03/08/20 第23回社会保障審議会年金部会議事録              第23回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成15年8月20日 第23回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成15年8月20日(木) 10:00〜12:05 場所  :霞ヶ関ビル33階 東海大学校友会館「阿蘇の間」 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大山委員、岡本委員、      小島委員、近藤委員、杉山委員、堀委員、矢野委員、山口委員、山崎委員 ○高橋総務課長  渡辺委員と井手委員が、まだお見えになっていませんが、定刻でございますので、第 23回「社会保障審議会年金部会」を開会いたしたいと思います。  議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  座席図、議事次第のほか、次のとおりであります。  資料1「第23回年金部会委員提出資料」、資料2−1「年金制度改正に係るこれまで の意見の整理(論点の構成)」、これは前回も出しているものでございます。内容とし ては、順番を多少入れ替えております。  資料2−2「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理」、これは前回提出したもの を各委員から御意見をいただきまして修正をいたしております。資料3「審議整理メモ (事務局整理)」を提出しております。資料4「欠席委員からの意見書」、これは本日 御欠席の委員からの総括的な議論についての意見書でございます。  それから、前回までの配布資料及び議事録をファイルにまとめて机の上に置かせてい ただいておりますので、適宜御参照を願いたいと思います。  現在の委員の出欠の状況でございますが、本日御欠席と伺っておりますのは、大沢委 員、翁委員、若杉委員でございます。御都合により御欠席ということでございます。そ れから、渡辺委員と井手委員はまだお見えになっていませんが、現在、御出席いただい ております委員の皆様方は定足数を超えておりますので、会議は成立しております。  それでは、以後の進行につきまして、部会長よろしくお願いします。 ○宮島部会長  こういう時期にこういう部会を開くのは異例でございますけれども、御承知のような 議論を詰める必要がございます。本日、お集まりいただきましてどうもありがとうござ いました。  前回申し上げましたように、ひととおり各論についての議論もひと当たり終わってお りますので、部会として9月に向けて今後意見書をとりまとめていくということで、今 回から事実上意見書をとりまとめる最終段階に入るということになっておりますので、 今回と次回にわたりまして、全体の意見書についてどのようにまとめていくかというこ とについて御議論をいただくことにいたします。  先ほど総務課長から説明がありましたように、本日配布された資料としては、前回お 示した構成案、勿論ある程度修正しておりますけれども、これまでに出された意見を整 理したものと、その中で幾つか重複しているもの、あるいは同趣旨の意見はとりまとめ まして、全体としてのメモを事務局の方に作成してもらっています。  私としては、構成について注文を付けておりますけれども、内容については私は特に 申し上げておりませんので、そういう意味では、私も委員の方々も全く状況は同じでご ざいます。  前にも申し上げましたように、起草委員会を設けるという形よりは、なるべく皆さん と議論を交わしながら意見書をまとめていきたいという気持ちがございますので、こう いう形を取らせていただきました。  本日は、主として「審議整理メモ(事務局整理)」を材料にしながら、総括的に議論 を進めていきたいと思います。  ただ、幾つかこの間に意見書が提出されますので、本日の議事の進行といたしまして は、まず初めに、個別問題で残った意見書の御説明を委員の方に簡潔にしていただいた 後、この審議整理メモを中心にいたしまして、事務局の方から、その概要の説明をして いただきます。その後、本日所用で御欠席になりました委員の方々から、既に審議整理 メモにつきまして御意見をいただいておりますので、その紹介を受けた後、なるべく時 間を多く割きまして、本日、御出席の委員の方々から自由討議の形で忌憚のない御意見 を伺いたいと考えております。  できれば11時半ごろを目途に5分ほど休憩を取りたいと思っております。  それでは、まず資料の1でございますけれども、全体に関わる問題もございますけれ ども、これまでの個別の議論のところで残っていた御意見を、大沢委員、小島委員、杉 山委員からいただいております。今日は大沢委員が御欠席でございますので、資料1に 基づきまして、小島委員、杉山委員、もし補足的な御説明をいただけるのであれば、ま ずそれをいただきたいと思いますが、小島委員いかがでございましょうか。 ○小島委員  それでは簡単に説明いたします。8月1日付の意見書を提出しております。  3つの項目のうちの1つは、年金積立金の運用の在り方ということで、この内容につ いては、前回の7月24日の部会での発言を改めて文章化したところであります。  2つ目は、被用者年金の一元化の推進ということで、これまで余り議論をされており ませんけれども、公的年金の見直しという中には、やはりこの視点も必要だろうという ことで付け加えてございます。  3つ目は、年金制度運営に被保険者が直接参加できる仕組みをつくるべきだというこ とで、加入者あるいは国民が年金制度を自らが支えているという意識を高めるために も、制度運営への参加の道を開くことが必要であろうという記載をしたところでありま す。  積立金の運用について簡単に御説明しますと、やはり基本的な考え方として、賦課方 式の年金制度でありますので、それほど積立金を持つ必要はないということが基本的な 考え方であります。そういう視点から、今、積立金は約150 兆円ありますけれども、そ の運用についてどう考えるかということであります。将来は減らしていいと思っており ますが、その間の運用については、市場運用を行うということであれば、安全運用に徹 するべきだということで、株式運用の枠を減らしていくべきだと考えております。そし て、市場運用枠を減らすという視点からも積立金の還元融資を拡大する、あるいは新し い制度をつくるということで、次世代育成支援、あるいは被保険者への還元融資を行う べきで、若い世代に対しては積立金からの奨学金、低利の融資という形で行うべきだと 考えます。また、今あります住宅融資の継続、更には自己啓発費用への融資といったよ うな、新しい融資制度をつくり、さらには、年金積立金を活用した年金受給者に対する リバース・モーゲージ制度も検討すべきではないかと思っております。簡単に御説明い たしました。 ○宮島部会長  ありがとうございました。杉山委員いかがでしょうか。 ○杉山委員  簡単に意見書のポイントだけ説明したいと思います。  前段の3つの「・」は、前提の意見を述べたものですが、そこで私が申し上げたかっ たのは、社会保障の給付費に占める高齢者関係給付費と、児童家庭関係給付費の比較が 平成12年度で出ていますが、高齢者関係が68.5%に対し、児童家庭は3.5 %ということ で、こういった状況を見ましても、やはりどうしても児童家庭に対しての施策がやや後 れているのではないかという気がしております。  年金の中でも次世代育成支援を行うということは問題がないと思います。むしろこう いう現状を見た中では必要ではないかと思っております。  案として2つ出させていただいておりますが、女性の被保険者を失わないために、育 休中の保険料免除、あるいは就業を継続するも時短等で年金保障が不利にならないよう に、育児期間中の標準報酬は平均賃金で保険料納付が行われたものとして扱うといった 配慮、一旦は離職した後も、例えば3年以内に再就職をした場合に関しての配慮、第1 号被保険者への育児期間中は保険料免除等の配慮を行ってはどうかということです。  もう一点が次世代育成支援の部分なのですけれども、再三申し上げているように、公 的年金等控除の見直しを行って、その増収分をすべてとは申しませんので、子育て支 援、次世代育成支援の方に一部充てていただければということ。  それから、奨学金の問題ですけれども、前回御説明いただいた資料の中で、日本育英 会とか、国民生活金融公庫の事業の見直しが行われている現状ではありますが、やはり ニーズとしては、まだ必要ではないかと思っております。貸し倒れがない確実な仕組み について検討をして、例えば大学に貸し付けるとか、そういった形でもう少し検討を進 めていっていただければと思っております。奨学金に限らず、海外留学であったり、ビ ジネスを興してみたいとか、若者にはさまざまな夢があるわけで、そういったものを奨 学金の一部を貸し付けることで援助していくことがもしできるのであれば、これは私の アイデアの限りなのですけれども、若者の年金への親しみやすさも生まれてくるのでは ないのかなと思っております。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。ただいまの御意見は、具体的な形ではないと思いますけれ ども、審議整理メモの方には、抽象的な書き方がしてあるかもしれませんが、いろんな 意見として取り上げられていますので、そこのところでもう一度御議論をいただくとい うことにしたいと思います。  それでは、ただいまの御意見について何か委員の方から御意見、御議論はございます でしょうか。  それでは、先に進めさせていただきまして、先ほど申しましたように、本日の主要な 議題でございます審議整理メモ、これはたたき台としての事務局整理メモでございます ので、これにつきまして、事務局から30〜40分概要を御説明いただいた後、その中身に ついて議論をしていきたいというふうに思います。それでは、事務局からお願いいたし ます。 ○高橋総務課長  それでは、資料2−1「年金制度改正に係るこれまでの意見の整理(論点の構成)」 を横に置いていただきまして、この論点構成に従って、今までに出されております意見 の整理を行ったものが、資料3「審議整理メモ」でございます。この2−1に沿って、 資料3で御説明申し上げたいと思います。  資料3の方の1枚目をお開き願いたいと思います。資料2−1の方は1ページでござ います。まず「1.年金制度改正の基本的な視点」ということで、次の年金制度改正の 基本的な視点をどう考えるかという点につきましては、考え方を5点ほど挙げておりま す。現役世代、とりわけ若年層の年金制度に対する不信感、不安感の払拭を図ることを 基本的な視点とするべきだということであります。それから「2.公的年金制度の基本 的な考え方・体系」で、この点につきましては、前回でも説明していますが、まず1つ は、給付の設計の仕方という面から分けておりますけれども、現行の基礎年金と報酬比 例年金、この2階建ての方式を維持するという考え方です。もう一つは、現行の体系を 大きく再編成して報酬比例年金に一本化してはどうかという意見です。2階部分廃止と いうような御意見は、本審議会では出ていないということであります。  