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年金制度改正に係るこれまでの意見の整理

検討項目 論点 委員意見
1. 年金制度改正の基本的な視点
年金制度改正の基本的な視点をどう考えるか。
【現役世代の年金に対する不信感を払拭する改革を目指すべきとする意見】
年金制度は、個人で考えても半世紀を越える安定性があって初めて信頼するに値するものとなる。今問われているのは、この信頼である。(大山・山口・向山)
現役世代の制度に対する不信感、不安感の払拭を図り、将来にわたって持続可能な制度を構築することが必要である。具体的には、「保険料負担」を固定し、「世代間のアンバランスを解消」するとともに、「国民年金の空洞化の解消」、「世代内の負担の不公平の是正」を図り、「積立金の在り方の見直し」などを行う必要がある。(井手・岡本・矢野)
改革の際に重要な視点の一つは、若年層や現役世代の年金不信を払拭できる改革を志向することである。(翁)
揺るぎない制度を構築し、安心のメッセージを発することで、年金制度に対する不安感・不信感を払拭することが必要。(堀)

【給付水準と現役世代の保険料負担をバランスのとれたものにすべきとする意見】
今回の年金改革では、現役世代と企業の負担の限界を踏まえ、保険料負担に軸足を置いた制度、持続可能な制度を確立すべき。また、現役世代の負担を考慮しつつ、既受給者を含め、国民全体で痛みを分かち合うことが不可欠である。(矢野)
現役世代に比べて遜色のない所得を有し、資産において恵まれている高齢者にも応分の負担を求めて世代間の公平化を進めるべきである。(山崎)
将来世代の保険料や税負担の総額を負担可能な限度に抑制するためには、給付システムの思い切った改革と給付水準の見直しが必要である。(神代)
世代間の公平を図り、持続可能な制度とするためには、負担の上昇を極力抑制する観点から、給付の徹底的な見直しを行うべきである。また、世代間の年金給付額と保険料負担の関係を明らかするべきであり、試算結果について国民に開示すべきである。(井手・岡本・矢野)
制度への信頼をえるためには、“応能負担と負担に応ずる給付”という年金保険の原点に立ち戻る必要がある(“必要に応じる給付”は、現金給付では2次的であるべき)。(大澤)
長期の拠出を求める年金制度で拠出インセンティブを高めるため、給付は拠出に応じたものとするべき。(大澤)

【少子化、高齢化の進行に対し、柔軟に対応でき、かつ安定した制度とするべきとする意見】
社会保険料の引上げによる負担増と給付水準の抑制を議論しなくてもよいような、中長期的に持続可能な制度を確立すべき。(岡本)
今回の財政再計算は将来にわたって大きく改正する必要のない持続可能な制度を確立するまたとない機会であり、負担と給付のあり方を中心に現行制度を抜本的に見直し、年金制度に対する国民の信頼を回復する必要がある。(矢野)
年金の姿を決めるにあたって政治と行政にだけまかせるのではなく、国民全体の努力を引き出すインセンティブを制度自体に組み込むことが望ましい。(渡辺)

【将来の年金を実感できる分かりやすい制度とするべきとする意見】
個人に対する拠出と給付の関係を明確に告知することは、若年層や現役世代の年金不信や不安を解消するために極めて重要である。(翁)
負担と給付の関係について国民に分かりやすい制度に変えていくべき。(岡本、矢野)
若い世代に関して言えば、不信感をこれ以上増大させないためにも、将来の年金額というものを明確に情報提供すべき。(杉山)

【就労形態、ライフスタイルの変化に対応できるものである制度とするべきとする意見】
一人の人間の生涯の働き方を自営業、被用者、専業主婦というような形で固定的にとらえることは適切でない。ライフスタイルの多様化、就業の多様化を反映した制度の充実が必要。(岡本)
女性に限らず、男性についても多様な働き方が増加しつつある中で公的年金についても時代に適した抜本的な改革が必要。(井手)
固定的な性別役割等を反映した制度から、できる限り中立的な制度へ変えていくべき。(大澤)
自営業人口の減少と雇用者のフルタイム安定雇用という20世紀後半の条件を前提とせず、雇用就業が流動化する今後の条件に即応できる制度とするべき。(大澤)
ライフスタイルの多様化や変遷に対して、中立な制度とするべき。(大澤)
今後、女性や高齢者が就労し、インターネット等を使用したSOHOでの働き方が増えていくことを考えれば、多様な働き方に応える年金制度を検討していくことが必要。(杉山)

【成熟した社会における公的年金の役割を再考する必要があるとする意見】
これまで公的年金制度は、制度の大きな枠組みは変えずに部分的に対処してきたが、かつての肉体労働を中心とした労働内容が変化し知的な部分が大きくなった結果、労働の負担も小さくなり、一生働き、あるいはボランティア活動を通じて社会と関わりを持っていきたいと考える人も増えている中で、公的年金制度についても、多様なニーズや貢献を考慮に入れ、抜本的な改革の是非を検討するべき。(若杉)

検討項目 論点 委員意見
2. 公的年金制度の基本的な考え方・体系
   
制度の体系についてどう考えるか。
(1) 現行の2階建て方式(基礎年金+報酬比例年金)の維持
【現行の2階建て方式を維持すべきとする意見】
現役時代の主たる収入源が賃金である被用者グループについては、退職により主たる収入源を喪失することから、引退前の所得水準が一定程度反映される現行の2階建て方式を、今後とも維持すべき。しかし、現役時代の所得格差を高齢期にそのまま持ち込まないよう、所得再配分機能を現行以上に強めるべき。(大山・山口・向山)
被用者グループと自営業者グループでは就業形態などが異なり、現行の体系にならざるを得ない。(大山・山口・向山)
退職一時金と企業年金がそれなりの水準で出ている労働者は半分に過ぎない。2階部分を民営化してうまくいかなくなったら、多くの労働者が基礎年金のみという状況になってしまう。(神代)
厚生年金の適用漏れとみるべき雇用者が多くおり、徴税機関との連携、労働保険との適用・徴収の一元化により適用を進めるとともに、制度横断的に利用できる社会保障番号制度を導入すべき。(山崎)
(a) 基礎年金を社会保険方式とすべきとする考え方
【社会保険方式を維持すべきとする意見】
社会保険か税かは、単に財源(保険料、税)が異なるだけでなく、保障システム(社会保険、社会扶助)が異なる。社会保険方式は、リスクに備えて保険料を拠出するという自助の要素が内在し、また、その見返りとして所得・資産にかかわらず給付が行われる。また、収支のバランスをとる必要があるため、コスト意識が高まる。税のみを財源とした社会扶助方式では、その給付水準は生活困難の救済に必要な程度に抑えられ、かつ、所得制限などが付随してしまう。(堀)
市場経済に適合するのは、共助を基本におき、公助によってこれを補うという関係の社会保障制度である。社会保険方式を堅持しつつ、主要財源としての保険料と補足的財源としての租税負担を適切に組み合わせるのが妥当。ただし、社会保険の適用と保険料徴収力の強化が不可欠。(山崎)
税方式化は、何もしなくても一定年齢に達すれば年金が支給されるという点で違和感がある。所得調査も避けられない。保険料を納めた人がそれに見合った給付を受けるというシステムが望ましい。(渡辺)
年金制度の基本的な精神は、自分の老後の所得は自分の所得で確保することにあり、その意味では、加入して保険料を支払う社会保険が理念上相応しい。ただし、我が国では年金においても社会扶助の要素が入っているので、税財源が加わることとなる。(若杉)
社会保険方式の方が給付と負担の関係が明確であり、負担増について国民の合意を得やすい。負担を先送りすることなく、税方式化に伴う財源を確保することが可能か。(堀・山崎)
現行の社会保険方式は、国民年金の未納の問題、第3号被保険者の問題などがあるにしても、95%の人はきちんと保険料を払っている。消費税はいったん税率が上がっても政権によって変わる可能性があり、年金制度に政治的不安定要因を持ち込むことになる。(神代)
事業主も、保険料の拠出を通じてサラリーマンの老後の生活保障に役割を果たす責任があるのではないか。(堀)
現行制度の基礎年金拠出金についてどう考えるか。
【厚生年金保険料の基礎年金に対する部分と報酬比例部分を分離すべき、もしくは負担の内訳を明確化すべきとする意見】
厚生年金の基礎年金拠出額は増加しており、負担の構造を明らかにするために厚生年金保険料の1階分と2階分を分離すべき。また、将来の基礎年金の税方式化のためにも必要。(矢野)
現役世代の制度に対する理解を高め、不信感・不安感を払拭していく観点から、保険料の使途を明確にしていく必要がある。特に、基礎年金拠出金制度を通じて、結果として未納者や未加入者の分まで負担を肩代わりしている財政運営のあり方は問題がある。(岡本)

【基礎年金拠出金の負担は制度ごとに分けて論じるべきではないとする意見】
基礎年金は全国民で負担すべきものであり、自営業者とサラリーマンに分けて負担を論じることは適当でない。仮に制度間の負担を比べるとしても、国民年金の未納者はその時点では負担を免れるが将来の給付も受けなくなることを考慮すべき。(堀)

【基礎年金拠出金を応能負担とすべきとする意見】
各被用者保険から支払われる基礎年金拠出金は、現在、各保険に加入する人の数に応じて割り当てられているが、これを応能負担化し、報酬総額に応じた額とするべき。(山崎)
(b) 基礎年金を税方式とすべきとする考え方
【基礎年金は税方式によるべきとする意見】
基礎年金部分と報酬比例部分については、意義と役割が異なり、所得捕捉の問題が解決されていない現状では、財源面で完全な峻別を行うことが必要。基礎年金については、全ての高齢者の基礎的な生活費の保障を行うものとして位置づけ、次期改正で全国民が薄く広く負担する消費税を活用して国庫負担を2分の1に引き上げるとともに、その後間接税による税方式へと転換すべき。(岡本・矢野)
税方式は、努力なしに老後の生活を丸抱えするということではない。(矢野)
国民年金の未加入・未納が増加しており、現行の保険方式による皆年金の確保は達成不可能である。真の国民皆年金の確立こそが信頼の基礎であり、資産・所得により給付を制約されない、全ての住民を対象とした普遍主義原則の観点から、税方式化に向けた制度再設計を行うことが必要。(大山・山口・小島)
基礎年金の税方式への転換は、男女ともに人生を通じて多様な働き方をするようになった時代に適した抜本的な改革のひとつとして有効。第3号被保険者問題の解決にも資する。(井手)
現在の基礎年金制度における国庫負担の位置付けはあいまいである。将来的には国庫負担はスウェーデン型の最低保証年金のような位置付けにしていく方向を検討すべき。(翁)
(2) 報酬比例年金への一本化
【サラリーマングループと自営業者グループを区分せず報酬比例方式の方向を目指すべきとする意見】
現行の体系では、雇用就業の多様化、流動化により、相対的に第2号被保険者の減少と第1号被保険者の増大が見込まれることに、対応できない。全国民加入の一元的制度へ再構築すべき。(大澤)
被用者グループと自営業者グループがあたかも固定的に異なるかのように見る見解は、自営業人口の減少と雇用者のフルタイム安定雇用という20世紀後半的諸条件に立脚している。(大澤)
第1号被保険者は必ずしも昔ながらの自営業者ではないので、「第1号はサラリーマンと違って一生働けるから基礎年金だけでいい」といった考え方の見直しが必要。(杉山)
ワークスタイルの多様化が進んでおり、仕事の内容でなく「立場」により保険料の負担や給付が変わることは適当でない。また届出漏れなどで、より一層の空洞化が生じる恐れもある。(井手)
報酬比例年金への一本化を目指す場合、自営業者の所得把握についてどう考えるか。
【自営業者グループの所得把握の問題点を指摘する意見】
自営業者も所得に応じて保険料を負担する所得比例方式をとるのが望ましい。ただし、所得把握をどうするかがあり、現状では第2号と同じ条件は難しいと思われる。(杉山)
自営業者にも所得比例の年金が望ましいとしても所得捕捉による保険料算定が困難。(大山・山口・向山)
自営業者についても所得捕捉に努め、将来的には応能負担制に改めるべきだが、その場合に給付面にどのように反映させるかは今後の検討課題。なお、国民年金の保険料免除は多段階にすべき。(山崎)
当面は現行の制度体系を維持し、中長期的(所得の十分な把握が前提)には自営業者と被用者制度を一元化すべき。(堀)
理想的には、年金制度を所得比例の1階建てに一本化していき、基礎年金部分を最低保証として国庫負担で賄う方向が分かりやすく、合理的。そのためには、サラリーマン被用者と自営業者間で公平な所得の捕捉体制の整備をされるべき。(翁)
報酬比例年金に補足的な給付を組み合わせることについてどう考えるか。
【報酬比例構造に税財源による補足的な給付を組み合わせて対応する意見】
国民一人一人が同一の所得比例年金を目指し、低所得者を対象にミニマム年金を設定するべき。(今井)
拠出インセンティブのメリットがある賦課方式で所得比例の制度と併せて、累進所得税を税源とする一般財源によるミニマム年金を創設すべき。(大澤)
スウェーデン方式を参考に、所得比例とし、無・低年金者に対して税財源による保証年金を充ててはどうか。(杉山)
2階建て構造の骨格についても当面は維持するが、自営業者等の十分な所得把握、男女間の賃金格差の縮小、女性の就労環境の改善等が実現すれば、社会保険方式の1階建て年金(所得比例年金)+最低保障年金制度の導入を検討。(堀)

