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資料No.1
牛せき柱を含む食品等の管理方法の試案

経緯
 伝達性海綿状脳症に関する食品等の安全確保対策については、平成13年10月に食用として処理される全ての牛を対象としたBSE検査(いわゆる全頭検査)を開始するとともに、牛の特定部位(頭部(舌及び頬肉を除く。)、せき髄及び回腸(盲腸との接続部位から2メートルまでの部分に限る。))の除去・焼却を法令上義務化するなど、必要な対策を講じてきたところである。
 国際獣疫事務局(OIE)による国際動物衛生規約の改正が昨年9月に公表され、食用とすべきでない牛の部位として、従来の脳、眼、せき髄、回腸遠位部に加え、新たに頭蓋及びせき柱が追加された。わが国では、頭蓋については既に「頭部」の一部として除去を実施しているところであり、また、せき柱については、せき柱を含む食肉が消費者に販売されることは一般的にない状況にある。
 このようなことから、既に行われている全頭検査等に加え、伝達性海綿状脳症に関する食品等の安全確保対策に万全を期すため、牛のせき柱の除去等に関する措置の必要性について検討するため、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会伝達性海綿状脳症対策部会(以下、「部会」という。)において審議を行っているものである。
これまでの審議概要
 今回、問題となっているのは、牛のせき柱そのものではなく、せき柱に付随する背根神経節である。
 これまで部会において、牛のせき柱のリスク評価について、議論がとりまとめられており、牛のせき柱に含まれる神経節のリスクについては、現在特定部位とされているせき髄と同程度であるとされた。
 また、わが国で実施している全頭検査の実施により、BSEのリスクは大幅に低下していること、BSE感染牛(潜伏期を含む)であって、全頭検査による検出限界以下であるため陰性と判断される牛は、感染の早期又は中期に相当するものであり、その大部分の異常プリオンたんぱく質は現在既に特定部位として除去されている回腸又は扁桃に存在するものと考えられるとされている。
 なお、これまでの審議については、6月26日伝達性海綿状脳症対策部会におけるこれまでの議論の取りまとめでまとめられている。
せき柱の流通等について
 厚生労働省において、限られたデータではあるが、地方自治体を通じて実施した、国産牛のせき柱の流通実態等調査結果は以下のとおりである。(別添1及び参照)
 と畜場でと殺、解体された肉用牛は、背骨のついた枝肉の形で食肉処理場、食肉製品製造業、食肉販売店等に出荷され、枝肉(部分肉を含む)からせき柱を除去している。
 食肉処理場、食肉販売店等においては、除去されたせき柱の大部分は化製場へ、又は産業・一般廃棄物として搬出されており、その他、食品製造施設、飲食店、油脂製造業者等に搬出されていた。また、食肉製品製造業においては、除去されたせき柱の大部分は化製場へ、又は産業廃棄物として搬出しており、その他、油脂製造業者に搬出されているものもあれば、施設内で焼却されている例もあった。
 食品製造施設や油脂製造業者に搬出されたせき柱の多くは、骨ペースト、骨エキス、牛脂等を製造しているものと考えられ、これらの施設は5施設のみ調査可能であったが、そのうち4施設では133℃、3気圧、20分と同等以上の加熱殺菌、1施設では100℃、2〜4時間の加熱殺菌を実施していた。
 また、化製場では肉骨粉に加工後焼却している施設が多数であり、その他、油脂、肥料、飼料等に加工されていた。
管理方法の試案
 上記の結果から、伝達性海綿状脳症に関するせき柱を含む食品等の安全確保に万全を期すため、次の試案1又は2のとおり基準を設定することを検討している。

【試案1】
(1)食肉は、いわゆるTボーン等を除き、せき柱が付随したまま消費者に販売されることは一般的にないが、万全を期すため次のとおり規定する。なお、BSE発生国からの食肉の輸入は、食品衛生法第5条により禁止されており、BSE非発生国から輸入された、いわゆるTボーン等については、消費者に販売することは差し支えない。
最終的に消費者に販売される「食肉」については、牛のせき柱(BSE発生国としてOIEが公表した国・地域のもの)が含まれてはならない。なお、せき柱(同上)の除去にあたっては、背根神経節による牛の枝肉及び食用に供する内蔵の汚染を防ぐように処理しなければならない。
(2)エキス、ゼラチン、牛脂、添加物等については、せき柱が原料として利用されていることが考えられることから、次のとおり規定する。なお、BSE非発生国のせき柱を使用する場合には、対象とはしない。
牛のせき柱(BSE発生国としてOIEが公表した国・地域のもの)を食品、添加物及び器具の製造に使用してはならない。
 なお、ゼラチンについては、せき柱(同上)以外の骨の使用を含め基準の検討を行う。食用牛脂の不溶性不純物の規定については、せき柱の使用実態等を踏まえ、さらに検討を行う。
(3)せき柱の範囲
 せき柱には、尾椎、腰椎横突起、胸椎横突起及び仙骨翼は含まない。

