戻る

第1回検討会 03/09/25
資料1

新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会

1.検討会の目的
 臨床現場において患者の高齢化・重症化、平均在院日数の短縮化等により、看護業務の密度が高まっている。また、患者の安全性の確保に対する国民の意識の高まりの中で、看護職の基礎教育、卒後教育の強化が必要となっている。
 看護基礎教育では、医療機関における医療安全管理の強化や患者、家族の意識の変化等により、従来患者を対象として実施されてきた看護技術の訓練の範囲や機会が限定される傾向にある。このため、平成14年度に「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会」において看護基礎教育における看護技術教育の内容および臨地実習において看護学生に許容される基本的看護技術の水準を明確化した。
 一方、新人看護職員に関する調査(日本看護協会,2003)では、多くの医療機関で新人看護職員教育が実施されているが、就職3ヶ月後の時点で看護基本技術103項目中「現在一人でできる」との回答が7割以上だった項目は35項目(33.9%)のみであり、新人看護職員の実践能力は臨床現場で求められるレベルに到達していないことが明らかになっている。更に、医療機関におけるヒヤリ・ハット事例において新人看護職員の占める割合が高くなっていること等から、新人看護職員の提供する看護ケアの質の向上にむけた取り組みが喫緊の課題となっている。
 こうした現状から本検討会においては、新人看護職員教育を効果的・系統的に行うために、新人看護職員が備えるべき看護技術等を示した「新人看護職員到達目標」、新人看護職員の指導に必要な要件・指導方法等を示した「新人看護職員研修指導指針」を作成する。

2.検討内容
新人看護職員の卒後教育の在り方を検討し、「新人看護職員到達目標」、「新人看護職員研修指導指針」を提示する。
なお、上記目標、指針の作成にあたって看護教育、看護実践の領域の有識者で構成されるワーキンググループを設置する。

3.スケジュール
平成15年9月から検討会4回程度、ワーキンググループ4回程度開催。
年度内に結論。

4.位置付け
(1)本検討会は厚生労働省医政局長が有識者の参集を求めて開催する。
(2)本検討会の事務局は厚生労働省医政局看護課におく。



看護師等の人材確保の促進に関する法律
(平成四年六月二十六日)
(法律第八十六号)

 (国及び地方公共団体の責務)
第四条国は、看護師等の養成、資質の向上及び就業の促進並びに病院等に勤務する看護師等の処遇の改善その他看護師等の確保を促進するために必要な財政上及び金融上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

 (病院等の開設者等の責務)
第五条病院等の開設者等は、病院等に勤務する看護師等が適切な処遇の下で、その専門知識と技能を向上させ、かつ、これを看護業務に十分に発揮できるよう、病院等に勤務する看護師等の処遇の改善その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

 (看護師等の責務)
第六条看護師等は、保健医療の重要な担い手としての自覚の下に、高度化し、かつ、多様化する国民の保健医療サービスへの需要に対応し、自ら進んでその能力の開発及び向上を図るとともに、自信と誇りを持ってこれを看護業務に発揮するよう努めなければならない。


看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針
(平成四年十二月二十五日)
(/文部省/厚生省/労働省/告示第一号)

