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参考資料
No.3
(仮訳)
CEDAW/C/2003/11/CRP.3/Add.1/Rev.1
2003年7月18日
原文:英語
未編集版
女子差別撤廃委員会
第29回会期
2003年6月30日−7月18日
締約国の報告審議 報告案

ラポルトゥール:クリスティーヌ・カパラタ

日本:第4回・5回報告

1.委員会は、日本の第4回・5回報告(CEDAW/C/JPN/4 and CEDAW/C/JPN/5)を2003年7月8日に開催された第617回、618回会合において審議した。

I.締約国による冒頭報告

2.第4・5回報告を紹介するにあたり、政府代表は、1990年代に、男女共同参画に向けた大きな前進があったことを強調した。本報告作成にあたっては、NGOの意見を含む情報が求められた。2001年の中央省庁改革の際に、男女共同参画のための国内本部機構が強化された。政府の男女共同参画施策の企画立案と総合調整を任務として、男女共同参画局が内閣府に創設された。男女共同参画担当大臣も務める内閣官房長官を議長とし、閣僚と民間有識者から構成される男女共同参画会議が、男女共同参画施策の実施状況の監視や、それらの施策が及ぼす影響の調査を行っている。

3.代表は、いくつかの新たな法制度やその他の施策について関心を促した。男女共同参画社会基本法が1999年に制定され、それに基づき、2000年12月に男女共同参画基本計画が策定された。基本計画は、2010年を目標とした長期的な政策の方向性と、2005年度末までに実施する具体的施策を内容としている。それ以降、多くの都道府県で、基本法で策定が義務づけられている男女共同参画計画を実施するため、男女共同参画条例が制定されている。

4.2001年には、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する初の総合的な法律が制定され、同法に基づいて全国103か所に配偶者暴力相談支援センターが設置された。2002年11月に全国で行った調査によると、女性の5人に1人が配偶者からなんらかの形の暴力を受けたことがあるが、それらの人のほとんどが公的機関に相談をしていない。政府では、情報の普及に努めるとともに、同法をより効果的なものにするための改正について、検討が進められている。さらに、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」により、女性に対する暴力への対応強化を図っている。

5.改正された男女雇用機会均等法(1997年)では、女性に対する差別的取扱いが禁止され、男女均等取扱いは確実に浸透してきているが、事実上の格差は依然として残っている。今後の課題は、事実上の格差をいかに解消するかである。ポジティブ・アクションを推進するための協議会が設置された。また、研究会は要因を分析し、男女間の賃金格差縮小に対応した提言を出した。この結果を踏まえ、政府はガイドラインを作成した。男女雇用機会均等政策研究会は、どのようなケースが間接差別となるのかについて現在検討を進めており、2004年にはその報告が取りまとめられる予定である。女性は、パートタイム労働者の7割を占めており、女性雇用者の4割はパートタイム労働者であるが、そうした労働者の賃金は正社員より低くなっている。今年3月に発表された報告を踏まえ、政府は、正社員とパートタイム労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を示す指針の改正準備を進めている。

6.仕事と家庭の両立を促進する努力も行われている。2001年に育児休業取得を理由とする不利益取扱いの禁止等を内容とする育児・介護休業法の改正が行われた。また、男性の5日間の出産休暇の取得目標、保育所の受入れ児童数を3年間で合計15万人増やす目標など、法律の実施の政策がとられている。2001年の調査によると、女性の3人に2人が出産を機に退職しており、この背景として、育児休業を取りやすい環境がととのっていないこと、保育サービスの不足、雇用管理が柔軟でないことや、育児が女性の責任であるという考え方があると考えられる。仕事と家庭の両立の負担や、急速な少子化の進行に対応するため、政府は「次世代育成支援に関する当面の取組方針」を決定し、男性の育児休業取得率引き上げの目標を設定している。また、関連の法案により、自治体、企業が今後10年間にわたり行動計画を実施することが義務づけられる予定である。さらに、母子家庭の増加に対応するため、2001年(訳注:正しくは2002年)に、母子及び寡婦福祉法を改正し、子育て・生活支援策、就業・自立支援策、経済的支援策、養育費確保策が拡大された。

7.政府代表は、政策・方針決定過程における女性の数を増加させるための政府の目標を強調した。例えば、女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針が実施されている。2002年には、国の審議会の女性委員の割合は25%に達し、2005年までに30%という目標達成も間近である。しかしながら、女性管理職比率は、官民双方を含めて8.9%である。男女共同参画会議では、3つの領域を大きな課題として整理し、具体的な施策を提言している。その中で特に重要な点は、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性の占める割合を30%にとのこれまでにない数値目標を示したことである。