検討項目 論点 委員意見
3. 給付と負担の在り方
   
(1) 給付と負担の水準
給付水準についてどう考えるか。
【一定の水準の確保が必要とする意見】
老後生活の基本部分を保障する水準の確保が必要。基礎年金と厚生年金をあわせた給付水準は、将来にわたり、在職時の勤労収入の一定割合(可処分所得間の比較で所得代替率55%)を保障すべき。(大山・山口・小島)
モデル年金の給付水準をもらえる人ばかりではなく、また、高齢者の医療・介護の負担や税負担も増えていく。給付水準を引き下げるべきではない。基礎年金を税方式化すれば、将来的にも15%程度の保険料率で今の給付水準を維持できる。(小島)

【給付水準を引き下げるべきとする意見】
たとえ現役世代が納得のいく、合理的な範囲で負担を増加させたとしても、将来の給付水準の低下は避けられない。世代間の公平が図られた持続可能な仕組みにするため、負担上昇を極力抑制する観点から、給付の徹底した見直しを行うべき。(岡本・矢野)
高齢者世帯の平均的な消費支出のほとんどをまかないうる現行の給付水準は十分に高く、消費支出に教養娯楽費や交際費等も含まれることを考えれば、モデル年金額を現行水準よりも低い水準で設定しても合理的。(岡本・矢野)
公的年金の代替率は高すぎるので、30%程度に引き下げていくべき。保険料を固定し、新しい受給者から給付の引下げを行うこととしてはどうか。公的年金の役割の縮小分は、私的年金でカバーされるべき範囲である。(若杉)
物価下落の際も物価スライドを実施すべき。また、一定の割合を超えて上下した場合にスライドを実施する「ゾーン制」とすべき。(堀・渡辺)

【既裁定年金の給付水準は、物価スライドを停止している分を反映させた後の水準を前提にすべきとする意見】
本来制度としてあるべき水準として、物価スライドについて、少なくとも過去3年間停止している1.7%分も全て反映させた後の水準を前提に検討すべきである。(岡本・矢野)
保険料引上げについてどう考えるか。
【保険料の引上げは不可欠とする意見】
少子高齢化が大幅に進む中で、公的年金制度を将来も維持するためには、保険料引上げの凍結解除と段階的引上げは必要不可欠。(堀)
保険料の引上げの凍結は、財政規律という観点からは好ましくない。世代間の負担の公平を考え、できるだけ早く最終保険料率に到達させるべき。西欧諸国の保険料水準と比較すると、我が国はまだ低い段階にある。引上げを怠ると、高齢化のピーク、あるいはその後の保険料水準が極めて高くなる。(近藤)

【保険料引上げ計画を前倒しすべきとする意見】
保険料の引上げ計画を前倒しするべき。少なくとも前回改正での保険料凍結の影響は早急に解消すべき。前倒しにあたっては、年齢別の保険料引上げ計画もありうるのではないか。(山崎)
最終的な保険料率への引上げは、次世代への負担をできるだけ軽くするためにも、2025年といわず、到達時期を前倒しする方向で検討を進めていく方がよいと思う。(杉山)
保険料の引上げが凍結され、計画より5年遅れている状況である。少しでも早く最終保険料に到達すべき。(近藤)
保険料の小刻みな引上げは、政治経済情勢によって実現できなくなる可能性があり、最終保険料を低くするためにも、保険料を早めに引き上げるべきである。(翁)

【安易に保険料を引き上げるべきでないとする意見】
企業の活力を奪い、経済の活性化を阻害し、さらには企業の雇用維持努力に水を差すことになるので、安易に保険料負担を引き上げるべきではない。(矢野)
最終的な保険料水準についてどう考えるか。
【20%程度にすべきとする意見】
企業にとっては、法定福利費の負担が大きくなっているため、保険料率はできるだけ抑えるべきであるが、「方向性と論点」に記載されている保険料率20%は参考にするべきである。(神代)
最終保険料率は20%程度が許容できる限度として、給付水準を維持するための方策について検討する必要がある。(大山)
将来の保険料水準は、前回改正で設定された20%程度。その程度であれば、諸外国との比較でみても許容されるべき。(山崎)
非現実的な40年間夫片稼ぎ世帯を例外として、その他の世帯類型では、給付水準(所得代替率)が50%を切るようになることにてらせば、20%程度の保険料率は妥当ではないか。(大澤)

【20%を下回る水準とすべきとする意見】
医療保険や介護保険の負担を考えると、年金の最終保険料20%は大きすぎるのではないか。(翁)
今回の制度改正では、保険料固定方式を採用し、負担に軸足を置いた改革を実現すべきである。医療・介護等の社会保険料負担や世代間の不公平を是正するという考え方に立って、給付の見直し、積立金の取崩し、基礎年金部分の間接税方式への移行を進める中で、現行の年収の13.58%を極力上回らない水準で長期間固定すべきである。したがって、最終保険料率を現行水準に固定した場合、加えて、例えば15%程度に固定した場合の試算を、基礎年金の国庫負担割合を2分の1を超えて引き上げた場合ともあわせて、国民に示すべきである。(井手・岡本・矢野)

【20%を下回る水準でも給付水準の維持は可能とする意見】
空洞化の解消、厚生年金の適用拡大、さらに遺族年金の見直し等を行えば、最終保険料を20%まで上げなくても今の給付水準を維持できる。また、基礎年金を税方式化すれば、15%程度の保険料率で十分給付水準の維持は可能。(小島)
(2) 給付と負担の見直し方法
少子化の進行等の社会経済情勢の変化を踏まえて給付と負担を見直す方法についてどのように考えるか。
 
(a) これまでの方式の維持
【これまでの方式を維持すべきとする意見】
老後生活の基本部分を保障する水準の確保が必要。基礎年金と厚生年金をあわせた給付水準は、将来にわたり、在職時の勤労収入の一定割合(可処分所得間の比較で所得代替率55%)を保障すべき。(大山・山口・小島)
マクロ経済スライドでは、少子化の進行で給付水準が限りなく低下し、老後の生活保障の柱としての役割が損なわれ、年金制度への信頼性を失うおそれがある。特に、基礎年金、障害年金、遺族年金、低年金受給者も一律に水準低下となれば、生活保障としての機能が喪失される。そのため、マクロ経済スライドは、導入するべきではない。(小島)
段階的に保険料の引上げと給付の引下げを行うという保険料固定・給付自動調整という案では、若い世代の不信感が強くなる。賃金が上がらず、自助努力で老後に備えるだけのゆとりがないので、あらかじめ給付水準が決まっていることが必要。(山口)
保険料固定方式の問題は、自分の受給する年金額が裁定時まで分からないことだ。(大山)
(b) 保険料固定方式
【保険料を固定することに賛成する意見】
保険料固定方式は、世代間の負担の公平の観点を正面から打ち出した考え方であり、画期的なもの。(神代)
次回の改正にあたっては、保険料の負担の側面に軸足を置くこととし、保険料負担については将来にわたり固定することを制度の基本とすべきである。(岡本・矢野)
保険料固定方式については、負担に対する先の見えない不安から解放されるので賛成。(杉山)
保険料固定方式については賛成だが、将来世代への負担が過度にならないようにすることが前提。(翁)
現在の厳しい経済情勢の下で、保険料引上げについて国民の合意を得、かつ、保険料引上げについての政治的リスクを避けるために、将来の段階保険料を国民に明示し、かつ、それを固定するという約束をするのは止むを得ない選択。(堀)
スウェーデン改革のいくつかの要素のうち、保険料を固定して社会経済情勢の大きな変化に対しては自動的に給付水準を調整するという考え方は、我が国にも応用できるのではないか。(近藤)
制度の見直しのたびに給付の抑制と負担の増加の繰り返しで、制度に対する国民の信頼は揺らぎ始めている。(渡辺)
保険料固定方式とした上で、さらに講ずべきことを検討するべきとする意見
【保険料固定方式を採用した上で、さらに講ずべきことを検討するべきとする意見】
給付乗率の引下げなど、高年齢層の世代も負担を分かち合う仕組みを考えるべきである。(翁)
世代間格差の是正のため、給付乗率、モデル年金の見直し、高額所得者への給付制限等についても議論する必要があり、それぞれの財政への影響を示すべきである。(岡本・矢野)
保険料固定方式の採用にあたっては、世代間の不均衡を是正するために、給付面と負担面の双方での見直しを急ぐべき。(山崎)
将来世代にとっては、給付調整のリスクがみえないところが保険料固定方式の難点。そうした不安の解消のため、世代間の公平性をわかりやすい指標を用いて検証し、説明していくことが前提。その上で、現状の段階でも、その程度の給付調整が可能なのか、公的年金控除の縮減についてどの程度まで行えるのか、について、十分かつ綿密な検討を行うべき。(翁)
(3) マクロ経済スライド
マクロ経済スライドを行うときのスライド調整率についてどう考えるか。
【マクロ経済スライドが適当であるとする意見】
手取り総賃金という国全体の経済力(=保険料負担能力)の伸びに見合ったスライドを行うというもので、負担者の観点からは理論的に正当化し得る。(堀)

【実績準拠法によるべきとする意見】
将来予測の変動によって変わる将来見通し平均化法よりも、実績準拠法が望ましい。(堀)

【将来見通し平均化法によるべきとする意見】
給付面に関しては、将来見通し平均化法などにより、水準適正化を前倒しするべき。(山崎)

【将来の少子化を見通して早めに給付水準を調整すべきとする意見】
実績準拠法では2025年以降に給付の調整が集中するため、現役世代の納得を得ることは困難。少子化を見通して早めに給付水準を調整していくべき。(矢野)
時間をかけて給付調整をする場合、将来世代に給付削減のしわ寄せが生じる。(岡本・矢野)

【長寿化などへの対応の必要性を指摘する意見】
既裁定年金について、寿命の伸びを給付の調整に反映するような仕組みが組み込めないか。(近藤)
寿命が非常に伸びた場合には、スウェーデン方式のような考え方を入れるかどうか、議論するべきである。(神代)
給付スライドについては、少子高齢化、運用利回りの低下などのリスクを自動的に給付額に反映できる仕組みとするべきである。(翁)
平均余命の伸びも加味した調整も検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
年金改定率の下限についてどう考えるか。
【名目年金額下限型を支持する意見】
年金改定率の下限については、名目年金額下限型にするべきである。(大澤)
物価下限型よりも名目年金額下限型の方がより望ましいのではないか。(堀)
名目年金額下限型を採用するか、あるいはさらに踏み込んで、一定水準を超える年金については年金額の改定を当分の間凍結するということも考えられよう。(山崎)

