03/07/22 第21回労働政策審議会雇用均等分科会議事録            第21回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成15年7月22日(火)15:30〜17:30 2 場所: 厚生労働省省議室9階 3 出席者:    労側委員:岡本委員、秋元委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:前田委員、渡邊委員、吉川委員、川本委員、山崎委員    公益委員:若菜会長、樋口委員、横溝委員、今田委員、佐藤(博)委員 ○分科会長  定刻になりましたので、ただいまから「第21回労働政策審議会雇用均等分科会」を開 催いたします。本日は、奥山委員、片岡委員がご欠席です。  それでは早速議事のほうに入ります。1番目の議題で、「事業主が講ずべき短時間労 働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針の一部を改正する告示案要綱につい て」です。本件は厚生労働大臣からの諮問案件です。本日、厚生労働大臣から労働政策 審議会長宛に諮問が行われましたので、これを受けて、当分科会において審議を行うこ とにしたいと思います。  告示案については前回の分科会で、素案に基づいて事務局のほうから説明をいただい ておりますので、本日は事務局から素案からの修正点について、説明をいただくという ことでお願いしたいと思います。 ○事務局  資料1に基づきご説明します。あと、お手元の資料で参考1〜5までありますが、こ れらはこれからの議論に関係しますのでお出しください。参考1と2は、今回お出しし ました諮問案に基づき参考1のほうが新旧の対象となっております。参考2は、この案 を現在の指針に入れ込むと、全体としてどういう形になるかということで案としてお出 ししたものです。参考資料3、4、5は、前回お出ししたものと同じで、現行の指針と 現行法、それから、3月18日の報告です。  それでは資料1に基づき前回の素案からの修正についてご説明します。告示案要綱の 第一に労働基準法以下、各種労働者保護法令が出ております。ここに男女雇用機会均等 法、育児・介護休業法、雇用保険法を明記しました。これらの法律については現在の指 針の中に既に内容が書かれているものですが、今回基本的考え方として、ここに位置付 けましたので、これらの法律名も確認的に追加して明記したものです。  2番目の修正部分は、前回の素案のほうでは、こういった労働者保護法令を遵守する とともに、次に掲げる考え方に従って、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考 慮して処遇するべきであることとしておりました。こうしたところ「通常の労働者との 均衡を考慮」という所は、職務が通常の労働者と同じ短時間労働者に限定されるのでは ないか、という懸念が意見として出されました。そこを踏まえ、誤解のないように修正 しました。まず、すべての短時間労働者についてですが、先ほど言いました新しい法律 の追加の部分も入れた形で、「労働者保護法令を遵守するとともに、その就業の実態、 通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきである」と規定しております。  その後「中でも」として、「その職務が通常の労働者と同じ短時間労働者について、 通常の労働者との均衡を考慮するに当たっては、事業主は、次に掲げる考え方を踏まえ るべきである」と変更しました。それぞれ一、二については、前回のときは、「短時間 労働者のうち職務が通常の労働者と同じ短時間労働者のうち」と書いておりましたが、 そこの所は既に「中でも」という所で書いてありますので、一と二を整理して「人材活 用の仕組み、運用等について、通常の労働者と実質的に異ならない状態にある短時間労 働者について」というのが一。二のほうでは、「人材活用の仕組み、運用等について、 通常の労働者と異なる状態にある短時間労働者については」ということで書き分けてお ります。  3番目は、やや技術的なことですが、2頁の第二の三です。三の(ニ)で、前回は 「事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理 の改善等のための措置を講ずるに当たり」としておりましたが、そこを「当たっては」 という形で技術的に他の文言と合わせて修正しております。  4番目は、3頁の第三「その他」の二です。素案では「この改正案は、公示の日から 適用すること」としておりましたが、これについては、平成15年10月1日から適用する ことにしました。周知のための準備期間を置くほうが良いのではないかという判断によ るものです。修正箇所は以上です。 ○分科会長  いまのご説明について、ご質問がありましたらお願いします。 ○労側委員  第二の所です。私どもは前回も話しましたように報告書については反対をしていま す。いずれにせよ報告書をまとめられましたので、出来る限り報告書に沿って意見を述 べたいと思います。報告書は「公正な処遇を実現するための方策について」というタイ トルで、2頁に「通常の労働者との公正な処遇を実現していくための社会的ルールが考 えられるべきものであり、現状を考えると、労使を含めた国民的合意形成を図りなが ら、段階を踏まえつつ、そのあり方を改善していくことが求められる」と書いてあり、 3頁で「当面は、通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を指針に示すことに よって、その考え方の社会的な浸透・定着を図っていくことが必要である」という。報 告書が言っているのは、公正な処遇の実現のために社会的ルールを含めた社会環境の整 備というのが1つあって、2つ目に当面は指針ということなのですね。  多分、私の質問に役所のほうは、当面の指針の改正だからこれを諮問しているのだと なると思いますが、この諮問の改正案がどちらのほうへ向かっていくのかというか、報 告書にある公正な社会的ルールを含めた公正な処遇を実現というのをきちんと出さない と、この指針の持つ意味が明確ではないのではないかというのが第1点です。したがっ て、指針の「第一 趣旨」というのがありますが、この項目の所に公正な処遇の実現の ためという、いわば報告にある目的等を入れ込むことができないかというのが第1点で す。  2つ目は、新しく均等法の法律、育児・介護休業法、雇用保険法が6月19日の説明の 段階から法令が幾つか入っているのですが、現行の指針を見ると、これに沿ってそれぞ れ事業者が講ずべき措置の中に、育児・介護休業制度にかかわる問題、あるいは雇用保 険に入っていますが、社会保険4分の3、いま20時間ですか。厚生労働省が一緒になっ ていることもあり、法令遵守と言えば、なかなか制度が知られていないのか、要件を満 たしていながら入っていないというパートの人が多いわけで、ここに労働者保護法令、 雇用保険等の労働者保護法令の遵守というふうに、もしなるとすれば、現行の指針には 社会保険のことは一切入っていないです。これはなぜなのか。法令遵守と言った場合 に、パートの労働者、3頁ですが、改正したらこうなりますよという資料No.2の所に、 (三)が育児休業、介護休業。(四)は雇用保険の適用。こういうことであるのです が、社会保険の問題は、この指針に入れ込むことが不都合なのか、この点をお聞きしま す。  第三の三、「職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実 施」というところは、これは職務が同じでなくても、同じでないパートタイム労働者に ついても、処遇改善を図るということを目的とした条項かと思いますが、この項目に は、何でやるかということからすると、通常労働者との均衡を考慮して処遇に係る措置 を講ずるようにしなさいということを、もっと分かりやすくする意味で入れ込んだのか という意見です。  通常の労働者と同じ仕事をするパートタイム労働者はごく少数という報告もあります ので、この第三の三は、私としてはかなり重要な条項かと思います。通常労働者との均 衡を考慮し処遇に係る措置を講ずる、という文言に修正をすべきではないかと思いま す。 ○事務局  公正な処遇の実現ということを趣旨の中に入らないかという点ですが、これは報告書 の中で書かれておりますように、通常の労働者とパートタイム労働者との間の公正な処 遇を実現するための方策という中で、今回働きに応じた公正な処遇という理念を実現す るために、その方策として当面は通常の労働者との均衡を考慮した処遇の考え方を指針 に示すということで、指針の改正になったわけです。  ただ、指針に書かれております趣旨は、指針というのが現在の法律の枠組みの中で、 法第3条第1項で、事業主が講ずべき適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利 厚生の充実、その他の雇用管理の改善のための措置に関して、必要な事項を定めるとい う位置付けですので、今回の改正の趣旨を書くのとは違うということです。今回の指針 の改正は、この法律の枠組みの中でこの内容を盛り込むというように考えております。  2番目の、法令の中に社会保険関係のものが入らないのかということですが、厚生年 金保険法とか、健康保険法といった法律の部分に関しては、確かに労働者保護と位置付 けられる部分もあるわけですが、そのものはやはり社会保険という仕組みの中での話で すので、ここにそのまま労働者保護法令という形で書くのはどうかということもありま す。