8.仕事と子育ての両立を支援する上で、人々の固定的な役割分担意識を変えるための取組も行われている。啓発・情報提供事業を実施したり、男女共同参画の視点からの公的広報の手引を広く配布している。男女共同参画会議の専門調査会では、ジェンダーの視点から税制、社会保障制度、雇用システムについて検討を行い、今年度の税制改正に反映された。

9.政府代表は、1995年以来、日本は「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」の下、女性の教育、保健、経済・社会活動への参加といった分野で世界のあらゆる地域の女性を支援するため、政府開発援助(ODA)の約10%を配分してきたことを強調した。日本のODA総額は毎年平均100億ドルに上る。

10.トラフィッキング問題への対応としては、複数の事案が摘発されており、トラフィッキングの予防、被害者保護のため、関係当局、被害者の出身国の大使館等と情報交換を行っている。また、日本は、トラフィッキング撲滅に関連するプロジェクトを支援しており、2001年12月には「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」を開催した。2000年に国際組織犯罪防止条約に、2002年にはその補足議定書に署名を行っており、条約については、2003年5月に締結につき国会の承認を得たところである。

11.最後に、政府代表は、2003年6月に条約の20条1改正を受諾したことを示しつつ、条約実施への政府の強い意志を強調するとともに、女子差別撤廃委員会の重要な役割を高く評価した。政府代表はまた、日本の男女共同参画社会実現における、政府とNGOの協力の重要性と意義を強調した。

II.委員会の最終コメント

序論

12.委員会は、定期報告作成のための委員会のガイドラインに従って作成された、第4回・5回報告の質と期限どおりの提出について、締約国を評価する。委員会は、会期前作業部会の質問事項に対する書面回答及び締約国での近年の進展についての追加的情報を提供した包括的な口頭報告について、締約国に感謝の意を表明する。

13.委員会は、男女共同参画局長を首席代表とした代表団が派遣されたことについて締約国を評価する。委員会は、代表団と委員との間で行われた率直かつ建設的な対話に感謝する。

14.委員会は、締約国が、北京行動綱領の12重大問題領域に基づく男女共同参画基本計画を策定するにあたり、第23回国連特別総会「女性2000年会議:21世紀に向けての男女平等・開発・平和」の成果文書を考慮に入れたことに満足をもって留意する。

肯定的側面

15.委員会は、締約国が第2回・3回報告の審議以来、男女間の平等の促進に大きな成果をあげたこと、特に、1999年6月の男女共同参画社会基本法の制定及び男女共同参画政策の目標を明示した男女共同参画基本計画が2000年12月に策定されたことを祝福する。委員会はまた、基本法に基づき、すべての都道府県で計画が策定され実施されていることを称賛するとともに、まだ計画を策定していない市町村が計画策定を奨励されていることに留意する。

16.委員会は、募集から退職に至るまでの女性への差別的取扱いを禁止し、職場におけるセクシュアル・ハラスメントを防止するための配慮を事業主に義務づける「雇用機会均等法」の改正、育児休業取得を理由とする不利益取扱いを禁止する「育児・介護休業法」の2001年の改正、保護命令を規定した2001年の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の制定、ストーカー行為への処罰が定められた2000年の「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の制定等、締約国がさまざまな分野で行った法改正に称賛をもって留意する。

17.委員会は、男女共同参画施策の企画立案と総合調整を任務として、男女共同参画局が内閣府に設置されるとともに、それらの施策の実施状況の監視や、政府の施策が及ぼす影響の調査を行う、男女共同参画担当大臣である内閣官房長官を議長とし、閣僚と内閣総理大臣が任命した民間有識者から構成される男女共同参画会議が設置され、国内本部機構が強化されたことを歓迎する。

18.委員会は、委員会の前回の最終コメントで提言されたとおり、締約国が報告作成において女性NGOと協力を行ったことを評価するとともに、そのパートナーシップを引き続き強化するとの締約国の姿勢を歓迎する。

19.委員会は、締約国が、世界の様々な地域の開発途上国に対し、「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」の下、過去10年間にわたり政府開発援助の約10%を女性の教育、保健、経済・社会活動への参加に配分していることを評価する。

20.委員会は、締約国が、委員会の会期に関する条約の20条1の改正を受諾したことに称賛をもって留意する。

主要関心事項及び勧告

21.委員会は、憲法が両性の平等を規定してはいるが、国内法に差別の明確な定義が含まれていないことに懸念を表明する。

22.委員会は、条約の第1条に沿った、直接及び間接差別を含む、女性に対する差別の定義が国内法にとりこまれることを勧告する。委員会は、また、条約についての、とりわけ間接差別の意味と範囲についての、特に国会議員、司法関係者、法曹一般を対象とした、意識啓発のためのキャンペーンを行うことを勧告する。

