03/07/29 第2回食を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会議事録                    第2回         食を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会               平成15年 7月29日(火)               経済産業省別館1012会議室  村田座長  座長の村田でございます。定刻になりましたので、会を始めさせていただきたいと思 います。きょうはお忙しいところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございま す。  私もそうさせていただきますが、もしお暑いようでしたら、上着をお取りになりまし て、むしろ議論の方の熱を上げていただきたいと思います。それでは今後は座って進行 させていただきます。  まずは本日の出席状況につきまして、事務局の方から御説明をいただければと思いま す。  石井母子保健課長補佐  渡辺委員は少しおくれている模様でございますが、本日は上原委員が所用により御欠 席という御連絡を承っております。  村田座長  吉池委員と吉田委員は、前回の会議は御欠席され、今回が初めての御出席になります ので、自己紹介を兼ねて、少しお話をいただければと思います。  吉池委員  国立健康・栄養研究所の吉池でございます。前回は大変失礼いたしました。自己紹介 ということで、少しお話をさせていただきます。  私はもちろん村田座長ほどの長い経験はありませんが、もともとは小児科の臨床医と してスタートいたしました。ちょうど小児成人病という言葉が華やかだったころ、今の 国立健康・栄養研究所の方へ移りまして、子どもの時期の成人病と食生活、身体活動と の関係の疫学的な調査をするということで研究をスタートしました。  現在は国民栄養調査等の、子どもというよりはむしろ成人にかかわる栄養や健康調査 に携わることが多いわけですが、昨年度から母子保健課の研究班の中で、子どもの発達 段階に応じた栄養食教育プログラムの中の分担研究といたしまして、いろいろな疫学調 査等における、子どもの食にかかわる指標の整理、あるいは臨床判断ではEBMと言わ れているようなエビデンスのレベルを用いて、過去の知見を整理していくといったこと を少しずつしているというようなところでございます。  そのような仕事はまだ途中ですけれども、この検討会の中で何か役に立つようなこと があれば、また少しずつお話をさせていただければと思っております。  この領域での経験はまだまだ十分ではありませんので、先生方の御指導をいろいろと いただきながら参加させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたしま す。  村田座長  それでは吉田委員、よろしくお願いいたします。  吉田委員  NPO法人こどもの森の吉田隆子と申します。よろしくお願いいたします。地方で本 当に小さなNPO法人をやっておりまして、このような席に座るというのは何かおこが ましいという感じでおります。  私は長年、栄養士として仕事をしてまいりまして、いつの間にか、幼児のところで食 の教育をやることがとても楽しいという思いから、だんだんとその中に入ってまいりま した。どうすれば子どもたちがわくわくどきどきしながらわかってくれるのかといった ような活動をしております。  NPO法人こどもの森というのは、名前だけはとてもよく聞こえるかもしれません が、静岡の茶畑の中にある小さなところで、子どもたちは木のおうちと呼んでおりま す。  土地を借りて、借金100%で借りた小さな家で、子どもたちと一緒に活動をしている という立場でございます。今回は勉強させていただく機会を与えられたと思っておりま すので、どうぞよろしくお願いいたします。  村田座長  どうもありがとうございました。それでは議事に入ります前に、皆様のお手元にいろ いろと資料があると思いますが、この資料につきまして、事務局から御説明をお願いい たします。  河野栄養専門官  本日、お手元に配布しております資料でございますが、まず資料1としまして、本日 の検討会の検討課題メモを1枚紙として配布してございます。資料2としては、発育・ 発達をめぐる課題(例)について、参考資料の1といたしましては、子どもの食をめぐ る現状について、参考資料の2といたしまして、第1回の検討会の議事要旨(案)を配 布してございます。  また、あわせて思春期やせ症の予防と発見のためにということで、渡辺委員からカラ ー版のリーフレットを御提供いただいています。  さらに佐藤委員の方から、ちゃぐりんという雑誌をお手元の方に配布しております。 以上でございます。  村田座長  ただいま資料の御確認をいただきましたが、配布漏れなどはございませんでしょう か。  吉池委員と吉田委員は前回はお休みだったのですが、議事録はお届けしてあるかと思 います。資料1にも書いてございますが、結論から申しますと、目標は楽しく食べると いうことで、そのことを中心にして、具体的にこれからの子どもの食育といったことを 考えていこうということで前回が終わっております。  今回は食べる力といったものが、発育・発達に応じてどのような問題を抱え、それに 対してどのような対応をしていけばいいのかといったことを、少し具体的に御議論をい ただきたいと思っております。  前回も申し上げましたが、発育段階そのものを議論しておりますと、いろいろと問題 があるわけですが、食育といいますか、食べる力をどのようにはぐくんでいくのかとい う議論をしているうちに、当然こういう発達段階ではこういったことが大事だろう、と いうふうな話が進んでまいりまして、その中において、具体的な発育段階のとらえ方と いうものができていくのではないかというように思っております。  検討課題メモの中で、楽しく食べるということが目標としてありますが、これは最終 的にはもう少し表現が変わるかもしれないということで、(仮)がついております。  なぜ今は楽しい食事になっていないのか、あるいは子どもの心と身体はどのようなか かわりを持っているのかということもあるわけですが、よりよい方向に向けて、どのよ うに対応していくのかというふうなところを、発育・発達段階に応じながら議論をして いただきますと、当然その背景として、今申し上げたような問題点を踏まえて、御議論 をいただくことにはなるかと思っております。  資料1、資料2、参考資料1とございますので、今申し上げたような議論をしていた だくに当たりまして、事務局の方から資料の内容につきまして、もう少し詳しく御説明 をいただければ、議論の方向性もはっきりしてくるかと思います。御説明の方をよろし くお願いします。  河野栄養専門官  それではまず資料1、資料2に入ります前に、参考資料1の方をお開きいただきたい と思います。前回の検討会でお示ししました、子どもの食をめぐる現状についてです が、その後の委員の先生方の御発言も受けまして、幾つかの資料を追加しておりますの で、その追加部分について御説明を申し上げます。  まず2ページ目ですが、生活習慣病の増加による子どもへの影響についてはどうかと いう点につきまして、まず肥満の程度別に見たコレステロール、高血圧の状況というこ とで、12歳の男子の例において数値を示してございます。  グラフ右側が肥満群ということになるわけですが、肥満度50%以上の高度肥満群で は、総コレステロールならびに血圧ともに高いといった状況にあります。  その下には肥満に関する生活要因ということで、富山スタディと呼ばれております、 富山県内平成元年生まれの小児を対象として長期追跡研究を行った結果から、3歳の時 点、小学校1年の時点、小学校4年の時点の、それぞれの肥満群と対照群との比較を 行った結果、こういった内容について、特に学年の進行に伴って、生活要因についても 多面的な問題があらわれてきている例ということでお示しをしてございます。  続きまして3ページになります。もっとやせたいと思う子どもたちの生活習慣あるい は食習慣の改善意欲はどうかという点につきまして、下のグラフで具体的にダイエット を実行した者の方法をお示ししております。  運動する、おやつを減らす、食事の量を減らすといった順番ですが、ダイエット食品 をとる、あるいはやせるための薬を飲むという者も、中学生、高校生では見受けられる といった実態でございます。  4ページ、5ページにつきましては、民間の調査でございますが、子どものやせ願望 についてということで、小学校の高学年を対象にした調査の結果をお示ししておりま す。  4ページ中ほどにある三つ目のグラフの、体を壊してもやせたいかというものについ ては、どんなに体を壊してもやせたい、あるいは少し体の調子が悪くなるくらいならや せたい、という回答が、女子では3割近く見られるといったような状況でございます。  5ページにつきましては、そういったやせ願望と子どもの特性ということで、各種、 側面を比べたデータでございます。  例えば下の女子の場合のグラフを見ていただきますと、うんとやせたいと思う群で は、人から格好いいと言われたいという自己顕示性であるとか、あるいは家には嫌なこ とが多い、あるいは人からどう思われているか気になる、といった家庭や学校のストレ スも多く受けているという状況がうかがえます。  続きまして7ページに移りまして、実際の小児期から成人期にかけての栄養素等摂取 状況がどうであるかということですが、ここにはエネルギーほか幾つかの栄養素につき まして、実際の摂取量がわかるようにパーセンタイルで示されているものです。  年齢が高くなるほど摂取量に開きが出てくるということとともに、1日の必要量を満 たすのに十分な摂取量を、グラフ中の点線で、RDAという所要量という基準でお示し していますけれども、例えばエネルギー摂取量を見た場合に、50%タイル、70%タイル の間にRDAの基準があり、ということは全体の50%以上の人たちはその基準に達して いないという状況であり、他の栄養素についても同様ですが、この時期では摂取量が不 十分な状況が見られるといったような結果でございます。  続きまして9ページに移らせていただきます。先ほど座長からもお話がございました ように、食事の楽しさといったことについてということが第1回でも意見として挙がっ ておりましたが、食事の楽しさと、食行動、食態度、食事内容、健康状態との関係を示 した一覧表でございます。  朝食が楽しかったか、あるいは夕食が楽しかったかというものについて、楽しい、そ の他、つまらない、の群単で見た場合に、食行動、食べる状況、朝食の摂取状況を初め として、いずれも多くの側面において、楽しいと答えている群に良好な結果が出ている という調査結果でございます  11ページに移らせていただきます。各側面との連動性という部分で、幼児の朝食での あいさつ行動、いただきます、ごちそうさまといった行動と、QOL、食行動、ライフ スタイルの関係というものを示しているグラフでございます。  棒グラフ上段が、朝食で、いただきます、ごちそうさまといったあいさつをほとんど する群、下段が、いただきます、ごちそうさまのあいさつを余りしない群ということ で、これについても食生活の主な面ということで多様な面が示してありますが、あいさ つをほとんどする群、すなわち棒グラフ上段の方に、より実践をしている率が高いと いったような調査結果でございます。  12ページにつきましては、食事を楽しいと感じるときということを、小中学生を対象 に尋ねたものでございます。  好きなものを食べるときというものが一番高率になっており、家族そろって食べると き、あるいは自分がつくったり、手伝ったりしたものを食べるときというものは、男子 は女子に比べて、中学生は小学生に比べて低いといったような状況が見られます。  