当然その部分、一部には労働者保護に関する社会保険の部分もありますので、そう いった観点の部分は読み込めるということで、例えば「等」の中で解説するといったこ とはできるのではないかと思っております。  3番目の、第三の三に、今回の案では「事業主は、職務の内容、意欲、能力、経験、 成果等に応じた処遇に係る措置を講ずるように努めるものとする」としていますが、こ こに通常の労働者との均衡を考慮した処遇に係る措置を入れるべきではないかというご 意見ですが、指針の第2の「基本的考え方」の所で、職務が同じかどうかにかかわら ず、すべての場合に及ぶ基本的考え方として、短時間労働者の就業の実態、通常の労働 者との均衡等を考慮して処遇するべきである、というところを規定したわけです。これ を受けて、事業主による雇用管理の改善のための具体的措置を規定している第3の前文 の所で、第2の「基本的考え方」に立って「次の点について適切な措置を講ずべき」と 規定して、既にこの考え方は示されているところです。また、第3の3の措置を講ずる ことが均衡に資すると考えられるところですが、あえて、ここで分科会報告と異なる文 言にする必要はないと考えております。 ○労側委員  第1の公正な処遇の実現のためというのは、私が先ほど読み上げた部分のほかには、 最後の「その他」という所に入っていますが、この報告書は労政審を通じて大臣に報告 されて、受けた大臣が、あとどうするかというと、専ら行政に任せるということだけで はなくて、当審議会としても大きなテーマですので、この指針の改正は、向かっている 方向はこっちなんだよ、というのを、私自身は趣旨に入れてほしいのですが、もし法的 に難しいというのであれば、最後の段階でそのことをきちんと明記することが当審議会 に課された課題だと思いますので、是非そのことをご検討願いたいのが私の意見です。 ○労側委員  修正された2番目の中で、「職務が通常の労働者と同じ短時間労働者」という表現、 以降の「通常の労働者との均衡を考慮する」ということがありますので、そこが同じ表 現ですと、全く同じという受け止め方をするのではないか。仕事が全く同じという受け 止め方をするということで、その場合に、限定された理解をされてしまうのではないか ということで、できれば、同等、同一、類似ということが含まれるような表現にできな いものかどうか、お尋ねします。 ○事務局  分科会報告では、「職務が通常の労働者と同じパートタイム労働者の取扱い」という ことで書かれています。そして、指針に規定し、事業主が所要の措置を講ずるに当たっ て考慮しなければならないようにすることが適当とされたことからすると、その「職務 が同じ」を、「同等」にするということは報告に提言された範囲を超えるのではないか と思います。ただ、どのような場合を職務が同じと考えるかについては、通達、パンフ レットといったところで示していきたいと考えています。 ○労側委員  3頁の第三の三の部分です。先ほど均衡の部分については労側委員が触れられました が、「職務の内容、意欲、能力、経験、成果等に応じた処遇に係る措置の実施」とあり ます。ここの部分については、客観的な判断基準が要ると考えます。「処遇に係る措置 を講ずるように努めるものとする」とありますが、具体的にこの措置はどういうことを 指すのか、誰が見ても分かりやすくしておく必要があると思います。ここのことについ て、どういう取扱いになるのか教えてください。これは職務が同じパート労働者だけで はなくて、全体のパート労働者に係る部分だと思いますので、意欲、能力、経験、成果 に応じた処遇を向上させる仕組みを作るようなものが、きちんと盛り込まれるべきだと 思いますが、ここの措置の内容について教えてください。 ○事務局  具体的にどのような取組みをするか、どのような措置を作るかというのは、パートタ イム労働者の職務内容とか、個々の企業に応じて決められるので、そういったことから 措置というようにしているところです。内容として考えられることは、例えば職務の内 容、意欲、能力、経験、成果等を踏まえた賃金水準の改定を行うこととか、昇給・昇格 などの仕組みを設けることも考えられるかと思います。こういった内容の例示について も通達、パンフレットといったもので示して、企業のほうが、こういった形で雇用管理 の改善に取り組む1つの参考になればと考えて、周知していきたいと思っております。  あと、職務の内容、意欲、能力、こういったことに関しても、やはり内容的には客観 的に判断できるようなものにする、そういった観点も必要という注意事項も通達の中で 考えていきたいと思っております。 ○労側委員  「基本的な考え方」のところに関係することですが、報告書では職務が同じかどう か、労働者の人材活用の仕組みや運用などが同じかどうかについては、職場の実態を考 慮した判断をするということ。それから、育児、介護などの家族的責任を、運用に当た っては考慮することが望まれるという報告書が出ているわけですが、こういった記述に 対して、非常に職場の実態と家族的責任を、運用に当たって考慮することは、非常に重 要なことだと思っています。  特に家族的責任については、パートタイム労働者の大半は女性であるということと、 既婚者も多いことを考えれば、現実問題として、このことの考慮がなされなければ適正 な処遇の判断はできないと思います。こうしたことについて、指針で「基本的な考え方 」の部分に書き込むべきではないかと思っていますが、いかがでしょうか。 ○事務局  3月18日の分科会報告に書かれました「職務が同じかどうか、労働者の人材活用の仕 組みや運用等が同じかどうか等については、職場の実態も考慮して判断するものであ り、その際に混乱をもたらさないよう十分な配慮が必要である」というところと、その あとの、「労働者の人材活用の仕組みや運用等の中には、育児・介護などの家族的責任 を考慮した運用が含まれることが望まれる」という記述の部分は、これは指針で職務が 同じとか、あるいは人材活用の仕組みや運用等の具体的解釈に当たっての留意点という ことで述べたものです。そのようなものを示す通達において、留意点として指針の解釈 と合わせて記述することが適当ではないかと考えております。  例えば、職務が同じかどうかとか、労働者の人材活用の仕組みの運用等が同じかどう かといったところで、判断に際して混乱をもたらさないように十分な配慮というのは、 例えば職務の同一性について職業分類の区分などに基づいて、一律に決定するというの ではなく、各企業の実態を踏まえて、現場の労使においても具体的に検討されるべきこ とといったことを留意点として述べたものであります。これをどのように配慮するか、 そういったことを指摘されたものだと認識しております。そういったことから、指針に 規定される職務、人材活用の仕組み等の具体的判断に当たって、その考え方を通達に示 していくことが適当で、その中で検討していきたいと考えております。  併せて、労働者の人材活用の仕組みや運用等が同じかどうかというのを見るに当たっ て、人事異動の幅や頻度が例示されているということに関連して、労働者の人材活用の 仕組みや運用等に関する留意点が「なお書き」で示されたと認識しております。このよ うな留意点については、やはり指針に規定される人材活用の仕組みや運用等の判断に当 たって、異動の幅とか頻度をどのように見ていくかという解釈とともに通達で示してい くことが適当ではないかと考えています。  特に、この2行に関しては、分科会報告をまとめるに当たり1月31日にたたき台を出 しました。そこで、「なお、育児・介護などの家族的責任を有する労働者については、 その事情を配慮した結果として、その労働者の異動の幅、頻度が少ないことがあるが、 労働者の人材活用の仕組みや運用等を比較するに当たって、そのような事情を考慮する ことが望まれる。」とされたところを全体と比較して、やや技術的な内容であるという 指摘があり、このような文言になったという経緯があります。この経緯を踏まえます と、労働者の異動の幅、頻度を比較する際の考え方として、どういうふうに考えるかは 指針ではなく通達の中で示していきたいと考えております。 ○労側委員  通達と指針の違いとか、効力の違いとかは私どもよく分かりませんので、そこで解釈 として通達できちんとやっていくことなのだと思いますが、是非、本当に家族的責任を 十分に配慮していかなければ、いつまで経っても男性の働き方に準じて判断をしていく ということになってしまえば、格差を縮めるというための、適正な判断をすることはで きないと思いますので、十分にそこはきちんと書き込んでいただく、通達という形だと いうことでしたが、書き込んでいただきたいと思います。 ○分科会長  ほかにはいかがでしょうか。 ○使側委員  意見ということで申し上げます。1つは確認ですが、いまのお話をずうっと聞いてお りますと、3月18日にまとめました報告書の内容、いわゆる横書きを縦書きにしたと。 その中でも特に指針にふさわしい部分を、盛り込むべき内容を盛り込んだということで ある、ということで間違いありませんね。 ○事務局  ふさわしいと申しますか、こちらの認識としては3月18日の報告書でいいますと、3 〜4頁にわたり、指針に新たに規定することが必要であるとか、指針に規定することが 適当であるとか、そのように書かれた部分を受けて指針にしたということです。ただ1 点違うのは、先ほど素案からの違いということで申しましたが、男女雇用機会均等法と 育児・介護休業法と雇用保険法、そこを明記したという部分の違いはあります。 ○使側委員  分かりました。もう1つ意見ですが、最後の所で適用は10月1日からというお話です が、いまいろいろなご質問が出ているように、多分、かなり中身の解釈を明確に通達等 で示す必要があろうかと思いますので、10月までの期間で通達かパンフレットと、十分 に資料提供ないし周知をしていただいて、企業の現場が混乱しないように、前向きのご 配慮を賜ればと思います。これがお願いです。  私どもとしても、この内容、指針ではありますが、かなり事業主にとっては重要視さ れて取り組まれることになるのだろうと思っております。それだけにパンフレット等で 解釈等が明確になるように、充実を図っていただきたい。これはお願いです。 ○労側委員  社会保険のところは、ここの法律というか、政府としては同じ法律なのであって、労 働者保護法令といいますが、ここは大事なところなので、先ほどの説明では納得できま せん。  もう1つは、先ほどの労側委員との話とも関連するのですが、指針の1の「人材活用 の仕組み、運用等」という、人材活用の仕組みというのは、どういう解釈になるかに よってずいぶん違ってくると思います。報告書をまとめられる審議過程でも、雇用管理 区分、パートと通常労働者とはもともと雇用管理区分は違うのだから、企業の方針なの だからということで、端から雇用管理区分の違いによって、もし通常労働者とパート労 働者が見られたらまずいので、企業の方針だとか、方針なんだからなんていうことは書 かないように、まさに実態できちんと判断できるようにしないと何もなりませんので、 そのところを総合的判断で、まさに実態ですね。「実質的に異ならない」という判断も そうですが、その辺のところをきちんとしていただかないと、解釈によって全然違って きますので、私はそこのところを特に意見を申し上げたいと思います。 ○事務局  労働者保護法令のところですが、いろいろ法律がある中で、ある意味でパートタイム 労働者も労働者ですので、すべての労働者にかかわる法律が適用されるわけです。そう いった法律をすべて列挙するのかという形になりますので、ここのところで今まで書い てあるものに加えて、この指針の中で書かれているものを特に明記したということで す。  人材活用の仕組みはどのように解釈されるのかという点ですが、これは昨年秋からの 均等分科会の議論の中でもいろいろありましたが、人事異動の幅及び頻度、役割の変化 といったものを例示として挙げておりますが、そういったものが時間的経過の中で労働 者がどのような職務経験を積む仕組みが設定されているかとともに、実際に運用されて いるかという実態を見るということです。例えば人事異動については、複数の事業所が ある場合などでは、転勤が入る場合もありますが同じ事業所の中での異動とか、職種間 の異動も入って、その範囲を幅として比べるということです。頻度についても、単に回 数を比べるというだけではなく、幅とも関連して見る必要があるのではないかと思って います。  それから、役割の変化というのは、職務に課された責任、権限の重さの変化を見てい くというものであります。人材育成の在り方というのは、時間的経過の中で労働者にど のような職務経験を積ませていく仕組みを有しているかということについて、制度化ま たは慣行化されて、客観的に把握できるものによって見ていくと考えています。こう いったことを例示として、総合的に勘案して人材活用の仕組み、運用等を判断していく ことになりますが、こういったことについて実質的に異ならない状態にあるかどうかと いうことについては、各企業の実態を踏まえて、現場の労使において具体的に検討され ていくことが重要ではないかと考えております。 ○労側委員  法改正にならなくて、指針改正にならざるを得ないのは今でも残念なのですが、いか に実効性を高めていくかということだと思います。いま通達とかパンフレットに盛り込 んでいただくというお話がありましたが、いまの人材活用の仕組みの部分でも、各企業 の実態を踏まえ、現場の労使において具体的に検討されることが適切であるというお話 があったのですが、労働組合のある所、なおかつパートタイマーで労働組合員になって いる人が非常に少ない中で、現場の労使において具体的に検討されるということについ て、具体的にどのように実効を上げていくかということを行政として考えているのか。 私はそこがないと、これは書いただけで効果がどれだけ期待できるかは、いちばんパー トタイムの皆さんが期待しているところだと思うのです。現場の労使においてと言われ ても、なかなか厳しい面があるのではないかと思います。そこのところについてどう考 えていらっしゃるのか教えてください。 ○事務局  労働組合のない所におきましても、パートタイム労働者の方にも改正された指針が分 かるような形で、知っていただくように私どもとしても努めたいと思います。そういっ たことと関連して、この指針の最後のほうにありますが、指針第三の五ということで、 「労使の話合いの促進のための措置の実施」というのを入れております。そういった中 でパートタイム労働者からも自分の処遇について事業主の方に説明を求めることがある かと思います。そこで事業主のほうは説明できるように準備する必要があるというよう なこととか、関係労使の十分な話合いの機会を持つといった形で、短時間労働者の意見 を聞く機会を設けるための適当な方法を工夫するように事業主には努めていただくとい うことも入りました。  さらに、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した処遇につい て短時間労働者から苦情の申出を受けたときには、事業主は、「当該事業所における苦 情処理の仕組みを活用する等、その実質的な解決を図るよう努めるものとする」という 規定も入っておりますので、ここの部分も使いながら雇用管理の改善といったものが図 られていくのではないかと思っております。 ○労側委員  いまのと関連しますが、労使の話合いの促進のために措置の実施のところで、いま 「当該短時間労働者の処遇について説明を求められたとき」という記述が指針に入って います。これについてですが通常の労働者との違いや理由などの説明を求められたとき というふうに、具体的に示すことができないのかと思います。パートタイム労働研究会 のガイドラインでも、「常用フルタイム社員との違いや、その理由について十分な説明 を行うことは肝要である」とされていたと思います。処遇の説明を行う際に、通常労働 者の処遇とか労働状況を知ってその格差がある場合に、その理由を説明するということ は納得性を高める上でも大変重要なことだと思います。むしろパートタイム、短時間労 働者の処遇そのものについて説明をするというのは、ある意味では当然のことではない かと思います。  特に処遇が能力、意欲、成果などで決まるのであれば、なおさらその説明について は、できるだけ客観的であるべきですし、比較し得る社員との処遇の違いについての合 理的理由を説明することは必要なことだと思います。是非、そこのところを指針に入れ ていただきたいと思います。それから、説明を求めた場合、または苦情の申出をしたと きに、その労働者に対して不利益な扱いをしないということは当然なことだと思います が、そのことも改めて、きちんと書き込む必要があるのではないかと思います。 ○事務局  元となっている分科会報告では、「本人に係る処遇について説明を求められたときは 求めに応じ説明」となっております。ここの部分は、パートタイム労働者が処遇につい て疑問を持って説明を求めた場合に、事業主が説明できるようにするべきではないか、 という分科会での議論を踏まえた記述になっているところです。いま労側委員が言われ た、通常の労働者との処遇の違いやその理由を説明、というように書けないかというこ とですが、そういう規定では正社員個々人の処遇についてまで説明するように受け取ら れるという議論も分科会の中であり、それを受けた形で分科会報告のような表現となっ ているものです。  したがって、指針の文言としては分科会報告とおりの規定と考えます。ただ、指摘の ご趣旨を踏まえて、例えば通達の中では、事業主はその説明に当たって誠意をもって説 明するということはありますが、説明の仕方、内容としても、例えばパートタイム労働 者と通常の労働者の職務の内容とか、人材活用の仕組み、運用等の関係についても説明 するというようなことで納得性を高めることが重要ではないかと、そういう記述を考え ているところです。  併せて、そういった説明を求めたことを理由として、パートタイム労働者が不利益な 取扱いを受けないようにということについても、通達の中では言及したいと考えており ます。 ○労側委員  不利益とはどういうことに当たるのかというのは、育児・介護休業の深夜業の制限だ とか、解雇、配転などいろいろ書いてありますが、そういう不利益内容も列記するとい うことですか。 ○事務局  一般的な通達の中での書き方なので、不利益な取扱いということで考えています。 ○労側委員  何が不利益に当たるかを書くわけですね。 ○事務局  法律に書かれている不利益の例というのは、解雇というのがあるかと思います。 ○労側委員  現行指針で法令遵守事項と、レベル水準等を考える事項と分けていると思いますが、 例えば賃金、退職手当等々については、いくらにしなさいとは書けないわけで、通常の 労働者とのバランスも考えてですが、例えば2頁の(2)年次有給休暇は法令遵守で、 労働基準法にある比例付与で書いてあります。