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審議整理メモ

(事務局整理)


【目次】

1. 年金制度改正の基本的な視点
2. 公的年金制度の基本的な考え方・体系
3. 給付と負担の在り方
(1)給付と負担の水準
(2)給付と負担の見直し方法
(3)マクロ経済スライド
(3−2)自動調整を行った場合の給付水準
(4)スライド制の在り方
(5)高所得者に対する給付の在り方
(6)年金課税
(7)積立金の役割
(8)経済前提等
4. 国庫負担の引上げと安定的な財源の確保
5. 制度の理解を深める仕組み
6. 支え手を増やす方策等
(1)短時間労働者等に対する厚生年金の適用
(2)高齢者の就労促進・支給開始年齢
(3)次世代育成支援
(4)派遣労働者・失業者
(5)障害年金
7. 女性と年金
(1)女性のライフコースと世帯モデル
(2)第3号被保険者制度
(3)遺族年金
(4)離婚時の年金分割
8. 国民年金保険料の徴収
9. 被用者年金の一元化
10. 福祉施設等
11. 企業年金等
12. 年金改革と他の社会保障制度改革


1.年金制度改正の基本的な視点

論点 考え方
年金制度改正の基本的な視点
現役世代、とりわけ若年層の年金制度に対する不信感、不安感の払拭を図ることが必要。
将来世代の社会保険料・税負担を過重なものとしないため、給付の仕組みや水準の見直しが必要。
社会経済の変化に柔軟に対応でき、将来にわたって持続可能な制度を確立すべき。
負担と給付の関係について、国民にわかりやすい年金制度とすべき。
女性の社会進出や、就労形態・ライフコース(生涯にわたる人生の選択)の多様化に対応した年金制度とすべき。

2.公的年金制度の基本的な考え方・体系

論点 考え方
制度の体系についてどう考えるか。
【現行の基礎年金+報酬比例年金の体系】
サラリーマングループは、現役時代の生活の大部分を賃金によって支えており、そうした収入源を失った退職後でも、退職前の生活水準を一定程度反映した生活を送ることができるよう、現行の基礎年金+報酬比例年金の体系を維持すべき。
基礎年金については、社会保険方式か税方式かの議論があるが、社会保険方式では、リスクに備えて保険料を拠出し、拠出に基づくものとして所得・資産に関わらず給付が受けられる仕組みである一方、税方式では、拠出を行わなくても、一定年齢に達すれば給付が受けられることになる。しかしながら、拠出に対応しない税財源による給付の考え方は、所得調査や最低生活に必要な給付水準への抑制につながりかねない。自助と自律の精神に立つ我が国の経済社会の在り方から考えると、現役時代の個々人の保険料納付実績に応じて年金額が決まる社会保険方式を堅持すべき。
さらに、現行制度の基礎年金拠出金については、
基礎年金拠出金制度を通じて、結果としてサラリーマングループが未納者や未加入者の分の負担を肩代わりしていることとなっており、負担の構造を明らかにし、不信感・不安感を払拭する観点から、厚生年金保険料の1階分と2階分を分離すべきとする意見。また、さらにサラリーマングループの中において、基礎年金拠出金を応能負担化し、報酬額に応じた額とすべきとする意見。
一方、基礎年金は全国民で負担すべきものであり、自営業者グループとサラリーマングループに分けて負担を論じることは適当ではないとの意見。
基礎年金はすべての高齢者の基礎的な生活費の保障を行うものとして位置付けることが必要であり、税方式とすべきとの意見。
ただし、こうした意見でも、基礎年金の税方式は将来の方向であり、次期改正では、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げるべきとの意見。

【報酬比例年金への一本化】
就業形態が多様化する中で、サラリーマングループと自営業者グループといった立場により制度が変わることは適当ではなく、自営業者グループも含め報酬比例方式へ一本化すべきとの意見。
報酬比例年金に一本化する場合、無・低年金者を対象に税方式による最低保障年金を導入すべきとの意見。
自営業者の所得把握や無業者の負担をどうするかという問題を十分に検討する必要があるため、当面は2階建て方式を維持することが適当であり、報酬比例年金への一本化は将来の方向として検討していくことが適切との意見。

3.給付と負担の在り方

論点 考え方
(1) 給付と負担の水準
【給付水準】
世代間の公平が図られた持続可能な仕組みにするため、負担の上昇を極力抑制する観点から、給付水準の見直しを行うべき。
給付と負担の見直しにより、給付水準の見直しを行った場合においても、公的年金が老後生活の支えとしてふさわしい価値のあるものに維持していくため、一定の水準の確保が必要との意見。
老後生活の基本的部分を保障する水準の確保が必要であり、基礎年金と厚生年金を合わせた給付水準は、将来にわたり、現在の水準を維持すべきとの意見。