また、子どもの偏食、食事のマナーについて学校関係者に尋ねたものを、下記に資料 提供をいただいていますが、8割が子どもたちの偏食についてふえていると感じてお り、7割が子どもたちの食事のマナーについて低下していると感じているという実態で ございます。  さらに13ページにつきましては、いわゆる通塾、習い事等もふえているのではないか ということで、小中学生の通塾率の推移をグラフとしてお示ししたものでございます。  最後に、15ページでは子育ての状況につきまして、親自身に精神的なゆとりを持てな いといった状況もあるのではないかという部分について、幼児健康度調査の方から、子 どもとゆっくり過ごせる時間のある母親の割合が、10年前と比べて減少しているという ことや、あるいは平成12年の調査結果を見た場合に、子育てに困難を感じる、あるいは 子どもを虐待しているのではないかと思う母親の割合が、2割から3割いるという実態 がございます。以上が、先生方の発言をもとにして追加したデータでございます。  さらに参考資料の2につきましては、第1回の議事要旨(案)ということで、文中下 線は事務局の方で引かせていただきましたが、本検討会の意義、ねらいにつきまして、 例えば子どもの発達段階に応じてであるとか、あるいは発育・発達の個人差、食べ方も 一人一人違うといったことについて、さらには中ほどの下線の部分になりますが、食事 を楽しむであるとか、問題点の連動性について、というあたりについても発言がありま したので、この点については今回も引き続き議論をいただきたいというふうに考えてお ります。  また、2ページにつきましては、子どもの食をめぐる現状についてということで、 今、データでお示しした追加の部分を下線で引いてございます。また、それ以外のもの につきましても、データが収集できた段階で随時追加をしていくというような形にして いきたいというふうに考えております。  さらに3ページ以降につきましては、子どもの食を通じて、どのような力をはぐくん でいくか、どのようにしていくかということで、日ごろの実践や調査研究をもとに、前 回に御発言いただいたことを要旨としてまとめておりますので、こういった点も踏まえ まして、きょうの検討課題メモをご用意させていただきました。資料1の検討課題メモ (案)をごらんいただきたいと思います。  一つ目の課題としまして、食べる力についてどのような力をはぐくむかということ は、先ほど座長から御説明がありましたとおり、楽しく食べるということを目標に置く というところできょうの議論を進めていただくということで、どのような力をはぐくむ かというところに、三つの丸でお示しをしております。  今申し上げたように、子どもの食をめぐる現状というのは多様ですので、そういった 中で幾つかの問題点の簡潔も含めて、どのような力をはぐくんでいけばいいのか、さら に身体的、心理的、社会的健康の実現といったようなことも前回に御発言いただきまし たが、食が持つ多面的な要素を踏まえた場合に、かつこれらが関連しているという特殊 性を持つ中で、どのような力をはぐくんでいけばいいのか、さらに前回の検討会におい ては、こういう体験が望ましいということや、こういう経験が必要であるということ、 あるいはこういった食べ方が重要であるとの意見が出ていますが、それについて、どの ような力をはぐくむためのものなのかという視点で御議論を進めていただけたらと思い ます。  また二つ目の課題につきまして、発育・発達のどういう課程を重視するのかというこ とで、1点目としては、食行動の発達の側面だけでなく、身体的、心理的、社会的発達 の側面を含め、子どもを全体として統合的にとらえることが、子どもの健全育成の観点 からは必要であるということ、また発達は年齢と関連しているが、年齢のみによって規 定されるものではなく、個人の発達レベルに応じた支援の観点も必要ということで、こ ういった観点に立った議論ということで下に三つの丸を掲げてございますが、食行動、 身体的側面、例えば体格、身長、体重であるとか、そしゃく機能であるとか、さらに心 理的、社会的側面、基本的信頼だとか、人間関係、自主性など、幅広い中で、かつこれ らが関連性を持つ中で、どういう点に着目をするとよいのか、さらに発育・発達の過程 を把握するのに、どういう点に着目するとよいのか、個人差に配慮した支援の観点から という点ではどういう点に着目するとよいのか、さらに1、2の議論を踏まえていただ いた後で、3として、1で議論した食べる力について、特にこの時期にはぐくむのがふ さわしいという具体的内容があるかという形で議論を進めていただきたいというふうに 考えております。  なお、2の発育・発達のどういう過程を重視するのかということについて、少し参考 にする視点の例として、資料の2として幾つか課題例を示してございますので、そちら についても簡単に御説明をさせていただきたいと思います。  まず1点目としまして、身体的側面の例ということで座長の方から資料提供をいただ いているものでございますが、最大身長成長速度と年齢との関係ということで、1ペー ジから3ページまでお示ししてございます。  最大身長成長速度を示す年齢を指標にした、戦後の思春期若年化ということで、上に 男子、下に女子が示してありますが、1948年に5歳だった集団が、1960年に17歳になる 過程において、1年間の身長の伸びを縦軸にとってプロットをしているものでございま す。  それを10年刻みで集団ととらえてグラフにあらわした場合に、例えば四角でプロット した部分では、1年間の身長の伸びが一番著しい時期、ピークを示す時期が14.13歳で、 一方1988年に5歳だった集団が2000年で17歳になる、丸の部分を見ていただくと、一番 ピークになる部分は12.47歳です。  女子につきましては下のグラフになりますが、1948年に5歳だった集団で、一番の ピークを示す部分は11.91歳、1988年に5歳だった集団については10.42歳ということ で、思春期をとらえる時期そのものが若年化しているのではないかということと、ま た、このように急速に伸びるときが、心身共に不安定さを増す時期であるということで あれば、個人対応という視点も踏まえて、出てくるという例としてお示しをしてござい ます。  続きまして4ページ、5ページにつきましては、小項目がかなり細かいものになって おりますが、乳幼児の年齢と食行動、ライフスタイル、健康、QOLとの関連というこ とで、食行動の各項目につきまして、それがどれだけ年齢、クラスごとに実践している かということを示した一覧表でございます。  これにつきましても、どういう食行動の発達に注目するかといった視点の例としてお 示ししておりますので、参考として、こういった観点についても御議論をいただければ というふうに思います。  また、6ページの上の一覧表、摂食機能発達の概要ということで、乳汁から固形食に 移行する過程とともに、嚥下、あるいはそしゃくや、さらには手づかみからスプーン、 はしといった食具の利用の問題、あるいは歯の生え方等を含めて、どういった面につい て着目するのか、さらに6ページ下の表から7ページにかけては、認知、心理、社会的 発達ということで、生涯発達の初段階ということで、年齢の目安、段階、その特徴とい うことで、認知発達であったり、心理・性的発達であったり、あるいは7ページにつき ましては、同様にハヴィガーストの発達課題ということで、乳幼児期から発達段階別に 発達課題の幾つかが一覧表になったものをお示ししております。  こういったものの関連性にも配慮しながら、どういう点に着目するとよいのか、議論 を深めていただけたらというふうに考えております。以上でございます。  村田座長  ありがとうございました。今の事務局からの説明につきまして、何か特につけ加える ことや、御質問、コメント等はございますか。  特にございませんようでしたら、時間もかなりたっておりますので、具体的な議事に 入らせていただきたいと思います。  今、河野専門官から説明していただきましたように、きょうは相当盛りだくさんの議 論をしなくてはいけないと思っておりますが、まず先ほどもちょっと御説明申し上げま したけれども、子どもの食べる力をはぐくむ上で何が今大事なのか、どういう視点に立 てばよいのかということを、先ほどから申し上げておりますように、発育・発達別に やっておりますと、時間的にもとても足りないと思っておりますので、各委員の皆さん が、どういった観点に立っていらっしゃるかということを伺わせていただくことで、そ のまとまりの中から問題を整理していきたいと考えております。  勝手に制限をするのも大変申しわけないのですが、申し上げましたように時間が幾ら あっても足りないというような議論になるのではないかと思っておりまして、基本的に 今までいろいろと御説明がありました点から、委員の皆さんは、子どもの食べる力をは ぐくむ上で何が問題で、それをどのようにしようとしているのか、どういうことが重要 なのか、こういった点に限りまして、大変失礼ですが、後にもいろいろと議論がござい ますので、5分くらいを目安にポイントをお話しいただければありがたいかと思いま す。  前回は足立委員の方から始まりましたので、きょうは渡辺委員からお願いします。御 自由な発言もよろしいのですが、一応、委員の先生方、皆さんの御意見を伺ってみるこ とが非常に大事かと思います。よろしくお願いいたします。  渡辺委員  どうもありがとうございます。それでは、きょうの資料を拝見して感じたところから 入らせていただければ、ほかの先生方のお話につながるのではないかと思いますので、 そういったことをお話しさせていただきます。  大変大事な資料をきちんと選んで提出していただきましてありがとうございました。 第1回目から、食べることはすなわち生きることのクオリティ・オブ・ライフと直結し ているという視点が、この場で共有できているということは大変うれしく思います。  やはり生き延びるというか、生きて、進化して、そして発展していくために、食べる という営みが根元的なものだということはだれも疑わないと思いますが、きょうは川野 専門官に、具体的な乳幼児期の食機能のことから、フロイト、エリクソン、ピアジェな どの心理学の発達医療までを網羅していただきまして、大変な御努力をいただいたと 思っておりますが、一言で言ってしまえば、生きるということの中にある、取り入れる という営みを、いろいろなレベルからしっかりと見ていくということができれば、食行 動というものが、肉体的な栄養、生きるための栄養をとると同時に、社会文化的な発達 に直結しているということがわかると思います。  ピアジェもフロイトもエリクソンも等しく言っていることは、命の初めに外界との触 れ合いありきということです。  感覚運動的な外界との触れ合いがあったときに、体内にいたときは臍帯の血管から栄 養が補給され、すべて充足していていた人間が、生きるための栄養補給として、一つは 食事を取り入れるということ、おっぱいを飲むということ、次には酸素を取り入れると いうこと、これをみずからやらなくては生きていけないという大きな課題にぶち当たる わけです。  フロイトなどは、まずは取り入れて食べること、栄養を得ることが根元的ではないか というふうに感じた時期がありまして、フロイトから始まって、クラインという乳幼児 の深層心理の専門家は、おっぱいすなわち母なるものというふうに言って、それをずっ と追求していった時代があります。  ところがボウルビーという人がアタッチメントという観点を出しまして、ほ乳類の場 合は生まれた赤ちゃんを必ず自分の身近につけておく、そうしなければ、ほかの強い動 物にえさとして食べられてしまうので、身近に触れ合っていることでしっかりと守って いるということ、つまりセキュリティーということが、食よりももっと根元的なもので はないかというふうな提案をした時期があります。  