【試案2】
 と畜場において、背根神経節の除去が十分に行えることが確認できれば、次のとおり規定する。なお、BSE非発生国から輸入された、背根神経節を含むせき柱を食品等の原料として使用することは差し支えない。
背根神経節を特定部位に指定し、と畜場において背根神経節の除去及び焼却を義務付ける。

その他
 管理方法の試案については、実態調査とあわせ、広く国民の意見を聴取する。



(別添1)
牛肉及びその副産物の流通フローチャート

図

厚生労働省食品安全部基準審査課作成


(別添2)
○牛せき柱の流通実態等調査結果(127自治体)

食肉処理業 (許可数 9,964施設(H13年度))
(調査施設:718施設)
 食肉処理業の許可を有する施設のうち国産牛枝肉の脱骨を行う施設を対象として、各自治体ごとに3割(と畜場に併設されている施設を優先的に調査)について抽出調査を実施
せき柱の処理方法 調査施設 搬出量が把握できたもの
施設数 搬出量(t/日)
化製場へ搬出 522 412 (72.7%) 100.40 (77.9%)
食品製造施設へ搬出 71 59 (10.4%) 6.18 (4.8%)
産業廃棄物として搬出 47 36 (6.3%) 15.19 (11.8%)
一般廃棄物として搬出 8 5 (0.9%) 3.45 (2.7%)
その他 69 56 (0.9%) 2.59 (2.0%)
注)その他:集荷業者、油脂業者、飲食店など

食肉製品製造業 (許可数 2,179施設(H13年度))
(調査施設:33施設)
 食肉製品製造業の許可を有する施設のうち国産牛枝肉の脱骨を行う施設を対象として、各自治体ごとに10施設について抽出調査を実施
せき柱の処理方法 調査施設 搬出量が把握できたもの
施設数 搬出量(t/日)
化製場へ搬出 24 18 (66.7%) 0.39 (68.7%)
食品製造施設へ搬出 0 0 (0%) 0 (0%)
産業廃棄物として搬出 5 5 (18.5%) 0.15 (26.2%)
一般廃棄物として搬出 0 0 (0%) 0 (0%)
その他 4 4 (14.8%) 0.03 (5.1%)
注)その他:油脂業者、施設内で焼却

食肉販売業のみの許可を有する施設(食肉販売業許可数 165,101施設(H13年度))
(調査施設:275施設)
 食肉販売業のみの許可を有する施設のうち国産牛枝肉の脱骨を行う施設を対象として、各自治体ごとに10施設について抽出調査を実施
せき柱の処理方法 調査施設 搬出量が把握できたもの
施設数 搬出量(t/日)
化製場へ搬出 167 115 (60.2%) 0.96 (61.0%)
食品製造施設へ搬出 18 8 (4.2%) 0.12 (7.4%)
産業廃棄物として搬出 36 27 (14.1%) 0.25 (15.5%)
一般廃棄物として搬出 15 8 (4.2%) 0.02 (1.2%)
その他 37 32 (16.8%) 0.22 (14.2%)
注)その他:飲食店、運搬業者など

国産牛せき柱を用いて食用として骨ペースト、骨エキス、ゼラチン、骨油、骨粉、添加物等の製造加工を行う施設
(調査施設:5施設)
 国産牛せき柱を用いて食品の製造加工を行う施設を対象として、各自治体ごとに10施設について抽出調査を実施
加工方法 調査施設 搬入量が把握できたもの
施設数 搬入量(t/日)
加圧加熱殺菌 4 2 (66.7%) 1.05 (99.9%)
アルカリ処理 0 0 (0%) 0 (0%)
その他 1 1 (33.3%) 0.00 (0.1%)
注)その他:100℃、2〜4時間加熱

化製場(許可数 油脂:114、肥料:88、飼料:124(H13年度))
(調査施設:54施設)
 国産牛骨を処理するすべての化製場を対象に調査を実施
せき柱の処理方法 調査施設 搬入量が把握できたもの
施設数 搬入量(t/日)
肉骨粉に加工後焼却 40 23 (71.9%) 27.66 (66.7%)
油脂に加工 19 9 (28.1%) 11.08 (26.7%)
肥料に加工 7 5 (15.6%) 6.35 (15.3%)
飼料に加工 0 0 (0%) 0 (0%)
その他 7 3 (9.4%) 0.38 (0.9%)
注)その他:他(県外)の化製場へ搬出など


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