次に、1階部分の基礎年金の体系についてはどう考えるかということですが、この点 につきましては、社会保険方式とするべきであるという意見と、税方式が適当であると いう意見と2つに分かれております。  事務局整理と最初に書いてございますが、意見の中では「〜という意見」と、「〜す べき」、「〜が必要」と言い切っている部分と分けております。これは私どもなりに意 見全体の様子を見て、言い切っているものは、こちらの意見の委員が多少多そうかと思 われるもの、もう一方は、少数意見とまでは申しませんけれども、全体では支配的な意 見にはなっていないと思われるものということを、私どもの方から見て色分けをしてい るということでございます。  現行の基礎年金及び報酬比例年金の体系の維持ということに関しましては、基礎年金 は社会保険方式がいいのではないかという意見が比較的多いのかなということでありま す。ただ、その場合には、現行制度の社会保険方式を維持するにしても、現行の基礎年 金拠出金そのものの在り方として、幾つかの論点がありました。厚生年金については1 階部分と2階部分を分離して考えてはどうか、また、サラリーマンの中で基礎年金拠出 金を応能負担化して報酬額に応じた額とすべきではないかという御意見もありました が、そのように分けて見るということ自体が、そもそも基礎年金の考え方から乖離して いるということで、全国民で負担すると決めたのだから、そういう観点から負担を考え るべきではないかという御意見が出ております。  もう一方は、基礎年金の税方式化ということでございますが、この意見については、 将来の方向ということで次の改正では国庫負担を2分の1に引き上げる方向ということ は一致しているのではないかと受け止めております。  報酬比例年金への一本化ということにつきましては、労働力の流動化等の変化から、 サラリーマングループと自営業者グループを截然と2つに分けるのはこれからの時代に は無理があるのではないかという御意見から、報酬比例一本化を主張されたという意見 がございます。ただ、その場合には最低保障年金を組み合わせるということです。導入 の前提問題として、自営業者の所得把握や、無業、無所得の方々の問題をどうするか、 検討すべき課題もかなりあるという御意見は出ております。  次に、給付と負担の在り方というテーマを掲げておりますけれども、まず、給付水準 そのものについては、見直しを行うべき、あるいはほかの御意見としては一定水準確 保、あるいは現行水準の維持という御意見が出ております。  3ページにまいりますが、保険料の引上げにつきましては、現在の保険料引き上げの 凍結は早急に解除するべきだという御意見は全体でほぼ一致しているのではないかと思 います。保険料の上限につきましては、20%程度が最終水準ではないか、あるいはそこ まで上げるのは無理があるのではないかという御意見に分かれております。  それから給付と負担の見直しの方法につきましては、保険料固定方式の導入が適当と する意見が多いのではないかと見ております。ただ一方、4ページにまいりますが、受 給額が裁定時まで分からないということから、保険料固定方式は若い世代にとっては難 しいのではないかという御意見もいただいております。  それから、保険料固定方式の場合に、給付面ではマクロ経済スライドという方法を私 どもとして提案をいたしておりますが、そのやり方については、おおむね賃金や労働力 人口といった国全体の負担能力(支える力)の伸びに見合ったスライドを実施するとい うことが適当ではないかという御意見が多いと考えております。  具体的な方法としては、実績準拠法と将来見通し平均化法という2つの方式を「方向 性と論点」の中で整理をいたしておりますが、やや実績準拠法の支持が多いというふう に見ておりますけれども、早目の調整もかなり強い御意見としていただいております。  それから年金改定率の下限及び既裁定年金の給付水準の調整につきましては、物価下 限型、あるいは名目年金額下限型と2つの方式を提案しておりますけれども、名目年金 額下限型の方がどちらかというといいのではないかという意見が多いように見受けられ ます。さらには、そういった下限を設けずに、更に踏み込んでいくべきではないかとい うような意見も出ております。  それから基礎年金の給付水準の調整につきましては、意見が分かれているというとこ ろでございます。自動調整を行った場合の給付水準の下限ということでございますけれ ども、ここは給付水準の下限を設けるべきというような御意見が多かったように見てお ります。通常の年金のスライド制の在り方については、既裁定者、現在、これは物価ス ライドでございますけれども、賃金下落率が物価下落率よりも大きいような状況では、 現在のスライドとは違うやり方を考えるべきではないか、いずれか低い方に合わせてス ライドするというようなやり方もあるのではないかというような御意見が出ておりま す。それとは反対に、現役世代とのバランス、給付水準のバランスを考えて調整、ある いは可処分所得スライドで適用すべきで、既裁定についても、もう一回可処分所得スラ イドを復活させるべきというような御意見が出ております。  次に、高所得者に対する給付の在り方と年金課税につきましては、大体年金課税で対 処していくべきであるというような御意見、それから年金課税のうち、給付面の公的年 金等控除については縮小するべきであるというような意見が比較的多かったと受け止め ております。  積立金の役割につきましては、早期に積立金を取り崩すことで、当面は保険料を低く することはできるけれども、高齢化のピークやその後における保険料水準を十分考える 必要があるというような御意見が出ております。それに対しましては、ある程度支払い に支障のない程度まで抑制することが適当で、それまでは崩せるのではないかという意 見が出ておりますが、この辺はどういう時間的な目標でそれぞれの御意見が出ている か、ここはまだ不完全で、十分な議論ができていないのではないかと見受けられます。  経済前提については、楽観的なものではなく少し厳し目な前提を置くという御意見、 あるいは余り厳しくて悲観的な前提ばかりではだめではないかという御意見があり、こ の辺は一致を見ておりません。  それから国庫負担の問題につきましては、3分の1から2分の1への引き上げの必要 性というのが強く出されております。財源論につきましては、かなり意見が分かれてい るという状況でありますが、国庫負担の2分の1への引上げの必要性については、5月 の末に審議会で一回確認をいただいておりますので、余り異論はないところであろうか と思われます。  制度の理解を深めるための仕組みという論点でございますが、整理上、掲載場所はこ こでいいのかということについて御意見をいただきたいと思いますが、とりあえずの整 理ということでございますので、その辺は御理解をいただきまして、制度の理解を深め るための仕組みということで、年金に関する情報の提供については、今後とも確実にや っていくべきという御意見でございます。ポイント制につきましては、ここでは年金制 度を理解しやすい仕組みとして導入を検討すべきということで整理しておりますが、も う少しよく考えた方がいいという意見が若干出ております。  支え手を増やす方策等につきましては、まずパート、短時間労働者等に対する厚生年 金の適用につきましては、基本的な方向としては、働き方の多様化への対応などの点か ら、短時間労働者への適用拡大するべきだという御意見が基本方向ではないかと受け止 めております。ただ、短時間労働者の適用拡大について、雇用の影響や、特定の業種へ の影響など、いろいろな点から見て慎重に検討を進めていくべきだという御意見が出て おります。その場合の適用基準ということでございますけれども、おおむね時間制とい う意見と、収入を組み合わせるべきという意見がございまして、どちらが多いのかよく わかりませんけれども、適用基準については時間制を基本的に収入要件に組み合わせる かどうかという点がポイントだろうと思われます。適用後の給付設計の問題でございま すが、短時間労働者の給付と負担のところで、私ども幾つかの案を提案しておりました が、最終的には、標準報酬を現在のまま適用するというのは、やはり無理があると思わ れます。標準報酬の下限を下げて、つまり9万円よりも低いところで適用して、給付の 方はどうするかというと、3号を付けるのはやはり無理があるなというのは全体のほぼ 一致した御意見であろうかと思われます。その場合に、本人だけの給付にするとして、 本人の給付を現行の体系を維持するか、あるいは本人の給付まで調整するか、そこで幾 つか意見が分かれているところであろうと見ております。  在職老齢年金制度の見直しにつきましては、おおむねA案、(一律2割支給停止の廃 止案)が適当ではないかという意見が比較的多かったとように見受けられます。  繰下げ受給につきましては、かなり意見が分かれたということでございます。  支給開始年齢につきましては、まだ支給開始年齢の引上げ途上にあるということであ りまして、当面はやるべきではないというような御意見が多かったと見ております。  そのほか、次世代育成支援につきましては基本方向としてはいいけれども、具体策に ついてはいろいろな御意見をいただいております。次世代育成支援については、非常に 多岐にわたっておりますので、逐一申し上げませんが、育児休暇期間中の措置、それか ら育児休暇の取得者以外の方々、それから1号被保険者の支援、3号への支援、こうい ったものについて種々意見が出されております。年金資金を活用した教育資金貸付制度 につきましては、賛成論と反対論がかなりに分かれております。  派遣労働者・失業者の問題についての論点です。派遣労働者につきましては、待機期 間における厚生年金任意適用については、求職中の失業者との区別がかなり難しいので はないかという御意見がかなりあったように受け止めております。それから、失業期間 中につきましては、無理ではないかという御意見もちょうだいしておりますが、ただ、 継続加入制度を創設して、何とか適用を考えたらどうかという御意見も出ているという ことでございます。  それから障害年金につきましては、これは2つのポイントがございますが、1つは障 害者の雇用の促進という観点からということでございますけれども、障害年金をもらい ながら働いている方が65歳になって老齢年金をもらうようになると、現行制度では老齢 年金と障害年金の選択制になっているわけでありますが、それでは年金額が減ってしま うということから、障害基礎年金プラス、老齢厚生年金という組み合わせを考えるべき であるとの意見が出されております。年金を受けていない障害者につきましては、基本 的には福祉措置での対応を考えるべきだと、あるいは福祉施策と年金制度の双方の組み 合わせによる所得保障制度を導入すべきとの御意見が多数あったと思います。  次に、女性と年金についてです。  まず、基本的な考え方として「女性のライフコースと世帯モデル」ということで、こ こは一般論でございますので、そんなに大きな意見の隔たりがないと見ておりますが、 女性のいろいろなライフコースの多様化などを踏まえて、中立的な制度の構築というこ とが基本路線ということでございます。それから、モデルや何かの見方につきまして は、現在、基本にしております片働き世帯のモデルだけではなくて、多様なモデルも見 ながら検討を進めるべきということがポイントでございます。  