これはそんなに古い話ではなく、1940年代から50年代だと思いますが、これは精神分 析学会や発達心理の中に大変な論争を引き起こしまして、結論としては、赤ちゃんは安 心感があるときに脳が発達するということが実証研究で証明されたと言っていいと思い ます。  過去30年くらいのアタッチメント国際研究は、生まれた命が安心して生きているとい う中でのみ、本当に安定して、実際の脳細胞がネットワークをつくって、そのネットワ ークからいろいろと、乳幼児期ではシナップスの機能がよくなったり、脳細胞のネット ワークができていったりしながら、ある時期までいきますと、経験によってよく使うも のが残っていき、経験により使わないものが淘汰されていって、神経繊維や神経シナッ プスの淘汰や、神経回路の淘汰ということが学童期に向かって起きてきます。  乳幼児期の著しくネットワークが発達する時期というのは、頭囲が一番発達する時期 です。体内から2歳までが、頭囲が一番大きくなる。さらにまた思春期に頭囲が大きく なる。そういう意味で、人間は2回、質の異なる爆発的な脳の発達期がありまして、そ れが乳幼児期と思春期です。  乳幼児期と思春期の切れ目のところで急に、1年間4、5センチの身長の成長速度 が、1年間8センチくらいに切りかわるところ、幼児期の発達が終わって、思春期とい う新しい性ホルモンによって、さらに質的に異なって高次機能をつくり上げていく脳の 発達が起きる時期の入口が、身長のスパート時だというふうに言われています。  脳は、持って生まれた資質と経験、それから環境によって刻々とつくられていくもの ですけれども、特に幼児期と思春期は、新しい質の次元のネットワークができるという 意味で、経験がより影響力を持つということだと思います。  ですから赤ちゃんは、お母さんと食べ物を食べていながら、お母さんの声や、お母さ んが自分をよく見守りながら、にっこりと笑いながら楽しい雰囲気をつくっていてくれ るということ、食べ物が、のどごしから胃腸に入っていくとともに、自分のすぐ外のお 母さんの声や、においや、表情が全部、自分と共に生きてくれているということが入っ ていくときに、機能がよくなると言いますか、脳が快く発達するということです。  しかし、例えばアンソニーという人は、精神分裂病や、非常に混乱した人格のお母さ んの、赤ちゃんへの御飯の食べさせ方を見ていると、一生懸命に食べさせて、いいもの をたくさん詰め込むのですが、タイミングや気持ちが赤ちゃんと全然かみ合っていない ので、赤ちゃんは目を白黒させて、きょろきょろしながら、だんだん機械的な食べ方に なってしまって、恐らくここ3年間くらいでは、ボウルビーの言ったアタッチメント理 論を、より実証的に解明していく脳のニューロサイエンスが発達しましたので、そのよ うな体験によって引き起こされる脳の安定感というものが、乳幼児期に愛着行動の安定 感と不安定感という形でもう出ているのではないか、より不安定な愛着行動の子どもた ちから、高い率の精神障害やいろいろな問題が出るということが、残念ながら割とはっ きりしてきましたので、赤ちゃんのときからの食生活自体が情動生活であり、脳の大事 な発達を組み込んでいるのではないか、さらに思春期がもう一度、大事な体をつくって いく時期であると同時に、より高次の機能の脳をつくっていく時期ではないか。  残念ながら日本は、特に子どもが思春期に差しかかったときに、ある意味で、両親が 中年期の夫婦の危機を迎えます。倦怠期に入りますし、また、母親が急激に子どもから 離れて、仕事に出ようという時期にもなります。このタイミングと子どもの中の急激な 新しいシステムへの変換期がタイミング悪く重なってしまい、そこへさらに祖父母の死 やいろいろなトラウマが加わりますと、崩れるはずのない子どもたちの行動系や情動系 が見事に崩れていってしまうということが痛ましい形で起きていると思います。  また後ほど追加したいと思いますが、5分を過ぎましたので、このあたりにしたいと 思います。  村田座長  ありがとうございます。それでは吉田委員、よろしくお願いいたします。  吉田委員  失礼いたします。まだまだ私自身の考えがまとまっておりませんけれども、私は実践 の中で、子どもの立場から、子どもの気持ちというのはこういうことなのではないかと いうことをお話しすることしかできないと思います。子どもたちの様子を見ております と、食べさせられているといいますか、そして食べなさいと言われ続けているといいま すか、そういったことを非常に感じます。  これだけ豊かな食の時代ですので、「食べなければ大きくなれないよ」というような 押しつけは子どもたちにとっては、負担なのではないかと感じているところです。  食べる力ということが今のテーマですが、実践の中で子どもたちは食べ物とかかわっ ていくことによって、行動が見事に変わっていきます。しかし実際にはかかわりが少な いことでまともな食ができない子が非常に多くなっているということを感じます。  まともではない食というのは何かというと、いわゆる食事ではない食です。甘いお菓 子や、ジャンクフードと言われるようなものしか食べられない子どもがふえていて、そ れに親が対応できていない。親の世代がきちんとした食が何であるかということを理解 していないし、伝えられていない。家庭の食というところからの子育ての力が非常に落 ちているということを、子どもと一緒にいる中で感じます。  また、私は頼まれますと、保育園や幼稚園に出かけたりしておりますが、保育園や幼 稚園の先生方は大変年齢が若くなっております。20代30代の先生方が大変多くなってい ます、子どもたちはそこで1日生活するわけですから、先生の影響というのは大変大き なものがあると思います。ところがその若い先生方自身が、高度成長期の筒便な食生活 の中で育った年代ですからいわゆる食とのかかわり方を教えられていないという現場が あります。当然子どもに食へのかかわりを伝えることができないわけです。そこでこの 集団の中で一番子どもにかかわる園の先生方に食の教育をやっていかないと、この問題 は解決しないのではないかということを感じます。  私は本来、食というのは、自ら食べる食べ物を育て、それを自らの手で調理をして、 自らの手で食べるということが、一番の原点ではないか思っているのですが、そこのと ころがどうも今の子どもたちには伝えられていないということをすごく感じるわけで す。  今、渡辺先生のお話を伺っていて、かかわりがないということを、私が勝手に先生の お話の中から解釈いたしますと、これがアタッチメント理論というものなのかな、後で 先生に御質問してみようと思ったわけですが、子どもたちに生活の中での食のかかわり といったことが切れてしまっているところに、大きな問題があって、子どもたちは食が おもしろくないと感じているということを私は感じております。  村田座長  ありがとうございました。続きまして吉池委員、よろしくお願いいたします。  吉池委員  前回の議論を十分にキャッチアップしていないので、もう既に先生方がお話しされた ことかもしれないのですが、どのような力かということを少し分けて考えると、一つは 食にかかわるいろいろなスキルの部分があるのだろうと思います。これは、そしゃく、 嚥下から始まって、いろいろな食器を使う、食べるという行為そのものから始まって、 例えば、いただきますというようなあいさつの話も出ましたが、食べ物を選択してい く、あるいは料理や食物を用意するということも大事ですが、恐らくその先に何がある かということを、どう認識し、価値観を置くのかということが一番大事かと思っていま す。  例えば、いただきますというあいさつ一つをとらえてみても、最初は親が言いなさい と言うから言っているということかもしれませんが、いただきますという意味合いを考 えると、やはり食べ物をつくってくれる人への感謝、あるいは一緒に食べる人とのコ ミュニケーションというように、いろいろな意味があると思います。その辺を、ともに 食をする人、具体的には母親、保育者等になると思いますが、そういった人たちがしっ かりととらえて、大事にしていく。さらにはその子ども自身が、恐らく親に言われたか らいただきますと言うのではなくて、それを言うことによって、どういうことにつなが るかということを自分で認識できるようになるということが、一つの重要なポイントな のではないかと思います。  渡辺先生がおっしゃったような、外とのつながりという意味での、食にかかわる一つ 一つのスキルがどんな意味を持つのかということを最終的にはとらえてほしいと思いま す。  その場合、やはり外とのつながりで、非常に多様なものを見てもらうということは大 事なのだろうと思います。例えば地球のいろいろな食文化、特に子どもたちが十分な栄 養をとれず、栄養失調などでなくなるお子さんがいるというようなことを子どもたちに 伝えることによって、今の自分がどんな位置にあるかというように、多様性の中での位 置づけということがはっきりしてくるのだろうと思います。  そうしないと、やはり自分の家の中でのことがすべてだと思い、いわば食事になって いない食事が当たり前ということになると思うので、そのような多様性、また、学校の 中での社会科その他のいろいろな教科での目標もあると思いますので、そういった中で 学ぶ中でのつながりを重視しながら、食につながるような行動の位置づけを子どもたち に認識してもらうというようなことが必要ではないかと思っています。  村田座長  ありがとうございました。それでは御園委員、よろしくお願いいたします。  御園委員  私は日々保育をしている立場から、どういう食べる力が必要かと感じていることを幾 つか申し上げさせていただきます。  保育園は産休明けの子どもから就学までのお子さんがいるわけですから、やはりその 一人一人の子どもの発達に合った食べる力を育てるということが私たちの大切な仕事な のではないかと思っております。  それは子どもが、離乳食から始まって、自分から何かを食べるという、自発的、ある いは意欲的に食べるという気持ちを育てていくということが大事ということです。それ に伴って、十分な練習や学習、特に中期の離乳食は大事だと思っていますが、離乳食等 でも、食べる、かむ、飲み込むということもそうですが、手づかみからスプーンを持つ ようになり、例えばはしに移るときには、親指と人さし指と中指でいろいろなものがつ まむ、めくることが出来るようになってきたときに、おはしを持たせてあげるのがいい というようなことを、お母さんたちに話してあげるようにしています。  ですから、そういう意味からも、子どもたちに練習、学習をさせていくということ と、その学習の中で、生きているものはみんな関わり合いの中で食べ物を食べていると いうことを現場では教えていきたいと思っています  きのう、両手で小玉スイカを三つ持って、先生、大変と言いにきた子がいました。そ のスイカは見事にカラスに割られてしまっていて、子どもたちは悪いカラスだというこ とを言っていたのですが、カラスだって食べたいんだよ、という子もいて毎日の出来ご とからいろいろなことを学んでいます。このようなことも生きる力というか、食べる力 につながっていくのかと思います。  ですから、幼児期に食事の十分な練習、学習というものを、お母さんも含めて大切で す。特に離乳食については先ほど渡辺先生も赤ちゃんの食事が大事だとおっしゃいまし たが、本当にそう思います。  離乳食で悩んでしまうと、お母さんは食事に対してずっと拒否を持ちます。