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社会保障審議会 児童部会
社会的養護のあり方に関する専門委員会
第5回議事録




平成15年9月19日(金)


社会保障審議会児童部会 社会的養護のあり方に関する専門委員会
第5回議事録

日時:平成15年9月19日(金)14:00〜17:02
場所:厚生労働省 共用第7会議室
議事: 1.開会
2.財団法人全国里親会より意見聴取
3.意見交換
4.その他
5.閉会



○事務局
 ただいまから、第5回社会保障審議会児童部会社会的養護のあり方に関する専門委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。本日の委員の出席状況を御報告いたします。本日は、才村委員、野田委員が御欠席という連絡をいただいております。
 では、議事に入りたいと思います。松原委員長、よろしくお願いいたします。

○松原委員長
 こんにちは。残暑が続く中、かつ、お忙しい中をありがとうございます。議論もかなり終盤に入ってきているかと思いますが、議事に入ります前に、先月、厚生労働省の方で人事異動がございましたので、新しく就任された方々の御紹介を事務局の方にお願いいたします。

○中村総務課長
 8月末の人事異動で代わりました職員を御紹介いたします。
 雇用均等・児童家庭局長の伍藤局長でございます。

○伍藤雇用均等・児童家庭局長
 伍藤でございます。よろしくお願いいたします。

○中村課長
 雇用均等・児童家庭担当の審議官、北井でございます。

○北井雇用均等・児童家庭局審議官
 北井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中村課長
 家庭福祉課長の山田でございます。

○山田家庭福祉課長
 山田でございます。よろしくお願い申し上げます。

○松原委員長
 ありがとうございました。
 それでは、本日用意をしていただきました資料の確認を、やはり事務局からお願いいたします。

○事務局
 資料の確認をさせていただきます。
 まず、第5回の議事次第でございます。続きまして、資料1「社会的養護のあり方に関する専門委員会における主な検討課題と関連する指摘事項および方向性(案)について」でございます。次に、資料2「社会的養護のあり方に関する専門委員会 検討課題及び各委員発言状況でございます。次に、資料3「現在の要保護児童に対する主なケア機関」でございます。資料4「これからの社会養護システム(案)」。資料5−1「少年非行対策のための提案(ポイント)〜鴻池試案としての位置付け〜」。資料5−2「少年非行対策のための提案のポイント」。資料5−3「少年非行対策のための提案」。資料6「児童部会における主な論点事項と関連する指摘事項および方向性(案)について」でございます。お手元に以上の資料がない場合はお知らせください。事務局よりお渡しいたします。

○松原委員長
 資料はそれぞれお手元におありでしょうか。
 それでは、早速議論を始めたいと思いますが、その前に、今日は、前回御案内いたしましたように、財団法人全国里親会に御出席をいただいておりますので、まず里親会 1 から御意見を頂戴いたしたいと思います。

○事務局
 里親会から資料の提出がございます。「社会的養護のあり方に関する専門委員会への意見書」というものを提出いただいております。

○松原委員長
 それでは、里親会の方、よろしくお願いいたします。

○(財)全国里親会(若狭)
 皆様こんにちは。このたびは里親の意見を聞いていただく機会を設けていただきまして、ありがとうございます。私は、全国里親会の事務局担当として参りました若狭と申します。
 全国里親会からは、理事で福井県の竹内、東京都会長の高瀬、東京都養育家庭の坂本洋子さんに来ていただいています。
 時間もございませんので、先ほど御紹介いただきました意見書にまとめてまいりましたので、これを読み上げる形で里親の意見として述べたいと思います。

社会的養護のあり方に関する専門委員会への意見書
 1. 社会的養護のあり方について
 子どもが養育されるのにふさわしい家庭で育つことがまず最優先される社会的養護のシステムであることを望みます。
 子どもの権利条約「子どもの家庭で暮らす権利」を尊重し、家庭養護の優先原理を社会的養護の基本理念とされるよう望みます。ただし、子どもの最善の利益が最優先され、子どもが心身共に健康に育つことが出来る場所において養育される社会的養護のシステムであるよう望みます。

 2. 施設養護のあり方について
 児童福祉施設は、子どもが健康的な家庭で暮らすための支援をする場所であることを望みます。
 子どもが長期にわたり育つ湯所は、家族の形態を持つ場所(実家庭・里親・施設なら里親型グループホーム)であり、家族の形態を持たない児童福祉施設への入所は、入所期間を短期とする形を望みます。
 児童養護施設の職員は高い専門性を持ち、子どもまたは子どもが育つ家庭(実親・里親)に必要な援助を選択し、行えるものであることを望みます。

 3. 家庭的養護(里親・グループケア等)のあり方について
 里親が最大限有効に活用されることを望みます。里親はそのニーズに応える努力を惜しみません。
(1)愛着形成の大切な乳幼児期の養育は、まず里親を活用されること。
(2)子どものニーズに応えるため、様々な形の専門里親を。
 例 乳幼児専門・虐待専門・障害児専門・自立支援専門・家庭復帰専門・病気治療専門・・・
(3)里親家庭を「育てる」システムを。研修の充実・支援の強化。
(4)里親型グループホーム・里親ファミリーホームの充実と拡充を。
(5)里親・児童相談所・施設・地域、パートナーシップをもって子どもを守り育てるシステムに。

 4 . 家庭関係調整及び地域支援について
 地域の支援者として、里親の地域での地位向上を望みます。
 地域の中で暮らす里親は、地域と共に社会的養護を必要とする子どもと家庭への支援を行いやすい立場にあります。地域でのサポートシステムに里親が有効に活用されることを望みます。(但し、里親家庭には様々な家庭があり、力量にも差があることを考慮しなければなりません。)

 5. 年長の子どもや青年に対する自立支援について
 子どもには、「自立するまでの支援」が必要です。自立するまでの支援が受けられることを望みます。
 里親家庭における子どもの自立においても様々な問題を抱えています。子どもが本当の意味での自立をするまで、大きな負担を負っている里親家庭は多くあり、また、自立への援助を必要とする子どもを積極的に受け入れたいという里親家庭もあります。里親家庭における子どもの自立への支援の充実を望みます。

 6. 社会的養護の質の向上
 社会的養護の質を向上させるためにも、里親制度のさらなる充実を望みます。
 これについては、今まで委員会の中で、3の「家庭的養護のあり方について」のところで検討をいただいていたのですが、あえてここに挙げさせてもらいました。
(1)里親制度の普及・啓発の促進
日本各地隅々まで里親制度が浸透されること
里親希望者が里親となることがスムーズに行われること
(2)里親制度の拡充・整理
児童福祉法等への里親に関する条文の制定。里親の権利や義務の明確化。子どもの親権者についての整理
諸外国における里親制度との比較検討
里親が最大限活用されるシステムの構築
里親のあり方についての検討

 7. その他
 ここも「社会的養護の質の向上」の「子どもの権利擁護」というところで話し合われていましたが、あえて別に大きく取り上げていただきたい問題です。
 ☆子どもの意見表明が最も大切にされるシステムであることを望みます。
(1)子どものニーズに合わせた多くの選択肢があること。
(2)「意見表明権」の明文化。権利擁護教育の義務化。
(3)子どもが自分の人生について考え、自分で選び、自立していくことの出来る教育方法・養育方法の構築

 このようなものを里親は望んでいます。
 続きまして、それぞれの立場から意見を述べさせていただきます。

○(財)全国里親会(竹内)
 私は福井でございますので、御承知のように非常にちっぽけなところでございます。それだけに、ある面においては、里親会のあり方としてきめ細かなところに心が向くわけです。と申しますのも、福井は、いわゆる委託児が少のうございます。私も最初に預かってからお返しして次までの期間が非常に長くございました。そこで考えたことが、養護施設 2 の子どもの自立支援を考えまして、近くにある養護施設に出向きました。たまたまその施設の主任さんとは懇意にしておりましたので、それが一つのきっかけとなり、そこの卒園生のサポートと申しますか、その間、何人かの子どもたちを預からせていただいておりますけれども、そういった卒園生の自立支援を担うところが福井には全くありません。全国でも三十数か所と聞いております。これからの里親会は、そういうところにももっともっと力を入れるべきである。また、そういうところに、社会のニーズに応えるこれからの里親のあり方があるかと思います。
 と申しますのも、我々は、いろいろな面でそういう情報、人間関係をある程度持っております。そういう点で、例えば卒園生の就職のあっせん、あるいは、卒園してもすぐに生活できないという子どもたち、社会に対応できない子どもたち、そういった子どもたちに対する支援となりますと、里親会には大きなウエートがあるのではないか。そういう点で、おかげさまで、私は武生という小さなまちですが、そこにある唯一の養護施設の園長から時折電話がかかりまして、卒園して、あるところに就職していたのだけれども、どうもうまくいかない、やめたいと。やめると生活がたちまち成り立たないから、竹内さん、どこかないだろうかというような電話をいただきました。そうなるとこちらも、そういうところには積極的にそういう卒園生のフォローを買って出るということで、いい関係を持たせてもらっています。
 これも、単に家庭に恵まれない子どもの養育だけではなくて、そういう養護施設の卒園生に対する保護の継続できるサポートを今後も広げるべきだと思います。それがどういうわけか、私ども武生市の役所が取り上げてくれまして、竹内さんだけに任せておくのでは申し訳ない。これを武生市の市民の盛り上がりに持っていきたいというところまで声が出ております。
 そのようなことを考えますと、里親活動のこれからの活動のあり方としてここで大いに取り上げていくべきであるということを、私見として申し上げたいと思います。

○(財)全国里親会(高瀬)
 東京都養育家庭連絡会の会長4年目の高瀬礼子と申します。今までの2、3、4回目のあり方委員会の傍聴をさせていただきまして、勉強の場といいますか、こういう議論がなされていることをいち早く知ることができまして、大変ありがたく思っております。
 逆に、平成9年に児童福祉法が見直されましたときに私は大変残念な思いを感じました。といいますのは、私たち里親をサポートしてくださる児童相談所とか、その当時東京都でありました養育家庭センターというところが、私たちが行って言えなくても、ちゃんとそういう大事な法律の見直しの中に里親の意見を反映してくださるとばかり思っておりましたら、そのときの見直しでも里親の位置付けは明確にならないまま来たことを後から知りました。今後このような見直しがあるかどうかわからないけれども、そのときには、やはり私たちの声を、未熟ですけれども、伝えさせていただいて、きちんとした体系の中に里親を組み入れていただきたいという思いを持ちました。
 今回このような機会に恵まれましたので、私たち里親も今までのように家庭の中だけで、自分が出会った子どもだけを抱え込んで育てるという里親ではなく、地域に私たちも開き、地域からも迎え入れられるような里親活動をしなければ、これからの問題を抱えた子どもたちを受け入れてはいけないという思いになり、未熟ながらも、他県の会長とは違うパターンですけれども、なりたいと言ってならせていただいた会長です。
 会員の方たちにこのような動きを速やかに伝えて、私たちが改めなければいけない、受け入れていかなければいけないことを伝え合っていく、そういうことも里親会の活動の中に生かせていけるなということで、今日は、この場に来たい、発言したいという里親さんがたくさんいたのですけれども、4人が出席させていただきました。
 この会について言いたいことが2点あります。よく今まで、里親月間などのポスターなどとか、こういう議論をされるときに、「家庭に恵まれない」、「親に育てられない」ということで、ない、ない、ないという形で子どもたちのことを表現されていると思いますけれども、これからは、この子どもたちを、マイナスイメージではなく、「社会的養護を必要とする子ども」というような前向きな形で考えて議論していただける視点をまず要求したいと思いました。
 そして、幼児さんに対する配慮もいろいろなされているのですけれども、多くはありませんが、里親家庭にも、先ほどお話がありましたように、年長の子、措置年齢を超えた子どもたちも、どうしていいかということで問題を抱えている親子がいます。特に私自身の経験では、私は6人くらいの子どもを、兄弟ではないけれども、兄弟みたいに10年くらいファミリーホームで過ごしてきました。おかげさまでその子どもたちは、親子ではないのですけれども、みんな二十歳以上になった今でも、実家だ、お母さん、という形でかかわってきて、必要なときに振り向いてくれています。
 力のない親子関係でしたけれども、10年、20年と積み重ねているうちに、ただ家庭があるだけで子どもたちは育っていくんだな、特別に何もなくてもきたなと思う反面、去年1年間に、14、15、16、17、18、19という、難しい施設や養育家庭を経験した子どもたちに出会う機会がありました。その子たちは本当に家庭を知らないということを言います。私も、何気なく、ごはんを食べる、テレビを見る、その風景をテレビでしか知らなかったと言う子どもたちに、もしかしたら、私たちはもう何もできないと思っていたけれども、家庭を提供することならばできるということを思いつきまして、今もそういう子どもたちの受け入れをしたいと思っています。
 どこかの保護観察所とかそういうところで、家庭があれば少年院に行かなくても済むという子どもさんたちには、1度でもいいからお会いして家庭を提供していければと思っていますが、個人でできる範囲には限界がありますので、私たちが今までお世話になっていた養護施設とか児童相談所と対等な関係で子どものことを救っていけるような関係が、これから私たちも配慮していけばできるのではないかと思っておりまして、今日はこのような場所で意見を言わせていただきました。
 まだ何人かいますのでこのくらいにしておきますが、特に先ほど事務局から読み上げていただいた項目の中に自立援助ホームとかいう施設はありますけれども、里親家庭でもそこのところが担えるということ、参加させていただきたいということを2点お願いして終わらせていただきます。