23.委員会は、締約国が、長年の固定的役割分担意識が男女間の平等を達成するための大きな障害と認識していることを評価し、この点についての定期的な世論調査に基づく取組に留意する一方、日本において、家庭や社会における男女の役割と責任に関し、根深く、硬直的な固定観念が持続し、労働市場における女性の状況、教育の選択、政治・公的分野への参画の低さに反映されていることに引き続き懸念を有する。

24.委員会は、女性と男性の役割についての従来の役割分担意識に基づく態度を変えるために、締約国が人権教育、男女平等についての教育等の教育システムにおける包括的なプログラムを策定、実施すること、また、条約についての情報や男女共同参画に対する政府の姿勢を広めることを勧告する。委員会は、締約国が調査や世論調査を性別のみならず、年齢別にも行い、その結果に基づき、子育てを母親と父親双方の社会的責任とする考え方を促進することを目指す取組を拡大することを勧告する。委員会は、意識啓発キャンペーンが強化されること、メディアが女性のポジティブなイメージや私的、公的領域における男女の平等な地位と責任を伝えるよう奨励されることを勧告する。

25.委員会は、締約国による、女性に対する暴力を扱う法律やその他の施策を認識する一方で、女性や女児に対する暴力の横行及び既存の公的機関に援助を求めることに女性にためらいがあることについて懸念を有する。委員会は、「配偶者暴力防止法」が、現在のところ、身体的暴力以外の形態の暴力を対象としていないことに懸念を有する。委員会は、また、強姦に対する罰則が比較的寛大であること、近親姦が刑法において明確に犯罪と定義されておらず、様々な処罰規定の下で間接的に扱われていることに懸念を有する。委員会は、更に、ドメスティック・バイオレンスを受けており、かつ入国管理上の地位が配偶者との同居に依存している外国人女性の特有な状況に懸念を有する。委員会は、強制退去への恐れが、そうした女性が援助を求めたり、別居や離婚といった措置を講じる妨げとなり得ることに懸念を有する。いわゆる「従軍慰安婦」の問題に関しては、第2回・3回報告の審議以前、以後にとられた措置について、締約国が提供した包括的な情報を評価しつつ、委員会は、この問題についての懸念が継続していることに留意する。

26.委員会は、ドメスティック・バイオレンスを含む女性に対する暴力の問題に、女性に対する人権の侵害として取り組む努力を強化することを締約国に要請する。特に、委員会は、配偶者暴力防止法を拡大し、様々な形態の暴力を含めること、強姦罪の罰則を強化すること、近親姦を個別の犯罪として刑法に含めること、委員会の一般勧告19に基づき、暴力を防止し、被害者に保護、支援、その他のサービスを提供し、犯罪者を処罰するための政策を実施することを、締約国に要請する。委員会は、ドメスティック・バイオレンスを受けて別居している外国人妻の在留許可の取り消しは、その措置が当該女性に与える影響について十分に評価した後でのみなされることを勧告する。委員会は、締約国がいわゆる「従軍慰安婦」問題を最終的に解決するための方策を見出す努力を行うことを勧告する。

27.女性・女児のトラフィッキングに関して、アジア・太平洋地域における、送出国や中継国の捜査当局や出入国管理局との防止、捜査面での協力など、締約国が行っている取組を認識しつつ、委員会は、この問題の広がりについての情報が不十分であること、現行法下では加害者の処罰が寛大すぎることに懸念を有する。

28.委員会は、締約国が女性・女児のトラフィッキングと戦うための取組を強化することを勧告する。委員会は、締約国がこの問題に対処し、加害者への適切な処罰を確保するための包括的な戦略を策定することを目的として、体系的にこの事象を監視し、被害者の年齢、出身国を示す詳細なデータを収集することを要請する。委員会は、締約国が次回の報告に女性・女児のトラフィッキング及びそれに関連してとられた措置についての包括的な情報、データを提供することを要請する。

29.委員会は、報告に日本のマイノリティ女性の状況についての情報が欠如していることに懸念を表明する。委員会は、これらの女性グループが教育、雇用、健康、社会福祉、暴力被害の面で、彼らの共同体内も含め、直面している複合的な形態の差別や周縁化に懸念を表明する。

30.委員会は、締約国に、次回の報告に、日本のマイノリティ女性の状況に関するデータを含む包括的な情報、特に彼らの教育、雇用、健康状況や暴力被害についての情報を提供することを要請する。