第3号被保険者制度につきましては「年金権分割案」、「負担調整案」、「給付調整 案」、「第3号被保険者縮小案」の4案につきまして、それぞれ賛否両論あるというこ とでございまして、ここは一致が見られない部分であります。  遺族年金のポイントは3つ程ございます。まず、高齢期の遺族配偶者に対する年金給 付につきましては、私ども2つ提案いたしております。本人の老齢厚生年金の全額支給 を優先するというような方法を考えたらどうかということにつきましては、それほど異 論はなかったように受け止めております。ただ、御主人と御本人の老齢分を足し合わ せ、その何分の1かを支給するというものについては、いろんな課題が出てくるわけで ございますけれども、ここについては賛否両論いろいろあったということでございま す。  それから若齢期の妻等に対する年金給付につきましては、子のいる若齢期の妻、子の いない若齢期の妻につきまして、現行制度の維持と、それから終身ではなくて、有期の 給付を考えたらどうかというような意見に分かれております。なお、子を有しない中高 齢期の妻については、遺族年金の必要性があるという意見で整理されておりますが、こ れについても有期給付としてはどうかというような御意見が出されております。それか ら、支給要件における男女差につきましては、現行制度の男女差はやむを得ないという ような意見が出ております。この点につきましても、後から御紹介いたしますが、大沢 委員の方から異論が出されております。850 万円の年収の生計維持要件につきまして は、高過ぎるので見直すべきではないかとの御意見を出されております。  離婚時の年金分割につきましては、おおむねの方向としては離婚した妻自身の年金に よる生活保障は現状では不十分で、何とか老齢厚生年金の分割を考えたらどうかという 意見が多かったのではないかというように受け止めております。では、具体的な仕組み としてどうするかということでございますが、幾つかポイントがございまして、受給権 が発生していない時点での離婚については認めるかどうか。合意による分割なのか、あ るいは請求権による分割までは認めていくのかという点については、これまでの御議論 では合意に基づく分割の導入ぐらいまでかなというような方向ではないかと受け止めて おります。  国民年金の徴収の問題につきましては、基本的にはきちんと対処せよということで、 御意見が一致しているという部分であります。「被用者年金の一元化」につきまして は、被用者年金の統合を早期に実施すべきとの意見が出されております。これについて は特段反論も出されていないという状況でございます。  福祉施設などにつきましては、見直しを行うべき、あるいは福祉施設以外の年金住宅 融資、大規模年金保養基地については早期に廃止ということであります。それから、新 たな福祉還元施策については、もう少し慎重であるべきだというような御意見が出され ております。  企業年金につきましては、左側に挙げております5つの論点が検討項目として挙がっ ておりますが、基本的な方向としては、自助共助に対する政策上のインセンティブとし て税制上の支援措置など、今後ともやっていくべきだという御意見が多かったというこ とであります。  厚生年金基金につきましては、免除保険料率の凍結の解除、それから予定利率の引下 げ分、死亡率の改善分などを免除保険料率に反映させるべきだという御意見が多かった とうに受け止めております。それから、予定利率の変更や死亡率の改善等、基金の責任 とは言えない過去期間に係る負担の増分については、一定の調整をするべきというご意 見、あるいは、代行割れ基金については、基本的には自己責任が基本ではありますけれ ども、解散時の分割や納付額の特例を行うべきとの御意見に対して反論は出ていないと いうことでございますけれども、そういう御意見が多かったと受け止めております。 「確定給付企業年金制度」につきましては、ポータビリティーを向上させるという方向 だろうということでありますが、支払い保証につきましては、御意見は分かれていると いう状況でございます。その他「確定拠出年金制度」「企業年金等に係るその他の論点 」、幾つか御意見が出されております。  最後に「年金改革と他の社会保障制度改革」につきましては、総合的にはいろいろな 観点から行うようにということですけれども、国民負担率につきましては、上昇を極力 抑制するという観点を念頭に置くことは必要という御意見が出されております。  後で御紹介いたしますが、それに対するもう一つの反論ということではないと思いま すけれども、ポイントとして国民負担率の上昇を抑制しても、老後の所得保障が貧弱に なれば、結局は私的負担に回るということもあって、私的負担の方は、むしろ現役の負 担が重くなりかねないことに十分注意するべきだというような御意見が出ております。 以上でございます。 ○宮島部会長  今、総務課長の方から御説明がありましたけれども、これまでの御意見を踏まえて、 事務局としてのある程度の濃淡を付けた形でまとめたものであります。あるいは、これ まで出た意見は、必ずしもこの中にまだ盛り込まれていないものもございますし、こう いった整理の仕方そのものが必要なのかというのが、これから恐らく一番大きな議論に なると思います。  皆様に御議論いただく前に、本日御欠席の委員の方の意見書が、一斉に出ております ので、その御紹介をまずいただいてからということにしたいと思いますので、これも事 務局の方からお願いいたします。資料としては、資料の4です。 ○高橋総務課長  それでは、資料の4につきまして御説明申し上げます。大沢委員、翁委員、若杉委員 から資料をいただいています。それから渡辺委員は、先ほど連絡がございまして、御欠 席というふうに御連絡いただいております。  大沢委員の意見書では、公的年金制度の基本的な考え方、体系につきましては、御意 見としては報酬比例年金への一本化を御支持されるということであります。理由として は雇用の流動化、多様化、複線化、こういったものは進んでおり、健康保険を見ても、 厚生年金を見ても、被用者制度というのは、全体には今の雇用の変化の中で、方向とし て縮小しているということで、雇用のこういった流動化なりを考えていくと、一本化の 方向というものは避けられないのではないかというのが御意見であります。  3号問題、年金権分割案ですが、これは審議整理に加えてくれということだろうと思 います。年金権分割案について、「賦課方式の下では、保険料拠出=年金権は等級付き 入場券のようなもので、財産権ではないことの周知を図るべき」というご意見です。こ れは、年金権を一種の財産権と考えて、提案されている仕組みや御意見に対する反論だ と思います。財産権ではないということで、御本人は等級付き入場券とおっしゃってい ますけれども、財産権ではないという御主張であります。  遺族年金でありますけれども、これは先ほど少し申し上げましたが、若齢期の妻等に 対する年金給付につきまして、子のいる若齢期の妻及び子のいない中高齢期の妻、これ につきまして、今のように終身の給付ではなくて、有期給付とするべきだというご意見 です。理由としては、支給要件における男女差、男性の場合には55歳からの支給で、女 性については年齢要件がございませんが、そういった要件の差があるので、差があるも のについては、終身給付ではなくて、有期の給付にとどめておくべきだということで す。  最後に、先ほど少し申し上げましたが、国民負担率のところで極力抑制という意見に 対して、国民負担率の上昇を抑制しても、老後の所得保障が貧弱になれば、医療・介護 の私的負担や私的な仕送りのような現役世代の負担が重くなりかねないということであ るということであります。これがまず、大沢委員の意見でございます。  翁委員の意見でございますが、基本的には体系論が、翁委員の意見の中では大きい部 分を占めております。  1.の最初の5行目の最後に書いてございますが、基本的には、次の改正の議論とし ては、あるべき年金制度体系の将来像を見据えた改革を実現するという内容の意見書に する必要があるということで、御指摘をされております。これは前回、そういった御意 見を実際にこの場でも発言されたかと記憶をいたしております。  また、現在の空洞化の問題につきましては、基礎年金の制度的な問題から発生してい るのではないかということから、これらの問題を解決するには、基礎年金の位置付けを より明確にして、財源を見直すと同時に、一本化された報酬比例年金を検討していくこ とが必要だという御意見であります。そういった中で、第3号問題なり、国庫負担の2 分の1への引上げの問題も、どういった体系に持っていくかという観点から考えるべき だという御意見であります。翁委員の御主張としては、制度体系は報酬比例年金の支持 をされているということであります。  最後のところは、体系の整理の話でありまして、この審議会の中での意見としては、 スウェーデン方式、もう一つは基礎年金を全額税方式とする体系ですが、今、議論がま とまっていないという御指摘をされています。これは、先ほど意見の整理で申し上げた とおりであります。  給付と負担の方法につきましては、次のページでございますが、保険料固定方式につ いては、世代間の公平が一層改善するという条件を満たす場合に限り賛成だという御意 見を提出されております。ここの世代間の公平が一層改善するという条件を満たすかど うか、それについては数字の提示を求められているということでございまして、世代間 の不公平がこういった方策によってどう改善するのかについて、数字を使って丁寧に説 明してほしいとおっしゃっています。  また、経済成長が必ずしも想定どおりいかなかったり、少子高齢化が更に進行した場 合には、代替率が更に低下する可能性もあるということで、保険料固定方式の難点とい うのは、そういった場合に給付調整のリスクが見えないところにあるという御指摘をし ております。ここは、下限の議論を翁委員がどのように受け止められているのかわから ないのですが、そういう御意見が出されたということであります。  若杉委員からは、総論については、まず国民の年金制度への理解・コミットメントと いうものをきちんと求めていく必要があるということで、制度の意義を国民向けに明ら かにしていくべきだということが、まず第1のポイントであります。第2のポイントは 下から4行目に書いてございますが、「2.年金制度を含め社会保障の前提は豊かな経 済であること」ということでございます。次のページにもずっと書いていらっしゃいま すが、年金制度は豊かな経済が前提であるとおっしゃっています。高い生産性によっ て、今、言われているいろいろな年金制度の問題というのは、ほとんどは日本経済の正 常化によって解決可能だという点をきちんと周知するべきだというふうに御意見をいた だいております。  各論についての幾つかの意見ということで、1つは個人単位化の年金を目指すべきだ という御意見を提出されております。そういった方向からパートの適用なり、夫婦間の 年金分割、あるいは離婚時分割、こういったものについては、今回の改正で是非実現す るべきであるというお話をなされております。  ポイント制の導入につきましては、若干の修正が必要ではないか、あるいは制度が今 かなり複雑になっているので、こういった単純なポイント制で本当にやっていけるのだ ろうかということで、情報量の少ないポイント制を導入することについて反対であると いう御意見を主張されております。  