03/07/28 第6回社会保障審議会福祉部会議事録                第6回福祉部会議事録 1 日時:平成15年7月28日(月)10:00〜11:48 2 場所:厚生労働省 専用第21会議室 3 出席委員:岩田部会長、浅野委員、大石委員、小島委員、京極委員、佐口委員、        佐々木委員、高岡委員、中村委員、新津委員、福田委員、松尾委員、        村田委員   欠席委員:高原委員、堀田委員、松浦委員(佐原氏代理出席) 4 議事 (1)岩田部会長による開会あいさつ (2)事務局による委員及び事務局紹介 (3)社会・援護局長による冒頭あいさつ (河村社会・援護局長) ○ この福祉部会は、地域福祉計画の策定に関する議論を行うために平成13年7月に設 置され、5回にわたって開催され、報告書をまとめていただいた。 ○ 社会福祉基礎構造改革については、社会福祉事業法の改正を行って以来、障害者支 援費制度を始めとして、様々な取組を進めているところだが、今後も一層加速させてい く必要がある。 ○ 個々の社会福祉制度は、いわゆるホームレス法の成立、母子・寡婦法の改正、次世 代育成支援対策推進法の策定など、新たな展開が見られる一方、規制改革、あるいは地 方分権の進展等を受け、様々な指摘がなされている。 ○ 生活保護については、平成12年の社会福祉事業法改正時の附帯決議、社会保障審議 会の報告、骨太の指針第3弾等において、検討や見直しが必要であるという指摘がなさ れている。 (4)事務局による部会の公開についての説明 (5)事務局による資料の説明及び審議 (6)事務局より次回日程の説明 5 審議の概要 (1)議題1:社会福祉を取り巻く状況について (小島委員) ○ 地域福祉権利擁護事業を行っている社会福祉協議会の数を教えていただきたい。ま た、社会福祉法人に関し、株式会社の参入、各種規制と助成との関係、NPO法人の位 置付けをどのように考えるかという三つの視点を指摘されたが、この福祉部会で社会福 祉法人の今後の在り方について議論するのか。 (松嶋地域福祉課長) ○ 地域福祉権利擁護事業については、平成14年の5月時点で全部の基幹的社協で行っ ており、その数は433である。 (宇野総務課長) ○ 地域福祉権利擁護制度は、地域によって非常にばらつきがあり、本来の在り方から すれば、まだまだ数としてこれでいいのだろうかという問題意識を持っている。そうい う意味からも、社会福祉基礎構造改革が目指したところがどこまで達成できているのか 御議論いただきたい。 ○ 一方で、そうした内発的な動きとは独立の形で、規制改革、地方分権が進められて おり、それらについてもどのように対応していくかが課題になる。 ○ 株式会社の参入議論は、現在基本的に特別養護老人ホームについてだけ行われてお り、介護保険制度の見直しの議論と関係がある。NPO法人については、例えば公益法 人改革と関係がある。こうした問題を当部会で全面的に引き取って御議論いただくとい うわけにもいかない。むしろ先生方の御議論も踏まえながら、少しずつ勉強をしながら 進んでいくという形で進めさせていただきたい。 (京極委員) ○ 経済財政諮問会議等の指摘は、なるほどというところもあるし、違うのではないか というところもある。特に、社会福祉法人について言えば、かつての措置の受け皿とい う意味が大分後退して、低所得者の配慮や地域福祉の推進といった役割が期待されてい るが、実際には、そうした性格を強く打ち出せていない。株式会社が一番いい制度で、 公益法人は非常に悪い、なかんずく社会福祉法人は悪玉であるという議論がされやすい ので、本当にそうなのかということは少し詰めていかなければいけない。タイミングを 見計らって、経済財政諮問会議等の指摘について、違うのではないかという点があった ら、反論していく必要があるのではないかと思う。 (中村委員) ○ 社会福祉法人改革は、早急性と慎重性の両面がある。介護保険法改正と社会福祉法 改正は同時にやらなければならない。社会福祉法人は、老人、障害、保育と多岐にわた っているので、あらゆる社会福祉法人の現場実態を精査する必要がある。その中から新 しい社会福祉法人像を早く整えなくてはならない。 ○ 社会福祉法人は、イコールフッティング論の中で袋だたきに遭っている。社会福祉 法人が非課税法人でありながら、公益性だとか、社会貢献性を明示していないところが 多い。私の団体としても必死に啓蒙・啓発ということに努めているが、なかなか動かな い。社会福祉法人が21世紀においても、生き残るために不可欠な戦略を早く構築しなく てはならない。