例えば、ある事業所で通常労働者は半年 加えて8割出勤したら15日からスタートしますよというように、これを上回る水準が あった場合に、先ほどの「具体的な考え方」の1、2の考え方に基づいてパートタイム 労働者について、法令遵守はもちろんですがバランスを考えるわけですから、その場合 の年次有給休暇の分母、分子の考え方というのは、通常労働者との年次有給休暇、例え ば15日ならそれに応じた付与は求めて当然だと思うのです。その辺の理解はどうすれば いいのでしょうか。これだと法令、最低基準に当たればいいみたいな。バランスの所は 賃金ぐらいしか書いてないでしょう。法定を上回るような水準を確保されている事業所 における労働条件の決め方、同一決定方式と言っているわけですから、その辺は当然適 用されるわけですね。適用というか、そういう物差しは変わらないという理解でいいの ですね。 ○事務局  「基本的な考え方」のところで労働者保護法令を遵守するとともに、「就業の実態、 通常の労働者との均衡等を考慮して処遇すべきである」と書いていて、ここでは処遇と いうのは、賃金等の労働条件とか、教育訓練、福利厚生といったパートタイム労働法第 3条第1項で言っている、雇用管理の改善等の具体的な取扱いすべてを指すものと考え ておりますので、賃金、賞与、退職手当、年休といったものが含まれると考えていま す。 ○労側委員  福利厚生施設の利用などはパートであれ正社員であれ、適用しますというわけですか ら分かるのですが、年次有給休暇は賃金と似ていると思うのです。一時金は通常労働者 の場合は年間6カ月だけれど、パートタイム労働者は同じような仕事でも比例に応じて 一時金を支給するというのは望ましい姿。年次有給休暇もそういう性格のものですけれ ども、賃金ものというのは2頁の(8)「均衡等を考慮して定めるように努める」と、 ここにも書いてあります。これだとパート労働者は最大付与日数、基準法にある年休を 与えないみたいな、これで合理性は持つのでしょうか。 ○事務局  措置という形で書かれているところは、年休に関しては基準法を説明した部分です。 均衡に関して書かれているのは賃金、賞与、退職金といった形になっています。おっ しゃったような形で、上回る労働条件は別に年休に限ったわけではなく、ほかにもいろ いろなものがあると思います。そういったことを含めて、処遇に当たって基本的考え方 ということで、すべての処遇について、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考 慮して処遇するべきであるという部分が生きてくると考えています。 ○労側委員  しかし、それで読めるのですか。第2の所の「均衡を考慮するに当たって」というの は、労働条件の項目で、いま事務局がおっしゃったように読めるのでしょうか。賃金だ けはこれで分かるのですが。 ○事務局  第3では「特に、次の点について適切な措置を講ずるべきである」と書いてあります が、別にそれ以外のことについても第2の「基本的な考え方」のところは生きているわ けですから、そこで書かれていないことをもって、そこのところで第2の「通常の労働 者との均衡を考慮する」という考え方のところがなくなるわけではないので、こちらと しては、そういった処遇というのは全般を指すということであって、そういった観点か ら就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して処遇するべきだという考え方の社会 的な浸透・定着を、基本的考え方の説明の中で図っていきたいと思っております。 ○労側委員  年休は基準法の表に入っているわけでしょう。 ○事務局  年休に関しては、特に基準法すら守られていないという実態を踏まえて、特にこうい うふうに書かれているというのはありますが、上回る部分については、通常の労働者と の均衡を考慮して処遇という、そこの基本的考え方のところは、生きていると考えてい ます。 ○労側委員  もう1つ、第3の4の疑似パートの所の書きぶりですが、「通常の労働者としてふさ わしい処遇をするように努めるものとする」、ふさわしい処遇というのは、同じにしな さいという。現行と同じ書き方ですが、これはどういう通達になっているのですか。こ のふさわしい処遇というのは、全く同じ時間、ほぼ同じ時間で同じ仕事していたら、ふ さわしい処遇というのは。私は、同じにしなさいと。パートと呼ばないのだから、パー トは名前だけであって実質的に正社員と違わないのだから。ふさわしい処遇というと、 何か違ってもいいみたいな。ここはどう理解したらいいのでしょうか。 ○事務局  ここの部分については、前から指針に書かれたところであります。考え方としては、 事業主はその名称、疑似パートと言われている場合、パートさんと呼ばれたり、いろい ろな名称が会社であるかもしれませんが、その名称によることなく実態に即して、通常 の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものという書き方です。そういった 意味で、ふさわしい処遇をするようにということです。 ○労側委員  ふさわしい処遇、なかなか減らないのですよね。 ○公益委員  それは分科会報告のときに言わないと。その前の分科会のときに言ってもらわないこ とにはしようがないです。ここは組合のコメントが付いている所ではないわけですか ら。 ○労側委員  それは分かるのですけれども。 ○公益委員  それは、確かに議論すべき点だった、ということかもしれないですが。 ○労側委員  先ほどの年休はどうなのでしょうか。年休の物差し、物の考え方というのは。 ○公益委員  通常労働者について分けてないとすれば、それと同じであれば、基本的には時間比例 です。それはこれまでもそうですから。これまで労側委員が言われるような事例がある かどうかです。私の知る限り、有休についてちゃんと適用している所は、法を上回る部 分を適用していると理解していますが、そうではないのが多いとすれば、それは誤解の ないように指針の説明が必要かも分かりません。私の理解では、ちゃんと適用している 所については法令を上回る部分についてもパートに適用しているのではないかという理 解です。そこはそういう事例が多いというふうにすれば指針の解説で配慮したほうがい いかも分かりません。私はそれは知りません。 ○労側委員  先ほど実効を高めるためにパートの皆さんに分かるような形のPRをするというお話 がありましたが、具体的に今までと違う、例えば予算措置とか、何か考えていらっしゃ ることはあるのでしょうか。 ○事務局  手法としては同じですが、パンフレットとか、いろいろ工夫しながらやっていきたい という意味です。 ○労側委員  どういうケースでもそうだと思いますが、伝える側はやっていても該当者の方に伝わ らないケースもたくさんありますので、いろいろな手法を考えていただいて、そこのと ころは徹底していただけたらと思います。 ○労側委員  パブリックコメントは締め切られたと思いますが、これは、いつ、どのように扱われ るのでしょうか。次回までに。当日もらっても。 ○事務局  パブリックコメントの性格ということで申しますと、行政が、これが規制に係わるか どうかはあるのですが、こういった規制の設定、また改正に係る意見を提出してもらっ て、それに基づいて、提出された意見や情報を考慮して意思決定を行い、これに対して 行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見や情報と合せて公表するようにという ことが閣議での申し合わせです。ですから、ある意味で審議会そのものとの作業でいい ますと、平行して進められるものと考えております。  ただ、状況を報告しますと、指針案については6月19日から7月16日まで募集しまし た。35の個人、団体から、総意見数は220件の意見が寄せられています。厚生労働省と しては、出された意見を参考にしながら指針の策定作業を進めて、出された意見に対す る回答を取りまとめ、これを公表した上で指針改正の告示を行うということで、作業を 進めていきたいと考えております。 ○労側委員  220件というのは、別に資料として配られることはないのですか。 ○事務局  公表する段階で、こういった意見があったということでまとめながら、それに対して どう考えて対応したのかという、その意見を付けてパブリックコメントを出したホーム ページと同じ所に、それを載せるという形でパブリックコメントの取扱いをさせていた だいております。 ○労側委員  私ども労側委員としては、6月19日の説明を受けた内容から第2の今日修正された所 は、要するに私どもとしては、あの文章ですと、職務が同じ労働者に限定されるような 文言になるので、対象労働者が第2の適用労働者が狭まることが心配されたわけです が、今回の文章で、そこが修正されたことは、そういう懸念はなくなったのかなという ことです。  ただ、先ほど言われた指針の第2のところで、職場の実態の問題と家族的責任の所で すが、事務局の説明だと、いわば第2を行われている場合の留意事項だから通達という ことなのですが、大事なところですので、そこは引き続きご議論を私どもとしてはして いきたいと思います。先ほどの公正な処遇の実現ということと併せて、是非検討を願い たいと思います。  あとは、通達等に係わる解釈の問題が結構多いわけですが、これも引き続き検討し、 さらに解明すべき点は意見を述べていきたいと思います。 ○労側委員  議論を聞いていますと非常に通達の部分が多くなってくると思いますので、通達の文 章も分かりやすさを、是非追求していただきたいと思います。