【保険料引上げ】
少子高齢化が進む中で、制度の持続の観点からも、世代間の負担の公平性の観点からも、適切に保険料負担を引き上げていくべきであり、現在の保険料引上げの凍結は早急に解除すべきである。
経済状況への配慮という観点からは、厚生年金について、毎年小刻みに引き上げることにより、1回ごとの引上げ幅を抑制することが適当との意見。
保険料の小刻みな引上げは、社会経済情勢によって影響を受けやすく実現できなくなる可能性があり、最終保険料率を低くするためにも、保険料を早めに引き上げるべきとの意見。
一方、企業の活力、経済の活性化の維持のためには、安易に保険料負担を引き上げるべきでないとの意見。

【保険料負担の上限】
前回改正で設定された最終保険料の水準や今回の有識者調査の結果から、最終保険料水準は年収の20%程度が適当との意見。
将来の保険料率はできるだけ抑えるべきではあるが、「方向性と論点」の保険料率20%程度は基本とすべきとの意見。
最終保険料率20%程度であれば、ヨーロッパ諸国と比較しても妥当な水準との意見。
一方、医療・介護保険の負担を考えると、最終保険料率20%は高すぎるのではないかとの意見。
空洞化の解消、厚生年金の適用拡大等により、最終保険料を20%まで引き上げなくても現行の給付水準の維持は可能であり、さらに基礎年金を税方式化すれば、15%程度の保険料率で可能との意見。
医療・介護保険の負担や世代間の不公平是正を考えれば、給付水準の見直し、積立金の取崩し、基礎年金部分の間接税方式への移行を進めるとともに、保険料率については現行を極力上回らない水準で長期間固定すべきであるとの意見。
(2) 給付と負担の見直し方法
【給付と負担の見直し方法】
給付と負担の見直しにあたっては、世代間の負担の公平性を確保するとともに、将来の負担についての不安を解消するため、保険料固定方式の導入が適当である。
また、「努力しなければ悲観的なものになるが、努力すれば給付は高く負担は低くなる」という国民全体の努力を引き出すインセンティブを制度自体に組み込んだ設計とすることが望ましいとの理由からも、保険料固定方式が適当。
現在の厳しい経済情勢の下で、保険料引上げについて国民の合意を得るためには、将来の段階保険料を明示し、最終保険料率の固定を約束することはやむを得ないとの意見。
一方、年金受給額が裁定時まで分からない保険料固定方式は、若い世代の不信感を招くとの意見。
(3) マクロ経済スライド
【マクロ経済スライド】
マクロ経済スライドは、賃金や労働力人口といった国全体の保険料負担能力(支える力)の伸びに見合ったスライドを行うもので、適当である。
一方、少子化の進行で給付水準が低下し、老後の生活保障の柱としての役割が損なわれるおそれがあるとの意見。

【実績準拠法と将来見通し平均化法】
将来予測の変動に左右される将来見通し平均化法よりも、実績準拠法が望ましい。
給付調整に時間をかけると、将来世代に給付削減のしわ寄せが生じることから、実績準拠法に平均余命の伸び等を加味した調整を検討すべきとの意見。
実績準拠法では2025年以降に給付調整が集中することから、将来見通し平均化法により給付水準の適正化を前倒しすべきとの意見。

【年金改定率の下限及び既裁定年金の給付水準の調整】
年金制度に対する国民の不信感を払拭するためには、全ての世代が痛みを分かち合うことが必要であり、既裁定年金も速やかに給付水準の調整対象とすべきであり、物価下限型よりも名目年金額下限型の方が望ましい。
世代間の負担と給付の不公平を解消するため、年金改定率には下限を設けず、名目年金額を減らすことも検討すべきとの意見。