○(財)全国里親会(坂本)
 私は東京都でファミリーホームをさせていただいております坂本と申します。本日はお時間をいただきましてありがとうございます。
 私は18年前に里親になりまして、今6人の子どもがおります。その6人の中に、東京都では「愛の手帳」と申しますけれども、知的な遅れを持った子どもが3人、ADHDを持った子どもが2人、被虐待児が1人おります。この6人を育てております。年齢的には、1人が高校生で、あとは小学生が4学年にわたって5人おります。それはそれはにぎやかですけれども、私は非常に手応えがあり、とても楽しい毎日を過ごしております。
 そういうことや、今まで私は10人の子どもと出会っておりますけれども、その10人の子どもの中には、途中、17歳で事故死した子どもとか、いろいろな子どもがおります。そのことを、うちに東京都知事がいらっしゃいましたときに、こういうことを世の中の人が知らないのは非常にもったいないことだと。こんないい制度があるのにということで、あなた本を書きなさいと言われて、今年の1月に『ぶどうの木』という本を出させていただきました。これは11月にドラマになりますので、そういう意味では、ぜひ皆さんにPRしていただいて、こういう制度がある、こういう子どもたちがいるんだということ、そして、家庭を求めている子どもたちがいるということをぜひ知っていただければと思います。
 私どもが地域で生きていく中で、まずぶちあたる壁が、差別、偏見、区別ということです。これは、普通に御家庭で育っていらした方はなかなかおわかりにならないと思いますけれども、普通に育つことが難しい。生きているだけで差別される、区別される。何かをしただけでそれが色眼鏡で見られる。このような子どもたちを育てているのが里親です。この里親たちに、今、高瀬会長がおっしゃいましたけれども、私たちもいろいろな思いを持っておりますし、また、いろいろな能力がある、特技がある里親もたくさんございます。そういう中で私たちは、ぜひ私たちを社会的資源としてこれからも使っていただきたい。そして、その際には、私たちが里親として困っているときにサポートしていただけるようなシステムをきちんとつくっていただきたいと思います。
 その中で私がお願いしたいことは、私の本を読んでいただければわかりますけれども、「愛着障害」という言葉は一切出しておりませんが、その中に書かれていること、子どもの様子を見ていただければ、それはほとんど愛着障害であることがおわかりいただけると思います。そのように、子どもたちは非常に苦しみます。もし、この子どもたちが皆さんと同じような家庭で当たり前に育っていれば、このような苦しみを子どもたちは持つことはなかった。これは明らかな事実です。では、そのとき私たちはどうすればいいのか。答えはただ1つです。この子たちに小さいときから家庭を、皆さんと同じように、私たちと同じように、与えてあげる。これだけのことだと思います。
 うちに来た子どもで、小学校1年生のときに引き取った男の子がおります。この子は今では3年生になりましたけれども、その子が1年たったときにこう申しました。僕は都市部の施設でとても幸せだった。だけど、僕が欲しかったのはこういう家庭なんだよ。僕はこの家庭から家出をすることは絶対ないだろう。僕はお引っ越しはみんなと一緒にするよ。でも、僕は家出はしたくない。そういうふうに言いました。この小さな子どもの一言は、私たちが忘れていた家庭の温かさ、必要さ、そういうものではないかと思います。この子たちが苦しまないように、少しでも早い時期に、赤ちゃんのころから私たち里親に出していただきたいと思います。私たちは、過去に様々な職業を持っていた者もおりますので、そういう意味では、このペーパーにもありますけれども、私たちを利用していただいて、私たちがもっと忙しくなるくらい、ぜひ仕事を与えていただきたいと思います。
 ありがとうございました。

○(財)全国里親会(若狭)
 私たちからは以上です。あとは先生方からいろいろ質問とかしていただけると幸いです。

○松原委員長
 ありがとうございました。実際に子どもたちを日々の生活の中で見ていらっしゃる方たちの御意見、それから、全国里親会としてまとめられたものを含めて御報告をいただきました。最後にコメントがございましたように、皆さんからの質問あるいは御意見等を伺いたいと思います。どなたでも結構ですので、いかがでしょうか。

○安達委員
 一、二点お伺いしたいと思います。私の認識が十分ではないからかもわかりませんが、私は島根県ですので、子育ては山間地域が望ましいということを養老先生がおっしゃっていて心強く思っているところですけれども、里親会の、都市型と地方型との温度差があるかどうかということが1つ。
 それから、この会でもレスパイト・ケアのことについて、7日をもっと増やすべきではなかろうかという御意見があったのですけれども、その辺のことについてはどのようにお考えでしょうか。

○(財)全国里親会(若狭)
 まず、里親会に都市型と地域型とあるかということですが、里親会自身、里親の意識を高く持って、とても活発に活動しているところは、正直に言って、今現在はかなり少ないと思います。といいますのは、やはり里親さんはそれぞれの御家庭の中での養育に専念されているということが1つ。その中でも、たくさんの社会的養護を必要とする子どもたちを抱えている都市における里親さんは、いくらか里親同士のつながりを密にしなければいけないという意識が、ここ二、三年のうちに、社会的養護という言葉が特に聞かれるようになってから意識が芽生え始めているように思われます。
 地方型の里親会は、反対に、先ほど福井の竹内会長からもありましたように、施設や児童相談所との個人的な連携をとられているところが多いように見受けられます。児童相談所から個人的に委託の話が来たりとか、施設から直接来たり。これは都市型の方ではあまり考えられず、システム化されている部分が多いのかなと思います。ただ、里親会としては、これから発展途上であり、私たちもお互いに情報交換しながらやっていかなければいけないなと思っています。
 それから、レスパイト・ケアは7日よりも増やすべきということですが、今年、レスパイト・ケアを事業としてやっている県とか都の報告が出ると、どのような利用状況がわかると思うのですが、利用したいという思いはたくさんありますが、実際に使ってみようというときに使いづらいシステムであることは確かかと思います。7日という期限が決められていることと、預ける場所が子どもに合ったところであるかというようなところで、預けるか、預けないかのところで悩まれる里親さんは多いと思います。しかし、これがないと、いざというときに困るシステムであるので、日にち的にも多い方がこちらとしてはとても助かります。これが今はまだ利用されていなくても、長い目で、利用されるように、少しでも発展していくといいなと思います。

○松原委員長
 ほかにいかがでしょう。
 では、兜森委員、それから庄司委員の順でお願いします。

○兜森委員
 非常に感銘深く拝聴させていただきました。1点だけ教えていただきたいのですが、この委員会ではケアの連続性ということも検討されているわけですが、いわゆる専門里親の部分で「乳幼児専門」という言葉が出てきております。「虐待専門」とか「障害児専門」とかいう部分について私はよく理解できるのですが、ケアの連続性という視点で捉えた場合、幼児専門の里親さんというのはどういう位置付けになるのか教えてください。

○(財)全国里親会(若狭)
 この場合の「乳幼児専門」というのは、実親家庭に戻すことも踏まえたという意味です。生まれてすぐの子どもでも、里親家庭でずっと同じ顔を見ながら愛着の形成をしていって、実親家庭との交流も踏まえながら実親のもとに戻すこともできるのではないかという視点もあります。乳幼児専門といいましても、そのまま必要であれば大きくなっても育てるということも、里親さんには柔軟性を持った対応ができるのではないかと思っております。

○庄司委員長代理
 この意見書の内容に概ね同感するところです。また、子どもたちの自立支援に里親を活用してほしいという、大変心強いお話を伺いました。
 ただ、里親のあり方、将来像についてどのように考えているのか。従来型の、長期に里親のもとで養育することを目指しているのか、それとも欧米型のパーマネンシーを重視して、里親というのは短期間であると。実親に返すか、養子縁組委託をする方向を目指すのか、日本が欧米と違うところは、施設が中心であるということと、委託期間が長いことも日本の特徴かなと思いますが、そういったことから、里親の将来像についてはどのようにお考えでしょうか。

○(財)全国里親会(若狭)
 こちらにも書きましたが、子どものニーズに柔軟性を持って応えられる里親を目指しています。いろいろな里親さんがいて、それぞれの里親さんをうまく活用してほしいと述べまして、専門里親についても、いろいろな専門里親ということを書きましたが、それぞれについて独立しているものではなくて、里親さんの力量によっては、それぞれすべてのものへの専門性を持つことも可能であり、既にそういうことをされている、例えば虐待を受けた子どもを自立支援のところまでずっと持っていく里親さんもいらっしゃいますし、家庭復帰させることができる里親さんもいらっしゃいます。ということで、かなり柔軟性を持って対応できるのが里親ではないかと思っております。

○(財)全国里親会(竹内)
 これは私ども福井の方で、こういった方向にも里親会として取り組みたいと思っておりますのは、やはり長年里親活動をやっている中で、子育てということにおいて、例えば地域のお母さん方とのふれあいということで、子育てはなかなか不安である、厳しい問題がある等、いろいろなことで、子育てプラス不安・心配、そんなところから、子どもをつくるのがなかなか難しいという中にあっての、いわゆる少子化の時代の中で、我々が、実は子育てはすばらしい、こんな楽しみがある、こうこうしかじかのところがあるんだよということを、もっと地域の中で核になって、自信を持って伝えられるような、そういう里親になろうではないかと。
 これは、少なくとも、今一番問題とされる少子化の時代における新たな里親の一つの方向性もあるのではないかということを私どもはよく伝えております。これもやはり里親会の活動を通して、子育てすなわち自分育てである、子どもはすばらしいのだという観点に立っての意識をお母さん方に伝えていくための核になろうということも、里親会の一つのあり方としても考えております。

○庄司委員長代理
 僕がお聞きしたことの答えではないのですけれども、一つの問題提起として考えていただければと思います。

○奥山委員
 ありがとうございました。私たちも里親さんに対する期待は大きいのですけれども、何しろ増えない、少ないということがあるわけです。里親を実際になさっている方から見て、何がブロックになっているのか、一言でお答えいただければと思います。

○(財)全国里親会(高瀬)
 私が思いますのは、里親というと、そうではないというPRがされていると思いますけれども、篤志家であり、地域の名士であるという今までの第一印象があったと思います。私は東京でしか会長になれないと思うのですが、私のように、資産もない、立場もない者が子どもを育てた、楽しかった、苦しかったけどこうだったというものを示していっていないから、やはり大変なところばかりが勝手に理解されて、篤志家のやることという位置付けがされているような気がします。

○松原委員長
 ほかにはいかがでしょうか。

○西澤委員
 どうもありがとうございました。これは質問というよりは要望というか、多分すぐに答えが出てこないので一緒に考えてくださいということで、今、奥山先生が言われたことも1点で、そういう篤志家というイメージがあるがために妨げになっているとしたら、それを払拭していくにはどうしたらいいかということを実践されている皆さんと一緒に考えたいと思います。
 2つ目は、今の庄司先生の質問は、もっと哲学に関することで、例えばアメリカでも一時期は、養子縁組をするよりも、むしろ里親で社会的養護は担っていった方がいいということで、積極的に養子縁組を阻止した時代があります。それが今はパーマネンシーのもとで、むしろ里親の利用は短くして、養子縁組という、ある程度パーマネントな関係を子どもとつくることの方がいいと。だから、子どもにとってどっちがいいのかというポリシーの部分の検討を庄司先生は聞かれたわけで、それはだれもクリアな回答を今持っていないので、そのことを実際にされている方々からの実践的な意見としてまとめていくような、そういった動きをつくっていただければありがたいと思います。
 もう一つは、すべてにオーケーなシステムはないと思うので、例えば施設の中でも、例を挙げれば施設内虐待という問題が起こるし、里親さんでもそういう問題が起こったり、あるいは、施設側から見ていると、施設に帰ってきてしまう子ども、いわゆる不調ですよね。こういう子どもたちの事態を減らすために、施設側としては施設内虐待をどう減らしていくかということに取り組むのと同じように、そういった里親サイドでもっと緊密な関係になる中で、そういう問題の発生をどうすれば改善できるか。すべてなくなることは絶対にないと思うので、そういった改善に向けた動きはどうつくればいいか。そのために、例えば施設と里親がどう連携できるかというようなことを、今後里親会として検討していただいて、我々の方にも投げていただければ一緒に考えられるかなと思いました。だからこれはお願いということで、よろしくお願いします。

○松原委員長
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 私からも1点伺いたいのですが、この中にはいろいろな里親さんがいて、そういう多様な里親がいることを前提にいろいろ考えてほしいというお話があったと思います。そういう里親の方たちを支えていくためのシステムをつくるときに、その支える側の中に、例えば児童相談所、児童養護施設、乳児院等の児童福祉施設も入ると思いますけれども、今、実際にどのあたりと実際のサポート関係を結ばれているのかということが質問の1点目です。
 それから、ある種の力量差ということを考えたときに、里親が里親を支えるようなシステムを、今後、社会的なシステムとして考えていくことができるのかどうか。この点を伺いたいのですが、いかがでしょうか。

○(財)全国里親会(坂本)
 私は、出かけるとき、ある児童養護施設の方が必ずボランティアさんを探してくださいます。そこの児童養護施設の方は、うちのためのボランティアを用意してくださるし、そしてまた、何かのときには必ず顔を出してくださいます。そしてまた、施設でこんなものをいただきました、どうですか坂本さん、と持ってきてくださる。そういう形で私はサポートしていただいております。
 あと、「こどもの日」のフェスティバルとかそういうことにも招いていただいたりとか、そういう意味で地域での交流ということをさせていただいております。
 それから、里親と里親で何ができるかというお話ですけれども、私は、週に2回「里親サロン」というものを自宅で開いております。これは、私は宇都宮の事件のときに非常に心が痛みまして、そのときに、私に何ができるかということで、まず里親さんのお話を聞こうということで始めさせていただきました。
 実際、それを開きましたら、外では言えないこと、私たちの悩みというのは外ではなかなか言えないんです。言ってしまうと、それは差別や区別、偏見に変わりますので、そういう意味で言える場がありませんので、まず語る場をつくっていくこと。これが私がまずしたことです。ほかの方はほかの形でなさっていると思いますけど。

○(財)全国里親会(高瀬)
 今まで、単純とは言えなかったと思うのですが、長い時間をかけて育った関係の子どもには、そういう反社会的な行動をしたときに警察に行くとか、そういうことをしながらも、そういうことをしないための育て方をしていったのですけれども、去年出会った子どもたちは、もう既にうちに来たときから保護観察、試験観察というものを持ってきていた子どもたちなので、必然と、警察とか保護司さん、裁判所とかと急に関係ができてきて、こういうことがあれば、難しいお子さんでも、私一人が何とかしようと思わなくても、私たちの立場で、寝るところと食べるところを提供すれば、週に1回裁判所に通い、保護司さんのところに通っていき、そして車の教習所に通いという形で、自信を持たせて自立させていけるなということが一つあって気がつきました。
 それが、今まで関連が持ちやすかった児童相談所とか地域の近いところの養護施設とかと連携できれば、1人や2人ではなく、もっと多くの子どもをそういう形でサポートできるかなという思いがします。
 それと、私も、4年前に、うちの子がみんな二十歳以上になったので、終わりだと言っていたのですが、子どもの状況がそうではないということを感じまして、今さら3歳、4歳の子どもからもう一回長くは育てられないけれども、それをしようとしている里親さんのグランマみたいな感じで、ちょっとリフレッシュしておいでよという形のサポートができるなと。でも、行政的にはそういう仕組みになっていませんので、私がおうちにいて留守番をして遊ぶという形で、ちょこちょことできるといいなと。それが制度的に言うとレスパイトになるということを見てきました。私たちも、長時間継続的に長くは育てられないけど、地域の中で、学校を移ったり、休んだりしなくて、学校に通わせながら、幼稚園に通わせながら子守りができるような、そういう活用もしたいなという思いでいるんですけれども。

○(財)全国里親会(若狭)
 私は東京都で養育家庭支援員ということで、養育家庭さんの電話相談を受けることもしているのですが、その相談電話の中に、特に初めて里親になった方が、初めて子育てをするということで、施設に、対象となる子どもとの交流に出かけたときの施設職員とのかかわりについて、とても悩まれる方が多いんです。そういう相談をよく受けます。施設の職員が私たちのことをどう見ているのかわからない。このままやっと委託につなげていただけるのか、こんな里親はだめだと言われるのかという不安がとても多い。
 実は私は施設の方にも、アルバイトとかで施設職員の経験があるのですが、そのときに、やはり里親さんで交流されている方がいらして、今度、施設職員の側の話を聞きますと、里親さんに対する不安がとても大きい。この子を本当に預けていいのかという不安が大きいということで、里親のこと、もしくは、交流している里親家庭のことを施設としてなかなかわからないし、理解することも難しい。反対に里親も施設の中の様子はなかなかわかりづらいということで、意思疎通がうまくできていないんです。ですから、施設からの支援という前に、里親のことももっと施設の方々にわかっていただきたいし、里親も施設の中のことをわかるべきではないかなという思いがしています。