その上で、指針の第3の 2の(7)、新しく加わったところですが、「通常の労働者への転換に関する条件の整 備」ということで、指針の中では「これが可能となる制度の導入、必要な条件の整備等 をする」となっています。これでは具体的にどういうものを指していくのか分からな い。多分、通達の中でということになるのだろうと思います。その中で教育訓練とか、 通常の労働者へ転換する場合は、特に情報提供についてはきちんと書き込んでいただく ことを重ねてお願いします。 ○労側委員  職務が同じかどうかの判断基準は、職場ではかなり議論になると思います。特に判断 基準に当たっては、通常従事する作業の幅や組み合わせ、作業に必要な最低限の能力や 作業の困難度、さらには作業の遂行に当たって求める責任や権限の範囲等を、その判断 基準としたらどうかと思いますが、よろしくお願いします。 ○分科会長  ほかにはいかがでしょうか。特にないようでしたら、本日の議論はここまでにいたし ます。この続きは次回にまた行いますので、よろしくお願いします。  次の議題は、平成14年度女性雇用管理基本調査の結果と、今後の仕事と家庭の両立支 援対策の議論の進め方について、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  それでは、私から資料2から資料4に基づいてご説明させていただきます。資料2は 「平成14年度女性雇用管理基本調査」の結果です。資料2の1頁目はこの調査の概要で す。この調査は平成14年10月現在で行ったものです。資料2の最後から2頁目に、参考 1として、少子化対策プラスワン等で、育児休業取得率等の目標率を定めております が、その目標値と、平成11年度、平成14年度の数値を対比して並べております。  平成14年度の数値については、この調査自体が平成14年10月時点の調査で、少子化対 策プラスワンを取りまとめたのが平成14年9月ですので、この数値そのものには少子化 対策プラスワンによる取組みの成果は時系列的には含まれていない、ということを冒頭 に申し上げておきます。なお調査は、約7,600事業所を対象にしております。  3頁以下で調査の概要をご説明いたします。育児休業制度等に関する事項からです が、育児休業制度の規定状況というのは、それぞれの事業所で育児休業に関する規定が あるかどうかです。事業所規模5人以上では61.4%の企業で規定ありとなっています。 平成11年度の結果と比べて、約8ポイントの上昇です。  第1図で、平成8年度、平成11年度、平成14年度の数値、あるいは規模別の数値があ ります。規模が大きいほど規定ありの事業所の割合は大きくなっています。500人以上 規模では、99%以上の企業が規定ありになっています。  3頁で、規定がある事業所において、規定されている制度の内容です。育児休業期間 は、法定どおり「子が1歳未満」となっている事業所が86.1%と大半を占めています。  4頁で、育児休業制度の対象労働者は、育児休業法上は法律そのもので期間を定めて 雇用される労働者のように、適用が除外されている者、労使協定で除外できる形になっ ている労働者がいますが、それらの労働者の適用状況がどうなっているかということで す。期間を定めて雇用される者については、約21.2%が規定の対象とされています。 (3)の休業期間中、復職後の労働条件等の取扱いについては省略させていただきま す。  6頁の(4)育児休業制度の利用者の状況が、冒頭に申し上げました取得率にかかわ る部分です。この調査は、出産者又は配偶者が出産した者に占める育児休業取得者の割 合で、平成13年度に本人、あるいは配偶者が出産した者のうち、平成14年10月1日まで に育児休業を開始した者が対象になっています。女性では、出産時点で、それぞれの事 業所に在籍している者になりますので、妊娠した以降出産するまでに退職した者は取得 率の分母からは外れています。  以上のような前提で申し上げますと、女性の場合、規模5人以上では取得率が64.0% です。平成11年度は56.4%でしたので、7.6ポイント上昇しています。男性は0.33%で すので、前回の0.42%より下がっています。この調査は約7,600事業所と申しましたが、 取得者自体が非常に少ないので、1人、2人が取る取らないということで数字が大きく ブレます。  一方、雇用保険の育児休業給付受給者の数は、平成11年度の194人から平成14年度は 298人ということで約1.5倍になっています。こういった状況からみると、この数値その ものは下がっているが、この数値のみをもって男性の育児休業の取得状況は低下傾向に あるとは言えないのではないかと考えております。いずれにしても、男性の育児休業の 取得状況は平成11年度、平成14年度と引き続いて低い状況にあるということは申し上げ なければなりません。  ロの育児休業終了後の復職状況については、女性で復職した者の割合は88.7%という ことで、平成11年度よりも復職率はアップしています。男性については、数が非常に少 ないわけですが、平成11年度に引き続いて100%という数字になっています。  ハの実際に取得した育児休業期間はどのぐらいかですが、女性・男性共に取得した期 間は、平成11年度に比べてかなり長期化しています。女性は10カ月から12カ月未満が 41.4%で、前回の調査よりも1割以上増えています。男性は3カ月から6カ月未満の部 分が62.8%で、前回の調査の倍近い数字になっています。前回の調査でいちばん多かっ たのは3カ月未満ですが、そこは6割から3割とかなり少なくなっています。  7頁の2は勤務時間短縮等の措置、働きながら子育てをする労働者に対する援助の措 置はどういう状況になっているかです。(1)勤務時間短縮等の措置の導入状況は、平 成13年の法改正により、短時間勤務制度、所定外労働の免除、フレックスタイム等々の 制度につき、3歳までの子供を持っている労働者については、いずれかの措置をとって いただくという措置義務になっています。小学校へ上がるまでの子供を持っている労働 者については、こういった制度をとることが努力義務になっています。  その部分について、こういった措置を導入している事業所の割合は、全体として勤務 時間短縮等の措置を導入している事業所は、平成11年度に比べて約10ポイント・アップ して50.6%になりました。  どういった措置が多いかについては次頁に図がありますが、短時間勤務制度をとって いる事業所の割合が約4割弱でいちばん多くなっています。後のほうに統計表がありま すが、努力義務あるいは義務として3歳以上あるいは小学校に上がる時期までとなって います。3歳以上の者を対象にして、こういった勤務時間制度等の措置を導入している 事業所の割合が27%です。小学校に上がる時期までを対象にしてが9.6%です。  9頁の介護休業制度に関する事項も、育児休業と同じく規定として介護休業制度の規 定がある事業所の割合は55.3%ということで、平成11年度に比べて約15ポイント上昇し ています。下の図で規模ごとに見ると、規模が大きいほどこういった規定を整備してい る事業所の割合が多くなっています。  この規定がある事業所において、その規定の内容はどうなっているか。最長の休業期 間は、法定どおり3カ月までとする事業所が73.6%でいちばん多くなっています。取得 回数については、「同一要介護者」「同一要介護者の同一疾病」と2つの形があります が、いずれにしても1回に制限している事業所がほとんどです。対象になる家族の範囲 は、ほとんどの事業所が育児・介護休業法の対象家族の範囲となっています。  ニの介護休業制度の対象労働者は、法律上対象外になっていたり、労使協定で免除で きることになっている労働者についての適用関係がどうなっているのかということで す。期間を定めて雇用される者でいうと21.3%が適用になっています。  12頁で、介護休業制度の利用者の状況ですが、育児休業と同じく取得の状況です。取 得率ですが、分母である介護を要する者を抱えている労働者がどのぐらいいるのか、と いうところまではなかなか調査ができませんので、分母は常用労働者になっていますの で、比率は非常に低くなっています。常用労働者に占める介護休業取得者の割合は0.05 %です。平成11年度は0.06%でしたので、ほぼ横ばいの状況になっています。  平成11年度と大きく状況が変わったのは、女性・男性の構成比です。平成11年度の調 査では、9割以上が女性でしたが、平成14年度の調査では介護休業の取得者のうち女性 が6割、男性が3割強ということで、男性の割合がかなり高くなってきているのが一つ の特徴です。  介護休業終了後の復職の状況ですが、実際に復職した者の割合は90%です。実際に取 得した介護休業期間は、1カ月から3カ月未満が6割強、8割が3カ月未満の取得で す。  13頁は、育児休業制度と同じく、働きながら家族の介護を行う労働者に対する援助の 部分で、勤務時間短縮等の措置を導入している事業所の割合は43.9%で、平成11年度の 調査よりも約10ポイント上昇しています。  IIIは時間外労働・深夜業の制限に関する事項です。時間外労働の制限に関する事項 の部分は、平成13年の改正により、平成14年4月1日から施行されている部分です。時 間外労働がある事業所のうち、育児を行う労働者のための時間外労働の制限の規定を 持っている事業所は31.6%です。  14頁は、深夜業の制限の制度に関する事項です。平成11年4月1日から施行されてい る部分ですが、こちらは施行が早かったこともあり、深夜業がある事業所のうち、規定 のある事業所の割合は49.0%です。  