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背景
石綿ばく露作業従事労働者に発症する疾病については、昭和53年3月の労働基準法施行規則改正時において、「石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫」が例示された。さらに、迅速・適正な認定を図るため、同年10月に、石綿ばく露作業従事者に発生した疾病に関する認定基準(昭和53年10月23日付け基発第584号「石綿ばく露作業従事労働者に発生した疾病の業務上外の認定について」(以下「認定基準」という))が策定された。なお、「石綿肺」は同規則が策定された昭和22年から「粉じんを飛散する場所における業務に因るじん肺症及びこれに伴う肺結核」として業務上疾病に規定され、労災補償の対象とされていた。
認定基準においては、石綿ばく露との関連が明らかにされている主な疾病として、「石綿肺」、「肺がん」及び「胸膜又は腹膜の中皮腫」が例示され、それぞれの認定要件が示された。なお、当時は、石綿ばく露による中皮腫の労災請求事案そのものが少なく、昭和53年度に1件の労災認定あったが、その後5年間労災認定事案はなかった。
ところで、中皮腫等石綿による疾病にかかる医学的知見の進歩に加えて、近年、中皮腫に係る労災認定件数が、平成11年度 25件、平成12年度 35件、平成13年度33件と増加傾向にあり、また、胸膜及び腹膜以外(心膜及び精巣鞘膜)の中皮腫の労災認定事例も認められた。
石綿による中皮腫の労災請求件数は、今後さらに増加することも予想されることから、このような事態への的確な対応及び迅速・適正な労災認定のために、昭和53年に策定された認定基準を、最新の医学的知見により見直すこととしたものである。
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