○松原委員長
 ありがとうございます。そういう手立ての中で、そういう立場の方がどこかの施設なり機関で活動できるようなシステムができるといいかなと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。

○徳地委員
 僕も、意見書と、皆さんのお話を聞かせていただきまして、大変参考になりました。私は児童自立支援施設武蔵野学院の徳地と申します。私の長い経験からいきますと、私のところは昔の教護院、今の児童自立支援施設ですが、やはり我々の施設では、虐待が根底にある子どもが平均60%。私の武蔵野学院においては84%が何らかの虐待を持っているということで、本人も保護者のもとに帰らない、また、保護者も本人を拒否する。児相にお願いしても受け皿が全然ない。最終的には18歳まで置かなければいけないケースがたくさんあります。中には、やはりそういうようなことが根底にありますと、施設の経験が長くなって、本人もだんだん目標をなくし、場合によっては心身症が出たり、そういうこともあります。
 先般、埼玉県の方にお願いしまして、これはずうっと施設にいたのですが、地元の施設ですと、父親が強制的に一時保護所に行ったり、児童養護施設に行ったり、あとは当時の教護院へ行って、強制的に引き取ってしまうということで、そういうことで埼玉県まで県外措置したのですが、その子もうちに4年間いて、高校進学ということもあって、埼玉県内の里親を探しました。根底に非行があると里親もなかなか引き取ってくれない。特に年長になると、そういうケースが多い。
 それで、できましたら、今聞いてみますと、児童養護施設の話は随分出るのですが、児童自立支援施設に関しては、あまりそういう話もありませんから、できましたら、今度、養護施設と同じような並びで児童自立支援施設の対象児童も、ぜひともそういう里親さんの制度を十二分に波及していただければありがたいと思っております。
 もう1点。3の3で、里親家庭を育てるシステムの中で「研修の充実」という点がありますが、当武蔵野学院にも研修センターがありまして、今年初めて里親さんの研修を、1月7日から1月9日まで、2泊3日ですが、初めての試みとして研修をやることになっております。また県の方からそういう通知があるかと思います。定員30名ですが、今回初めてやるもので、一応お知らせしておきます。

○松原委員長
 ほかによろしいでしょうか。
 非常に貴重な御意見を伺うことができましたし、各委員とのやりとりの中で、全体の社会的養護のあり方のこの専門委員会で反映できるような点も幾つか見えてきたのかなと考えております。今後、本日を含めてまだ数回の議論の回数を残しておりますので、本日伺った御意見等も参考にしながら、私たちのまとめに生かしていきたいと考えております。今日はどうも本当にありがとうございました。
 それでは、次の議題は「意見交換」になっていますが、社会的養護のあり方に関する専門委員会における主な検討課題と関連する指摘事項の方向性、これが意見交換の中身になりますので、まず資料について事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○古川虐待防止対策室長
 資料1から4につきまして御説明申し上げます。
 順番は変わりますが、資料1は後ほど御説明させていただきます。まず資料2からでございます。このA3表の資料でございます。
 これは、従来からこれまでの議論の御発言、御意見などを踏まえて、それをとりまとめさせていただいた資料でございます。表の中で「・」が2つのものがございますが、これは前回の専門委員会での御意見を踏まえて追加させていただいた記述でございます。御一読いただければと思います。
 資料3は、現在の要保護児童に対する主なケア機関ということで、これも前回出させていただいた資料でございますが、前回の御議論の中で、14歳から20歳の適切な養育を担う機関として母子生活支援施設もその機能を果たしているという御指摘がございましたので、「母子生活支援施設」という記述を追加させていただきました。
 資料4でございます。「これからの社会的養護システム(案)」として、将来的に目指すべき方向性はこのような形ではないかということを前回2案出させていただき、それを踏まえて議論をいただいたわけでございます。その2案をまとめた形で「目指すべき方向」として1つにしてはどうかという御提言をいただきましたので、このような形とし、※印の部分にいわゆるトリートメント機能の部分を、「治療を中心とした施設は、専門職員が配置されている本体施設内において小規模化が図られることとなる」と表現させていただきました。
 それから、左側の「児童相談所」の欄から「各児童福祉施設」を経由しないで直接「自立援助ホーム」に行かれるお子さんもいるという御指摘もございましたので、下から通り抜けるような形で矢印を1本追加させていただいたという修正を加えさせていただいております。
 以上が資料4の変更点でございます。
 戻りまして、資料1について御説明をさせていただきます。
 「社会的養護のあり方に関する専門委員会における主な検討課題と関連する指摘事項および方向性(案)について」でございます。これは前回の専門委員会の最後に、松原委員長から、議論のとりまとめの概ねの方向性を、これまでの議論を踏まえてまとめろという御指示をいただきましたので、あくまでたたき台でございますが、作成させていただきました。
 以下は、これまでの当委員会における主な指摘事項を検討課題ごとに整理するとともに、こうした指摘を踏まえ、社会的養護のあり方について具体的に見直しを行っていくに際して念頭におくべき概ねの方向性を議論のたたき台として示したものという位置付けで作成をさせていただきました。
 1の「社会的養護のあり方について」の概ねの方向性ですが、まず「主な指摘事項」ということで整理させていただいておりますが、これは、先ほど見ていただきましたA3表の御意見の全部をここに持ってくるとあまりにも膨大な資料になりますので、幾つか類似の御意見などにつきましては、同様の趣旨のものを一つにまとめる形で、要約させていただき、整理させていただいたものでございます。そして、そうした指摘事項を踏まえると、概ねの方向性としては以下のようなものになるのではないかというものを、一番下ですけれども、「概ねの方向性」としてまとめてあるということでございます。
 読み上げさせていただきますと、「概ねの方向性」としては、「社会的養護については、子どもの権利擁護を基本とし、今後とも国、地方公共団体、保護者、関係団体などの関係する主体が、それぞれの責任を適切に果たすことが必要」、「社会的養護の役割は、子どもの安全・安心な生活を確保するにとどまらず、施設入所や里親委託を通じて、その子どもの社会的自立までを支援することにある」、「家族の再統合や家族の養育機能の再生・強化、地域支援といった家族や地域に対する支援もその本来の役割として取り組むことが必要」、「現在の社会的養護の仕組みのもとで何ができるかということではなく、制度や意識を転換し、ケアの小規模化や施設の創意工夫を促す仕組みの導入など、子どもの視点に立って、施設養護と家庭的養護等の協働が確保され、子どもや家庭の多様なニーズに応えることができる体制に見直すことが必要」。このように整理をさせていただきました。
 こうした基本的考えを踏まえまして、2「施設養護のあり方について」でございますが、「概ねの方向性」は次のページの真ん中辺になりますので1枚おめくりいただきたいと思います。「施設養護の中長期的なあり方としては、『1 .社会的養護システムのあり方』を踏まえ、大規模な施設養護ではなく、家庭的な生活ケアの提供を基本としつつ、養育が困難な子どもへの対応が可能な専門職員が配置されている各施設の本体施設を基幹施設と位置付け、子どもの自立に向けて里親や児童相談所などの関係機関等と相互に連携を図っていく方向を目指すべき」、「こうした将来的な方向を見据え、子どもの自立を視野に生活面、治療面で個々の子どものニーズに応えられるよう、適切な支援の下でケア形態の小規模化を進めるとともに、専門的支援機能や在宅支援機能、一時保養機能など地域の拠点としての諸機能を充実・強化していくべき」、「また、子どもを中心に据えるという視点に立って、乳児院・児童養護施設で受け入れる児童の年齢要件の見直しなど、可能な限りケアの連続性や親子の分離を避けることに配慮するとともに、虐待を受けた子どもをはじめ様々な問題を抱える子どもの入所状況に応じて、各施設が適切なケアを提供できる職員の確保も含めた体制整備が必要」、「こうした考え方の下、措置費についても、個々の施設における子どもの状況、創意工夫や努力といった取組みを反映したものに見直すべき」。このように整理をさせていただきました。
 3の「家庭的養護(里親・グループケア等)のあり方について」でございますが、これは4ページの下の方に「概ねの方向性」がございます。「子どもの立場に立ち、より積極的に里親制度の普及を図り、活用していくために、制度の一層の啓発に努めることが必要」、「また、里親の子どもに対する関わり方を多様なものとするとともに、里親の心身両面での負担軽減に向けた支援の強化や研修体制の充実を図ることにより、多くの者が参加しやすい仕組みとするべき」、「里親の機能の拡充やその役割・責任の明確化により、里親の専門性を確保していくことも重要」。
 4の「家族関係調整及び地域支援について」でございますが、「概ねの方向性」は5ページの真ん中でございます。「施設は、入所した子どもの家庭復帰、家族再統合に向け、子どもへの支援のみならず、児童相談所と連携しつつ、家族への支援や親権者との関係調整を適切に実施できる体制を確保することが必要」、「また、施設は、その専門性を活かし、関係機関との連携の緊密化や訪問・通所等のアフターケアの充実などにより、地域社会で支援を必要とする子どもやその家族に対するサポートシステムを確立することが必要」。このように整理をさせていただいております。
 5の「年長の子どもや青年に対する自立支援について」でございますが、次の6ページでございますけれども、「概ねの方向性」といたしましては、「子どもの自立を促していくためには、自立援助ホームの果たす役割は重要であり、その設置促進や機能の強化を図るべき」、「自立には生活拠点の確保と就労支援が重要であり、施設退所後の当分の間や求職期間中の生活を支えることができる実効ある制度的対応を検討すべき」、「一律18歳、20歳といった年齢で支援を打ち切るのではなく、必要に応じて支援を縦続していくべき」。このように整理をさせていただきました。
 6「社会的擁護の質の向上」でございますが、7ページの真ん中でございます。「社会的養護における虐待の防止の徹底など、子どもの権利の擁護のための取組みを強化することが必要」、「社会的養護の質の向上を図るため、一人ひとりの子どもの状況に応じた最適な支援を行うためのアセスメント、自立支援計画の策定等を推進していくべき」、「また、サービス評価の実施を促進するとともに、社会的養護関係者の要請・研修のあり方について、現場のニーズを踏まえてその充実を図るべき」、「こうした種々の取組みによるサービスの質の向上が正当に評価され、改善に向けたインセンティブが生じる仕組みとしていくことが必要」、このように整理をさせていただきました。
 以上でございます。

○松原委員長
 ありがとうございました。
 それでは、そのほかにまだ資料が幾つかございますので、次に資料5−1から5−3までの説明をお願いします。

○山田課長
 それでは、資料5−1から3でございますが、まず5−3を見ていただきますと、鴻池国務大臣から、昨日、「少年非行対策のための提案」が出されております。昨日、総理にも提出されたということでございます。
 これは、御案内かもしれませんが、経緯がございまして、7月に起きました長崎の事件をきっかけといたしまして、この資料の17ページをお開きいただきますと、「少年非行対策のための検討会」というものが、鴻池大臣をキャップに設置されました。その中には、厚生労働省の伍藤局長も委員として入っているわけでございますが、ここで6回にわたって議論をされ、その結果を踏まえて、これは鴻池私案ということで、この検討会のとりまとめということではないのですが、提案を出されたということでございます。
 ごく簡単に中身を御説明いたしますと、資料5−1に1枚紙がございますので、そこの「基本的考え方」のところを見ていただきますと、少年保護とあわせて少年犯罪から公衆を保護する視点が必要である。少年事件についても事実を明らかにすることが重要である。少年及び親に責任を自覚させる必要性があるという基本的な考え方が示されております。
 こういった基本的な考え方の具体的な提案として、当専門委員会にかかわりがあるところを御紹介させていただきますと、資料5−3の11ページに「施設処遇の強化」という項目がございまして、それのページの下の方ですが、少年院について言及があり、たまたま年齢が14歳未満であったというだけで、教育効果の高い少年院での処遇を否定すべきではない。年齢で対応を分けるのではなく、処遇の必要性での弾力的な対応ができるよう少年院に入所できる年齢の引き下げを考えてもよいということが書かれております。
 さらにその下に、児童自立支援施設についての言及がなされておりますが、12ページの2つ目のパラグラフで、児童自立支援施設への入所といっても、児童自立支援施設自体の維持、職員の確保も困難となっており、小舎から大舎、夫婦住み込みから交代制へと、きめ細かな指導自体ができにくくなっていると。こういった現状で、その機能が十分に果たされていないといったような、若干厳しい御指摘もされております。
 それから、14ページでございますが、こういった非行少年が措置をされて、「処分後のサポート体制の強化」ということで、少年院なり児童自立支援施設を出た後に家庭に戻ることが難しい少年をサポートしなければなかなか問題が生じてしまう。このため、更生保護施設、自立援助ホームなどの充実を行うべきであるといったようなことで、先ほど、「社会的養護のあり方についての方向性」の中でも、年長児童の自立のことが触れられておりましたけれども、それとも関連することが述べられております。
 簡単に御紹介をさせていただきました。