離乳食を 私たちがどのようにサポートすればお母さんたちはやりやすくなるのか、先ほどおっ しゃったように、御飯と一緒に、保育士や、お母さんの愛情を一緒に、安心と安らぎの 中で食べているということが実感できるようなごく日常的な食事のあり方が大切に思い ます。食卓は人間関係の場であり、心を育てる場でもあります。  また、食べる力をはぐくんでいくための子どもの置かれている状況もいろいろとあり ます。家族の状況、地域社会の状況、その中で、子どもの生活リズムをどう整えるの か、この生活リズムが整ってこなければ、食事はうまくいかないと思います。  乳幼児期の食事というのが、将来のよい食生活の基礎になるということから、私たち はすごく責任を感じているのが現状です。そのような意味からも、今申し上げたような ことが、食べる力をはぐくむ上でとても大事なことだと私は思っております。  村田座長  それでは星委員、お願いします。  星委員  前回の検討会でも申し上げたのですが、NHKの子ども料理番組、ひとりでできるも んの誕生に当たっては、子どもの料理番組をつくろうとして番組をつくったのではな く、子どものやる気を応援していく番組、子どものやりたいことをふやしていく番組を つくろうということで始まりました。  その中でいろいろと子どもの身近なところを探していったら、キッチンが一番、子ど ものやれることがたくさんある場所であったということで、子ども料理番組として展開 したということですが、やはり子どものやる気や、食べてみたいという気持ちといっ た、子どもの感情を素直に受け入れられるような形のものを確立していくということ が、食育にとって非常に大切なのではないかと思います。  それをやるには、今の子どもがどんなことを考えているのかということも知らなくて はならないと思います。  いろいろなデータなどがあるのですが、例えば子どもの好き嫌いということに関して 言いますと、今の子どもはどんなものが好きで、どんなものが嫌いなのかということを 本当に今の親御さんたちが御存じなのかと思う部分もあります。  例えば、うちの子はレバーがとても嫌いなのですが、とおっしゃるお母さんがいるの ですが、子どものころからレバーを食べさせなければいけないと考えること自体が少し おかしいのではないかという気がします。  ひとりでできるもんでは、子どもにとっておいしく感じる食べ物と、そうではない食 べ物をある程度分けているのですが、その特徴を御紹介させていただきます。  まず、子どもがおいしいと感じる食べ物は、一つはハンバーグ、カレー、パスタ、バ ナナといったやわらかく感じる食べ物です。また、甘みのあるものとして、卵焼き、照 り焼き、ケチャップ、いなり寿司などもあります。また、食べたときに刺激が少ないも のとして、めん類、アボガド、マヨネーズ、豆腐、プリンなども挙げられます。それか ら大人っぽいと感じる食べ物、とろ、カニ、焼き肉、シチューなどです。また、スナッ ク感覚で食べられるもの、ポテトフライ、コロッケ、手巻き寿司、カナッペなどがあり ます。それからジュースやソーダといった甘い飲み物があります。もう一つおもしろい のは、キャラクターを感じる食べ物というものがあるのですが、これはイチゴ、ウイン ナー、たらこ、お寿司といったものが挙げられます。これらはテレビコマーシャルなど の関係もあるのですが、グッズになっているような食べ物です。  子どもの食べ物の見方は大人の見方と少し違っていて、何でも擬人化をして見るとい う特徴があるので、料理を出されたときに、それが何かおもしろく見えたりすると興味 を持つという特徴があります。  反対に子どもにとってまずいと感じる食べ物ですが、これは第一が骨のあるものや、 かたいもの、小魚、にんじん、かき、ナス、豆類です。また、においのあるもの、ピー マン、グリーンピース、ホウレンソウ、キノコ、乾物、たくあん、ハーブといったもの です。それから、刺激のあるもの、スパイス、酢の物、梅干し、エスニック料理、タマ ネギなどです。それから子どもが格好悪いと感じる食べ物です。これは乾物や貝などで すが、乾物はミイラのようだとよく言うのですが、それ自体が何か格好悪いと感じるの かもしれません。あとは貝類やゴマ、それから御飯です。お弁当に白い御飯の面積がす ごく広いと、何か格好悪いというふうに感じるらしいです。それから親に勧められるも のですが、これは先ほど申しましたレバーとか、トマト、酢の物、チーズ、納豆などで す。体にいいから食べなさいと言われて、何で体にいいのかよくわからないけれども、 食べてみると、とにかくまずいというふうに感じるのだと思います。  今の子どもの食べ物の好みというのはそんなふうに分けられるのではないかと思いま す。こういったことを親御さんがよく理解して、できるだけ小さなころから好き嫌いを なくすような努力をしていただければ、好き嫌いに関してはかなり減るのではないかと いう気がします。  今の子どもたちがどういった考えを持っているのか、どういった行動を起こすのか、 どういうふうに感じるか、そういったものをできるだけ浮き彫りにさせることで解決さ れる問題というのはあるのではないかというふうに感じています。以上です。  村田座長  ありがとうございました。それでは佐藤委員、よろしくお願いいたします。  佐藤委員  こんにちは。 日本じゅうの皆さんから支援や御協力をいただいているので、宮城県 民の1人として、初めにお礼を申し上げておきたいと思います。  前回に私の意見をいろいろな形で述べさせていただきましたので、きょうは少し絞り 込んだ形でお話をします。  二つ申し上げますが、一つは、非常に心苦しいのですが、日本は90年代から新自由化 論といいましょうか、社会そのものが非常に、いわば国家の公益性みたいなものをかな ぐり捨てた状態になってきているわけです。  そういった中で、本当にもっとも個人的な領域に関する、食べるという行為まで、こ ういった検討会で検討する理由は十分十過ぎるほどに僕は理解しているつもりではあり ますが、そこまで本当に踏み込めるのかというところに非常に不安を持ってございま す。  そこで1点まずお尋ねをしたいのは、いわばこういった委員会のすばらしさを国民的 な共有財産にしていくためには、理解を求める必要があって、ではこういった食の解体 状況及び子どもたちの不健全な発達状況になっているということを、国家的な見地から 見て、どれくらいの経済的不利益をもたらしているのかということを教えていただきた いと思います。  例えば子どもたちがこういうふうな食生活でもって、そしてこういった激やせなどの さまざまな問題が出ていて、それについての医療費というのはどれくらいかかっている のかということを聞きたいと思います。  そういうことをきちんと国民に説明していかないと、これだけすばらしい内容のもの であっても、受け手の側が十分理解しないのではないか、しかもこれを実践していくの はそれぞれの家庭であり、市町村の、特に役場レベルであれば保健健康課、それから学 校ですが、こういったところにいくときに、あなた方の町の財政はこれくらいで、医療 費としてはこれくらいかかっている、その中で子どもたちの食の解体現象、親たちの食 の問題がここまでぐしゃぐしゃになっているときに、これだけの不利益をこうむってい る、という部分をきちんとやっていくことによって、町村の医療費が劇的に下げられ て、しかも穏やかなコミュニティーが再生できるという説得材料が出せるのかどうかと いうところが教えていただきたい点であります。  そしてその上で、個人の嗜好にもかかわるような、食の領域というところへ入って いっていいかどうか、入っていくためには、どういった脈絡で我々が責任を果たせばい いのかという部分を、一度でいいから柱として見ることができればというふうに思って おります。  少しネガティブな言い方かもしれませんが、今の日本の成年男子の精子の数は8000万 個ということになっておりまして、この計算でいきますと、60年後には日本の男どもは 子どもをつくる能力がなくなるわけでございますので、やはりここで日本の食と農の現 場をきちんと再生していかないと、民族の滅びにもかかわるというふうに思っているも のですから、その辺を少し教えていただければと思います。  続きまして、きょう緊急に、河野専門官に無理にお願いをいたしまして、皆さんのお 手元にちゃぐりんという雑誌を配らせていただきました。これは農林水産省さんに非常 に多くのお力を注いでいただいておりますし、最近では文部科学省さんも、これはいい ということで一生懸命に応援してくださって、最近PTAの全国の推薦図書にもさせて いただいた本でございまして、表紙にも書いてありますとおり、命の大切さを伝える子 ども雑誌ということになってございます。  例えば、食べ物に関することについても非常に多くのメディアが取り上げておりまし て、本当にたくさんの情報が出回っているわけでございますが、特に子どもの世界を考 えたときに、日本の子どもたちほど、あらゆる部署からのもうけの対象にさらされてい る子どもたちはいないだろうと思います。  かつては子どもたち向けのいい雑誌がたくさんございましたけれども、そういった文 芸雑誌その他はほとんど姿を消してしまいまして、女の子向けならアイドル本だった り、小学生向けなのに化粧の記事が載っていたり、あるいは子どもたちであればファミ コングッズといったものばかりになっているわけで、決して子どもたちの心と体を健全 に育成するような子どもの世界になっていないということであります。  平成9年度からJAが、消費者と次世代、アジアという三つの共生運動というものを 立ち上げておりますが、このままではやはり日本社会はもたない、特に子どもたちや消 費者を大切にするような農業を、自分たちが責任を持ってやらなくてはいけないという ことで、ようやくそういう方向に来ているわけで、それを農林水産省さんにもバックア ップしていただいているわけですが、そういった中で、日本のすべての子どもたちに、 本当に健やかに成長するための雑誌を届けようということで、このちゃぐりんという本 が出ております。  ここには農業を中心とした命の営み、その尊厳性、その仕組みを十分理解していこう というようなことを、記事として毎回たくさん載せておりますし、また、この本の中に はすぐれた文芸作品がかなり載っておりますので、親子でちゃんと本を読んでいきま しょうという読書運動も入っているわけです。  そして、中心テーマは常に食と健康です。そこからさらに派生して、付録のようなも のがありまして、今回はお米まるごと大研究と出ていますが、それ以外にもベランダで 作物を育ててみようとか、生き物を育ててみようなど、いろいろなものが出ています。 多面的にあらゆる場面を通じて、子どもたちが命、食、健康というものを考えられるよ うな仕掛けをした雑誌でございます。  誠に遺憾ながら、こういった雑誌は今、日本のマスメディアではこれしかないという くらい、実は日本の子ども立ちの世界が粗末になっているということの反映でもありま すが、これを皆さんにぜひ一度お読みいただければ、佐藤はこういうことが言いたかっ たのかといったことが出てくるかと思います。  さらにJAはこれを使いまして、ちゃぐりんスクールというものを各地でやっており ます。これは実は厚生労働省さんにも非常に関係がございまして、地域では、食生活改 善グループの方々や、栄養士さんたちに協力をいただいて、夏休みに子どもたちを集め て、子どもクッキング・フェスタといったものを日本全国でやっています。もちろん夏 休みだけではなく、文部科学省さんの総合的学習の時間にもこれが入っておりまして、 例えば東北地方では90%が食農教育で総合的学習をやっているのですが、やはり日本全 国では今、この委員会のみならず、この趣旨を生かすような取り組みが方々でやられて いるということを考えますと、非常にいいタイミングでこの運動は進んでいるというふ うに考えております。  