最後に企業年金に関しまして、現在、確定給付企業年金と、確定拠出年金と別々の2 つの法律の体系によって律せられていることについて、従業員一人ひとり、サラリーマ ン一人ひとりにとって甚だ不自由なので、統一的な企業年金を考えてはどうかという御 意見を提出されております。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。今、今日御欠席の3人の御意見の紹介がございましたが、 体系論から個別の問題まで全体にわたっておりますので、これから皆さんの御意見をい ただくときに、個別の論点ではなくて、恐らく総括的に今回の審議メモ全体についての 御意見が出てくるのだろうと思いますので、特に順を追ってこのテーマごとにというこ とでするのは少し難しいと思っております。今日は、できれば御出席の全員の委員の方 に、少なくとも審議メモについてのまとめ方、あるいは表現の仕方、あるいは付け加え るべき点等を含めまして、全体にわたって御意見をいただきたいと思います。途中に一 度短時間の休憩を入れるつもりでございますけれども、順番にというふうにはいきませ んが、とにかく今日は全員の方に御発言をいただきたいということだけお願いいたしま して、まず、どなたでも結構でございますので、審議整理メモにつきまして御意見があ れば順に伺っていきたいと思います。勿論、一回総括的に発言したらそれでおしまいと いうわけではございませんので、また再度機会を設けたいと思いますので、どうぞ何か ございましたら、では小島委員からどうぞ。 ○小島委員  整理メモの方の論点で挙がっている基本的な視点で5つほど出されておりますけれど も、これは去年の9月段階の総論についての論点整理でも私、発言したのですけれど も、やはり日本の公的年金としての基本的な役割でありますが、皆年金制度を維持する ということを基本的な視点に入れるべきだと思っております。そういう観点から言う と、国民年金の未加入、未納者問題というのは、極めて重要な問題だと思います。この 問題をどう解決するかということも論点の基本的な視点に入れるべきだと思っておりま す。それが1点であります。  制度の体系論でございますけれども、基礎年金の社会保険方式、あるいは税方式で論 点が分かれているところであります。税方式についての問題点として、1ページには、 税方式にした場合には、所得調査が不可欠で水準も低く抑えなければならないという批 判が出ております。これは税方式にしたからといって、必ずしもそれが前提であるとい うことではないと思いますので、これに対する私の反論としては、税方式にしたからと いって、必ずしも所得調査が不可欠、あるいは水準を抑えなければならなくなるわけで はなく、そういう制度も考えられるということです。これは税方式が必要だというとこ ろに付け加えていただければと思います。  それと、これは私どもの意見書の中では、皆年金制度の確立・維持、あるいは空洞化 の解消というためにも、基礎年金の税方式が必要だということを発言、あるいは意見書 でも出しております。そのことを税方式の必要性のところに是非加えていただければと 思っております。6ページのところに出ている意見になるかと思いますので、その辺の ことを是非盛り込んでいただければということであります。  次に、マクロ経済スライドについて老後の生活保障の柱としての役割が損なわれるお それがあるとの意見があります。私はマクロ経済スライドを導入すべきではないという ことをはっきり申し上げておりますので、その趣旨を是非書き込んでいただければと思 います。マクロ経済スライドによって、低年金の方も、基礎年金も含めて一律に支給額 が削減されることになるということで、マクロ経済スライドは導入すべきではないとい う意見は述べております。これは名前が入っている方の資料に発言要旨が入っておりま すので、それを是非審議総括メモに入れていただきたいと思います。それとの関係で言 えば、マクロ経済スライドではなくて、現在の可処分所得スライドの徹底を図るという ことで、私の意見の趣旨を書き込んでいただければと思います。  もう一点、先ほど冒頭に意見書の中で触れました、積立金の運用の在り方について、 この論点整理メモの中には、積立金の役割については触れておりますけれども、運用の 在り方については論点として挙がっていませんので、是非運用の在り方をどうするか、 市場運用をどう考えるかについても是非入れていただきたい。そこには、先ほど私が発 言した、意見書で出ている内容を是非組み込んでいただきたいと思っております。その 際には、運用の結果責任についても厳しく問うことも意見として述べておきたいと思い ます。とりあえず、以上です。 ○宮島部会長  また後で、もし何かございましたら伺うことにいたします。山口委員どうぞ。 ○山口委員  この整理していただいた視点の全体を拝見して思うことは、部分的な各項目につい て、いろいろ意見があったとか、ある一致した方向が見られたというところはわかるの ですが、これは私が委員の立場としてではなくて、例えば一労働者であるとか、一国民 の立場で見ると、非常に部分部分で大変な議論をされているのですけれども、わかりづ らいとか、難しいことを議論しているという印象が否めないわけです。それは非常に重 要なことなのですけれども、やはり今、大変な2004年の年金改革を議論しているという 中で、これがぱっと出されたときには、また年金というものが理解できない難しいもの として遠ざかってしまう気がいたします。報道では、年金不安や年金崩壊といった、部 分的な問題を非常にクローズアップしているという風潮があって、そういう中で議論を している大変さは感じるのですが、感想といたしまして、一番最初に基本的な視点とい うことでまとめられているのですが、今後国民にわかりやすい年金制度としなければい けないことも勿論重要ですけれども、翁委員がおっしゃっているように、今、公的年金 制度のあるべき姿が揺らいでいます。例えば2025年、2050年とか将来にわたっては、ど ういう形につくり直さなければいけない、どういう形につくり直そうとしているのかと いうことが、具体的により見えるようなものを発信していかなければいけないのではな いかと思います。そういう中で、まとめ方ではないですが、後の方で例えば被用者保険 の一元化であるとか、あるいは社会保障改革であるとか、各論で出てきているようなと ころをもう少しまとめて、将来どういう公的年金を中心とした社会保障制度をつくって いくのか、議論したものを国民の視点で分かりやすくまとめて、その一過程として2004 年での年金制度の姿や、その次への道筋がが見えるようなものの発信を是非していただ きたいと思います。  私自身も、いろいろ今まで申し上げましたけれども、非常に重要な制度ということは 認識しておりますし、やはり生涯にわたって働き続けて、老後も不安なく生活するため には欠くことのできない制度であるからこそ、もっと全体的な理解ができるような発信 を意見書としてまとめるべきだと思います。それが1点でございます。  あと2点ぐらい申し上げたいのですが、もう一点は女性と年金のところでございま す。これも難しいテーマということですが、もう少しまとめていく努力をしなければい けないと思います。結局、女性と年金であれだけ議論をして、今回も議論をして、でも いろいろ大変だから結局今のままではいけないと思いますし、何がそういう中で一歩で も二歩でも進んだかという印象を持てるかと言いますと、これも拡大解釈等のメディア 報道がございますけれども、年金分割については、きちんと結論を出していくべきだと 思います。  あと、各論のところですが、ポイント制が出ているのですけれども、私自身はポイン ト制の導入をすべきだということで発言してまいりました。先だっても山崎先生のおっ しゃっていたことを理解すると、ちょっと難しいのかなと思うのですが、年金給付の直 近になって、自分の給付がいくらということではなくて、若い人たちにも保険料の拠出 についてどのぐらいになったかわかるように、今の日本の公的年金制度に欠けているわ かりやすさが何かアイデアとしてないかというところで、いろいろ過去にも資料をいた だきまして議論をしたときに、例えばドイツのポイント制とか、それからスウェーデン のオレンジレターであるとか、そういう幾つかの例の中でポイント制はわかりやすいの ではないかというイメージを持ちました。そういったことで、今、いろいろ議論してい るポイント制が難しいようでありましたら、本来、若い人たちに将来的な給付が、それ ぞれの年齢時点でわかるということが目的でございますので、代替になるものがあるの であったら、それもきちんと議論しておきたいと思います。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。岡本委員どうぞ。 ○岡本委員  小島委員も少し触れられましたが、整理の体系についてどう考えるかというところ で、基礎年金については社会保険方式か、税方式かの議論があり、結論としては社会保 険方式を堅持すべきであるということでございます。  この審議会では、冒頭、2050年ごろを念頭に置きながら議論しようということでござ いましたから、足下の議論としてはともかくとして、今後の議論の1つの方向なり、1 つの論点として私は幅広く議論はしておいて、記録にとどめるべきではないかというよ うに考えておるわけであります。それは、保険料方式については、これは私も十分理解 をしておりますし、評価もしております。これは保険方式を通じて、自助、自立の精神 を体現化するということであり、また世代間扶養を明確にしようということであって、 私はこの理念は間違っていないと思います。  ただ、保険方式そのものが現在のいろんな社会情勢を見ますと、負担の問題なり、給 付の問題で、今後ますますいろいろな問題が出てくるのではないかということを私は懸 念をしておるわけでありまして、そういう意味で公的年金の財政の問題というのは、や はり全国民が支えていくというか、全国民的な課題として取り組むべき問題であるとい う視点というものは、長期的には持っておく必要があるのではなかろうかと考えており まして、そういう発想から一国民として、一市民として負担を税というものにしていく べきだと思います。  また、一国民として国の方からセーフティーネットとして年金という制度を維持して いただくという発想は大事であって、そういう意味で、私は2050年までを念頭に置くな らば、今後とも社会保険方式だけの議論でいいのかどうかについては、問題は提起して おきたいと、こんなふうに思います。 ○宮島部会長  ありがとうございました。では、矢野委員どうぞ。 ○矢野委員  全体の基本的な視点という点ですが、これについて2点意見があります。1つは、国 民年金の空洞化の解消という問題を、この視点の中に取り上げるべきだと思います。  もう一点は、年金改革と他の社会保障制度改革との関係について記されておりますけ れども、これは基本的な視点として取り上げるべきで、例えば医療、福祉、税制との関 連を含めて、給付と負担を検討すべきであるというような考え方を取り上げるべきだと 思います。これは、社会保障審議会での資料でも指摘されている点でありますので、我 々はそれをとらえて、やはり全体的な視点を持つということが必要ではないかというふ うに思います。 その他にも、幾つかあって恐縮なのですが、多数説ではないということを申し上げてお かないとまずいかと思って、気がついたところだけ申し上げたいと思います。  