○松原委員長
 ありがとうございました。
 それでは議論に入りたいと思うですが、議論に入る前にもう1点御報告といいましょうか、確認をしておきたいことがございます。御承知のように、この社会的養護のあり方に関する専門委員会は、社会保障審議会の児童部会の中に設けられている形をとっております。現在、児童部会においても、相談所 3 のあり方を中心に議論がされております。前回、9月9日にその児童部会が行われておりますが、その中で何回かこの専門委員会における審議状況についての御質問がございまして、私から、審議の経過と、大体この辺まで進んでいるというお話はしたのですが、概ねのところで、今度10月3日が児童部会になるのですけれども、もう一回この審議状況を御報告するような形になりました。この点について、予め御承知をいただきたいと思います。
 そういった状況でございますので、一方で現在の児童部会における議論の状況についても皆様方の方に把握しておいていただきたいと思いますし、児童相談所の議論がこの社会的養護のあり方に関する検討とも密接にかかわるところですので、そのことも含めて、今の児童部会における議論の状況について、事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○中村課長
 それでは、資料6を御覧いただきたいと思います。資料6では、「児童部会における主な論点事項と関連する指摘事項および方向性(案)について」ということで、これは、今、松原先生からお話がありましたように、9日に開かれた児童部会に提出した、児童部会における議論の方向性の整理のペーパーでございます。これについて9日に議論をして、幾つか意見も出ておりますけれども、とりあえず当日出したものを今日も提出をさせていただいております。
 かいつまんで御説明いたします。2ページを見ていただきますと、「おおまかな方向性」ということで整理されておりますが、特に下から2つ目の●印でございますが、「こうしたことを踏まえれば、今後の児童相談のあり方としては、できる限り身近な市町村を主体としつつ、行政権限の発動等の役割や専門性を踏まえた都道府県(児童相談所、保健所等)との適切な役割分担を考えることが必要である」ということで、できるだけ市町村でできることは市町村でという考え方と役割分担ということが出ております。
 次の●印ですが、「なお、その際には、市町村と都道府県のより一層の連携の強化、都道府県、とりわけ児童相談所の専門性の確保・向上等その機能を強化し、市町村の取組みを支援する体制の強化を図ることが必要である」ということと、「さらに、医療、保健、法律その他の専門機関や専門職種との連携強化等により、児童相談所を支援する体制の強化を図ることが必要である」というような基本的な考え方が示されております。
 そして、それ以降、「おおまかな方向性」のところを見ていきますと、3ページでございますが、「児童相談所においては、援助を基本とした機関としての性格を維持しつつも、市町村等との適切な役割分担の下、介入機能を強化することが必要ではないか。そのためには、従来の受容的な関わりを基本としてソーシャルワークのみならず、介入的ソーシャルワークの技法を開発、確立していくとともに、一定の司法関与の仕組みを導入することが必要ではないか」というような整理になっております。
 4ページでございますが、児童相談所については、分権の観点から必置規制の議論がございます。これについては、慎重な検討が必要ではないかということになっております。ただ、「地域の実情に応じ、関係機関との統合や連携について柔軟な対応がなされるべきではないか」ということで、これは既に他の、例えば婦人相談所や何かと一緒に整備されているということを念頭に置いての方向性の整理でございます。
 5ページの上の方で、「市町村の役割強化、市町村との役割分担」とありますが、これは、先ほど説明した「おおまかな方向性」と関連しておりますが、「子どもと家庭に関する相談については、基本的にできる限り身近な市町村が一義的に応じるとともに、専門的な指導や判定、一時保護や施設入所措置等の権限の発動を要するような困難事例に関しては、児童相談所に送致するなど児童相談所の業務を重点化していくような役割分担が考えられるのではないか」、「この場合、市町村における取組みについて、児童相談所など都道府県が市町村に対する専門技術的な支援その他の必要な支援を行える体制を整えておくことが必要ではないか」という整理になっております。
 それから、特に市町村の中でも、現在、指定都市は市でも児童相談所を設置しておりますが、さらに中核市が児童相談所を設置することについての整理について、5ページの下の方にございます。「住民により身近な相談体制を確保する等の観点から、可能な限り、中核市における児童相談所の設置を促進することが必要ではないか。この場合、専門性の確保等の観点から、段階的な設置を進めることが適当ではないか」ということ。それから、「中核市において児童相談所を設置する場合には、一時保護機能のあり方や設置のための準備期間、都道府県による何らかの支援などについての配慮が必要ではないか」という整理がされております。
 それから、障害相談等の問題でございますが、6ページの上の方に、「障害児に関する判定業務や入所措置権限などの行政権限の市町村への委譲については、専門性の確保や効率性などの課題及び支援費制度の施行状況も踏まえ、検討することが必要ではないか」という整理になっております。
 それから、「非行児、不登校児等への対応」ということで、「児童相談所においては、要保護性が高い非行児への対応力の強化を図るとともに、関係機関等との連携が必要ではないか」ということになっております。
 それから、「児童相談所職員の配置の充実、専門性の確保・向上」という点については7ページに載っておりますが、「児童相談所の職員については、引き続き、必要な職員,体制の確保に努めることが必要ではないか」ということと、「職員の専門性の確保・向上については、それぞれの地方自治体における人材投与に関する様々な工夫や配慮、実践的な研修を充実、SV(スーパーバイザー)体制の充実などを図ることが必要ではないか」ということ。
 それから、やはり規制緩和の観点から、児童福祉司の必置規制が言われたりしていますけれども、この点については慎重な検討が必要ではないかということと、児童福祉司の任用資格については、子どもや家庭にかかわる業務に携わっている経験豊富な人材を幅広く登用できるような検討が必要であるという整理になっております。
 8ページの上の方ですが、「心理判定員業務および名称の見直し」ということで、「心理判定員の業務については、虐待を受けた子どもや虐待を行った親に対する心理療法の実施等の機能を強化するとともに、名称についても、業務の実態を踏まえたより的確なものとする方向での見直しを検討することが必要ではないか」ということが出されております。
 それから、「一時保護所のあり方、混合処遇緩和のためのシェルター機能の分散」でございますが、「児童相談所に附置することが原則とされている一時保護所(機能)そのもののあり方について、他の児童福祉施設等との機能分担を含め、検討することが必要ではないか」、「当面、特に処遇上の課題が多いとされている、虐待を受けた児童と非行児との混合処遇の緩和の観点から、児童自立支援施設や里親の活用方策なども検討することが必要ではないか」、この点については、当専門委員会とかかわり合いが深い指摘がされております。
 あとは、関係機関の役割等でございますが、郡部の福祉事務所、その中には家庭児童相談室があるわけですが、その機能強化、あるいは、児童家庭支援センターの設置促進や機能強化を図ることが必要ではないかということ。それから、「主任児童委員については、必要に応じ、児童虐待その他の個別のケースに関する直接的な援助活動を行うなど、積極的な活用を図っていくことが必要ではないか」というような整理がされております。
 いろいろ御意見が出ておりますので、さらに修正をした上で10月3日に再度まとめの案を提出して議論を進めていくことになっておりますので、先ほど松原先生からお話がありましたように、当専門委員会の議論の状況もお伝えをした上で、総合的な議論をしていただくこともお願いしております。よろしくお願いいたします。

○松原委員長
 ありがとうございました。
 それでは、中心的には資料1にかかわっておりますので、これについて御意見をいただきたいと思います。これは、先ほど事務局から最初に説明していただきましたように、まだたたき台ということですので、この前の虐待の専門委員会のときにちょっと議論されました体言止めみたいなものがここの段階ではまだありますけれども、最終的に整理をしていく中で工夫をしたいと思っております。考え方とか、特に「概ねの方向性」のところで付け加えるべきこと、あるいは、修正すべきこと、厚みをつけるべきこと等の御意見をいただきたいと思います。
 今日御欠席の委員のうちの野田委員から、9月17日付け資料の検討案に関する意見ということで、ファックスを事務局に寄せていただいておりますので、これは私が読み上げる形で御紹介をさせていただき、それから各委員の御意見を伺いたいと思います。
 文章のとおり読み上げさせていただきます。

  社会保障審議会 社会的養護のあり方に関する専門委員会委員長殿
9月17日付け資料の検討案に関する意見

 本日、委員会を欠席いたしますので、検討案に基づき以下の3点の意見を述べさせていただきます。
1 施設相互(里親を含む)の連携の強調
 ケアの小規模化や専門的支援などを視野に入れるなら、関係者に対し、他種施設や同種施設間での相互支援を意識してもらう必要がある。従来、むしろ二重措置の危険や、施設の独立性の強調による「抱え込み」的対応も見られたので、施設相互の連携やネットワーク化などの連携の強調を図りたい。
2 施設の提供する機能に優先性をつけ、本来機能を強化する
 施設が地域の相談で振り回されたり、短期の預かり児童の対応で措置児童全体が荒れるというような状況をよく見聞きする。施設に多様な機能を付加するのはよいが、施設の小規模化が進行すると、その危険性は増すので、本来の子どもを育むことの妨げにならない方向での工夫をあわせて検討願いたい。
3 相談の多様化と「子どもの最善の利益」確保
 相談機能の多様化は結構だが、従来から保護者と児童との相談を同一担当者や同一部署が行う結果、どうしても保護者の意向に従ってしまい、「子どもの最善の利益」の視点が弱くなる傾向が見られる。
 本質的には、子ども専門のアドボケーターが必要なのであろうが、家族や地域全体を見ると言いつつ、子どもが後回しにならない工夫をお願いしたい。

 以上3点の御意見をいただいておりますので、御披露させていただきます。
 それでは、資料1の1「社会的養護のあり方について」から順次御意見をいただきたいと思いますが、その前に全体についていかがでしょうか。

○奥山委員
 全体の問題ですけれども、「概ねの方向性」は、これだと永遠に方向性だけで終わってしまうような気がします。一体いつまでに何をやるのかということを最終的にはきちんと出さなければいけないと思います。例えば、「健康日本21」では、完全に数値目標を立てていますよね。それと同じように、何年後までに何をどうするのか。例えば「5年後までに、社会的養護を必要とする子どもの30%は里親委託にする」とか、そういうきちんとした数値目標を立てなければ意味がないと思います。そこをきちんとまず把握して先へ進まなければいけないと思います。

○松原委員長
 全体のことについての御意見は伺いたいと思いますが、先ほど紹介していただいた資料6は「おおまかな方向性」ということで、「概ね」と「大まか」では違うかもしれませんけれども、このような表現をされている中で、ある委員が、これは非常に近未来的ではないかと。これは直近のことを言っているのでという御発言もあって、ある種、この「概ねの方向性」の中には、期日が視野の中に入っているものも含まれているかと思いますが。

○奥山委員
 今の段階ではいいのですが、最終的な報告書を出す段では、数値目標は必ず入れるということを合意した方がいいと思います。

○松原委員長
 この点は、御意見をいろいろ伺いたいと思います。

○加賀美委員
 今の御意見は大事な御指摘だと思います。それに加えて、この議論を始める前に、少なくとも直近でやらなければならない課題がたくさんあるから、それについて手をつけていく方向を示すことが一つあると思いますけれども、中長期的なビジョンもきちんと整理して並べよう、議論していこうということがあったと思いますので、そのことを含めて、今のような数値目標という形態になるのかどうかということがありますけれども、中期、長期それぞれに分けて、計画的にどういう道筋を立てていこうというところまでは整理していく必要があるのではないかと思います。

○松原委員長
 全体的な性格付けの御意見がおふた方から出ていますので、ほかの方からも御意見を伺いたいと思います。

○西澤委員
 基本的には、奥山先生の今の指摘は正しいだろうと思います。これを最初にお送りいただいて、見てみると総合的になっていて、これはすべき、これもすべきと。一つひとつ項目を挙げれば、それはだれでもそうだなと言えるけど、これが実際に実効性があるのかとなると、かなり戦略を組まなければいけない。攻略というか、何のプライオリティーが高くて、これをやることによってこちらの問題もある程度波及的に解決されるだろうといったような、そういった全体像をシステム化することが必要だろう。それで、それを例えば、僕はそこまでは考えていなかったけど、奥山先生は、それに年限付きで努力目標という、いわゆるマニフェストですか、そういうものを設定することを言われて、そこまでやるのであれば、それは本当にぜひやるべき。
 ただ、目標を設定するということは、要は、そのために何をしなければいけないかということが明らかになってきますから、例えばさっきの、仮に出された、里親さんへの委託を30%にするということも、今は5%くらいだと思うので6倍ということになると思いますけれども、そうすることによってコストがどう動くかも計算できていくはず。そうしたら、それを使って、その間に、今の施設の中で、小規模化を中心とした施設が何%くらいできるというような、そういうような、実際に我々がどう動いたらいいかということがはっきりしてくると思います。そういう意味での行動目標を出す。それが数値目標という形で行動を縛っていくということは必要だろうと思います。

○中村課長
 今の御意見について、事務局から若干お話をさせていただきますと、全体的な流れとして、子育て支援については、この場でもお話ししたと思いますが、さきの通常国会で次世代育成支援推進法が制定され、児童福祉法の中に地域子育て支援が位置付けられ、各自治体に行動計画をつくっていただくことになっています。8月22日には指針も示した上で、15年度には調査をしていただいて、なるべく16年度の早いうちに計画をつくっていただけないかという方針で進めております。
 実は、子育て支援について数値目標を示したものは、新エンゼルプランというものが12年度から16年度までの計画としてございまして、17年度以降の子育てについての計画は次の課題になっているという事情がございます。
 では、こちらの、いわゆる要保護児童の部分について、そういうものについてどう考えていくかということが議論になると思いますが、恐らく、これも何度も申し上げておりますように、児童虐待防止法の改正、あるいは、少なくとも児童福祉法の要保護児童の部分につきましては、来年の通常国会にぜひ法案を出させていただきたいというお話をしておりますが、そういう議論が、法律の形になった時点ですなわち、将来方向としてこういう形で施策を進めていくことが確定した上で、そうした数値目標なりの議論ができるのではないかと思っております。
 ですから、これからのタイムスケジュールの問題もあると思いますが、何という名称になるかわかりませんけれども、子どもについてのプランがこれからつくられていく中で、その要保護児童の部分は従来は入っていないわけですが、そういうものも含めて議論をすべきかどうか、そういう中で決まっていくのかなと思います。そうした議論をするためにも、ある程度、法的な意味での枠組みがきちんとできていて、それを踏まえた形で行政的には数値目標なり計画づくりが進んでいくという順番かなと思っております。私どもとしては、そういう手順を踏んでいく中で、数値目標が必要であればそういう形でつくられていくことになると思います。この専門委員会で直ちに数値目標をつくっていくというよりは、そういう形のプロセスかなと考えております。

○西澤委員
 確認ですが、要は、この報告書を踏まえて、例えば児童福祉法の改正なり児童虐待防止法の改正についての法律的な検討を行って、それが国会で通過した場合に、社会的養護の部分に関しては、それを踏まえた上で数値目標を設定していくという方向性だと理解してよろしいでしょうか。

○中村課長
 数値目標つくることが必要だという御議論が高まっていけば、そういうことになるのかなと思っております。ですから、参考で申し上げたのは、地域における子育て支援について、従来、保育を中心にした形で新エンゼンルプランが12年度から16年度までのプランとしてできているわけですが、それについては、さきの国会で法律が改正されたりつくられたということもあって、地域において計画がつくられようとしているわけですが、それを踏まえる形で17年度以降のものができていくプロセスがもう動き始めています。そういうプロセスの中に要保護の問題も含めて議論がされるのか、それともまた別途かということは、また議論がいろいろあると思いますけれども、数値目標的なものを考えていくというのは、それが一つの参考になるのかなという意味で申し上げております。

○西澤委員
 それは、今の検討の段階で数値目標を出せないということは、十分にいろいろなことを勘案しなければいけないのでわかりますが、それはいずれは必要になる。直近に必要になってくるだろうと思うので、それはそちらの方向で検討いただければありがたいという要望です。
 今のお話を聞いていて思ったのは、新エンゼルプランなどでも、社会的養護の部分については検討されてこなかったというのは、ある意味、養護を必要とする子どもは子育ての対象ではないと言ったらすごい厭味な言い方ですけど、一般の子どもとは違うんだと。やはり社会的スティグマだと思います。そういう意味で、それと同じ土壌で社会的養護を必要とする子どもたちに対しても、一般の子どもたちについての子育て支援の数値目標があるとしたら、それと同じような扱いを受けなければならない。これは子どもの人権ということだろうと思いますので、その点も勘案して御議論いただければありがたいという要望です。

○奥山委員
 「すこやか親子21」の方で、「全児相 4 に児童精神科医を入れる」とか、「各県に1つずつ情短 5 をつくる」とかいうものは既に入っているわけで、そういう数値目標が片方では示されていて、この社会的養護に対しては、そういう数値目標が今まで考えられてこなかったということがあるのだろうと思います。だとしたら、ここの会の意見として、それをつくりなさいということを、そして最終的に出すべきと大きな柱を入れておく。もし、今ではないということであれば、それぐらいは必要だろうと思います。