そこで最後に1点だけ提案でございますけれども、例えば岩手県では今、食育担当官 を設置いたしましたけれども、小中学校や幼稚園の給食室を食育室に変えようというこ とで運動をしております。  給食というと、どうもブロイラーのようなイメージで、一方的に食わされるというも のがあるので、それよりは子どもたちが自発的に楽しく、いろいろなことで皆さんとつ ながりながら食べていくことによって、自分自身が健全に育っていくという意欲を喚起 し、しかもこれを食べることは、どの命とつながっているのかという目的意識も育て上 げるということを考えてみますと、そろそろ厚生労働省さんの指導をもって、給食室で はなく、食育室ということでいいのではないかと思います。  そこに、地域の若いお母さんたちも含めてたくさんの人々に来てもらって、子どもた ちはこういうものをこういう状態でこのように食べていますということを見てもらっ て、どんなものを食べているかも含めて十分にみんなで吟味しあいながら、地域で健全 育成を担うというような場に展開できる可能性を持っているのではないかと思っていま す。ほかにもいろいろと意見はありますけれども、本日はこの2点だけ、御提案を申し 上げたいと思います。  村田座長  ありがとうございました。それでは加藤委員、よろしくお願いいたします。  加藤委員  保健医療科学院の加藤でございます。発育・発達という点から、食育のことの要点を どのようにまとめていけばいいかということですが、やはり非常に広くてたくさんの側 面がありますし、また、個別性に対応した方がいいというようなことが前回に出ました が、個別性も非常に多様なので、ひとつひとつのそれぞれの個別性を網羅して、それに 対応していくということは大変な作業になるかと思います。やはり幾つか重要な点を抑 えていかなくてはいけないのではないかと感じます。  重要な点というのは、いつが大事か、ということを考えていけば割と簡単かと思いま す。先般、渡辺先生からも離乳期と思春期が重要であるというふうに教えていただきま したし、村田座長からも、思春期の発育につきまして、たくさんの資料を出していただ いて、大変勉強になっているところですが、思春期はこのように体の大きな変化が起こ り、メンタルにも非常に大きな変化が起こってくる時期なので、そこでのケアがまず重 要だと思います。  例えば、そこでメンタルな部分に偏りが出てくると、思春期のやせ症やいろいろなこ とが生じてくるわけですので、そこは一つ大きなポイントになるかと思います。  もう一つは離乳期ということですが、離乳期から乳幼児にかけて、発育・発達や食の 実際についていろいろと見てまいりますと、やはり生まれたばかりの授乳の飲み方と、 1歳を過ぎて離乳が完了してからの食べ方は、一人一人大分変わってきまして、1歳か ら6歳くらいまでの小食な子がどうなるかということを見ていますと、割と安定してい るような印象もあります。要するに、離乳期に、いろいろな食習慣といったことが大き く変わっていっている部分があるのではないかと思います。  偶然かもしれませんが、多くの心理学の先生が、親子関係や、自我が発生する過程で 非常に重要なのが離乳期であるというふうに教えてくださいます。ですから、このアタ ッチメントというのでしょうか、親との関係で、不安に対してどのように対処していく かといったことを学んでいく時期に、親がどのように離乳食を進めていくということを 切り抜けていけるかということを、ちゃんと相互作用を保ちながら支援していくことが 必要になってくるのではないかと思います。平たく言えば、よい親子関係をつくってい くということと、楽しく食べられる環境をつくっていくことは同時に成り立っていくの ではないかと思います。  楽しく食べられないということが課題になっていますが、人間関係をつくる力という ものを育てていけばいいというようなことではないかというふうに感じます。  どのような点に注目して把握していくかというと、発達の中では、恐らく食べるとい うことは生活習慣の確立ですので、生活習慣をどういうふうに確立していくか、あるい は自尊感情や自己効力感という、自分はこれだけできるんだというふうに思える感覚を 育てていく、そして人とかかわる力を育てていくといった点が、発達では重要だと思え ばいいのではないかというふうに感じます。  このように、うまく人間関係のシステムが働けば、いろいろな個別性にも親はスムー ズに対応していくことができるのではないかというふうな感じを持っております。以上 でございます。  村田座長  ありがとうございました。それでは岡田委員、よろしくお願いいたします。  岡田委員  千葉大学の岡田です。食を通じた子どもの健全育成ということを考えるときに、やは り一つは子どもの力を育てるということと、二つ目は子どもの環境を整えるということ があると思いますが、今我々がやっている学校健康教育で、非常に重要な力と考えてい るのが振り返る力です。つまり自分の生活を振り返り、評価し、自分を改善する力が、 学校健康教育では重要ではないかと考えております。  その中で例えば、質問調査に答える、自分の学習したことを振り返って評価するとい う力は、従来は小学校3年生くらいからでなければできないと言われていたのですが、 やってみると小学校1年生からできます。そして小学校1年生からやった子の方が、そ の力がきちんとはぐくまれていくということを感じています。  その振り返る力というのは、どのような能力によって成り立っていくのかということ を考えたときに、今、我々の間でよく話題に出るのが健康リテラシーという言葉です。 リテラシーという言葉は識字能力という意味で使われます。自分の健康の保持増進に関 連した情報を得て、理解して、それをきちんと自分が利用していくといった社会的なス キルのことですが、やはりこれだけいろいろな情報が入っていく中で、情報から影響さ れるという部分がかなり大きいと思いますので、そういった社会的なスキルを育ててい くということが大切になってくるのではないかというふうに思います。  また、その健康リテラシーを支えていく力ということでは、ヘルススキルと言われて いますが、ヘルススキルには六つあるのではないかと今のところ言われています。情報 へのアクセス、自己管理、社会的影響の分析、対人コミュニケーション、先ほどお話の ありました人間関係をつくる力というようなこともこの辺にかかわるかと思いますが、 あとは意思決定と目標設定、そして健康の大切さを主張するようなアドボカシーといっ たことです。これは学校健康教育の中のある一部でしかないとは思うのですが、こう いった視点も念頭に置きながら考えていく必要があるのではないかというふうに感じま す。  また、健康の価値観を育てるということが非常に重要で、楽しいという精神的健康を 大切にしていこうという健康観がなければ、さまざまな行動は育てられないのではない かというふうに感じております。以上です。  村田座長  ありがとうございました。それでは足立委員、よろしくお願いします。  足立委員  今の宿題は、どのような力をはぐくむのかということですが、食べる力ももちろんで すけれども、どういった食事がいいのかというようなイメージを描いてそれを実現する 力、少し大げさな言い方ですが、こんな食事を食べたい、というような、今の岡田先生 の言葉をお借りすれば、望ましい食事像というか、食事のイメージを描きつつ、それを 実現できるような力を含めて考えたいということです。  具体的にはどういうことかといいますと、ずっと話題になってきているように、食べ る力というのは味わって食べていく力ということですが、先ほど御紹介いただいた参考 資料の11ページにグラフ化してありますのでわかりやすいと思いますが、食べる行動と いうところについてもいろいろな側面や段階を含んでいるわけですので、一言で食べる 力といっても、その中にはいろいろと含まれてしまっていると思います。その中にまさ によく味わって食べる力ということがもちろん入ると思いますが、実際に食べることを 可能にするために、そこにも食事をつくる行動と書いてあるように、発達段階に応じた 形で、準備して、食べるようにする力ということも、もちろん入ってくると思います。  そうしたことを人間としてやっていくためには、その下の部分にあるように、情報を 発信したり受信したりしながら、今話題になっていた食のスキルを形成していくような 行動ということももちろん大事だと思います。  この辺まではいろいろと議論がされてきているように思いますが、つけ加えたいと思 うのは、そうした力をどの方向に使っていくのかということを考えたときに、子ども自 身が、こういった食事にしたいという食事の姿を考えて、それを実現していくような力 をそれぞれの発達段階に応じて持っていくということが、食べる力の中でとても大事な 部分ではないかという気がします。  そんなことは無理だろうとおっしゃるかもしれませんが、例えばそれが3歳児くらい であれば、これが食べたい、あれが食べたいということを言うことも、それは食べたい 食事のイメージを自分の中に描いて、食べたいという自己表現をして、それを話題の中 に入れるという、食事の準備をしていくプロセスについての発言をしていることになる わけですから、そういったことも入ってくると思います。  それが、成長をしていく過程の中で、食というのはこんなに多面で多様な営みだか ら、1人では絶対にやれないわけですので、そうしたことが実現できる仲間づくりや、 大げさに言えば社会づくりといったところにつながっていくような力、それを実現する 力と申し上げました。  繰り返しになりますが、いわゆる食べる力、つくる力、そうした能力を育てていく 力、それに加えて、いろいろな条件の中で望ましいと考える食事をイメージしたり、行 動をイメージしたりして、それを実現していく力、そういったことは1人ではやれない ので、仲間をつくったり、環境や社会をつくったりするような力までつながっていて、 一人一人の食べる力ではないかというふうに考えます。以上です。  村田座長  ありがとうございました。全委員からいろいろとお話を伺いました。きょうは上原委 員がお休みなので、学校関係を通じての御意見をお聞きすることはできないのですが、 話を進めます前に、先ほど佐藤委員からかなり大きな課題をいただきましたけれども、 第1番の問題については、この委員会で答えるということはなかなか難しい問題ではな いかと思います。  座長の責任で答えますが、小児科をやっている中で考えた場合に、佐藤委員が言われ たような問題については、どっちがいいのかということの解決がついたときには、非常 に子どもが悲惨な目に遭っているということになってしまうということが一つと、ま た、短期的にはきちんとした数字で出せない問題ではないかと思います。  例えば今、コンピュータを使ったり、テレビを使ったりということについていろいろ な議論が出ていますが、そのエビデンスを出せということですけれども、そのときに使 わなかった、あるいは使ったということで、どっちが悪くてどっちがよかったという性 質のものではなく、渡辺委員が言われたように、今までにいろいろと知られている事象 の中から、よりよい方向性をねらうということ以外には難しいのではないかというふう に思っています。  少し話が飛んでしまいますが、私が医師になりましたときは、いわゆる小児麻痺が大 流行しました。そしてワクチンがいろいろと開発されたのですが、そのときにはコント ロール群をつくりませんでした。なぜかと言いますと、どう考えてみてもこのワクチン は効くはずなので、それを使わなかったグループが受ける被害というのはとても大変だ からつくらなかったということですが、子どもの問題というのはそういう問題を持って おりまして、結果が出たときには取り返しがつかないということがたくさんあるわけで す。  