【物価下限型及び名目年金額下限型の問題点を指摘する意見】
物価下限型を採用すれば既裁定者については調整が十分働かない。名目年金額下限型を採用すれば、名目額が保証されるため、スライド率に係る指標が大幅なマイナスとなった場合に調整が十分働かない。これでは、世代間の負担と給付のアンバランスの是正の面で不十分。次期改正において、相当程度の引下げを実施していく必要があるので、名目額を減らすことも聖域化しないで検討すべき。(岡本・矢野)
マクロ経済スライドを導入の際は、世代間の負担と給付のアンバランスを解消するため、早期に引下げを実施していく必要があり、加えて、下限を設けずに、指標がマイナスになった場合は、名目年金額を減らすべきである。(井手・岡本・矢野)

【賃金と物価の関係を踏まえる必要があるとする意見】
既裁定者の物価スライドについては、賃金下落率が物価下落率より大きい状況では債務が拡大してしまうため、そうした期間のスライドの在り方については議論が必要である。(翁)
基礎年金と報酬比例年金について、別個に給付水準の調整を行うことについてどう考えるか。
【基礎年金については給付水準の調整はするべきではないとする意見】
前回の年金改正で最終的に基礎年金については手を付けないという形で決着が着いたので、基礎年金の給付水準の調整はするべきではない。(大山)

【基礎年金について給付水準の調整をするべきとする意見】
「方向性と論点」では基礎年金の水準も調整することとしているが、第1号被保険者の定額保険料を負担可能な範囲内に収めるためには、やむを得ないのではないか。(堀)

【基礎年金と報酬比例年金について、別個に調整をするべきとする意見】
基礎年金の給付水準の下限については生活保護の基準や改定方式が手がかりになるように思う。一方、二階部分の年金額の改定については、名目年金額下限型を採用するか、あるいはさらに踏み込んで、一定水準を超える年金については年金額の改定を当分の間凍結するということも考えられよう。<再掲>(山崎)
(3-2) 自動調整を行った場合の給付水準
保険料を固定し、給付の自動調整を行った場合の給付水準の下限について、どう考えるか。
【何らかの基準で給付水準の下限を検討すべきとする意見】
生活保護基準と年金給付水準の間には直接的な関連性はないが、社会保険年金に防貧機能が期待されていることからすれば両者が全く無関係だとも言えない。少なくとも基礎年金の給付水準の下限については生活保護の基準や改定方式が手がかりになるように思う。(山崎)
経済状況次第で所得代替率が45%以下に落ちては老後の保障にならないため、給付水準の維持については議論を深めるべきである。(大山)
給付の自動調整を行う場合、給付水準の下限については、積立金の取り崩しによって維持するべき。(大澤)

【給付水準が大幅に下がった場合は保険料も見直すべきとする意見】
将来の給付水準が定まらないため、老後の生活不安をもたらすおそれがある。給付水準があまりにも下がりすぎた場合には、保険料の見直しも必要ではないか。(堀)

【ILO第102号条約との関係を指摘する意見】
保険料固定方式については、給付水準が将来的に低下していくため、ILO第102号条約との関係を整理する必要がある。(小島)
我が国が批准したILO第102号条約の最低基準に抵触することにならないか検討が必要。(堀)
スウェーデン型で、環境変化が大きい場合、給付水準が限度を超えて下がってしまうことについては、一定の限度を設ける必要がある。ILO第102号条約にあるような水準がひとつの目安。(近藤)
  ※ ILO第102号条約
「標準受給者(年金受給年齢の妻を有する男子)について、30年拠出した場合に従前の所得額の40%の給付を確保すること。」
現在の年金受給者に対しても、一定の給付水準の調整を求めていくことについて、どう考えるか。
【既裁定年金についても調整するべきとする意見】
年金制度に対する国民の不信感を払拭するためには、全ての世代が痛みを分かち合うことが必要。既裁定年金についても、速やかに給付水準の調整対象とするべきである。(岡本・矢野)
労働力人口が減り始めた場合、現役世代の協力を得るためには、既裁定年金についても調整をする必要がある。(神代・山崎)
既裁定年金も適正化すべき(物価スライドを停止した従前額保障方式)。(堀)
平均余命の延びに応じて既裁定年金を減額することは、生涯の受給総額が変化しないので受け入れられるのではないか。(近藤)

【既裁定年金は可処分所得スライドとすべきとする意見】
既裁定年金にも可処分所得スライドを復活させ、現役世代の手取り賃金の伸びを反映した調整を行うべき。(小島)
(4) スライド制の在り方
物価変動率が賃金変動率を上回るような場合における既裁定年金のスライドについてどう考えるか。
【物価変動率と賃金変動率を比べ、低い方に合わせてスライドさせるべきとする意見】
賃金変動率と物価変動率のどちらか低い方に合わせてスライドさせることも考えるべき。賃金・物価の上昇局面においても同様に考えるべき。(翁)
賃金が物価を下回る時は、それを踏まえた調整をするべき。(山崎)

【物価変動率と賃金変動率のどちらか低い方に合わせたスライドには反対する意見】
物価か賃金のどちらか低い方に合わせてスライドさせた場合、年金水準は現役世代と差がつく一方になる。人口減少分を調整するのは別として、現役とのバランスを踏まえて給付水準を考えるべき。(堀)

【物価よりも賃金を重視すべきとする意見】
物価水準よりも賃金水準を重視してスライドさせるべき。その場合、お互いの助け合いが実感としてわかるように、可処分所得スライドとするべき。(大山)
(5) 高所得者に対する給付の在り方
高所得者に対する給付の在り方についてどう考えるか。
【高所得者への給付調整は行うべきではないとする意見】
同額の保険料を同期間拠出したにもかかわらず、所得・資産によって、一方は全額支給し、他方は減額・不支給とするのは、(1)保険料拠出意欲をなくし、(2)自助努力によって老後に備えた者を不当に差別するものであり、社会保険としての意義をなくす。(堀)
「高齢者の経済格差に配慮した給付抑制」といっても、公正な実施ができるのか。どのように所得を調査するのか。(近藤)

【公的年金等控除を見直すことで対応すべきとする意見】
高所得者の年金を減額・不支給とすべきとの議論があるが、むしろ公的年金等控除を見直すことによって対応すべき。(堀)
高所得者の給付調整などは行うべきでなく、公的年金等控除の見直しで対応するべき。(大澤)
(6) 年金課税
年金受給者に対しては、公的年金等控除により、現役世代と比較して優遇した措置が税制上講じられているが、世代間・世代内の公平を確保する観点からの見直しをどう考えるか。
【公的年金等控除を縮小するべきとする意見】
現役世代の拠出は非課税とした上で、高齢者を一様に弱者としてみなして税制上で優遇する現行制度を見直すとともに、拠出時・運用時非課税、受給時課税を原則徹底すべき。(井手・岡本・矢野)
公的年金等控除については、給与所得控除の水準にまで下げるべき。(大澤)
公的年金等控除については、当面給与所得控除の水準まで下げ、将来的には高齢者の生活実態等を踏まえた独自の水準を設定すべき。(山崎)
給与所得のある年金受給者に給与所得控除と公的年金等控除があわせて適用されるのは、過剰な優遇。いずれか一方を選択し、給与所得と年金所得を合算して課税すべき。(山崎)
拠出段階で非課税であること、給与所得等と比べ優遇しすぎていること等から、公的年金等控除は縮減する必要がある。(堀)
社会保険料控除によって所得税・住民税の課税ベースが狭くなっているという議論があるが、公的年金等控除の見直しによって公的年金額の多くを課税対象とすれば、この問題は解決できる。(堀)
控除の縮減は、国庫負担の1/2への引き上げについての、財源確保に対しては有効。ただ、国庫負担は最低保障としての役割を果たすことなども絡めて、国庫負担の将来のあり方を考えていくべき。(翁)
税制は、高齢者も現役と同様とすべき。(若杉)
老齢年金への課税は見直すべき。(小島)
年金課税の適正化も世代間の不均衡を早期に是正する上で効果的。(山崎)
拠出時・運用時非課税、受給時課税の原則を徹底し、現役世代の課税最低限を上回らない水準にまで課税最低限を引き下げるべき。公的年金等控除は縮小・廃止すべき。(岡本・矢野)
経済的弱者ではない高齢者には負担を求めるという所得再分配政策を考えていくべき。(翁)

【上記見直しの際、生活実態等への配慮が必要とする意見】
公的年金等控除の見直しは検討しなければいけない。しかし、高齢者世代は若い世代よりも所得格差が大きいことや、年金だけに頼っている高齢者世帯が6割もあることへの配慮が必要。その他の収入と併せて控除を考えていくべき。(向山)
年金税制は、基本的には給与所得と同じ基準によることが望ましい。ただし、改正する場合は、所得階層別に差をつけ、かつ経過措置をおいて実施することが望ましい。(神代)
年金課税は、仕送りをしている若い世代との不公平のない制度にすべき。ただし、資産の有無など高齢者内の格差にも配慮したきめ細やかな仕組みが必要。(杉山)

【遺族年金・障害年金の非課税措置も見直しが必要とする意見】
遺族年金・障害年金の非課税措置については、障害者の就業所得に対する課税等との均衡を図る観点から見直す必要がある。寡婦控除・障害者控除と統合するなど、非課税措置以外の方法もある。(堀)
遺族年金については、所得の総合課税を考えると、はじめから課税対象から除外するのはどうか。ただし遺族年金の課税については、受給世帯の生活実態を踏まえた検討が必要。(小島)
遺族年金・障害年金の非課税措置については、有子遺族と障害者に限定すべき。(山崎)
遺族年金が老齢年金化している現状からすれば、遺族年金を原則課税という考え方とすべきである。(井手・岡本・矢野)
年金収入に対する課税を強化した場合の増収分の取扱いをどう考えるか。
【年金制度に還元すべきとする意見】
公的年金等控除の見直しに伴う増税分は、基礎年金国庫負担率引上げの財源にする。(堀)
課税見直しによる税収は基礎年金の財源に充てるべきである。(小島)
年金税制の改革による税収を、基礎年金国庫負担2分の1への所要財源には及ばないものの、引上げの財源とすることが考えられる。<再掲>(神代)
年金課税の見直しによる増収分は、将来世代の保険料負担増を緩和するための基礎年金の国庫負担割合の引上げや、育児等の次世代育成支援に充てるべき。(山崎)

【子育て支援に充てるべきとする意見】
年金課税の見直しによる増収分は、将来世代の保険料負担増を緩和するための基礎年金の国庫負担割合の引上げや、育児等の次世代育成支援に充てるべき。<再掲>(山崎)
非課税になっている年金に課税し、その増収分を子育て支援、次世代育成支援に充てるべき。ただし、安易な現金給付や専業主婦にだけインセンティブがつくような時代に逆行したものでなく、「将来、年金の支え手になる人材の育成」という視点から取り組むべき。(杉山)
(7) 積立金の役割
積立金の役割についてどう考えるか。
【年金積立金は高齢化が進んだ段階における負担の軽減等の役割があるとする意見】
積立金は、高齢化のピークの保険料水準を抑え、その後においても最終保険料率を賦課保険料率より低くする役割を果たす。(近藤)
積立金の意義は、(1)高齢化が進んだ段階における負担の軽減、(2)負担の世代間格差の緩和、(3)高齢化に伴う貯蓄減少に対応するための投資資金の確保、(4)自分の老後の年金費用は可能な限り積み立てるという自助の要素の重視という点にある。(堀)

【積立方式としての性格付けが必要とする意見】
現在は将来の保険料負担を軽減するための積立金であり、年金債務の考えが全くないので、積立金の運用の責任等が曖昧にされる。それぞれの長所を生かした公的年金財政にするために賦課方式と積立方式とを併用すると性格付けし、積立部分の年金債務を明らかにして財政運営を行うことが望ましい。<再掲>(若杉)
賦課方式に偏った財政方式のリスク分散の上でも、確定給付型を含め一定の積立要素を明示的に組み込むべき。(山崎)
積立金の取り崩しについてどう考えるか。
【年金積立金を取り崩すべきとする意見】
その時点の給付に必要な額以上に保険料を引き上げる段階保険料方式を見直し、積立金を取り崩して保険料の引上げを抑えるべき。積立金を保有しても見込みどおりの収益を上げ続けられる保証はない。(大山・山口・向山)
賦課方式で、これほど積立金を持つ必要はない。基礎年金を税方式化すれば、その分積立金を減らすことができる。(小島)
望ましい積立水準については、現行の給付費の5年分程度から、高齢化のピークに向けて可能な限り抑制すべきである。(井手・岡本・矢野)