○加賀美委員
 西澤委員が話をしたこととちょっとかぶっていくだろうと思いますが、この社会的養護の議論を始める冒頭に、社会的養護とは何かという議論をきちんとしようという話をしたと思います。そのときに、一般子育てや保育所の子どもを代表とするような子育て群と、社会的養護という子どもたちの群との、いわゆる位置付けというか、そういったものが接近してしまったというお話の中で、言ってみれば、かぶっているグレーゾーンの子どもたちが増加しているという実態から考えると、社会的養護とは一体何かということをきちんと我々は議論しておく必要があるのではないかというお話を僕は強調したと思う。
 そのことを考えると、ここの社会的養護のあり方のところは、まさにそこのところをきちんと捉えた上で、これからの日本の子育てを社会的子育てというところできちんと議論していく必要がある委員会だと位置付けていく必要があると思ったので、そういう意味では、先ほど奥山先生がおっしゃったようなことの位置付けを明確に出していく責任があるのかなと思っています。
 もちろん、事務局としての今後の進め方についていろいろお考えがあると思うので、それに向けても、ここの委員会としてどうするんだということだけは整理しておく必要があると私は認識しております。

○伍藤局長
 数値目標であれすることも、明確化し、目標を今、私どもの行政守備範囲の中で、御承知のように、例えば高齡者の施設を整備していく、あるいは、社会現象としてこういうニーズにどう応えていくかということで、ニーズに供給が追いつかないような分野について、何とかそれを一定の期間で追いつこうということで数値目標をと、こういう議論が普通はよくされるわけであります。一つ言えることは、ニーズがある程度定量的に推測できる、かなり増大傾向にあるというようなところで、片や供給する資源が追いつかない、それを何とかするべきだという分野でわりと数値目標という行政手法がとられる。そして、それに社会的なコンセンサスがあること、そういうことを設定しても財政当局を含めて、それに合意を得られ、いろいろな機関を巻き込んでそれについての達成が図られる、概ねこういう条件が満たされた分野について数値目標という議論がなされ、それが具体化されていくという気がいたします。
 ただ、社会的養護の分野では、ニーズが増えるだろうという推測がどのようにできるのか、あるいは、ほかの行政目標の場合には、それが増えても当然だというコンセンスというか、そういうものがあるような性格のものが多いのですが、こういう社会的養護、要保護児童といった分野で、これからのニーズをどう見込むのか。増えれば増えるほどいいという性格のものとはちょっと様子が違う分野の話という気もいたします。
 むしろ私どもは、これにどう対応していくか、中身の質をどう上げるかとか、今まで対応してきた方法に問題はなかったのか、もっと違ったやり方があるのではないか、効果的な方法がもう少しあるのではないかとか、そういう質の面とか、そういったものに中心を置いて議論をしているのではないかと私自身は思って聞いていました。
 そういった分野で、私どもも少し研究させていただきたいとは思いますが、大雑把に言いますと、数値目標を行政に取り込む難しさもありますし、それが合致する分野、必ずしもそうではない分野といろいろありますから、御意見をお聞きしながら少し研究してみたいと思いますが、なかなか難しい面もあるのではないかなということを参考までに申し上げさせていただきます。

○西澤委員
 多分、事務局が考えたこととは違った方向で話が進んでしまって、頭を抱えている人がその後ろにはいっぱい座っていらっしゃるのだろうと私は思っていますが、これはやはり非常に重要なポイントなので、認識がずれているとやはりまずいと思います。1つはニーズの評価に関してですが、これはもう、専門家というか、専門ではない人でもだれでも知っていることだと思いますけれども、この10年間で通報件数は20倍近くのウナギのぼりの状態で、それに対して児童相談所の数は増えていない。あるいは、児童福祉司の数もほとんど増えていないという状況で、今既に欠乏していることは明らかだと思います。だから、その欠乏を埋めるだけでも数値目標はできると思います。
 それは、例えば諸外国と比較すると、日本の場合、児童相談所の児童福祉司に当たる人たちの諸外国の数とを比較すると、20分の1から10分の1しか配置されていないという状況の中で、今破綻してきていることはいろいろなところで明らかではないかと思います。だから、これからどれだけ増えるかを出せというのは、その辺の分野に関しては、人文科学、社会科学に日本はお金を落としてきていない。社会学的に言えば、実際には手法はある程度確立されています。どのようにデータを収集し、どう入力していけば、虐待の増加率は大体読めるという研究が諸外国ではあります。ただ、日本ではお金がないからそれができていないだけで、適切なお金を落とせばそういった評価もできるのでしょうけど、今のところは数字がないので、それを云々しなくても、欠乏状態であることは明らかです。その部分のこと。
 あるいは、例えば、年々、少子化と言われて、各ジェネレーションの子どもたちの数が減っているにもかかわらず、社会的養護を必要とする子どもは、暫増ではあれ増えております。ということは、同じ世代で考えると、社会的養護を必要とする子どもたちのパーセンテージが年々上がっているということです。そこからも今後の大体の推測値は出せるわけです。それに対して、児童養護施設の量・質が追いついているかというと、これも追いついていない。あるいは、一時保護を必要とする子どもたち、これは行政が一時保護所を提供するという形でやらなければいけないのですが、これもやはりシーリングエフェクトが出ています。
 そのようなことを見ても、ある程度のニーズ評価はできると思うし、ここの議論が、単に児童相談所の質であるとかケアワーカーの質の問題だけを議論していると認識されているとしたら、それはやはり間違いだろうと思います。

○松原委員長
 全体にかかわっての御意見が出ていますので、そこにかかわっての御意見ということで、中田委員、いかがでしょうか。

○中田委員
 具体的なことで数値目標のお話が出ているわけですが、そのことをここでやることが実際的かどうかと思います。確かに、こういうことのかかわりで言えば、基本問題部会がありましたよね。それから、家庭福祉部会ありました。そういうことの議論を踏まえて、ある程度、ざっくばらんな言い方をすると悪いのですが、基本問題部会も一部についてしていただいた部分があるし、残された課題もあるかと思います。そういうことを感じているから今みたいな議論が出たと思います。
 確かに、行政的に直接すぐにかかわるような課題もここには実際にあるわけですし、それを一歩でも進めてもらわなければ困るということもありますから、第1回目に役所的な話は大体あったと思います。ですから、この中でやるしかないのではないか。それは具体的な数値目標にきちんとなればいいでしょうけど、本来的なことを、ここに課されている課題としては、今言っているような話に行くかというと、どうも行く可能性が少ないという気もしますので、できるものは、最初から中長期的なことも含めて、どうするかという話がありましたけれども、そのときはあまり意見が出なかったものですから。
 今、具体的な形で表を示されたのは、十分か不十分かというのはそれぞれ個人的な意見があるかもしれませんが、できるだけ早くある程度の意見を出してもらいたいという感じがしています。もっとざっくばらん言い方をすれば、ここの委員をやって委員会に出てきて、一部しか実現しなくて、後の問題はどうするかというと、実際に仕事をやっている者とすれば、残された課題はいつどうなるのかと仲間から言われる話だろうと思います。その辺も行政的には十分に考慮をしていただいて話は進めていただいたらいいのではないかと思います。

○松原委員長
 高橋委員、全体的なことに関してはいかがでしょうか。

○高橋委員
 議論の中には既に出てきていると思いますが、結局、この検討されているものが、どこで、だれがするのかということが明確になった方がいいのではないか。つまり、今、次世代育成の方では、市町村行動計画をつくれということになりますね。その中に、従来のエンゼルプランの中に社会的養護の部分が抜け落ちていたという話もありました。ということになれば、次世代の中に社会的養護も考えれば、やはり一定のエリアがもっと議論されなければいけないと思います。市町村に、もし「措置」ということが下りていくとすれば、やはりそういうことももちろん考えられるのではないか。そういうエリアの問題と、体系をもう少しシンプルに必要があるのではないかと思いますけれども、そういう中で絞れるというか、このサービスそのものがもっと明らかになっていくというようにも思います。

○松原委員長
 ちょっと確認させてください。
 次世代の柱の後半の部分のところに、社会的養護対策のものが盛り込まれていましたか。

○中村課長
 入っております。7番目だったかと思いますけれども、その中に、母子家庭の話とか障害児の話、要保護児童の話も入っております。

○松原委員長
 その辺が新エンゼルプランでこれから検討されていく次世代育成の計画、ちょっとスタートのところで違っていたかなと思いますが。
 私、皆さんの御意見を伺っていて、この社会的養護のあり方に関する専門委員会の基本的な役割として、社会的養護は今後一体どのようにやっていくのかということを考えることがこの委員会の一つの責任ではないかというお話をされていて、議論はまだ十分に詰まっていませんけれども、前回の議論を踏まえて、資料4のような図が出てきました。
 これは、今日も含めてもっと煮詰めていかなければいけないと思いますが、旧児童福祉審議会からの流れを考えまして、国レベルでは、社会的養護のあり方を正面切って全部を含めて議論したのは恐らく最初だろうと思います。
 そうすると、私たちの責任の一つは、こういうものはもう少し議論詰めていって、これを一旦、ある種、公のところへ戻して、何人かの方がおっしゃっていましたし、事務局のコメントの中にもありましたけど、コンセンサスをどこで得ていくことができるか。我々がいろいろ提案しても、そうなんだという御意見や、そうではないという御意見など、これはまた各方面からいろいろな御意見が出てくると思います。そういったことで、今、ここの議論を進めることが一つの役割だろうと思います。
 もう1点は、奥山委員がおっしゃった、非常に抽象的になって終わってしまうのではないかという御懸念は、そのとおりだと思います。そういうことで言えば、私は、虐待専門委員会 6 のところでも発言したかと思いますが、これで終わりにするのはよしましょう、これは一つのスタートポイントだ、そういうことで虐待の専門委員会の中で、社会的養護のあり方の委員会も始まっております。こういう専門委員会をこれからまとめていくに当たって、次のステップをどこに進めていくのか、このことについてきちんと議論し、提言しておく必要があるのではないか。そのときに、我々が今回提示をするものについて、いろいろな御意見をいただき、もう一回検討する場が必要になってくるのかなと、現時点ではそんな思いがしております。
 3点目に、ただ、そうは言っても、ステップを刻みましょうといって、今回は議論のスタートだけしましたということでは、5回を過ぎてあと何回かやるので、それでは話をしただけということになって、逆に、果たすべき責任を果たしていない部分もありますので、近未来的にすぐ取り込めることについては、この委員会の中で提言として具体的な施策に結びつくようなものを提案していく。そのことについては、まさに来年度なり再来年度以降、来年度というのは来年度予算でしょうし、再来年度以降というのは次世代の支援計画等がつくられていくことを踏まえてということになるでしょうけれども、そういうものも考えていくことで、いわゆる近未来への責任を果たす。そういう3つの責任を果たすことになるのではないかと思います。
 数値目標ということの具体的なお話が出ていましたけれども、それは1つ目のステップ、コンセンサスを得ていく中で、2番目の「今後継続していく議論」の中で出てくるだろうと思います。ただ、おっしゃる意味で、出したものが実現されないでそのままスッと、20年たってしまいましたということでは困るので、やはり実現に向けてどういうステップを刻んでいくのかということについては検討をした方がいいと思いますが、例えば具体的な、先ほどの例で出ましたもので言えば、5%を30%にするというような数値そのものの議論は、今回は、この委員会の中でのコンセンサスを得ることもなかなか難しいかなと考えているのですが、いかがでしょうか。

○奥山委員
 私たちの一つの責任として話したいのです。ここに書かれているように、小規模化しましょうという話を出しているわけですよね。そうすると、いつまでに、どういう形で、本当にできるのか。あなたたちは、できないような絵に描いたもちを出してきたのではないかということでは、この委員会としては無責任でしょう。やはり現場の人たちがいるわけですから、いつごろまでに、どんな方法でやるのか。先ほど、ストラテジーということを西澤先生がおっしゃいましたけれども、そういうストラテジーもある程度提示しないと、専門家として責務が果たせないと思います。
 最初にみんなで、社会的養護とはどうあるべきかということを議論してきて、その上で、もう少し細かく前回までかなり議論を詰めてきて、幾つかの見えてきたものがあると思います。今度はそれを実現するのにどうしたらいいかという議論がこれから必要だろうと思います。そこまで議論して初めて専門家として意味があって、小規模の方がいいよ、みんな小規模にしてしまえということはだれでも言えることで、それをどう実現するのかをきちんと言うべきだろうと思います。

○兜森委員
 この委員会の認識は、私はこのように考えています。1ページにあるように、現在の問題は、これまで子どもの養育に社会的コストが十分に投入されてこなかったことの結果であるという認識が必要だということが、主な指摘事項の一つとして挙がっているわけですが、こういった認識に基づいてこの委員会の議論が始まったというか、議論の中でこういった視点が中心的な認識として出てきていると思います。それを引いて、ケアの小規模化、ソーシャルワーカーを導入するなど、個々の施策に反映されるようなマターが出てきていると思います。
 一番もとになっている、この世界に社会的養育をしなければいけないという認識のもとで、この世界にコストが十分に投入されてこなかったではないかという認識を、この委員会が共通認識して出していけるならば、それはおのずから政策に反映していただけると私は単純に考えているわけです。
 先ほど中村課長から御説明があったように、では、社会的コンセンサスをどうやって得ていくか、あるいは、予算をどのように持ってくるのかというような、技術的な、あるいは、いろいろな要素がたくさん出てくるだろうと思いますけれども、この委員会では、これが必要なんだということを、今も相当具体的に項目として出してきておりますので、そこを押さえて、そしてこれは実行してくれというような方向性を持っていけば、それで済むのかなと単純に考えていますが、甘いでしょうか。

○坂本委員
 長年、制度の根幹が変わらない問題に正面から取り組んでいこうとするということで、様々な課題が出てきて当然だと思います。あり方に関する検討会ということですので、理想論も含めて、遠い将来に向けてのあるべき姿が議論されることは大変有意義だとは思います。ただ、今、現実に十分なサービスが行き届かないで大変な思いをしている子どもたち、あるいは、埋もれてしまってそれすらわからないかもしれない子どもたちもいるわけです。ですから、少なくとも「概ねの方向性」から緊急課題を抽出して、それを具体的にどのように実現するのかをこれからしっかり考えていく必要があるのではないかと思います。
 緊急課題と中長期的な課題、そこはこれからはっきり色分けして、あと何回か御議論の時間があるようですので、進めていってはどうかと思います。

○松原委員長
 虐待に関する専門委員会のときには、議論がなかなかまとまらない部分については、課題という形で最後のところに残すような形の報告書構成をとりました。このときに、まさに緊急にやらなければいけないところをもう一つ別の表現で、たしか四角の中に組み込んで表現をしました。そのようなやり方も、奥山委員がおっしゃったストラテジに近い部分で工夫ができるのかなと思います。
 緊急にやるべきことを、今後、時間をかけて、方向性そのものは見えていると思いますが、それをどう実現していくかについての議論をしていかなければいけない部分がありますので、そのような工夫だったらできるのかなという気もしております。
 全体の性格といいましょうか、つくりの話ですので、御発言をいただいていない方からももう少し御意見をいただいてから中身に入ろうかなと思います。いかがでしょうか。
 あるいは、今までに御発言された方でも結構ですが、いかがでしょうか。