第四 看護婦等の資質の向上に関する事項
  一 生涯にわたる研修の必要性
  医学・医療の高度化・専門化が進む中で、看護業務に直接必要な専門的知識や技術とともに、コンピューターの導入等による新しい体制への対応等、業務を長期間にわたって継続していくためには、多方面にわたる基本的な知識について学習を行う必要がある。また、自らの専門性をより高めていくことも重要である。
 患者の人間性、痛みや苦しみへの理解、生への希求や闘病心の支援等患者の心理やライフスタイルそのものの理解など幅広い豊かな識見も求められている。
 さらにエイズ、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染などの新しい課題や複雑な社会構造の変化に対応するメンタルヘルスケアの問題等に積極的に対応していくためにも専門的な視点からの支援が可能となるように研修を積み重ねることが必要である。
 また、人口の高齢化の急激な進展に伴い、老人を対象とした訪問看護や保健、福祉施設等看護婦等の職域は急速に広がりつつあり、新たな業務との調整機能について十分な知識が要求されるほか、看護における専門領域の確立のためには、研究者による研究活動はもとより、臨床の現場における知見をそこに働く看護婦等自らが集積していくことも重要である。このような観点から、関係者が協力して生涯にわたり自己の能力の開発と発展を図れるような支援体制を確立する必要がある。
  二 指導的管理的立場にある者の研修の必要性
  病院等において看護業務を魅力ある働きがいのある業務としていくためには、指導的管理的立場にある看護教員や看護管理者は、看護学生の教育や看護婦等の指導等を通してその実現を図ることができるようにする必要があり、そのためには看護教員や看護管理者の人間性・社会性を高め、かつ、看護教育の方法、病棟の管理運営の改善等について、知識・技術の向上に努めなければならない。
 特に、こうした良きリーダーシップを発揮できる看護管理者を養成していくため、病院等とともに看護婦等自ら、あるいは職能団体の積極的な取組も望まれる。
  三 生涯にわたる研修の体系化による資質の向上
  看護婦等の生涯にわたる研修は看護婦等の就業場所を含め、個々の置かれている状況が多様であることから実施機関、実施方法等について種々の工夫が必要である。
 看護婦等が専門職業人として成長するためには、看護婦等がたゆまぬ努力を重ねる必要があることは当然であるが、その専門性が適切に評価されつつ、生涯にわたり継続的に自己研鑽を積むことができるような研修システムの構築、有給研修制度の積極的導入等環境の整備に努める必要がある。
 各病院等においては院外教育に頼るのみではなく、病院等自らが教育も充実させる等努力する必要がある。また、自己研鑽への動機づけを図り、意欲の向上を図るためには、多様な機関で体系化された研修が計画される必要がある。
 また、看護系大学が現職看護婦等のリフレッシュのための教育・研修において積極的な役割を果たすことが期待される。



医療提供体制の改革のビジョン(抜粋)

平成15年8月
厚生労働省

(2)質が高く効率的な医療の提供
IV 医療を担う人材の確保と資質の向上
(3)時代の要請に応じた看護の在り方の見直しと資質の向上
(1)高齢化の進展等による需要の増大等に対応し、看護職員確保対策を総合的に推進する。
(2)看護師等の卒前の技術教育が適切に推進できるよう、臨地実習の実施のための条件整備を行い、その定着を図る。また、医療の高度化・専門化に対応するため、特定の領域について、より高度な知識・技術を有する看護師(専門看護師等)の養成強化や普及を推進する。さらに、看護基礎教育の内容を充実するとともに、大学教育の拡大など、看護基礎教育の期間の延長や卒後の臨床研修の在り方について制度化を含めた検討を行う。
(3)准看護師が看護師になるための途を拡大するため、平成16年度から、看護師養成所2年課程通信制を創設するとともに、その普及を図る。



看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討の経過


看護職員生涯教育
「看護制度検討会」報告書(昭和62年)
病院内で行われている新任職員の研修等、各コースの体系化の必要性。

看護職員生涯教育
「看護職員生涯教育検討会報告書」(平成4年)
看護職員生涯教育の体系、内容の明確化
 ・卒後おおむね3年間の看護実務研修の重要性
 ・(看護実務研修において)将来の実務の基本的姿勢、基本的看護技術の確立、看護の継続性に関する実践力を修得することの重要性。

看護基礎教育
「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会」報告書(平成15年)
看護基礎教育における基本的看護技術の明確化
臨地実習において看護学生に許容される基本的看護技術の水準の明確化

新人看護職員教育
「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」(平成15年度)
「新人看護職員到達目標」、「新人看護職員研修指導指針」の検討



 看護職員の資質の向上対策について
看護基礎教育関連
○看護教員養成研修(昭和45年〜)
 目的:看護教員の確保と資質の向上
対象:実務経験5年以上であって講習会終了後看護教育に従事する者

○実習指導者講習会 (昭和49年〜)
 目的:実習指導者に必要な知識・技術の修得
対象:実習指導者または実習指導者となる予定にある者

○専任教員再教育事業(平成11年〜)
 目的:看護教員の資質の向上
対象:専任教員として従事している者
臨床看護実践関連
○中堅看護職員実務研修 短期研修(平成12年〜)
 目的:看護職員の専門性の向上及び医療事故の防止等今日的課題への対応を図るため研修を実施し、看護職員の資質の向上を図る。
○中堅看護職員実務研修 中期研修(平成13年〜)
 目的:先端的科学研究の知見を臨床看護に応用し、専門的な看護ケアを提供するための研修を行い、看護職員の資質の向上を図る。
対象:実務経験5年以上の中堅看護職員

○看護職員専門分野研修(平成15年〜)
 目的:特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いた、水準の高い看護を実践できる専門性の高い看護師の育成を促進する。
対象:指導的専門的立場の看護職員


トップへ
戻る