そういう意味で、行政も啓蒙・啓発をしていただきたい。 (高岡委員) ○ 地域福祉計画の策定が遅れているということで、市町村合併等で遅れているのだと いう話もあるが、一方では市町村財政が厳しいので、今数値目標を挙げると、後の対応 ができないという声もよく聞く。今回の基礎構造改革では、この地域福祉計画をどれだ け推進していくかというのが大きな柱であり、15市町村で具体的に対策等を検討しよう ということだが、そうした財政的な問題があるのならば、どのようにすべきか知恵を示 していかないと、結局計画を策定するというかけ声だけで終わってしまうという気がす る。 ○ 社会福祉法人については、先ほど京極委員が述べたように、福祉制度を取り巻く状 況は大きく変わり、措置制度から契約に基づく仕組みになった。措置制度であるがゆえ に恵まれていた恩典がなくなっても、本来公益に資する法人として何かやらなければな らないという強い思いの中で、今、社会福祉法人として地域に対して何か一つ貢献して いこうという方向性を全国的に打ち出している。その際に、現行の規制のために支障が あるという部分もあるので、是非社会福祉法人が地域に積極的に貢献できるような規制 緩和をお願いしたい。 ○ 社会福祉法人の公的な役割として、低所得者対応をどうすべきかが問題。社会福祉 事業が非課税であることによって得るものを、低所得者等に還元できるような仕組みを 制度的に設けることで、これから社会福祉法人を有効に活用していくべき。公益法人と して各人が個人の資産を寄付してここまで来ているので、その活用ということを積極的 にお考えいただきたい。 (佐口委員) ○ 地域福祉計画の問題について、やはり計画の策定の状況が余りにも低いなというの が私の強い印象。確かに市町村合併という問題が一つの要因であろうという説明もでき るかもしれないが、先ほど高岡委員が言われたような財政上の問題も含めて、それ以外 にもいろいろな問題があるのではないかと危惧している。 ○ とにかく策定しようということで、ガイドラインにひたすらいろいろなことを詰め 込んで、とにかく作ってそれでよしというわけではないので、これだけ進行状況が低い ということに関して、何か内容上の問題としていろいろなことがあるとするならば、そ れについて考えていく必要がある。 ○ 例えば、この部会で作ったガイドラインと、地域での福祉の実態というものの間 に、何か非常に大きな乖離があって、それが実際策定する上でいろいろな問題を生じさ せてしまっているのであれば、それをどのように解決していくのかという仕組みを作ら ないといけない。そうした問題について、やはりこの部会で議論していくべき。 (福田委員) ○ 社会福祉法人、医療法人、株式会社の違いがどこにあるのかというのをよく検討し てみる必要がある。事業者と利用者との間の契約に基づく利用制度の中身として説明の あった、情報公開、第三者の評価によるサービスの質の向上、事業の透明性の確保を図 らずにサービスをしない法人は今後生き延びていけないことになる。その三者の違いが どこにあるのかしっかりと明確にしないと社会福祉法人なり医療法人を擁護していく根 拠がなくなってしまう。社会福祉基礎構造改革の考え方は、私はすばらしい考え方だと 思っているが、この違いを見付けるのは容易ではない。その辺りのことをしっかりと検 討する必要があるのではないか。 (宇野総務課長) ○ 地域福祉計画については、やはり我々としても進捗状況が遅れていると認識してお り、対策を採っているところ。行政計画を横断的に作成することについては、今般次世 代支援法においても新たに行動計画を作ることになっておりまして、これで計画が全部 整う。これらの行政計画については、いかに一体的なものにするか、総合的なものにす るかという側面と、住民をどのように参加させていくのかという側面と二つあろうかと 思う。 ○ 市町村において住民に参加してもらうということは、地域の住民を福祉の主体とし てとらえるということであるから、むしろこの計画をどんどん進めていくことで長期的 に見ればお金がかからなくなるというような側面もあろうかと思うが、その点がちょっ とわかりにくくなっているかと思う。我々もパンフレット等をつくって説明はしている が、この部会で頂いた答申をより噛み砕いて、本来の趣旨をわかってもらうことが必 要。 ○ 15市町村の実験ということについても、我々国の担当者も一緒に悩みを聴きなが ら、もっと具体的に問題点を探していくことが重要。もちろんこれですべてとも思えな いので、地域福祉計画を更に進めるためにはどうすべきかということは、言わば積み残 しの問題として御審議いただくのが適切だと思う。 ○ 社会福祉法人の在り方については、今福田知事の御発言にもあったとおり、いろい ろな法人を比較しながら意義を見出していくということが重要。社会福祉法人は、低所 得者に対するサービスの提供主体として始まっており、これが一般的に全国民を対象と するような普遍的なサービスの担い手としても発展している中で、社会福祉法人の本義 について理解が得られていないのではないかという中村、高岡両会長の御発言もあった が、正にこれからの当部会での重要な審議事項ではないかと思っており、今日は宿題と して認識させていただく。 (村田委員) ○ 社会福祉基礎構造改革が進められている中で一番動きが遅いと思うのが、地域福祉 権利擁護事業である。わずか4,700件ぐらいしか契約されていない。この契約をしてい るのは、精神障害の方が圧倒的に多いのではないかと思うが、この内訳を知りたい。 ○ また、地域福祉権利擁護事業と成年後見制度との整合性も取れていない。特に成年 後見について言えば、痴呆のお年寄りは施設よりも在宅で暮らす方が圧倒的に多いよう である。身寄りがなく、しかも、痴呆症状が始まった人たちの権利擁護をどうすべきか 悩んでいるのがケアマネジャーである。市町村長の申立権は実際知られておらず、ま た、その重要性を気づいていない行政もあるという実態の中で、申立権に関して付けら れている予算が実際にどのぐらい執行されているのか、教えていただきたい。 ○ 成年後見については、審理期間が6か月以上というのが一番多く、申立てをしてか ら半年以上かかってもまだ利用できるかどうかわからないという人が一番多いのに驚い た。制度があっても使いにくいということが非常によくわかる。鑑定費用の問題もあ る。やはり契約ということで進んでいく以上、権利擁護は同じようなスピードで制度と して機能していかないと、なかなか基礎構造改革も進まないのではないかと思うので、 今後特にこの面には力を入れてほしい。 (宇野総務課長) ○ 平成15年度に新規に契約した方の件数は約4,000件であり、累積ベースでいうと 1万件ぐらいになるが、亡くなった方もいるので、8,000強というのが現状。その内訳 については、精神障害者の契約の率を取ると、12〜13%かと思う。痴呆性高齢者が圧倒 的に多く、3分の2くらいを占めている。支援費には精神障害者は入っていないが、地 域福祉権利擁護制度が精神障害者も使えるということが知られてきており、精神障害者 の利用が増えている。特に精神障害者で生活保護を受給している人が増えているのでは なかろうかと思っており、その辺りの数字がわかれば次回お示ししたい。 ○ 権利擁護制度は応能的な負担になっているので、費用面の負担という問題が、数が なかなか伸びていないことの一つの要因になっているのではないかと推測される。 ○ また、生活支援員に登録されている方の数に限度があり、マンパワーをいかに広げ ていくかということも課題である。 ○ 成年後見制度については、そもそも身上監護は率が少ない。また、財産処分、遺産 分割の関係は非常に重大な権利の行使に伴うものなので、どうしても平均値で審査期間 が長くなる。 ○ さらに、非常に申請が多く、裁判所がパンクしているということもある。そういう 人々の権利義務関係を大きく変えるものなので裁判所は審判しているのであるが、その ための時間が非常にかかっている。そういった体制の面もあろうかと思う。 ○ 市町村申立てについては、やはり十分制度が知られていない。財政支援措置につい ても十分使われていない。そういう制度があるのだということを、機会をとらえて宣伝 し、この制度を使っていただくようにしたい。 ○ 両制度の連携という問題につきましても、最初は権利擁護制度でよかったが、痴呆 症が進むことによって、どうしても成年後見に移行しなければいけないとか、あるい は、裁判所に成年後見の申立てが出されておりますが、もう少し軽い人は権利擁護でも いいのではないかということは十分ある。よって、どのようにしてそれを連携していく かということが重要であろうと思う。現在一つの取組として行われているのは、弁護士 会と社会福祉士会、社会福祉協議会等関係機関がネットワークをつくって、窓口に相談 があったときに、その人に合った機関を紹介するなどという動きが都道府県で出てい る。そうした動きをどんどん広げていくべきで、それが一つの現実的な方法かと思って いる。 (京極委員) ○ 新しい制度なので、まだ定着するまで時間がかかるということだと思うが、成年後 見制度と地域福祉権利擁護事業の連携について、確かに、成年後見に関しては社会福祉 士会、特に司法書士の方が非常に熱心である。