○加賀美委員
 「社会的養護とは」というところで、これはもっと前に申し上げなければいけなかったことであると思いますが、この社会的養護のあり方委員会が進む一方で、児童相談所の検討委員会も進んでおり、2本立てで進んでいるから、そちらとこちらの両方で、言ってみれば、広く社会的養護全体の枠組みができてくるという期待を持っているわけです。
 そういう意味でいくと、今日は中間の報告があったわけですけれども、これらも含めて、「社会的養護とは」ということになると、入り口のところの児童相談所の問題が、あるいは、我々現場の人間からすると、子どもたちの問題についてパーセンテージで言うのは何ですけれども、半分以上の役割を占めている、あるいは、80%くらい占めるのかなと思うくらい、児童相談所の存在というか、役割・機能のあり方が、我々が抱えている子どもたちの問題にとって非常に重要なところがあるわけです。そういう意味では、どこかで議論のすり合わせをする機会を今後持っていく必要があるだろう。その辺のところを今後どうするかも今後の課題かなと。全体にかかわるところです。

○松原委員長
 これは必要なことだろうと思います。先ほど、資料6でも、私たちのこの委員会にかかわる一時保護等の問題も触れられているのですが、加賀美委員の言葉をお借りすれば、もう少しすり合わせをしていく部分もあるかと思います。今日の時間配分の中で、もう少し全体の確認をしてから、資料1について見ておきたいのですけれども、児童相談所にかかわる問題を少しどこかでというか、具体的に言えば、次回9月29日に時間をとってありますので、そこで議論をすれば、その中のある部分は、10月3日に、それはどういう形で報告できるかわかりませんけれども、少なくとも児童部会には、あるところは、こちら側のいろいろな議論を反映できる。まさに具体的にすり合わせができるかと思いますので、加賀美委員がおっしゃることは大切だと思います。ぜひ、29日に児童相談所についての議論を、少し時間をとって、この委員会としてもさせていただきたいと考えております。
 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、兜森委員、奥山委員の順でどうぞ。

○兜森委員
 大変失礼ですが、先ほど私が申し上げたことが、もしかしたら舌足らずで誤解を招いたかなと反省しましたので、もう一度申し述べさせていただきます。
 この委員会では、これまでの子どもの養育の問題に対する社会的コストのかけ方が少なかったという認識では一致していると思います。私も本当にそう思います。そういった認識に基づいて、システムも含めて今後どのように介入していけばいいのかという議論がこれまでされてきたわけですが、その中で、すぐにできるもの、あるいは、すぐにやらなければいけないもの、中長期的な課題として検討をする必要があるものという形で方向づけをしていき、そして、できるもの、すぐにやるべきものについては、即予算化していただくというような方向で進めていただければというのが先ほどの真意でございます。

○奥山委員
 今の兜森委員と坂本委員がおっしゃったように、緊急の課題をきちんと「緊急」と入れておいていただいた方がいいと思います。というのは、子どもたちの状況は、今はもう待ったなしですよね。それに対して悠長なことは言っていられないという部分があるので、そこはきちんと「緊急」という言葉が入るべきだと思います。
 もう一つの問題は、「中長期」といったときに、みんなは一体何年を連想するのかということがあります。概ね5年以内にやるべきこと、概ね10年ぐらいにはやるべきことということをきちんとしないとストラテジーになっていかない部分があると思います。例えば、何かの形で、今は見えないけど、5年以内には形をつくれよと。そして実際に実現化していくのはその先になるかもしれない。そういうことも含めて、今全部の形を見せてしまえということではなくて、5年後までに、例えばモデル的な事業をして、5年後までにある程度の形を出すとか、そういったことを含めて、やはり大体5年後がめど、10年後がめどということがわからないと、方向性だけでは、一体いつなのかということが全然わからないと思います。そこをもう少し明確にした方がいいと思います。

○松原委員長
 高橋委員、いかがでしょうか。

○高橋委員
 今のお話にも関連するのですけれども、今、現場は本当に待ったなしです。問題を整理して示していくことが、今現場がこの委員会に期待していることだと思います。だから、あまり期待に応えないものを出すとすれば施設崩壊につながるようなことにもなりかねないと思います。
 そこのところをぜひ踏まえていただきたいことと、私はもう中長期計画は要らないと思います。当面の5〜6年の計画の中でやらないと、バブルの時期に計画したものが、崩壊してお荷物になってしまう例もあるわけですから、今の子どもたちの問題というのは本当に当面しているし、大学の養成側からすれば、今、養護施設を敬遠する学生たちが増えてきました。やはり大変な仕事であることがだんだん認識されてきたということからすると、やはり環境の問題なども十分に、人の配置だとかを整備していかないと、この社会的養護は非常に難しくなると思います。現場に行って感じるのは、隣近所のケースが結構忙しくなってきた。だから、エリアというものもある程度絞っていき、その中でどう考えられるのかということも、この全体の中のあり方として考えていかないと、従来の社会的養護というイメージでは済まないサービスが求められているような気がします。そういう意味で期間は重要ですし、エリアも大事だと思いますし、シンプルな体系もぜひ考えていく必要があるのではないかと思います。

○松原委員長
 ありがとうございました。社会保障審議会の中の児童部会の中に設けられた委員会ですので、年ごとの予算対策とは違う性格があるかと思いますので、先ほど坂本委員がおっしゃってくださったことですが、本当に、今、子どもたちをどうするのかということがありますので、「緊急」という御発言が幾つかありましたけれども、それは具体的な施策に結びつくようなものをつくっていく、そこの指摘事項及び方向性の中で表現するということと、全体的にこれから検討していかなければいけないものについて課題として示していくこと。そのときに、奥山先生がおっしゃった、それをどのくらいのスパンでやるかについては、今後の児童部会全体の審議予定等もありますので、事務局と打ち合わせをさせていただいて、どういう表現ができるのか、その辺は考えさせていただきたいと思います。
 それでは、このたたき台の段階ではまだいろいろなものが混在しているかと思いますし、「主な指摘事項」にこういうことも入れておいた方が手がかりとしてはいいのではないかということもあるのかと思いますので、1から順にと思っていたのですけれども、そのようにやっていきますと、また年長のところが後になって時間がなくなったということになるのもまずいと思いますので、気がついた点からで結構ですので、資料1にかかわって御意見をいただければと思います。

○兜森委員
 順不同ということですので。私は、サービスの供給体制の話ができていなかったのかなと。私の記憶違いであれば誠に申し訳ないのですが、これは2ページの2「施設養護のあり方(施設サービス体系のあり方等)について」のところに入れていただくのがいいのかと思いますけれども、要するに、児童福祉施設が全国に適正規模で配置されているかということを申し上げたいと思います。
 私は母子生活支援施設の人間ですので、母子生活支援施設について申し上げると、1つしかない県もあります。一応、措置ではなくて、利用契約方式になっておりまして、それは利用者の選択権を保障するという基本命題もあるわけですが、1つの県に1か所しかないという状況で、選択権の保障ができない。これはちょっと話がそれるのですけれども。たくさんニーズがある、先ほど西澤委員がおっしゃったように、社会的養護のニーズが相対的に増えているという御指摘がありました。一方、その受け皿がどう整備されているかといいますと、必ずしも十分な態勢ではないと思います。これは、ケアの小規模化とかいう問題とは全く別ですし、あるいは、里親さんとの問題とも全く別と私は考えておりますが、要するに、サービスを供給していく態勢をマクロな視点で考えていく、その項目を追加しなければいけないのではないかということを申し上げたいと思います。

○奥山委員
 今、子どもの状態が危機状態で待ったなしだというあたりの現状の問題を最初に考えて入れておかないといけないのではないかと思います。ただ、あり方はこうですよとポンと出すよりも、今これだけ危機状態にあるということをまず考えて、私たちの最初のスタート点をきちんとして、それに対応する対策を出すことが必要だろうと思うことが1つです。
 あと細かいことになりますが、7ページにある「社会的養護の質の向上を図るため」の後のところ、「一人ひとりの子どもの状況に応じた適切な支援を行う」ということは、どちらかというとあり方の問題ではないかと思います。質を向上させるためにやるのではなくて、あり方として、子どもにオーダーメードの支援をするということがあるので、これは1へ持っていかれるべき問題ではないかと思いました。
 基本的には、要するに、今の危機状態をとにかく明確にするということが必要だろうと思うことと、あとは、先ほど来議論していました、その中で緊急に一体何が必要なのか、小規模化していくとしたら、どこからどう手をつけていくのか、その辺のところを少し議論していかなければいけないのではないかと思います。

○松原委員長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○四方委員
 基本的には、野田委員が既におっしゃったことと共通することですが、やはり「連携」のところは強調して書かれるべきだと思います。と申しますのも、例えば、資料4に出ておりますが、これも児童養護施設が主体となったところで書かれておりまして、児童自立支援施設あるいは児童養護施設、乳児院、情短等々の施設がこの場合にどう連携していくかということが、やはりそこのところだけが中心に書かれているという一つの特徴があろうかと思います。ぜひとも、1つの体系の中でもっと総合的に考えていかなければいけないのが今の児童施設福祉のあり方だろうと思いますので、そこのところを強調していただきたいと思います。

○松原委員長
 ありがとうございます。後でまとめたいと思いますが、連携は非常に大切だと思いますが、もう1点の四方委員の御意見の、資料4は児童養護施設中心だという点についてはコメントさせていただきたいと思います。事務局と一緒につくった責任がありますので。
 資料4の真ん中、「各児童福祉施設(センター構想)」とあるところですが、これは乳児院でもこういうことを、その場合の小規模ホームというのは、例えば年齢制限の緩和があったときに少し上の子どもがという考え方、あるいは、情緒障害児関係の治療施設でも、児童自立支援施設でも、こういう形で考えられないかということで、決して、児童養護施設だけをイメージしているということではないことだけは補足させていただきたいと思います。

○四方委員
 ありがとうございます。しかし、ちょっとこだわったことですけど、小規模ホームの形が重症な子どものケアに最も必要なことかどうかというのは、これから続く検証が必要な部分ではなかろうかと思いますので、ちょっと触れさせていただきました。

○松原委員長
 そういう処遇に手のかかる子どもについては、そこに「困難ケース」ということで、これは本体施設の中でやりたいというイメージもつくっておりますので、そこも補足をさせていただきます。だから、これを全部小規模化して地域に出すというイメージはしておりません。

○西澤委員
 今のことでちょっと引っかかったのですが、小規模施設というのは、地域のグループホーム以外にも、例えばオンキャンパスの小舎制も小規模ですよね。私、アメリカで3年ほど向こうの施設に勤めていたのですが、精神病院から来る子ども、ここでだめになったら精神病院に行かなければいけない子どもたちのケアは、やはり小舎ユニットです。要は、小舎の問題としていつも言われているのは、日本でもよく言われるのですけれども、例えば子どもと大人との関係が悪かったら、もうそれでどうしようもなくなるとか、風通しが悪いとか言われているのは、あれは職員配置の問題とかそういうところに由来するので、もちろん四方委員が言われるように検討はしなければいけないと思いますが、私の海外での経験やこれまでの蓄積からいくと、そういう重症度の高い子どもでもやはり小規模が望ましいというのが大体の風潮ではないかと思います。

○松原委員長
 そういうことも含めて、この本体施設のところでも、左側のところで、これも小舎制ホームでやりましょうということを書いてあります。大体そのように考えました。なぜか考えたかというと、今までにさんざんに議論してまいりましたので、それを生かしているつもりです。

○加賀美委員
 今、せっかく資料4のことが出ましたので。これを言葉に変えたものが、2の2「概ねの方向性」で、「施設養護の中長期的なあり方としては」という部分に該当すると捉えてよろしゅうございますか。

○松原委員長
 そのとおりです。

○加賀美委員
 それをまず確認しておいて、これを中長期的な課題とするということで真っ先に挙げてあるのですが、先ほどから、緊急度といったところでどういうビジョンを持っていて、どのように中長期のところに結んでいくのかという道筋が見えてくる方向性でないとだめだろうと思っています。そのことを含めて、中長期というのは大事だと思っていますけど、やはり緊急度についての課題が真っ先に挙げられてきて、まず方向性を持っていくところかなと思います。

○松原委員長
 事務局の弁護をするわけではないのですが、中長期でそういうことで挙がっていて、7ページの「社会的養護の質の向上」のところの「概ねの方向性」の一番下の「サービスの質の向上」云々と書いてあるところ、こういうところで、まさに緊急的にいろいろやるところをリード役にしていく、そういうインセンティブをきちんと働かせていくということで、その緊急度にも対応できるような考え方をしているのではないかと、多少弁護しておきます。

○奥山委員
 今ちょうど、「概ねの方向性」の7ページのところのお話が出たので、細かい点ですけれども、追加したいと思います。
 要するに、今の緊急性の一つだろうと思いますが、子どもたちがいっぱい入れられて大変な状況になっているということがあるわけですね。子どもたち一人ひとりの行動の問題も多いと。それにどう対応するかを考えていくときに、まず小規模とかいう大上段ではなくて、今の施設をどう改善していくのかという第一歩ということで考えたときに、その中で、子ども同士もあるし、施設の職員の問題もあるでしょうけど、虐待を防ぐとか、いろいろなことを考えていくと、施設の第三者評価というものをきちんと入れていった方がいいのではないか。そういうことを考えていくことも大切なのではないかと思います。

○松原委員長
 どこかに第三者評価については入っていましたね。

○奥山委員
 「主な指摘事項」の中には入っているのですけれども。

○松原委員長
 「方向性」の方へ少し。

○奥山委員
 そうですね。もう少し強調してもいいのかなと思います。
 もう一つですが、今大変になっているところで、何から手をつけられるだろうといろいろ考えていくときに、もちろん人は増えないとだめだということは前提ですが、小舎型に移るに当たって、今の中・大舎の中でも、クワイエットな空間といいますか、静かにできる空間として、カーッとなったときにそこにいて自分をおさめられるような個室であるとか、行動が激しい子どもはある程度個室対応が必要だとか、セクシャルアビュースに対応する社会的養護をどうするかきちんと考えなければいけないという話が出ていましたけれども、セクシャルアビュースの子どもがいるときに、グループで寝かせているといろいろな問題が起きてきますし、そういうことを含めて、個室にきちんと入れていくような対応をしなさいと。最低基準を変えるなりして、物理的な環境を変えることも必要になってくるのではないかと思います。

○松原委員長
 ありがとうございます。いろいろ細かいことをどう書けるかということがあると思いますが、おっしゃることは大切で、僕もこの間、九州のある児童養護施設を見学させていただいて、親が面会に来てかえって興奮してしまっている子どもを、生活空間に返す前に、いわゆる本体部分のところで、まさにクワイエットな空間と時間が保障できるような工夫がされているところを見てきて、非常にいいなと感じました。
 そういった工夫をされているところ、そういうものにきちんと応えられるような形でまさにインセンティブを働かせていく、また、それが全国発信できるような仕組みは大切なのかなと考えております。たまたま奥山先生にお話を出していただきまして、そのほかにもいろいろな工夫があるかと思いますが、非常に大切なことだと思います。
 ほかにいかがでしょうか。