最初に、制度の体系についてどう考えるかというところで2点ありまして、税方式で は拠出を行わなくてもというのは、何かおかしいのではないかと思います。保険料は拠 出しないけれども、税は負担するわけでありまして、これは大いに誤解を呼ぶ表現であ って、これは決して合意をなされたものではないと思います。所得調査については、小 島委員からお話がありましたが、ニュージーランドの例にもありますとおり、所得調査 をしていないところもあるわけでありまして、どういう方法で実施するか論じられてい ない段階で、こういうことを断定的に書くのは問題があると思います。なりかねないと 言うように、少し柔和な表現にはなっているのですが、どうかということでございま す。  1階分と、2階分を分離すべきとする意見は私が申し上げた意見だと思うのですけれ ども、やはり単なる意見とすべきではなくて、年金部会としての方向性を出す最終的な 意見の中に書き込んでほしいと思っております。やはり、基本的な視点にもありますと おり、国民的な不信感とか、不安感というものを払拭するためには、これは必要である というふうに思うからでございます。  税方式とすべき点については、岡本委員の言われた点に私も同意いたしますので申し 上げませんが、給付と負担の関係で、特に気になる点がございます。保険料引上げの凍 結は早急に解除すべきであるということになっておりますが、そういう議論がなされて きたことを承知しておりますけれども、前回の改正に当たって平成11年から平成12年に かけての国会でのやりとりを調べてみましたところ、当時の大臣、あるいは年金局長の 答弁で、基礎年金の国庫負担の2分の1の引上げと、保険料凍結解除は同時であると考 えているということでございました。その前の年に、保険料の凍結解除と国庫負担の引 き上げは同時であると、年金制度改正案大綱の中にも書き込まれていたわけです。最終 的な法案の中には文章にはなっていないのですが、わずか3年ほど前の国会でそのよう な極めて明快な答弁がなされているということを十分念頭に置いて、保険料引上げの問 題は考えるべきだと思っております。  それから、保険料負担の上限については、20%というのが意見ではあるにしても、何 度も書かれている割には、ほかの意見が余り書かれていないというアンバランスを感じ るわけでして、こうなりますと20%が一人歩きしてしまうのではないかという心配をし ております。国内の経済活性化とか、国民や企業の負担感とか、国際競争の状況とか、 いろいろなことをさんざん議論いたしましたが、そういった将来見通しをすべて考え併 せた上でも、保険料については現行を極力上回らない水準、これは今まで何度も申し上 げてきた点でありますが、再度強調しておきたいと思います。  実績準拠法か平均化法かという論点ですが、実績準拠法が望ましいという結論にはな っていないと思います。私どもは、将来見通し平均化法の方がいいのではないか、早期 に調整すべきだと思っておりますので、ここの表現は改めてもらいたいと思います。  同様に、年金改定率の下限及び既裁定年金の給付水準の調整のところで、名目の年金 額を下限とすることについての意見は一致していないと思っております。やはりそこま で踏み込んで議論をすることが必要でありまして、意見として申し上げておきたいと思 うわけですが、名目年金額下限型の方が望ましいという結論にはなっていないと思って おります。  それから、年金課税の問題でございますけれども、考え方の基本を明らかにしておい た方がいいのではないかと思います。それは、拠出時、運用時非課税、給付時課税とい う原則についてここに書いておく必要があるということです。特別法人税の撤廃につい ては書かれておりますから、その考えに基づいていると思いますけれども、原則的な考 え方をここでも明らかにしておく必要があるだろうと思います。  国民年金保険料の徴収、空洞化対策で、強制徴収を確実に行うための仕組みをつくっ ていくためには、省庁間の横の連携が不可欠であると思っていまして、そういう意味で は税と社会保険料の一体徴収も検討すべきであると思っております。あと細かい点は幾 つかございますが、以上で意見とさせていただきます。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、次の方、大山委員どうぞ。 ○大山委員  2点意見を申し上げたいと思いますが、まず1点目が、年金制度改正の基本的な視点 です。そこまで議論がいっていないからその視点が出せないということなのかもしれま せんけれども、給付の問題についてどういう視点を持つのかということが明記されてい ないと思います。確かに言葉としましては、給付の仕組みや水準の見直し、あるいは負 担と給付の関係についてという言葉としては入っておりますが、その後、当然各論の部 分で給付の最低保障の問題とか、あるいは一定の給付の保障だとか、水準だとかという ことが出ておりますが、その給付につきましてどのように考えるのかという視点が入っ ていません。このことは、最初の不信感、不安感の払拭を図るという考え方でいった場 合に、給付についてどういう視点を持って年金改正を行うのかということが明記されて いなければ、とりわけ私は若い人たちに対して、将来の給付の問題ですからアピールす ることはできないと思いますので、ここの部分については、当然今まで意見を申し述べ てきましたから意見はありますけれども、基本的にその視点は明記すべきではないか と、水準の問題については明記すべきであると思います。中身については今まで意見を 言ってきておりますので省きたいと思います。  2点目としまして、基礎年金の税方式の問題でありますが、ほかの委員の方の資料な どによりましても、自営業者がこれから減少する問題などがいろいろ言われております が、基本的には当然雇用の流動化によりまして、雇用形態がいろいろ変わってくるとい う問題があると思います。そういう点では、雇われる立場にある人について、厚生年金 を適用するという基本的な考え方、いわゆる1号なのか、2号なのかということが不明 確な部分については、できるだけ雇われる者については、2号も適用していくべきだと いう視点を持ちながら、年金制度を充実させていくような方向に仕組みを変えていくべ きだと思いますが、だからといって、自営業者がいなくなるということはないわけであ りまして、そういう点では、その方たちの年金についても皆年金制度という関係はどう するのかということについて、やはり明確にするべきではないかと思います。その観点 からいった場合に、どうしても基礎年金の問題が出てきます。基礎年金について、今ま で年金制度を確立してきた中で基礎年金についての考え方があるわけでありますから、 そういう中で1号と2号という関係の中で、税金と社会保険料を含めて、国民の負担が 本当に公平なのかどうかと、それがもしかしたら年金の社会保険料の問題で、社会保険 料をたまたま納められない人とか、あるいは免除されている方だとかいうことの関係 で、2号被保険者の保険料が回されているのではないかというようなことも指摘されて いるわけでありますから、そういう点では公平という視点から見ても基礎年金について は、税方式にするという方向についてきちんと将来的に検討するべきではないかと思い ます。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは5分ほど休憩をとりまして、その後に残りの方に お願いした方がよろしいかと思います。それでは、5分ほど休憩を取ります。                   (休憩) ○宮島部会長  それでは、議事を再開いたします。あと6人残された方がいらっしゃいますので、今 日御発言をいただきたいと思います。それでは堀委員からどうぞ。 ○堀委員  何点かあります。最初は整理の仕方についてです。審議整理メモの目次についてです が、整理し切れていない部分があるのではないかという感じを受けます。例えば「3. 給付と負担の在り方」のところの「(7)積立金の役割」は、この場所でいいのかなと いう感じがします。それから「6.支え手を増やす方策等」の「(5)障害年金」がこ こでいいのかなと思います。等と書いてありますので、何でも入るのだと思いますが。 また、先ほど総務課長からコメントがありましたように「5.制度の理解を深める仕組 み」がここでいいのかなと思い、8.の次辺りかなという感じがします。もう一つは 「3.給付と負担の在り方」で、給付と負担が混同して理解しにくいので、給付と負担 を分けたらどうかと思います。ただ、今回の改正では、給付と負担が相互に密接に関連 しているので、分けにくいかなという感じもありますけれども、分けた方がわかりやす いのではないかと思います。  「2.公的年金制度の基本的な考え方・体系」のところです。ここは「制度の体系に ついてどう考えるか」ということで、2階建てにするか、1階建てにするかという論点 に絞られています。しかし、その中の文章を見るといろいろな論点が含まれていますの で、例えばこれを3つに分けて整理するという方法もあるのではないかと思います。1 点目は、サラリーマンと自営業者をどういう体系の年金制度にするかという制度体系の 問題です。2点目は、サラリーマンについて、2階建てにするか、1階建てにするかと いう給付体系の問題です。3点目は、年金の保障方式である社会保険方式と社会扶助方 式(税方式)の問題です。こういう3つの問題が一つに含まれているので、何か理解が 難しいという感じがします。  それから、このペーパーについて細かい点はいろいろ意見があるのですが、1点気が ついた点というか、特に強調したいのは、2階建て年金のうち基礎年金の位置付けが弱 いのかなという感じがします。例えば、2階建てを維持すべきと書いてあるのですが、 中身を見ると、所得比例年金、退職前の生活水準を一定程度反映した生活を送るとい う、2階分についてだけ言っていて、1階分については余り言及していません。1階分 というのは、やはり基礎的な生活を保障するという役割がありますので、そういった点 を2階建てのところ書き込むことが必要です。  報酬比例年金への一本化について、将来の方向として検討していくというのはいいの ですが、女性の就労条件が整っていないので現状では困難ではないかと思います。要す るに、現状では女性の就労期間が短い、賃金が低いため、基礎年金という定額年金を支 給する必要があるということです。そういうことで基礎年金の必要性は現在ではまだあ るのではないかという感じがします。  審議整理メモについてはこういうことですけれども、あと2点ばかり先ほど議論があ った点についてコメントしたいと思います。  1点目は、翁委員、あるいはそのほかに2〜3人賛成意見があった年金制度の将来像 を示すということです。これは大変重要なことで、また必要なことだと思います。た だ、具体的な制度の在り方についてまで、将来像に含めるのはどうかと思います。例え ば、報酬比例の1階建て制度にするのは、私個人としては将来においては必要だと思う のですが、そこまでこの意見書で踏み込むのはどうかなと思います。社会経済が変化す れば具体的な制度の在り方が変わってくるので、具体的な制度、特に意見が分かれる部 分については、私は将来像として書くべきではないのではないと思います。  2点目ですが、税方式化について何人かから御意見がありました。私は、社会保険方 式を堅持すべきだと思っているのですが、その関係でコメントがあった点について若干 意見を述べたい。