【年金積立金を取り崩すべきでないとする意見】
年金積立金を取り崩すことで当面は保険料を低くすることができるが、将来世代に対する責任を持つべき。高齢化のピークやその後における保険料の水準を考えると不適当である。(近藤)
将来の保険料負担を考えると、現在の積立金を取り崩すことは責任ある対応とはいえない。(渡辺)
(8) 経済前提等
財政再計算における経済前提等についてどう考えるか。
【厳しい前提で試算をするべきとする意見】
試算は、楽観的な前提によるのではなく、少子化が与える影響や、少なくとも現状のデフレ状況からいつ脱却できるかについて予想される厳しい見通しも視野に入れた前提で行わないと、世代間の公平性について判断できるものにならない。(翁)
経済前提の想定においては、マクロモデル等による検証を行うとともに、超長期にわたって楽観的な物の見方は止めるべきである。(井手・岡本・矢野)
足下の厳しい経済状況が、数年で良くなると見るのは楽観的だ。今後5年くらいを考えても、しばらくは世界的な競争の厳しさが和らぐことはなく、次期再計算くらいまでこのような状況が続くのではないか。人口推計については、低位推計で考えるべきではないか。(矢野)

【状況が改善した場合の姿も示すべきとする意見】
「努力を前提に高い水準」というリスクの高い方式でなく、「努力しなければ悲観的なものになるが、努力すれば給付は高く負担は低くなる」という仕組みを内蔵した設計とすることが、現状では最も望ましく現実的。国民全体の努力を引き出すインセンティブを制度自体に組み込むことが望ましい。(渡辺)

【長期の経済前提は将来の潜在成長率から検討すべきとする意見】
将来を見通す時に、日本経済の構造変化から過去の実績が以前と比べてあまり参考にならなくなってきている。将来の潜在成長率予想といくつかのあり得べきシナリオから考えていく必要があるのではないか。(翁)

【雇用者の割合及び被保険者の割合は低下するとする意見】
労働力人口に占める雇用者の割合や、雇用者に占める被保険者の割合は、今後低下していくのではないか。(大澤)

検討項目 論点 委員意見
4. 国庫負担の引上げと安定的な財源の確保
前回改正法に規定された基礎年金の国庫負担割合の引上げを、どのように実現するか。
【基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるべきとする意見】
将来の保険料を負担可能なものとするためには、基礎年金の国庫負担割合の3分の1から2分の1への引上げが必要。(堀)
現役世代や企業の負担が過度に重くならないよう、基礎年金の国庫負担割合を2分の1へ引き上げるべきである。(岡本)
保険料負担の上昇をできるだけ抑制するため、基礎年金については将来的な全額税方式を射程に、国庫負担を早急に2分の1に引き上げるべき。(大山・山口・向山)
税財源の持つメリットを活かし、保険料の上昇幅を抑えるためにも、国庫負担の割合を2分の1にすべき。(渡辺)
国庫負担水準の2分の1への引上げの趣旨は、最終保険料率を抑えるためである。(神代)

【基本的には消費税や年金税制の見直しで財源を賄うこととする意見】
基礎年金については、全ての高齢者に一律に支給するのではなく、一定の所得を有する高齢者は支給停止又は減額などにより給付総額の抑制を行った上で、次回改正で安定財源として消費税を活用して、基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げるべきである。(岡本・矢野)
国庫負担を2分の1に引き上げることが望ましく、その財源は、年金税制の適正化と消費税引上げによる増税分を充てるのが望ましい。(堀)
年金税制の改革による税収を、基礎年金国庫負担2分の1への所要財源には及ばないものの、引上げの財源とすることが考えられる。(神代)
基本的には、消費税を目的税として充てるのが望ましいが、現状では消費税の引上げは妥当でない。当面は歳出構造の見直しで対応すべき。(渡辺)

【基本的には一般財源で賄うこととする意見】
国庫負担の2分の1への引上げ財源は、歳出の見直しや年金課税の見直し等により、一般財源で賄うべきである。(小島)

【間接税を所得保障の財源とすべきでないとする意見】
比較的低所得で子育てをしている世帯や母子家庭など、消費性向の高い世帯にとっては、消費税負担は不釣合いに重い。逆進性を持つ間接税を所得保障の財源とするのは不適当。(大澤)

【国庫負担の引上げについては、低所得者や過去期間分の債務の償却に着目してもよいとする意見】
国庫負担割合の引上げ分については、低所得者個人に着目した国庫負担の要素を組み込むべきではないか。また、基礎年金の過去期間分の債務の償却に重点を置いて配分するという考え方を取り入れてもよい。その場合、高齢者も相当な財源を負担することが妥当であり、仮に消費税を引き上げて対応するのであれば、それに伴う物価上昇分は年金スライドの対象から一部または全部控除する対応が必要。(山崎)

【国庫負担水準については国庫負担の意義や財源の議論をした上で検討すべきとする意見】
保険料も税も国民負担という点では同じである。国庫負担分を、最低保障年金として位置付けるのかといった将来像を明確にすることが必要であり、国庫負担の意義や財源の議論、あるべき年金の制度設計の姿と切り離して、水準引上げの議論をすることは難しいのではないか。(翁)

検討項目 論点 委員意見
5. 制度の理解を深める仕組み
現役世代、特に若い人の年金制度に対する理解を深めるため、将来の自らの年金給付を実感できる仕組みや運営として、どのようなものが適切か。
【個人に対して加入記録や将来の年金についての情報を通知すべきとする意見】
定期的に加入記録を知らせ、必要なアドバイスを提供すべき。(山崎)
個人に対する拠出と給付の関係を明確に告知することは、若年層や現役世代の年金不信や不安を解決するためにきわめて重要。(翁)
年金個人情報の通知には賛成。導入にあたっては、特に若い世代の意見を取り入れ、どのような通知であれば興味を持って読むかを十分検討の上導入してほしい。(杉山)
年金個人情報提供に向けた当面の取組(年金見込額試算対象年齢50歳以上への引下げ、58歳到達者への直接本人宛通知、インターネット等を通じた照会)を確実に実施すべきである。また、わかり易い制度とするためにポイント制が検討されているが、厚生労働省のポイント制案を採用すると、年金額の算定式が変更され実際の計算式が分かりにくくなるため、誤解が生じる可能性がある。(井手・岡本・矢野)

【ポイント制の導入を検討すべきとする意見】
自分の年金額のおおよそが分かることで、保険料納付意欲が高まり、かつ、老後の生活設計に役立つため、賛成。(堀)
定期的に加入記録を通知する一環として、年金額算定式におけるポイント制の導入も検討すべき。ただし、(1)ポイント制を導入しても、老齢年金については65歳時の年金額の水準の通知にとどまること、(2)加入者にとっての関心事はポイントそのものよりも年金額であり、しかもポイントの単価は毎年変わるのだから、現在価格での過去の加入実績分の見込み額を通知するのと同じであること(これは現行制度でも可能である)、(3)給付乗率が同一となる昭和21年4月2日以後に生まれた者についても、今後の制度改正によっては経過措置の導入等により、単価が生年月日等によって変わることがありうること、(4)導入に伴うシステム開発コストや通知費用が相当にかかること等、についても十分に考慮する必要がある。(山崎)
これからの年金制度は何よりも分かりやすいものになることを望む。ポイント制は、本人の拠出の実績がわかるのがよい。ドイツのように、わかりやすい内容を考えてほしい。(杉山)
ポイント制に賛成。納付実績の少ない人が通知を見て老後のために行動できる仕組みにするべき。(山口)
若者にとって年金は受給するまでに40年間というあまりにも先のことで想像もつかないので、わかりやすいポイント制を取り入れ、個人に情報提供していく必要がある。(今井)

検討項目 論点 委員意見
6. 支え手を増やす方策等
   
(1) 短時間労働者等に対する厚生年金の適用
短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を図るべきではないか。その場合、保険料負担の増加等についてどう考えるか。
【短時間労働者への厚生年金の適用拡大に賛成する意見】
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、是非必要である。当該労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべき。(大山・山口・小島)
短時間労働者へも厚生年金の適用拡大を図っていくことが必要。(翁)
働き方の多様化への対応、短時間労働者の年金保障の充実と支え手の増加、就業調整問題の解決、事業主間の保険料負担の不均衡是正に貢献するため、短時間労働者への適用拡大に賛成。(堀)
適用されていない労働者は、年金なら第3号被保険者、医療なら被扶養者となり、別の被保険者の負担で給付を受けることになる。適用されない労働者を雇う企業は、それ以外の労働者を雇う企業に、自分の労働者の社会保障負担を転嫁していることになる。(堀)
年金の支え手であり日本社会の担い手として今後大いに期待される若者や女性が、十分な職業教育の機会も得られないまま、不安定なパート・アルバイトとして社会保障制度の外で働くのは好ましいとは言えない。短時間労働者の厚生年金適用拡大をぜひとも実施に移していくべき。(杉山)
パートが多く雇用されている飲食業などは国際競争のない業種であり、適用拡大は必ずしも経営問題にはならないのではないか。(大澤)
事業主側では、フルタイム従業員を多く雇う事業所とパートが大部分の事業所の間で、より社会保険料負担をシェアすること(=競争条件の平準化)が望まれる。現在では、厳しい国際競争にさらされる業種が、不相応に重く社会保険料を負担していないか。
パート適用に関して労働者本人が負担を納得するかという指摘があるが、給付の面も考えないといけない。(大山)

【短時間労働者への厚生年金の適用拡大は慎重に検討するべきとする意見】
第1号被保険者とのアンバランスの解消策や財政影響の試算を十分明らかにする必要がある。また、医療保険や介護保険への適用を拡大すればその影響は甚だ大きく、適用拡大による雇用の手控えといった雇用への影響、特定業種、地域経済への影響、事務負担の増加を最小限に緩和する包括的な取り組みと併せて、慎重に検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
短時間労働者への厚生年金の適用拡大により、60才を超えてパート就労しているものに在職老齢年金制度が適用され、年金額が減額される上に保険料負担も同時に発生する。このような事態が発生することにより、高齢者本人の就労意欲を損ない、企業にとっても高齢者の採用への影響が生じてくるのではないか。(井手・岡本・矢野)

【基礎年金の税方式化によって対応するべきとする意見】
被保険者の区分が変わることによって、その都度給付と負担の在り方が変わるような制度は好ましくない。基礎年金の税方式化は、短時間労働者への厚生年金の適用拡大に伴う課題の解決に資する。(井手)

【適用拡大に当たっては方法を工夫すべきとする意見】
本人に年金を保障するというプラスの方向を目指していても、企業負担が増えるために短時間労働者の需要が減ることで、今短時間労働者にとどまっている若年者が今度は失業者となる可能性もあり、工夫したやり方をしないといけない。(翁)
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、是非必要である。当該労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべき。<再掲>(大山・山口・小島)
短時間労働者に対する新たな厚生年金の適用基準についてどう考えるか。
【週の労働時間を要件とすべきとする意見】
雇用保険と同じく週の所定労働時間が20時間以上の労働者を対象にすることが適当。労働時間要件と選択的に収入・賃金要件を設けるかどうかは、給付や負担の定め方による。設けるとした場合、厚生年金は被用者保険であるため、収入ではなく賃金を要件とすべき。(堀)

【週の労働時間要件に収入要件を併用すべきとする意見】
収入要件を併用した方が、雇用形態の多様化に対応でき、就業調整の余地が減少するのではないか。(翁)
新たな適用基準は、「週の所定労働時間20時間以上または年収65万円以上」とすべきである。(大山・山口・小島)
週の所定労働時間20時間または年収65万円以上に適用拡大する案に賛成。所定労働時間が極めて短い者であっても、相応の賃金を得ているのであれば、厚生年金の対象者とすることに問題はない。ただし、短時間労働以外から主たる収入を得ている場合は適用からはずせばよいのではないか。(杉山)
標準報酬最低限の引き下げを行ったうえで、労働時間が短くても一定以上の賃金収入があれば適用する。(大澤)