私どもの大学でも、司法書士の方に社会 福祉主事課程を受けてもらって、成年後見にかかわってもらうことができるようにする ことも考えている。ただ、補助制度に関しては、私は民生委員との連携をいかすことが 大変大きいのではないかと思う。それが法的にできるのかどうかなど、いろいろな詰め があると思うが、そこはどのように考えるか。 (宇野総務課長) ○ 即答しかねるが、そうしたことも勉強させていただきたい。弁護士会とも勉強会を しているので、例えば今のようなアイデアを弁護士会の方に投げてみるなどしたいと思 う。 (新津委員) ○ 先ほど福田委員の方からもサービスの質の評価が非常に重要であるという発言があ り、賛成。新しい仕事であるがゆえに国の動きの情報が現場の評価機関に届きにくい。 特にこの第三者評価の事業は、社会・援護局と老健局の両方で取り組んでいると理解し ており、その点どうも現場の人間にはわかりにくい。 ○ また、都道府県レベルにおいては、社会福祉協議会が主になっており、そこにかか わる人たちには情報が流れるが、他には流れにくい。先程評価機関が大変少ないという ことを伺ったので、情報の流れをスムーズに届けてもらいたい。 ○ それから、養成研修の取組が既に始まっているが、評価者の研修は非常に重要であ るので、これについても、二つの局がどのように取り組んでいくのか見えないところが ある。その辺りを調整していただきながら、是非現場に適切に届けていただきたい。 ○ 評価の内容等についても、評価を受ける事業者の方たちが積極的に利用していただ くような対策について、御検討いただきたい。 (村木福祉基盤課長) ○ 第三者評価の関係で、御指摘の点はしっかり受け止めたい。特に、評価基準につい ては、一応のものを作ってから御報告したいと思う。一般的な動き等々について情報が 行き渡っていなかったという点はあると思うので、その点はこれから改善をしていきた い。 ○ 評価者の養成、評価機関の育成は、やっと軌道に乗ってきたところであり、今年か ら県の体制も認証の仕組みをつくっていただくということでようやく動き始めた。環境 整備については、これから加速できると思っている。 ○ 社会福祉全体の評価の枠組みというのは、社会・援護局で担当しているが、個々の サービスについては、個々の部局で行っている部分がある。これについては、各局とよ く連携をしながら行っていきたい。 (2)議題2:生活保護制度の在り方に関する専門委員会(仮称)の設置について (小島委員) ○ 老齢加算の問題は骨太方針第3弾でも指摘されているが、高齢になれば生計費は落 ちてくると一般的に言われるが、そもそもどのような理屈でこの加算の仕組みが創設さ れたのか。 (岡田保護課長) ○ 年金制度が国民皆年金として始まったときに、既に支給年齢に達した方については 年金制度の恩恵を受けられないことに対応して、老齢福祉年金という制度が設けられ た。戦後直後は非常に保護基準が低かった中で、老齢福祉年金が創設されたにもかかわ らず、生活保護の世界では収入認定されるためその恩恵を受けられないということが あったため、収入認定はするが、その分加算を付けることによって、その恩恵を受けら れるような形にしようということで老齢加算制度が始まった。 (小島委員) ○ 国民年金が発足した年からあったのか。 (岡田保護課長) ○ 昭和35年に設けられたものである。 (岩田部会長) ○ 生活保護制度の本体そのものは、1950年の創設以来、基本的には変わっていない が、保護基準の考え方や額、加算等にはかなりの変遷がある。 ○ 金額をどのように議論していくかは、この専門委員会で議論していく上で一番大き な論点になると思うが、外部からの指摘として提起されていることもあるので、フリン ジの方からまず議論しなければならないということになるかもしれない。 ○ かなり専門的な議論が必要だと思うので、部会の一つ下に委員会を置き、その委員 会で十分議論をした上でこの部会に持ってきて、また審議をしていただくということに なると思う。この生活保護制度の在り方に関する専門委員会の設置についてお認めいた だくことでよろしいか。               (「異議なし」と声あり) (岡田保護課長) ○ 設置を御了承いただいたので、できるだけ速やかに委員の任命の手続を済ませた上 で、8月の上旬に第1回を開催したい。 (照会先)  厚生労働省 社会・援護局 総務課 企画法令係   03(5253)1111(内線2815)