度が高い 1.2 3.4
Q9 泊りがけの旅行をする頻度が高い 1.2 3.4
Q10
((2)(3)(4)(5)(6)(9)(11)(12)(16)(17))
「活動や行動の種類が多く、活発である」について10質問のうちの該当質問数 8つ以上 7つ以下
Q15
((1)~(4))
「親族・近所・職場などで親しい人がいる」との4質問のうちの該当質問数 4 1.2.3
Q16 相談に乗ってくれる人がいる 1 2
Q25 インターネットをよく利用している 1.2.3 4
F5
((7)(8)(12)(15)(17))
「耐久消費財の保有状況」についての5質問のうちの該当質問数 4つ以上 3つ以下

  (3)収入モデル

 収入との相関が比較的強い質問項目を選択している。
 具体的な質問項目と得点化基準は以下のとおり。

図表 ⅳ-4.収入モデルの項目と得点化基準
選択された
質問番号
質問内容 1点の回答基準 0点の回答基準
Q3 洋服の購入頻度が高い 1.2.3 4
Q7 電話の頻度が高い 1.2.3 4
Q8 入浴の頻度が高い 1 2.3.4
Q9 泊りがけの旅行をする頻度が高い 1.2.3 4
Q13 健康状態が良い 1.2.3 4.5
Q23 新聞をよく購入している 1.2.3 4
Q24 雑誌をよく購入している 1.2 3
F5
(2)(12)(14)(15)(17)
「耐久消費財の保有状況」についての6質問のうちの該当質問数 5つ以上 4つ以下
Q10
(1)(4)(5)(10)(11)(14)(17)
「活動や行動の種類が多く、活発である」についての7質問のうちの該当質問数 6つ以上 5つ以下



9 OECD方式とは、世帯人員の平方根を用いて補正が行われている。ここでは、3人世帯を基準とするので、家計の収入、支出を以下のような係数で除して等価スケールとしている。
  単身世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯 5人世帯 6人以上
3人世帯を1としたOECD方式に基づく補正 0.577 0.816 1.00 1.154 1.291 1.414


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