【収入要件だけで適用の対象となる者を決めるべきではないとする意見】
被用者保険の理念は、雇用契約に基づいて労働を提供し、会社に貢献する者に対して、会社もサポートするということ。被用者保険という観点からは、収入だけ見て適用するということにはならないのではないか。(岡本)

【短時間労働者以外についても適用を検討すべきとする意見】
適用拡大を議論するのであれば、まず先に任意適用事業所に雇用される従業員への強制適用のあり方を検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
従来任意適用となっている5人未満の個人事業所及び適用外業種の事業所についても強制適用とするべきである。また、複数事業所で雇用される場合は、個々の事業所で労働時間及び年収は適用要件に満たなくても、合算すれば適用基準を満たす場合の適用のあり方についても、さらに検討するべきである。(大山・山口・小島)
複合就労の場合も、本人には合計賃金収入に応じて、各事業主にも支払い賃金に応じて、拠出を求めるべき。(大澤)

【適用拡大に当たっては保険料の徴収等について見直す必要があるとする意見】
適用拡大の実効性を確保する上では、労働保険との適用・保険料徴収の一元化等の業務体制の強化や、事業主負担の賦課基準を賃金支払総額とするなどの見直しが必要。(山崎)

【医療保険との関係も検討するべきとする意見】
健康保険では、被扶養者から被保険者本人になるものにとって見ると保険料負担が発生しても、医療費の一部負担は3割で変わらず、適用拡大による被保険者本人にメリットは少ない。したがって、医療保険における適用拡大の影響も同時に検討すべき重要な問題である。(井手・岡本・矢野)
短時間労働者へ適用拡大を行う場合の給付と負担の在り方についてどう考えるか。
【標準報酬下限維持案の問題を指摘する意見】
負担が逆進的となり、厚生年金の応能負担原則に反する。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付維持案の問題を指摘する意見】
被扶養配偶者にまで基礎年金を支給すると、拠出した保険料と比べて給付が過大となる。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)を支持する意見】
短時間労働者の給付と負担のあり方は、「標準報酬下限引下げ×本人給付維持案」を基本に考えるべきである。保険料は応能負担で、給付で被用者グループ内の所得再配分を行う被用者年金の設計上当然であり、問題ではない。(大山・山口・小島)
現行の厚生年金とほぼ同じ仕組みである標準報酬下限引き下げ×給付調整案(本人給付維持案)が適切。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)の問題を指摘する意見】
標準報酬月額の下限を引き下げて、第1号被保険者の負担より少ない負担で基礎年金に上乗せした報酬比例年金を受給するような給付設計を制度に組み込むことについては、十分な検討をすべきである。(井手・岡本・矢野)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付調整案)を支持する意見】
給付と負担のあり方については、標準報酬下限引下げ×本人給付調整案が望ましいと思われる。現状の若年層の短時間労働者の増加を考えると、短時間労働者の年金がある程度保障されることが重要である。同時に、給付水準によっては、先行き極めて深刻な年金財政の悪化を招く可能性がある。(翁)
第1号被保険者からみると、提案された4案は1号と3号間の不公平感を解消できないが、あえて言えば基礎年金減額案が一番理解を得やすいのではないか。(杉山)
(2) 高齢者の就労促進・支給開始年齢
高齢者の就労促進という観点から在職老齢年金の仕組みをどう見直すか。
【在職老齢年金の仕組みの見直しについての意見】
現行の在職老齢年金制度を廃止して、総収入(賃金・高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整する制度に抜本的に改める。例えば、年収総額が600万円を超えるあたりから順次年金支給を削減し、年収1000万円で全額停止としてはどうか。(大山・小島・山口)
B案(2対1の調整率の緩和案)でもC案(2対1調整基準の引上げ案)でも高賃金の者のみが改善されるので、望ましくないのではないか。A案(1律2割停止の廃止案)の変形として、特別支給の老齢厚生年金の定額部分が引き上げられた者について、2割停止を廃止したらどうか。(堀)
支給停止(調整)率の緩和や、60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰り下げ支給の導入については、高所得層に有利になることから、慎重な検討が必要。(山崎)
現行制度を基本に見直すとすれば、年金水準が下がる60歳台前半の報酬比例部分のみの老齢厚生年金について、一律2割の支給停止を廃止することが現実的な対応。(山崎)
企業の雇用政策とも関係することから、就労を阻害しない、シンプルで分かりやすい制度とするよう見直しを行うべきである。また、総報酬制の導入で、前年度の賞与の1/12を加算して在職老齢年金額が計算される。定年後再雇用の場合などに在職老齢年金が大幅に削減されるため、当年度の賞与で計算されるよう見直しが必要である。(井手・岡本・矢野)

【在職老齢年金以外の方策についての意見】
高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられる。(神代)
繰下げ支給案は以下のような問題がある。(堀)
(1)60〜64歳の在職老齢年金の趣旨が賃金だけでは生活できないため支給するものであると考えられるが、この案は年金無しでも生活できる者に年金を支給するものであり、上記の趣旨に反する
(2)I案(年金全額繰下げ案)は論外―在職中の高賃金の者に年金を全額支給するのは、厚生年金制度の趣旨(退職による生活の保障)に反する
(3)II案(年金一部繰下げ支給案)―繰下げ支給の年金額が減額されるとすれば、現行制度について指摘されている就労阻害効果の面では同じではないのか
(4)繰下げ支給の制度を設けても、事業主は、被用者が自主的に繰下げ年金を選択しているにすぎないとし、繰下げ年金を選択しないで在職老齢年金があるものとして、賃金額を決定するおそれがあり、賃金抑制効果については現行制度と同じではないのか
支給停止(調整)率の緩和や、60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰り下げ支給の導入については、高所得層に有利になることから、慎重な検討が必要。<再掲>(山崎)
高齢者の就労を促進する上では、在職老齢年金制度を廃止し、年齢要件のみで全額支給する一方で、年金税制を見直し、総合課税化することが考えられる。(山崎)
在職老齢年金制度を存続させることを前提にすると、年金の支給停止額を雇用貢献度の指標として、貢献度に応じて事業主負担を軽減してはどうか。この場合、雇用保険の雇用三事業による高齢者雇用関係の各種助成金との統合も考えられる。(山崎)
支給開始年齢についてどう考えるか。
【支給開始年齢の引上げは行うべきではないとする意見】
現下の厳しい雇用情勢と、支給開始年齢の引上げ途上にあることから当面は支給開始年齢の引上げは行うべきではない。(井手・岡本・矢野)
今は1階の定額部分の引上げが順次行われているというような状況の中で、さらに支給開始年齢を引き上げるということになれば、ますます年金に対する国民の不信・不満が高まり、不安の拡大ということにつながりかねず、慎重な対応が必要。(小島)
(3) 次世代育成支援
少子高齢化が将来の我が国の社会経済に大きな影響を及ぼすことが予想される中で、公的年金制度においても次世代育成支援に向けた対応をとることをどう考えるか。
【年金制度での次世代育成支援を肯定する意見】
年金制度でも、少子化対策としてできるものを実施するべき。(堀)
年金制度での対応は、出産・育児のため年金に関し不利になっているとすれば、それを解決するのが基本。(堀)
親の所得、職業、就業形態に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援を基本に置く支援をすべき。(山崎、杉山)
育児や介護のために仕事を辞めるあるいは休む選択をした者に対して社会全体で配慮することは、特にこのような少子高齢化の社会においては問題がない。平行して、第3号被保険者の問題を解決し、個人の生き方に公平なものとすることが必要。(杉山)

【少子化対策は必要だが年金制度の外で行うべきとする意見】
少子化対応を進める必要はあるが、公的年金制度の財源を制度本来の趣旨と異なる目的に流用すべきではない。(岡本・矢野)
現在の支え手(女性被保険者)を失うことなく、将来の支え手(子ども)を減少させないためには、年金制度の枠組みの中での経済的直接的支援よりも、就業環境、社会環境を整備して、子育てにより現在の仕事と収入を失わずにすむようにする方が効果的。(井手)
次世代育成は、年金制度の中での経済的支援よりも保育サービスの充実等の社会基盤の整備で考えるべき。(矢野・大澤・大山・翁・山口・向山)

【育児期間中の者への配慮措置に反対はしないが、効果は疑問とする意見】
育児・介護期間中の配慮は不当ではないが、少子化対策としての有効性は疑問。(大澤)
育児期間中の者に対する保険料の免除等の配慮措置を拡大することについてどう考えるか。
【育児休業期間中の措置を拡充すべきとする意見】
育児に対する支援をもう少し手厚くしてもいい。少なくとも1年という育児休業の期間が妥当かどうかをよく検討する必要がある。(神代)
(1)育児休暇中の保険料免除期間の延長、(2)就業を継続するも時短等で年金保障が不利にならないよう、育児期間前の標準報酬、あるいは平均賃金で保険料納付が行われたものとして扱うなどの配慮、(3)いったんは離職した後も(例えば)3年以内に再就職した場合なども、なんらかの配慮を行うなどを行ってはどうか。(杉山)

【育児休暇取得者に対する措置は効果が少ないとする意見】
出産を機に退職する人が多く、育児休暇取得者は7万人にとどまることから、育児休暇取得者に関する措置は効果が少ない。(堀)
育児休業期間中の免除期間を拡充しても、その政策効果は不明確であり、義務化された育児休業期間(最長1年)の範囲内にとどめるべきである。(井手・岡本・矢野)

【育児休業の取得者以外についても、年金額で配慮すべきとする意見】
2階の厚生年金に関しては、育児休業を取得したか否かに関わりなく、育児期間の前後を通算して一定の厚生年金の被保険者期間がある場合に、年金額算定において一定水準の報酬を保障することとしてはどうか。(山崎)
2号被保険者に対しては、育児休暇取得者だけでなく短時間労働者に変わったものも、子どもが3才くらいになるまでは従前の賃金をベースに給付するのがよい。(小島)
仕事を辞めた人が不利にならないように、そのような人も含めて幅広く対応することが基本である。(堀)
育児休暇を取れずに離職したり、短時間労働者になる人にも配慮するべき。(山口)

【第1号被保険者にも支援措置を拡充するべきとする意見】
育児・介護期間中の者に対する配慮措置が必要。第1号被保険者も育児・介護期間中は保険料の負担をなくすべき。(今井、杉山)
1階の基礎年金部分に関しては、第1号被保険者を含め、全ての被保険者について、育児期間中は基礎年金の保険料負担を免除または軽減してはどうか。(山崎)
第1号被保険者に対しても、子どもが3才くらいになるまでは学生と同様に納付特例を認めてはどうか。(小島)

【夫婦間の年金分割案を採用することで保険料の減免が行えるとする意見】
1階の基礎年金部分に関して、第1号被保険者を含めて育児期間中の全ての被保険者の基礎年金の保険料負担を免除または軽減する場合、第3号被保険者の取扱いについては、「夫婦間の年金権の分割案」を採用し、妻も保険料負担を行っているものと擬制すれば、保険料について免除または軽減するという形を取れる。(山崎)
公的年金の積立金を活用した教育資金貸付制度についてどう考えるか。
【教育資金貸付制度に賛成する意見】
次世代支援については、年金を使った奨学金制度も年金のありがたみが増し、若者も年金を身近に感じることにつながるので、検討してほしいが、日本育英会や国民生活金融公庫の事業見直しが行われている現状では、導入には慎重であるべき。また、貸し倒れのない確実な仕組みを作ることが必要。(杉山)
奨学金については基本的に賛成。きちんと金利を取るのであれば、積立金の一つの運用先となる。(山崎)
教育費負担の状況や次世代育成支援等の観点から、貸付制度の意義はあるのではないか。ただし、利子をどうするかが問題で、一般財源により利子補給することが考えられる。(堀)
総合的な次世代育成支援策の一環として、若年世代、現役世代から年金制度のメリットを受けられるよう、若者に対する無利子の奨学金の貸付制度を創設する。(小島)