○高橋委員
 第三者によるサービス評価が今徐々に進み始めてきていますけれども、やはり措置施設の特性は、前回もお話ししたのですが、まだまだ理解されていないというところで、そういう評価員の養成も必要だと思いますが、もう一つ、評価だけではなくて、積極的にコンサルをするような仕組みを入れていくことも必要だと思います。そういう専門家を養成することも必要ではないかと思うので、ぜひ、施設経営とか養育、心理が介入することでのコンサルテーションとかいう仕組みが徐々にできてきているけれども、施設全体の、納税者側から見るというよりも、むしろ経営を専門的に見るような仕組みをつくってコンサルテーションしていくことも大事なことではないかと考えます。

○松原委員長
 お2人の委員から、第三者評価の重要性みたいなことの指摘をいただきました。

○武田委員
 質問と意見ですけれども、3ページの「家庭的養護(里親・グループケア)」と書いてありますけれども、このグループケアというのは、何をいわんとしているものでしょうか。それは前からちょっと引っかかっていたところなので、それを伺っておきたいと思います。
 それから、自立援助ホームに関しては、東京に自立援助ホームが多いので、地方の子どもを今まで随分頼まれてきたのですけれども、東京都がその辺かなり厳しくものを言うようになってきて、地方の子どもを受けるときには、地方に費用負担してもらうことと、地方の子どもが入ったために東京の子どもが入れない責任をどうしてくれるのかということを、この2年ほどかなり言われているものですから、各地方自治体に、目標としてですけれども、自立援助ホームをつくることによって、地元での生活の安定を図る基盤を子どもたちに保障する。それを入れていただけたらと思います。

○松原委員長
 わかりました。御質問の点については、事務局の方でお答えいただけますか。

○古川室長
 次の4ページの3つ目にありますけれども、いわゆる里親やグループホームなどを典型的な例といたしまして、小規模集団での生活を行えるような形ということで、これは様々な形があっていいと思いますけれども、障害者の方や、高齡者の方にあっても、いわゆるグループホームというものが落ち着いた生活に大変効果があると言われておりますので、一つの典型例として、このファミリーグループホームというものをイメージして書かせていただきました。

○武田委員
 それは施設の小規模化で既に言われている部分のような気がするのですけれども、「家庭的養護」のところにあえて入れているのはなぜですか。

○古川室長
 小規模化が、ひいては家庭的な養護につながる一つのあり方として望ましいのではないかということで、ここに整理させていただいたということです。

○武田委員
 施設の方の意見もちょっと伺えたらと思うのですけれども、2番で小規模化を言われているということは、施設の取組みとしてのグループホームは、ここで既に挙がってきているわけですよね。さらに3番でまたグループホームが挙がるということは、ちょっとわかりにくくしているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○古川室長
 1点補足させていただきますと、いわゆる施設サイドからもだんだん小規模化していくという考え方と、例えば里親さんのように個々で取り組んでいただいている方からも、グループを組んでいくという方向があり、それぞれの方向からグループ型を目指すことが現実的な小規模化を実現する手法としてあるのではないかということで、このようにそれぞれの項目から記述をさせていただいております。

○高橋委員
 これは、高齢で言うユニット化ですよね、この「グループケア」というのは。

○松原委員長
 ちょっと違うと思います。武田委員がおっしゃる方が近いと思います。
 僕がイメージしていたのは、東京都等がされている、いわゆる養育家庭で、1人や2人ではなくて、6人ぐらい受けていらっしゃる里親の方がいらっしゃるグループホームなので、恐らく、東京都的に言えば、武田委員がおっしゃるようなグループホームという発想になるのかなと思います。

○西澤委員
 それだったら、「ファミリーグループホーム」とはっきり書けばいいんじゃないですか。そうでもないんですか。

○武田委員
 それは、やはり地域によって解釈が違うかもしれないのですが、一般的に言ったら2番で、いわゆる施設が取り組むグループホームはもう既に挙がっているわけです。

○松原委員長
 それは、表現をどこに持っていくかということで、本来の趣旨は、恐らく、事務局が考えていることと武田委員が考えていることは変わりないと思いますので、それをどこに移すかということ。ただ、要するに、施設を小規模化していくことも必要だけれども、一方で里親を普及しながら、その里親が多様な形で存在し、その中には、比較的な数字で言いますけれども、人数を多く受けてくださる里親さん、そういうものの充実も図っていきたいという線だということを御理解いただいて、あとは、表現をどこの場所に置くかは工夫したいと思います。
 奥山委員、どうぞ。

○奥山委員
 一つ抜けていると思うのは、施設体系の問題を、最終的に今の乳児院、養護施設、情短、児童自立支援施設という施設体系をどうするのかというあたりの議論が深まっていなかったかなという部分があると思います。このままこの4つの体系を維持し、例えば情緒障害児短期治療施設がもうちょっと低年齢も入所させましょうよとか、そういうちょっとしたマイナーチェンジだけで済む問題なのか。それとも、昔たしか議論があると思うのですけれども、いわゆる生活型施設と治療型施設という分け方に大きくしてしまうのか。そういったところの、里親さんとの関連も含めて、どういう体系がいいのかというあたりのことは、議論がまだ詰まっていなかったと思います。

○松原委員長
 加賀美委員、御意見がありますか。

○加賀美委員
 奥山委員から出たこととかぶっているところもあるのですが、それは今おっしゃっていただきました。つまり、未来像のところでは、社会的養護施設という大きなくくりの中で、そのことを一応提起はしてあります。そこのところを、この社会的養護のあり方専門委員会ではどう整理するかと思っています。
 今申し上げたいのはもう少し細かいことですが、2の「概ねの方向性」で、2番目に、「こうした将来的な方向を見据え、子どもの自立を視野に」というくだりで、後の方の「専門的支援機能や在宅支援機能、一時保護機能など地域の拠点として諸機能を充実・強化していく」というくだりがありまして、これを、言ってみれば社会的養護の機能として施設養護の中に付置するというイメージでいくと、4の「概ねの方向性」のところは極めて雑駁と言っては何ですが、施設の努力義務みたいなイメージだけが強調されているので、ここのところをもう少し丁寧にしておく必要があるのではないか。言ってみれば、どういう機能をここに持っていくかということがちゃんと語られていかないと、ここのところが、地域支援のところはこの部分でいってしまう可能性もあるので、2のところでせっかくそういうことを言っていますので、ここのところの「概ねの方向性」の2つについても、機能充実ということも挙げておいていただきたいと思います。
 それから、年長の子どもの自立支援のところの「概ねの方向性」では、自立援助ホームの機能強化ということを具体的に挙げてあります。あとは、自立に向けての生活拠点、就労支援といったようなことで、施設を退所した子どもたちへの支援のあり方について、実効ある制度的対応を検討すべきということは、その意見の中に、自立を目指す子どもに貸付け制度であるとか、保証の問題であるとか、そういったことがありますが、そういったことも含めておっしゃっていることだと理解できます。イメージとしては、施設から大学へ進学する子どもたちのイメージがここでは見えてこない。その子どもたちがかなりいるわけで、社会的自立ということを考えたときに、この子どもたちの支援もかなり重要だと思います。ですから、そこのところもしっかりと、大学へ進学する子どもたちも支援するということも、きちんとしっかりと社会的養護のところでは枠に入れていく必要があるだろうと思います。

○松原委員長
 今、ちょっと中間の整理をさせていただきます。
 1つは、奥山委員がおっしゃったのですが、この「方向性(案)について」という議論を始めるスタートのところで、児童部会の虐待の専門委員会からこれができてきた経緯とか、今、社会的養護の、特に子どもたちが置かれているような状況について少し書きましょうという御意見をいただきました。スタートポイントを明らかにしましょうということの議論はぜひ入れていきたいと思います。
 それから、四方委員がおっしゃってくださいました、「連携」については、これは野田委員も書かれておりますので、そこかしこに「連携」という言葉が入っておりますけれども、御意見を参考にしながら、もう少し練ってみたいと思います。
 武田委員あるいは兜森委員もおっしゃっていたのですが、適正な供給態勢といいますか、ニーズにきちんと合ったような形でどういう工夫ができるのかについて考えなければいけないという御指摘があった点だけは確認しておきたいと思います。
 もう1点。資料4にかかわって、これは事務局と私が勝手につくったのではなくて、乳児協から出している近未来像とか、全養が出されている近未来像、その他いろいろな関連の厚生科学研究などでされたものを参考にし、これまでのいろいろな議論を参考にしながらつくったものです。逆に、事務局から御紹介をいただき、いろいろな説明をする中で、奥山委員がおっしゃった、全体像を見直す中で、各施設についてどう考えるかということについて、まだ委員会の中では確かに議論されていないということがあって、これがどういう形でまとまるか自信がないのですけれども、その議論は1度しておくべきかなと考えております。
 ただし、それをこの30分でというのはなかなか難しいかもしれないので、時間があったら入り口のところに入りたいと思いますが、そこまでで、それも29日にできれば少し議論を深めながら、それを、私としては、資料3とか資料4にその議論を生かしていくような形で、ここへうまく織り込めたらと考えております。
 そのような形ですが、これはもちろん、報告書が出るときに、少なくとも資料4などはきちんと報告書の資料のところに載っていく性質のもので、ここでしっぱなしということではない形で生かせると思いますので、そのための時間も取りたいと思いますが、職責上、先を見てしまうのですが、29日にあと1回やりますが、今日いろいろな御意見が出ましたので、恐らく、手直し等についてもう少し時間がかかるだろうと思います。そうすると、その手直しされたものが出てきて、そこでまた議論してと考えると、もう少し資料1について具体的な項目について、御指摘等をいただき、残り30分くらいでいただいておくと、事務局の作業もやりやすいかなと思います。
 今、中間のまとめは何点か確認をさせていただきましたけれども、そのほかにここということがあれば、お願いします。

○庄司委員長代理
 今日は、この「概ねの方向性」に基づいて議論してきましたけれども、「概ねの方向性」は事務局の方で整理していただいていると思いますので、最大公約数的なものになってしまっているという感じで、むしろ、「主な指摘事項」の方が具体的で、検討する課題が多いように思います。この「主な指摘事項」について、意見は上がったけれども、十分な議論をしたのかなということがちょっと気になります。
 例えば4ページで、「主な指摘事項」の下から3番目で、「一時保護委託先としての機能を持つべき」という提案はあったと思いますが、それでいいよということと、そういう必要はないというような検討はあまりしてこなかったと思います。そういった意味で、指摘事項についても目を向ける必要があるかなと思いました。
 この「家庭的養護」の「概ねの方向性」のところは、すぐにでも、やりようによっては予算もそんなに考えずにできることかなという感じもしますし、やり方によっては児童相談所がかかわらないとできないところもあると思います。
 それから、特にここに関係して、今までずっと「里親」と言ってきましたけれども、名称がこれでいいのかということも、新しい方向性を出すときに検討すべき課題かなと思います。

○松原委員長
 坂本委員、お願いします。

○坂本委員
 まず、2の「施設養護のあり方」のところに関連すると思うのですけれども、ここで、生活機能、治療機能、教育機能などケア機能の強化ということで、総論的にはこれが言えるのですけれども、施設種別で言うとあまり適切ではないので、例えば非行問題に対して、あるいは、それ以外の問題に対して、どのような機能を発揮するかという点で考えますと、やはり少し集約しきれない、各施設が今担っている機能をもう少し特化した固有のものも書いていく必要があるのではないかと思います。
 特に非行問題では、先ほど資料をいただきましたけれども、この提案の中であったことがニュースで流れて大変ショックを受けましたが、少年院への入所の年齢を下げていこうということが提言されていますよね。これが実現されるかどうかは別として、児童福祉に携わる者としては、それについて、もう少しこだわり逡巡する必要があるのではないかと思います。そういったときに、今の児童自立支援施設の機能をさらに強化する必要があることも十分に出てくる可能性もあるのではないかと考えました。そういうことで、もう少し各論的なこともここには盛り込まれていいのではないかという気がいたします。
 それから、1のところですけれども、地域養護ということは書かれていますが、ここで何らかの形で市町村ということをもう少し意識できるような書き方ができないかなと思います。この社会的養護に関して、市町村は、我がこととは今の段階ではなかなか思っていない現状があります。児童相談所と施設のことであるという認識がまだまだ強い中で、児童相談所の機能が市町村に行くことになればまた変わってくると思いますが、もう少しここでも市町村の役割を何か入れていくような工夫が要るのではないかと思います。
 それから、2のところに入るかと思いますが、既に「主な指摘事項」の中にはありますので、「概ねの方向性」のところでは、子ども、家庭に対するケアプログラムの研究開発という方向性も盛り込んでいただく必要があるのではないかと思います。自立支援計画、あるいは、それに先立つアセスメントについてはかなり意識化されてきていますが、やはり何といっても今足りないのはケアプログラムとその実施ですので、どういう治療をしていくのか、それに対する標準的なプログラムをどのように開発していくのかという視点が必要ではないかと思います。
 それから、年長児のところですけれども、18歳の子どもを特に意識した方向性が書かれていますが、自立に向けた準備が必要な中卒以上の子ども、15歳以上の子どもたちへの処遇も今後は念頭に置いていく必要が、社会のニーズとしてはあるのではないかと思います。心理的、社会的に自立困難な子どもたちをどう支援していくかという機能を、社会的養護の中でしっかり担っていく必要が今後出てくるのではないかということです。
 以上です。

○松原委員長
 ありがとうございました。今日の里親会のお話の中でも、活動をされる中で、武生市が市の事業として新たな事業を立ち上げたというお話も伺うことができましたので、やはり市町村の役割も今後は大きくなっていくのかなと思います。
 児童自立支援施設の役割については、徳地委員、何かコメントがおありになりますか。

○徳地委員
 4番のところでお話しさせていただきたいのですが。

○松原委員長
 では、そこを発言していただいて、次に西澤委員にお回しします。

○徳地委員
 家族関係の調停について、若干御報告します。
 やはり親子関係に非常に問題があるために児童自立支援施設に入ってくるわけですが、うちの場合ですと、70%がひとり親家庭です。特に母子家庭が多くなりまして、35%がお母さんとの生活。その次が父子家庭ということで、これも30%くらいです。そういうことで、70%がひとり親家庭です。
 そういうことで施設に入ってくる年齢というのは、中学2年生、3年生が一番多いのですが、実際、非行となりますと、7歳、8歳くらいでまず非行があり、施設に入ってくるまでの期間が7年ぐらいありまして、その期間は、いわゆる非行の学習期間ということになって、そういうことで親子関係に非常に問題があって、精査されて入ってくる。そういうようなことで、施設に入ってくる中で親子関係を修復しなければなりません。
 そのためには、単に親が来て、面会して、はいさようならではなくて、どういうことが必要かといいますと、一種の家族療法的なものもやってみて、それで関係修復をしていく。特にうちの場合は全国から来ていますから、面会にもなかなか来れないような家庭が多くて、そういうことでは非常に苦労しているのですが、地方の児童自立支援施設ですと県内にもありますから、そういう点では施設の方から出向いてみたり、もちろん面会に来てもらったりということで関係修復をしております。そのためには、いわゆる心理専門職の人間、生活指導担当職員を交え、1泊2日もしくは2泊3日のプログラムを組みまして関係修復を図っていく。そういうことでその後は対処していくということをやっております。
 もう一つは、アフターケアのことがあまり詳しく書いてないのですが、ぜひともアフターケアの専門職員を入れてほしいと思います。私、以前、日本の現状ですと、医療担当職員が子どもとの関係がいいということで、自分の休暇のときを使って、家庭に行ったり、職場に行ったり、あとは電話とか通信、そのようなことでアフターケアをやっているのですが、アメリカの施設などですと、アフターケアは専門的な教育を受けている人間が、アフターケア専門職員としてやっているわけです。決して、施設職員がそういうアフターケアをやっているところはありません。どっちかといいますと、施設職員は施設の退院生とかそういうものを施設職員としてやっております。アフターケア専門職員は社会的地位の高い方がやっておりまして、私自身、今まで施設経験がありまして、アフターケアというのは、関係性ができている職員が直接行けば一番いいかと思っていたのですけれども、アメリカの施設におきましては、今紹介しましたとおり、施設の直接の職員は、単に子どもを管理していくだけであって、あとの直接的な指導はそれ以外の職員がやる。特にアフターケアに関しては非常に重要な仕事ですので、専門的な教育を受けた人間がそのようなことをやらなければいけない。そのようなことを御紹介します。