【基礎年金の給付水準の調整】
第1号被保険者の定額保険料を負担可能な範囲内に収めるためには、基礎年金の給付水準の調整はやむを得ない。
前回の年金改正でも基礎年金は調整しておらず、基礎年金の給付水準の調整はすべきでないとの意見。
(3−2) 自動調整を行った場合の給付水準
【給付水準の下限】
経済状況次第で所得代替率が大きく低下しては老後の保障にならないため、給付水準の下限を設けるべき。
将来の給付水準が定まらないと老後の生活不安をもたらすおそれがあることから、給付水準が大きく下がり過ぎるような場合には、制度の総合的見直しも必要との意見。
ILO第102号条約との整理が必要との意見。
(4) スライド制の在り方
【既裁定者の物価スライド】
既裁定者の物価スライドについては、賃金下落率が物価下落率より大きい状況では、給付総額の伸びよりも保険料収入総額の伸びが小さくなるため、それを踏まえた調整をすべきとの意見。
賃金変動率と物価変動率のどちらか低い方に合わせてスライドさせ、賃金・物価の上昇局面についても同様に考えるべきとの意見。
賃金変動率と物価変動率のどちらか低い方に合わせてスライドさせた場合、年金水準は現役世代と差がつく一方になることから、人口減少分の調整は別としても、現役世代とのバランスを踏まえて給付水準を考えるべきであるとの意見。
既裁定年金にも可処分所得スライドを復活させ、現役世代の手取り賃金の伸びを反映した調整を行うべきであるとの意見。
基礎年金と厚生年金をあわせた給付水準は、年金も手取りでみて現役世代の手取り賃金との所得代替率55%の水準を将来にわたって維持するべきであるとの意見。
物価スライドについては、少なくとも過去3年間停止している物価スライド1.7%分を全て反映させた後の水準を前提に検討すべきとの意見。
(5) 高所得者に対する給付の在り方
同額の保険料を同期間拠出したにもかかわらず、所得・資産によって、給付を制限するのは、拠出に応じた給付の関係がなくなり、保険料拠出意欲をなくし、社会保険制度として問題がある。また、公正な所得調査が現実的に可能かとの問題がある。
公的年金等控除を見直すことによって対応すべきである。
(6) 年金課税
高齢者を一様に税制上で優遇しており、また、給与所得のある年金受給者にとっては給与所得控除と公的年金等控除が併せて適用されることになる現行制度を見直し、世代間・世代内の公平を図る観点から、公的年金等控除を縮小すべき。
その際、公的年金等控除の水準を給与所得控除の水準にまで下げるべきとの意見。
公的年金等控除の見直しに当たっては、高齢者世代は若い世代よりも所得格差が大きいこと、年金だけに頼っている高齢者世帯への配慮が必要との意見。
遺族年金・障害年金の非課税措置についても見直しが必要との意見。
年金課税の見直しによる税収を、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げの財源の一部とすべき。また、基礎年金国庫負担割合の引上げのほか、次世代育成支援に充てるべきとの意見。
(7) 積立金の役割
積立金は、高齢化のピークの保険料水準を抑え、その後においても最終保険料率を賦課保険料率より低くする役割を果たし、負担の世代間格差の緩和などの意義も有する。早期に年金積立金を取り崩すことで当面は保険料を低くすることができるが、高齢化のピークやその後における保険料の水準を考える必要がある。
将来の保険料負担を考えると、現在の積立金を取り崩すことは責任ある対応とはいえない。
積立金については、その水準は将来に向けて、年金の支払いに支障のない程度まで抑制することが適当との意見。
賦課方式を前提とすれば、現行の給付費の5年分程度から、高齢化のピークに向けて可能な限りその水準を抑制すべきであるとの意見。
(8) 経済前提等
経済前提・人口推計については、楽観的な前提によるのではなく、厳しい見通しも視野に入れた前提で行うべきとの意見。
将来を見通す時に、過去の実績に依存するのではなく、将来の潜在成長率予想といくつかの考えられるシナリオから考えていく必要があるとの意見。
経済前提は、悲観的な前提ばかりでない状況が改善した場合の見通しも考慮すべきとの意見。

4.国庫負担の引上げと安定的な財源の確保

論点 考え方
国庫負担の引上げと安定的な財源の確保
【基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ】
将来の現役世代や企業の負担が過度に重くならないよう、基礎年金の国庫負担割合の3分の1から2分の1への引上げが必要。
基礎年金については、将来的な全額税方式を射程に、国庫負担を早急に2分の1に引き上げるべきとの意見。
基礎年金については、国庫負担の2分の1への引上げを前提として、全ての高齢者に一律に支給するのではなく、一定の所得を有する高齢者は支給停止又は減額などにより給付総額の抑制を行うべきとの意見。
保険料も税も国民負担という点では同じであり、国庫負担の位置付けや年金水準の関係、あるべき年金の制度設計の姿を踏まえて国庫負担水準引上げの議論をすべきとの意見。