31.委員会は、国の審議会等における女性の登用拡大のための指針及び社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするという数値目標が設定されたことを歓迎する一方、国会、地方議会、司法、外交官などのハイレベルの、選挙で選ばれる機関において、また市長、検察官、警察官としての女性の参加が低いことについて懸念を有する。

32.委員会は、締約国が、公的活動のあらゆる分野、特にハイレベルの政策決定過程に女性が参画する権利を実現するため、なかでも条約の第4条1に基づく暫定的特別措置の実施を通じ、政治的・公的活動における女性の参加を拡大するための更なる取組を行うことを勧告する。委員会は、締約国が、将来の女性指導者への訓練プログラムを支援すること、男女共同参画実現のためには意志決定過程への女性の参画が重要であることを啓発するキャンペーンを実施することを要請する。

33.委員会は、主に職種の違いやコース別雇用管理制度に表われるような水平的・垂直的な雇用分離から生じている男女間の賃金格差の存在、及び雇用機会均等法に関連する政府のガイドラインに示されている間接差別の慣行と影響についての認識の不足に懸念を有する。委員会は、更に、パートタイム労働者や派遣労働者に占める女性の割合が高く、彼らの賃金が一般労働者より低いことに懸念を有する。委員会は、主に女性が直面している個人・家庭生活と職業・公的な責任との調和における困難に深い懸念を有する。

34.委員会は、締約国が雇用機会均等法に関連するガイドラインを改正すること、労働市場における男女の事実上の機会均等の実現を促進する努力を特に条約第4条1に沿った暫定的特別措置を用いて増すことを要請する。委員会は、特に教育、訓練、効果的な強制メカニズム、進捗状況の体系的な監視を通じて、水平的・垂直的な職務分離を撤廃するための取組がなされることを勧告する。委員会は、家族的責任と職業上の責任の両立を可能にする施策が強化されること、家庭内の仕事の男女間での平等な分担が促進されること、家庭や労働市場における女性の役割についての固定観念に基づく期待が変わることが奨励されることを勧告する。

35.委員会は、民法が、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する。委員会は、また、戸籍、相続権に関する法や行政措置における非嫡出子に対する差別及びその結果としての女性への重大な影響に懸念を有する。

36.委員会は、民法に依然として存在する差別的な法規定を廃止し、法や行政上の措置を条約に沿ったものとすることを要請する。

37.政府が2002年3月に人権擁護法案を国会に提出したことに満足をもって留意しつつ、委員会は、法務省の下に設置されるとされている人権委員会の独立性について懸念を有する。

38.委員会は、人権擁護法案で提案されている人権委員会が、独立機関として、女性の人権に適切に対処することが確保されるよう、国内人権機構の地位に関する原則(国連総会決議1993年12月20日48/134附属文書、いわゆる「パリ原則」)に基づいて設置されることを勧告する。

39.第5回報告で締約国が表明している懸念に留意しつつ、委員会は、締約国が条約の選択議定書の批准の検討を継続することを推奨する。委員会は、選択議定書の提供するメカニズムが司法の独立を強化し、司法が女性に対する差別を理解する上での助けとなると確信している。

40.委員会は、締約国が、2006年が期限の次回定期報告において、この最終コメントで提起された個々の問題に対応することを要請する。委員会は、また、締約国が、性別、年齢別の包括的なデータを収集、分析し、次回報告に含めることを要請する。委員会は、また、同報告で、条約の実施においてとられた法制度、政策、プログラムの成果や影響についての情報を明らかに示すことを要請する。

41.委員会は、一般の人々や、特に行政官、公務員、政治家に、法律上及び事実上の男女平等を保障するためにとられる措置とその分野でとられるべき追加措置について知らしめるため、この最終コメントの内容が日本において広く周知されるよう要請する。委員会は、また、締約国が、条約、選択議定書、委員会の一般勧告、北京宣言及び行動綱領、第23回国連特別総会「女性2000年会議:21世紀に向けての男女平等・開発・平和」の成果を、特に女性団体や人権機関に対し、引き続き広く広報することを要請する。

42.関連の国連会議、サミット、特別総会(例えば、国連人口開発特別総会、国連こども特別総会、人種主義、人種差別、外国人排斥およびそれに関連する世界会議、第2回高齢者問題世界会議など)により採択された宣言、計画、行動綱領のジェンダーの側面を考慮にいれつつ、委員会は、締約国が、次回の報告に、条約の関連条項に関するそれらの文書の実施についての情報を含めることを要請する。


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