1つは空洞化ということが言われていますが、前回にも意見を出した ように、基礎年金は、7,000 万人の被保険者が支えているわけです。高齢者も95%が公 的年金をもらっているということで、私は空洞化という言葉を使うのは適切ではないと 思います。ただし、第1号被保険者、自営業者の空洞化ということは言えるかと思いま す。基礎年金全体、あるいは国民年金全体の空洞化という言葉を私は使うべきではな い、事実を曲げて言うべきではないと思います。  それから、社会保険方式の維持について、私どもが言った意見、例えば税方式に所得 調査が不可欠であるという意見について、外国では所得調査がないというコメントがな されました。しかし、日本においては、税方式の金銭給付には大体所得調査が付いてい ます。そういう日本の実態、あるいは日本人の考え方というのを考慮する必要があるの ではないかと思います。それから、「税方式では保険料拠出がなくても給付が受けられ る」という表現を削除すべきだとの意見がありました。税方式の年金は税金を納めた対 価としてではなく、税金を納めなくても年金が受けられるというシステムでありますの で、こういう表現は是非とも維持していただきたいと思います。  私どもは述べられた意見についてこの他それとは違った意見があるのですが、これは それぞれの意見だということで申し上げませんが、以上述べた点を考慮していただきた いと思います。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、井手委員どうぞ。 ○井手委員  基本的な視点のところが5点ございますけれども、これを考えるに当たって、7月3 日の年金部会の方で配られました、社会保障審議会が出している、「今後の社会保障改 革の方向性に関する意見」ですとか、あるいは「経済財政運営と構造改革に関する基本 方針2003」の基本的な考え方と、どのような関係があるかということで見た場合に、前 者の方にあってこちらにない言葉として、「公平性の確保」ということがはっきりと明 示されてないような気がいたします。  先ほどからご意見がたくさん出ておりますが、国民年金の未納・未加入ということを 取り上げるべきということと、第3号被保険者の問題も含めて、世代間だけでない、世 代内の公平性の確保というものも非常に大きな問題だと思っておりまして、その世代 間、世代内の公平を図りという言葉は、どちらにも出ている基本的な考え方ということ でしたので、その辺りを基本的な視点の中に盛り込むべきではないかと思っておりま す。  そういう意味で、女性の社会進出、就労形態、ライフコースの多様化というようなこ とも、ライフコースの選び方が中立的になっているかということと公平性は大変関係あ ると思いますけれども、その部分につきましては、女性と年金の基本的な考え方で「女 性の就業の増加、ライフコースの多様化などを踏まえ、個人の多様な選択に中立的な制 度の構築を目指すべきである」と言い切ってありますので、そこのところから考えて も、選択に中立的ということと公平性の確保ということは、非常につながることでござ いますので、基本的な視点に加えてもよろしいのではないかと思っております。  今の関連で申し上げますと、先ほど山口委員がおっしゃったように、女性と年金の問 題に関しての、ここでのまとめ方が、一つひとつの案についてこういう意見があったと いうことが羅列されているという状況になっておりますけれども、基本的な考え方とい うものが、現状を踏まえてこうであるべきだから、この制度については今はまだ難しい とか、あるいは長期的にはこれを目指して、過渡的にこういう判断に立つべきだといっ たような、もう少し別の、1つの考え方に基づくまとめ方があってもいいのではないか と思うのですけれども、本日ここまで届かないのじゃないかと思って、まだ自分として の対案を用意しておりませんので、その分については再度また意見を申し上げさせてい ただきたいと思います。  それから、「社会保障改革の方向性に関する意見」の中に、自助、共助、公助のバラ ンスの取れたものとなるよう見直しを行う、ということがございまして、社会保障の言 葉の中で言うところの、自助、共助、公助ということの定義といいますか、同じ意味の ことを指して論議することが必要かと思うのですけれども、一般的に私が理解している 自助努力とか自助といったようなものは、個人的な民間の保険に入るとか、貯金を蓄え ておくといったイメージでしたが、こちらの制度の体系についてどう考えるかというと ころで、自分の老後の所得は自分の所得で確保するということが自助の考え方だという ような表現がございましたが、同じ場所で別の、山崎委員の御発言でしたか、共助をベ ースに公助と組み合わせるというような表現もあったかと思いますので、この自助、共 助、公助という言葉が何を指すかということについて、全体をまとめる上では共通の認 識が必要だと思いますし、教えていただければ、そのように理解したいというふうに思 っております。以上でございます。 ○宮島部会長  ありがとうございます。それでは、杉山委員、それから今井委員、お願いします。 ○杉山委員  個別の意見というよりも、まとめ方についてお願いというか、提案ですけれども、一 番最初に年金制度改正の基本的な視点ということで、5つ挙がっていて、そのほかにも こういう点を加えてはどうかという御意見が出ているわけですが、その基本的な視点に 基づいて次に展開していく議論がどこにかかっているのかというのが、私もそうですけ れども、特に意見書を初めて御覧になられる方はわからないのではないかと思います。 例えば現役世代、若年者の不信感・不安感を払拭するために、これをしてはどうかとい うのを次の部分にかかるような、構成を変えていただくのが本当はいいなと思うのです が、この構成でいくのであれば、その文章の最後に括弧づけでもいいですので、基本的 な視点のこれの問題解決のためにこれがありますというように、わかりやすくしていた だけると、このためにこれをやるのだということがより明確になっていいのかなと思い ます。  あと、いずれこれは文章になっていくのだろうと思いますが、そのときに、例えば将 来的にはこういう方向を目指す、次期改正ではこうしてはどうかなど、何か一文入れて いただいて、それで次期改正はこうするというふうに文章としてわかるような表現をし ていただければと思います。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、今井委員、どうぞ。 ○今井委員  今、杉山委員がおっしゃった内容とほとんど同じです。表現の仕方だと思いますが、 例えば私は体系のところで、報酬比例年金への一本化ということで意見を述べさせてい ただいております。その中で、特に最低保障年金の導入ということも希望しているので すけれども、そういうときに自営業者の所得把握や無業者の負担という文章にもありま すけれども、こういうことをすることによって、最低保障年金を導入すべき、ではその ために例えば最低保障年金を導入するということは、女性の大半が働く社会にしていか なければいけない、ではどうすればいいか、やはり正確な所得把握をしていかなければ いけないのではないかというふうな、この方式にいけばこうなるという、もう少し具体 的な表現をしていただきたいと思いました。  それから、給付と負担の見直し方法のところですけれども、国民全体の努力を引き出 すインセンティブという表現がありますけれども、例えばそのためには女性が一層の職 場進出をするために子育て支援をしていかなければならない、定年の延期もしていかな ければならない、高齢者の雇用開拓もしていかなければならないというような、もう少 し具体的な表現をしていただきたいという思いです。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。それでは、近藤委員、どうぞ。 ○近藤委員  制度の理解を深めるための仕組みという中でのポイント制の問題なのですけれども、 これは導入する場合に幾つかの留意点があると思います。  1つは、年金制度に関心が強くなる40歳台とか50歳台では、老後の生活設計を考え始 める参考になりますので大変有効であると思います。しかし、自分の経験からして、ま たいつの時代のアンケートでも結果は同じであると思いますけれども、20歳台、30歳台 は、老後の生活を考える余裕もなかったですし、また無関心でありました。これは私自 身商売をやりながら無関心だったのは非常に問題なのですけれども、これらの層にこれ を実施することは十分検討する必要があると考えます。若い世代は現在の報酬体系で考 えますと、通知をもらいますと報酬比例部分について平均よりほとんどの方が低くなっ ています。例えば、10年ですと、平均では10ポイントとなっておりますけれども、大体 7ポイント前後のところまでいくのではないかと思います。大きく下回る数値がいくわ けですから、前回山崎委員から御指摘がありましたけれども、制度をきちんと理解しな いで通知を見ますと、逆効果となってかえって不信感につながる危険性がありますの で、特に若い世代に対しての周知徹底の方法をいろいろ考えていただきたいと思いま す。  2つ目は、私の実務経験から情報開示というのが大変コストのかかるもので、商品開 発とかシステム開発の両方を経験しました立場から、この件につきましては、5月30日 のペーパーにもありますけれども、費用対効果に少なからず心配の念を抱いておりま す。実施される場合には、この点を十分検討するようにお願いしたいと思います。  弱年層について、全員に配るということではなく、5月30日の資料の後ろの方にあり ましたけれども、アメリカ、イギリス、カナダのように、請求があれば通知を出すとい う請求主義にしていただければというのも1つの考えだと思います。  それから、非常に具体的な話ですけれども、理解を深める方法の1つとしては、だれ でも疑問を持ったときだとか、興味を持ったときに、正しく答えをもらうことが大切で あると考えます。社会保険事務所の皆さんは御苦労であると思いますけれども、58歳に なってから来てくださいというような、木で鼻をくくるような回答ではなしに、何歳の 加入者が問い合わせに出向いても、今の仕組みの中でできるだけ前向きで、好意を持っ て対応に取り組んでいただければ、随分不信感が払拭されてくるのかなと思います。  次に、年金制度というのはそもそも就労期間に拠出しまして、退職後に給付を受ける という非常にシンプルな仕組みが望ましいわけです。これまでの経緯もありまして、現 行制度は非常に複雑になっております。この複雑さが年金制度の理解を困難にし、年金 不信を助長しているのだという見方もできますし、これらを勘案しまして、抽象的で申 し訳ありませんけれども、今回の議論、このまとめの中で全体について感じることは、 理解しやすい制度とか、簡素化という視点でのまとめをもう一度考え直していただきた いと思います。以上です。 ○宮島部会長  ありがとうございました。審議整理メモの目次でございますが、先ほど堀委員がお話 になりましたように、制度の理解を深める仕組みというのは、国民年金保険料の徴収の 後になると思います。その場合に柱の立て方としては年金の業務体制ということでくく ってはどうかと思います。その場合には、厚生年金の業務についても論点としてあると 思います。