子供の看護のための休暇の措置に関する事項ですが、子供の看護のための休暇につい ては、平成14年4月1日からこういった措置を導入することが努力義務になっていま す。子供の看護休暇がある事業所の割合は10.3%です。平成11年度は8.0%ですから、 約2ポイント上昇しています。  子供の看護休暇制度のある事業所のうち、対象者が子供以外の家族も対象にしている 事業所の割合は約6割です。対象となる子供の年齢、休暇日数、賃金の取扱い等々につ いても調べております。  16頁は、配偶者出産休暇制度の導入状況を聞いています。配偶者出産休暇制度がある 事業所の割合は33.1%です。平成14年度の調査で初めてこの項目を聞いています。以上 が、平成14年度の「女性雇用管理基本調査」の結果の概要です。  今後議論すべきテーマについて、資料3でご説明いたします。今後議論すべきテーマ について、ご議論いただく参考ということで、今回の通常国会において、次世代育成支 援対策推進法案、労働基準法の一部を改正する法律案等々のご審議をいただき、いずれ も今国会で成立いたしました。  それぞれの議論の中で、育児・介護休業制度についてもいろいろ議論がなされており ます。本日配付しておりますように、それぞれの法律の成立に際していただきました附 帯決議の中でも、育児休業制度についていくつか言及されております。それについてご 紹介させていただきます。  2頁で、次世代育成支援対策推進法案等に対する附帯決議というのは、衆議院厚生労 働委員会の附帯決議です。育児休業制度等に関する部分として一、二、三と次の頁の七 があります。一については、基本調査のところで言及した、子供の看護休暇について請 求すれば取得できるよう、早急に検討に着手すること、という決議をいただきました。 二、三については、男性の育児休業取得を促進するための取組み、子育て期間における 残業時間の縮減に取り組むこと。七では、ILOの第156号条約の趣旨を踏まえ、職場 における固定的な役割分担意識や、職場優先の企業風土の是正に向けた労使の努力を促 すよう努めること。二、三、七については、制度そのものよりも制度の運用を含めた取 組みについて決議をいただいております。  4頁は、少子化社会対策基本法案に対する附帯決議で、衆議院内閣委員会からいただ いた決議です。七で育児休業制度等の充実も含め、雇用環境の整備のための施策に万全 を期すことという決議をいただいております。  次の頁は、労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議で、参議院厚生労働 委員会からいただいた決議です。今回の育児休業王道基準法の改正により、労働契約期 間の上限が、原則これまでの1年から3年に延びております。そういった状況を踏まえ て附帯決議をいただきました。  4の部分で、育児休業の適用も含め、有期雇用の労働者のさまざまな課題について、 早急に検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずることという決議をいただきま した。  参議院厚生労働委員会の次世代育成支援対策推進法案についての附帯決議も付けてお りますが、これは基本的にいま申しました、衆議院の厚生労働委員会での附帯決議と同 旨ですので省略させていただきます。今回の通常国会において、いま申し上げたような 附帯決議をいただいております。  資料4として、今後議論すべきテーマ(案)ということで1枚紙を用意させていただ きました。今回お願いしております育児・介護休業法の見直しの検討に際しては、4月 の検討をお願いいたしました時点でも申し上げたとおり、基本的には育児・介護休業法 全般についてご検討をお願いいたしたいと考えております。  したがって、資料4についても基本的には育児・介護休業制度全般についてご議論い ただくという前提で書いております。そこを大きく分けて、育児休業制度について、介 護や看護のための措置について、休業以外の措置についてとしております。黒ポツで、 例えば具体的にこういうテーマということで書いてあります。  育児休業については、対象となる労働者の範囲、休業期間、取得回数、あるいは丸括 弧で保育サービスとの関係の部分については、前回の審議会でもご議論いただき、ご意 見をいただきました。保育の問題そのものは、当分科会の所掌ではありませんが、当 然、育児休業制度等々と保育サービスとは密接に関係しております。そういう観点で、 前回の育児休業法の見直しに際しても、保育サービスの関係について、関係の担当者か ら説明をいただき、意見交換をしております。今回についても、密接にかかわる部分で ありますので、同じく保育サービスとの関係について、現状の説明等々をして意見交換 等もしていただければと考えております。  介護や看護のための措置についても、4月に申しましたとおり介護休業についても育 児休業と同じく、今回の検討対象ということで考えております。この看護休暇の部分に ついても、先ほどご説明いたしました附帯決議等にも触れられておりますので、これも ご検討の範囲に入れていただければと思っております。  休業以外の措置についてということで、育児や介護にかかわる勤務時間短縮の措置 等々が考えられます。以上、この黒ポツについてはあくまでも例示ですので、こういっ た育児・介護休業制度全般について、9月と10月にそれぞれ2回ずつ日程の確保をお願 いしておりますので、その4回を使い、こういったテーマ全般についてご議論いただけ ればと考えております。 ○分科会長  ありがとうございました。 ○公益委員  お願いなのですが、制度の普及状況と、制度の利用取得率があります。これを1つの 調査でやるのは難しいだろうと思います。特に、育児休業、介護休業の取得率について は、介護をする必要のある人を抱えているかどうかを企業に調べろというのは無理で す。  個人の取得状況は、旧厚生省のときに始めた縦断調査のように個人を対象とした調査 である程度フォローしていくことを重視せざるを得ないでしょう。妊娠して、子供が生 まれる前に辞めてしまった人がどのぐらいいるのかなどというのは、企業にはわからな いです。制度調査と、個人の取得状況を1つの調査でやるなどとあまり欲張らないでい くしかないと思っています。そういう意味で、もう少し個人を対象にした調査で、実際 上出産までいなくて辞めてしまったというデータはわかりますので、その辺の情報を出 していただきたいと思います。  制度調査は事業所調査です。これは、個人の取得状況を取るために、事業所調査を やっているのです。ところが、制度を調べるのであれば企業でいいのです。企業規模が 小さい30人というので、大企業の30人規模も入っています。なぜかというと、今度の次 世代育成支援対策法で計画を作ってもらうのは企業規模300人超です。企業規模300人超 の制度の普及状況はこれを見てもわからないです。  今回のも、次世代育成支援対策推進法の関係でいえば、企業規模300人を超えるのと 300人以下の集計は、企業規模を聞いていますのでできます。もう1つの施策について いうと、企業規模別の制度導入状況の情報は出していくことが必要ではないかと思いま す。 ○分科会長  調査について、ほかに何かありますか。 ○公益委員  公益委員がおっしゃったこととかなりダブルのですが、妊娠してから出産するまでに 辞めた人がいま分母に入っていないわけです。出産時点で勤めていた人が分母で、その うち育児休業を利用した人が何パーセントでしょうか、ということで目標をプラスワン で立てているわけです。  いろいろな分析をほかの研究者がやっているのを見ると、妊娠してから辞めている人 が最近は増えているのではないか。残っている人については育児休業を取っていること もあります。その辺について、過去の推移はどうなってきているのか。いま述べたこと も含めて、何か統計がありましたら教えていただきたいと思います。 ○事務局  公益委員からのご指摘であります、妊娠してから出産するまでに辞めた者のデータが 時系列的にあるかどうか厳しいところもあるのですが、前にお示しした縦断調査の結果 等々でそういった数字があります。これから育児休業制度についてのご議論をいただく ときには、ほかの調査も含めて調べ、個人調査から見た状況をわかる範囲でお示したい と考えております。  調査そのものは、事業所調査、企業調査、個人調査についてはそれぞれのメリットも あり、私どもとしてもいろいろな調査をやりたいと考えているのですが、一方であまり いろいろな調査もできませんので、調査のあり方そのものは今後の検討課題、宿題とい うことで検討させていただきたいと思います。 ○公益委員  この調査は、企業規模を聞いていますからデータはあります。私がお願いしたのは、 企業規模は聞いていますので、企業規模で集計したものを出したほうが親切だろうとい うことです。私が以前にお願いして入れてもらいましたので、変わっていなければ、会 社全体で何人ですかという質問が入っているはずです。 ○事務局  調査を担当した立場から、今回は事業所規模だけで聞いております。前回は、企業全 体の数は取っております。 ○公益委員  事業所を対象にしているのだけれども、どこかで1問企業規模を聞いている質問があ るはずですが、落としてしまったのですか。 ○事務局  今回は調査票の中に含まれておりませんので、集計はできない状態です。 ○公益委員  わかりました。 ○労側委員  出産前に辞めた人の数が分母に入っていないというお話がありましたが、介護のとこ ろもいちばんの問題は、辞めざるを得ない人が問題だと思うのです。