【教育資金貸付制度に反対する意見】
貴重な年金原資を使って育英会と同じような教育ローンを開始することは、(1)特殊法人整理合理化の方向と逆行し、(2)しかも年金資金の損失リスクを招きかねない、という点で反対。(翁)
少子化対応を進める必要はあるが、育英奨学金や教育貸付金については、すでに公的な機関で行われており、年金の積立金を本来の目的である年金給付以外の目的に流用する必要はない。(井手・岡本・矢野)
進学しなかった者が負担する年金保険料が同年代の比較的恵まれた層である進学者への奨学資金に回ることについて、理解が得られるか。(大澤)

【教育資金貸付制度の他にも還元融資制度を検討するべきとする意見】
奨学金の貸付制度の他に、保育サービスの基盤整備のための還元融資制度を検討すべきではないか。(山崎)
4) 派遣労働者・失業者
派遣労働者・失業者の厚生年金の取扱いについてどう考えるか。
【失業中も継続して厚生年金に加入できる仕組みとすべきとする意見】
次の就労までの期間、厚生年金に引き続き加入できる「継続加入制度」を創設する。その間の保険料については、学生の国民年金保険料の猶予制度(10年以内に追納:学生納付特例制度)と同様に、保険料負担を猶予し(2年間:健保の任意継続加入期間)、再就職後にその分を追加分納する。なお、追納の保険料は、労使分、本人分(給付算定は半額)、免除(障害・遺族年金の対象)との3選択制として、追納期間は猶予期間の2倍(4年)以内とする。(大山・小島・山口)

【失業中に継続して厚生年金に加入する仕組みは慎重に検討すべきとする意見】
派遣労働者等については、前記の短時間労働者への適用と同様の問題がある。さらに、短期・断続的に就労する者も多いことから、事務手続きの煩雑さの増大等を踏まえて慎重に検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
(5) 障害年金
障害年金と障害者雇用の関わりについてどう考えるか。
【老齢年金と障害年金の組み合わせを検討すべきとする意見】
障害年金をもらいながら働いている人が65歳になり老齢年金をもらうようになると、年金額が減ってしまうことになる。障害基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせを考えるべきではないか。(渡辺)
年金を受給していない障害者についてどう考えるか。
【拠出せずに無年金になった者に年金を支給することは困難とする意見】
保険料を拠出すべきであったにもかかわらず拠出せず無年金になった者に年金を支給するのは、拠出制の年金保険としては無理。(堀)

【福祉的措置について方向性を示すべきとする意見】
20歳以上で障害基礎年金を受給していない無年金障害者については、障害者福祉施策(特別障害者手当(現在、月額26,860円)増額など)と年金制度(当面、国庫負担相当分の障害基礎年金の支給等)双方の組み合わせによる所得保障制度を早急に導入すべきである。(大山・小島・山口)
無年金障害者には、基本的には福祉的措置で対応すべき。(堀)

検討項目 論点 委員意見
7. 女性と年金
   
(1) 女性のライフコースと世帯モデル
女性のライフコースと世帯モデルについてどう考えるか。
【制度の給付設計の単位・モデルを見直すべきとする意見】
被用者世帯については、「共働き世帯モデル」により将来の年金額の水準を設定すべき。同様に、自営業者世帯についても、一定の被用者年金の加入期間を有する「転職者世帯モデル」を考えるべきではないか。(山崎)
現在は最も所得代替率が高くなる類型のみで議論しているので、複数のモデルで検討すべき。(大澤)
被用者世帯における給付水準の下限を論ずる場合、所得代替率は世帯類型別に相当の差がある。所得代替率で給付水準の妥当性を判断するのであれば、世帯類型別の試算が必要。(井手)
制度間の負担方式が異なる中、配偶者の加入する制度により被扶養者の年金が変わることは不適当で、制度の個人単位化を図るべき。(今井)
(2) 第3号被保険者制度
報酬比例部分についての夫婦間の年金権分割案についてどう考えるか。
【報酬比例部分についての夫婦間の年金権分割案を支持する意見】
世帯の所得は夫婦が共同で獲得したものとみなして、被用者世帯の年金の個人単位化を図るべきである。その場合、基礎年金保険料に対応する報酬を報酬下限とする。報酬下限以下の者の給付については、第1号被保険者との均衡上、基礎年金のみとし報酬比例部分は支給しない。(山崎)
年金権分割は、遺族厚生年金を不要とすることにつながれば、共稼ぎ世帯と片稼ぎ世帯の不均衡を是正できる。(大澤)
年金権分割案であれば、健康保険における給付と負担の在り方との整合性も確保できる。(山崎)

【夫婦間の年金権分割案を共働き世帯も含めて採用するべきとする意見】
所得分割方式の考え方に準ずる実行可能性のある提案として、「夫婦間の年金権の分割案」を共働き世帯を含めて採用すべき。(山崎)
年金分割は第3号被保険者に有利で、個人単位の不公平感が解消しないとの指摘もあるが、分割を2号−3号間に限らなければよいのではないか。働けば自分の年金も増えることになる。(大澤)
2号被保険者と3号被保険者の間の年金分割は認めても、2号と2号の間では認めないとすると、3号にとどまって年金分割をした方がむしろ自分の年金が増えると誤解されるおそれがある(夫の年金が減るだけなのだが)。(大澤)
長期的には、第1号被保険者の所得が把握でき、家庭内での役割も夫婦で半分ずつという状況であれば、2号−3号以外も全て分割するという考え方はあると思う。(杉山)

【共働き世帯も含めて採用する場合に考慮すべき事項を指摘する意見】
2号−3号以外でも分割する考え方もあるが、2号−2号で妻の方が高賃金で、かつ家事もやるような場合に分割を不満に思う人もある。選択制も認めるべき。(井手)

【夫婦間の年金権分割案の問題を指摘する意見】
実際には3号には負担なしで基礎年金が給付される点は変わらず、不公平感は解消されない。短時間労働者への厚生年金の適用拡大を行ったとしても、年金権分割とセットで実施されれば、更なる就業調整が行われて第3号にとどまる傾向は強くなる。(井手、翁)
年金権は一種の財産権であると考えられるため、分割される側への十分な情報提供と同意を得るための仕組みが必要。分割制度を導入しても現行制度と変わりはない。離婚しなかった夫婦は、厚生年金を分割する必要がない。(堀)
夫婦間の年金権分割案はきわめて合理的だが、わかりにくいという欠点がある。(渡辺)
夫婦間の年金権分割案は、対象を専業主婦としているが、共働き世帯や離婚時の分割のあり方について検討を行った上で、その是非を考える必要がある。(大山・山口・小島)
負担調整案についてどう考えるか。
【負担調整案を支持する意見】
負担調整案は、妻も保険料を負担して老後の保障を得るとともに、共働き世帯や独身者の不公平感を是正するので最も現実的。ただ、同時に3号被保険者縮小案を実施する必要がある。(渡辺)
負担調整案−IIにより、段階的に個人単位での公平性を徹底していく方向がよいのではないか。(今井)
負担調整案−Iについては逆進性が高くなる可能性があり、経済情勢を考えると問題がある。負担調整案−IIは、可能性としてあり得る。(翁)

【負担調整案の問題を指摘する意見】
応能負担が原則の厚生年金に応益負担の要素を持ち込むのは妥当か。また、事業主負担分の保険料を片働きの被保険者についてのみ引き上げる理由は、事業主にはない。片働きの被保険者が不利となり、雇用中立的ではなくなる。さらに、夫婦の合計賃金が同じ場合、保険料額は片働き夫婦の方が共働き夫婦よりも高くなって、水平的公平性に反するのではないか。(堀)
被用者グループ内で、第3号被保険者の有無で保険料負担が2本建てとなり、応能負担という原則を変えることになる。給付が多い人は負担も多くということにつながりかねない。(小島)
共働き世帯や単身世帯の不公平感は解消されるが、事業主負担が増える。また、社員に異なる率を適用することは制度として煩雑。負担調整案−Iは、定額保険料が増えることによる逆進性が課題。(井手)
給付調整案についてどう考えるか。
【給付調整案を支持する意見】
第3号被保険者には負担能力がないことを前提に給付を調整する案は、基礎年金を受給するために定額保険料を支払う第1号との公平性は担保される。(井手)
給付調整案は、基礎年金を国庫負担に限り、財源を消費税にする方向になれば、第3号の給付と負担の不公平感の解消に寄与する可能性がある。ただし、任意の追加給付制度を設けることが前提となる。(翁)
給付調整案が整合的。満額給付を得るために納付制度を設けることで、年金収支にも貢献する。その場合の納付分は3号を抱える2号が負担してはどうか(負担調整案−IIとの組み合わせ)。(杉山)
なかなか理論的にこれという案はない。妥協案を考えないといけない。アメリカやイギリスが給付調整していることにも着目すべき。(神代)

【給付調整案の問題を指摘する意見】
給付調整案は、老後に必要な基礎的年金給付を行うという基礎年金制度の趣旨に反する。無職の妻の分の給付は、アメリカもイギリスも1階と2階を合わせて考えると、給付調整しているといっても、現在の日本と同じような比率になるのではないか。夫婦の合計賃金額が同じ場合の合計年金額は片働き夫婦の方が共働き夫婦よりも低くなって水平的公平性に反する。(堀)
給付調整案は基礎年金を減額するという内容であり、これでは妻の老後の所得保障機能が低下する。(渡辺)
給付調整案は、公的年金の役割や機能に照らして問題が多い。(大山・山口・小島)
第3号被保険者縮小案についてどう考えるか。
【第3号被保険者縮小案を支持する意見】
第3号被保険者制度は、現在の社会経済の実態に適合し、社会保険の原則に即した制度である。ただし、社会経済も変化しており、また人々の考えも変わってきているので、それを踏まえた見直しも必要である。したがって、第3号の範囲は縮小するものの、制度の大枠は維持する第3号被保険者縮小案に賛成。(堀)
第3号被保険者の範囲を狭めて、一定程度働いている人は第2号被保険者になって相応の保険料を払うこととし、その代わり、将来の年金が期待できるようにするのがいいのではないか。(神代)
当面、厚生年金の適用拡大により、第3号被保険者を縮小していくことで対応すべきである。(大山・山口・小島)

【第3号縮小案の問題を指摘する意見】
短時間労働者への厚生年金の適用拡大を行ったとしても、第3号被保険者の大半は3号のままとなるため、第3号縮小案の効果は薄い。(井手)
上記4案以外にどのような考え方がありえるか。
【基礎年金の見直しが必要だとする意見】
4案のいずれを行っても、世帯類型による所得代替率の格差は残る。基礎年金制度の見直しが必要。(大澤)
定額の基礎年金給付を制度内に持つ限り、第3号のような収入のないもの、短時間労働者のような低収入のものに対して厚生年金を適用すると、第1号との均衡を図るために更なる調整が必要となり、制度が複雑化する。(井手)
基礎年金を税方式化することにより、公正な負担の実現につながり、未納・未加入問題や第3号被保険者問題の解決にも資する。(井手・岡本・矢野)

【就労促進の観点から見直すべきだとする意見】
第3号被保険者制度自体の見直しは、就労促進の観点から見直すべきである。第2号と第3号との間に限った年金権の分割案は、就労促進よりも、むしろ第3号被保険者に止まるものが増えることになると考えられる。なお、厚生労働省からいくつかの案が提示されているが、直接雇用関係のない第3号被保険者の保険料について、事業主に負担を求めたり、事業主経由で徴収することは合理的ではない。(井手・岡本・矢野)
(3) 遺族年金
高齢期の遺族配偶者に対する遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給についてどう考えるか。
【自らの保険料納付が給付額に反映される仕組みとすべきとする意見】
高齢期の遺族配偶者に対する遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給については、まず本人の老齢厚生年金の全額受給を基本とし、遺族厚生年金(配偶者の老齢厚生年金の4分の3)との差額を支給するしくみとすべきである。(大山・小島・山口)
提起されている問題は単に感情の問題にすぎないともいえるが、改正案の採用に問題はない。(堀)