つまり労働保険と社会保険の徴収一元化だとか、あるいは短時間労働者に対 する適応拡大を進めていく上で、効果的な方策を考えるということもその中に入る気が します。  「基本的な視点」の中に、先ほど来いろいろ御意見が出ておりますが、一言で言えば 世代間、世代内の公平を図るということだと思いますが、特にやはり世代間の公平を図 るというのは、大きな柱ではないかと思います。これは、給付の抑制、あるいは保険料 負担の上限固定でできるだけ世代間の不均衡を是正するという方向の中で、私としては そういう提案をしているつもりであります。  それから、制度の体系ですが、少なくとも我が国では税法式を採用した場合には、所 得調査なり、場合によれば資産調査が入らざるを得ないと理解しております。これは現 実に、社会保障の現金給付の中で、税で支払われていながら所得等の要件がないのは恩 給などごく限られています。  公助、自助、共助の関係ですが、私の整理では、自助というのは将来の不安に対して 個人で備える、公助というのは、社会保障で言えば国家責任ということだと思います。 それに対して共助というものは、将来の不安を持つものが個人だけで備えるのは難しい から、将来不安を共有する者同士が集団をつくって支え合うという仕組みでありまし て、社会保障はまさにそういうものだと思っております。  保険料の凍結の解除は不可避だと、どうしてもやっていただきたいと思いますが、一 番国民にわかりやすい方法としては、既に厚生年金においては単年度収支がマイナスに なっているという事実だけは周知徹底することで、そうすればおのずから結論は出てく るだろうというふうに思います。  保険料負担の上限ですが、我々は厚生年金の保険料負担の上限について、ヨーロッパ 諸国等との比較からこの程度はというふうによく議論するのですが、医療・介護保険の 負担も併せて考えるという書き方がここにありますが、むしろ社会保障負担全体として みるとどうかという考え方になるのかなと思います。社会保障負担全体としてみると、 今のヨーロッパ諸国よりは現状では低い、将来においても決して高くないということも 事実だろうと思います。  先ほど堀委員からの御発言にありましたが、やはり基礎年金の水準論をきちっと踏ま えておく必要があると思います。税法式にすると、最低生活水準に抑制せざるを得なく なるという表現がありましたが、今の基礎年金の水準は、それ以下になってしまう可能 性が高いわけでございます。つまり最低生活保障水準というのを生活保護基準ととらえ ますと、65歳時点の基礎年金の水準は、かろうじて高齢単身者の生活を基準に見合って いると見ることができると思いますが、生活保護基準というのは国民の消費の伸びに応 じて改定されるのに対して、65歳以上の年金は物価スライドでございますから、むしろ 最低生活保障水準以下に落ちる仕組みに今なっているわけで、この辺は一度基礎年金の あるべき水準というのはどうなのかということを踏まえる必要があるのではないかと思 います。  短時間労働者に対する適応については、やはりきちっと実行性が確保される方策を考 えないと、国民年金1号グループの空洞化問題と同じ問題を引き起こす可能性があると いうことでございます。これは現実に、現在のシステムの下でも必ずしも万全な体制に なっていません。その問題は更に拡大する可能性があるということであります。短時間 労働者の適用拡大に当たっては、1号被保険者の保険料とのバランスというのは、大き な視点として必要ではないかと思います。これは1階と2階の財政を透明化すべきだと いう御主張とも関連するわけでございます。1号グループより低い保険料で、1号グル ープより高い給付というのはやはりあり得ないのではないかと思います。  渡辺委員の御発言ですが、障害基礎年金プラス老齢厚生年金という組み合わせも考え るべきということですが、昭和60年改正で年金の併給調整に関しては、1人1年金とい うことで整理したわけです。それが老齢と遺族の間で崩れ、更にこういった渡辺委員の ような御意見が入ってきております。この意見に関して私は賛成ですが、この際併給調 整についての考え方を整理しておく必要があるのではないかという気がいたします。  女性と年金の問題については、これも何人かの方の御意見がありましたけれども、や はりいろいろな意見があったというだけでは、これだけ議論をしてきて審議会は一体何 をしてきたのかと言われかねないと思います。ですから、この問題というのは、特に非 常に多くの方が関心を持っておられるわけで、いろんな意見があって、結局この3号問 題は結論が出ませんでしたというのは、行政としてはいい逃げ道かもわかりませんが、 我々としては困ります。私自身は将来的には個人単位の方向であるということを確認し た上で、当面それに向かう過程において、年金分割を取り入れるということで、何とか 合意が得られればと願っております。以上でございます。 ○神代部会長代理  個々の点については、いろいろ御指摘がありましたので、私は基本的な視点の書き方 のことで希望を申し述べさせていただきたいのでありますが、ここに5つ掲げられてい る基本的な視点は、それぞれ大変適切だと思いますが、山口委員などから御指摘があっ たように、やはり広い世論に対する説得力のあるものにするにはどういう書き方をする か、その書き込み方が一番問題ではないかと思います。やはり私はこの部会の冒頭、始 まったときにも申し上げたと思いますが、今回の年金改革ではこの世代間の助け合いと いう伝統的なプリンシプルと、世代間の公平という比較的新しいプリンシプルとのバラ ンスをどのように取るかということが一番大切ではないかと思いますので、そういう考 え方が伝わるような書き方を工夫していただきたいと思います。  タウンミーティング等、いろいろ参加させていただきました印象で申しますと、この 部会は各界を代表される方が出ていらっしゃるわけですけれども、世代的に言っても、 それから財界、労働界、学界でも、あらゆる層を代表されているわけでは決してないわ けで、この部会の中で議論されたことが勿論中心になることは当然でありますけれど も、この部会に直接参加されてない世論をも説得できるようなスタンスというものが非 常に大事ではないかと思います。  そういう点で、1つは理論的な観点、もう一つは基本的視点の最後に書かれている就 労形態やライフコースの多様化に対応した年金制度の在り方についての考え方、この2 点が非常に大事だと思います。例えば、理論的な問題に関しても、国際的にも国内でも 専門の年金学者の間で、10年前とこの2、3年では、理論的な考え方がすっかり変わっ ているわけです。ところが、世の中では必ずしもそういう理論的な考え方の大きなシフ トがあったことが理解されていないまま、10年前の考え方で相当強硬な議論が主張され 続けている面もあるように思います。この年金部会の意見書は学会の報告ではないので 学会だけ意識する必要はありませんが、学界がかつて10年前に主張されたことの影響 が、いまだに世論に対してはものすごい影響を与えていて、例えば世代間の負担の不公 平についても、大新聞に私から見ると非常に一方的で間違った理解の記事がつい最近も 出ておりましたし、そういうことも含めて、やはり部会としてこの10年来の公的年金を 巡る議論で、支持されていることと、支持されなくなったこと、そういうことも念頭に 置いて、しっかり説得できる内容にしていただきたいと思います。  もう一つは、ライフコースの多様化というのは比較的新しい表現ですが、指摘されて いることは大変重要なことだと思います。例えば、最近の労働力調査の、昨年の第4四 半期の数字を見て非常にショックを受けているのですが、女性だけ取りますと既に非正 規労働者、パート、アルバイトの数が50%を超しております。短期間に非常に急激に多 様化が進んできていると思います。多様化に対して対応できる年金制度でなければなら ないということは、随所に指摘されているとおりでありますが、やはり個々の政策を変 更する場合に、雇用形態の多様化が、従来は我々が考えていたより相当加速的に進んで いるということを、どういうふうに取り入れるのかを十分配慮していく必要があると思 います。  また、育児支援は少子化対策と並んで大変重要な柱だと思いますが、最近の労働経済 の国際的な研究動向などを見ていますと、やはり生まれてから1年間の育児を母親が直 接することが大変に重要だということが、100 %論証されているわけではありません が、非常に強調されていると思います。ですから、働く女性が増える中で、やはり育児 休業が取れるかどうかということは、かなり今後の社会の人間形成に大きな影響を与え る問題なので、是非そういう最近の、日本では余り実証研究がありませんが、欧米の実 証研究も是非参照されて、育児対策について十分な配慮をしていただきたいと思いま す。 ○宮島部会長  一通り本日御出席の委員の方から御意見を承ったわけですが、少し補充をされる方が あれば、どうぞ。岡本委員、どうぞ。 ○岡本委員  言葉の問題ですのでこだわりませんが、冒頭で「〜すべき」ということと、「〜が望 ましい」とか、「必要」とか、あるいは「意見」ということについて、高橋課長の方か らコメントがありました。その点からいいますと、短時間労働者に対する厚生年金の適 用のところですが、私は雇用労働者としての均等待遇の観点から基本的に必要であると いう考え方にも賛成ですし、短時間労働者の厚生年金の適用拡大は望ましいというか、 すべきであるという方向であることも私は支持したいと思っておりますが、適用拡大に ついては、雇用への影響、特定業種への影響、それから先ほど山崎委員から御指摘もあ りました事務負担、あるいは実務が伴うかどうかなど、ある意味では社会的インフラの 整備も含めた負担の増加等を最小限に包括的な取組と併せて慎重に検討すべきとの意見 ということですが、これに対する反対の意見はありません。これは恐らく雇用への影響 は、労働組合の皆さん方も、学識経験の皆さん方も心配されるでしょうし、特定業種の 影響について現実的にございますし、事務負担の問題、あるいはインフラ整備について は、これはきちんとしないと、逆にせっかく適用を拡大しましても混乱を起こすことに なりますから、ここについては慎重に検討をしなければならないということではないか と理解しておりますので、こだわりませんけれども、申し添えておきたいと思います。 ○宮島部会長  ほかに特に御意見ございますでしょうか。矢野委員どうぞ。 ○矢野委員  積立金のところですが、将来の保険料負担を考えると、現在の積立金を取り崩すこと は責任ある対応とは言えないと断定しているのですが、少しこれは言い過ぎではないか と思います。  積立金の在り方については、全体の年金保険の体制を考える中で、やはり柔軟に取り 込むということが必要なのではないだろうかと思いますので、その点を追加しておきた いと思います。 ○宮島部会長  ほかにいかがでしょうか。それでは、今日御欠席の委員の方も含めて、この審議整理 メモについて御意見をいただいてまいりましたが、1つは、まず最初の基本的な視点は 従来こういう形で始めに提示してやってきたものですから、意見がある程度整理されて くれば、そこから戻って、もう一度基本的な視点というのはどういう形で再構成をする かという問題は恐らく出てくるであろうと思います。  