そのくらいのところにさせていただきまして、1番の問題については、また議論が深 まる中で改めてお話を伺いたいと思いますし、佐藤委員自身の御意見等もまた後で伺い たいと思います。  第2の問題として、発育・発達のどういう過程を重視するかというようなこと、それ から、それに対しましてもいろいろな対応があると思います。例えば、身体的な面もあ ると思いますし、心理的な面もあるだろうと思いますし、また、いろいろな現場の違い 等もあるかと思いますが、やはり乳幼児期というのは一つの大きなポイントであるとい うようなことで、こういったことは事象的な背景を持って、渡辺委員からお話があった かと思います。  また、思春期が非常に大きな問題を持っているということは、どなたもいろいろな意 味でお考えのことではないかと思いますが、そういうことで発育・発達を問題にしてい くとすれば、乳幼児期の問題、思春期の問題といったことが大きく浮かび上がってくる かというふうに思います。  しかし、保育所や幼稚園、学校といった、諸々の生活というようなものは、子どもた ちの人生の中でもかなり長い時間を過ごすところですし、昔と違いまして、多くの仲間 と接する場所というのはそういったところに限られると言うと間違いだとは思います が、しかし、かなり大勢のいろいろな子どもさんたちが集まってくる場所というのが、 かつては地域でありましたけれども、それが今は申し上げたように保育所、幼稚園、あ るいは学校といった場でございまして、それを家庭や家族というようなことと対比させ るということも余りいいことではないかとは考えますが、しかし子どもが、大勢のほか の人たちと暮らす場として、その場の中で食べる力といったようなものをどのようには ぐくんでいったらいいか。それから、子どもの側から働きかけてくるものということも 当然あるわけでありますし、子どもの側に働きかけていかなければいけない面もあるか と思います。  今、申し上げたような観点を出発点というふうにお考えになって御発言をいただけれ ばありがたいと思っております。簡単に申し上げますと、発育・発達のどういうところ に問題の焦点を当てていったらいいのかというようなことを、改めて各委員の皆様の御 意見を伺いました後で御自由に御発言いただければ大変ありがたいと思いますが、どな たかございますか。  佐藤委員  今の件につきまして、私は足立委員が先ほどおっしゃったことに非常に意を同じにす るものです。と言うのは、私が今から七、八年前に宮城県の社会教育主事をやっており ましたときに、旧厚生省さんの助成金に手を挙げまして、何とかこっちにお金をちょう だいというようなことを申しまして、子育てネットワーカーという事業を立てたことが ございます。その事業は私が社教主事をやめてからはなくなったと聞きましたが、私は この母子保健という言葉にもひっかかりがあって、なぜ母子に集中してしまうのか、お やじももっと子育てに参加しろ、とかいろいろなことを考えるのですが、要するに子育 てとかこういった食事というのは、一つの家庭で見られるような性質のものではないと いうことを申し上げたいわけであります。  例えば30年くらい前までであれば、隣りにじいちゃんやばあちゃんがいて、おまえの 子に飯を食わせておいたからな、とかいろいろなことを、ちゃんとお互いに知識と食べ 物を含めて共有し合って、お互いの愛情のまなざしの中で子どもたちを育てるという関 係性がありましたけれども、これは完全に分断されて、都市でも農村でも各家庭が孤立 化してしまいました。さらにその中で、母親にだけ育児を押しつけ、私も妻に育児を押 しつけてこんなところに出ているわけでございますが、そういうふうに母親にだけどん どん負担がかかるということになって、みんな行き詰まってしまって、それが20年くら い続いてきたということが実情だというふうに考えております。  したがって、私は旧厚生省さんが子育てネットワーカーをやりましょうといったとき に、非常にいい事業だと思って真っ先に手を挙げさせていただいたわけです。そのとき に若いお母さんたちに声をかけたら、やはり離乳食の問題や、嫁、姑の問題や、子育て ネットワーカー会議に出てくるときにも、隣近所にいろいろと配慮しながら、というよ りはその人たちの目があって、怖くてなかなか出てくることも大変というようなことも あったのですが、それくらい、特に子育て中の若いお母さんたちというのは、さまざま な社会的ストレスの中で苦しんでいるという現状があるだろうと思います。まずはその 人たちに話を聞き、それからさまざまなアドバイスができるようなシステムを集落ごと につくっていかないと、とてももたないということだと思います。  例えば、幼稚園や保育所でも、一生懸命子どもを育ててくれますが、しかし小学校に 入っていくと、村レベルであれば、隣の子どもの家に行くためには500メートル向こうま で行かなければいけないとか、そういった少子高齢社会の問題が非常に大きくなってお りまして、とても家庭に押しつけられる問題ではないわけであります。  したがって、あらゆるところでそういったネットワークをつくり上げるということが 必要だというふうに考えております。そのときに、ここは労働省さんも入っているわけ ですからお願いをしたいのですが、やはりEU型のきちんとしたワークシェアリングを するべきだということです。  例えばイチローがなぜワシントン州に行ったかということをいつも思いますが、あそ こは4時以降には父親は働いてはいけないと州の法律で決まっているわけです。だから 4時になったら家に帰って、することがないから子どもと遊んでいるわけです。そうす ると、子どもとお母さんと一緒に地域のコミュニティー・ストアで物を買って、にこに こしながら一緒に食事をつくる。だから大型冷蔵庫などというまがいものも要らないわ けで、地産地消がそのままできるわけです。  そのように、給料が30%ダウンしてもいいから、まず家族の機能を取り戻すような ワークシェアリングをきちんとする。また35歳で1350万円ももらえるような大きな銀行 に20兆円もぶち込まないで、てめえらの給料は400万円にしろというふうに言って、生 き金を使えるような提案を旧労働省からやっていただければいいのではないかと思いま す。  もう1点は、これはオーストリアなんかがやっているわけですが、若者は最低1年間 以上、兵役ないしは兵役に変わる社会ボランティアの義務があるわけですが、僕は当然 やるべきだと思っています。若者の7割、8割はフリーターですから、こいつらをぷら ぷら遊ばせておく必要はない。きちんと仕事をさせる。できれば農村や都市でも、子育 てや高齢者介護でいろいろと悩んでいるところに行けば、それらの人々とともに働くこ とによって、生きるということは何かということを取り戻していくという、システマ ティックなものをきちんと提案していくことが非常に重要だろうというふうに思ってい ます。  最後に、楽しくおいしく食べるということはいいのですが、しかし今現実にどのよう なものを食わされているかということを考えれば、日本の食の自給率をもっと大幅に高 めないとどうにもならないと思います。  中国産の農産物も含めて、銭になればいいといういいかげんなものが市場にあふれて いるわけですから、そのようにファストフード店のハンバーガーのような、クズ肉のよ うなものを食っている中で私たちが健全に成長できるわけがないのでありまして、やは り真っ当な食べ物はこういうものだ、真っ当に食うためにはこういうふうにしていきま しょう、さらに食べる喜びを人々と分かち合いましょうということを、経済的な格差 云々というようなもので阻害されるのではなく、だれもが健やかに食を楽しむことがで きるという環境を、システムとしてつくり上げていくということが一番の問題だろうと いうふうに考えております。それ以上の個別的な問題については、それぞれの専門家の 方々がおられるかと思いますが、社会学的に考えますと、これをこの5年ないし10年で 日本社会が整備できるかどうかが大きな分岐点になるのではないかというふうに考えて おります。こどもの森もそうだと思っております。   村田座長  ほかに御意見はございませんでしょうか。渡辺委員、どうぞ。  渡辺委員  きょうはせっかく大変いい資料が出ていますので、蛇足かと思うのですが、もう少し 話させていただきます。  資料2の1ページと2ページに、最大身長成長速度と年齢との関係というものが出て おりまして、思春期について非常にきれいにグラフとして出ています。例えば、2ペー ジの身長成長速度と、思春期の始まりと終わりというのは、すごくわかりやすく出てい ると思います。  つまり先ほども申し上げましたように、成長ホルモンが急激に出てきて、そして性ホ ルモンが出てきて、全体に成長のための内分泌機能などが更新するとそれがTOAにな るわけですが、年間の身長速度が上がると同時に各臓器が大きくなりますし、脳の高次 機能も発達してきますし、いろいろな意味で非常に大事な時期です。  この時期に、特に思春期やせ症が起きますと、それは単にダイエットではなく、建物 でいえば土砂崩れに近い、非常に痛ましいシステムの崩壊が起きます。体がつくれない ということです。  平たく言いますと、私どものところでは常時10名近くの食べられない子どもたちや食 べようとしない子どもたちの治療を若い先生たちがしていますし、外来でも果てしない 数の子どもたちを見ていますが、その子どもたちの何を見ているかというと、子宮、卵 巣が大きくなっていかない、骨密度がふえていかない、脳の萎縮像から回復していかな いということが、1回やっただけで延々と何年も起きます。  ですから12歳で治療をした子どもが、まだまだ後遺症を残しながら、やっと22歳で就 職して、生理がきちんと来るような体になるまで10年かかっていますけれども、この子 どもが排卵性の生理であるという保証はないですし、不妊症である確率も高いですし、 またこの人は早く骨粗鬆症になりますし、痴呆症も早く来ますし、更年期も早く来ま す。  そういう意味で、この時期に食欲中枢に不自然な負担をかけることは、心身のエンジ ンであるところを壊してしまうということで、その損失というのは人材の損失だと私は 思います。  例えばその子どもたちを治療していますと、何年たっても、私はだめだと繰り返し 言っています。その子どもたちに、例えば切り上げが上手な子、音楽が上手な子、何か つくることが上手な子、と何かを一生懸命に見つけてあげますと、本当に賞をもらうよ うなすばらしい芸術作品をつくっているのですが、しんの部分の自己観というものがだ めなんです。それは思春期になったのではなくて、乳幼児期に非常に緊張した食卓の場 面を見ているわけです。  人間は緊張をしますと食べられなくなります。あるいは食べたものが流せなくなりま す。つまり交感神経系と副交感神経系のバランスで、人間は内臓をつくったり、体をつ くったり、それをもとにして闘ったりしているわけですが、交感神経系が緊張してしま うと、食卓で子どもたちは食べられなくなってしまいます。それは赤ちゃんのときにも 起きていますし、思春期のときにも起きています。だから思春期の問題ではなく、赤 ちゃんのときの問題です。  子どもとつき合って、その家族とつき合っていきますと、10年目くらいに本当の家族 の問題が出てきます。  お父さんはすばらしいエリートサラリーマンだったけれども、家に帰ると時々食卓を ひっくり返す、これは私が女性だからかもしれませんが、あえて言いますと、男性の情 緒のはけ口として食卓が使われているという事実があります。  大島渚もまずいといって食卓をひっくり返したと言いますが、あれはエリート家庭の 非常に暗い食卓場面の典型的な例です。格好いいですけれども、それに巻き込まれた家 族は本当にお通夜のようになります。  たとえそれが一度だけであっても、敏感な子どもはもう二度と食卓で安心できませ ん。