【財源】
安定財源として消費税の引上げによる増税分を充てるのが望ましいとの意見。
年金税制の改革による税収を、引上げの財源として活用すべきとの意見。
基本的には、消費税を目的税として充てるのが望ましいが、当面は歳出構造の見直しで対応すべきとの意見。
歳出の見直しや年金課税の見直し等により、一般財源で賄うべきとの意見。
子育てをしている世帯や母子家庭など、比較的低所得で消費性向の高い世帯にとっては、消費税負担は過度に重くなることから、逆進性を持つ間接税を所得保障の財源とするのは不適当との意見。

【その他】
高齢者も相当な財源を負担することが妥当であり、仮に消費税を引き上げて対応するのであれば、それに伴う物価上昇分は年金スライドの対象から一部または全部控除する対応が必要との意見。

5.制度の理解を深めるための仕組み

論点 考え方
制度の理解を深めるための仕組み
【年金に関する情報の通知】
現役世代、特に若年層の年金不信や不安を解消する観点から、個人に対して被保険者記録や年金見込額を通知すべき。とりわけ、年金個人情報提供に向けた当面の取組(※)を確実に実施すべき。
 (※)(1) 社会保険事務所における年金見込額試算対象年齢の引下げ(58歳以上→50歳以上)
(2) 58歳以上の者に対する被保険者記録・年金見込額の直接通知
(3) インターネット等を利用した年金個人情報の提供

【ポイント制】
ポイント制は、保険料納付実績を確認でき、将来の年金見込額が簡便にわかるようになるものであり、保険料納付が給付につながることがわかりやすい、年金制度が理解しやすい仕組みとして導入を検討すべき。

6.支え手を増やす方策等

論点 考え方
(1) 短時間労働者等に対する厚生年金の適用
【適用拡大】
働き方の多様化への対応、短時間労働者の年金保障の充実、支え手の増加、就業調整問題の解決、事業主間の保険料負担の不均衡是正等の観点から、短時間労働者への厚生年金の適用拡大をすべき。
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、基本的には必要である。
労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべきとの意見。
短時間労働者への適用拡大については、雇用への影響、特定業種への影響、事務負担の増加等を最小限にする包括的な取組みと併せて、慎重に検討すべきとの意見。
短時間労働者への厚生年金の適用拡大により、60歳を超えてパート就労している者にも在職老齢年金が適用されると、高齢者の就労意欲が損なわれ、企業の高齢者の採用にも影響が出てくるのではないかとの意見。
医療保険における適用拡大の影響も同時に検討すべきとの意見。
5人未満の個人事業所及び任意適用業種への適用のあり方についても検討すべきとの意見。

【適用基準】
雇用契約に基づいて労働を提供し、会社に貢献する者に対して会社もサポートするという被用者保険の理念を考慮すると、収入要件は考慮せず、週所定労働時間で適用することが適当との意見。
雇用保険の適用基準と同じく、週の所定労働時間が20時間以上の者を適用するのが適当との意見。
所定労働時間が極めて短い者であっても、相応の賃金を得ている場合もあり、週の労働時間要件(20時間)に収入要件(65万円)を併用すべきとの意見。

【短時間労働者への給付と負担】
現行の厚生年金の応能負担の考え方を基本に、「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)」を中心に考えるべきとの意見。
第1号被保険者より少ない負担で基礎年金に上乗せした報酬比例年金を支給する「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)」については十分な検討をすべきとの意見。
「標準報酬下限維持案」は、応能負担原則に反するとの意見。
「標準報酬下限引下げ×給付維持案」は、被扶養者にも基礎年金を支給し、保険料と比べて給付が過大となるとの意見。
短時間労働者の年金保障の充実、年金財政への影響、第1号被保険者との不公平感を考えると、「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付調整案)」が望ましいとの意見。
(2) 高齢者の就労促進・支給開始年齢
【在職老齢年金制度の制度の見直し】
現行制度を基本に見直すとすれば、B案(2対1の調整率の緩和案)やC案(2対1の調整開始点の引上げ案)は高所得の者が有利となり、望ましくなく、A案(一律2割支給停止の廃止案)が適当。
この場合、A案(一律2割支給停止の廃止案)の変形として、特別支給の老齢厚生年金が報酬比例部分のみとなる者について、一律2割支給停止を廃止することが考えられる。
現在の在職老齢年金を廃止して、すべての所得(賃金・高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整する制度に抜本的に改めるべきとの意見。

