平成14年11月に実施された糖尿病実態調査を集計・解析し、速報として作成したものである。追って公表される、『平成14年糖尿病実態調査報告書』と確定数が若干相違する可能性があるが、大局的な観察にはほとんど支障ないものと考えられる。 |
1. | 調査の目的 わが国の糖尿病に関する状況を把握することにより、今後の対策に資することを目的とした。 |
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2. | 調査客体 平成14年国民栄養調査に応じた20歳以上の人(10,067人)のうち、糖尿病実態調査質問票の回答に応じた5,792人を調査客体とした。 |
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3. | 調査客体の概要
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4. | 調査項目
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5. | 調査時期 平成14年11月(国民栄養調査・身体状況調査と同時に実施) |
6. | 調査系統 調査系統は次の通り行った。 厚生労働省 ― 都道府県・政令市・特別区 ― 保健所 ― 糖尿病実態調査員 |
7. | 調査結果 調査結果に関して、※のものは調査客体が糖尿病実態調査質問票の回答に応じた者(5,792名)としている。その他の調査客体は糖尿病実態調査質問票の回答に応じた者でかつ血液検査結果が存在するもの(5,346名)である。 |
1.糖尿病が強く疑われる者数
糖尿病が強く疑われる人は約740万人。 糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると約1,620万人であった。 |
今回の調査で、「糖尿病が強く疑われる人(現在治療中の人を含む)」、「糖尿病の可能性を否定できない人」の割合については、下記のとおり。「糖尿病が強く疑われる人」は全体の9.0%で、「糖尿病の可能性を否定できない人」は全体の10.6%であった。 今回の結果に平成14年10月1日の推計人口を乗じて推計したところ、糖尿病と強く疑われる人は約740万人で、糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると約1,620万人となった。(表1−1) 年齢階級別に見ると、「糖尿病が強く疑われる人」について、男性は60歳以上で、女性は60歳代で増加していたが、男女とも60歳未満ではやや減少傾向にあった。また、「糖尿病の可能性を否定できない人」について、男性は50歳以上で増加し、50歳未満では減少していた。女性では、ほぼ全年齢層で増加傾向にあった。(表1−2) |
表1-1 | 糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の推計
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注) | (1) | 「糖尿病が強く疑われる人」は、ヘモグロビンA1c6.1%以上、または、アンケート調査で、現在糖尿病の治療を受けていると答えた人。 |
(2) | 「糖尿病の可能性を否定できない人」は、ヘモグロビンA1cが5.6%以上6.1%未満で現在糖尿病の治療を受けていない人。 | |
(3) | 平成9年調査報告においては、平成8年10月1日の推計人口を乗じて推計。 |
表1-2 | 糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の全体に対する割合
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糖尿病の予防や治療に関する情報源として多くあげられたものは、 男性は、テレビ・ラジオ(63.7%)、新聞(33.0%)、病院・診療所(25.8%)。 女性は、テレビ・ラジオ(74.1%)、新聞(35.9%)、雑誌・本(33.1%)。 |
糖尿病という病気について、その予防や治療に関する情報を何から得ているか尋ねたところ(複数回答)、男女共にテレビ・ラジオと回答した人が最も多かった。(表2)
表2 糖尿病の予防や治療に関する情報源 ※
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糖尿病という病気に関する記述について正しいと思うか尋ねたところ、「食生活と運動習慣は、糖尿病の予防に効果がある。」は正しいと回答した人が最も多く93.8%であったのに対し、「糖尿病の人には、血圧の高い人が多い。」は正しいが40.5%と回答した人が最も少なかった。 |
糖尿病という病気に関する正しい記述に対し、「正しい食生活と運動習慣は、糖尿病の予防に効果がある。」は93.8%、「血のつながった家族に糖尿病の人がいると、自分も糖尿病になりやすい。」は63.6%、「糖尿病になっても、自覚症状がないことが多い。」は66.1%、「太っていると、糖尿病になりやすい。」は57.9%、「糖尿病の人には、血圧の高い人が多い。」は40.5%、「糖尿病の人には、血液中のコレステロールや中性脂肪が高い人が多い。」は60.4%、「軽い糖尿病の人でも、狭心症や心筋梗塞などの心臓病になりやすい。」は46.4%、「糖尿病の人は、傷が治りにくい。」は49.8%の者が正しいと回答した。 「太っていると、糖尿病になりやすい。」という記述について間違っていると回答した人が24.0%にのぼった。(表3)
表3 糖尿病についての知識※
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自分の住んでいる近隣地域に、保健所・保健センター、病院・診療所など食生活について相談できる適当な場所を知っていると回答した者は68.9%、体育館、スポーツクラブ、ウォーキング・ジョギングのためのコースなど運動を行うための適当な場所を知っていると回答した者は81.0%であった。 |
自分の住んでいる近隣地域に「保健所・保健センター、病院・診療所など食生活について相談できる適当な場所」及び「体育館、スポーツクラブ、ウォーキング・ジョギングのためのコースなど運動を行うための適当な場所」を知っているか尋ねた結果は下記のとおり。(表4) 20歳代及び30歳代の男性において、自分の住んでいる近隣地域に食生活について相談できる適当な場所を知っていると回答した人の割合が他の年齢階級と比較し、少なかった。
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今回の調査において糖尿病が強く疑われる人のうち、現在糖尿病の治療を受けている人は、50.6%であった。 |
治療には、食事療法や運動療法があり、これで十分な効果が得られない場合、血糖降下剤などの内服薬や、インスリン注射等の薬物療法が加えられる。 今回の調査において糖尿病が強く疑われる人のうち、現在糖尿病の治療を受けていると回答した人は、50.6%であった。(表5)
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糖尿病が強く疑われる人のうち、 健診を受けたことのある人の半数以上は治療に結びついているが、 健診を受けたことがない人では、89.4%は治療を受けていない。 |
糖尿病は、自覚症状がないことが多く、健診でみつかることの多い疾患である。 今回の調査で、過去に住民健診、職場健診、人間ドック等における糖尿病の検査を含む健診を受けたことのあると回答した人は、64.1%(平成9年調査では66.7%)であった。 糖尿病が強く疑われる人について、健診と治療の状況について尋ねた結果は下記のとおり(表6)。 表6 糖尿病が強く疑われる人における健診受診の有無と治療の状況
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糖尿病で現在治療を受けている人では、 神経障害15.6%、網膜症13.1%、腎症15.2%、足壊疸(えそ)1.6%であった。 |
糖尿病の状態が続くと、神経障害や、網膜症、腎症、足壊疸(えそ)などの合併症が出現する。 今回の調査で、糖尿病が強く疑われる人のうち、「糖尿病の治療を現在受けている」と回答した人と「ヘモグロビンA1cが6.1%以上であるが現在治療を受けていない人」における合併症の状況は、表7のとおり。 現在、治療を受けていないと回答した人の中にもこれらの合併症にかかっていると回答した人がいた。(表7)
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糖尿病が強く疑われる人のうちでは、 心臓病15.8%、脳卒中7.9%であった。 |
糖尿病では、網膜症や腎臓などの小血管障害とともに、心臓や脳などの大血管障害にも関連する。 糖尿病の状況ごとの「心臓病及び脳卒中にかかっているといわれたり、治療を受けたりしたことがある」と回答した人の状況は下記のとおり。(表8)
表8 糖尿病状況別脳卒中と心臓病の状況
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照会先:厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室 担当:池田(2348)渋谷(2396)