一度それをやられただけで、子どもたちの心に焼きついて、ビクビクしてしまっ て、食べている形はとっていますが、心から食べてはいません。  そういったストーリーを12歳のときには言わなかった子どもたちが、22歳のときに鮮 明に覚えていて、逐一報告します。  ですからやはり乳幼児期のミクロのトラウマ、人からは見えないトラウマが、実は子 どもたちを苦しめてきたということです。  また、これは女の子たちが多いのですが、多くの女の子たちはお母さんの悲しみを見 ています。お父さんがお母さんの疲れがわからない、お母さんの大変さがわからない、 お母さんに対して上から下に物を言う、日本の社会というのはそうやって築き上げてき たので、それがいけないとは言いませんが、子どもはそのように見ています。  これは私が言ったわけではなく、大分しゃべるようになった子どもたちが、だって先 生、お父さんとお母さんが仲よくなかったら、子どもって安心して生きてられないじゃ ん、と言ったのですが、この言葉は本当に実感を込めて大勢の子どもたちが言います。  ですからいろいろな理屈ではなく、お母さんがお父さんをよしとする、お母さんとお 父さんが一緒に食卓を囲めてうれしい、食卓を囲めていなかったら、これはお父さんに 取っておきましょう、お父さんが帰ってきたらあげましょうね、という思い、ちゃんと お母さんの中にお父さんが住んでいる感じがあるとか、そういった楽しい家族がつくれ ていないということです。そのことも、私は日本の人材の損失だと思います。  現実には、例えば拒食症で2年間くらいどんどん体重が減り続けてきた子どもは、2 年間かけて普通に戻さないといけません。急激に戻しますと死んでしまいますから、 ゆっくりと戻していくのですが、その2年間は絶対安静で、点滴をしたりもしますし、 末期の患者さんたちに出すような、子どもたちの細胞の破壊を食い止めるために使う、 アミノ酸が入っている薬などは高いので、恐らく月々の医療費というのは50万円を下っ ていないと思います。それを延々と日本の保険が払っているわけです。  思春期に、例えば身長が伸びなくなる子どもがいますが、体重が横ばいになったとき に、学校の先生あるいはお父さんやお母さんが、おかしい、どうしたの、何が心配な の、何に疲れているのと、本気で声をかけて、食べないということではなく、本当に手 間をかけて、心配してあげて、ゆっくり子どもとかかわるということを、1人でやると いうことではなく、お母さんができなければ学校の先生がやればいいですし、学校の先 生ができなければ、それをやってくれる親友が1人いればいいわけですが、そのように みんなでやるということがありますと、チャンネルとして、ダイエットがストレスのは け口にならないんです。  それがダイエットになってしまいますと、とたんにスリムになって、格好いいです し、服は着られますし、男子が振り返りますし、また、ストレスですから脳の中に麻薬 が出てきますので、眠くなくなる、そして目の前の仕事を片づけないといられなくなる ということで、これらは小冊子の方に細かく書きましたけれども、麻薬漬けになってし まって、今生きていることが苦しいから、自殺しないために、あるいは精神的におかし くならないために、子どもたちはダイエットにのめり込んでいまして、一度その味を覚 えてしまうと抜け出せないということです。これは本当に怖い病気です。  しかも、そこを抜けられた人が不妊症になっても、不妊治療で赤ちゃんを人口的につ くれます。そういった方が妊娠したときの周産期の産婦人科はひっくり返るような騒ぎ になってしまいます。夜中に食べ物を捨てに行ったり、吐きに行ったりします。一つの 大きな大学病院の病棟全体のスタッフ、例えば50人が、その人が自殺するのではないか という心配で動けなくなります。その人のために三時間くらいディスカッションをし て、結論としては、これは正真正銘の拒食症のなれの果てであるということで、拒食症 になった子どもたちの食欲中枢というものはリズムを回復できないので、その隣にある 情動中枢もすごく弱いために、ちょっとした刺激で不安定になる人たちなので、この人 が無事に出産して子育てができるために私どもがこの人の体験の中に残っている安心 感、つまりみんなが羊水の一滴のようになって、彼女を包まなくてはいけないというこ とになるわけです。  そうすると、例えば彼女に赤ちゃんを好きになってもらうためには母乳を出させなく てはいけないのですが、戦時中の食べ物がないときにも母乳は出たように、拒食症でガ リガリにやせている人でも母乳は出ます。ではどうやってこの人に母乳を飲ませるかと いうことで、この母乳ということにみんなが焦点を当てたのは非常によかったと思いま す。みんなで一致団結して、彼女に母乳の喜びを与えたら、彼女はそこから治療をしな くてもよくなるかもしれないと、そのときに助産婦さんが、どのように母乳指導をしま しょうかと言ったのですが、指導というようなことで上から下に物を言われたら、デリ ケートな人間は非常に傷つくので、それがいけないという話をするわけです。そうでは なく、看護婦さんや助産婦さんがちょっと見せてと言って見たときに、なんてすてきな 乳首なんだろう、これが張ってきさえすればいいわ、というようにつぶやいて、これを 飲める赤ちゃんは幸せだというような雰囲気で言えば、その人はどうやったら張るよう になるかと考えて、吐かずにスープを飲んだり牛乳を飲んだりしてくれるのではないか というような温かい知恵を働かせまして、現にその人は母乳育児までいっているわけで す。  ですから、必死になってやりますと、必ず死ぬという言葉のとおり、関係性や喜びが 死んでしまう。しかし、その人も生きているんだというところの最大限の尊重を払っ て、私どもは黒子になる、あるいは羊水の一滴になるという、成熟した援助ということ をチームで徹底してやります。お母さんはガリガリですけれども、その赤ちゃんは今7 カ月目で健やかです。私どもはまだ羊水をやっております。  私はその場としては、保育所と学校だと思います。いろいろな啓蒙活動をしても家庭 の中には入り込めません。10年たって本当のことがやっと出てくるか、出てこないかと いうくらいです。ですから、やはりできるだけ保育所に予算を使って、保育所に配置さ れる人々には最高にセンスのいい、いい教育が必要です。ですから私は保育士の養成講 座をできるだけレベルアップして、本当にいい人材が保育園に行ってほしいと思ってい ます。  それから、小学校の高学年と中学校の1、2年というのは一番脳がやわらかいですか ら、この時期に集団を扱う人は、本当に人格的にすてきな、人間的に魅力のある人たち を配置することだと思います。そういう人たちというのは大体、食に関しても豊かで す。つまり心が豊かな人と、食に関して豊かな人は大体一致するのではないかと私は思 うので、思春期的な問題には、そういった焦点の当て方もぜひ考えていただきたいと思 います。  村田座長  ありがとうございました。我が国だけが、個々のすべての子どもさんたちの身長ない しは体重などのいろいろなデータ、例えば成長速度曲線などを書けるということがあり ますので、これは先進国の中で誇るべきことだと私は思っておりまして、これを使わな い手は絶対にないと思っています。  また、今、渡辺委員が言われたことは、皆さん方は何か特殊な領域のようにお考えに なるかもしれませんが、そうではありません。私は今女子大におりますけれども、今、 渡辺委員が言われたような非常に危機的な状態にある人が、わずか1500人くらいの中 で、表にあらわれただけで3人くらいおります。これは本当に大変です。潜在的なもの を含めると、もっとたくさんいるのではないかと思いますが、すぐに入院しなくてはい けないとか、体重も35キロを割ってしまっていたり、これは非常に珍しい特殊なケース ではなくて、特に女学校というようなところに行ってみると、1校に1人や2人は必ず いるというのが今の状況ですが、そういう意味では、身体的な発育について、小さい子 どもさんを含めましていろいろと御検討されたり、御経験が深い加藤先生は、発育面や 身体的な面などから見て、食とのかかわりといったことについて何か御意見はございま すか。  加藤委員  私は渡辺先生のようなクリニカルな目で見ているわけではなくて、ウエルベビー的 に、全体的にどんなふうな状況かという面からのお話になるかと思いますけれども、子 どもさんには小さいお子さんや大きいお子さんというように、いろいろなお子さんがい らっしゃるわけです。今は食糧がないから太れないということではなくて、それぞれ遺 伝的にそういった体格で生まれていらっしゃるということなんですね。  それと並行して、どんなふうに食べる習慣があるかというと、例えば食べ方にむらが あるとか、小食とか偏食というと、何か悪いことのような価値観が伴いますけれども、 それぞれに食べ方の個性があるわけです。  小さいから余り食べないのかというとそうでもなくて、たくさん食べてよく動いて、 ほっそりと成長していく人とか、いろいろとあるわけですので、そういった個別性とい うことがあると思います。  それから、離乳期は体重のふえ方に非常に幅がありますので、大きく生まれたからと いっても必ずしも大きいままで成長するとは限らないので、いろいろと不安の原因に なって、それが育児ノイローゼになるということもあるというように、いろいろなバリ エーションの中で、いろいろな支援をしているのが現状です。  村田座長  発育などを気にしていますと、今、加藤先生が言われたように、チャンネルシフトと いいますか、大きい子どもが必ずしも大きくならないし、小さい子どもも必ずしも小さ いままではないといったことがあります。  特に、大きい子どもは体重のふえ方などが一時的に正常パターンを割ってしまうとい うようなこともありますが、そういったときはどんなポイントに焦点を当てていればそ の辺の区別がつくのでしょうか。やはり経過を見るということでしょうか。  加藤委員  それは村田先生にこそ教えていただく筋合いのものだと思いますが、座長というお立 場での今の御質問だと思いますけれども、私も先生の御意見と同じで、フォローしてい かないと何とも言えない、点観測では正常、異常ということは言えないという考え方で おります。  村田座長  ありがとうございました。足立先生、どうぞ。  足立委員  今は、2番の発育・発達の、どういう過程を重視するかというところでよろしいので すね。  村田座長  はい。  足立委員  そうすると、6ページに参考までに出してくださった、生涯発達の初段階の食バー ジョンのようなものの表等を考えたらよろしいのでしょうか。  村田座長  差し当たっては、足立委員のお考えを述べていただければと思います。  足立委員  わかりました。先ほど座長がおっしゃった、暮らしの場ということと同じですが、食 を営む場という視点が必要かと思います。  それは言い方を変えれば、食を準備したり、調達したりする場、例えば乳児期、幼児 期であれば、ほとんど家族が用意してくれたものを食べる形ですが、それが思春期にな ると、自分で社会的に販売されている物を買ってきて食べる比率が高くなってきます。 その途中の段階でいろいろな段階があり、保育所や幼稚園や小学校、中学校というふう に変わっていくのだと思います。  そのような食事を営む場、食事をする場、食事を調達する場というのは、暮らしの主 な時間を過ごす場でもあると思いますが、そういったことが入ってくると、あとで指針 を出していくときの具体的なコメントが出しやすくなるかということで、それも一つお 入れいただきたいと思いました。  村田座長  先ほど佐藤委員からもネットワークづくりというお話がありました。