【共働き世帯と片働き世帯の均衡を図る仕組みとすべきとする意見】
「受給方法IV」は、(1)婚姻期間中に係る年金権は夫婦で共同して得たものとして給付に反映する、(2)自らの保険料納付を給付額に反映する、という自分の考え方に合致し、また、共働き世帯と片働き世帯の公平性の確保にもつながる。(井手)
「受給方法IV」を導入しつつ、年金財政上厳しい状況にならないような割合を決定することが重要。(翁)
老齢基礎年金+(妻+夫の老齢厚生年金)×一定割合とした上で、どうしても高額になる場合は上限を決めるなどしていけば働く女性も、働く女性を妻にもつ夫も公平になる。段階的に給付率を低くし、いずれ廃止していく。(今井)
老齢年金受給者が遺族となった場合に支給される年金は、夫婦二人の合計年金額の一定割合(6〜7割)とするのが適切。提案されている改正案(遺族に支給される2階部分の年金額を夫婦の合計老齢厚生年金額の一定割合とする案)に賛成。(堀)
個人単位化の方向性との整合性を確保する上では、遺族厚生年金の水準は報酬比例年金の原則として2分の1とすべきであり、そうすれば共働き世帯と片働き世帯の間の遺族年金の均衡も図ることができる。この場合、4分の3という現行水準は経過的な措置として位置づけられることになる。(山崎)

【夫婦間の年金分割で対応すべきとする意見】
年金分割を導入すれば遺族年金が必要でなくなる層は拡大する。(大澤)
高齢期の遺族年金については、夫婦間の年金分割で給付される自分自身の年金で暮らしていくのが将来的方向。移行期として、夫の厚生年金の5分の3か、年金分割したものか選べるようにしてはどうか。(杉山)
若年の妻に対する遺族年金についてどう考えるか。
【若年の子供のいない妻については、給付を有期とするなど見直すべきとする意見】
子のいない若齢期の妻については、遺族年金は有期給付とし、就労支援に重点を置くほうが望ましい。(杉山)
18歳未満の子のいる妻に対する遺族年金については現行制度維持。子を有しない若齢の妻に対する遺族厚生年金の支給は見直しが必要(例えば、一定期間又は一定年齢までの年金支給、一時金支給等)。子を有しない中高齢の妻に対する遺族年金は、中高齢女性の雇用機会、雇用条件等を考えると、まだ必要性がある。(堀)
若年層の遺族について、就労可能な配偶者については、遺族年金の受給期間の限度を設けるなどの見直しの必要性について検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
昭和30−40年代の雇用機会・賃金の男女格差が現在よりはるかに大きかったことからすれば、雇用機会均等法が改正強化され、男女格差が縮小した今日、子のない妻への遺族年金制度を維持する必要は、厳密に問われるべき。(大澤)
2002年の児童扶養手当法等の改正、今国会の母子家庭就業支援法の主なコンセプトは「母子家庭になってから5年で自立」であり、児童扶養手当が全額支給されるための年収の上限は約205万円から130万円に引き下げられており、18歳未満の子のある場合の遺族年金も期間限定が妥当。(大澤)
支給要件における男女差等についてどう考えるか。
【男女差は解消すべきとする意見】
若齢遺族に関しての現行制度は、夫と妻で給付の対象となる年齢が異なること、および中高齢寡婦加算があることなど、現在の女性の就業率と照らし合わせて、時代錯誤と思われる。(井手)
遺族年金の支給要件は、男女間の差異をなくすべき。(杉山)
男女の支給年齢要件をどちらにそろえるかは、将来遺族年金のあり方としてどのような方向性をめざすかという観点から考えるべき。将来的に、男女がともに働く社会を想定した場合、第一義的には、男女の賃金労働条件の格差解消を図るべきだが、その上で、遺族年金の受給要件は男女とも中高齢の場合、としていくべきと考える。併せて、遺族となった者に子どもがある場合には、一定の配慮を行う形とすべきである。
(大山・小島・山口)
被扶養の夫55歳以上という年齢制限は外すべき。(今井)
支給要件の男女差等は速やかに撤廃するべき。(大澤)

【男女差はやむを得ないとする意見】
男女で雇用機会、雇用条件等に格差がある現状では、現行制度の男女差はやむを得ない。ただし、将来男女差が相当程度縮小すれば、支給要件を同一にする。(堀)

【生計維持要件の見直しが必要とする意見】
遺族年金の年収要件(生計維持要件)については、当面、遺族年金を支える被保険者の年収とのバランスをはかる観点から、遺族となった者の年収に応じて年金額を段階的に調整すべきである。例えば、当面、年収600万円までは遺族厚生年金を100%支給し、それ以上の年収については、段階的に年金額を減額し、年収850万円以上の場合に遺族年金を停止する仕組みとする。また、適用認定は、毎年の年収を基に行うべきである。(大山・小島・山口)
生計維持要件の850万円は高すぎるのではないか。(堀、大澤)
遺族年金の受給権は、被保険者等の死亡時のワンポイントでの生計維持関係により判定しているが、認定基準以上の収入がある場合でも受給権を与えた上で支給停止扱いとしてはどうか。(山崎)
(4) 離婚時の年金分割
離婚時の年金分割の具体的な在り方をどのように考えるか。
【離婚時の年金受給権分割を実施すべきとする意見】
離婚した妻自身の年金による生活保障は現状では不十分であり、老齢厚生年金の分割を実施すべき。年金分割制度の導入は、離婚を促進するという意見もあるが、むしろ年金による生活保障を受けられなくなるために離婚したいのに離婚できないという現行制度の問題を解決するのではないか。(堀)
夫の老齢厚生年金の受給権が発生していない時の離婚についても、分割を認めるのが望ましい。(堀)
本来は婚姻期間中から年金権を分割すべきだが、仮にそれが直ちには困難であるとすれば、そこに至る当面の措置として離婚時の年金受給権の分割が考えられる。(山崎)

【離婚時の年金受給権分割の仕組みについての意見】
分割の有無、分割割合等については、夫婦の合意により分割。合意が得られない場合は、裁判所の審判等によって分割。(堀)
分割は法改正後の離婚に限るが、分割の対象となる年金受給権は法改正前の婚姻期間を含めるべき。(堀)
短期間の婚姻及び若年者同士の離婚についても分割を認めるべき。(堀)
事実婚についても、遺族年金受給が認められる事実婚に限り、かつ、事実婚関係の明確な証明が得られた期間についてのみ、分割を認めるべきではないか。(堀)
共働き夫婦についても分割を認めるべき。(堀)

【年金権分割は慎重に検討すべきとする意見】
夫婦間の年金受給権の分割は、家族形態や世帯の資産形成、離婚の形式にも関わる問題でもあるから、個別の事情を考慮する必要があり、慎重に検討する必要がある。また、厚生年金基金における実務対応が可能であるか等も含めて検討する必要がある。(井手・岡本・矢野)

【婚姻継続中の夫婦の年金分割も可能とすべきとする意見】
婚姻継続中の夫婦の年金分割についても、第3号被保険者問題の解決策としてだけではなく、2号ー2号の年金分割も可能とすべきではないか。(井手)
離婚の場合だけの年金分割は、中立性の観点から問題。(大澤)
本来は婚姻期間中から年金権を分割すべきだが、仮にそれが直ちには困難であるとすれば、そこに至る当面の措置として離婚時の年金受給権の分割が考えられる。<再掲>(山崎)

【婚姻継続中の夫婦の年金分割には問題があるとする意見】
婚姻継続中の分割は、問題が多い。(堀)

【第3号被保険者制度の見直しにおける年金権分割案との関係を明らかにすべきとの意見】
夫婦間の年金権を分割する方式の修正案(A−2案)である老齢年金の受給権発生時点で強制的に分割する方式と、離婚時の年金受給権分割制度として保険料納付記録の分割を選択する方式との関係について整理すべき。(大山・小島・山口)

検討項目 論点 委員意見
8. 国民年金保険料の徴収
国民年金保険料について、どのように収納対策の強化に努めていくか。
【国民の年金に対する不信感を払拭することが必要とする意見】
年金に入っていなければ損だということを分かってもらうことが必要。(近藤)
入らないと自分が損をするということを強調して勧誘していくべき。また、そういう魅力ある制度にしなければならない。(若杉)
世代間、世代内の不公平を解消することが何より効果がある。既に相当程度の事務費をかけており、さらに納付督励策の事務コストを上乗せするのであれば、費用対効果を見た対策が必要。(井手)
第3号被保険者制度が第1号の拠出インセンティブを損なっているという問題を直視するべき。(大澤)

【保険料納付は国民の義務であるという立場から収納対策を強化すべきとする意見】
国民年金の悪質滞納者については、少なくとも国民健康保険並みの滞納処分を行うべき。あわせて、未納者については、個人年金・生命保険の保険料控除の適用を除外すべき。(山崎)
社会保険料と租税の一体的徴収を早期に実現するための検討を行うべき。(岡本・矢野)
督促を行っても納付しない者に対しては滞納処分を行うべき。また国民皆年金の下では保険料納付は国民の義務であること、義務を果たさない者に対してはペナルティーがあることを明確に教育するべき。(矢野)
徴収強化策として、国民健康保険証、パスポート、運転免許証等の取得・更新にあたっては国民年金保険料の納付実績等の提出を義務付けるべきである。(井手・岡本・矢野)
悪質な滞納者に対しては、滞納処分を行うべき。また、学校教育の場では、なぜ保険料を納めなければならないのか、明快な説明が求められる。(渡辺)
国民年金保険料の収納対策を強化することは、基礎年金制度維持のため極めて重要。しかし、基礎年金制度が空洞化し、破綻しているというのは、以下の理由により誇張にすぎる。ましてや、これら少数の者のために税方式化を唱えるのは、本末転倒ではないか。空洞化していること及び税方式化を唱えること自体が、未加入・未納問題を悪化させる要因になるのではないか。
(1) 基礎年金を支えるのは約7000万人の国民年金被保険者であり、このうち未加入・未納者は5〜6%にしかすぎない
(2) 現在、高齢者の95%前後は何らかの公的年金を受給している
(3) 現在、未加入・未納の者が一生涯そうであり続けるかは疑問である
(4) なお、保険料免除者を含めて空洞化を論ずる向きがあるが、負担能力のない者を保険料免除するのは当然である(堀)

【被保険者の能力に応じた保険料の賦課徴収を行うべきとする意見】
現実に負担能力のない又は低い者については、現在の免除の仕組みを見直す必要があるのではないか。(堀)

【保険料の時効の延長を検討するべきとする意見】
2年で時効となっている現行制度は、税と同様に5年の時効に改めるべき。(矢野)
2年間の時効は短すぎるのではないか。(杉山)

【年金についてのアドバイスを通じて保険料納付を促進していくべきとする意見】
定期的に「トータルライフチェック」を行うようなアドバイス・教育機能を用意し、納付の実績や将来の受給見込みなどを自己確認できる仕組みを通じて、保険料納付を促していくべき。(杉山)

検討項目 論点 委員意見
9. 被用者年金の一元化
被用者年金の一元化についてどう考えるか。
【被用者年金制度についての統合を早期に実施すべきとする意見】
公的年金制度の安定化と公平化を図るため、被用者年金(国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済及び厚生年金)の統合を早期に実施すべきである。(井手・岡本・矢野)
被用者年金の一元化については、2001年2月の「公的年金制度の一元化に関する懇談会」報告、及び同年3月の閣議決定(国共済と地共済の財政単位の一元化推進、及び被用者年金制度の財政単位の一元化についての検討等)に基づき、関係者の合意をはかりつつ、一元化に向けて推進をはかる。(小島)

検討項目 論点 委員意見
10. 福祉施設等
福祉施設等についてどう考えるか。
【年金住宅融資及び大規模年金保養基地は廃止すべきとする意見】
年金住宅融資は廃止すべき。大規模年金保養基地(グリーンピア)は、「特殊法人等整理合理化計画」(閣議決定)のとおり平成17年度までにすべての施設を売却・撤退すべき。(井手・岡本・矢野)

【被保険者還元の新たな施策については慎重であるべきとする意見】
「特殊法人等整理合理化計画」は特殊法人等の業務の廃止・縮小が原則であり、その趣旨を超えて被保険者還元の新たな仕組みを創設することについては、慎重であるべき。(翁)