○西澤委員
 このことを話そうと思って手を挙げていたわけではないのですが、今、「子どもを管理」とおっしゃったのは、やはりまずいと思いますので。子どものケアをするのであって、管理するわけではないので。
 それから、今おっしゃった、アメリカの施設でのアフターケアということをおっしゃいましたが、あれは要するにファミリーソーシャルワーカーのことだと思います。DSSに所属するファミリーソーシャルワーカーがケアワーカーの後を継いでやるということだと思います。
 私が手を挙げたのは、2の「施設の養護のあり方」の中で、ケア担当職員の質的・量的な確保ということがさらりと書かれているのですけれども、これは非常に重大な問題で、人員配置を含めた最低基準の見直し、改善ということをどこかに入れておかなければまずいのではないか。小規模を支えるにも今の最低基準は無理だと、私は何回も繰り返して言いましたけれども、その点は触れるべきだろうと思っています。ただ、具体的に、何対何の配置がいいのかについては、さっきのニーズ評価ではないですけど、適正な配置基準を、やはりリサーチをかけないといけないと思うし、そういったものをきちんと科学的に検討する。多ければ多いほどいいというようなわけのわからない議論ではなくて、そういう仕組みが必要だろうと思います。
 それから、質的な部分については、必ず出てくるのが研修ということですけど、これは中期的なことになるのかもしれないけど、僕は資格要件の問題が出てくるだろうと思います。今のケアワーカーの資格は、保育士資格ということが1つあるし、あとは任用資格ですよね。これはまずいのではないか。そういった子どものソーシャルワーカーなりケアワーカーの養成をきちんとするというような、それが国家資格に結びつくのかどうかわかりませんけれども、そういった養成プログラムと資格化を考えていかなければいけないだろうということと、これは業界の皆さんからはえらい怒られるかもしれないけど、施設長の資格要件ということも関係があるのではないかと思います。日本の場合、施設長が全権を持つシステムになっていますから、どうしてもそこに専門性ということが要求されると思うし、また嫌われ者になると思いますが、そこのところは考える必要があるのではないかと思います。
 あと2点あるのですが、1点は、気になることは施設内虐待の問題で、6番目の「社会的養護の質の向上」のところで書かれていることは、これはまさしくそのとおりですが、施設内虐待に関して、もう一つは、アメリカの場合は、民間の施設のネットワークの中で相互にスーパービジョンをするシステムによって風通しをよくするという仕組みがつくられているのですが、それと似たような発想でいくと、養護施設の協議会が相互に、北海道の場合はケア基準をつくっていますけど、どの程度の実効性があるのか僕はよく知らないのですが、第三者評価も大事だけれども、ああいったものによって身内で監視し合うシステムをつくる必要があるのかなと思います。
 もう一つは、これだけ施設内虐待のケースがこれだけたくさん蓄積されているのだけれども、具体的には、ちゃんとしたデータになっていないので、今までに幾つか起こった有名な事件に関しては内部で処理されてしまっている可能性があるというか、僕には見えてこない。そうすると、そういうものについて、もう一度検証・調査をして、そこから基礎データを得る。だから、これは厚生省としてやれなくても、どこか、例えば日本子どもの虐待防止研究会等の学術団体にあれするなり、何かそういう基礎研究ができないかと思っています。
 最後に、これは報告書のとは全く無関係ですが、前回のときに私が発言した内容で、一部だけが切り取られて風紋となって流れて、西澤はまたよけいなことを言いやがったというリアクションを私は受けたので、ちょっと確認しておきたいと思います。
 私はこの前のときに申し上げたのは、これからは、すべての子どもにイコールのケアではない、子どもによってケアの強度が違ってくるはずだ。そのために、例えば児童相談所のアセスメント機能の強化ということを言っているわけで、それによっては、変な話ですけれども、子どもにかかるお金が変わってくるだろうと。したがって、そういった形で今後は子どもにニーズに合わせたケアを保障していくために措置費の体系も見直さなければいけない。そうすると、例えば定額払いなんていうものはなくなるでしょうねという話をしたのが、「定額払いがなくなる」のところだけが切り取られて風紋で流れたということがありました。これは、私は自分自身の保身のために、ここでもう一度、そういうコンテクストであることを確認しておきたいと思います。
 長くなりまして済みませんでした。

○奥山委員
 施設内虐待のことを話そうと思ったのですが、西澤先生が指摘されたので飛ばすことにして、兜森委員に伺いたいことがあります。子どもの社会的養護を考えたときに、DV家族とかそういうことで、親が子どもを連れて逃げていく。ここでどういうケア、治療が必要かというところが議論としてはなかったのではないかと思います。今、DVが増えていて、多分、兜森委員の方などにかなりの方がいらっしゃっているだろうと思います。そういう家族へ、母子寮 7 での指導はあるのですけれども、子どもの治療とかケアは、その中にどのように組み込まれていくべきとお考えなのか、その辺をお聞かせいただけたらと思います。

○兜森委員
 今の御質問、本当に感謝いたします。と申しますのは、実は、このメンバーの中で母子生活支援生活は私だけですけれども、資料4を見ても、このペーパーを見ても、幾つかの意見は述べさせていただいてきましたが、母子生活支援施設の立場、中身がどうも見えてこないという感じがして、私はさっき、こういう形なんだなということで赤を入れさせていただいて、後で発言しようと思っていたのですが、それはまた別のこととして。
 今、DVの話がありました。それから、先ほど、徳地委員から、児童自立支援施設の入所比として、ひとり親世帯が多くて、うち母子世帯が35%、父子が30%という話を聞いて非常にショックでした。母子世帯と父子世帯の割合からすれば、父子世帯は母子の約6分の1という統計ですので、それからすると、同じひとり親世帯でも父子世帯比率が圧倒的に多いなと思います。社会的養護の関係からしても、ひとり親家庭が抱えている課題はやはり大きいと再認識したところです。
 今のDVの話ですけれども、母子生活支援施設の利用者の方たちにはDV被害者が約4割おられます。これも地域性がありまして、DV被害者が比較的少ない施設と圧倒的にDV被害者で占められている施設に大きく別れますけれども、そこでどういう支援をさせていただいているかと申しますと、まず1つは、直接の被害者である母親に対して、第一義的には、安全と安心を提供させていただくということが基本です。それから、児童についても、同じ家庭の中で両親のDVを目の当たりにしてきたということは、とりもなおさず児童虐待と私どもは認識しておりまして、被害者である母親から直接児童に対する虐待が生じてくるということもままございます。
 母子生活支援施設は、御承知のように、母親とお子さんという親子を一緒にケアさせていただくという施設ですので、もちろん、さっきも申しました安全と安心を提供するということに加えて、いろいろな時間や経過がありますけれども、それをベースにしながらいやしの時期を過ごしていただく。さらに、いろいろな課題を解消する支援をしていきながら、自分の力でまた人生を生きていくというような、いわゆるエンパワーできるような形で支援をしていくことをさせていただいております。
 そういう意味で、虐待問題が大きくクローズアップされて、そしてこの社会的養護の委員会も立ち上がっていると認識しておりますけれども、母子についても、DV対応の機能を発揮させていただいていることと、親子が一緒に生活をしていただいている施設であるという観点から、これは第1回目か第2回目のときにも申し上げたのですが、親子関係の修復や再構築であるとか、親子の分離を含めて、ある意味でのアセスメント機能を持っていることを申し上げさせていただきたいと思います。

○松原委員長
 ありがとうございました。4の部分の御発言もあるかと思いますが、次回その議論をしますので、後で、その赤が入ったものを私にも見せていただきたいと思います。
 事務局から何かありますか。

○古川室長
 先ほどの職員の配置基準に関して、科学的裏付けを持って数値を示すべきではないかという御指摘についてですが、先ほどの数値目標と同じ話でありまして、具体的な方向性をどのように表現するかは、ぜひ御相談させていただきたいと思っております。この「概ねの方向性」の記述につきましても、本専門委員会としておまとめいただけるとすれば、役所はそれを正面から受け止めることは、当然意識をしております。

○加賀美委員
 今のことに関連して、事務局の立場ということを考えれば、ここでは、あくまでも措置費の問題については、個々の施設における子どもの状況、創意工夫、努力といった取組みに反映したものにという言い方であると書いてありますので、概ね西澤委員がおっしゃった趣旨はこういう形で表現されていると理解しております。ただし、今後のあり方とすれば、これは社会的養護全体をどう考えるかというところで、入り口の問題は別の部門でという話は先ほど申し上げたとおりで、つまりアセスメントの問題が不十分な状況にある今日、この問題を本当に、個々の施設における子どもの状況をどう反映できるのかということがありますので、これは今後の重要な課題であると思っております。言ってみれば、そこのところがきちんとできれば、措置職員の配置問題についてもかなり改善を期待できると思っているところです。

○松原委員長
 ありがとうございました。いろいろな議論をいただきましたが、これは現実的な時間の制約がありますので、再度の細かい整理はしませんけれども、資料2の中の各委員からの発言に入れられるもの、「主な指摘事項」に入れていくべきもの、「概ねの方向性」はまた少し工夫したいと思いますが、ここないしは「課題」というところに入れていくべきもの、いろいろな御意見をいただいたと思います。全体に議論をしていただいた中で少し振り分けができるかなと考えております。
 ただ、庄司委員がおっしゃっていたところがすごく大切で、今日、「主な指摘事項」で挙がっている中で、十分に議論していないところがあるかもしれない。具体的に挙げていただいた一時保護委託については、先ほど中村課長から資料6を紹介していただいた、この6の中でも一時保護の話が出ておりますので、まさにすり合わせということで、ぜひ29日には児相との関係で、一時保護をどのようにお互いが考えているのかという議論をしたいと思います。
 前回の虐待の委員会のところでは事務局がいろいろ御苦労されて、ここの指摘事項は、場合によっては両論併記ありみたいな整理もさせていただいたのですが、ここはそこまでシビアにならなくていいと思います。また、もう少し時間がありますので、これは「主な指摘事項」として表現されては困るということがおありになったら、29日に発言していただきたいと思います。今日のところは、庄司委員から、一時保護のことについてもう少し議論しましょうということで、偶然かどうかもわかりませんけれども、「機能の強化・充実」ということだけ表現してありますので、その中身を、児童相談所なり市町村との役割分担をどうするかというようなことも、議論は次回できるかと思っております。
 残り5分を切りましたが、これはどうしても今日発言しないと29日につながらないとか、まとめには絶対につながらないということがございますか。冒頭からの全体の位置付け等については重々伺いましたのでまた考えさせていただくとして、でも、これはまだあるということがおありになりましたら、どうぞ。

○奥山委員
 「周辺との問題」で、メインのラインではないかもしれないけど、やはりDVで、母子寮だけではなくて、シェルターの問題とかいろいろな問題が絡んでくると思います。また、教育との関係とか、その辺の周辺との連携みたいなところは、一回きちんとまとめなければいけない項目で、もう少し議論が必要な項目かなと思います。学校との連携もあるということで終わっているので。

○松原委員長
 そうですね。資料4で言うと、点線で囲った部分ですね。「地域の社会資源との連携」、例えばそういうDV対策との関連その他で、方向性までまとめられるかどうかはわかりませんが、ここでの議論としてこういうことをやったということは、記録に残せるのではないかと思いますし、必要だと考えております。

○兜森委員
 次回の議論につなげるためにどうしてもということで1つお願いします。
 先ほど、資料4の件で少し話しかけたのですが、後で委員長に御覧いただくとして、実は、今の奥山委員の御発言にもありましたけれども、母子生活支援施設は、資料4の中の外にあって、いわゆる地域で支援する体系なのかなと悩んできたところです。今、DV対策の話がありましたが、母子生活支援施設が仕事をさせていただいているのは、もちろんDV対策だけではなくて、本来の児童福祉の仕事も熱心にさせていただいているということからすれば、このシステム像をどういう形でこれに加えていったらいいのかということが、私もこの間からずっと考えていますけれども、何かいいお知恵があったら、次回に拝借したいと思います。

○松原委員長
 ありがとうございます。私のつもりとしては、本体施設の一つの種別として母子生活支援施設も入って、シェルターとしての一時保護機能も持っているし、地域支援機能もお持ちだし、いわゆるサテライト型の小規模母子もありますので、そういう意味では小規模ホームの整理ができるので、各児童福祉施設の核の中には母子生活支援施設も含まれていると私は考えております。決して外にはありません。

○兜森委員
 ありがとうございます。「各」という一文字の中にこれが入っているなという、先ほど委員長が、各に入れてあるとおっしゃってくださったので、そうかなと思いましたので、それはそれで、今明快にいただきました。ありがとうございます。
 ただ、市町村から自立、家庭復帰に至るまでの矢印のつけ方として、もう一つ工夫が必要なのかなという感じがいたしましたが、それについては後でまた。

○松原委員長
 後でまた図を見せていただきたいと思います。
 A4判一つにまとめることは難しいので、できるとA3判になってしまうかもしれませんが、工夫したいと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。時間になりましたので、次回の開催の確認を事務局からしていただいて、今日は閉会とさせていただきたいと思います。
 事務局、お願いします。
 第6回専門委員会は、9月29日、月曜日、午前10時から、17階の専用第21会議室で開催を予定しております。委員の皆様には、お手元に開催の御案内を配付させていただいておりますので、よろしくお願いいたします。

○松原委員長
 ありがとうございました。それでは、これをもちまして第5回専門委員会を終了いたします。長時間にわたりどうもありがとうございました。



1 財団法人全国里親会のこと。以下、「里親会」と略すこともある。ただし、各地方自治体の里親会をさすこともある。
2 児童養護施設のこと。以下、「養護施設」と略す。
3 児童相談所のこと。
4 全国の児童相談所のこと。
5 情緒障害児短期治療施設のこと。
6 虐待の防止等に関する専門委員会のこと。
7 現在の母子生活支援施設のこと。平成9年の児童福祉法改正以前の母子生活支援施設の名称。



(照会先)
   厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課
   〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2
          電話 03−5253−1111 (内線7889)
          (担当)指導係


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