これは少しお話 の観点が違うかとも思いますが、渡辺委員がおっしゃったように、過程という領域で は、多様性といいますか、そういった点で難しい部分がありますが、今の子どもたちが どういう場で生活をしていて、どういう食の与えられ方をしているのか、あるいは食べ 方をしているのか、そういったことを少し重点的にといいますか、要点をまとめて考え ていきながら、今後の問題も考えるといったことも視点になるであろうというお話だと 思います。ほかにございませんでしょうか。吉田委員、どうぞ。  吉田委員  発育・発達をどう重視するかというところで離乳期の話も出ていますが、食のリズム や味覚形成においては、本当に離乳期の問題を幼児期に引きずってきているということ を子どもたちを見ていて感じます。幼児期に食の問題をかかえてしまっている子は離乳 食での食の体験が少ないことが多くあります。  しかし子どもたちが実践活動できる年令は幼児期ですから生活習慣を身につけていく 上でも幼児期はとても大事な時期です。こどもの森の活動では子どもたちがわくわくど きどきしながら、自ら食べ物にかかわっていくという行動が出てくる方法は何かという ことをずっと探しています。  足立先生がおっしゃいましたような、食を営む場でありたいと私も思っているわけで すが、こどもの森には幼児コース、小学生コースとありまして、その両方のコースで一 番の基本に置いておりますのが、やはり生活習慣病の予防ということもありますので、 正しい食習慣をつけていこうということです。  そのために、やはりこれは命令ではいけない、抑えつけてはいけないということか ら、いつも足立先生がおっしゃっている、料理からのバランスというような視点で、幼 児にもわかりやすく子どもたちに一番身近な料理を通して伝えています。そして食のバ ランスが考えられる子であってほしいと思っています。  子どもたちが食べ物にかかわれる一番いい方法は何かということをずっと模索してき まして、調理をするということが子どもにとってやはり一番の食へのかかわりであっ て、自ら食べたいという気持ちに一番つながっていくことだとわかりました。子どもた ちは調理をするということを通して食べ物を五感で感じ取っているということがわかり ました。その五感のキャッチの仕方は、やはり小学生よりも幼児の方が鋭いと思いま す。ですから幼児のときにこそ調理にかかわって、さらにその中でバランスのとれた料 理ということを実践しながら行動していくことこそ、子どもたちの生きる力ではないか というふうに思っているところです。  こどもの森では、その中に生活のマナーも入れながら実践していくわけですが、幼児 のときの方が子どもは変わっていきます。これが小学生になりますと、やはり同じこと をやっても、生活習慣を変えるにしても、難しくなります。  例えば、先ほどから好き嫌いの話が出ておりますが、日本一の嫌われ者と言われてい るピーマンも、子どもたちは自分たちで栽培して、それを収穫して、洗って、ピーマン にまつわるいろいろな話にかかわりながら、最後に調理をしていくとピーマン大好きっ 子に変わります。その調理のときにも、私たちスタッフは決して、「こう切りなさい」 というようなことは言わず、「あなたが食べたい大きさに切るといいね」というような 言葉かけをします。子どもたちは思い思いに切っていくわけです。それを簡単に、ホッ トプレートで炒めて、ちょっとした味つけをして、最後にかつおぶしを自分たちで丁寧 にかいてふりかけてということをやりますと、ピーマンのきんぴらをおやつとして全部 食べてしまいます。調査では半分以上の子どもがピーマンを嫌いと答えているのに、こ れは一体何だろうと、私の中にものすごく疑問が沸いてきます。  また、例えばサンマのかば焼きなどもやっていきます。幼児が頭を取ってはらわたを 取って骨を取って、ホットプレートで焼いて最後にたれを絡めていくのですが、ホット プレートのわきには骨も置いておいて、骨せんべいにします。私たちスタッフが、「お いしいね、こんなおいしいものを食べないなんてもったいないよね」などというような 言葉がけをしていきますと、「魚の骨は大嫌い、骨があるから魚は食べない」と言って いた子どもたちまでが、「骨せんべいおいしい、ちょうだいちょうだい」となって、全 部なくなってしまうのです。  そのような子どもたちの行動の変わり方を見ていると、調査で表れてくる好き嫌いと いうのは一体何なんだろうということを感じます。私たちはできるだけ一人一人の子へ かかわっていきながら、子どもができるかぎり食べ物にかかわることのできるようなか かわりかたを、子どもの後ろで探しながらサポートしていこうと思っています。幼児期 に十分なかかわりを持てば、子どもは変わってくる、それが子どもの生きる力につなが ってくると私は思っております。  村田座長  今のような御議論を踏まえて、星委員はどうですか。  星委員  全くそのとおりだと思います。幼児期の子どもに非常に大事なことというのは、やは り動機づけです。子どもに何かを学ばせたり、教えたりするときには、いかにおもしろ く教えられるか、楽しく教えられるかということです。食事も同じだと思います。いか に楽しくおいしく食べられる工夫がそこにあるかということだと思います。それを幼児 1人で工夫してやりなさいというのは無理な話で、それはやはり家族や周りの人たちが 支援するしかないと思いますが、そうなると、親がいかに子どもを理解していて、子ど もの好き嫌いをよくわかっていて、嫌いなものを好きにさせるためにはどんな演出が必 要かということまで考えなくてはいけない。  先ほど子どもの好き嫌いの傾向などを申し上げましたが、これは考え方を変えれば、 嫌いなものを好きにさせる努力を親がすることによって、逆に子どもはそれが好きなも のに変わっていくということがあります。  例えばひとりでできるもんの子役で、イワシが嫌い、特にイワシの唐揚げが大嫌いだ という子がいまして、なぜ嫌いなのかと聞いてみたら、何か食感がよくないらしいんで す。魚としてはやわらか過ぎるし、ちょっと気持ち悪いというようなことでした。  その子に生のイワシを見たことがあるか聞いてみますと、もちろん見たことはないわ けです。そこで、実際にイワシを手開きしてみようということで、イワシの頭を包丁で 切って、背わたを取って、実際に手で開いて、尾のつけ根で骨を折って、これは大人が やりますと指が太いのでなかなかうまくいかないのですが、子どもがやると非常にうま くいきます。子どもも2、3匹それをやると、うまくさばけるようになるものですから おもしろくなって、どんどんさばいていく。そして小骨を包丁でそぎ落として、あとは それを唐揚げにしてもらおうということで、料理の先生に唐揚げにしてもらいます。  それを食べると、非常においしいと言うんです。今まで嫌いと言ってたじゃない、と 言っても、やはりおいしいと言います。なぜおいしいのかというと、味は変わっていな いけれども、実際に自分で手を下したということで、イワシのいろいろなことに興味が 持てて、それからすごく魚に興味を持ちまして、いろいろなものをさばいてみたいと言 いまして、それではイカをさばいてみようということで、墨で真っ黒になりながらさば いたりしていましたが、やはり子どもというのは、いかに楽しさを持たせられるかとい うことでどんどん変わっていくと思います。ですから吉田委員がおっしゃったことは全 くそのとおりだと僕は思います。  村田座長  ありがとうございました。時間がかなり迫ってまいりましたが、ここでぜひ発言をし ておきたいという委員はいらっしゃいませんでしょうか。  今の子どもたちは、いろいろな面で問題のある生活をしているということもあります し、家庭の問題等もいろいろとあると思いますが、ほとんどの保護者といいますか、お 父さんにしてもお母さんにしても、今の子どもたちの食生活を含めて、これでいいとは 思っていないはずですが、恐らくいろいろな事情から、何とかしたくてもできないとい うような状況にあるというのが一般的ではないかと思います。  委員の皆さんのお話を伺っておりまして、そういった保護者を中心として、いろいろ な、課題を与えていくという言い方はよくないかもしれませんが、対応をしていくとい うよりも、そういった状況をいかに支援していくかという立場に立った方がいいのでは ないか、昔と違いまして、今の子どもたちは乳幼児期からいろいろな面で、学校ももち ろんそうですし、家庭の外といったようなところで生活をしていて、むしろ寝る時間を 除きますと、生活の場としてはそういったところで過ごしている時間が多いのではない か、そこでは当然、食という問題とも深くかかわり合いが出てくると思いますし、それ らのいろいろな状況を、いろいろな形で結びつけるネットワークも大事かと思いますけ れども、いかに今のお父さんやお母さんを中心とした家庭での食生活を、どんな場で支 援をしていくことができるのか、そしてその支援をしたことで家庭に非常にいい影響を 及ぼして、家庭全体としての食という問題がよりよい方向に向かっていく、そういう方 向性というのが、お話を伺っておりまして感じられたように私は思っております。  ポイントしては、乳幼児期と思春期は非常に重要な時期でありますし、それをつなぐ 場としては、やはり学校、保育所などで子どもたちは非常に長い時間を過ごしているわ けですので、そういった観点に立ちながら発育・発達の時期をとらえて、いかに保護者 を含めて子どもの食生活において、食に関する力をはぐくむために、我々はどういう具 体的な支援ができるのか、そしてその支援はいかに実効性を持つものであるのか、こう いった点を今後検討していければ、この検討会の役割も果たせるのではないかというよ うな気持ちでお話を伺っておりました。  御意見もいろいろとおありだとは思いますが、今のは私の意見でございますので、改 めてまたそういったことを中心にして、次回の検討会でさらに発展をさせて、そして次 回あたりではもう少し具体的な問題を煮詰めることができれば大変いいかというふうに 思っております。  次回につきましては、比較的早い時期に、具体的な検討の結果を出さなくてはいけな いと思っておりますが、事務局としてはどういう御予定でしょうか。  河野栄養専門官  事前に委員の先生方に日程をお尋ねしていたところですが、次回の開催は9月4日木 曜日の2時から4時ということで予定をしております。場所等の正式な御案内につきま しては、これからお出しすることになりますので、よろしくお願いいたします。  また、きょうは事務局側で途中に退席等の失礼がありましたことをあわせておわび申 し上げます。本日はありがとうございました。  村田座長  それではこの前にいただきましたように、事務局側でまとめながら、事務局としての 今後の方向性等を御検討いただきまして、その書類はまた近々いただけるわけですね。  河野栄養専門官  それはお出しいたします。  村田座長  ありがとうございます。少し時間が過ぎてしまいましたが、9月4日の2時から4時 ということで、場所等につきましては、今後また改めてお知らせいただけるということ ですけれども、できるだけ時間の都合をおつけいただきまして、御出席いただけるよう にお願いをいたします。  至らぬ司会で、少し時間も過ぎてしまい、まとまりも少し欠いたかと思いますけれど も、第2回の検討会をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございまし た。                    照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                         03−5253−1111(代)                             河野(内線:7934)                            佐久間(内線:7936)