【被保険者への還元施策等に賛成する意見】
長期保険の年金制度からのメリットが少ないことが特に若い世代の年金制度への無関心や未加入・未納問題を生んでいるとすると、年金制度のメリットを示し、年金制度の理解を深めるための施策はあってもよいのではないか。(堀)
被保険者へのバリアフリー対応の住宅融資や自己啓発費用の融資、さらに年金受給者を対象にしたリバースモーゲージ制度を検討すべき。(小島)

検討項目 論点 委員意見
11. 企業年金等
企業年金は、公的年金を補完して、多様化したニーズに対応する役割を果たしており、それぞれの役割を踏まえ、公的年金を土台として、両者を組み合わせて老後の収入を確保するという位置付けについてどう考えるか。
【公的年金の役割を再考すべきとする意見】
年金資金の株式運用によるメリットと公的主体による資金運用のデメリットを考えれば、私的年金の割合を増やすべき。公的な賦課方式部分を減らし、私的な部分を拡充することで、(1)人口構成の変化に弱い賦課方式の問題を緩和する効果、(2)自己責任を重視した年金を一部導入できる効果、(3)公的年金の運用額が金融市場の規模に比べて大きすぎるといった問題の一部解消が期待される。2階部分を薄くしていき、税制上の措置等により、既存の確定拠出年金をふくらませていく方向が望ましい。(翁)
公的年金、企業年金、個人年金のバランスをもう一度考えることが必要。公的年金の代替率は高すぎるので、30%程度に引き下げていくべき。自助(個人年金)の役割が限定的である点は再検討する必要がある。(若杉)
老後の生活費のすべてをカバーするような公的年金の給付設計を行うのではなく、私的年金等の役割を一層高めていくべきである。(井手・岡本・矢野)
公的年金を取り巻く客観的状況を考えると、今後は、国民一人ひとりが自立・自助の精神に立脚して現役時代に老後の準備をすることを社会の規範とすべき。(岡本・矢野)

【私的年金の基盤整備が重要とする意見】
自助共助に対する政策上のインセンティブ、とりわけ私的年金に対する税制上の支援措置を充実する必要がある。(井手・岡本・矢野)
公的年金の改革と合わせ、より信頼の置ける企業年金制度とするよう、多様化する企業・従業員の要望への対応を含め、その制度の普及策について柔軟に検討する必要がある。(近藤)

【公的年金の役割の再考には慎重な意見】
社会保障給付を切り下げても、私的負担に振り替えられるだけである。(大山・山口・向山)
公的年金の役割縮小は、階層と性別の格差を拡大する。イギリスの1986年サッチャー年金改革は、公的年金の所得比例部分の給付条件を引き下げるとともに、個人年金や企業年金の加入者が公的年金から適用除外するための条件を大幅に緩和したが、その結果、給付の点で以前より不利にされた公的年金に「取り残された」人は、どちらかといえば恵まれないブルーカラー労働者やとりわけ女性だった。(大澤)

【公的年金の役割を明示することが必要とする意見】
年金が保証するのはここまでだと若い世代に情報提供したほうがいい。足りない分は自助努力や市民間の支えあい(共助)で用意することができる。そのための環境整備も必要。(杉山)
厚生年金基金制度について見直すべき点はあるか。
【免除保険料率の凍結解除を行うべきとする意見】
厚生年金基金の財政の健全化を確保するため、免除保険料率引き上げ凍結の解除が急がれる。(翁、渡辺)
免除保険料率引上げの凍結解除をし、将来の免除保険料率には、予定利率の引下げ・死亡率の改善・給付の引下げ分を反映させるべき。(堀)
凍結解除に伴う過去期間に係る負担増は、自己責任の下に財政健全化を図ることが原則である。その上で、基金責任とは言えない2004年制度改正によって負担が増加する部分を免除保険料率等で調整することを検討することとすべきである。(井手・岡本・矢野)
免除保険料の凍結解除は厚生年金本体の保険料の引上げを前提とするのではなく、給付抑制などの見直しとともに検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
免除保険料、最低責任準備金の凍結解除と、免除保険料の算定基礎の見直し、特に予定利率の適切な設定(すなわち現在の5.5%からの引き下げ)については、厚生年金基金財政の健全化、受給権保護の観点から大変重要である。(近藤)

【免除保険料率の上下限を見直すべきとする意見】
免除保険料の上下限を撤廃するか、少なくとも広げるべき。(渡辺)
免除保険料の上下限を撤廃するべき。(翁、堀)
免除保険料率の上下限(2.4%〜3.0%)についても撤廃し、個別化を徹底すべきである。(井手・岡本・矢野)

【最低責任準備金の見直しに当たっては、現行との連続性に留意するべきとする意見】
最低責任準備金の見直しを行うのであれば、早期に代行返上を行う厚生年金基金との間で不公平な取り扱いが生じることのないように留意すべきである。(井手・岡本・矢野)

【基金解散時の特例措置は、自己責任や公平性、確実性に留意すべきとする意見】
いわゆる代行割れの厚生年金基金が解散の取扱においても、自己責任による財政健全化が必要である。その上で、分割納付、または、金額の特例を設けるためには、国民に対して納得のできる説明が必要となる。その場合、分割納付中に経営破綻等が生じる可能性等に対して、将来の返済が確実に行われるための措置が必要である。(井手・岡本・矢野)
きちんとした返済計画が担保されるのか、分割納付中に母体企業が倒産した場合、それを誰が保証するのかという問題もあり、検討が必要。(小島)
特例措置については、積立金を満たしている基金との間で不公平感が出てこないか。(小島)

【代行制度をやめるべきとする意見】
代行制度はやめて、資金を厚生年金本体に戻すべきである。(小島)

【厚生年金基金連合会は、財政規律と情報開示を徹底すべきとする意見】
厚生年金基金連合会については、財政規律と情報開示の徹底とともに、資産運用による不足が発生した場合の解消方法を明らかにすることが必要である。(井手・岡本・矢野)
確定給付企業年金制度について見直すべき点はあるか。
【ポータビリティを拡充するべきとする意見】
確定給付企業年金のポータビリティについては、厚生年金基金連合会による中途脱退者の通算制度の拡大、企業型・個人型確定拠出年金への資産移換といった形で、実現することが必要。(堀)
企業年金の通算が必要であり、厚基連で全体をカバーするべき。(翁、小島)
確定給付企業年金実施企業を離職・退職した従業員の脱退一時金、及び確定給付企業年金が終了した場合に分配される残余財産については、移換先を個々の確定確給付企業年金の他、確定拠出年金(企業型、個人型)とすることができるようにすること。また、厚生年金基金を実施する企業を離職・退職した従業員の脱退一時金のうち、加算部分を確定給付企業年金又は確定拠出年金に移換することができるようにすべきである。(井手・岡本・矢野)

【支払保証制度を導入すべきとする意見】
確定給付企業年金について支払保証制度を設ける必要があるのではないか。(堀、小島、近藤)

【支払保証制度を導入すべきではないとする意見】
受給権保護は、継続基準・非継続基準に基づく財政検証等を実施することで十分得られる。モラルハザードを惹起する支払保証制度は将来に渡って導入すべきではない。(井手・岡本・矢野)
支払保証については、設計を間違えるとコストが大きくなり、基金にも大きな負担となる。情報公開や早期是正措置の仕組みで健全性を確保すべき。(翁)

【本人拠出分の課税上の制限を撤廃すべきとする意見】
自助努力支援の観点から本人拠出分の課税上の制限を撤廃するべきである。(井手・岡本・矢野)
確定拠出年金制度について見直すべき点はあるか。
【確定拠出年金の拠出限度額の引上げを図るべきとする意見】
確定拠出年金の拠出限度額の引上げを検討すべき。(翁、井手・岡本・矢野、堀)

【確定拠出年金制度の見直しや要件の緩和を図るべきとの意見】
マッチング拠出を行うべきである。(井手・岡本・矢野、堀)
脱退一時金の受給要件の緩和を含め中途引出の容認をすべきである。(井手・岡本・矢野、堀)
第3号被保険者も制度の対象にすべきではないか。(堀)
加入資格に一定の資格を設ける場合や、掛金の設定方法に勤続年数に応じた率や額を認めるなど、設計上の制約を一層緩和すべきである。(井手・岡本・矢野)

【拠出限度額の引上げ等については慎重であるべきとする意見】
賃金の後払いである既存の企業年金を確定拠出に移行することには反対であり、拠出限度額の引き上げには慎重であるべき。(小島)
マッチング拠出を認めるべきではない。賃金の後払いのための事業主拠出に従業員が積み増すというのはどういうことか、従業員拠出は貯蓄か年金かの性格を明確にする必要がある。(小島)
企業年金等に係るその他の論点についてどう考えるか。
【特別法人税を廃止するべきとする意見】
現在課税が停止されている特別法人税については、廃止すべきである。(井手・岡本・矢野、小島)
特別法人税を廃止するべき。廃止には公的年金等控除の見直しが必要。(堀)

【給付減額についての制限を見直すべきとする意見】
給付減額の要件については、合意手続きの簡素化などの要件緩和について早期に見直しを行うべき。(井手・岡本・矢野)

【確定給付型年金と確定拠出年金を組み合わせるべきとする意見】
最適な制度は、一つの企業の中で、企業あるいは従業員のニーズにより、従業員一人ひとりが確定給付型年金と確定拠出年金の最適な組み合わせを選択できる制度である。確定拠出型年金の拠出限度を固定的に決めるのは望ましくない。(若杉)

【一時金として受給する場合についての意見】
年金として受給する場合と比べて課税が不公平なので、一時金として受給する場合の課税を、10〜15年の有期年金として受給する場合の課税と同じにすべきではないか。(堀)

【財政検証についての意見】
非継続基準の財政検証については、これまで数次にわたり弾力化が図れてきたが、今後の状況に応じ、現行の最低積立基準額が予定利率の低下に伴い顕著に増加する仕組みのあり方を検討する必要がある。(近藤)

【企業会計基準を修正すべきとする意見】
企業会計基準については、中長期的観点から運営される年金制度の実態を反映したものとなるよう早急に修正すべきである。特に厚生年金基金の代行部分について、上記1のように過去期間分、将来期間分とも免除保険料等で政府が手当てすることが明確にされた場合には、企業会計上、代行部分は退職給付債務の算定対象から除外すべきである。
(近藤)

検討項目 論点 委員意見
12. 年金改革と他の社会保障制度改革
他の社会保障制度などとの関係で、年金の給付と負担の水準をどうとらえるべきか。
【給付と負担の水準は総合的に考えるべきとする意見】
医療、介護、年金のトータルの組み合わせで給付を見ていくことも必要。(杉山)
給付水準の設定に当たっては、医療、福祉、税制との関連を含めた総合的な検討が必要。(山崎)
医療、介護等も含めた社会保障の保険料負担ならびに税負担が、負担可能な水準となるように抑制すべきである。また、社会保障制度全体での給付の重複の見直しを検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
負担水準については、他の社会保険料や税負担全体を考慮することが必要。(堀)
公的年金以外の収入を含めて、高齢世代と現役世代の実質的な均衡が図られるように、給付と負担の水準を設定すべき。(山崎)
少子化対策や雇用対策、税制等の様々な施策と有機的に連携させて議論を進めるよう関係各所に働きかけていくことが必要。(翁)
医療・介護などの社会サービスを通ずる再分配が機能すれば、年金制度内の垂直的再分配は弱めていいのではないか。国庫負担による再分配に限定し、それを低所得者に集中することが効率的ではないか。(大澤)
社会保障制度審議会勧告(1995年)(社会保険料や租税といった公的負担が増大したとしても、社会保障制度が充実されるならば、個人負担、例えば、医療や社会福祉における利用者負担、民間保険の保険料、家族による扶養、介護、育児等の負担などや、福利厚生面での企業の負担等が軽減されることとなる。逆に公的負担を抑制すれば、個人負担や企業負担が増大する。)と同意見。(大澤)

【国民負担率の上昇を抑制すべきとする意見】
医療・介護等を含めた現在の社会保険料負担は既に現役世代、企業にとって相当重く、安易な社会保険料の引上げを行うことなく、国民負担率の上昇を極力抑制していく必要がある。(岡本・矢野)
(敬称略)


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