【繰下げ受給制度】
高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられるとの意見。
60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰下げ受給の導入については、年金なしでも生活できる高賃金の者を優遇することになること、繰下げを選択した者についても事業主は繰下げがないものとして賃金額を決定し、賃金抑制効果は現行制度と変わらないおそれがあること等の問題があり、慎重な検討が必要との意見。

【その他】
高齢者の就労を促進する上では、在職老齢年金制度を廃止するとともに、年金税制を見直し総合課税化することが考えられるとの意見。

【支給開始年齢の引上げ】
支給開始年齢は、65歳に向けて引上げ途上にあり、また雇用情勢も厳しい中で、65歳の支給開始年齢をさらに引き上げることは、ますます国民の年金制度に対する不信・不安を高めることになりかねず、当面行うべきではない。
(3) 次世代育成支援
【年金制度での次世代育成支援】
出産・育児のため年金に関し不利になっているとすれば、それを解決するのが基本であり、年金制度としても少子化対策としてできるものを実施すべきとの意見。
親の所得、職業、就業形態に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援を基本におく支援をすべきとの意見。
少子化対応を進める必要はあるが、公的年金制度の財源を制度本来の趣旨と異なる目的に流用すべきではないとの意見。
年金制度の枠組みの中での経済的支援よりも、継続して就業できる環境や保育サービスの充実等の社会基盤の整備で考えるべきとの意見。

【育児休業期間中の措置】
育児に対する支援の観点から、(1)育児休暇中の保険料免除期間の延長、(2)就業を継続するも時短等で年金保障が不利にならないよう、育児期間前の標準報酬あるいは平均賃金で保険料納付が行われたものとして扱うなどの配慮、(3)いったんは離職した後再就職した場合なども、なんらかの配慮を行うべきとの意見。
出産を機に退職する人が多く、育児休暇取得者は少数にとどまることから、育児休暇取得者に関する措置は効果が少ないとの意見。
育児休業期間中の免除期間を拡充しても、その政策効果は不明確であり、現行法による育児休業期間(最長1年)の範囲内にとどめるべきであるとの意見。

【育児休業の取得者以外】
厚生年金に関しては、育児休業を取得したか否かに関わりなく、育児期間の前後を通算して一定の厚生年金の被保険者期間がある場合に、年金額算定において一定水準の報酬を保障すべきとの意見。
仕事を辞めた人も含めて幅広く対応することが必要との意見。

【第1号被保険者への支援措置】
第1号被保険者も育児期間中は保険料の負担をなくすなど配慮措置が必要との意見。
1階の基礎年金部分に関しては、第1号被保険者を含め全ての被保険者について、育児期間中は基礎年金の保険料負担を免除または軽減すべきとの意見。

【第3号被保険者への支援措置について】
第3号被保険者については、本人自身は保険料を負担しておらず、また、基礎年金は保障されることから、更なる育児期間中の支援措置は必要性が低いとの意見。
第1号被保険者を含めて育児期間中の全ての被保険者の基礎年金の保険料負担を免除または軽減する場合、第3号被保険者の取扱いについては、「夫婦間の年金権の分割案」を採用し、妻も保険料負担を行っているものと擬制することにより、保険料について免除または軽減すべきとの意見。

【年金資金を活用した教育資金貸付制度】
総合的な次世代育成支援策の一環として、若い世代が年金制度のメリットを受けられるよう、若者に対する貸付制度を創設すべきとの意見。
少子化の要因となっている教育費負担を軽減する等の観点から、貸付制度の意義はあるのではないかとの意見。
すでに他の制度により貸付制度が存在しており、年金資金を本来の目的である年金給付以外の目的に流用すべきでないとの意見。
年金資金の損失リスクを招きかねないことや、特殊法人整理合理化の方向に逆行すること等から、新たな貸付制度を創設すべきでないとの意見。
(4) 派遣労働者・失業者
【派遣労働者等に対する厚生年金の適用】
登録型の派遣労働者の「待機期間」における厚生年金の任意適用については、求職中の失業者と区別がむずかしく困難との意見。また、待機中も国民年金の適用はある。
派遣労働者等は短期・断続的に就労する者が多いことから、事務手続きの煩雑さの増大等を踏まえて、慎重に検討すべきとの意見。
派遣労働者が「待機期間」の度に国民年金の種別変更を行うという事務手続について、簡素化を考えるべきとの意見。
失業中の者についても、次の就労までの期間厚生年金に引き続き加入できる「継続加入制度」を創設すべきとの意見。一方、再就職せずに非労働力化する者との区分が困難との意見。
(5) 障害年金
障害年金をもらいながら働いている人が65歳になり老齢年金をもらうようになると、年金額が減ってしまうことになることから、障害基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせを考えるべきとの意見。
保険料を拠出すべきであったにもかかわらず拠出せず無年金になった者に年金を支給するのは、拠出制の年金保険としては困難であり、年金を受給していない障害者には、基本的には福祉的措置で対応すべき。
20歳以上で障害基礎年金を受給していない障害者については、障害者福祉施策と年金制度(当面、国庫負担相当分)双方の組み合わせによる所得保障制度を導入すべきとの意見。