先ほどの資料で は、分母に入っていないというお話でしたが、何か出していただけるものがあるのでし たら是非お願いいたします。 ○事務局  これも、資料としては前にお示ししたと思いますが、別の調査で、出産や介護等で辞 めた者の割合等々は統計データとしてあります。それぞれの項目についてご議論いただ きますときに、そういったデータについては幅広く提出させていただきます。 ○労側委員  14頁の2の深夜業の制限に関する事項の調査結果の理解の仕方ですが、2行目に「育 児を行う労働者のための深夜業の制限の規定があるもの 49%」とあり、また以降に 「家族の介護を行う支援への規定が50%」ということで、育児と介護を分けて規定を設 けているという理解でいいのですか。  法律そのものは、育児や介護という家族的責任のところで深夜業制限措置を講じてい るのですけれども、実際の各事業所の例というのは分けているということですか。逆に 言うと、育児の深夜業制限はあるけれども、介護はないという、そういう所もあるとい う理解でいいのですか。 ○事務局  この仕組みとしては、育児を行う労働者、介護を行う労働者ということで、基本的に はそれぞれ別の仕組みとしてある可能性もありますので、調査としては別の項目で聞い ているということです。 ○公益委員  これから4回ぐらいかけて議論をしていくに当たり、我々はできるだけ正確なデータ というか実態を踏まえて課題を明らかにしていくことが必要だと思いますので、厚労省 で蓄積しているデータをできるだけ有効に活用していただければと思います。育児に関 しては、追跡調査をやり始めたわけです。私も検討のところでかかわったのですが、あ れは出産したケースの悉皆調査でその後の経過を追っていきます。出産して、どのよう な状況で辞めるかということに関してのデータは時間がかかるのですが、現在までの データでも結構ですから、できるだけ正確なデータを、この審議会に提出していただき たいと思います。膨大な難しいデータなので、事務局としても対応が大変だと思うので すが、非常に有効な議論の資料になると思いますので、是非データを提供していただき たいということを重ねてお願いいたします。 ○公益委員  このチャンスにいろいろ頼んでおいたほうがいいと思うのですが、育児休業取得率 64%というのは何を意味するのだろうか、というのがいまいち私はわからないのです。 残りの36%はどういう人なのか、一つは会社を辞めてしまって、育児休業を利用しな い。もう一つは、継続して育児休業を取らずに働き続けている人。この両方があり得る わけですので、意味するところが全く違うわけです。  ここで、64%を80%に引き上げましょうと言った場合に、辞めないで済むようにしよ うということなのですが、片方で、継続して育児休業も取らずに働き続けている人につ いてどう考えていくか、ということは非常に重要なポイントになってきますので、調査 でそれがわかったら、残りの36%はどういう人なのかを教えていただきたいと思いま す。これは、個人調査を見れば全部出ているはずです。辞めてしまったのか、それとも 休暇を取らずにずっと勤めているのか、どちらが多いのかで議論がだいぶ違ってきます ので、その点を調べていただきたいと思います。 ○分科会長  調査についてはよろしいでしょうか、もしあれば事務局へ直接言っていただくという ことで先へ進ませていただきます。育児・介護休業制度について今後議論すべきテーマ ということで、資料4についてご説明がありましたが、これについて追加すべき事項や いらない事項も含めて、ご意見、ご質問をお願いいたします。 ○使側委員  育児・介護の育児の部分ですが、これは平成13年の秋の通常国会で改正法が成立し、 平成14年4月から施行ということになりました。その際に、施行後3年間様子を見て、 その後再検討しましょうという附帯事項が付きました。今回、育児休業の部分を見直す とすれば、まだ施行後日が経っておりませんので、特段の事情があるから検討しようと いうことになろうかと思うのです。資料3で附帯決議等の話がありましたが、これがそ れを促す特段の事情なのだということでしょうか。 ○事務局  これは、4月のいちばん最初に検討をお願いいたしましたときにもご説明させていた だきました。使側委員からご指摘がありましたとおり、そもそも前回の法改正のときに 附則として、施行後3年の状況を見て検討をすることになっておりましたが、これも 縷々これまでご説明いたしましたとおり、昨年以来、少子化対策プラスワン、あるいは 当面の取組方針等々の中で、少子化の問題が非常に深刻になる中で、政府として先ほど 言及したように、今国会でも次世代法を成立させていただきました。  それに併せて、今年度、来年度を基盤整備期間として、いろいろな制度についても検 討を加えていくと。その中の一つの要素として、仕事と家庭の両立対策についても、少 子化の問題を考える上で極めて大きな要素の一つでありますので、特に育児休業制度等 の問題について検討していくことが取組方針の中でも述べられております。そういった ことで4月からご検討をお願いしたところでございます。  さらに、今般国会のご議論の中でも、資料3でご紹介しましたとおり、個別の具体的 な項目についても、いろいろ附帯決議でお示しをいただいておりますので、そういった ものも踏まえて9月以降ご議論をお願いしたいと考えております。 ○使側委員  1点目は、育介法そのものについて、先般の会合で、公益の先生からもご意見があっ たように記憶しております。育介法そのものは少子化対策として捉えるべきものではな いのではないかということもあると思います。あくまで従業員の就業継続の問題であっ たり、両立支援の観点から捉える話ではないかと思っております。  2点目は、本日説明がありましたが、施行後日が経っていないということで実際問題 その進捗状況はよくわからない状況ですので、議論ができるような施行状況のデータが 揃っているとは考えにくい段階の中で議論ができるのか少し疑問です。  3点目は、資料3の中で労基法改正の部分がありました。労働基準法は、有期雇用契 約について、原則1年の部分が3年に、専門職と高齢者の部分は3年から5年になりま した。このテーマの中に、対象となる労働者の範囲が入っておりますが、今回これが特 段の事情として労基法改正があるのだということであれば、この部分に対応した形に限 定して議論すべきなのではないかと思っております。私としては、育児休業の期間や取 得回数等の問題というのは、本来の筋からいえば今回の議論に入ってくる話ではないの ではないかと考えております。  なお、テーマの中で丸括弧書きですが「保育サービスとの関係」というのがありま す。これは、確かに育介法そのものの問題ではありませんが、次世代育成との絡みも当 然あるでしょうしということで、これは検討すべき話としては非常に有意義なのではな いかと思っております。 ○労側委員  使側委員から、3つの観点から話がありました。私どもの理解しては、「次世代育成 支援に関する当面の取組方針」の中に、児童福祉法の改正を3年でやりなさい、育児・ 介護休業法についてこうしなさい、というのも入っています。目標達成のために、個別 法をこういうふうに見直すというのは、政府の決定事項だと認識しています。どういう 内容で改正するかは別の話としても、一応その枠組みは政府として決定しているから、 私どもに検討を依頼している、というのが第1点の理解です。  おっしゃるように、少子化対策のために育児・介護休業法があるわけではなく、結果 としてそれは出てくるわけで、それを目的にした話ではないと思いますので、そこは共 通認識はあるのですが、いずれにしろ重要な社会的課題ですので、何が重要かというの は積極的に受け止めて議論すべきだと思います。  2年前に改正議論をして、私どもが言っていることは、政府がもっと早く見直せと 言って、労働側の要求はかなり裏付けられている現状なのですが、それ見たことか、や はりそうではないかと言っています。テーマの中に、働き方の見直しというのは盛んに いま言われています。育児・介護というのは、30代の育児対象の年代の人が週60時間労 働で、家事・育児という状況でないということ。相変わらず働き方が全然変わらずに、 いくら意識改革といっても変わらない状況もあるわけです。  そういう意味ではデータもさることながら、議論としては抽象的に言い尽くされてい るのです。働き方の見直しはどうだとか、企業風土はどうだとか、もっと突っ込んだ議 論をしなければならないと思います。グランドデザインとしてどういう社会を目指して いるのか。それはすぐできるものと、中長期にかかるものと区分けしてやらないと、2 年ごとに見直しをして、言われたからやるというのではなくて、もう少し社会のあり様 について、それぞれが共通認識を図れないのかというのが大事だと思います。4回の会 合で、共通認識を図るための議論はまず欠かせないのかなというのが1つです。  そうは言っても各論を議論しなければまずいので、本日はイタリアとドイツの育児休 業制度も紹介されました。これは例示だとおっしゃったのですが、労働時間関係は厚生 労働省基準行政だから所掌ではないということなのかもしれませんが、労働時間の問題 でも、なぜ長時間労働が蔓延しているかという面での考え方をどうするのか。  男性育児休業取得促進策について、権利としてあるわけだけれどもなかなか普及しな いということで、いま何らかの措置を求められているという認識でいるし、前回の会で も提案しましたが、この辺のところについてどう考えるのか。  