先ほど特に、皆年金制度というのは、保険を前提にした考え方なので、どういう形で 書くかは別にして、現在のようなすべての人を対象にしたような年金制度を考えるとい うことも、今の国民年金で起こっている問題を少し念頭に置きながらここに書き込んだ らどうかというお話もございました。  それから、世代間の公平という言葉は、ここには直接出てまいりませんが、ここに述 べられている幾つかの基本的な理念の中で、もう少し幾つかの意見をとりまとめるに当 たってどういった問題解決に関連していくかについて、例えば世代間の公平とか、こう いうところに関わってくる問題であるとか、あるいは持続可能性とは一体それはどこに 関わることになるのかというようなことについて、少なくとも今の委員は恐らくある程 度、今までの議論で皆さん御承知かと思いますけれども、これが公になる場合には、国 民に向かって、それがどういうことになるのかということについても少し注意して書く 必要が恐らく出てくるのではないかと思います。  もう一つは、今お聞きしておりまして、こういうことが望ましい、あるいはこういう ことに大方の意見の集約が見られる、あるいはこうするべきだというときと、その意見 との間に、そういうことを考える上での一種の条件としてこういうものを念頭に考えて おくべきだというような意見の2種類あるような気がいたします。ですから、要するに 今のままで全部よろしいということは、なかなか今の社会的な制度ではないわけで、例 えばきちんと保険料の徴収がなされることが前提であれば、社会保険制度というものを 基本的に考えることは望ましいという意見になるだろうと思いますし、そのような書き 方としては、箇条書きでインパクトのあるものになるのは難しいかもしれませんけれど も、しかし、その関係がよくわかるような形で少し書き直す必要があるのかという気が いたします。  それから、全体の整理の仕方の中で、もう一つ、特に制度の理解を深める仕組みの位 置でございますけれども、これは今回、勿論具体的な中身についていろいろ御議論がご ざいましたけれども、今回の年金部会の議論の中での、基本的な視点ということも含め て重要な点でありますから、ここをどうやって扱うかということに関しては、場所とし て、比較的これは上の方に持ってきているわけですが、年金行政の在り方なども含め て、その中で一緒に扱うというような考え方も、今、一部の委員の方から示されており まして、理念としては基本的視点に持っていきながら、やや具体的な議論の仕方につい ては、年金制度の一元化の問題でありますとか、特に若い世代に対してきちんと必要に 応じて通知できるようにするような仕組みをどうやってつくっていくかということもご ざいますので、これは行政の中で取り上げていくという意見が出ましたが、これについ ては目玉としての出し方と、それを具体的にこの中で触れていく場所の置き方について は、少し検討をしてみたいと思います。  それから障害年金の記載場所ですが、実は最初の原案のときに、その他という項目が あったのですが、私はその他という項目は余りに失礼だと言って、幾つかまとめて最後 の方にやった問題を、その他諸問題と、しかしその他という表現は余りにも関係者に失 礼でありますから、きちんとした位置付けはしなければいけません。かといって、全体 のボリュームからいって、一つひとつを個別項目としてとらえるのは難しいので、主た る論点はどこにあるのかということを含めて、今回、支え手のところに置いたわけで す。あるいは女性と年金についても、何もこれは女性だけではないのですけれども、主 として女性に関わってこれまで議論されてきましたし、この年金部会の前の委員会もご ざいまして、こういう言葉を使っておりました。ですからここでは女性に主に関わる4 つの問題をこのまま取り上げてきたという整理の仕方をしてきたわけですが、なお、本 日、具体的な整理の仕方について1つ提案がございました。特に基本的な考え方を、も う一度全体の整理を反映させるような形でどうするかについては一工夫しなければいけ ないだろうというご提案。それから、どうも御意見を伺っておりますと、大きな項目に やや前文的なものをつけた方がいいのかと、つまりすぐ個別の問題に入ってしまいます と、そこの全体がどういう調子で書いているのかというのが少しわかりにくいというの で、時間が非常に限られているものですから、私、事務局も含めてやりたいと思います けれども、それぞれの大きな項目のところに、以下検討される項目の基本的な考え方、 それぞの項目に基本的な考え方というようなものを入れて整理した方がわかりやすいの ではないでしょうか。そういたしますと、先ほどの給付と負担という話は、今回リンク させて議論するという特徴でありますけれども、給付と負担の議論というのは、やや文 章が長くて分かりづらいので、その鳥瞰図のようなものが書けないかということを考え たいと思います。  もう一つ、恐らく一番難しい点がございます。この整理で申しますと、公的年金制度 の基本的な考え方・体系から給付と負担の在り方へのつなぎ方の問題でございまして、 多くの方から御意見がございましたように、今後の年金制度の在り方について、今回か なり議論をしてきたわけでありますけれども、経済情勢などを考えた点を制約の下でこ ういう方向を今回の改革を考えるということでありますけれども、しかし、今後どうい う方向性を考えていくか。もちろん、その方向性というのは、実は幾つかの条件を付け なければいけませんで、今後雇用の在り方でありますとか、家族の在り方ですとか、そ こまで我々が2050年とか2060年、非常に長期になった場合を見極めながらというのはな かなか難しいと思います。ただ、今後こういう将来の経済の変化の下においては、こう いう方向性を検討していくべきであるというような形で、その方向性というのは出して おきたいとは思っております。  ただ、今までの御意見を伺って皆様もお気づきだと思いますが、特に基礎年金の在り 方を巡る議論と、それから一本化への議論というものが、将来の方向性として、少なく とも現在のやり方も改善しながらという1つの方向性でありますが、それを加えて、そ ういう2つの議論が出てきているわけで、そこのところはもう少し理念と考え方、ある いは現状でなぜ詰め切れないかというようなことも含めた点を触れた上で給付と負担の 在り方に移っていくというところを少し工夫したいと考えております。  全体として大きな点では、そういうところであると思いますけれども、特に御意見の 中では、先ほど幾つかございましたように、望ましい、必要である、すべきである、〜 という意見があったというようなことについて、今日の御意見を踏まえて、皆さんの御 意見を全部受け入れるというわけにはいかないかもしれませんけれども、そこのところ ももう一度見直したいと考えております。  今回、まとめの中で特に不足していた点でいいますと、基礎年金の水準の問題につい て、もう少しきちんと触れておくべきだという議論がございましたので、それについて も併せて考えたいと思います。  積立金の件につきましては、積立金の問題とその運用の在り方という議論がございま して、運用の問題については、別のところで少し個別に教育資金の貸付問題などが出て くるわけですが、そういう点についても少し場所を設けて触れておく必要があるだろう と思います。ただ、そこは少し意見が分かれているということは、今までの議論でお気 づきの点であろうと思います。ほかにも今伺っておりまして、非常に難しいなと思った のは、ほかの社会保険との全体的な関連で社会保障負担の将来をどう考えるかという話 もございましたし、それから社会保障審議会の場合には、決して社会保険だけで扱った わけではございませんで、公的扶助でありますとか、社会福祉も扱っておりますから、 もう少し全体の議論の中で、幾つかの意見なり考え方を示したわけでありますが、年金 制度の議論としては、全部見渡してというわけにはいかないかもしれませんけれども、 少なくとも社会保険関係の社会保障負担の在り方についての議論までこのようなことに なるのではないかということがあると思います。  それに対しては、国民負担率、あるいは潜在的国民負担率との関係の議論で、今度は そういうものに対して別の議論も出てくるということがあると思いますので、その辺は 幾つか最後のところが非常に重要な問題ですけれども、今のところ非常に短く整理され ておりますので、その辺のところは今日の御意見も含めて、もう少し書き込む必要があ るのではないかと考えております。  それと、これは年金部会としては、厚生労働大臣に対して意見書を提出するという形 にはなるわけでございますけれども、我々は必ずしも政治の世界や何かの動きの中を見 ながら議論してきたわけではなくて、年金制度が将来どうあるべきかということで議論 してきたわけでございますから、それは同時にここでの議論がどれだけ真摯に行われ て、どういう方向性が出たかということに対しては、国民に対して知らせる義務もござ いますし、恐らくこの前の対話集会ですとか、公聴会におきましても、かなり厳しい御 指摘、御意見があったということは皆さんも御承知だと思います。ですから、年金部会 での議論だけではなくて、先ほども御指摘がありましたように、いろいろな世論調査、 意識調査、あるいは対話集会等において出されました議論に対して、やはり年金部会と してはそれぞれ目配りをしているということも同時にお示ししてございますので、そう いう点では少しこの内容について、そういう点を含めた記述が足りないという御指摘で あれば、そういう点を少し配慮しなければいけないだろうと考えております。  私はざっと聞いておりまして、いずれにしても、それをどうやってこなすのかという のは、なかなか難しいわけでありますけれども、特に次回は来週の28日に予定をしてお りますが、そこまでに今日皆様方からいただきました御意見、それから欠席された方の 御意見も含めて、なるべく御意見を尊重する方向で考えて、また再度の修正、とりまと めに入りたいと思っております。  それで、今日皆様からいただきました御意見について、今回は特に次回に向けてもう 一度議論する時間的な余裕がございませんので、今日いただいた御意見を基にして、審 議整理メモのバージョン2を来週の年金部会に提出し、そこで更に議論を詰めていただ きたいと考えております。  大体そのような手順で今後進めてまいりたいと思いますけれども、何か今後の手順な りについて御意見がございますでしょうか。  それでは、まだ少し時間が残っておりますが、今日はとりあえず一通り御意見をいた だいて、我々もすぐ次の作業に入る点がございますので、少しでもお時間をいただけれ ばありがたいと思いますので、今日の審議整理メモを中心とした御意見と御議論は今日 のところはこれで終わらせていただきまして、次回以降のことにつきましては、総務課 長からお願いできますでしょうか。 ○高橋総務課長  次回は、今月の28日10時から、この場所で開会の予定をいたしております。審議の内 容につきましては、今し方部会長から御説明があったとおりでございます。  それから、多少今までお話がありました点について、私ども作業を進めております が、宿題になっております事項についても、できれば資料提出をいたしたいと思いま す。  食事を用意しておりますので、委員の皆様方は、しばらくこの場所でお待ちいただき たいと思います。 ○宮島部会長  それでは、どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 03-5253-1111(内線3316)