7.女性と年金

論点 考え方
(1) 女性のライフコースと世帯モデル
【基本的考え方】
女性の就業の増加、ライフコースの多様化などを踏まえ、個人の多様な選択に中立的な制度の構築を目指すべきである。
配偶者の加入する制度により、その被扶養者の年金が変わることは不適当であり、制度の個人単位化を図るべきであるとの意見。

【世帯モデル等】
被用者世帯における給付水準の妥当性を所得代替率で判断する場合、所得代替率は世帯類型別に相当の差があることから、世帯類型別に複数のモデルで検討する必要があるとの意見。
(2) 第3号被保険者制度
【年金権分割案】
第2号被保険者が納付した保険料について、年金給付上、世帯で夫婦が共同で負担を行ったものとみなして、被用者世帯の年金の個人単位化を図るべきとの意見。
年金権分割案は、世帯単位での給付と負担の関係を維持しつつ、個人単位化を進めるものとして考えられるとの意見。
年金権を分割すれば、妻(あるいは夫)の貢献が目に見えるようになる点で、現行制度の見直しが図られるとの意見。
年金権分割案を採用するのであれば、共働き世帯等2号−3号世帯以外の世帯に対しても分割を認めるべきとの意見。
年金権は一種の財産権と考えられるため、分割される側への十分な情報提供と同意を得るための仕組みが必要との意見。
分割を認めることとした場合でも、3号被保険者が負担することなく基礎年金が支給される点は変わらず、不公平感は解消されないとの意見。
離婚していない夫婦は分割する必要がないとの意見。

【負担調整案】
妻も保険料を負担して老後の保障を得るとともに、共働き世帯や独身者の不公平感を是正する上で現実的との意見。
応能負担という厚生年金の原則を変更するのは不適当、また夫婦の合計賃金が同じでも片働き夫婦が共働き夫婦よりも保険料額が高くなり、水平的公平性に反するとの意見。
負担調整案−I(注1)は、応能負担原則の厚生年金に応益負担を持ち込むことは不適当。また、逆進性が高くなる可能性があり、問題があるとの意見。
負担調整案−II(注2)により、段階的に個人単位での公平性を徹底していく方向がよいとの意見。
負担調整案−IIは、片働きの被保険者が不利となり、雇用中立的でなくなるとの意見。
(注1) 被用者グループにおいて、応能負担(定率保険料)と応益負担(定額保険料)を組み合わせる案
(注2) 第2号被保険者の定率保険料を、第3号被保険者の基礎年金に関する拠出金負担分を除いて設定し、第3号被保険者に関する拠出金負担に要する費用を第3号被保険者を抱える第2号被保険者の間で定率で負担する案

【給付調整案】
基礎年金を受給するために定額保険料を支払う第1号被保険者との公平性は担保されるとの意見。
老後に必要な基礎的費用を賄うという基礎年金制度の趣旨に反するとの意見。
夫婦の合計賃金が同じでも片働き夫婦が共働き夫婦よりも年金額が低くなり、水平的公平性に反するとの意見。

【第3号被保険者縮小案】
第3号被保険者制度は現在の社会経済の実態に適合し、社会保険の応能負担の原則に則した制度であり、その範囲は縮小するとしても、制度の大枠は維持すべきとの意見。
当面、厚生年金の適用拡大や被扶養者認定基準の見直しにより、第3号被保険者を縮小してくことで対応すべきとの意見。
短時間労働者への適用拡大を行ったとしても、第3号被保険者縮小の効果は小さいとの意見。