ILO第183号の母性保護条約は、我が国は批准していないです。その原因は、国内 法で定める出産手当金の割合が未達成であるからと聞いているのですが、その辺をどの ように考えるか。  保育サービスの関係は出ているのですが、介護休業制度をつくるときに議論になった のは社会サービスの点で、その後介護保険ができました。介護保険ができたのを受け て、当時は、介護のため離職した方が81万人いるというデータがありました。介護保険 ができた後、どのように変化したのか。事業主に課す責任だけでいいのか。社会保険制 度がもっと充実することにより、この制度の両輪が可能となるようなものができないの か。そういう意味では、介護保険サービスとの関係も議論すべきではないか。  企業のヒアリングをした際に、制度はつくるけれども全然周知がされていない、とい うことを企業の方が言っていました。使側委員の所は、盛んに中小企業へのサービスと いうことをいつもおっしゃっているわけですが、その辺も大事な要素です。制度の周 知、行政の支援がいまのままでいいのかどうか。  母子手帳は厚生労働省の所管ですが、母子手帳に育児休業制度をきちんと書いてもら い、どういう制度があるかというのがあったほうがいいと思います。妊娠したら必ず支 給されるものなので、そのことも有効に活用したらどうかと言ったら、あれは副読本み たいなものがあり、そこには各都道府県で作るようになっているので、本省からは言え ないのだという答弁が当時あったことを記憶しています。その辺はいまどうなっている のか。  私たちの提案では父子手帳、親手帳みたいなイメージなのですけれども、もし男性が そういうことを意識するための制度も普及させたらどうか。そういう意味での周辺サー ビスの議論はソフト面では大事だと思いますので議論したいと思っています。先ほど例 示が出ていましたが、その辺も含めて議論したいということです。 ○事務局  使側委員、労側委員のご指摘についてです。使側委員のご意見の、育児・介護休業制 度そのものはイコール少子化対策ではない、ということは事実です。少子化対策を離れ ても、本日ご説明いたしました基本調査の結果を見ても、残念ながら現実の姿として、 仕事と家庭の両立対策が社会の中で周知され、機能しているかというと、まだまだ制度 面・運用面を含めて見直すべき課題は残っていると考えております。そういった状況 が、少子化が深刻な問題の一因となっていることは事実だろうと思います。  そういう中で、労側委員からもご指摘がありましたとおり、政府として当面の取組方 針の中で、育児休業制度全体についてご検討をお願いしたいということです。労働基準 法改正の審議の中では、労働基準法との絡みで、期間雇用の問題が議論されましたが、 育児休業制度としてはいま申し上げたとおり、結果はともかく制度全体についてご議論 いただきたいと考えております。  前回の制度改正は、平成14年4月1日から施行ですので、それ以降の期間が短いと いうのはおっしゃるとおりです。そういう中で、円滑なご議論をしていただきたいと考 えております。本日も、いろいろな資料等々についてご意見をいただきましたが、9月 以降も幅広くご議論いただけるように、資料等はいろいろ用意させていただきたいと 思っております。  労側委員のご指摘ですが、非常に多岐にわたる項目についてご意見をいただきまし た。交通整理として、当委員会の所掌になる部分と、そうでない部分はあろうかと思い ます。労働時間全体の問題や出産手当の割合等々についてまで、この分科会でご議論と いうわけにはなかなか難しいのではないかと思っております。  一方、この分科会でのご議論は必ずしも法的な整備のみに限定されるものではありま せんので、制度周知広報の問題、これは男性の育児休業の取得促進も含まれますが、そ ういった部分についてどのような周知を考えたらいいのか、という問題については育児 休業のところでご議論いただければと考えております。  介護についてもご指摘のとおり、育児休業と保育サービスが密接な関係があるのと同 じように、介護休業についても、介護サービスはどういった動向にあるのかと密接に絡 みますので、介護休業についてご議論いただく際には、介護サービスは現状どうなって いるのか等々については、同じく情報提供させていただければと考えております。 ○公益委員  公益委員の要望と重なるのですが、育児休業、介護休業を取らないで仕事をし続けた 人は、何らかのサポートがなければできなかったと思うのです。育児休業取得率が増え た、介護休業取得率が増えたからよかったでなくて、それを取らずに両立した人たちは どういうサポート体制があったのか。  よく体験的に聞くのは、父と母、子供からいえば祖父母、兄弟といった方たちの家族 内サポートで切り抜けたということですが、そうではなく社会的なサポート・システム を利用したのか、そういうことを今後の両立支援を立体的に考えていくためには、そち らもかなり重要な問題点だと思います。現在そういう調査がなければ、ほかの調査の統 計などを参考にさせていただけたらと思いますので、そういう資料も頂戴したいと思い ます。 ○事務局  公益委員のご指摘に当てはまる調査結果があるかどうか、いまは確実には申し上げら れないのですが、いずれにしても育児休業を取らなかった方はどうしたのか。おじい ちゃん、おばあちゃんに預ける、あるいは産休明けの保育もありますので、認可・無認 可の保育サービスを活用する等々の形で、実際は仕事を続けているということだろうと 思います。そういった、さまざまな個人調査がありますので、そういったものを整理 し、9月以降お出ししたいと思います。 ○使側委員  いまのことに関連してですが、育児休業を取って働き続ける人が、子供が小学校に上 がった以降どうしているのか。育児や短時間勤務というのは、ほかの部署で検討するこ となのかもしれないのですが、小学校に上がるまでの議論は結構出てきますが、本当に 働き続けるためには、それ以降もあるわけです。  特に、小学校の低学年の辺りについては保育とは言わないのかもしれませんが、サー ビスはどういうふうになっているのか。流通業などにおいては、保育園がある間は勤め られたりしますが、小学校に上がるときになって、退職せざるを得ないという人もいる のではないかと思われるところもありますので、そういう資料も提供していただければ と思います。そのぐらいになった子供については、ここで議論することではないのかど うか、その辺りも教えていただければと思います。 ○事務局  必ずしも、子供がどの年齢までに限定されるというものではないと思います。いまの 制度の仕組みとしては、子供がこのぐらいの年齢まで措置をすればいいであろう、とい うことでこういう仕組みになっておりますので、そこは必ずしも限定されるものではな いと思います。  前段の部分については、現在は学童保育という制度があり、小学校低学年のうちは、 お父さん、お母さんが帰ってくるまで学童保育で保育される。夏休みについては、朝か らお弁当を持っていって学童保育で過ごす、という措置になっていると思います。そこ も、いまご指摘がありましたとおり、基本的に日曜日は学童保育は休みだろうと思いま すので、ご指摘の点はどうなっているのだろうかということはあると思います。そうい った部分も、幅広く資料等をお出しできればと思っております。 ○労側委員  個人への支援、企業への支援の両方があると思うのです。いままでもいろいろな制度 はあるのですが、それが十分活用されていなかったり、使いにくかったりという面があ ると思います。ヒアリングの中でもそういうところが出てきていますので、関連する支 援事業の有効利用についてはこの中に取り入れていただきたいと思います。 ○公益委員  この前から言っていることですが、育児休業を取って完全に休むと、雇用保険から育 児休業給付が出ます。ところが、労働時間を短縮して働き続けると、これについては一 切何らの補助がない。それでいて時間比例ということで、給与が削減されることがあっ たときに、どうもバランスが崩れているのではないかという気がします。  この点については、部分失業手当の問題に関連してくる可能性があるのですが、日本 の雇用保険制度では、いままで部分失業手当というのは、60歳を超えてからの雇用継続 給付のところだけしか認めてこなかったわけです。この点についても議論していただき たいと思います。 ○分科会長  今後、一応この項目立てで議論していくことになりますので、その中でいろいろなご 意見をお出しいただくということで進めさせていただきます。今後の議論は、資料4の 項目立てで進めることにして、9月の2回は育児休業について議論します。本日の議論 はこれで終了させていただきますが、本日の議事録署名人を、岡本委員と山崎委員にお 願いいたします。 ○事務局  次回以降の日程について申し上げます。次回は7月28日の13時30分から、省議室で行 います。次々回以降については、事務的に調整させていただきご連絡させていただきま したが、9月10日、9月26日、10月7日、10月20日で、いずれも15時からお願いしたい と考えております。  本日の資料で、前々回ご質問のありました、イタリアの制度と、ドイツについての補 足的な資料を付けておりますので、これは後ほどご覧いただければと思います。 ○分科会長  本日の会議はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。 照会先:厚生労働省 雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課