【その他】
4案のいずれによっても、世帯類型による所得代替率の格差は残り、基礎年金制度の見直しが必要との意見。
基礎年金を税方式化することにより、公正な負担の実現につながり、第3号被保険者問題の解決に資するとの意見。
(3) 遺族年金
【高齢期の遺族配偶者に対する年金給付】
自らの保険料納付が給付額に反映される仕組みとする観点から、まず本人の老齢厚生年金の全額受給を基本とし、遺族厚生年金との差額を支給する仕組みとすべき。
受給方法IV(注)は、共働きと片働き世帯の公平性の確保につながるとの意見。
 (注)(1) 妻自身の老齢厚生年金は全額支給、(2)遺族年金の水準を「遺族配偶者(妻)自身の老齢厚生年金と死亡した配偶者(夫)の老齢厚生年金」の一定割合とし、妻自身の老齢厚生年金との差額を遺族厚生年金として支給する案・ 受給方法IVでは遺族年金額の低い者の年金額を下げたり、より高い共働き等の者の年金額を引き上げたりすることとなり必ずしも適当でないとの意見。
受給方法IVを導入しつつ、年金財政上厳しい状況にならないような割合を決定すべきとの意見。
共働きと片働き世帯の公平性を確保し、個人単位化の方向性を確保する上では、原則として遺族厚生年金の水準は報酬比例年金の1/2とすべきとの意見。
夫婦間の年金分割の導入により、老後はそれぞれ自分自身の年金で暮らすようになり、遺族年金は不要となるのが将来的な方向であるとの意見。

【若齢期の妻等に対する年金給付】
子のいる若齢期の妻については、現行制度を維持すべきである。
子のいない若齢期の妻については、遺族厚生年金は有期給付とするなどの見直しを行い、就労支援に重点を置く方が望ましい。例えば、一定期間又は一定年齢までの支給や一時金とすべきとの意見。
子を有しない中高齢期の妻については、雇用機会、雇用条件等を考えると、まだ遺族年金の必要性がある。

【支給要件における男女差】
男女で雇用機会、雇用条件等に格差がある現状では、現行制度の男女差はやむを得ない。
遺族年金の支給要件における男女差はなくすべきとの意見。
男女の支給年齢要件をどちらにそろえるかは、将来の遺族年金のあり方としてどのような方向性を目指すかという観点から考えるべきとの意見。

【生計維持要件】
被保険者の死亡時に認定基準以上の収入がある場合でも、受給権を与えた上で支給停止とする扱いとすべきとの意見。
生計維持要件については、高すぎるので見直すべきではないか、その場合遺族となった者の毎年の年収に応じて年金額を段階的に調整する仕組みとすべきとの意見。
(4) 離婚時の年金分割
【離婚時の年金分割制度の導入】
離婚した妻自身の年金による生活保障は現状では不十分であり、老齢厚生年金の分割を実施すべきである。
年金による生活保障を受けられなくなることから離婚したいのに離婚できないという現行制度の問題を解決するために離婚時の年金分割は必要との意見。
婚姻期間中から年金権を分割すべきとの意見。

【離婚時の年金分割の仕組み】
夫の老齢厚生年金の受給権が発生していない時点での離婚についても、年金分割を認めることが望ましいとの意見。
分割の有無及び分割割合等については、夫婦の合意により決定し、合意が得られない場合は、裁判所の審判等により決定するべきとの意見。
夫婦の合意がない場合に、離婚当事者が年金受給権の分割を、財産分与の一環として裁判上の請求を行えるとするためには、配偶者が年金受給権の分割請求権を有することとする必要があるが、年金受給権という特殊な債権について民事上の請求権を法的に与える根拠は、現時点では十分な合意となっていないなどの問題があり、次期改正では合意に基づく分割をまず導入することが適当とする意見。
短期間の婚姻や若年者同士の離婚について、分割を認める必要性は薄いのではとの意見。一方、短期間の婚姻や若年者同士の離婚についても分割を認めるべきとの意見。
事実婚については、内縁関係についての婚姻期間の証明が難しいという問題があるとの意見。一方、事実婚関係の明確な証明が得られた期間に限っては分割を認めるべきとの意見。
分割は制度改正後の離婚に限るとしても、分割の対象となる年金受給権については改正前の婚姻期間を含めるべきとの意見。

【その他】
離婚の場合に限っての年金分割でなく、婚姻期間中の2号−2号についても認めるべきとの意見。一方、婚姻期間中の分割は問題が多いとの意見。

8.国民年金保険料の徴収

論点 考え方
国民年金保険料の徴収
国民年金の納付率の低下は年金制度の根幹をゆるがす問題。徹底した対策により納付率の回復に全力をあげるべき。
国民に対して、年金広報や年金教育により、制度の意義・役割、さらに保険料納付の有利さについて正しく理解してもらう中で、保険料納付は国民の義務であるという意識の徹底を行うことが必要。
悪質な滞納者に対しては、滞納処分を行うべき。
強制徴収を確実に行うための仕組みを構築すべき。
現実に負担能力がない、又は低い者については免除すべきであり、現在の免除の仕組みを更に見直すことが必要。
納付督励対策の実施にあたっては事務コストの面から費用対効果を考慮すべきとの意見。
保険料の時効については、現在の2年では短すぎるのではないかとの意見。
定期的に納付実績や将来の受給見込みなどを自ら確認できる仕組みを構築し、その仕組みを通じて、保険料納付を促進していくべきとの意見。
未納者に対しては、個人年金の保険料控除の適用を除外することや、国民健康保険証、パスポート、運転免許証等の取得・更新の要件として保険料納付を入れるべきとの意見。

9.被用者年金の一元化

論点 考え方
被用者年金の一元化
公的年金制度の一元化については、 被用者年金制度の統一的な枠組みの形成を図るために、厚生年金保険等との財政単位の一元化も含め、更なる財政単位の拡大と費用負担の平準化を図るための方策について、21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐべき。
公的年金制度の安定化と公平化を図るため、被用者年金(国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済及び厚生年金)の統合を早期に実施すべきとの意見。

10.福祉施設等

論点 考え方
福祉施設等
年金の福祉施設については、これまでも必要な見直しを行ってきたところであるが、厚生年金及び国民年金の厳しい財政状況並びに福祉施設を取り巻く社会環境や国民ニーズの変化等を踏まえ、その見直しを行うべき。
現行の年金住宅融資や大規模年金保養基地については「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月19日閣議決定)のとおり早期に廃止すべき、あるいは、被保険者還元の新たな施策については特殊法人改革との関係で慎重であるべきとの意見。
長期保険の年金制度は、40〜45年間保険料を納めるのみで、短期保険と違ってメリットが少ないことが特に若い世代の年金制度への無関心や未加入・未納問題を生んでいるとすると、年金制度のメリットを示し、年金制度の理解を深めるための施策はあってもよいのではないかとの意見。

11.企業年金等

論点 考え方
企業年金の役割
公的年金の改革と合わせ、多様化する企業・従業員の要望への対応を含め、企業年金等の役割を一層高めるべき。また、自助共助に対する政策上のインセンティブ、とりわけ税制上の支援措置を充実すべき。
厚生年金基金制度
厚生年金基金の財政の健全化を確保するため、免除保険料率の凍結解除を行い、予定利率の引下げ分、死亡率の改善分等を反映させるべき。その際、免除保険料率の個別化を進め、少なくとも上下限を拡げるべき。
基金は自己責任の下に財政健全化を図ることが基本であるが、予定利率の変更や死亡率の改善等、基金の責任とは言えない過去期間に係る負担増の部分については、一定の調整を行うべき。なお、凍結解除に伴う最低責任準備金の見直しの際には、現在の仕組みとの連続性に留意すべき。
いわゆる代行割れ基金についても、基金の自己責任による財政健全化が基本であるが、国民に対する十分な説明の下、解散時の分割納付や納付額の特例を行うべき。また、分割納付に際しては、将来の返済が確実に行われるための措置が必要。
確定給付企業年金制度
確定給付企業年金等のポータビリティについては、厚生年金基金連合会による中途脱退者の通算制度の拡大、厚生年金基金・確定給付企業年金間や厚生年金基金・確定給付企業年金から企業型・個人型確定拠出年金への資産移換が可能となる措置を講ずるべき。
支払保証制度については、受給者保護のため導入すべきという意見と、モラルハザードや全体的コストの観点から導入すべきでないとの意見。
確定拠出年金制度
拠出限度額の引上げを図るべき。
マッチング拠出については、認めるべきという意見と、認めるべきでないとの意見。
中途脱退について、脱退一時金の受給要件の緩和をすべき。
企業年金等に係るその他の論点
特別法人税については廃止すべき。
給付減額の要件の緩和や財政検証の弾力化等、企業年金の運営の弾力化について検討が必要との意見。
企業会計基準については、代行部分は退職給付債務の算定対象から除外するなど、中長期的観点から運営される年金制度の実態を反映したものとなるよう早急に修正すべきとの意見。

12.年金改革と他の社会保障制度改革

論点 考え方
年金改革と他の社会保障制度改革
給付水準の設定に当たっては、医療、福祉、税制との関連を含めて総合的な検討が必要との意見。
年金改革にあたっては、将来の現役世代の負担を過重なものにしないよう、国民負担率の上昇を極力抑制するという観点を念頭に置くことが必要。


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